説明

インモールドラベル容器の製造方法およびインモールドラベル容器

【課題】ラベルを金型に挿入して射出成形するインモールドラベル容器の製造装置に関し、薄いラベル材料であっても金型内における正確な位置決めを可能とする。
【解決手段】連続状に供給されるラベル用材料12から帯状のラベル11を形成する帯状ラベル形成工程と、形成した帯状のラベル11を疑似コアの側面で保持する帯状ラベル保持工程と、側面で帯状ラベル11を保持した擬似コアを金型のキャビティ30に挿入し、帯状ラベル11をキャビティ30の内壁面に装着する帯状ラベル装着工程と、内壁面に帯状ラベル11が装着されたキャビティ30内に金型のコアを挿入して射出成形する射出成形工程を含むことを特徴とする、インモールドラベル容器の製造方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベルを金型に挿入して射出成形するインモールドラベル容器の製造方法および、当該方法によって製造したインモールドラベル容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形によりプラスチックの容器等を製造する際、射出成形する段階で、フィルム或いは紙、或いは合成紙で形成したラベルを同時に巻き付けて容器を製造するインモールドラベル容器の製造装置が使用されている。このようなインモールドラベル容器の製造装置は、一般的にはIML装置やラベルインサート装置、またはインモールドラベル装置等と呼ばれており、また、これらの装置によって作成された容器類はIML容器やラベルインサート容器、またはインモールドラベル容器と呼ばれている。(本明細書では、製造装置を「インモールドラベル容器製造装置」、容器を「インモールドラベル容器」とする。)
【0003】
そして、従来提供されているインモールドラベル容器製造装置でインモールドラベル容器を製造する際には、まず、予めラベル用材料から打抜形成したラベルを、ラック或いはマガジンに積み重ねておき、次いでこれを一枚ずつ掴むか、または吸引しながら保持して金型内に挿入し、その後、金型を閉じる時に、当該金型でラベルの縁が押されてラベルが最終的に金型内の正確な位置に押し込まれ、最後に成形樹脂を注入するという工程を踏んでいる。
【0004】
例えば特許文献1は、この種における従来の「ラベル付き容器を製造する方法と装置」であるが、この製造方法においても、金型内に挿入するラベルを事前に打ち抜き形成しておき、予め打ち抜き形成したラベルを平坦に積層して縦側壁及び底部壁でなるマガジンに保管している。そして該ラベルがマガジンから吸引カップにより抽出されて金型に挿入されるように構成している。また、ラベルは、50μm以下の厚さのものを使用したものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2001−521456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなインモールドラベル容器を比較的薄肉に形成する場合、ラベルが設けられる容器本体自体も肉薄になって、その保形性が十分でないことから、ラベルと肉薄の容器本体との間において生じる収縮量率の異差によって変形が生じてしまうものとなっていた。また、近年では材料費の削減や容器を廃棄する際の環境への影響も考慮されていることから、今後は容器自体が薄肉化する傾向になることが予想される。よって、このような容器の薄肉化の要請を満たす為には、収縮量の差の問題を解消するべく、比較的薄いラベル材料を使用することが望ましい。
【0007】
更に、従来使用されているような厚手の樹脂フィルム製のラベルを使用した場合には、当該ラベルの印刷面におけるインクが射出成形時の熱によって滲み、所謂、印刷流れの現象が生じてしまい、印刷の鮮明さが減じられることが考えられる。よって、このような印刷流れによる印刷の不鮮明さを解消する為に、比較的薄手のラベルを使用することが望ましい。
【0008】
