説明

アンテナ

【課題】可視光線透過性を有し、かつ、特性の優れたアンテナを提供する。
【解決手段】透明基板と、該透明基板に一体状に積層されたアンテナ素子1を備えたアンテナであって、アンテナ素子1は、可視光線透過性を有するメッシュ部10と、そのメッシュ部10の輪郭を縁取る輪郭線部12と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス等に貼着されるアンテナは、金属箔や金属メッシュ等の導電性材料の膜体にて、アンテナ素子を形成していた。
特に、自動車のフロントガラス等に貼着されるアンテナは、視認性を確保するため、アンテナ素子をメッシュ状に形成していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−252175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、従来のアンテナは、VSWR特性(電圧定在波比)等の特性を向上させるために、弯曲部やスリット部等を有する特殊な形状に形成されている。
各部の形状や寸法は、アンテナの品質や特性を保持するうえで非常に重要である。
【0005】
ここで、図9に示すように、銅箔で形成したアンテナ素子90の場合、切欠部90cの幅寸法や、切欠深さ寸法を、最適の切欠幅寸法Eaや最適の切欠深さ寸法Daとすることは容易である。
しかし、図8に示すように、アンテナ素子80をメッシュ状に形成した場合、従来は(輪郭の無い)メッシュ部のみから構成されており、例えば、最適な切欠部80cの形状は、ニ点鎖線で示している形状であるが、実際は、メッシュ部の網目(枡目)が途切れた(破れた)ようになるため、切欠部80cが所定の帯形状とならず、幅が大小変化する凹凸状に形成されていた。また、弯曲部80dの外形状も設計上は二点鎖線で示す円弧状であるのに対し、実際は、網目が途切れた凸凹状となっていた。
つまり、実際の形状は、(設計上の)最適形状と相違した曖昧な形状となり、アンテナ素子の各部寸法が、正確な(設計上で最適の)寸法と異なっていた。
【0006】
このように、アンテナ素子をメッシュ状とした場合、金属箔で形成した場合に比べて、所望(最適)の特性が得られていないといった問題や、メッシュ部を形成する枠線部の枠線幅寸法やピッチ寸法の影響を受け易く、特性が安定しないという問題があった。
また、アンテナ素子の周縁や切欠部等で、網目が破れたようになるため、製造の際に、損傷や変形等が発生しやすいという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、可視光線透過性を有し、かつ、安定して特性の優れたアンテナの提供を目的とする。また、製造する際に、品質不良発生率の低いアンテナの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のアンテナは、透明基板と、該透明基板に一体状に積層されたアンテナ素子を備えたアンテナに於て、上記アンテナ素子は、可視光線透過性を有するメッシュ部と、該メッシュ部の輪郭を縁取る輪郭線部と、を有するものである。
また、上記メッシュ部の開口率を80%以上に設定したものである。
また、上記透明基板と上記アンテナ素子の積層体の可視光線の透過率を70%以上に設定したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可視光線透過性を有しながらも、優れた特性を得るための形状や寸法を、確実かつ正確に得られる。また、製造する際に、品質(特性)が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の正面図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】要部拡大図である。
【図5】第1実施例と第1比較例のVSWR特性を示すグラフ図である。
【図6】第2実施例と第2比較例のVSWR特性を示すグラフ図である。
【図7】従来例の要部拡大図である。
【図8】従来技術を説明するための要部拡大図である。
【図9】従来技術を説明するための要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
本発明のアンテナは、図1の実施の形態のように、透明基板2に一体状に積層され、一直線Lに関して線対称状に配設される左右一対のアンテナ素子1,1を、備えている。
