説明

インクジェット用インク及び該インクから得られる硬化膜

【課題】保存安定性に優れ、安定した吐出が可能で、その硬化膜がレジスト用でレジスト液に対する耐性および剥離液(アルカリ性水溶液)に対する剥離性を有する、インクジェット用インクを提供すること。
【解決手段】(a)で表わされる単官能(メタ)アクリレート(A)と、(b)で表わされる化合物(B)と、光重合開始剤(C)とを含むインクジェット用インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子、EL表示素子、プリント配線基板等を製造するために好適に用いられるインクジェット用インクに関する。さらに本発明は、該インクジェット用インクから得られる硬化膜(パターン化された硬化膜を含む)、該硬化膜を利用した電子回路基板の製造方法、該電子回路基板を有する電子部品および表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィ法に比べて、インクジェット法によるパターン形成は工程が簡単になる上に、材料使用量の削減も期待できるので、電子機器に使用されるプリント配線板等の製造にインクジェット法を用いることが提案されている(たとえば、WO2004−099272号パンフレット(特許文献1)、特開2005−68280号公報(特許文献2)、特開2008−50601号公報(特許文献3)、特開平9−183929号公報(特許文献4)および特開2008−163206号公報(特許文献5)を参照)。
【0003】
近年、電子機器の小型化が進み、軽量かつフレキシブルなプリント配線板を用いた電子回路基板が多く用いられている。このような電子回路基板は、たとえば、エッチングレジストを利用して、所定の回路パターンをなす金属配線部を形成し、その後にめっきレジストによるめっきパターン作製の工程を経て作製されている。
【0004】
これらの工程をインクジェット法により実施する際、インクジェット用インクには、保存安定性および安定したインク吐出性が要求される。また、インクジェット用インクを硬化させて形成された硬化膜には各インク用途により、さまざまな性能が要求される。
【0005】
たとえば、エッチングレジスト用として形成されたインクジェット用インクの硬化膜については、金属エッチング液に対する耐性が要求され、さらに剥離液(アルカリ性水溶液)に対する剥離性(剥離液にさらされることにより、硬化膜が容易に剥離または溶解する性質)が要求される。
【0006】
また、めっきレジスト用として形成されたインクジェット用インクの硬化膜については、めっき液に対する耐性が要求され、さらに剥離液(アルカリ性水溶液)に対する剥離性が要求される。
【0007】
しかしながら、従来のインクジェット用インクの硬化膜は、上記性能のいずれかひとつ、又は複数が不十分であるために、実用には適していないものばかりである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2004−099272号パンフレット
【特許文献2】特開2005−68280号公報
【特許文献3】特開2008−50601号公報
【特許文献4】特開平9−183929号公報
【特許文献5】特開2008−163206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の状況の下、保存安定性に優れ、安定した吐出が可能なインクジェット用インクが求められている。そして前記インクジェット用インクは、硬化させて硬化膜としたときに
、たとえばエッチングレジスト用では金属エッチング液に対する耐性および剥離液(アルカリ性水溶液)に対する剥離性を有し、まためっきレジスト用ではめっき液に対する耐性および剥離液(アルカリ性水溶液)に対する剥離性を有することが求められている。
【0010】
本発明は、上記の要求を満たすインクジェット用インク等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、インクジェット用インクに、特定構造の単官能(メタ)アクリレートおよび特定構造の化合物を含有させると、上記課題を解決することができることを見出し、この知見に基づいて、特定構造の単官能(メタ)アクリレート(A)と、特定構造の化合物(B)と、光重合開始剤(C)とを含むインクジェット用インクに関する本発明を完成した。本発明は、以下のようなインクジェット用インク、インクジェット用インクから得られる硬化膜及びその硬化膜を使用した電子回路基板の製造方法等を提供する。
【0012】
[1]下記一般式(a)で表わされる単官能(メタ)アクリレート(A)と、下記一般式(b)で表わされる化合物(B)と、光重合開始剤(C)とを含むインクジェット用インク:
【0013】
【化1】

【0014】
(上記式(a)において、R4は水素又はメチルであり、R5はヒドロキシまたはアルコキシを有していてもよい炭素数2〜13の有機基であり、R6はヒドロキシ、アルコキシま
たは炭素数1〜10のアルキルであり、該アルキルはヒドロキシまたはアルコキシを有していてもよく、oは1〜30の整数であり、pは0〜5の整数である。);
【0015】
【化2】

【0016】
(上記式(b)において、R1は水素又は炭素数1〜3のアルキルであり、R2は分岐構造を有していてもよい炭素数2〜13のアルキレンであり、R3は炭素数1〜10の2価の
炭化水素基であり、nは1〜30の整数である。)。
【0017】
[2]前記一般式(a)において、少なくとも一つのR5がヒドロキシを有することを
特徴とする[1]に記載のインクジェット用インク。
【0018】
[3]前記単官能(メタ)アクリレート(A)が、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートであることを特徴とする[1]または[2]に記載のインクジェット用インク。
【0019】
[4]前記一般式(b)において、R1は水素またはメチルであり、R2が分岐構造を有していてもよい炭素数2または3のアルキレンであり、R3が炭素数3〜8の脂環式基ま
たは芳香族基であり、nが1〜3の整数であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【0020】
[5]前記化合物(B)が、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび/またはテトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレートであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【0021】
[6]前記光重合開始剤(C)が、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、および1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(o−ベンゾイルオキシム)からな
る群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【0022】
