説明

インクジェット用インク

【課題】耐エッチング性又は耐めっき性とアルカリ剥離性などとのバランスのとれたレジスト膜を形成することのできるインクジェット用インクが求められている。
【解決手段】下記式(1)で表され、重量平均分子量が1,000から8,000である樹脂(A)を含むインクジェット用インクにより上記課題を解決する。



(式(1)中、Xはラジカル重合性モノマー由来の構成単位であり、mは1以上の整数、nは0〜100の数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ水溶液で剥離可能なインクジェット用インクに関し、更に詳しくはプリント配線板などの電子回路基板作製用レジストとして使用可能な耐エッチング性を有するエッチングレジスト、又は、耐めっき性を有するめっきレジストなどに適したインクジェット用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板、フレキシブル配線板、半導体パッケージ基板などの電子回路基板の製造には、フォトレジストを用いたフォトリソグラフィー法が行われてきた。このフォトリソグラフィー法による電子回路基板の製造方法では、例えば、プリント配線板の場合、銅張積層板の銅箔上にフォトレジスト層を形成し、その表面にフォトマスクなどを介して露光し、その後、未硬化部分を除去してレジストパターンを形成する。次いで、レジストパターンに覆われていない部分の銅箔をエッチングにより除去し、レジストパターンを除去することで、プリント配線板が得られる。
【0003】
しかし、このようなプリント配線板の製造方法は、フォトマスクの作製に長い時間と多くの費用がかかることから、設備投資金額が増大する。またフォトマスクを用いたパターン露光が必要なことから工程が複雑で、操作も煩雑となる。
【0004】
近年、これらの問題を解決するため、インクジェット方式を用いてレジスト材料を基板上に直接塗布し、レジストパターンを形成する方法が開発されている(例えば、特開昭56−66089号公報(特許文献1)、特開昭62−181490号公報(特許文献2)、特開平6−237063号公報(特許文献3)、特開平7−131135号公報(特許文献4)を参照)。この方法は、従来必要であったパターン露光を不要にできることから設備投資金額が少なく、また、材料の歩留りが高いなどの点から期待が持たれている。
【0005】
このようなインクジェット法に用いられるレジスト材料には、エッチングレジスト、めっきレジストなどが挙げられ、一般に、エッチングレジストには耐エッチング性、めっきレジストには耐めっき性特性が求められる。これまでに、インクジェット法に使用可能なレジスト材料として、様々なインク組成物が提案されている(特開平7−170053号公報(特許文献5)、特開2004−353027号公報(特許文献6)、特開2005−057018号公報(特許文献7)が、これらのインクにより形成されたレジスト膜は、十分な耐エッチング性又は耐めっき性を有し、合わせて優れたアルカリ剥離性を有してはいなかった。
【0006】
一方、ポリビニルフェノール及びその誘導体を用いたレジスト(特開昭61−291606号公報(特許文献8)、特開平8−211610(特許文献9)、特開昭60−15636号公報(特許文献10)、特開昭60−17739号公報(特許文献11)、特開昭60−17740号公報(特許文献12))は、耐メッキ性、アルカリ剥離性に優れ、フォトリソグラフィー法で使用されている。しかしながら、インクジェット用インクとして高分子量のポリビニルフェノール及びその誘導体を使用した場合、吐出不良となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭56−66089号公報
【特許文献2】特開昭62−181490号公報
【特許文献3】特開平6−237063号公報
【特許文献4】特開平7−131135号公報
【特許文献5】特開平7−170053号公報
【特許文献6】特開2004−353027号公報
【特許文献7】特開2005−057018号公報
【特許文献8】特開昭61−291606号公報
【特許文献9】特開平8−211610号公報
【特許文献10】特開昭60−15636号公報
【特許文献11】特開昭60−17739号公報
【特許文献12】特開昭60−17740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の状況の下、耐エッチング性又は耐めっき性とアルカリ剥離性などとのバランスのとれたレジスト膜、及びこのような特性を有するレジスト膜を形成することが可能なインクジェット用インクが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、インクジェット用インクの構成成分を各種検討した結果、一般式(1)で表され、重量平均分子量が1,000〜8,000である樹脂(A)を含有するインクジェット用インクが、優れた特性を有することを見出した。さらに、樹脂(A)に加えて、カルボキシル基を1以上有するモノマーまたはオリゴマー(B)、希釈剤(C)、光重合開始剤(D)を含有するインクジェット用インクが、特にジェッティング性と耐エッチング性又は耐めっき性に優れ、アルカリ剥離可能な硬化膜を形成できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。本発明は以下のようなインクジェット用インク、インクジェット用インクから得られた硬化膜及びその形成方法などを提供する。
【0010】
本発明は、以下の項を含む。
【0011】
[1]下記一般式(1)で表され、重量平均分子量が1,000〜8,000である樹脂(A)を含むインクジェット用インク。

(式(1)中、Xはラジカル重合性モノマー由来の構成単位であり、mは1以上の整数、nは0〜100の数である)
【0012】
[2]樹脂(A)において、nが0である、項[1]に記載のインクジェット用インク。
【0013】
[3]樹脂(A)の重量平均分子量が1,600〜6,000である、項[1]〜[2]に記載のインクジェット用インク。
【0014】
[4]さらにカルボキシル基を1以上有するモノマーまたはオリゴマー(B)、希釈剤(C)、および光重合開始剤(D)を含有する、項[1]〜[3]に記載のインクジェット用インク。
【0015】
[5]樹脂(A)の含有量が0.5〜20重量%である、項[4]に記載のインクジェット用インク。
【0016】
[6]カルボキシル基を1以上有するモノマーまたはオリゴマー(B)が単官能(メタ)アクリレートまたは多官能(メタ)アクリレートである項[4]または[5]に記載のインクジェット用インク。
【0017】
[7]カルボキシル基を1以上有するモノマーまたはオリゴマー(B)が酸変性エポキシ(メタ)アクリレートである項[4]〜[6]のいずれか一項に記載のインクジェット用インク。
【0018】
[8]カルボキシル基を1以上有するモノマーまたはオリゴマー(B)が重量平均分子量300〜12,000の酸変性エポキシアクリレートである、項[4]〜[7]のいずれか一項に記載のインクジェット用インク。