透明基板2は、シート状の透明ガラス等や、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、アクリル等の透明樹脂フィルム等で、板状乃至シート状に形成されている。透明基板2の可視光線の透過率は、80%以上であれば望ましい。
【0012】
アンテナ素子1は、導電性材料から成り、薄膜面状のメッシュ部10を有している。材質としては、銅、ニッケル、アルミニウム、金、銀等、または、これらの金属(微)粒子を含む金属ペーストやカーボンペーストを使用している。フォトエッチングや、印刷レジストによるエッチングによって、また、導電性樹脂ペーストを印刷する等の方法によって、網目状パターン(メッシュ状)に形成されている。または、ITO、酸化亜鉛、酸化スズ、等の金属酸化物を使用でき、真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ、電着等で形成される。または、スクリーン印刷、ロールコーティング、転写、蒸着、等で透明基板2に一体状に積層され形成される。
【0013】
また、メッシュ部10は、図例では、楕円形状面部1aや、給電用の下方拡幅状脚部1b、切欠部1c、分割ループスリット部1d、等を有している。また、一方のアンテナ素子1のメッシュ部10には、楕円形状面部1aから突出状の小突起部1eを有している。
このような、各部の形状や寸法、角度、配置は、アンテナの特性に対して非常に重要な要素(パラメータ)である。
【0014】
また、図2に示すように、メッシュ部10は、メッシュの網目(枡目)を形成する導電性材料から成る極薄極細帯状の複数本(10本以上の多数本)の枠線部11が交差状に配設されることで、正方格子状に形成されている。
また、透明基板2に積層したアンテナ素子1(アンテナ素子1を透明基板2に一体状に積層形成した積層体)の可視光線の透過率が70%以上になるように、メッシュ部10の開口率を80%以上(より好ましくは95%以上)に設定している。このように設定することにより、例えば、車両のフロントガラスに貼着した場合に、運転者が車外を見たときに透視性(視認性)を損なうことがなくなる。なお、メッシュ部10の開口率とは、メッシュ部10の網目を形成する枠線部11を除いた部分の面積が、メッシュ部10中に占める割合である。
また、開口率を99.5%以下に設定するのが望ましい。99.5%を越えると、枠線部11の割合が少なく所望のアンテナ特性が得られない虞があるからである。
また、透明基板2とアンテナ素子1の積層体の可視光線の透過率を95%以下に設定することで、良好な視認性を有するアンテナを、容易かつ安定して製造でき、品質不良発生率を低減できる。
【0015】
ここで、図1に示すアンテナ素子1のA部に対応する、従来のアンテナ素子80の拡大図を図7に示す。従来のアンテナ素子80は、各部の外周縁部や内周縁部でメッシュの網目が破れたような箇所が形成され、最適形状や寸法となっていなかった。
例えば、図8に示すように、最適(設計上)の切欠部80cの形状は、二点鎖線で示している形状であるが、実際は、メッシュ部の網目(枡目)が途切れた(破れた)ようになるため、最適の切欠幅寸法Eaとなっていなかった。また、実際の切欠深さ寸法も、最適の切欠深さ寸法Daとなっていなかった。また、弯曲部80dの外形状も最適な場合は二点鎖線で示す円弧状であるのに対し、実際は、網目が途切れた凸凹状となっていた。
つまり、アンテナ素子1の形状や各部寸法、各部の距離寸法、外周長、アンテナ素子1,1間同士の間隙寸法が、適正寸法(最適寸法)となっておらず、特性に悪影響を及ぼしていた。
【0016】
しかし、本発明は、図2乃至図4に示すように、中間面領域のメッシュ部10を形成する枠線部11とは別に、アンテナ素子1のメッシュ部10の輪郭を縁取る輪郭線部12を設けている。輪郭線部12は、枠線部11の端部と枠線部11の端部を連結すると共に、最適の輪郭線上に配設される(設計上の輪郭と一致する)。
【0017】
具体的には、図2に示すように、輪郭線部12は、楕円形状面部1aの外形を縁取る輪郭線部12(12a)、下方拡幅状脚部1bの外形を縁取る輪郭線部12(12b)、切欠部1cの輪郭を縁取る輪郭線部12(12c)、分割ループスリット部1dの輪郭を縁取る輪郭線部12(12d)、小突起部1eの輪郭を縁取る輪郭線部12(12e)等、メッシュ部10(導電部)を縁取りしている。
【0018】
