説明

インキタンク

【課題】金属製のインキタンクによる金属光沢表面の、見た目の高級感を維持、向上しつつ、インキ溶剤の透過性や強靭性を備えるとともに、インキ残量やインキ色の視認性を備えたインキタンクを提供する。
【解決手段】インキタンクの本体となる金属製筒部材の壁に、打ち抜きやレーザー加工などで窓穴を形成し、少なくともこの窓穴に透明性の合成樹脂板又はガラス材を嵌めたり、金属製の筒状部材全体を透明性の合成樹脂製又はガラス製の筒状部材で被覆するなどして、窓穴を透明性の合成樹脂又はガラス材で被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部にインキを収容するインキタンクの壁部材として、アルミ材やステンレス、真鍮などの金属製材料を採用するインキタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、万年筆やボールペンのインキタンク部材として、金属製の筒部材が使用されている。金属は、合成樹脂などに比べてインキ溶剤の透過性が格段に少なく、自身の強度や部材間の接合強度が高く、更に、製造時の寸法管理も容易であり、また、金属光沢のある外観や金属の質感、重量感などが高級感を醸しだして商品価値を高めるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−198582号公報
【特許文献2】特開2002−274092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金属材料は不透明な材料であり、インキ残量やインキ色を視認できないという問題があった。
透明性を有する合成樹脂の押し出し成型筒などを使用することも知られているが、合成樹脂材料は、インキ溶剤などの透過性が高く、また、強度が弱く、軽く、見た目も貧弱で、高級感が得られないものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は、金属製壁部材に形成した窓穴を、透明性を有する樹脂材又はガラスで被覆したインキタンクを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
アルミやステンレス、真鍮などの金属製材料に窓穴を形成したので、内部が視認可能であるとともに、インキ溶剤などの透過も最小限に抑えられる。
また、透明性を有する樹脂部分及びガラスと金属部分との、光の反射率、透過率、屈折率などの違いにより、光が乱反射的に反射して、金属性の光沢が強調され、金属だけ、樹脂だけよりもさらなる高級感を付与できる。
更に、透明樹脂及びガラス部のインキ側の面を平面にとすることで、外側から見たときのインキ残量がレンズ効果で拡大され更に視認性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一例を示す外観図。
【図2】図1の縦断面図。
【図3】図2のA−A’線横断面矢視図。
【図4】他の一例を示す図2に相当する縦断面図。
【図5】図4のB−B’線横断面矢視図。
【図6】更に、他の一例を示す縦断面図。
【図7】図6のC−C’線横断面矢視図。
【図8】他の一例を示す図3相当図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
インキタンクとする金属材料は、一般的な金属材料、合金などが使用できる。たとえば、アルミ、ステンレス、真鍮、黄銅などである。また、これら金属材料に、透明性または半透明な樹脂材料のコーティングを施してもよいし、錆止めなどの一般的な表面処理を施
すことも可能である。もちろん、表面に各種印刷を施したり、刻印による文字や模様などの表示、装飾を施すこともできる。
【0009】
前述の金属材料を、インキタンクとしての筒形に形成する方法としては、円柱などの材料を切削して形成する方法、段階的な圧延加工を施す方法、板材を丸めてたり折り曲げるなどして筒状にする方法などが採用できる。
ここで、窓穴を形成する方法としては、切削や打ち抜きなどが採用できるが、板状部材を丸めるなどした時の端を隙間として横断面C字型やコの字型のパイプとすることもできる。
【0010】
窓穴を被覆する透明性を有する樹脂材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン12、ナイロン6、非晶性ナイロン、微結晶性ナイロン、半芳香族性ナイロン、脂肪酸ナイロン、ポリアクリロニトリル、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートのポリマーアロイ、などが挙げられ、内面に、ガス透過性やインキ溶剤との反応性などを考慮した不活性でガス非透過性の高い層を形成したものなどが挙げられる。
また、他の材料としてガラスも使用でき、フロートガラス、強化ガラス、複層ガラス、合わせガラス、合わせ複層ガラスなどが挙げられる。
【0011】
また、金属製の壁部材に形成した窓穴を被覆する方法としては、インキタンクの内側からの被覆でも外側からの被覆でも構わない。金属製のパイプ材の内壁に接触させて前述の透明性を有する樹脂材料によるパイプ材を収容させたり、逆に、樹脂性のパイプ材の内側に金属製のパイプ材を収容させることもできる。この際に、窓穴全体を覆っていれば、金属製壁部材の内面全体や外面全体を覆う必要はないが、金属筒の外面を樹脂製の透明パイプで覆うと、樹脂の乱反射や屈折率の変化や形状による光の反射方向による視覚効果がある。また、透明性樹脂中にラメやアルミフレークなど、反射性の粉を少量分散させるなどして輝度感を得るなど、装飾的なことを施すことも容易にできる。金属筒の内側に樹脂製の筒を配置する場合には、窓の位置のみに配置するよりも全体的に被覆させるようにした方が、挿入などの設置作業が行いやすい。いずれにしても、窓穴部分を通じて、インキタンクの内外が液、気体連通しないようにすることが肝要である。圧入状態でも満足するが、ゴムや合成樹脂、接着剤などのパッキン材を介在させることもできる。透明性合成樹脂の熱や溶剤による溶着、融着であってもよい。
