説明

インナーフォーカス方式ズームレンズシステム

【課題】本発明はイメージセンサーを具備するカメラモジュールに使用され、液晶レンズを利用するインナーフォーカス方式のズームレンズシステムに関するものである。
【解決手段】上記インナーフォーカス方式ズームレンズシステムは、物体側の最近傍に位置し固定された対物レンズ群と、像側の最近傍に位置し固定された集光レンズ群と、上記対物レンズ群と集光レンズ群との間に位置し変倍を行なうために移送される少なくとも一つの移送レンズ群を具備するインナーフォーカス方式ズームレンズシステムにおいて、印加される電圧によって屈折率とアッベ数(abbe number)が変わる液晶物質が内部空間に満たされた液晶レンズを含み、上記移送レンズ群の移送によって変倍が行なわれる場合に上記液晶物質の屈折率とアッベ数の変化によって像面の補正を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はズームレンズシステムに関するものであり、より詳しくはイメージセンサーを具備する撮像用カメラモジュールに使用され、インナーフォーカス方式に適したズームレンズシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ズームレンズのフォーカシング(focusing)方式は、物体側に最も近い第1レンズ群を移送させる1群供給方式が一般的である。こうした1群供給方式は同距離の被写体のフォーカシングに必要な第1レンズ群の移送量が焦点距離に依存しないという利点があることから広く使用される。
【0003】
しかし、かかる1群供給方式の場合には比較的大きくて重い第1レンズ群を移送させフォーカシングを行うため、移送速度が遅く駆動電力が大きいという問題点がある。また、一般的に高解像度などの優れた光学的特性を得るために多数のレンズが使用されるので、カメラモジュールの大きさが大きくなり携帯機器に装着することが困難であるという問題点がある。
【0004】
一方、ズームレンズのフォーカシング方式として像面側のレンズを移送させるリアフォーカス(rear focus)方式が使用されることもある。こうしたリアフォーカス方式は同距離の被写体のフォーカシングに必要なフォーカシングレンズの移送量がズーム位置によって大きく異なり、近距離物体にフォーカシングした後に変倍を行うと焦点が外れるという問題点がある。
【0005】
また、ズームレンズのフォーカシング方式で対物レンズと集光レンズとの間に具備されるレンズを移送させるインナーフォーカス方式が使用されることもある。
【0006】
前述したフォーカシング方式は一般的に変倍を行なうために1つ以上のレンズ群を移送させ、上記レンズ群の移送による像面を補正するためにさらに他のレンズ群を移送させるよう構成されているので、レンズ移送装置が複雑になり、小型化に反するという問題点がある。
【0007】
従って、1つのレンズ群のみを移送しても十分な変倍性能と高解像度を得ることのできるズームレンズシステムが要求される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような問題点を解決するためのもので、1つのレンズ群のみを移送しながらも十分な変倍性能を得ることのできるインナーフォーカス方式ズームレンズシステムを提供することを目的とする。
【0009】
さらに、少ない枚数のレンズを使用しながらも高解像度を具現することができ、小型化が可能なインナーフォーカス方式ズームレンズシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような目的を成し遂げるための一側面として本発明は、物体側の最近傍に位置して固定された対物レンズ群と、像側の最近傍に位置して固定された集光レンズ群と、上記対物レンズ群と集光レンズ群との間に位置して変倍を行なうために移送される少なくとも一つの移送レンズ群を具備するインナーフォーカス方式ズームレンズシステムにおいて、印加される電圧によって屈折率とアッベ数(abbe number)が変わる液晶物質が内部空間に満たされた液晶レンズを含み、上記移送レンズ群の移送によって変倍が行なわれる場合に上記液晶物質の屈折率とアッベ数の変化によって像面の補正を行うことを特徴とするインナーフォーカス方式ズームレンズシステムを提供する。