【0019】
[9]カルボキシル基を1以上有するモノマーまたはオリゴマー(B)がビスフェノールF型の酸変性エポキシアクリレートである項[4]〜[8]のいずれか一項に記載のインクジェット用インク。
【0020】
[10]希釈剤(C)の25℃の粘度が0.1〜100mPa・sである、項[4]〜[9]のいずれか一項に記載のインクジェット用インク。
【0021】
[11]希釈剤(C)が、カルボキシル基を含まない単官能(メタ)アクリレートまたは多官能(メタ)アクリレートである、項[4]〜[10]のいずれか一項に記載のインクジェット用インク。
【0022】
[12]希釈剤(C)が一般式(2)で表されるカルボキシル基を含まない単官能(メタ)アクリレートである、項[4]〜[11]のいずれか一項に記載のインクジェット用インク。

(一般式(2)中、R1は水素又は炭素数1〜3のアルキルであり、R2は環状構造を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレンであり、nは1〜30の整数である。)
【0023】
[13]樹脂(A)が重量平均分子量4,000〜6,000であるポリビニルフェノールであり、カルボキシル基を1以上有するモノマーまたはオリゴマー(B)が重量平均分子量500〜11,000のビスフェノールF型の酸変性エポキシアクリレートであり、希釈剤(C)が2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートであり、光重合開始剤(D)が2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドである、項[4]〜[12]のいずれか一項に記載のインクジェット用インク。
【0024】
[14]25℃の粘度が2〜200mPa・sである、項[1]〜[13]に記載のインクジェット用インク。
【0025】
[15]項[1]〜[14]のいずれか1項に記載のインクジェット用インクをインクジェット方式により基板上に塗布し、塗布されたインクに光を照射することによって硬化膜を形成する、硬化膜形成方法。
【0026】
[16]項[1]〜「14]のいずれか1項に記載のインクジェット用インクから得られた硬化膜。
【0027】
[17]パターン状に形成されている、項[16]に記載の硬化膜。
【0028】
[18]項[17]に記載の硬化膜を用いたエッチングレジスト膜又はめっきレジスト膜を形成する工程と、その後のエッチング工程又はめっき工程と、その後の前記膜を剥離する工程とを有する、基板の製造方法。
【0029】
[19]項[18]に記載の方法により得られた基板を有する電子部品。
【0030】
[20]項[19]に記載の電子部品を有する表示素子
【0031】
なお、本明細書中、アクリレートとメタクリレートの両者を示すために「(メタ)アクリレート」のように表記することがある。
【発明の効果】
【0032】
本発明の好ましい態様に係るインクジェット用インクによれば、インクの吐出性、膜の硬化性、耐エッチング性、及び耐めっき性に優れたアルカリ剥離可能なインクジェット用インクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
1. 発明のインクジェット用インク
本発明のインクジェット用インクは、一般式(1)で表され、重量平均分子量が1,000〜8,000である樹脂(A)を含有すれば、特に制限されない。さらに、必要に応じてカルボキシル基を1以上有するモノマーまたはオリゴマー(B)、希釈剤(C)、光重合開始剤(D)を含有してもよい。本発明のインクジェット用インクは、無色であっても有色であってもよい。
【0034】
本発明のインクジェット用インクは、上記に加えて、必要に応じて、さらにエポキシ樹脂、界面活性剤、着色剤、重合禁止剤などを含んでもよい。
【0035】
ここで、本明細書中の重量平均分子量は、カラムとしてPolymer Laboratories製THF系カラムを使用してGPC法(カラム温度:35℃、流速:1ml/min)により求めたポリスチレン換算での値である。なお、本明細書中の市販品の重量平均分子量はカタログ掲載値である。
【0036】
1.1 樹脂(A)
本発明のインクジェット用インクは、上記式(1)で表される樹脂(A)を含む。樹脂(A)は、ビニルフェノールを含むモノマーから得られる重合体であり、OHは主鎖に対してパラ、オルソまたはメタ位をとるポリビニルフェノール系の重合体である。
【0037】
式中、Xはラジカル重合性モノマー由来の構成単位であり、mは1以上の整数であり、nは0〜100の数である。mが2以上の場合、式(1)における[ ]内の構成単位の繰り返しは、同一構造であっても、異なる構造でもよい。すなわちnの数が異なる構造の繰り返しであっても、nの数が同一の構造の繰り返しであってもよい。nは好ましくは0〜10であり、より好ましくは0〜5であり、特に好ましくはn=0である。
【0038】
本発明において、Xの原料として用いられるラジカル重合性モノマーとしては、制限するわけではないが、種々の重合性不飽和結合を有する化合物が用いられる。例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミドなどのアクリル系モノマー、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、無水マレイン酸、酢酸ビニル、ビニルピリジンが挙げられる。
【0039】
前述のポリビニルフェノール系の重合体は商業的に入手できる。例えば丸善石油化学製のマルカリンカーM(ポリ−p−ビニルフェノール)、マルカリンカーCMM(p−ビニルフェノール/メタクリル酸メチル共重合体)、マルカリンカーCHM(p−ビニルフェノール/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体)、マルカリンカーCST(p−ビニルフェノール/スチレン共重合体)が挙げられる。なお、樹脂(A)は2種類以上を混合して使用することもできる。
【0040】
本発明の樹脂(A)のポリスチレン換算での重量平均分子量は、1,000〜8,000が好ましく、1,600〜6,000がより好ましく、4,000〜6,000がさらに好ましい。この範囲であれば、膜の硬化性が良好で、耐エッチング性又は耐メッキ性などの膜特性が優れ、ジェッティング特性も良好である。また、得られる硬化膜のアルカリへの溶解性も良好である。
【0041】
樹脂(A)の含有量は、インクジェット用インク固形分の0.1〜50重量%であると、耐エッチング性又は耐メッキ性と、アルカリ剥離性と、ジェッティング特性とのバランスがよくなるので好ましく、より好ましくは0.5〜20重量%であり、さらに好ましくは0.5〜10重量%であり、特に好ましくは1〜10重量%である。
【0042】
1.2 カルボキシル基を1以上有するモノマーまたはオリゴマー(B)