[7]さらに、前記単官能(メタ)アクリレート(A)および化合物(B)以外の単官能(メタ)アクリレート(D)を含むことを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【0023】
[8][1]〜[7]のいずれかに記載のインクジェット用インクを硬化させて得られる硬化膜。
【0024】
[9]基板上に、[8]に記載の硬化膜を利用して金属配線パターンを形成する工程を有することを特徴とする電子回路基板の製造方法。
【0025】
[10][9]に記載の電子回路基板の製造方法で製造された電子回路基板を有する電子部品。
【0026】
[11][9]に記載の電子回路基板の製造方法で製造された電子回路基板又は[10]に記載の電子部品を有する表示素子。
【発明の効果】
【0027】
本発明のインクジェット用インクは、インクの保存安定性に優れ、安定した吐出が可能である。また、このインクジェット用インクから得られる硬化膜は、金属エッチング液に対する耐性や剥離液(アルカリ性水溶液)に対する剥離性に優れ、さらに、その硬化膜は、めっき液に対する耐性や剥離液(アルカリ性水溶液)に対する剥離性に優れている。
【0028】
さらに、本発明のインクジェット用インクを用いることにより、電子回路基板の製造における硬化膜の形成にかかる手間や時間を短縮することができ、エッチングレジストといった消耗品の消費も削減できる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[1.本発明のインクジェット用インク]
本発明のインクジェット用インク(以下単に「本発明のインク」ともいう)は、下記一般式(a)で表わされる単官能(メタ)アクリレート(A)と、下記一般式(b)で表わされる化合物(B)と、光重合開始剤(C)とを含むインクジェット用インクである。
【0030】
【化3】

【0031】
【化4】

【0032】
本発明のインクは、無色であっても有色であってもよい。
【0033】
前記「(メタ)アクリレート」は本明細書において、アクリレートおよびメタクリレートの両者または一方を示すために用いられる。また、前記「単官能」とは、化合物1分子中に存在する(メタ)アクリル構造が一つであることを示し、化合物中の官能基が一つであるということを指しているのではない。
【0034】
また、本発明のインクは、上記(A)〜(C)成分の他に、任意に、単官能(メタ)アクリレート(A)および化合物(B)以外の単官能(メタ)アクリレート(D)を含むことができる。また、所望により、多官能のラジカル重合性モノマー、溶媒、添加剤、重合禁止剤および着色剤等をさらに含むことができる。
【0035】
<1.1 (A)一般式(a)で表わされる単官能(メタ)アクリレート>
上記一般式(a)で表わされる単官能(メタ)アクリレート(A)(以下単に単官能(メタ)アクリレート(A)ともいう)は、本発明のインクの吐出安定性、さらに、後述する化合物(B)とともに、前記インクから得られる硬化膜のエッチング液に対する耐性及びめっき液に対する耐性(以下「耐めっき性」ともいう)を高めるために使用される。
【0036】
一般式(a)を以下に再度示す。
【0037】
【化5】

【0038】
上記式において、R4は水素又はメチルであり、R5はヒドロキシまたはアルコキシを有していてもよい炭素数2〜13の2価の有機基であり、R6はヒドロキシ、アルコキシまた
は炭素数1〜10のアルキルであり、該アルキルはヒドロキシまたはアルコキシを有していてもよく、oは1〜30の整数であり、pは0〜5の整数である。oが2以上の場合は、複数存在するR5は同一でも異なっていてもよい。またpが2以上の場合は、複数存在
するR6は同一でも異なっていてもよい。
【0039】
本発明のインクから得られる硬化膜の耐めっき性およびエッチング液に対する耐性の観点から、R5は好ましくはヒドロキシまたはアルコキシを有していてもよい炭素数2〜1
3のアルキレンであり、oは好ましくは1〜4の整数であり、pは好ましくは0である。また同様の観点から、pが1以上の場合には、R6は好ましくはノニル、オクチル、ヘキ
シル、エトキシ、またはメトキシである。
【0040】
またインクジェット用インクとしたときのノズルからの吐出安定性の観点から、R5
好ましくはヒドロキシまたはアルコキシを有し、より好ましくはR5はヒドロキシを有す
る。ここで、oが2以上の場合は、複数存在するR5のうち、少なくとも一つがヒドロキ
シを有すればよい。前記アルコキシとしては、炭素数1〜10のアルコキシが挙げられる。
【0041】
またR5は好ましくは2−ヒドロキシプロピレンまたは2−ヒドロキシエチルプロピレ
ンであり、より好ましくは2−ヒドロキシプロピレンである。
【0042】
単官能(メタ)アクリレート(A)の例としては、アルコキシ化フェノール(メタ)アクリレート(上記一般式(a)において、R4が水素又はメチルであり、R5が炭素数2〜13のアルキレンであり、oが1〜30の整数であり、pが0である化合物)、アルコキシ化ノニルフェノール(メタ)アクリレート(R4が水素又はメチルであり、R5が炭素数2〜13のアルキレンであり、R6がノニルであり、oが1〜30の整数であり、pが1
である化合物)、アルコキシ化2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート(上記一般式(a)において、R4が水素又はメチルであり、R5が2−ヒドロキシプロピレンであり、oが1〜30の整数であり、pが0である化合物)、およびアルコキシ化2−ヒドロキシ−3−ノニルフェノキシプロピル(メタ)アクリレート(上記一般式(a)において、R4が水素又はメチルであり、R5が2−ヒドロキシプロピレンであり、R6がノニルであり、oが1〜30の整数であり、pが1である化合物)が挙げられる。
【0043】
単官能(メタ)アクリレート(A)のより具体的な例としては、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート(R4が水素又はメチルであり、R5がエチレンであり、oが1であり、pが0である化合物)、エトキシ化ノニルフェノール(メタ)アクリレート(R4
水素又はメチルであり、R5がエチレンであり、R6がノニルであり、oが1であり、pが1である化合物)、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート(R4が水素又はメチルであり、R5が2−ヒドロキシプロピレンであり、oが1であり、pが0である化合物)および2−ヒドロキシ−3−ノニルフェノキシプロピル(メタ)アクリレート(R4が水素又はメチルであり、R5が2−ヒドロキシプロピレンであり、R6がノ
ニルであり、oが1であり、pが1である化合物)が挙げられる。
【0044】
これらの中でも、インクジェット用インクとしたときのノズルからの吐出安定性、耐めっき性およびエッチング液に対する耐性の観点から2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0045】