【0011】
この際、上記液晶レンズは上記移送レンズ群の移送によって変倍が行なわれる際、上記移送レンズ群とともに移送されることも可能であり、固定された状態を維持することも可能である。
【0012】
好ましくは、上記液晶レンズは物体側のカバー面に該当する透明な第1基板と、像側カバー面に該当し上記液晶物質が満たされる内部空間を形成するよう上記第1基板と所定間隔を置いて対向し設けられた透明な第2基板を具備し、上記液晶物質の屈折率は上記第1基板または第2基板の屈折率を境界にしてその前後に変化することができる。
【0013】
また、好ましくは、上記第1基板の像側屈折面と上記第2基板の物体側屈折面の中の少なくとも一つは球面または非球面からなることができる。
【0014】
また、上記液晶物質の光軸における厚さと有効口径における厚さは1〜25μmであることが好ましい。
【0015】
他の側面として本発明は、負の屈折力を有し固定された第1レンズ群、広角端から望遠端への変倍時上記第1レンズ群との間隔が減少するよう移送されながら変倍を行い、印加される電圧によって屈折率とアッベ数(abbe number)が変わる液晶物質が満たされた液晶レンズを具備して上記液晶物質の屈折率とアッベ数の変化によって像面の補正を行い、全体的に正の屈折力を有する第2レンズ群、及び正の屈折力を有し固定された第3レンズ群、とを含むインナーフォーカス方式ズームレンズシステムを提供する。
【0016】
好ましくは、上記液晶レンズは物体側カバー面に該当する透明な第1基板と、像側カバー面に該当し上記液晶物質が満たされる内部空間を形成するように上記第1基板と所定間隔を置いて対向し設けられた透明な第2基板を具備し、上記液晶物質の屈折率は上記第1基板または第2基板の屈折率を境界にしてその前後に変化するようにできる。
【0017】
さらに他の側面として本発明は、負の屈折力を有し固定された第1レンズ群、印加される電圧によって屈折率とアッベ数(abbe number)が変わる液晶物質が満たされた液晶レンズを具備し、上記液晶物質の屈折率とアッベ数の変化によって変倍による像面の補正を行う、固定された第2レンズ群、全体的に正の屈折力を有し、広角端から望遠端への変倍時上記第2レンズ群との間隔が減少するよう移送されながら変倍を行なう第3レンズ群、及び正の屈折力を有して固定された第4レンズ群、とを含むインナーフォーカス方式ズームレンズシステムを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、液晶レンズを利用することで一つのレンズ群のみを移送しながらも十分な変倍性能を有するインナーフォーカス方式のズームを具現することができるという有利な効果を得ることが可能となる。
【0019】
さらに、少ない枚数のレンズを使用しながらも高解像度を具現することができ、小型化が可能であるという効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施例に対して添付の図面に基づいてより詳しく説明する。
【0021】
図1及び図5はそれぞれ本発明によるインナーフォーカス方式ズームレンズシステムの第1実施例及び第2実施例を示したレンズ構成図である。図1及び図5のレンズ構成図として、レンズの厚さ、大きさ、形状は説明のためにやや誇張され図示しているが、とりわけレンズ構成図で提示された球面または非球面の形状は一例として提示されるだけであり、この形状に限られるわけではない。
【0022】
一般的に、カメラモジュールは少なくとも一つのレンズ、内部に所定の空間が形成され上記レンズを収容するハウジング、上記レンズによる結像面に対応するイメージセンサー、上記ハウジングの他端に固定設置されその一面に上記イメージセンサーが装着されて上記イメージセンサーから感知されたイメージを処理するための回路基板などからなっている。本発明はこのようなカメラモジュールに使用されるインナーフォーカス方式ズームレンズシステムに関するものである。
【0023】