【0012】
インキ吐出口を有する部材との接続は、直接、又は、接続部材を介してなすことができる。インキ吐出口を有する部材が、金属製のボールペンチップであれば、圧入や接着剤による接合が可能である。また、後部を樹脂などの尾栓で密封したり、インキ漏れ防止することもできる。この際、尾栓に内圧調整用の空気抜け穴を形成することもできる。この空気抜け穴は、インキ漏れを抑制するために直感状ではなく、曲路となっていることが好ましい。
インキ吐出口を有する部材としては、ボールペンチップのほかに、繊維収束体ペン先、連通孔を有する合成樹脂性ペン先、筆穂、刷毛、ウレタンペン先、弁付塗布具、プリンタヘッドなどとすることができ、金属製、樹脂性の介在リングなどを嵌めることもできる。
【0013】
内部に収容するインキとしては、水性インキ、油性インキ、ゲルインキ、顔料インキ、染料インキ、修正液、墨汁、絵の具など様々なインキを収容させることができる。それぞれのインキと、金属材料や樹脂材料との反応性、膨潤性などを考慮する必要があるが、適宜表面処理剤や塗布剤にて対応することも可能である。
【0014】
このようなインキの界面に、インキ消費に伴って移動するインキ界面に追従して移動するインキフォロワー部材を配置することもできる。このインキフォロワー部材は、インキ色と異なる色であれば、窓穴からのインキ残量の視認性も向上するし、何らかのメッセージなど文字を配置することもできる。たとえば、赤や黄などの有彩色のインキに対して、白や無色透明や黒色のインキフォロワー部材を配置したりすることもできる。インキフォロワー部材としては、ポリブテンやαオレフィン、シリコンオイル、鉱油などの高粘度流体やそれをゲル化したものや、ゴムなどの弾性材料、プラスチックなどとすることができ、高粘度流体やそのゲル化物の形状安定のために合成樹脂の筒体や管、棒状体を浸漬または接触させたものとすることもできる。
【実施例】
【0015】
図面に基づいて一例について説明する。
図1〜図3に示した一例は、アルミ管などの金属筒1の先端を絞り加工して縮径部とした先端にボールペンチップペン先2を圧入し、後端開口部に合成樹脂性の尾栓3を嵌めたリフィルである。尾栓3には、インキタンク内外の通気穴3aが形成されている。
これだけでも筆記具として機能するが、外装体(図示せず)内に装置されて使用されることを前提としている。
内部には、水性インキ4とインキの界面に接触してインキの逆流防止用の高粘度流体5と、この高粘度流体に浸漬させたフロート6を収容している。
【0016】
金属筒1の側部には、横断面対称位置に窓穴7が2個配置されている。窓穴7には、それぞれ透明性を有する合成樹脂板8が嵌め込まれている(図2、図3参照)。
窓穴7は、パイプ部材内に芯金(図示せず)を挿入した状態でプレスなどで打ち抜いたり、レーザー加工などで形成することができる。
合成樹脂板8は、曲面状に形成されており、曲面による光の屈折により内部を拡大して観察できるレンズ効果を備えている。
また、窓穴を対称位置に配置したので、光の透過による視認性が向上し、内部のインキの色を視認しやすい。
【0017】
図4、図5に他の一例を示す。前述の図2、図3と同様な位置での縦断面図と横断面図を想定している。
インキタンク本体となる金属筒1は、金属板を丸めて筒状としたC字型パイプであり、開いた口を窓穴7とするものである。前述の一例と同様に先部分は縮径されるが、ここではつなぎ部分は溶接され、同様にボールペンチップペン先2が圧入固定されている。
金属筒1の外部には透明な合成樹脂筒9が被覆している。
窓穴部分のみではなく、全周を被覆することにより、シームレスな被覆状態となり、インキ漏れや乾燥を抑制しやすくなると共に、合成樹脂に対する光の屈折や乱反射によって金属筒外面の金属光沢をより輝度感豊かに感じることができるものである。
【0018】
図6、図7に更に他の一例を示す。
前述の図4、図5と同様の縦断面、横断面(C−C’線断面矢視図)で示してある。
金属筒1の後端から前部分に達する切り欠き部を形成し、窓穴7とする。窓穴7を被覆する合成樹脂筒9は、この窓穴に嵌る凸部9aを有しており、金属筒1の後端からこれを挿入することによって、金属筒1の内壁を覆いつつ、窓穴7を密閉する。金属筒1の後端に嵌める尾栓3にて、金属筒1と合成樹脂筒9とを固定している。
【0019】
更に、図8に他の一例を示す。
合成樹脂板8は、インキ側の面が平面で外側が凸曲面状に形成されており、曲面による光の屈折により内部を拡大して観察できるレンズ効果を備えている。
【符号の説明】
【0020】
1 金属筒
2 ペン先
3 尾栓
3a 通気穴
4 水性インキ
5 高粘度流体
6 フロート
7 窓穴
8 合成樹脂板
9 合成樹脂筒
9a 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製壁部材に形成した窓穴を、透明性を有する樹脂材又はガラス材で被覆したインキタンク。
【請求項2】
金属製壁部材としての筒部材の内側に、前記透明性を有する樹脂材又はガラス材による筒部材を内被させた請求項1に記載のインキタンク。
【請求項3】
金属製壁部材としての筒部材の外側に、前記透明性を有する樹脂材又はガラス材による筒部材を外被させた請求項1または請求項2に記載のインキタンク。
【請求項4】
内部に収容するインキの界面に、インキ色と異なるインキフォロワー部材を配置した請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインキタンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−236407(P2012−236407A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−82694(P2012−82694)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】