このような単官能(メタ)アクリレート(A)は公知の方法で製造することができ、また市販もされている。たとえば、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートは東亜合成(株)のM−5700(商品名)として市販されている。
【0046】
単官能(メタ)アクリレート(A)は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0047】
本発明のインク中に単官能(メタ)アクリレート(A)が1〜70重量%含まれると、インクのジェッティング時、ノズルからのインクの吐出安定性が特に良好になり、またそのインクから得られる硬化膜の耐めっき性およびエッチング液に対する耐性が良好になるので好ましく、1〜60重量%含まれることがより好ましく、1〜50重量%含まれることがさらに好ましい。
【0048】
<1.2 (B)一般式(b)で表わされる化合物>
上記化合物(B)は、上記一般式(b)で表わされる化合物であって、本発明のインクジェット用インクから得られる硬化膜のアルカリ溶解性を高めることで剥離液によって容易に剥離できるようにするため、さらに、前記単官能(メタ)アクリレート(A)とともに、前記インクから得られる硬化膜のエッチング液に対する耐性及びメッキ液に対する耐性を高めるために使用される。上記一般式(b)を以下に再度示す。
【0049】
【化6】

【0050】
上記式において、R1は水素または炭素数1〜3のアルキルであり、R2は分岐構造を有していてもよい炭素数2〜13のアルキレンであり、R3は炭素数1〜10の2価の炭化水
素基であり、nは1〜30の整数である。なお、上記式から明らかなように、化合物(B)は、R1が水素またはメチルである場合には、単官能(メタ)アクリレートである。
【0051】
上記式において、アルカリ性水溶液に対する剥離性の観点からは、好ましくはR1が水
素またはメチルであり、R2が分岐構造を有していてもよい炭素数2または3のアルキレ
ンであり、R3が炭素数3〜8の脂環式基または芳香族基であり、nが1〜3の整数であ
る。なお、前記芳香族基の炭素数は、通常6〜8である。
【0052】
化合物(B)の具体例としては、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよびテトラヒドロフタル酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0053】
これらの中でも、本発明のインクに使用した場合に、ノズルからのインクの吐出安定性や、該インクから得られた硬化膜のアルカリ性水溶液に対する剥離性の観点から、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(上記一般式(b)中、R1が水素または
メチルであり、R2がエチレンであり、R3がフェニレンであり、nが1である化合物)およびテトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(R1が水素また
はメチルであり、R2がエチレンであり、R3がシクロヘキシレンであり、nが1である化合物)が好ましい。
【0054】
このような化合物(B)は公知の方法により製造が可能であり、また市販もされている。たとえば、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレートは新中村化学工業(株)製のCB−1(商品名)として、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチルアクリレートは新中村化学工業(株)製のCB−3(商品名)として市販されている。
【0055】
化合物(B)は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0056】
本発明のインク中に化合物(B)が1〜70重量%含まれると、該インクから得られる硬化膜のめっき液に対する耐性、エッチング液に対する耐性およびアルカリ性水溶液に対する剥離性(アルカリ性水溶液にさらされることで容易に剥離または溶解する性質)が特に良好であるので好ましく、1〜60重量%含まれることがより好ましく、1〜50重量%含まれることがさらに好ましい。
【0057】
<1.3 (C)光重合開始剤>
光重合開始剤(C)は、紫外線あるいは可視光線の照射によりラジカルを発生することのできる化合物であれば特に限定されない。
【0058】
光重合開始剤(C)の具体例としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4’−イソプロピルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4’−トリ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジ(メトキシカルボニル)−4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’−ジ(メトキシカルボニル)−4,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジ(メトキシカルボニル)−3,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)
フェニル]−,2−(o−ベンゾイルオキシム)、2−(4’−メトキシスチリル)−4
,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2’−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4’−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2−(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、3−(2−メチル−2−ジメチルアミノプロピ
オニル)カルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドおよび2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドを挙げることができる。
【0059】
中でもビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(チバジャパン(株)製のIRGACURE 819(商品名))又は2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(チバジャパン(株)製のDAROCUR TPO(商品名))、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバジャパン(株)製のIRGACURE 184(商品名))、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1(チバジャパン(株)製のIRGACURE 369(商品名))、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)