本発明によるインナーフォーカス方式ズームレンズシステムは、物体側の最近傍に位置し固定されて物体から光が入射する対物レンズ群と、像側の最近傍に位置し固定され結像面に像を結像する集光レンズ群と、上記対物レンズ群と集光レンズ群との間に位置し変倍を行なうために移送される少なくとも一つの移送レンズ群を具備し、印加される電圧によって屈折率とアッベ数(abbe number)が変わる液晶物質が内部空間に満たされた液晶レンズ(liquid−crystal lens)を含むことを特徴とする。
【0024】
上記液晶レンズは上記移送レンズ群の移送によって変倍が行なわれる場合に上記液晶物質の屈折率とアッベ数の変化に応じて像面の補正を行うことにより、固定されている上記対物レンズ群や集光レンズ群に具備されることも可能で、変倍時移送される移送レンズ群に具備されることも可能である。
【0025】
例えば、本発明の第1実施例を示す図1の場合に上記対物レンズ群、移送レンズ群、集光レンズ群、液晶レンズは各々第1レンズ群LG1、第2レンズ群LG2、第3レンズ群LG3、第3レンズL3に該当する。
【0026】
この際、液晶レンズからなる上記第3レンズL3は上記第2レンズ群LG2が変倍のために移送される場合に上記第2レンズ群LG2とともに移送するようになり、その内部空間に満たされた液晶物質の屈折率が変化されながら変倍による像面の補正を行うようになる。
【0027】
また、本発明の第2実施例を示した図5の場合に、上記対物レンズ群、移送レンズ群、集光レンズ群、液晶レンズはそれぞれ第1レンズ群LG1、第3レンズ群LG3、第4レンズ群LG4、第2レンズL2に該当する。
【0028】
この際、液晶レンズからなる上記第2レンズL2は上記第3レンズ群LG3が変倍のために移送される場合に固定された位置を維持し、その内部に満たされた液晶物質の屈折率が変化されながら変倍による像面の補正を行うようになる。
【0029】
一般的に、自動焦点調節のために使用される液晶レンズは液晶物質を硝子などの透明な基板の間に設け、上記液晶物質に電圧を印加するために透明な電極を設け、透明電極に印加する電圧を変化させることで上記液晶物質の屈折率を変化させ液晶レンズの焦点距離を電気的に変化させることが可能となる。
【0030】
本発明によるインナーフォーカス方式ズームレンズシステムは、このような液晶レンズを利用して変倍による像面の補正を行うことができるので、変倍の際一つのレンズ群のみを移送させることが可能となる。
【0031】
従って、本発明によって変倍を行なう場合には従来に比して像面の補正のために2つ以上のレンズ群を移送する必要がないので、レンズ移送が容易で、かつカメラモジュールの小型化が可能になるという利点がある。
【0032】
図2a及び図2bは、本発明によるズームレンズシステムに使用される液晶レンズの断面図である。
【0033】
図2に示すように、上記液晶レンズ100は上記液晶レンズは物体側のカバー面に該当する透明な第1基板101と、像側のカバー面に該当し上記第1基板101と所定間隔を置き対向して設けられた透明な第2基板102と、上記第1基板101と上記第2基板102の間に形成される内部空間に満たされる液晶物質111を具備し、上記内部空間を密封するために密閉部材121が設けられる。
【0034】
上記密閉部材121は温度変化による上記液晶物質111の体積変化が収容できるようダンパフィルム(damper film) などから形成することができる。
【0035】
また、上記液晶レンズ100は上記液晶物質111に電圧を印加するために第1基板101側に透明な第1電極112を具備し、第2基板102側に透明な第2電極113を具備する。
【0036】
このように上記第1電極112と第2電極113を通して上記液晶物質111に電圧を印加するようになると、印加された電圧によって液晶物質111の屈折率が変化するようになる。
【0037】
従って、変倍時移送レンズ群が移送されることによって上記液晶物質111に印加される電圧の大きさを調節し焦点調節及び像面の補正が可能になる。
【0038】
この際、上記液晶物質111の屈折率は上記第1基板101または第2基板102の屈折率を境界にしてその前後に変化するように設定することができる。
【0039】
例えば、上記第1基板101と第2基板102を屈折率が1.517の透明基板を使用し、上記液晶物質111の屈折率を1.5から1.7の間で変化させると、上記基板101、102と液晶物質111との間の屈折率の差によって一つの屈折面から凹の屈折面と凸の屈折面を具現することが可能となる。