しかしながら、このような比較的薄いラベル材料をインモールドラベル容器に使用する場合には、材料のコシがないため、金型を閉じてその縁が押し出される時に、容易にその縁が折れ曲がってしまい、金型内における正確な位置決めを行うことが出来なかった。
【0009】
また、従前のインモールドラベル容器製造装置(製造方法)では、ラベル用材料から打抜形成されたラベルは、ラック或いはマガジンに積層されているため、静電気或いはブロッキングにより相互に密着して離れにくくなる現象が生じ易く、特にラベルを薄くした場合には、ラベルを2枚以上掴むか吸引して金型に挿入してしまうという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題点を解消する為に成されたものであり、薄いラベル材料であってもラベルの金型内における正確な位置決めが可能であると共に、該ラベルを確実に1枚ずつ、金型内に装着できるようにした、インモールドラベル容器の製造方法とインモールドラベル容器を提供する事を第1の課題とする。
【0011】
また、インモールドラベル容器の製造に際して、比較的薄いラベルを使用する場合には、当該ラベルを金型内に装着する際にも、シワがより易く、また一旦金型内に装着した後においては移動することも困難であることから、従来のインモールドラベル容器製造装置では、所定の場所にシワや折れ曲がりを生じさせずに設置するのが困難であった。
【0012】
そこで本発明では、比較的薄いラベルであっても、金型内への装着時においてシワや折れ曲がりが生じないようにしたインモールドラベル容器の製造方法とインモールドラベル容器を提供する事を第2の課題とする。
【0013】
更に本発明では、薄手のラベルを使用してインモールドラベル容器を製造することにより、印刷流れの現象を阻止し、鮮明な印刷が施されたインモールドラベル容器を提供することを第3の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題の少なくとも何れかを解決するべく、本発明では、打ち抜いたラベルを金型内に受け渡す為の疑似コアを使用するものである。より具体的には、打ち抜いたラベルを、直接疑似コアに保持させて、ラベルを保持した擬似コアをそのまま金型内に挿入して金型のコア内にラベルを装着するようにしたものである。そして、このような疑似コアにラベルを受け渡す機構を介設した場合であっても、微少な位置ずれが生じる事が無いようにして、金型内におけるラベルの貼着位置に正確にラベルを装着するように構成したものである。
【0015】
すなわち、上記課題の少なくともいずれかを解決する為、本発明は、連続状に供給されるラベル用材料から帯状のラベルを形成する帯状ラベル形成工程と、形成した帯状のラベルを疑似コアの側面で保持する、帯状ラベル保持工程と、側面で帯状ラベルを保持した擬似コアを金型のキャビティに挿入し、帯状ラベルをキャビティの内壁面に装着する帯状ラベル装着工程と、内壁面に帯状ラベルが装着されたキャビティ内に金型のコアを挿入して射出成形する射出成形工程とを含むインモールドラベル容器の製造方法を提供する。
【0016】
上記インモールドラベル容器の製造方法において、前記帯状ラベル形成工程は、例えばロール状に巻かれたラベル材料を連続的に打抜形成部へ供給し、これを帯状のラベル形状に打抜き形成する事ができる。また連続的に供給されるラベル材料からレーザーなどによって帯状ラベルを切り抜き形成することもできる。なお、連続して供給されるラベル材料は、シート状であり、これには予めラベルが複数印刷されているものであり、帯状のラベルの図柄に合わせて打抜き又は切抜き形成されることが望ましい。
【0017】
上記インモールドラベル容器の製造方法において、前記帯状ラベル保持工程は、打ち抜かれた帯状のラベルを擬似コアで吸着する等によって保持されるものである事が望ましい。その他にも、適宜接着剤や粘着剤、或いは各種の保持構成などで擬似コアの側面に保持することもできる。
【0018】