フェニル]−,2−(o−ベンゾイルオキシム)(チバジャパン(株)製のIRGACURE OXE01(商品名))は、本発明のインク中に含まれる他の成分との相溶性が高く、得られるインクが少量の紫外線照射で硬化するので好ましい。
【0060】
光重合開始剤(C)は1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0061】
光重合開始剤(C)は、本発明のインク中に0.2〜20重量%含まれると、インクが紫外線に対して特に高感度となるので好ましく、1〜20重量%含まれることがより好ましく、2〜15重量%含まれることがさらに好ましい。
【0062】
<1.4 (D)単官能(メタ)アクリレート(A)および化合物(B)以外の単官能(メタ)アクリレート>
本発明のインクジェット用インクの粘度調整をするために、単官能(メタ)アクリレート(A)および化合物(B)以外の単官能(メタ)アクリレート(D)を本発明のインクに含有させてもよい。
【0063】
前記「単官能」とは、単官能(メタ)アクリレート(A)の説明で述べたのと同様、化合物1分子中に(メタ)アクリル構造が一つ存在するという意味である。
【0064】
単官能(メタ)アクリレート(D)としては、(メタ)アクリル酸;エポキシ、オキセタニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、フリルなどの環構造を有する(メタ)アクリレート;ヒドロキシ、アルコキシおよび/またはハロゲンで置換されていてもよいアルキルを有する(メタ)アクリレート;アルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレートと縮合したコハク酸のモノエステル;アルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレートと縮合したマレイン酸のモノエステルなどが挙げられる。
【0065】
単官能(メタ)アクリレート(D)の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、2−フェニル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、2−トリフロロメチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、4−トリフロロメチル−2−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、iso−
ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デ
カニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、マレイン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、又は1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレ―ト、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレートおよび2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0066】
これらの中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートおよびテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートは、本発明のインク中に含まれる他の成分との相溶性が高く、得られるインクが低粘度となるので好ましい。
【0067】
単官能(メタ)アクリレート(D)は1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0068】
また単官能(メタ)アクリレート(D)は、本発明のインク中に1〜50重量%含まれると、インクジェット用インクとしたとき、吐出するのに特に適した粘度となるので好ましく、5〜40重量%含まれることがより好ましく、10〜30重量%含まれることがさらに好ましい。
【0069】
<1.5 その他の成分>
本発明のインクジェット用インクは、保存安定性や光に対する感度、本発明のインクから形成される硬化膜の耐久性、膜面均一性および硬化密度、インクの吐出特性ならびにインクの塗布性等を向上させるために、多官能のラジカル重合性モノマー(E)、溶媒(F)、重合禁止剤(G)、界面活性剤(H)、着色剤(I)および帯電防止剤(J)等を含むことができる。これらの成分は1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0070】
なお、本発明のインク中の水分量は特に限定されないが、10,000ppm以下が好ましく、5,000ppm以下がさらに好ましい。このような水分量であると、本発明のインクの粘度変化が少なく保存安定性に優れるので好ましい。
【0071】
(1.5.1 (E)多官能のラジカル重合性モノマー)
本発明のインクジェット用インクは、光感度および硬化膜の架橋密度を高めるために、多官能のラジカル重合性モノマー(E)を含んでもよい。「多官能」とは、エチレン性二重結合が2つ以上あることを指し、好ましくは(メタ)アクリル構造が2つ以上あることを指す。
【0072】
多官能のラジカル重合性モノマー(E)の具体例としては、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレー
ト、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エチレンオキシド変性ジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、ノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエポキシ(メタ)アクリレートおよびレゾルシノールエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0073】
これらの中でも、ビスフェノールF型エチレンオキシド変性ジアクリレート(東亜合成(株)製のM208(商品名))および/またはビスフェノールFエポキシアクリレート(日本ユピカ(株)製のネオポール 8477(商品名))を本発明のインクが含有していると、該インクから得られる硬化膜の耐薬品性が高くなるので、好ましい。
【0074】
多官能のラジカル重合性モノマー(E)は、本発明のインク中に5〜70重量%含まれると、該インクが光に対して特に高感度となり、また該インクから得られる硬化膜のめっき液に対する耐性がより高くなるため好ましく、5〜60%重量%含まれることがより好ましく、10〜50重量%含まれることがさらに好ましい。
【0075】