【0040】
即ち、上記液晶レンズ100の屈折力が正から負へ、あるいは負から正へ変化することにつれ広い範囲の自動焦点及び像面補正を具現することが可能であるという利点がある。
【0041】
このような液晶物質111は入射光の偏光方向にかかわらず焦点距離が可変できるようネマチック(nematic) 液晶など公知の物質を使用することができ、上記液晶物質に電圧を印加して所望の屈折率とアッベ数を得ることができる。
【0042】
また、上記第1基板101と液晶物質111の境界面、あるいは上記第2基板102と液晶物質111の境界面を球面または非球面の屈折面で形成することにより所望の光学的特性を具現することもできる。
【0043】
即ち、図2aのように、上記第2基板102と液晶物質111の境界面(第2基板の物体側屈折面)を物体側に凸した面になるよう形成することも可能であり、図2bのように上記第2基板102と液晶物質111の境界面(第2基板の物体側屈折面)を物体側に凹んだ面になるよう形成することも可能である。
【0044】
これとは違って、第1基板101と液晶物質111の境界面(第1基板の像側屈折面)を凹や凸の球面または非球面で形成することも可能である。
【0045】
また、レンズシステムの光学的特性に合わせ上記第1基板101の物体側面や上記第2基板102の像側面に凹または凸の屈折面を形成することも可能である。
【0046】
一方、上記液晶レンズ100は図2に示すように外径(outer diameter;OD)と有効口径(effective aperture;EA)を有する。
【0047】
この際、光軸131上の液晶物質111の厚さ(t1)と有効口径(EA)上の液晶物質111の厚さ(t2)は1〜25μmであることが好ましい。
【0048】
電圧を印加し所望の焦点距離になるまでの回答時間は一般的に液晶物質111の厚さの二乗に比例するため、仮に上限を越え光軸131と有効口径(EA)上の厚さ(t1、t2)が25μmより大きくなると回答時間が長くなるという問題点がある。
【0049】
一方、下限を外れて光軸131と有効口径(EA)上の厚さ(t1、t2)が1μmより小くなると液晶レンズ100の製作が難しくなる。とりわけ、焦点距離の変化を大きくするためには液晶物質111の厚さを大きくしなければならないので、所望の焦点距離が得にくくなり十分な変倍割合が具現できないという問題点がある。
【0050】
以下、具体的な数値実施例を通じて本発明について説明する。
【0051】
以下の各実施例で使用される非球面は公知の数学式1から得られ、円錐(Conic) 定数(K)及び非球面係数(A、B、C、D)に使用される'E及びこれに繋がる数字'は10の累乗を表す。例えば、E+21は1021を、E-05は10-5を表す。
【数1】

Z:レンズの頂点から光軸方向への距離
Y:光軸に垂直な方向への距離
r:レンズの頂点における曲率半径
K:円錐(Conic)定数
A、B、C、D:非球面係数
【実施例1】
【0052】
図1aは、本発明の第1実施例によるインナーフォーカス方式ズームレンズシステムの広角端におけるレンズ配置を示すレンズ構成図で、図1bは望遠端におけるレンズ配置を示すレンズ構成図である。
【0053】
図1a及び図1bに示すように、本発明の第1実施例によるインナーフォーカス方式ズームレンズシステムは、負の屈折力を有し固定された第1レンズ群LG1、正の屈折力を有し広角端から望遠端への変倍時上記第1レンズ群LG1との間隔が減少するように移送されながら、変倍を実行し液晶レンズを具備する第2レンズ群LG2及び正の屈折力を有し固定された第3レンズ群LG3からなる。
【0054】
この際、弱い負の屈折力を有する第1レンズ群LG1と弱い正の屈折力を有する第3レンズ群LG3を固定させ、上記第3レンズ群LG3より強い正の屈折力を有する第2レンズ群LG2を広角端から望遠端への変倍時上記第1レンズ群LG1との間隔が減少するように移動させ変倍を行なう。
【0055】
即ち、上記第1レンズ群LG1は負の屈折力を有することで光を発散するため、第2レンズ群LG2は正の屈折力を有するように構成し、広角端から望遠端への変倍時上記第2レンズ群LG2は上記第1レンズ群LG1との間隔が減少するようにする。