上記インモールドラベル容器の製造方法において、前記装着工程は、擬似コアを正確に移動させる移送工程と、帯状のラベルをキャビティの内壁面に移動させる移転工程とからなることが望ましい。この移送工程では、側面で帯状のラベルを保持している擬似コアの軸方向に直交する面の平面中心を金型のキャビティの平面中心に一致させて、擬似コアをキャビティ内に進入させるものであり、移転工程は、擬似コアのキャビティ内への進入動作が完了した後に、帯状ラベルをキャビティの内壁面に移転させるものである。移送工程において、擬似コアとキャビティとの平面中心の一致動作は、擬似コアのキャビティ内への進入動作と同時に行っても良く、また平面中心の一致動作を行ってから、進入動作を行っても良い。前者の場合、例えば擬似コアの周囲とキャビティの周囲に、相補的に嵌合する係合構造を形成し、この係合構造を組み合わせることにより、平面方向(進入方向が直行する面方向)における位置合わせを確実に行うことができる。
【0019】
また上記インモールドラベル容器の製造方法において、移転工程は、フィルムに静電気を帯電させ、帯電した静電気によって、擬似コアの側面に保持されたラベルを吸着することにより行うことができる。特に肉厚が薄いラベルを使用する場合には、ラベル自体に無理な負荷(外力)を作用させることなくキャビティの内壁面に移動させることが可能であり、よってラベルにシワや折れ曲がり等が発生する事態を回避することができる。なお、擬似コアから帯状ラベル部材を均等に離す為に、擬似コアから放射方向にエアを放出させて強制的に引き離すこともできる。
【0020】
更に本発明にかかるインモールドラベル容器の製造方法において、前記擬似コアは、平面形状を放射方向に拡張可能に形成されており、前記移転工程は、当該擬似コアがキャビティ内で拡張することにより行われる様にすることができる。このような製造方法とすれば、キャビティ内に進入する擬似コアの平面形状を小さくし、キャビティ内壁面と擬似コアとの間に一定の間隔を確保しながら、擬似コアをキャビティ内に進入させることができる。その結果、進入工程に際して、擬似コアの側面に設けられた帯状のラベルが、キャビティの内壁面と接触することによる、ラベルのヨレやシワの発生を回避することができる。なお、拡張する擬似コアは機械的な動作により或いは膨張によって行うことができる。
【0021】
そして本発明にかかるインモールドラベル容器の製造方法において、ラベル用材料から打ち抜いた帯状のラベルを擬似コアの側面で保持する際には、打ち抜いた帯状のラベルを、そのまま擬似コアの側面に巻き付けることによって行う事ができる。擬似コアの側壁に帯状のラベルを巻き付ける方法は、種々の態様を採用することができるが、巻きつけることにより、しわなどの発生を回避することができる。また、擬似コアの側面に帯状のラベルを巻き付ける際には、当該帯状ラベルの巻きつけられる中央部分を擬似コアの側面に保持してから行うことが望ましい。中央部分を擬似コアの側面に保持することにより、帯状ラベルが何れかの一方に偏ってしまうおそれを無くすことができる。
【0022】
また、擬似コア内に帯状ラベルを移転した後には、帯状ラベルだけをキャビティの内壁面に残し、擬似コアが引き抜かれる事になる。この時、擬似コアの先端部とキャビティとの間で帯状ラベルを挟持しながら、擬似コアの後端部側だけを引き抜くことができるように、当該擬似コアは先端部側だけが分割し、更に分割した先端部側だけが突出する様に構成される事が望ましい。このように先端部だけが分割する擬似コアを使用する場合には、擬似コアを金型のキャビティから退出させる擬似コアの退出工程において、擬似コアの先端部だけを残して後端部側の退出を開始した後に、分割した先端部を退出させる事が望ましい。
【0023】
更にキャビティ内に進入した擬似コアを引き抜く際、当該擬似コアのキャビティへの進入方向の先端側から擬似コアと帯状ラベルとの間に空気が入り込む事ができるように通気路を形成することが望ましい。かかる通気路が存在することにより乱流が起こりにくく、帯状ラベルのシワやヨレ、あるいは折れなどを阻止することができる
【0024】
