説明

インク補給方法

【課題】とくにフェルト3を詰めたタイプのインクカートリッジ2に、補給用のインクを良好に補給できる新規なインク補給方法と、その実施のために好適なインク補給装置とを提供する。
【解決手段】インク補給方法は、インクカートリッジ2内を減圧しつつ、補給用のインクIを補給する。インク補給装置4は、インクカートリッジ2に接続されるインクの供給管40と、減圧手段としてのポンプ41との間に、インク容器としてのインクタンク42を設けると共に、前記インクタンク42とポンプ41との間に、前記インクタンク42を、前記ポンプ41と接続した状態と、外気吸入管44と接続して外気に開放した状態とを切り換えることができる切り換え弁43を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ用のインクカートリッジなどにインクを補給するためのインク補給方法と、その実施のために用いられるインク補給装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット方式のプリンタが広く普及してきている。この種のインクジェットプリンタにおいては、インクを充てんした着脱自在のインクカートリッジを装備し、このインクカートリッジから、インクを印字ヘッドに供給している。インクカートリッジは、基本的に充てんしたインクを使い切った時点で使い捨てされるのが実状である。しかしながらインクカートリッジはかなりの高価格であり、ユーザーにとっては、このような高価なインクカートリッジを頻繁に交換することは経済的な負担が大きい。また近年の、省資源や環境保護の動きに反する行為をすることになるため、ユーザーに、無用の罪悪感を抱かせることにもなる。
【0003】
とくにフルカラー用のインクカートリッジは、たとえばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3色の、あるいは最近ではそれ以上の多色のインクを、一つのインクカートリッジ内を区切って収容しているため、1色ずつのインクの収容量が少ない上に、各色の消費量にどうしてもばらつきが生じるため、消費量の少ないインクがまだ残っているにもかかわらず交換が必要となる場合もあり、より一層、上記の感が強い。しかもインクカートリッジは、収容していたインクが単になくなっただけのものであって、それ自体はまだまだ使用可能である。そこで、使い終わったインクカートリッジにインクを補給して再使用することが考えられており、たとえば図3に示すインク補給具9などが一部で市販されている。
【0004】
かかるインク補給具9は、蛇腹状で伸縮自在な合成樹脂製のインク容器91の下部に取り付けた、注射針状の注入部材92を、インクカートリッジ2の上部に設けられている、製造時のインク充てん用の穴20(通常はフィルムなどを貼って閉じられている)に差し込むなどした状態で、図中白矢印で示すようにインク容器91を指で押圧して、インクカートリッジ2内にインクを注入するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
印刷時における、インクカートリッジから印字ヘッドへのインクの供給量を調整したり、あるいはインクカートリッジ内でのインクの自由な移動(波うちなど)やインク漏れを抑制したりするために、図中二点鎖線で示すように、インクカートリッジ2内に、インクをしみこませたフェルト3を詰めたタイプのインクカートリッジがある。かかるインクカートリッジ2に、前記図のインク補給具9を用いてインクを補給しようとすると、とくにフェルト3が高圧縮されている場合に、補給されたインクが、フェルト3内の空気によって邪魔されて、当該フェルト3内に十分に浸透できずに、その上にあふれてしまって、十分な量のインクを補給できないおそれがある。
【0006】
またフェルト3の下の方、つまりインクカートリッジ2の、インクの出口21に近い方には空気が残っているために、上記出口21からインクがすぐに出ない状態になっており、インクカートリッジ2を再びインクジェットプリンタに装着して使用を再開した初期の時点で、インク切れの不良などが生じて正しい印刷が行えないといった問題を生じるおそれもある。なおインク切れの不良は、ヘッドのクリーニングを2〜3回程度、繰り返すことによって解消されるが、クリーニングは主として、多量のインクを吐出することによって行われるため、クリーニングの回数が増えるほどヘッドとインクの消耗が激しくなり、ヘッドの寿命が通常よりも短くなるという問題も生じる。
【0007】
本発明の目的は、とくにフェルトを詰めたタイプのインクカートリッジに、補給用のインクを良好に補給することができる新規なインク補給方法と、その実施のために好適に使用される新規なインク補給装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための、本発明のインク補給方法は、インクカートリッジ内を減圧手段によって減圧した状態で、補給用のインクが充てんされたインク容器からインクを補給することを特徴とするものである。かかる本発明のインク補給方法によれば、たとえばインクカートリッジ内に高圧縮されたフェルトが詰められていても、減圧手段による減圧によって、そのフェルト内を含む、インクカートリッジ内の空気の大部分を除去した状態で、インク容器からインクを補給するので、十分な量のインクを速やかに、フェルト内のすみずみまで浸透させることができる。よって本発明によれば、十分な量のインクを、インクカートリッジの使用を再開した初期の段階でインク切れの不良などを生じないように、良好に補給することが可能となる。