【0056】
また、上記第2レンズ群LG2は液晶レンズL3を具備し、前述したように印加される電圧によって液晶レンズL3に具備された液晶物質の屈折率とアッベ数が変化されながら像面の補正を行うようになる。
【0057】
このような液晶レンズL3は図2aのような形状を有する。
即ち、物体側カバー面に該当する透明な第1基板101と、像側カバー面に該当し液晶物質111が満たされる内部空間を形成するように上記第1基板101と所定間隔を置き対向して設けられた透明な第2基板102を具備し、上記第2基板102の物体側屈折面は物体側に凸した球面に形成される。
【0058】
また、上記液晶物質111の屈折率は上記第1基板101または第2基板102の屈折率を境界にしてその前後に変化する。
【0059】
即ち、本発明の第1実施例の場合、上記第1基板101と第2基板102は屈折率が1.517であり、アッベ数が64.1の透明な硝子基板を使用し、この際上記液晶物質の屈折率とアッベ数は広角端において各々1.50と65.0であり、望遠端において各々1.70と30.0である。
【0060】
一方、上記第3レンズ群LG3の裏側には赤外線フィルター(IF)、カバーガラス(CG)などからなる光学的フィルター(optical filter)が具備されることができ、このような光学的フィルターは本発明の光学的特性には原則的に影響を及ぼさないものにする。
【0061】
また、イメージセンサーISは固体撮像素子(Charged Coupled Device;CCD) 及び補償金属半導体(Complementarly Metal Oxide Semiconduct;CMOS) などからなり、レンズが形成する像を受光する像面(感光面)15に対応して第3レンズ群LG3裏側に配置されている。
【0062】
具体的に、上記第1レンズ群LG1は物体側に凸した負メニスコスレンズ(meniscus lens)である第1レンズL1のみからなる。
【0063】
また、上記第2レンズ群LG2は全体的に正の屈折力を有し、物体側に凸した正メニスコスレンズである第2レンズL2、印加される電圧によって屈折率とアッベ数が変わる液晶レンズである第3レンズL3、正凸レンズである第4レンズL4、像側屈折面12が凹の第5レンズL5からなり、第3レンズ群LG3は正の屈折力を有する第6レンズL6のみからなる。
【0064】
一方、開口絞り(S)は第2レンズL2の物体側屈折面3全面に位置して変倍第2レンズ群LG2とともに移送される。
【0065】
下記の表1は本発明の第1実施例による数値例を表している。
【0066】
また、図3a〜3cは、各々表1及び図1に示したレンズシステムの広角端における球面収差、非点収差、歪曲収差を表し、図4a〜図4cは各々図1及び図1に示したレンズシステムの望遠端における球面収差、非点収差、歪曲収差を表す。この際、非点収差図面で示す"S"はサジタル(sagittal)、"T"はタンジェンシャル(tangential)を示す。
【0067】
第1実施例において、広角端でレンズシステム全体の有効焦点距離(effective focal length;f)は6.0mmで、望遠端においてレンズシステム全体の有効焦点距離(f)は12.0mmであり、変倍割合(zoomratio、f/f)は2.0である。
【0068】
また、第1レンズ群LG1の有効焦点距離(f)は-13.13mmで、第2レンズ群LG2の有効焦点距離(fII)は広角端において8.3mm、望遠端において7.95mmで、第3レンズ群LG3の有効焦点距離(fIII)は10.86mmである。
【0069】
また、Fナンバー(FNo)は広角端において2.8、望遠端において4.0で、レンズの全画角(2ω)は広角端において62°、望遠端において33°であり、第1レンズ群LG1の一番目レンズL1の物体側屈折面1から像面までの距離(total length;TL)は25.0mmである。
【0070】
【表1】

表1で※は、各々変倍の際に面間隔が変わる屈折面と、液晶レンズの屈折率とアッベ数を示し、広角端と望遠端における面間隔、液晶レンズの屈折率とアッベ数は次の表2のとおりである。
【表2】

【0071】
また、表1では、非球面を表し、式1による円錐定数(K)及び非球面係数(A、B、C、D)の値は次の表3のとおりである。