本発明のインクジェット用インクは、アルカリ剥離性を向上させるために、カルボキシル基を有しているモノマーまたはオリゴマー(B)を含有してもよい。ここで、「カルボキシ基を有しているオリゴマー」は、2つ以上のモノマーが結合した重合性化合物のうち、少なくとも1つ以上のカルボキシル基を有している化合物である。
【0043】
カルボキシル基を有しているモノマーまたはオリゴマー(B)は、カルボキシル基を有していれば特に限定されないが、例えば、耐エッチング性又は耐めっき性に優れ、合わせてアルカリ剥離性をさらに向上させるためには、酸変性エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0044】
本発明における酸変性エポキシ(メタ)アクリレートは、1分子中に2以上の重合性二重結合及び1以上のカルボキシル基を有している化合物である。ここで、重合性二重結合とは、重合可能な炭素−炭素二重結合のことである。重合性二重結合を有する基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニル基、又はマレイミド基が挙げられる。重合性二重結合は、熱重合性であっても、光重合性であってもよいが、好ましくは光重合性を有するものである。
【0045】
酸変性エポキシ(メタ)アクリレートのポリスチレン換算での重量平均分子量は、300〜12,000が好ましく、500〜11,500がより好ましく、900〜11,000がさらに好ましく、900〜8,000がさらに好ましく、900〜6,000が特に好ましい。この範囲であれば、耐エッチング性又は耐めっき性などの膜特性が優れ、ジェッティング特性も良好である。また、得られる硬化膜のアルカリへの溶解性も良好である。
【0046】
酸変性エポキシ(メタ)アクリレートの具体例としては、エポキシ化合物に、カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレートに、さらに多塩基酸又は多塩基酸無水物を反応させて得られるものが挙げられる。
【0047】
エポキシ化合物としては、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、トリスフェノールメタン型、テトラフェノールエタン型のエポキシ樹脂などが挙げられる。この中でも、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型が好ましく、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型がさらに好ましく、耐めっき性の点でビスフェノールF型が特に好ましい。
【0048】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、β-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、マレイン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、無水フタル酸とヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物(例えば、フタル酸モノヒドロキシエチルメタクリレート)、又は無水ヘキサヒドロフタル酸とヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物が挙げられる。
【0049】
多塩基酸又は多塩基酸無水物としては、例えば、フタル酸、ピロメリット酸、コハク酸、トリメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸又はスチレン−マレイン酸共重合体などの多塩基酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物、トリメリット酸無水物、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸又はスチレン−無水マレイン酸共重合体などの多塩基酸無水物が挙げられる。
【0050】
本発明で用いられるエポキシ化合物、カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート、多塩基酸又は多塩基酸無水物は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0051】
酸変性エポキシ(メタ)アクリレートの市販品としては、日本化薬(株)製のKAYARAD CCR−1159H(分子量:7500、酸価:101mgKOH/g)、同CCR−1285H(酸価:82mgKOH/g)、同ZFR−1401H(分子量:12000、酸価:99mgKOH/g)、同ZFR−1491H(酸価:100mgKOH/g)、同ZFR−1492H(酸価:102mgKOH/g)、同TCR−1310H(分子量:4500、酸価:104mgKOH/g)、日本ユピカ(株)製のネオポール8430(分子量:10000、酸価:88mgKOH/g)、同8432(分子量:8000、酸価:92mgKOH/g)、同8470(分子量:10000、酸価:100mgKOH/g)、同8472(分子量:7000、酸価:105mgKOH/g)、同8475(分子量:10000、酸価:101mgKOH/g)、同8476(分子量:5000、酸価:101mgKOH/g)、同8477(分子量:10000、酸価:94mgKOH/g)、同8371、同8316、同8317、同8310(分子量:1000、酸価:104mgKOH/g)などが挙げられる。なお、本段落における「分子量」は重量平均分子量を示す。
【0052】
その他のカルボキシル基を有するモノマーまたはオリゴマー(B)として、以下のものが挙げられる。
【0053】
カルボキシル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、ケイ皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、β-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、マレイン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、無水フタル酸とヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物(例えば、フタル酸モノヒドロキシエチルメタクリレート)、又は無水ヘキサヒドロフタル酸とヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物が挙げられる。
【0054】
カルボキシル基を有するモノマーまたはオリゴマー(B)の含有量は、インクジェット用インク固形分の1〜70重量%であると、耐エッチング性又は耐めっき性と、アルカリ剥離性と、ジェッティング特性とのバランスがよくなるので好ましく、より好ましくは2〜65重量%であり、さらに好ましくは3〜60重量%であり、特に好ましくは4〜55重量%である。
【0055】