【0009】
また、上記本発明のインク補給方法を実施するための、本発明のインク補給装置は、インクカートリッジに接続されるインクの供給管と、減圧手段としてのポンプと、前記両者の間に設けられた、インク容器としての、外気から密閉されたインクタンクと、インクタンクを外気に開放するための外気吸入管と、前記ポンプとインクタンクと外気吸入管との間に設けられた、インクカートリッジ内を減圧する際に、インクタンクをポンプと接続し、減圧されたインクカートリッジ内にインクを供給する際に、インクタンクを外気吸入管と接続するように切り換えられる切り換え弁とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の他のインク補給装置は、インクカートリッジに接続されるインクの供給管と、減圧手段としてのポンプと、インク容器としての、外気に開放されたインクタンクと、前記供給管とポンプとインクタンクとの間に設けられた、インクカートリッジ内を減圧する際に、供給管をポンプと接続し、減圧されたインクカートリッジ内にインクを供給する際に、供給管をインクタンクと接続するように切り換えられる切り換え弁とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、とくにフェルトを詰めたタイプのインクカートリッジに、補給用のインクを良好に補給することができる、新規なインク補給方法と、その実施のために好適に使用される新規なインク補給装置とを提供できるという特有の作用効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明を、その実施のために用いるインク補給装置の一例を示す図1、図2を参照しつつ説明する。まず、図1を参照して、図の例のインク補給装置4は、インクカートリッジ2に接続されるインクの供給管40と、減圧手段としての電動式などのポンプ41と、両者の間に設けた、吸引トラップ状の、外気から密閉された、インク容器としてのインクタンク42と、切り換え弁43とを備えている。このうち供給管40は、先程と同様にその途中にパッキン40aを備えており、かかるパッキン40aを穴20に圧入することで、気密を維持しつつ、インクカートリッジ2と接続される。
【0013】
切り換え弁43は、インクカートリッジ2内を減圧する際には、ポンプ41とインクタンク42とを接続し、減圧されたインクカートリッジ2内にインクを供給する際には、インクタンク42を外気吸入管44と接続するように切り換えられる弁である。かかる装置4を用いて、インクカートリッジ2にインクを補給するには、まず先の場合と同様に、インクの出口21をシールなどで塞ぎ、穴20を、当該穴を塞ぐために貼りつけられた、図示しないフィルムに穴を開けるか、あるいはフィルムを、上記穴20の部分のみ剥がすことによって露出させるとともに、さらに必要に応じて、界面22から空気が侵入するようであれば、当該界面22をシールテープなどで塞いでやる。
【0014】
つぎに、上記のようにパッキン40aを穴20に圧入することによって、供給管40を、減圧時の気密を維持しうるように、インクカートリッジ2に接続する。つぎに、ポンプ41を作動させつつ切り換え弁43を操作して、ポンプ41とインクタンク42とを接続する。そうすると、インクタンク42内の空気が吸引され、それにともなってインクカートリッジ2内の空気が供給管40を通して吸引されて、インクカートリッジ2内が減圧される。インクカートリッジ2内をどの程度、減圧するかは、図示しない圧力ゲージの指標などを参照すればよい。
【0015】
つぎに、インクカートリッジ2内が所定の圧力まで減圧された段階で、切り換え弁43を操作して、インクタンク42を外気吸入管44と接続して、インクタンク42内に外気を導入する。そうすると内外の圧力差によって、インクタンク42内のインクIの液面が下方に押し下げられ、その分のインクIが、供給管40を通って、減圧されたインクカートリッジ2内に補給される。インクの補給量は、たとえばインクタンク42に設けた液面計の指標や、供給管40の途中に設けた流量計(いずれも図示せず)の指標などを参考にして調べればよい。
【0016】
つぎに、インクカートリッジ2内に所定量のインクIが補給された時点で、切り換え弁43を操作してインクタンク42を外気から閉じてやると、インクIの流れが停止して、1回のインク補給作業が終了する。なお前記の、インクカートリッジ2内が所定の圧力まで減圧された段階での切り換え弁43の操作や、あるいは所定量のインクが補給された時点での切り換え弁43の操作を、たとえば切り換え弁43として電磁弁などを用いることによって、電気信号などで自動的に行うようにすると、作業を簡略化できる。また、内外の圧力差がなくなって自然にインクの補給が止まるように、インクカートリッジ2内の減圧の程度を調整してもよく、その場合にも作業を簡略化できる。
【0017】
つぎに図2に示したインク補給装置5について説明する。図の装置5は、インクカートリッジ2に接続されるインクの供給管50と、減圧手段としての電動式などのポンプ51との間に切り換え弁52を設けるとともに、この切り換え弁52の切り換え先に、外気に開放されたインク容器としてのインクタンク53を設けたものである。
【0018】