例えば、輪郭線部12を設けたことで、一対のアンテナ素子1,1同士の間隙寸法Qや、各部間の間隙寸法(離間寸法)が最適(適正)な寸法となる。また、図4に示すように、切欠部1cの実際の切欠幅寸法が最適の切欠幅寸法Eaとなり、実際の切欠深さ寸法も最適の切欠深さ寸法Daとなる。
【0019】
図3及び図4に於て、輪郭線部12の線幅寸法をWbとし、枠線部11の線幅寸法をWaとすると、0.2Wa≦Wb≦5Waとしている。より好ましくは、0.5Wa≦Wb≦2Waとするのが好ましい、さらに、より好ましくは、Wa=Wbである。
上述のように設定しているのは、輪郭線部12の線幅寸法と枠線部11の線幅寸法との差が大きいと、製造が困難なうえに、特性が安定しない虞があるからである。
【0020】
次に、一対のアンテナ素子1,1の形状が、図1に示す形状であって、アンテナ素子1を、厚さが2μmの銅蒸着膜をエッチングによりメッシュ状に加工した素材を使用し、枠線部11の線幅寸法を10μmとし、枠線部11のピッチ寸法Pを1110μmとし、かつ、輪郭線部12を有しているアンテナを、第1実施例とした。なお、輪郭線部12の線幅寸法は、10μmである。透明基板2は厚さ3mmのガラス板である。ここで、ガラス板の可視光線透過率は90.0%であり、アンテナ素子1の開口率は98.2%であり、ガラス板とアンテナ素子1の積層体の可視光線透過率は86.9%であった。
そして、第1実施例から輪郭線部12を省略したアンテナを第1比較例として、VSWR特性(入力特性)を比較した。
図5に示すように、第1実施例は、第1比較例に比べて、平均してVSWR(電圧定在波比)の値が良く、特に、地上波デジタルテレビの周波数帯(470〜710MHz)の間に於て、明らかに、第1実施例が優れている。
【0021】
次に、一対のアンテナ素子1,1が、図1に示す形状であって、アンテナ素子1を、厚さが2μmの銅蒸着膜をエッチングによりメッシュ状に加工した素材を使用し、枠線部11の線幅寸法を50μmとし、枠線部11のピッチ寸法Pを1110μmとし、かつ、輪郭線部12を有しているアンテナを、第2実施例とした。なお、輪郭線部12の線幅寸法は、50μmである。透明基板2が厚さ3mmのガラス板である。ここで、ガラス板の可視光線透過率は90.0%であり、アンテナ素子1の開口率は91.6%であり、ガラス板とアンテナ素子1の積層体の可視光線透過率は80.7%であった。
そして、第2実施例から輪郭線部12を省略したアンテナを第2比較例として、VSWR特性を比較した。
図6に示すように、第2実施例は、第2比較例に比べて、平均してVSWRの値が良く、特に、地上波デジタルテレビの周波数帯(470〜710MHz)の間に於て、明らかに、第2実施例が優れている。
【0022】
このように、輪郭線部12を設けた第1実施例及び第2実施例は、第1比較例及び第2比較例に比べて良好な結果が得られている。また、第1実施例及び第2実施例の結果は、アンテナ素子1を銅箔(非メッシュ状)で形成した場合のVSWR特性とほぼ同じであった。
【0023】
また、測定グラフを図示省略するが、650MHzにおける水平偏波及び垂直偏波の指向性・利得特性も、第1実施例及び第2実施例の方が良好な結果が得られ、優れていた。
【0024】
また、VSWR特性については、測定した周波数全域にわたって、本発明(実施例)のアンテナの特性が従来(比較例)よりも良いことが明らかである。なお、実施例は、VSWR特性全体が高周波側寄りとなる傾向があるが、これは、2枚のアンテナ素子1,1の間隔寸法や、外周長が比較例に比べて改善されているからだと考えられる。
また、指向性についても、実施例の方が最適な(理想の)放射パターンが得られ、利得についても平均で1dBi未満と優れていることが明らかになった。
即ち、形状や寸法が最適な値(設計仕様)と略一致し、所望の特性が得られていると言える。さらに、銅箔では得ることのできない透過性が得られるため、車両のフロントガラス等に貼着される地上デジタルテレビ用の広帯域アンテナとしての利用に効果的であると言える。
【0025】
また、図7や図8に示したように、従来のアンテナ素子80は、外周縁部や内周縁部(輪郭となる部分)に、枠線部81と枠線部81の交差部から突出する突出枠線端部88が形成されていた。
そのため、従来のアンテナ素子80は、この突出枠線端部88がメッシュ構造(格子形状)に比べて弱いため、アンテナ素子80に保護フィルム等を積層する工程や他の工程等の製造時、或いは、使用時において、損傷や位置(ピッチ)ズレが発生しやすいという問題があった。