また本発明では、上記インモールドラベル容器の製造方法で製造されたインモールドラベル容器であって、側面には帯状のラベルが捲回されて容器本体と一体化されているインモールドラベル容器を提供する。上記製造方法では、ラベルの厚さが50μm未満であってもインモールドラベル容器を製造することができることから、ラベルにシワが発生するなどの問題をなくしたインモールドラベル容器を提供することができる。また、ラベルの厚さが50μm未満のインモールドラベル容器とした場合、ラベルの厚さが薄いことから、容器本体と一体化されていても、ラベルと容器本体との間において生じる収縮量率の異差は、さほど影響するものではなく、よって変形が生じてしまうと言った問題を解消することができる。
【発明の効果】
【0025】
上記本発明にかかるインモールドラベル容器の製造方法によれば、帯状ラベル形成工程で形成した帯状のラベルを、そのまま擬似コアの側面で保持することから、薄いラベルが2枚搬送されると言った問題を解消することができ、更に金型内におけるラベルの位置が正確に決定保持されることになる。よって、薄いラベル材料であっても金型内における正確な位置決めを行うことができる。
【0026】
また側面で帯状のラベルを保持した擬似コアをキャビティ内に移動させる際にも、ラベルがキャビティ内壁面に接触し、折れ曲がってしまうと言った問題を解消することができる。
【0027】
そして本発明の製造方法により、50μm未満の厚さのラベル材料を使用してインモールドラベル容器を製造することができることから、射出成形時の熱等によって生じる印刷流れを効果的に阻止することができ、鮮明な印刷が施されたインモールドラベル容器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】インモールドラベル容器の製造装置の一実施形態を示す斜視図。
【図2】インモールドラベル容器の製造装置と製造工程を示す斜視図。
【図3】インモールドラベル容器の製造装置と製造工程を示す斜視図。
【図4】インモールドラベル容器の製造装置と製造工程を示す斜視図。
【図5】一実施態様に於ける帯状ラベル形成工程を実施する打抜形成部を示す斜視略図。
【図6】帯状ラベル保持工程を示す略図
【図7】擬似コアに対して帯状のラベルを設置する構成の一例を示す略図
【図8】帯状ラベル装着工程と射出成形工程を示す要部断面図
【図9】他の実施の形態にかかる擬似コアを示す正面図(A)及び斜視側面図(B)
【図10】他の実施の形態にかかる擬似コアを示す斜視図
【図11】擬似コアの周面に対して帯状ラベルを巻き付ける工程を示す略図
【図12】擬似コアに保持された帯状ラベルをキャビティの内周面に設置する工程を示す略図
【図13】擬似コアの周面に帯状ラベルを設ける他の実施の形態を示す工程図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明のインモールドラベル容器2の製造方法の1つの実施の形態を、この製造方法を実施する製造装置10を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
図1〜4はインモールドラベル容器2の製造装置10と製造工程を示す斜視図であり、図5は、連続的に供給されるロール状のラベル用材料から帯状にラベルを打ち抜く、帯状ラベル11形成工程を実施する打抜形成部を示す斜視略図であり、図6は、打ち抜いた帯状のラベルを疑似コアの側面で保持する帯状ラベル11保持工程を示す略図であり、図7は筒状の擬似コア20に対して帯状のラベルを設置する構成の一例を示す略図であり、図8は、帯状ラベル11を保持した擬似コア20を金型のキャビティ30に挿入し、帯状ラベル11をキャビティ30の内壁面に装着する帯状ラベル11装着工程と、内壁面に帯状ラベル11が装着されたキャビティ30内に金型のコア32を挿入して射出成形する射出成形工程を示す要部断面図であり、図9は他の実施の形態にかかる擬似コア20を示す正面図(A)及び斜視側面図(B)である。
【0031】