供給管50は、先程と同様にその途中にパッキン50aを備えており、かかるパッキン50aを穴20に圧入することで、気密を維持しつつ、インクカートリッジ2と接続される。切り換え弁52は、インクカートリッジ2内を減圧する際には、供給管50をポンプ51と接続し、減圧されたインクカートリッジ2内にインクを供給する際には、供給管50をインクタンク53と接続するように切り換えられる弁である。
【0019】
かかる装置5を用いて、インクカートリッジ2にインクを補給するには、まず先の場合と同様に、インクの出口21をシールなどで塞ぎ、穴20を、当該穴を塞ぐために貼りつけられた、図示しないフィルムに穴を開けるか、あるいはフィルムを、上記穴20の部分のみ剥がすことによって露出させるとともに、さらに必要に応じて、界面22から空気が侵入するようであれば、当該界面22をシールテープなどで塞いでやる。
【0020】
つぎに、上記のようにパッキン50aを穴20に圧入することによって、供給管50を、減圧時の気密を維持しうるように、インクカートリッジ2に接続する。つぎに、ポンプ51を作動させつつ切り換え弁52を操作して、供給管50とポンプ51とを接続する。そうすると、インクカートリッジ2内の空気が供給管50を通して吸引されて、インクカートリッジ2内が減圧される。
【0021】
つぎに、インクカートリッジ2内が所定の圧力まで減圧された段階で、切り換え弁52を操作して、供給管50とインクタンク53とを接続すると、内外の圧力差によって、インクタンク53内のインクIの液面が下方に押し下げられ、その分のインクIが、供給管50を通って、減圧されたインクカートリッジ2内に補給される。
【0022】
つぎに、インクカートリッジ2内に所定量のインクIが補給された時点で切り換え弁52を操作して、供給管50とインクタンク53との接続を閉じてやると、インクIの流れが停止して、1回のインク補給作業が終了する。上記切り換え弁52の切り換えのタイミングは、先の場合と同様に、図示しない圧力ゲージや液面計、流量計の指標などを参考にして手動で行ってもよく、切り換え弁52として電磁弁を使用して、自動で行ってもよい。
【0023】
なお図中符号54は、上記のようにして1回のインク補給作業が終了した後、再びインク補給作業を行うべく、切り換え弁52を操作して供給管50とポンプ51とを接続した際に、供給管50に残っていたインクがポンプ51に流れ込んで故障の原因となるのを防止するためのトラップである。
【0024】
上記以外のインク補給装置としては、たとえばインクカートリッジの全体を収容する密閉式の減圧室(簡単な気密構造でよい)を備えた装置なども採用できる。要するに、本発明の要旨を変更しない範囲で、種々の変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のインク補給方法を実施するための、インク補給装置の一例を示す概略正面図である。
【図2】本発明のインク補給方法を実施するための、インク補給装置の他の例を示す概略正面図である。
【図3】従来のインク補給方法の一例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0026】
I インク
2 インクカートリッジ
20 穴
21 出口
22 界面
3 フェルト
4 インク補給装置
40 供給管
40a パッキン
41 ポンプ
42 インクタンク
43 弁
44 外気吸入管
5 インク補給装置
50 供給管
50a パッキン
51 ポンプ
52 弁
53 インクタンク
9 インク補給具
91 インク容器
92 注入部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクカートリッジにインクを補給する方法であって、上記インクカートリッジ内を減圧手段によって減圧した状態で、補給用のインクが充てんされたインク容器からインクを補給することを特徴とするインク補給方法。
【請求項2】
インクカートリッジに接続されるインクの供給管と、減圧手段としてのポンプと、前記両者の間に設けられた、インク容器としての、外気から密閉されたインクタンクと、インクタンクを外気に開放するための外気吸入管と、前記ポンプとインクタンクと外気吸入管との間に設けられた、インクカートリッジ内を減圧する際に、インクタンクをポンプと接続し、減圧されたインクカートリッジ内にインクを供給する際に、インクタンクを外気吸入管と接続するように切り換えられる切り換え弁とを備えることを特徴とするインク補給装置。
【請求項3】
インクカートリッジに接続されるインクの供給管と、減圧手段としてのポンプと、インク容器としての、外気に開放されたインクタンクと、前記供給管とポンプとインクタンクとの間に設けられた、インクカートリッジ内を減圧する際に、供給管をポンプと接続し、減圧されたインクカートリッジ内にインクを供給する際に、供給管をインクタンクと接続するように切り換えられる切り換え弁とを備えることを特徴とするインク補給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−30524(P2007−30524A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306284(P2006−306284)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【分割の表示】特願平10−14499の分割
【原出願日】平成10年1月27日(1998.1.27)
【出願人】(000108306)ゼネラル株式会社 (17)
【Fターム(参考)】