カルボキシル基を有するモノマーまたはオリゴマー(B)は、1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
【0056】
1.3 希釈剤(C)
本発明のインクジェット用インクは、各種特性を向上させるために希釈剤(C)を含有してもよい。本発明の希釈剤(C)は特に限定されないが、25℃の粘度が0.1〜100mPa・sであることが好ましく、ラジカル重合性を有するモノマーや溶媒が挙げられる。ラジカル重合性を有するモノマーとしては、カルボキシル基を含まない単官能(メタ)アクリレートまたは多単官能(メタ)アクリレートが好ましく、上記一般式(2)で表される単官能(メタ)アクリレートがより好ましい。
1.3(1) 単官能重合性モノマー
ラジカル重合性を有している化合物が単官能重合性モノマーであれば、ジェッティング性が良好になるので特に好ましい。
【0057】
単官能重合性モノマーの具体例は、一般式(2)の化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを挙げることができ、その他の化合物としては、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、p−ビニルフェニル−3−エチルオキセタ−3−イルメチルエーテル、2−フェニル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、2−トリフロロメチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、4−トリフロロメチル−2−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロルメチルスチレン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、ビニルトルエン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、5−テトラヒドロフルフリルオキシカルボニルペンチル(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、ケイ皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、マレイン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、シクロヘキセン−3,4−ジカルボン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドを挙げることができる。
【0058】
これらの単官能重合性モノマーは1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
【0059】
その中でも例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等であればインクの相溶性、インク固体成分の溶解性を向上させるため、さらにインク滴が基板に着弾した後の液の広がりが小さいため高精細化が可能なるため、より好ましい。
【0060】
これらのヒドロキシルを有する単官能重合性モノマーは1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
【0061】
希釈剤(C)としての単官能重合性モノマーの含有量は、インクジェット用インク総量の1〜70重量%であると、使用する用途に合わせた粘度に調整できるので好ましく、他の特性とのバランスを考慮すると、より好ましくは2〜65重量%であり、さらに好ましくは3〜60重量%であり、特に好ましくは4〜55重量%である。
【0062】
1.3(2) 多官能重合性モノマー
希釈剤(C)としては、多官能重合性モノマーであってもよい。
【0063】
多官能重合性モノマーの具体例としては、ビスフェノールFエチレンオキシド変性ジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、変性イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキシド変性ジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、ウレタン(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0064】
これらの多官能重合性モノマーは1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
【0065】
希釈剤(C)としての多官能重合性モノマーの含有量は、インクジェット用インク総量の0.1〜60重量%であると、使用する用途に合わせた粘度の調整と他の特性とのバランスがよく、より好ましくは0.5〜55重量%であり、さらに好ましくは0.8〜50重量%であり、特に好ましくは1〜45重量%である。
【0066】
1.3(3) 溶媒
希釈剤(C)として溶媒を用いてもよい。インクジェットヘッドを加温する場合、インクに低沸点の溶媒が含まれていると溶媒が揮発してインクの粘度が上昇しインクジェットヘッドのノズル口が詰まってしまうことがある。そのため、特に沸点が100〜300℃の溶媒が好ましい。
【0067】
沸点が100〜300℃である溶媒の具体例としては、水、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トルエン、キシレン、アニソール、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、又はジメチルイミダゾリジノンが挙げられる。
【0068】
これらの溶媒は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
【0069】
希釈剤(C)としての溶媒の含有量は、インクジェット用インク総量の0.1〜10重量%であると、ジェッティング性と他の特性のバランスが良く、より好ましくは0.2〜8重量%であり、さらに好ましくは0.5〜6重量%であり、特に好ましくは1〜5重量%である。
【0070】
希釈剤(C)は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。例えば、単官能重合性モノマーと溶媒との混合物であってもよい。
【0071】
1.4 光重合開始剤(D)
本発明のインクジェット用インクは、これに光硬化性を付与するために、光重合開始剤(D)を含有してもよい。光重合開始剤(D)は、紫外線または可視光線の照射によりラジカルを発生する化合物であれば特に限定されない。
【0072】