(1.5.2 (F)溶媒)
本発明のインクジェット用インクは、インクの吐出特性を向上させるために溶媒(F)を含んでもよい。この溶媒(F)としては、溶媒以外の成分(成分(A)〜(C)および必要に応じて含有される(D)、(E)、(G)〜(J)など)を溶解するものであれば特に制限されないが、インクのジェッティング温度により、適宜選択される。ジェッティング(吐出)温度が室温(20〜25℃)である場合は、インクに含まれる溶媒の沸点は100℃以上であることが好ましい。室温でのインクジェット用インクの粘度が30mPa・s以上である場合には、ジェッティング温度を高くしてインクの粘度を下げ、インクを吐出(ジェッティング)しやすくすることが好ましいが、この場合は、ジェッティング温度を高くすることによって溶媒が揮発してインクの粘度が増加し、インクジェットヘッドノズルにインクがつまることのないようにするため、インクに含まれる溶媒(F)の沸点は200℃以上であることが好ましい。
【0076】
沸点が100℃以上である溶媒の具体例としては、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2
−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トルエン、キシレン、アニソール、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンおよびジメチルイミダゾリジノンが挙げられる。これらの溶媒中の水分量は、本発明のインク中の水分量が前述の範囲になるように調整されていることが望ましい。
【0077】
上記の溶媒の中でも、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテルまたはジエチレングリコールメチルエチルエーテルを用いると、本発明のインクの吐出が安定するので好ましい。
【0078】
溶媒(F)は、本発明のインク中に5〜50重量%含まれると、インクジェット用インクとした場合の吐出が安定するので好ましく、より好ましくは5〜20重量%である。
【0079】
さらに、本発明のインクの塗布性にはインクの表面張力が大きく影響するため、本発明のインクの表面張力を好ましくは20〜45mN/m、より好ましくは27〜42mN/m、さらに好ましくは30〜40mN/mに調整する。表面張力が20〜45mN/mの範囲であればインク吐出口におけるインクメニスカスが安定になり、インクの吐出は良好となる。
【0080】
本発明のインクが溶媒(F)を含まない場合には、本発明のインクの表面張力は通常上記の20〜45mN/mの範囲内になる。また本発明のインクが溶媒(F)を含む場合にも、本発明のインクの表面張力は通常上記範囲内になる。表面張力の大きな溶媒(例えば、γ−ブチロラクトン:43mN/m)及び表面張力の小さな溶媒(例えば、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル:24mN/m、あるいはエチレングリコールモノブチルエーテル:32mN/m)を混合して用いると、溶媒(F)の組成にしたがって本発明の表面張力を微調整することができる。
【0081】
(1.5.3 (G)重合禁止剤)
本発明のインクジェット用インクは、保存安定性を向上させるために重合禁止剤(G)を含んでもよい。重合禁止剤(G)の具体例としては、4−メトキシフェノール、ヒドロキノンおよびフェノチアジンを挙げることができる。これらの中でも、ジェッティング時にインクジェットヘッドを加熱した場合のインクの粘度変化(増加)を最小にする観点から、重合禁止剤(G)としてフェノチアジンを用いることが好ましい。
【0082】
重合禁止剤(G)は、本発明のインクの保存安定性と光に対する感度とを両立させるという観点から、本発明のインク中に0.01〜1重量%含まれることが好ましい。
【0083】
(1.5.4 (H)界面活性剤)
本発明のインクジェット用インクは、該インクから得られる硬化膜の膜面の均一性を向上させるために界面活性剤(H)を含んでもよい。界面活性剤(H)としては、シリコン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤等が用いられる。
【0084】
具体的には、Byk−300、Byk−306、Byk−335、Byk−310、Byk−341、Byk−344、又はByk−370(それぞれ商品名:ビック・ケミー(株)製)等のシリコン系界面活性剤;
Byk−354、Byk−358、又はByk−361(それぞれ商品名:ビック・ケミー(株)製)等のアクリル系界面活性剤;
DFX−18、フタージェント250、又はフタージェント251(それぞれ商品名:ネオス(株)製)、メガファックF−410、メガファックF−443、メガファックF−445、メガファックF−470、メガファックF−479、メガファックF−483、メガファックF−489(それぞれ商品名:大日本インキ(株)製)等のフッ素系界面活性剤を挙げることができる。
【0085】
界面活性剤(H)は、本発明のインク中に0.01重量%以上含まれると、該インクから得られる硬化膜の膜面均一性が向上するので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると、0.01〜1重量%含まれることが好ましい。
【0086】
(1.5.5 (I)着色剤)
本発明のインクジェット用インクは、染料または顔料等の着色剤(I)を含んでいてもよく、この場合、例えば、基板上に前記インクを塗布し、硬化させて得られる硬化膜の状態を検査する際に、基板と硬化膜との識別を容易にすることができる。着色剤(I)は、本発明のインク中に0.01〜10重量%程度、好ましくは0.1〜5重量%程度含まれてもよい。また、その他のインク原料との相溶性の観点から、着色剤(I)は染料であることが好ましい。
【0087】
(1.5.6 (J)帯電防止剤)
帯電防止剤(J)は、本発明のインクの帯電を防止するために使用するものである。帯電防止剤(J)としては、特に限定されるものではなく、公知の帯電防止剤を用いることができる。具体的には、酸化錫、酸化錫・酸化アンチモン複合酸化物、酸化錫・酸化インジウム複合酸化物等の金属酸化物や四級アンモニウム塩等が挙げられる。帯電防止剤(J)は、本発明のインク100重量部に対し0.01〜1重量部添加して用いられることが好ましい。
【0088】
<1.6 インクジェット用インクの調製方法>
本発明のインクジェット用インクは公知の混合方法により調製することができるが、必要な各原料成分を混合して得られた溶液を、ろ過することにより調製するのが好ましい。ろ過することにより、本発明のインク中に不溶物が残存し、それによってノズルの目詰ま
りが起こるのを防止できる。ろ過には、例えばフッ素樹脂製のメンブレンフィルター等が用いられる。
【0089】
<1.7 インクジェット用インクの配合割合>
本発明のインクジェット用インクにおいては、(A)成分、(B)成分および(D)成分の含有量が、光重合開始剤(C)を除く全インク組成の75重量%以上であることが、インクの粘度およびインクを保管したときの粘度安定性の点から好ましい。