先ず図1〜4を参照しながら、本実施の形態にかかるインモールドラベル容器2の製造装置10と、製造工程を説明する。図1において、帯状ラベル11を形成する図柄が複数印刷されているロール状のラベル用材料12は、打抜形成部4aにおける架台13内に収容されており、ロール状のラベル用材料12に印刷されたデザイン、図柄に合わせて打ち抜き部分で打ち抜かれて、帯状ラベル11を形成する。そして、この打ち抜かれた帯状ラベル11が、架台の上面に出現することになる。即ち、インモールドラベル容器2に使用されるラベル11は、架台13内のロール状ラベル用材料12から打ち抜かれるごとに、当該架台13の上面に出現するように提供される。
【0032】
ここで、ロール状ラベル用材料12から、使用するラベル用材料12を打ち抜く打抜形成部4aの構成について、図5を参照しながら説明する。この打抜形成部4aは、基台41aの中央上部において進退刃用駆動部44aにより上下に進退する進退刃部42aを設けると共に、該進退刃部42aの上部に固定刃部43aを設けている。前記進退刃用駆動部44aについて、図示しないが、例えば駆動モータの動力で進退軸を進退させるよう構成するシリンダーまたはアクチュエーター等を適用できる。このような前記打抜形成部4aにおいて、ラベル用材料12を前記進退刃部42aと前記固定刃部43aとの間に供給するようにし、進退刃部42aを上方へ進出させてラベル用材料12を固定刃部43aに押しつけながら、前記ラベル11を打ち抜くようにしている。尚、図示しないがこのラベル用材料12の供給について、該ラベル用材料12に印刷されたラベル11の図柄に合わせて打ち抜かれるようにするため、その供給量を位置センサー等を備えた電子制御手段で制御する。
【0033】
なお連続的に供給されるラベル用材料12から、使用するラベル用材料12を形成するラベル形成工程は、前述の打抜形成部4aによる打ち抜きの他にも、例えばレーザー光などによる切抜きによって実施しても良い。
【0034】
ロール状のラベル用材料12を打ち抜いて形成された帯状ラベル11は、進退刃部42aの上部で押し上げられて、架台の上面に出現する。出現した帯状ラベル11は、図2に示す様に、ラベル搬送部14によって保持され、擬似コア20まで運ばれる。このラベル搬送部14における帯状ラベル11の保持は、ラベル搬送部14におけるラベル保持面15(下面)における吸引により行うことが望ましいが、その他にも、粘着剤で行っても良い。更に帯状ラベル11が樹脂フィルムなど、帯電しやすい材料で構成されている場合には、帯状フィルムに帯電した静電気によりラベル保持面15に付着させることも考えられる。
【0035】
またこの実施の形態において、ラベル搬送部14は、帯状ラベル11を保持した構成単位を打抜形成部4aから擬似コア20まで水平移動させる軌道16と、この軌道16を上下動させるアクチュエータ17とで構成されており、その結果ラベルを保持したラベル保持面15は、水平方向および上下方向に移動することができる。但し、当該ラベル搬送部14は、必ずしもこの構成によることなく、複数の関節で構成される運搬アームロボットにより行うこともできる。更に、この打抜形成部4aの設置場所次第では、打ち抜いて形成した帯状ラベル11を、そのまま擬似コア20の周面に設置することも考えられる。
【0036】
図2に示す様に、ラベル搬送部14により擬似コア20まで搬送された帯状ラベル11は、ラベル搬送部14と同じように水平移動可能に設置された帯状ラベル11の設置機構18により、擬似コア20の周面に巻きつけられる。
【0037】
図6は、帯状のラベルを疑似コアの側面に設ける帯状ラベル11の保持工程を示す略図であり、即ち帯状ラベル11の設置機構18の一例を示す略図である。この図に示す実施の形態では、図6(A)に示す様に、ラベル搬送部14によって、帯状ラベル11を横向きに設置されている略筒状の擬似コア20側面の上方に載せ、その載せた部分から擬似コア20の周面をなぞるようにして棒状のガイド部材19を移動させることにより、図6(B)に示す様に、帯状ラベル11を擬似コア20の側面(即ち「周面」)に巻きつけている。擬似コア20の周面に対する帯状ラベル11の巻き付けは、このガイド部材19により行うことができるが、巻きつけた帯状ラベル11は、擬似コア20からの脱落を阻止する為に、擬似コア20の周面に設けられた孔部21から吸引されて保持されている。