光重合開始剤(D)の具体例としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4’−イソプロピルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4’−トリ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジ(メトキシカルボニル)−4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’−ジ(メトキシカルボニル)−4,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジ(メトキシカルボニル)−3,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(o−ベンゾイルオキシム)、2−(4’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2’−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4’−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2−(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、3−(2−メチル−2−ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、又は2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドを挙げることができる。
【0073】
光重合開始剤(D)は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0074】
光重合開始剤(D)の含有量は、インクジェット用インク総量の0.5〜20重量%であると、インクジェット用インクとしたとき、紫外線に対して高感度となるので好ましく、より好ましくは1〜20重量%であり、さらに好ましくは2〜20重量%である。
【0075】
1.5 その他の成分
本発明のインクジェット用インクは、各種特性をさらに向上させるためにエポキシ樹脂、エポキシ硬化剤、界面活性剤、着色剤、重合禁止剤などを含んでもよい。
【0076】
1.5(1) エポキシ樹脂
本発明のインクジェット用インクは、例えば、耐エッチング性又は耐めっき性を向上させるために、エポキシ樹脂を含んでもよい。
【0077】
エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、又は脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。
【0078】
エポキシ樹脂の市販品としては、エピコート807、同815、同825、同827、同828、同190P、同191P(商品名;油化シェルエポキシ(株)製)、エピコート1004、同1256(商品名;ジャパンエポキシレジン(株)製)、アラルダイトCY177、同CY184(商品名;日本チバガイギー(株)製)、セロキサイド2021P、EHPE−3150(商品名;ダイセル化学工業(株)製)、又はテクモアVG3101L(商品名;三井化学(株)製)を挙げることができる。
【0079】
インクジェット用インクに用いられるエポキシ樹脂は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0080】
エポキシ樹脂の含有量が、インクジェット用インク固形分の1〜20重量%であると耐エッチング性又は耐めっき性が向上するので好ましく、より好ましくは1〜10重量%であり、さらに好ましくは1〜7重量%である。
【0081】
1.5(2) 界面活性剤
本発明のインクジェット用インクは、例えば、下地基板への濡れ性や、硬化膜の膜面均一性を向上させるために界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、シリコン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤などが用いられる。
【0082】
界面活性剤の市販品としては、Byk−300、同306、同335、同310、同341、同344、及び同370(商品名;ビック・ケミー(株)製)などのシリコン系界面活性剤、Byk−354、同358、及び同361(商品名;ビック・ケミー(株)製)などのアクリル系界面活性剤、DFX−18、フタージェント250、又は同251(商品名;ネオス(株)製)、メガファックF−479(商品名;DIC(株)製)などのフッ素系界面活性剤を挙げることができる。
【0083】
インクジェット用インクに用いられる界面活性剤は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0084】
界面活性剤の含有量が、インクジェット用インク固形分の0.001〜1重量%であると硬化膜の膜面均一性が向上するので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると、より好ましくは0.001〜0.1重量%であり、さらに好ましくは0.001〜0.05重量%である。
【0085】
1.5(3) 着色剤
本発明のインクジェット用インクは、例えば、硬化膜の状態を検査する際に基板との識別を容易にするために、着色剤を含んでもよい。着色剤としては、染料、顔料が好ましい。
【0086】
インクジェット用インクに用いられる着色剤は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0087】
着色剤の含有量が、インクジェット用インク固形分の0.1〜5重量%であると硬化膜の検査が容易であるので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると、より好ましくは0.1〜1重量%であり、さらに好ましくは0.1〜0.5重量%である。
【0088】
1.5(4) 重合禁止剤
本発明のインクジェット用インクは、例えば、保存安定性を向上させるために重合禁止剤を含んでもよい。重合禁止剤の具体例としては、4−メトキシフェノール、ヒドロキノン、又はフェノチアジンを挙げることができる。これらの中でも、フェノチアジンが長期の保存においても粘度の変化が小さいために好ましい。
【0089】
インクジェット用インクに用いられる重合禁止剤は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0090】
重合禁止剤の含有量が、インクジェット用インク固形分の0.01〜1重量%であると長期の保存においても粘度の変化が小さいために好ましく、他特性とのバランスを考慮すると、より好ましくは0.01〜0.5重量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.1重量%である。
【0091】
1.6 インクジェット用インクの粘度
本発明のインクジェット用インクは、E型粘度計で測定した25℃における粘度が2〜200mPa・sであると、インクジェット印刷による塗布特性(ジェッティング精度など)が良好となるので好ましい。25℃におけるインクジェット用インクの粘度は、より好ましくは10〜180mPa・s、さらに好ましくは20〜150mPa・sである。