【0090】
<1.8 インクジェット用インクの粘度>
インクジェット塗布装置で吐出する際の温度(好ましくは10〜120℃)における、本発明のインクジェット用インクのE型粘度計で測定した粘度は、1〜30mPa・sが好ましく、2〜25mPa・sであればさらに好ましく、3〜20mPa・sが特に好ましい。
【0091】
また、25℃における粘度が1〜500mPa・sであると、インクジェットヘッドからの塗出特性(ジェッティング精度等)が良好となるので好ましい。25℃における本発明のインクの粘度は、より好ましくは2〜300mPa・s、さらに好ましくは3〜200mPa・sである。
【0092】
なお、25℃における粘度が30mPa・sを超える場合は、インクジェットヘッドを加熱して吐出時のインクの粘度を下げることで、安定した吐出が可能になる。インクジェットヘッドを加熱してジェッティングを行う場合は、吐出温度(インクジェットヘッドの温度であり、好ましくは40〜120℃)におけるインクジェット用インクの粘度は1〜30mPa・sが好ましく、2〜25mPa・sであればさらに好ましく、3〜20mPa・sが特に好ましい。
【0093】
<1.9 インクジェット用インクの保存>
本発明のインクジェット用インクは、−20〜20℃で保存すると粘度変化が小さく、保存安定性が良好である。
【0094】
[2.インクジェット方法によるインクジェット用インクの塗布]
本発明のインクジェット用インクは、公知のインクジェット塗布方法を用いて塗布することができる。インクジェット塗布方法としては、例えば、インクに力学的エネルギーを作用させてインクをヘッドから吐出(塗布)させる方法(いわゆるピエゾ方式)、及び、インクに熱エネルギーを作用させてインクを塗布させる塗布方法(いわゆるバブルジェット(登録商標)方式)等がある。
【0095】
インクジェット塗布方法を用いることにより、インクジェット用インクを予め定められたパターン状に塗布することができる。これによって、必要な箇所だけにインクを塗布でき、フォトリソグラフィ法に比べて、コストの削減となる。
【0096】
本発明のインクジェット用インクを用いて塗布を行うのに好ましい塗布ユニットは、例えば、これらのインクを収容するインク収容部と、塗布ヘッドとを備えた塗布ユニットが挙げられる。塗布ユニットとしては、例えば、塗布信号に対応した熱エネルギーをインクに作用させ、前記エネルギーによりインク液滴を発生させながら、前記塗布信号に対応した塗布(描画)を行う塗布ユニットが挙げられる。
【0097】
塗布ヘッドとしては、例えば、金属及び/又は金属酸化物を含有する発熱部接液面を有するものが挙げられる。前記金属及び/又は金属酸化物の具体例としては、Ta、Zr、Ti、Ni、Al等の金属、及び、これらの金属の酸化物等が挙げられる。
【0098】
本発明のインクジェット用インクを用いて塗布を行うのに好ましい塗布装置としては、例えば、インクが収容されるインク収容部を有する塗布ヘッドの室内のインクに、塗布信号に対応したエネルギーを与え、前記エネルギーによりインク液滴を発生させながら、前記塗布信号に対応した塗布(描画)を行う装置が挙げられる。
【0099】
インクジェット塗布装置は、塗布ヘッドとインク収容部とが分離されているものに限らず、それらが分離不能に一体になったものを用いるものでもよい。また、インク収容部は、塗布ヘッドに対し分離可能又は分離不能に一体化されてキャリッジに搭載されるもののほか、装置の固定部位に設けられて、インク供給部材、例えばチューブを介して塗布ヘッドにインクを供給する形態のものでもよい。
【0100】
[3.硬化膜の形成]
本発明の硬化膜は、公知のインクジェット塗布方法を用いて本発明のインクジェット用インクを基板の表面に吐出した後に、そのインクに紫外線や可視光線等の光を照射して硬化させることで得られる。光が照射された部分のインクは、(A)、(B)および(D)成分、ならびに多官能のラジカル重合性モノマー(E)の重合により三次元化架橋体となって硬化し、インクの広がりを効果的に抑えることができる。
【0101】
したがって、本発明のインクを用いれば、高精細なパターンの描画が可能である。照射する光として紫外線を用いた場合には、照射する紫外線の量は、本発明のインクの組成に依存するが、ウシオ電機(株)製の受光器UVD−405PDを取り付けた積算光量計UIT−201で測定して、10〜1,000mJ/cm2程度が好ましく、10〜800
mJ/cm2程度がより好ましく、20〜500mJ/cm2程度がさらに好ましい。また、照射する紫外線の波長は、200〜390nmが好ましく、220〜390nmがより好ましく、250〜390nmがさらに好ましい。
【0102】
また、必要に応じて、光の照射により硬化した上記硬化膜をさらに加熱・焼成してもよく、特に、120〜250℃で10〜60分間加熱することが好ましく、150〜240℃で10〜60分間加熱することがより好ましく、180〜230℃で10〜60分間加熱することがさらに好ましい。なお、後述するが、本発明のインクの硬化膜をエッチングレジストまたはめっきレジストとして用いる場合には、加熱・焼成をすると硬化膜が基板等の被接着物から剥離しなくなることがあるため、通常加熱・焼成は行わない。
【0103】
上記本発明のインクが塗布される基板は、本発明のインクが塗布される対象となり得るものであれば特に限定されず、その形状は平板状に限られず、曲面状であってもよい。
【0104】
また、基板の材質は特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド等のプラスチックフィルム、セロハン、アセテート、金属箔、ポリイミドと金属箔の積層フィルム、目止め効果があるグラシン紙、パーチメント紙、あるいはポリエチレン、クレーバインダー、ポリビニルアルコール、でんぷん、カルボキシメチルセルロース(CMC)等で目止め処理した紙、ガラスを挙げることができる。
【0105】
これらの基板を構成する物質は、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、さらに、顔料、染料、酸化防止剤、劣化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤及び/又は電磁波防止剤等の添加剤を含んでもよい。また、基板の表面の一部には、基板と異なる材質の保護膜が形成されていてもよい。
【0106】
前記基板の用途も特に限定されないが、本発明のインクから得られる硬化膜はエッチング液に対する耐性、めっき液に対する耐性、アルカリ水溶液に対する剥離性および耐熱性に優れているため、基板表面に金属製の回路を有する電子回路基板等の製造に用いられることが好ましい。回路を形成する金属は、特に限定されるものではないが、金、銀、銅、アルミ又はITOが好ましい。
【0107】
基板の厚さは、特に限定されないが、通常10μm〜2mm程度であり、使用する目的により適宜調整されるが、15〜500μmが好ましく、20〜200μmがさらに好ましい。
【0108】