しかし、本発明は、図2乃至図4に示したように、突出枠線端部18(枠線部11の端部)と突出枠線端部18(枠線部11の端部)が、輪郭線部12によって連結されることで、補強され、製造の際や使用の際の損傷や位置ズレが防止される。
【0026】
なお、地上デジタルテレビ用の広帯域アンテナとする場合に、VSWR特性の観点から、アンテナ素子1を、2μmの銅蒸着膜をエッチングによりメッシュ状に加工した素材で、枠線部11の線幅寸法(Wa)を、10μmとし、輪郭線部12の線幅寸法(Wb)を10μmとし、さらに、枠線部11同士のピッチ寸法Pを300μm〜3000μmとするのが望ましい。より好ましくは、450μm〜650μmである。
或いは、枠線部11の線幅寸法(Wa)を、50μmとし、輪郭線部12の線幅寸法(Wb)を50μmとし、さらに、枠線部11同士のピッチ寸法Pを400μm〜3000μmとするのが望ましい。より好ましくは、550μm〜1500μmである。
また、可視光線透過性の観点から、メッシュ部10の開口率が80%以上(より好ましくは95%以上)となるように、枠線部11の線幅寸法(Wa)を10μmとした場合は、枠線部11同士のピッチ寸法Pを100μm以上(より好ましくは450μm以上)とするのが望ましい。
また、枠線部11の線幅寸法(Wa)を50μmとした場合は、メッシュ部10の開口率が80%以上(より好ましくは95%以上)となるように、枠線部11同士のピッチ寸法Pを450μm以上(より好ましくは2000μm以上)とするのが望ましい。
【0027】
なお、本発明は設計変更可能であって、アンテナ素子1の形状は、図1に示した以外でもよく、自由であって、例えば、丸型や菱形や弯曲三角型やL字状やV字状とするも良い。透明基板2の形状も図1に示した以外の形状でもよく、自由であり、例えばアンテナ素子1と略同一形状とするも良い。メッシュ部10の網目は、図示した正方格子状以外のパターンでもよく、三角形状、長方形状、六角形状等の多角形状等自由である。また、本発明を電波遮蔽シールド材に適用させても良い。
【0028】
以上のように、本発明のアンテナは、透明基板2と、透明基板2に一体状に積層されたアンテナ素子1を備えたアンテナに於て、アンテナ素子1は、可視光線透過性を有するメッシュ部10と、該メッシュ部10の輪郭を縁取る輪郭線部12と、を有するので、優れた特性を得るための形状や寸法を、確実かつ正確に得られ、優れた特性と可視光線透過性を両立できる。また、製造する際に、品質(特性)が安定し、製造が容易にできる。
また、アンテナ素子1の実質的な外形(アンテナとして有効となる外形)が、一回り小さくなる(内方側へオフセットする)ようになって、実効的な(特性の有効な要素である)アンテナ素子1同士の間隔が広がる虞や、アンテナ素子1の素子長さや外周長が短くなるといった虞を防止でき、特性変化等の悪影響を防止できる。
【0029】
また、上記メッシュ部10の開口率を80%以上に設定したので、VSWR特性等の特性や品質を低下させることなく、良好な視認性を得ることができる。これによって、自動車のフロントガラス等視認性が望まれる箇所に貼り付けて使用するのに好適である。
【0030】
また、透明基板2とアンテナ素子1の積層体の可視光線の透過率を70%以上に設定したので、良好な視認性を得ることができる。これによって、自動車のフロントガラス等視認性が望まれる箇所に貼り付けて使用するのに好適である。
【符号の説明】
【0031】
1 アンテナ素子
2 透明基板
10 メッシュ部
12 輪郭線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板(2)と、該透明基板(2)に一体状に積層されたアンテナ素子(1)を備えたアンテナに於て、
上記アンテナ素子(1)は、可視光線透過性を有するメッシュ部(10)と、該メッシュ部(10)の輪郭を縁取る輪郭線部(12)と、を有することを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
上記メッシュ部(10)の開口率を80%以上に設定した請求項1記載のアンテナ。
【請求項3】
上記透明基板(2)と上記アンテナ素子(1)の積層体の可視光線の透過率を70%以上に設定した請求項1又は2記載のアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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