【0092】
25℃における粘度が50mPa・s以上のインクを使用する場合は、インクジェットヘッドを加温して吐出時の粘度を下げると、より安定した吐出が可能になる。インクジェットヘッドを加熱してジェッティングを行う場合は、加熱温度(好ましくは40〜120℃)におけるインクジェット用インクの粘度は1〜30mPa・sが好ましく、2〜25mPa・sであればさらに好ましく、3〜20mPa・sが特に好ましい。
【0093】
インクジェットヘッドを加温する場合、溶媒を含まないインクを用いることが好ましい。その場合、インクの粘度は、希釈剤(C)の種類と含有量を適宜選択することにより調整することが好ましい。インクジェットヘッドを加温しない場合、インクの粘度はインク総量の10重量%以下の溶媒を加えて調整することができる。
【0094】
1.7 インクジェット用インクの保存
本発明のインクジェット用インクは、−20〜20℃で保存すると保存中の粘度変化が小さく、保存安定性が良好である。
【0095】
2.インクジェット方法によるインクジェット用インクの塗布
本発明のインクジェット用インクは、公知のインクジェット塗布方法を用いて塗布することができる。インクジェット塗布方法としては、例えば、インクに力学的エネルギーを作用させてインクをインクジェットヘッドから吐出(塗布)させる方法(いわゆるピエゾ方式)、及び、インクに熱エネルギーを作用させてインクを塗布させる塗布方法(いわゆるバブルジェット(登録商標)方式)等がある。
【0096】
インクジェット塗布方法を用いることにより、インクジェット用インクを予め定められたパターン状に塗布することができる。これによって、必要な箇所だけにインクを塗布でき、フォトリソグラフィー法に比べて、コストの削減となる。
【0097】
本発明のインクジェット用インクを用いて塗布を行うのに好ましい塗布ユニットは、例えば、これらのインクを収容するインク収容部と、インクジェットヘッドとを備えたインクジェットユニットが挙げられる。インクジェットユニットとしては、例えば、塗布信号に対応した熱エネルギーをインクに作用させ、前記エネルギーによりインク液滴を発生させるインクジェットユニットが挙げられる。
【0098】
インクジェットヘッドとしては、例えば、金属及び/又は金属酸化物を含有する発熱部接液面を有するものである。前記金属及び/又は金属酸化物の具体例は、例えば、Ta、Zr、Ti、Ni、Al等の金属、及び、これらの金属の酸化物等が挙げられる。
【0099】
本発明のインクジェット用インクを用いて塗布を行うのに好ましい塗布装置としては、例えば、インクが収容されるインク収容部を有するインクジェットヘッドの室内のインクに、塗布信号に対応したエネルギーを与え、前記エネルギーによりインク液滴を発生させる装置が挙げられる。
【0100】
インクジェット塗布装置は、インクジェットヘッドとインク収容部とが分離されているものに限らず、それらが分離不能に一体になったものを用いるものでもよい。また、インク収容部はインクジェットヘッドに対し分離可能又は分離不能に一体化されてキャリッジに搭載されるもののほか、装置の固定部位に設けられて、インク供給部材、例えばチューブを介してインクジェットヘッドにインクを供給する形態のものでもよい。
【0101】
また、インクジェットの吐出(塗布)温度は10〜120℃が好ましく、塗布温度におけるインクジェット用インクの粘度は、1〜200mPa・sであることが好ましい。
【0102】
3.硬化膜の形成
本発明の硬化膜は、上述したインクジェット用インクをインクジェット法により基板表面に塗布した後に、必要に応じて、インクに紫外線や可視光線等の光を照射して得られる。
【0103】
紫外線を照射する場合、照射する紫外線の量は、インクジェット用インクの組成に依存するが、ウシオ電機(株)製の受光器UVD−365PDを取り付けた積算光量計UIT−201で測定して、10〜1,000mJ/cm程度が好ましく、20〜800mJ/cm程度が好ましく、40〜500mJ/cm程度がさらに好ましい。また、照射する紫外線の波長は、200〜450nmが好ましく、220〜430nmがより好ましく、250〜400nmがさらに好ましい。
【0104】
また、必要に応じて、光の照射により硬化した上記硬化膜をさらに加熱・焼成してもよく、特に、100〜250℃で10〜60分間加熱することが好ましく、120〜230℃で10〜60分間加熱することがより好ましく、150〜200℃で10〜60分間加熱することがさらに好ましい。
【0105】
本発明に使用できる「基板」は、インクジェット用インクが塗布される対象となり得るものであれば特に限定されず、その形状は平板状に限られず、曲面状であってもよい。
【0106】
また、基板の材質は特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチックフィルム、セロハン、アセテート、金属箔、ポリイミドと金属箔の積層フィルム、目止め効果があるグラシン紙、パーチメント紙、またはポリエチレン、クレーバインダー、ポリビニルアルコール、でんぷん、カルボキシメチルセルロース(CMC)などで目止め処理した紙、ガラスを挙げることができる。
【0107】
これらの基板を構成する物質には、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、さらに、顔料、染料、酸化防止剤、劣化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤及び/又は電磁波防止剤などの添加剤を含んでもよい。また、基板の表面の一部には、基板と異なる材質が形成されていてもよい。
【0108】
基板の用途も特に限定されないが、本発明のインクジェット用インクから得られる硬化膜は耐エッチング液性、耐めっき性、アルカリ水溶液に対する剥離性に優れているため、基板表面に金属製の回路を有する電子回路基板等の製造に用いられることが好ましい。回路を形成する金属は、特に限定されるものではないが、金、銀、銅、アルミ又はITOが好ましい。
【0109】
基板の厚さは、特に限定されないが、通常、10μm〜2mm程度であり、使用する目的により適宜調整されるが、15〜500μmが好ましく、20〜200μmがさらに好ましい。
【0110】
基板の硬化膜を形成する面には、必要により撥水処理、コロナ処理、プラズマ処理、又はブラスト処理などの易接着処理を施したり、表面に易接着層やカラーフィルター用保護膜を設けたりしてもよい。
【実施例】
【0111】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0112】
<インクジェット用インク及び硬化膜パターン形成基板の作製>
まず、実施例1〜2及び比較例1〜3に係るインクジェット用インク及びそれから得られた硬化膜パターン形成基板について説明する。
【0113】
[実施例1]