【0038】
図7は、略筒状の擬似コア20に対して帯状のラベル11を設置する構成の一例を示す略図であり、特に、上記のように棒状のガイド部材19を、擬似コア20の周面に沿わせて移動させるための構成の一例を示している。この実施の形態において、帯状ラベル11を擬似コア20の周面に巻き付けるガイド部材19の動作は、プレート部材22に設けられた孔23によって規制されており、また当該ガイド部材19は、上下動する移動パネル24に設けられた略「V」字状の案内溝25内をスライドすることによって動作することになる。但し、ここの図6および7に示す実施の形態は、帯状ラベル11を擬似コア20の周面に設置する一例を示すものであり、此れに限らず適宜変更することが可能である(図11及び図13参照)。
【0039】
そして擬似コア20の周面で、打抜形成した帯状ラベル11を保持した後、図3に示す様に、当該側面で帯状ラベル11を保持した擬似コア20を、正確に位置決めした上で金型のキャビティ30に挿入し、後述する図8に示す様に、帯状ラベル11をキャビティ30の内壁面(即ち「内周面」)31に装着する帯状ラベル11の装着工程が実施される。そしてキャビティ30の内壁面31に対する帯状ラベル11の装着が完了した後、金型は閉じられて射出成形が実施され、インモールドラベル容器2を製造することができる。この工程を、図8を参照しながら、より具体的に説明する。
【0040】
図8は、帯状ラベル11の装着工程と射出成形工程を示す要部断面図であり、外周面で帯状ラベル11が保持された擬似コア20が金型領域まで移送されると、擬似コア20の近傍に突起して設けられた軸部26を、金型キャビティ30の周りに設けられた穴部27に挿入して、金型に対する擬似コア20の位置決めを行う。そして当該穴部27に対する軸部26の挿入による位置決めを行いながら、擬似コア20を金型のキャビティ30内に挿入する(図8(A)参照)。このような位置決めを行いながら擬似コア20をキャビティ30内に進入させているのは、本実施の形態にかかる擬似コア20が筒状に形成されており、且つその周面の略全周にわたって帯状ラベル11が巻かれていることに起因する。即ち、擬似コア20の周壁面に巻かれた帯状ラベル11は薄く、これがキャビティ30の内周面31に接してしまうと、その部分で折れたり、捩れたりしてしまうことが考えられる。この点、仮にキャビティ30に進入する擬似コア20の何れかの側面が露出している場合には、当該ラベル11が設けられていない、露出している側面に突起を設けるなどにより、擬似コア20の挿入を行うことができる。しかしながら、本実施の形態に示す様に、擬似コア20の周面の全周にわたって薄手のラベル11が巻かれていると、擬似コア20のキャビティ30への進入時における僅かな揺れなどによっても、薄い帯状ラベル11がキャビティ30の内壁面に接してしまい、インモールドラベル容器2におけるラベル11の折れや捩れが生じてしまう。そこでこの実施の形態では、正確に位置決めを行いながら、擬似コア20をキャビティ30内に進入させている。
【0041】
ここで本実施の形態では、キャビティ30内に挿入される擬似コア20は、吸引力により帯状ラベル11を外周面に保持しており、一方で帯状ラベル11はその外周面が静電気を帯びている。そしてキャビティ30内は帯電していないことから、擬似コア20におけるラベルの吸引を停止することにより、当該帯状ラベル11はその外周面の静電気によってキャビティ30の内壁面31に付着することができる(図8(B)参照)。
【0042】