【表3】

【0072】
このような本発明の第1実施例によるインナーフォーカス方式ズームレンズシステムは液晶レンズを使用することで第2レンズ群LG2のみを移送させ変倍及び像面補正を行なうことができ、6枚のレンズのみでも図3及び図4に示すように諸収差の特性が優れ、小型化が可能であるという利点がある。
【実施例2】
【0073】
図5aは、本発明の第2実施例によるインナーフォーカス方式ズームレンズシステムの広角端におけるレンズ配置を示すレンズ構成図で、図5bは望遠端におけるレンズ配置を示すレンズ構成図である。
【0074】
不必要な重複を避けるために、第1実施例と同じであるか、類似した部分に対する詳しい説明は省略することにする。
【0075】
図5a及び図5bに示すように、本発明の第2実施例によるインナーフォーカス方式ズームレンズシステムは、負の屈折力を有し固定された第1レンズ群LG1、液晶レンズL2を具備し固定された第2レンズ群LG2、全体的に正の屈折力を有し広角端から望遠端への変倍時上記第2レンズ群LG2との間隔が減少するように移送されながら変倍を行なう第3レンズ群LG3及び正の屈折力を有し固定された第4レンズ群LG4からなり、上記第4レンズ群LG4の裏側にはイメージセンサーISが配置されている。
【0076】
この際、弱い負の屈折力を有する第1レンズ群LG1と弱い正の屈折力を有する第4レンズ群LG4を固定させ、上記第4レンズ群LG4より強い正の屈折力を有する第3レンズ群LG3を広角端から望遠端への変倍時、上記第2レンズ群LG2との間隔が減少するように移動させ変倍を行なう。
【0077】
即ち、上記第1レンズ群LG1は正の屈折力を有するので光を発散するため上記第3レンズ群LG3は正の屈折力を有するように構成し、広角端から望遠端への変倍時、上記第3レンズ群LG3は上記第2レンズ群LG2との間隔が減少するようにする。
【0078】
また、上記第2レンズ群LG2は液晶レンズL2を具備し、前述したように印加される電圧によって液晶レンズL2に具備された液晶物質の屈折率とアッベ数が変化されながら像面の補正を行うようになり、このような液晶レンズL2は第1実施例で説明したように図2aの形状及び構造を有する。
【0079】
具体的に、第2実施例の場合に上記第1レンズ群LG1は物体側に凸した負メニスコスレンズ(meniscus lens)である第1レンズL1のみからなり、上記第2レンズ群LG2は印加される電圧によって屈折率とアッベ数が変わる液晶レンズである第2レンズL2のみからなり、上記第3レンズ群LG3は第3レンズL3、 第4レンズL4と第5レンズL5の3枚のレンズからなり全体的に正の屈折力を有する。また、上記第4レンズ群LG4は正の屈折力を有する第6レンズL6 のみからなり、開口絞り(S)は第3レンズL3の物体側屈折面7全面に位置して変倍時第3レンズ群LG3とともに移送される。
【0080】
下記の表4は本発明の第2実施例による数値例を表している。
【0081】
また、図5aは本発明の第2実施例によるインナーフォーカス方式ズームレンズシステムの広角端におけるレンズ配置を表すレンズ構成図であり、図5bは望遠端におけるレンズ配置を示すレンズ構成図であり、図6a〜図6cは各々表4及び図5に示したレンズシステムの広角端における球面収差、非点収差、歪曲収差を表し、図7a〜図7cは各々表4及び図5に示したレンズシステムの望遠端における球面収差、非点収差、歪曲収差を示す。この際、非点収差図面で示す"S"はサジタル(sagittal)、"T"はタンジェンシャル(tangential)を示す。
【0082】
第2実施例において、広角端においてレンズシステム全体の有効焦点距離(effective focal length;f)は6.2mmで、望遠端においてレンズシステム全体の有効焦点距離(f)は12.4mmであり、変倍割合(zoom ratio、f/f)は2.0である。
【0083】
また、第1レンズ群LG1の有効焦点距離(f)は-15.11mmで、第2レンズ群LG2の有効焦点距離(fII)は広角端において-1630mm、望遠端において1450mmで、第3レンズ群LG3の有効焦点距離(fIII)は8.48mmで、第4レンズ群LG4の有効焦点距離(fIV)は10.0mmである。この際、液晶レンズL2のみからなる第2レンズ群LG2の屈折力はその値が正から負に変わるので、広い領域に対する像面補正ができるようになる。