樹脂(A)として、マルカリンカーM S−1G(商品名;丸善石油化学株式会社製、重量平均分子量:1,600−2、400)を用い、カルボキシル基を1以上有するモノマーまたはオリゴマー(B)としてビスフェノールF型酸変性エポキシアクリレートであるネオポール8476(商品名;日本ユピカ(株)製、重量平均分子量:5000)を用い、希釈剤(C)として2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ブチルメタクリレートを用い、光重合開始剤(D)として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドであるDAROCUR TPO(商品名;チバスペシャルティーケミカルズ(株)製)、及び重合禁止剤としてフェノチアジンを下記組成割合にて混合・溶解した後、PTFE製のメンブレンフィルター(1μm)でろ過し、インクジェット用インク1を調製した。
(A) マルカリンカーM S−1G 0.60g
(B) ネオポール8476 5.00g
(C) 2−ヒドロキシエチルメタクリレート 1.00g
(C) ブチルメタクリレート 4.00g
(C) TPO 1.14g
その他 フェノチアジン 0.0051g
E型粘度計(東機産業(株)製 TV−22、以下同じ)を用い、25℃のインクジェット用インク1の粘度を測定した結果、40mPa・sであった。
【0114】
インクジェット用インク1をインクジェットカートリッジに注入し、これをインクジェット装置(FUJIFILM Dimatix社製のDMP−2811)に装着し、10pl用のヘッドを用いて、吐出電圧(ピエゾ電圧)16V、ヘッド温度70℃、駆動周波数5kHz、塗布回数1回の吐出条件で、ポリイミド上に銅箔を積層した厚さ35μmの銅張積層板であるバイロフレックス(商品名;東洋紡績(株)製)の銅表面上に所定のパターンを形成した。
インクジェット用インク1をパターン形成した基板に、波長365nmの紫外線を250mJ/cmのUV露光量で照射し、インクジェット用インク1を硬化させることで、厚さ10μmの硬化膜パターンを形成した基板1を得た。
【0115】
[実施例2]
ポリビニルフェノールとして、マルカリンカーM S−2G(商品名;丸善石油化学株式会社製、重量平均分子量:4,000−6,000)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、インクジェット用インク2を調製した。
(A) マルカリンカーM S−2G 0.60g
(B) ネオポール8476 5.00g
(C) 2−ヒドロキシエチルメタクリレート 1.00g
(C) ブチルメタクリレート 4.20g
(D) TPO 1.18g
その他 フェノチアジン 0.0053g
E型粘度計(東機産業(株)製 TV−22、以下同じ)を用い、25℃のインクジェット用インク2の粘度を測定した結果、45mPa・sであった。
インクジェット用インク2を用い、実施例1と同様の方法で、厚さ10μmの硬化膜パターンを形成した基板2を得た。
【0116】
[比較例1]
ビニルフェノールを用いた重合体から成る樹脂を除き、実施例1と同様の組成で、実施例1と同様にして、インクジェット用インク3を調製した。
(B) ネオポール8476 5.00g
(C) 2−ヒドロキシエチルメタクリレート 1.00g
(C) ブチルメタクリレート 2.50g
(D) TPO 1.14g
その他 フェノチアジン 0.0048g
E型粘度計(東機産業(株)製 TV−22、以下同じ)を用い、25℃のインクジェット用インク3の粘度を測定した結果、66mPa・sであった。
インクジェット用インク3を用い、実施例1と同様の方法で、厚さ10μmの硬化膜パターンを形成した基板3を得た。
【0117】
[比較例2]
ビニルフェノールを用いた重合体から成る樹脂の代わりに、ノボラック系フェノ
ール樹脂であるBRG―555(昭和高分子株式会社製、重量平均分子量:600)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、インクジェット用インク4を調製した。
BRG−555 0.60g
(B) ネオポール8476 5.00g
(C) 2−ヒドロキシエチルメタクリレート 1.00g
(C) ブチルメタクリレート 2.80g
(D) TPO 1.18g
その他 フェノチアジン 0.0053g
E型粘度計(東機産業(株)製 TV−22、以下同じ)を用い、25℃のインクジェット用インク4の粘度を測定した結果、92mPa・sであった。
インクジェット用インク4を用い、実施例1と同様の方法で、厚さ10μmの硬化膜パターンを形成した基板4を得た。
【0118】
[比較例3]
ポリビニルフェノールとして、マルカリンカーM S−4G(商品名;丸善石油化学株式会社製、重量平均分子量:9,000−11,000)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、インクジェット用インク5を調製した。
マルカリンカーM S−4G 0.60g
(B) ネオポール8476 5.00g
(C) 2−ヒドロキシエチルメタクリレート 2.00g
(C) ブチルメタクリレート 4.40g
(D) TPO 1.50g
その他 フェノチアジン 0.0068g
E型粘度計(東機産業(株)製 TV−22、以下同じ)を用い、25℃のインクジェット用インク5の粘度を測定した結果、47mPa・sであった。
インクジェット用インク5を用い、実施例1と同様の方法で、厚さ10μmの硬化膜パターンを形成した基板5を得た。
【0119】
<インクジェット用インク及びパターン状硬化膜の評価>
続いて、インクジェット用インクの吐出性、硬化膜の硬化性、耐エッチング性、耐めっき性、及びアルカリ剥離性を評価した。各試験方法は以下のとおりで、評価結果を表1に示す。
【0120】
インクの吐出性試験
得られた基板1〜5上のパターンの乱れ、印刷のかすれを観察して、インクの吐出性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎:パターンの乱れ、印刷のかすれが全くない。
○:パターンの乱れ、印刷のかすれが殆どない。
△:パターンの乱れ、印刷のかすれが僅かに発生。
×:パターンの乱れ、印刷のかすれが多い。
【0121】
膜の硬化性試験
基板表面を指触し、硬化膜の表面状態を顕微鏡観察した。評価基準は以下のとおりである。
○:硬化膜表面に指触跡が全く残らない。
△:硬化膜表面に指触跡が僅かに残る。
×:硬化膜表面に指触跡が完全に残る。
【0122】
耐エッチング性試験
基板を13%FeCl水溶液に50℃で×2分間漬し、硬化膜の表面状態を顕微鏡観察した。評価基準は以下のとおりである。
◎:硬化膜には全く変化なし。
○:硬化膜には僅かに変色が見られるが、剥がれは全く見られない。
△:硬化膜は完全に変色し、僅かに剥がれも見られる。
×:硬化膜は完全に剥がれた。
【0123】
耐めっき性試験
基板を市販の無電解ニッケルめっき液(商品名:ニムデンNPR−4、Ni濃度4.5g/L、上村工業(株)製)に60℃×15分間浸し、硬化膜の表面状態を顕微鏡観察した。また、無電解金めっき液(商品名:ゴブライトTAM−55、Au濃度1g/L、上村工業(株)製)に90℃×20分間浸し、同様の観察を行った。評価基準は以下のとおりである。