基板の硬化膜を形成する面には、必要により撥水処理、コロナ処理、プラズマ処理、ブラスト処理等の易接着処理を施したり、表面に易接着層やカラーフィルター用保護膜を設けたりしてもよい。
【0109】
このような基板に、本発明のインクジェット用インクをインクジェット装置により、所定の場所にだけ塗布し、硬化させることによって、所定のパターンの硬化膜を形成することができる。本発明の硬化膜はエッチングレジストやめっきレジストとして使用することができ、基板全面にレジスト組成物を塗布し、マスクを使用して特定の部分に光を照射し、現像してレジストを形成するフォトリソグラフィ法よりも、レジストの形成のためのコストの削減を図ることができる。
【0110】
特に電子回路基板では、金属配線パターン形成やめっきパターン形成、金属配線保護膜形成において、吐出性および保存安定性に優れた本発明のインクジェット用インクを、インクジェット装置により所定の回路部分にだけ塗布することで、効率的に各目的に応じた硬化膜を形成することができる。
【0111】
より具体的に説明すると、基板上に銅などの金属配線となる金属の膜を形成し、その上に所定のパターン状に本発明のインクをインクジェット装置により塗布し、光を照射してインクを硬化させる。得られた硬化膜をエッチングレジストとして利用して、エッチングを行う。エッチングの終了後、エッチングレジストを剥離液により剥離し、次にめっきをしない部分に本発明のインクを塗布し、光を照射してインクを硬化させる。得られた硬化膜をめっきレジストとして利用して、めっきを行う。めっき終了後、めっきレジストを剥離液により剥離し、さらに所定の工程を経ることで、電子回路基板が完成する。
【0112】
以上の操作において、本発明の硬化膜はエッチング液に対する耐性及びめっき液に対する耐性の両者を有しているため、エッチングレジストとしてもめっきレジストとしても使用することができる。すなわち、本発明の硬化膜は二つの部材としての機能を有し、二つの部材を供給するために一つの供給装置(インクジェット装置)を使用すればよく、また一つの供給装置で二つの部材を供給する際の、供給する部材を変更するときのインクジェットヘッドの洗浄等の操作も不要となる。この点においても、本発明は電子回路基板の製造コストの削減に寄与する。
【0113】
さらに、エッチングレジスト及びめっきレジストのパターンによっては、本発明のインクの一度の塗布によって、エッチングレジスト及びめっきレジストを形成することができることになり、製造工程の短縮につながる。
【0114】
本発明の硬化膜は耐熱性に優れているため、以上の操作で形成された金属配線上に本発明の硬化膜を形成すれば、該硬化膜は金属配線の保護膜として機能する。
【0115】
このようなさまざまな部材としての機能を果たすことができる本発明の硬化膜の厚みは特に限定されないが、通常1〜50μmである。
【0116】
上記のようにして本発明の硬化膜を用いて製造された電子回路基板にICチップ、コンデンサ、抵抗、ヒューズ等を実装することで、例えば、液晶表示素子用の電子部品を作成することができる。
【実施例】
【0117】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は重量部を意味するものとする。
【0118】
実施例及び比較例に使用した各成分は以下のとおりである。
【0119】
<(A)一般式(a)で表わされる単官能(メタ)アクリレート>
A1:2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(商品名「M−5700」、東亜合成(株)製)。
【0120】
<(B)一般式(b)で表わされる化合物>
B1:フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(商品名「CB−1」、新中村化学工業(株)製)
B2: テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(商品名「CB−3
」、新中村化学工業(株)製)。
【0121】
<(C)光重合開始剤>
C1:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(商品名「DAROCUR TPO」、チバジャパン(株)製)。
【0122】
<(D)単官能(メタ)アクリレート(A)および化合物(B)以外の単官能(メタ)アクリレート>
D1:2−ヒドロキシエチルメタクリレート(東京化成工業(株)製)
D2:シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(商品名「CHDMMA」、新中村化学工業(株)製)
D3:メトキシトリエチレングリコールアクリレート(商品名「NKエステルAM−30G」、新中村化学工業(株)製)。
【0123】
(実施例1〜5、比較例1〜5)
本実施例では、本発明に係るインクジェット用インクの硬化膜をエッチングレジスト用又はめっきレジスト用として形成した場合について検証する。下記表1に記載された割合(重量部)で各成分を配合し、混合・溶解してフッ素樹脂製メンブレンフィルター(0.2μm)で濾過し、各インクジェット用インクを調製した。
【0124】
なお、比較例1〜3は、主として、単官能(メタ)アクリレート(A)を含まない場合を検証する例であり、比較例4および5は、主として、化合物(B)を含まない場合(化合物(B)の代わりに、化合物(B)に該当しない(メタ)アクリレートを使用した場合ともいえる)を検証する例である。
【0125】
【表1】

【0126】
また、実施例1〜5及び比較例1〜5のインクジェット用インクには、重合禁止剤(G)として0.05重量部のフェノチアジン(重合禁止剤(G)を除くインクジェット用インクの重量を100重量部とする)を添加した。次に、各インクジェット用インクおよび硬化膜の特性の評価方法について説明する。
【0127】
(1)インクの粘度・保管による粘度の変化
各インクジェット用インクの25℃での粘度をE型粘度計(東機産業(株)製 VISCOMETER TV−22)で測定した。また、後述するインクジェットのヘッド温度である70℃における粘度も測定した。結果を下記表2に示す。
【0128】
また、各インクジェット用インクの一部(10g)を30mLのサンプル瓶に入れ、密栓をして、100℃で5時間保管した。そして、保管前のインクの粘度に対する保管後のインク粘度の変化率を調べた。インクの粘度はいずれも保管後に増加したが、粘度の変化率が10%未満である場合を「○」、10%以上である場合を「×」とした。結果を表2に示す。
【0129】
(2)安定した吐出時間の評価
各インクジェット用インクをインクジェットカートリッジに注入し、これをインクジェット装置(FUJIFILM Dimatix社製のDMP−2800)に装着し、10pl用のヘッドを用いて、吐出電圧(ピエゾ電圧)16V、ヘッド温度70℃、駆動周波数5kHzの条件下で吐出の様子を観察した。ジェッティング中に、インク滴下方向が垂直方向に吐出され、かつノズルからインクが滴下される際に本来画像記録に寄与するインク滴の他に微小液滴が発生する(すなわち、正確に一滴として吐出されない)サテライトという現象が発生しない状態を正常な吐出として、ジェッティング開始から正常に吐出を続ける時間を観察した。観察はジェッティング開始から20分間行い、安定吐出時間の最大値は20分とした。結果を表2に示す。