【0084】
また、Fナンバー(FNo)は広角端において2.8、望遠端において4であり、レンズの全画角(2ω)は広角端において62°、望遠端において33°であり、第1レンズ群LG1の一番目レンズL1の物体側屈折面1から像面までの距離(total length;TL)は24.96mmである。
【0085】
【表4】

表4で※は、各々変倍の際に面間隔が変わる屈折面と、液晶レンズの屈折率とアッベ数を示し、広角端と望遠端における面間隔、液晶レンズの屈折率とアッベ数は次の表5のとおりである。
【表5】

【0086】
また、表4では、非球面を表し、式1による円錐定数(K)及び非球面係数(A、B、C、D)の値は次の表6のとおりである。
【表6】

【0087】
このような本発明の第2実施例によるインナーフォーカス方式ズームレンズシステムは液晶レンズを使用することで第3レンズ群LG3のみを移送させ変倍及び像面補正を行なうことができ、6枚のレンズのみでも図6及び図7に示すように諸収差の特性が優れ、小型化が可能であるという利点がある。
【0088】
本発明は特定の実施例に係わり図示し説明したが、当業界において通常の知識を有するものであれば本発明の特許請求範囲に記載された本発明の思想及び領域を外れない範囲内で本発明を多様に修正及び変更できることを明かしておく。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は本発明の第1実施例によるインナーフォーカス方式ズームレンズシステムのレンズ構成図であって、図1aは広角端におけるレンズ構成図、図1bは望遠端におけるレンズ構成図を示す。
【図2】本発明によるズームレンズシステムに使用される液晶レンズを示すもので、図2aは凹の屈折面を有する液晶レンズの断面図で、図2bは凸の屈折面を有する液晶レンズの断面図である。
【図3】図1に示す第1実施例の広角端における収差図を図解したものであって、図3aは球面収差、図3bは非点収差、図3cは歪曲をそれぞれ表す。
【図4】図1に示す第1実施例の望遠端における収差図を図解したものであって、図4aは球面収差、図4bは非点収差、図4cは歪曲をそれぞれ表す。
【図5】本発明の第2実施例によるインナーフォーカス方式ズームレンズシステムのレンズ構成図であり、図5aは広角端でのレンズ構成図で、図5bは望遠端におけるレンズ構成図を表す。
【図6】図5に示す第2実施例の広角端における収差図を図解したものであって、図6aは球面収差、図6bは非点収差、図6cは歪曲をそれぞれ表す。
【図7】図5に示す第2実施例の望遠端における収差図を図解したものであって、図7aは球面収差、図7bは非点収差、図7cは歪曲をそれぞれ表す。
【符号の説明】
【0090】
LG1 第1レンズ群
LG2 第2レンズ群
LG3 第3レンズ群
LG4 第4レンズ群
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
L6 第6レンズ
IS イメージセンサー
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10 屈折面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側の最近傍に位置して固定された対物レンズ群と、像側の最近傍に位置し固定された集光レンズ群と、上記対物レンズ群と集光レンズ群との間に位置し変倍を行なうために移送される少なくとも一つの移送レンズ群を具備するインナーフォーカス方式ズームレンズシステムにおいて、
印加される電圧によって屈折率とアッベ数(abbe number)が変わる液晶物質が内部空間に満たされた液晶レンズを含み、
上記移送レンズ群の移送によって変倍が行なわれる場合に上記液晶物質の屈折率とアッベ数の変化によって像面の補正を行うことを特徴とするインナーフォーカス方式ズームレンズシステム。
【請求項2】
上記液晶レンズは上記移送レンズ群の移送によって変倍が行なわれる際、上記移送レンズ群とともに移送されることを特徴とする請求項1に記載のインナーフォーカス方式ズームレンズシステム。