◎:硬化膜には全く変化なし。
○:硬化膜には僅かに変色が見られるが、剥がれは全く見られない。
△:硬化膜は完全に変色し、僅かに剥がれも見られる。
×:硬化膜は完全に剥がれた。
【0124】
アルカリ剥離性試験
耐エッチング性を評価した後の基板を濃度5%のNaOH水溶液に50℃×1分間漬し、硬化膜の剥離性を顕微鏡観察した。また、まず耐ニッケルめっき性を評価し、次に耐金めっき性を評価した後の基板を濃度5%のNaOH水溶液に50℃×1分間漬し、硬化膜の剥離性を顕微鏡観察した。評価基準は以下のとおりである。
◎:完全に剥離した。
○:一部剥離した。
×:全く剥離しなかった。
【0125】
【表1】

【0126】
表1に示す結果から明らかなように、本発明にかかる基板1〜2にはパターンの乱れ、印刷のかすれが殆ど見られず、インクの吐出性が良好であった。また、基板1〜4上の指触による膜の硬化性を評価したところ、硬化膜表面に指触跡が全く残らず、膜の硬化性が良好であった。
【0127】
また、基板1〜2は耐エッチング性、耐ニッケルめっき性、耐金めっき性、及びアルカリ剥離性が良好であり、その中でも特に基板2は耐エッチング性および耐ニッケルめっき性、耐金めっき性に優れており、また基板1,2はアルカリ剥離性に優れていた。
【0128】
一方、樹脂(A)を含有していない比較例1は、耐ニッケルめっき性及び耐金めっき性が不良であり、耐ニッケルめっき性評価後及び耐金めっき性評価後の基板表面に変色が見られた。さらに、アルカリ剥離性が極めて不良で全く剥離しなかった。
【0129】
樹脂(A)の代わりにノボラック系フェノール樹脂を用いた比較例2は、アルカリ剥離性が極めて不良で全く剥離しなかった。
【0130】
また、樹脂(A)として分子量が9,000〜11,000のポリビニルフェノールを使用した比較例3は、インクの吐出性が悪く、基板5上の印刷パターンの乱れ、かすれが多く、均一な膜が得られなかった。そのため、インクの吐出性以外の評価は中断した。
【0131】
以上説明したように、本発明によれば、インクの吐出性、膜の硬化性、耐エッチング性、及び耐めっき性の優れたアルカリ剥離可能なインクジェット用インクを得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表され、重量平均分子量が1,000〜8,000である樹脂(A)を含むインクジェット用インク。

(式(1)中、Xはラジカル重合性モノマー由来の構成単位であり、mは1以上の整数、nは0〜100の数である)
【請求項2】
樹脂(A)において、nが0である、請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項3】
樹脂(A)の重量平均分子量が1,600〜6,000である、請求項1〜2に記載のインクジェット用インク。
【請求項4】
さらにカルボキシル基を1以上有するモノマーまたはオリゴマー(B)、希釈剤(C)、および光重合開始剤(D)を含有する、請求項1〜3に記載のインクジェット用インク。
【請求項5】
樹脂(A)の含有量が0.5〜20重量%である、請求項4に記載のインクジェット用インク。
【請求項6】
カルボキシル基を1以上有するモノマーまたはオリゴマー(B)が単官能(メタ)アクリレートまたは多官能(メタ)アクリレートである請求項4または5に記載のインクジェット用インク。
【請求項7】
カルボキシル基を1以上有するモノマーまたはオリゴマー(B)が酸変性エポキシ(メタ)アクリレートである請求項4〜6のいずれか一項に記載のインクジェット用インク。
【請求項8】
カルボキシル基を1以上有するモノマーまたはオリゴマー(B)が重量平均分子量300〜12,000の酸変性エポキシアクリレートである、請求項4〜7のいずれか一項に記載のインクジェット用インク。
【請求項9】
カルボキシル基を1以上有するモノマーまたはオリゴマー(B)がビスフェノールF型の酸変性エポキシアクリレートである請求項4〜8のいずれか一項に記載のインクジェット用インク。
【請求項10】
希釈剤(C)の25℃の粘度が0.1〜100mPa・sである、請求項4〜9のいずれか一項に記載のインクジェット用インク。
【請求項11】
希釈剤(C)が、カルボキシル基を含まない単官能(メタ)アクリレートまたは多官能(メタ)アクリレートである、請求項4〜10のいずれか一項に記載のインクジェット用インク。
【請求項12】
希釈剤(C)が一般式(2)で表されるカルボキシル基を含まない単官能(メタ)アクリレートである、請求項4〜11のいずれか一項に記載のインクジェット用インク。

(一般式(2)中、R1は水素又は炭素数1〜3のアルキルであり、R2は環状構造を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレンであり、nは1〜30の整数である。)
【請求項13】
樹脂(A)が重量平均分子量4,000〜6,000であるポリビニルフェノールであり、カルボキシル基を1以上有するモノマーまたはオリゴマー(B)が重量平均分子量500〜11,000のビスフェノールF型の酸変性エポキシアクリレートであり、希釈剤(C)が2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートであり、光重合開始剤(D)が2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドである、請求項4〜12のいずれか一項に記載のインクジェット用インク。
【請求項14】
25℃の粘度が2〜200mPa・sである、請求項1〜13に記載のインクジェット用インク。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のインクジェット用インクをインクジェット方式により基板上に塗布し、塗布されたインクに光を照射することによって硬化膜を形成する、硬化膜形成方法。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のインクジェット用インクから得られる硬化膜。
【請求項17】
パターン状に形成されている、請求項16に記載の硬化膜。
【請求項18】
請求項17に記載の硬化膜を用いたエッチングレジスト膜又はめっきレジスト膜を形成する工程と、その後のエッチング工程又はめっき工程と、その後の前記膜を剥離する工程とを有する、基板の製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法により得られた基板を有する電子部品。
【請求項20】
請求項19に記載の電子部品を有する表示素子

【公開番号】特開2010−195972(P2010−195972A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44067(P2009−44067)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】