以上のように、正確に位置決めを行った上で擬似コア20を侵入させ、よじれを生じさせることなく薄手の帯状ラベル11をキャビティ30内壁面に設置する為には、上記装着工程を、擬似コア20の平面中心を金型のキャビティ30の平面中心に一致させて、擬似コア20をキャビティ30内に進入させる移送工程と、擬似コア20のキャビティ30内への進入動作が完了した後に、帯状ラベル11をキャビティ30の内壁面に移転させる移転工程とで行うことが望ましい。進入動作を完了してから帯状ラベル11の移転工程を実施することにより、キャビティ30への進入工程中に帯状ラベル11がキャビティ30内壁面に接するおそれを減じることができ、また正確な位置に帯状ラベル11を設置することができる為である。
【0043】
以上のようにしてキャビティ30内壁面に帯状ラベル11を設置した後においては、擬似コア20をキャビティ30から退出させて、今度は金型コア32をキャビティ30内に挿入して型締めを行い(図8(C)参照)、樹脂を射出して保圧、冷却を行ってから、型開きして、金型コア32側に製品を取り出すことができる(図8(D)参照)。
【0044】
そして以上のようにして製造されたインモールドラベル容器2は、擬似コア20の裏側に設けられた吸引保持具(図示せず)で吸引して、金型コア32から取り出し、これを製品搬送部34で受領する。製品搬送部34では、アクチュエータなどによって動作するクレーンにより、インモールドラベル容器2を持ち上げ、これを所定数量ごとに積み重ねていくことができる(図4参照)。
【0045】
図9は、他の実施の形態にかかる擬似コア120を示しており、この例では、特に放射方向に拡張可能に形成されている。具体的には、筒状に形成された擬似コア120の軸周りに回動する星型回転軸123と、当該星型回転軸の径に従って進退するように構成された断面略「T」字状の側面形成部122とからなり、側面形成部122は全体として擬似コア120の側面を形成するように組み合わされている。このように形成された擬似コア120では、星型回転軸123の回転動作によって、その放射方向(径方向)の大きさが変化することができる。なお側面形成部122の外側面には、周方向に沿う複数の吸気孔121が形成されている。
【0046】
かかる放射方向(径方向)に大きさが変わる擬似コア120を用いた場合、上記した移転工程は、当該擬似コア120がキャビティ30内で拡張することにより行われる事が望ましい。即ち、キャビティ30への進入動作時には径を小さくして進入し、進入が完了した後に径を拡張させ、また前記したように吸引を停止することにより、ラベル11を、その表面の静電気でキャビティ30内に付着させることができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、特に筒状のインモールドラベル容器2を製造する例を説明しているが、此れに限らず、その他の各種形状のインモールドラベル容器2を製造することもできる。例えば多面体のものや湾曲面を形成している側面に、帯状のラベル11を巻きつけるようにしてインモールドラベル容器2を形成することもできる。
【0048】
次に、図10〜13を参照しながら、他の実施の形態にかかる擬似コア220を使用したインモールドラベル容器2の製造方法を説明する。
【0049】
図10は他の実施の形態にかかる擬似コア220を示す斜視図であり、(A)は帯状ラベル11の保持工程および帯状ラベル11装着工程における状態の斜視図、(B)は先端部分を突き出した状態の斜視図であり、図11はこの擬似コア220に対する帯状ラベル11の装着工程を示す断面略図であり、図12は帯状ラベル11の装着工程と擬似コア220の退出工程を示す縦断面図であり、図13は更に別の実施の形態にかかる帯状ラベル11の装着工程を示す断面略図である。
【0050】
先ず、図10に示す擬似コア220は、先端側の径を小さくした略筒状に形成されており、その側面には周方向に沿う複数の吸気孔221が設けられ、側面の長さ方向に沿う上面には一列に配列された複数の孔部222が形成されている(図10(A))。かかる擬似コア220は、その先端側(先端部223)を軸方向に突出できるように形成されており、例えばシリンダとピストンを当該擬似コア220内に設けて、油圧や空気圧等で擬似コア220の先端部223を突出できるように形成している(図10(B))。