【請求項3】
上記液晶レンズは上記移送レンズ群の移送によって変倍が行なわれる際、固定された状態を維持することを特徴とする請求項1に記載のインナーフォーカス方式ズームレンズシステム。
【請求項4】
上記液晶レンズは物体側のカバー面に該当する透明な第1基板と、像側のカバー面に該当し上記液晶物質が満たされる内部空間を形成するよう上記第1基板と所定間隔を置いて対向し設けられた透明な第2基板を具備し、
上記液晶物質の屈折率は上記第1基板または第2基板の屈折率を境界にしてその前後に変化することを特徴とする請求項1に記載のインナーフォーカス方式ズームレンズシステム。
【請求項5】
上記第1基板の像側屈折面と上記第2基板の物体側屈折面の中の少なくとも一つは球面または非球面からなることを特徴とする請求項4に記載のインナーフォーカス方式ズームレンズシステム。
【請求項6】
上記液晶物質の光軸における厚さ及び有効口径における厚さは1〜25μmであることを特徴とする請求項4に記載のインナーフォーカス方式ズームレンズシステム。
【請求項7】
負の屈折力を有し固定された第1レンズ群、
広角端から望遠端への変倍時、上記第1レンズ群との間隔が減少するように移送されながら変倍を行い、印加される電圧によって屈折率とアッベ数(abbe number)が変わる液晶物質が満たされた液晶レンズを具備して上記液晶物質の屈折率とアッベ数の変化によって像面の補正を行い、全体的に正の屈折力を有する第2レンズ群、及び
正の屈折力を有し固定された第3レンズ群、
を含むインナーフォーカス方式ズームレンズシステム。
【請求項8】
上記液晶レンズは物体側のカバー面に該当する透明な第1基板と、像側カバー面に該当し上記液晶物質が満たされる内部空間を形成するよう上記第1基板と所定間隔を置いて対向し設けられた透明な第2基板を具備し、
上記液晶物質の屈折率は上記第1基板または第2基板の屈折率を境界にしてその前後に変化することを特徴とする請求項7に記載のインナーフォーカス方式ズームレンズシステム。
【請求項9】
上記第1基板の像側屈折面と上記第2基板の物体側屈折面の中の少なくとも一つは球面または非球面からなることを特徴とする請求項8に記載のインナーフォーカス方式ズームレンズシステム。
【請求項10】
上記液晶物質の光軸上の厚さ及び有効口径上の厚さは1〜25μmであることを特徴とする請求項8に記載のインナーフォーカス方式ズームレンズシステム。
【請求項11】
負の屈折力を有し固定された第1レンズ群、
印加される電圧によって屈折率とアッベ数(abbe number)が変わる液晶物質が満たされた液晶レンズを具備し上記液晶物質の屈折率とアッベ数の変化によって変倍による像面の補正を行う、固定された第2レンズ群、
全体的に正の屈折力を有し、広角端から望遠端への変倍時、上記第2レンズ群との間隔が減少するように移送されながら変倍を行なう第3レンズ群、及び
正の屈折率を有し、固定された第4レンズ群、
を含むインナーフォーカス方式ズームレンズシステム。
【請求項12】
上記液晶レンズは物体側のカバー面に該当する透明な第1基板と、像側カバー面に該当し上記液晶物質が満たされる内部空間を形成するよう上記第1基板と所定間隔を置いて対向し設けられた透明な第2基板を具備し、
上記液晶物質の屈折率は上記第1基板または第2基板の屈折率を境界にしてその前後に変化することを特徴とする請求項11に記載のインナーフォーカス方式ズームレンズシステム。
【請求項13】
上記第1基板の像側屈折面と上記第2基板の物体側屈折面の中の少なくとも一つは球面または非球面からなることを特徴とする請求項12に記載のインナーフォーカス方式ズームレンズシステム。
【請求項14】
上記液晶物質の光軸上の厚さ及び有効口径上の厚さは1〜25μmであることを特徴とする請求項12に記載のインナーフォーカス方式ズームレンズシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−209122(P2006−209122A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15701(P2006−15701)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】