【0130】
<試験基板の作製>
各インクジェット用インクをインクジェットカートリッジに注入し、これをインクジェット装置(FUJIFILM Dimatix社製のDMP−2800)に装着し、以下の基板作製条件で、基板上にインクジェットプリンタにより各インクジェット用インクを塗布(描画)し、次いでUV照射装置((株)ジャテック製のJ−CURE1500)を用いて、塗布されたインクをUV硬化させて硬化膜が形成された試験基板を作製した。このようにして作製された試験基板を用いて、以下の(3)〜(5)に示す、硬化膜のエッチング液に対する耐性、剥離液(アルカリ性水溶液)に対する剥離性およびめっき液に対
する耐性を調べた。
【0131】
(基板作製条件)
基板:銅箔をポリイミド上に積層した基板(厚さ35μm)
[(東洋紡績(株)製)バイロフレックス(商品名)]
硬化膜の膜厚:30μm
吐出条件:上記(2)と同様の吐出条件
UV露光量:250mJ/cm2(測定波長365nm)
【0132】
(3)硬化膜のエッチング液に対する耐性の評価
硬化膜のエッチング液に対する耐性を評価するために、作製した試験基板を50℃の13%FeCl3水溶液に15分浸漬させた後に水洗を行い、硬化膜の表面状態を目視にて
判定した。基板からの剥離や変色が生じなかった場合を「○」、剥離や変色が生じた場合を「×」とした。結果を表2に示す。
【0133】
(4)硬化膜の剥離液(アルカリ性水溶液)に対する剥離性の評価
硬化膜の剥離液(アルカリ性水溶液)に対する剥離性を評価するために、作製した試験基板を50℃の8%NaOH水溶液に1分浸漬させた後に水洗を行い、硬化膜の剥離状態を目視にて判定した。硬化膜が完全に溶解もしくは剥離した場合を「○」、溶解も剥離もしなかった場合を「×」とした。結果を表2に示す。
【0134】
(5)硬化膜のめっき液に対する耐性の評価
硬化膜のめっき液に対する耐性を評価するために、作製した試験基板を60℃の無電解ニッケルめっき液(商品名:ニムデンNPR−4、Ni濃度4.5g/L、上村工業(株)製)に20分浸漬させて水洗を行い、続いて60℃の金ストライクめっき液(商品名:アシドストライク、日本高純度化学(株)製)に10分浸漬させて水洗を行い、続いて100℃の無電解金めっき液(商品名:ゴブライトTAM−55、Au濃度1g/L、上村工業(株)製)に30分浸漬させて水洗することでめっき被膜を形成した。この工程中においてめっき液の硬化膜内部への浸入や硬化膜の剥離が生じなかった場合を「○」、めっき液の硬化膜内部への浸入や硬化膜の剥離が生じた場合を「×」とした。結果を表2に示す。
【0135】
【表2】

【0136】
表2より、実施例1〜5のインクジェット用インク(本発明のインク)は保存安定性に
優れ、さらに、該インクの硬化膜はエッチング液及びめっき液に対する耐性に優れ、しかも剥離液に対する剥離性にも優れているので、前記硬化膜はエッチングレジスト及びめっきレジストとして有用であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明のインクジェット用インクを硬化させて得られる硬化膜は、たとえば、電子回路基板の製造における金属パターン配線形成用エッチングレジスト、あるいはめっきレジスト、あるいは配線の保護膜に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(a)で表わされる単官能(メタ)アクリレート(A)と、下記一般式(b)で表わされる化合物(B)と、光重合開始剤(C)とを含むインクジェット用インク:
【化1】

(上記式(a)において、R4は水素又はメチルであり、R5はヒドロキシまたはアルコキシを有していてもよい炭素数2〜13の有機基であり、R6はヒドロキシ、アルコキシま
たは炭素数1〜10のアルキルであり、該アルキルはヒドロキシまたはアルコキシを有していてもよく、oは1〜30の整数であり、pは0〜5の整数である。);
【化2】

(上記式(b)において、R1は水素又は炭素数1〜3のアルキルであり、R2は分岐構造を有していてもよい炭素数2〜13のアルキレンであり、R3は炭素数1〜10の2価の
炭化水素基であり、nは1〜30の整数である。)。
【請求項2】
前記一般式(a)において、少なくとも一つのR5がヒドロキシを有することを特徴と
する請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項3】
前記単官能(メタ)アクリレート(A)が、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット用インク。
【請求項4】
前記一般式(b)において、R1が水素またはメチルであり、R2が分岐構造を有していてもよい炭素数2または3のアルキレンであり、R3が炭素数3〜8の脂環式基または芳
香族基であり、nが1〜3の整数であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項5】
前記化合物(B)が、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび/またはテトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項6】
前記光重合開始剤(C)が、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、および1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(o−ベンゾイルオキシム)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項7】
さらに、前記単官能(メタ)アクリレート(A)および化合物(B)以外の単官能(メタ)アクリレート(D)を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット用インクを硬化させて得られる硬化膜。
【請求項9】
基板上に、請求項8に記載の硬化膜を利用して金属配線パターンを形成する工程を有することを特徴とする電子回路基板の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の電子回路基板の製造方法で製造された電子回路基板を有する電子部品。
【請求項11】
請求項9に記載の電子回路基板の製造方法で製造された電子回路基板又は請求項10に記載の電子部品を有する表示素子。

【公開番号】特開2011−1461(P2011−1461A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145516(P2009−145516)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】