【0051】
図11は、このように形成された擬似コア220の周面(側面)に対して帯状ラベル11を巻き付ける工程を示す略図である。この図に示す様に、前記したようにフィルム状のラベル用材料12から打抜き又は切抜いて形成した帯状ラベル11は、受け渡しユニット214により吸引されて保持されながら、擬似コア220まで運ばれる。この受け渡しユニット214は、擬似コア220の長さ方向に沿う向きに配列された複数の吸気部215a,bが、帯状ラベル11の中央部および両側部を吸引するように設けられており、両側に存在する各吸気部215a,215aの内側に、吸引している擬似ラベル11を噴き出す向きに気体を放出する排気部216が設けられている。
【0052】
受け渡しユニット214の下面の両側に存在する側方吸気部215aと、中央に存在する中央吸気部215bで吸引しながら帯状ラベル11を擬似コア220まで搬送すると、擬似コア220の長さ方向に沿う側面の上方に一列に設けられた孔部222で当該帯状ラベル11を吸引し、帯状ラベル11と擬似コア220との相対移動をなくしている(図11(A))。その後、排気部216から気体を放出して帯状ラベル11を下方(擬似コア220側)に押し出して(図11(B))、更に側方吸気部215aにおける吸引を中止して、更に排気部216から帯状ラベル11に気体を吹き付けることにより、当該帯状ラベル11を擬似コア220に巻き付ける(図11(C))。なお、擬似コア220の側面に形成された周方向に沿う複数の吸気孔221で帯状ラベル11を吸引することで、当該帯状ラベル11は確実に擬似コア220の側面に保持されることになる。
【0053】
以上のように擬似コア220に保持された帯状ラベル11は、金型キャビティ30まで運ばれて、キャビティ30の内周面31に設置される。この工程を図12に示す。
【0054】
先ず図12(A)に示す様に、帯状ラベル11を側面に保持した擬似コア220を金型領域まで移送し、擬似コア220の近傍に突起して設けられた軸部26を、金型キャビティ30の周りに設けられた穴部27に挿入して、金型に対する擬似コア220の位置決めを行う。そして両者の位置決めを行いながら、擬似コア220を金型のキャビティ30内に挿入する(図8(B)参照)。キャビティ30内に挿入される擬似コア220は、吸引力により帯状ラベル11を外周面に保持しており、一方で帯状ラベル11はその外周面が静電気を帯びている。そしてキャビティ30内は帯電していないことから、擬似コア220におけるラベル11の吸引を停止することにより、当該帯状ラベル11はその外周面の静電気によってキャビティ30の内壁面31に付着することができる。
【0055】
次にキャビティ30内に進入させた擬似コア220を引き出すことになるが、本実施の形態にかかる擬似コア220は、その先端部223だけを突出できるように形成されている。そこで、最初に図12(C)に示す様に、擬似コア220の先端部223を突き出して、当該先端部とキャビティ30の内壁面31との間で帯状ラベル11を保持する。この時、擬似コア220の後端側はキャビティ30からの抜き出し方向に移動しており、帯状ラベル11との間に隙間が生じている。そして図12(D)に示す様にして擬似コア220を退出させることにより、当該擬似コア220の先端側223も引き出されることになる。なお、この擬似コア220の引き出し動作に際しては、当該擬似コア220の先端側から、擬似コア220とキャビティ30の内壁面31に設けられた帯状ラベル11との間に供給される気体の通気路125が確保されている。本実施の形態では、擬似コア220の側面側に存在する金型126と、擬似コア220の先端側に存在する金型127とが分割されており、両者間に通気路125が確保されている。この様な通気路125を確保することにより、擬似コア220とキャビティ30の内壁面31に設けられた帯状ラベル11との間に乱流が生じることがなくなり、帯状ラベル11のシワやヨレ、あるいは折れなどを阻止することができる。
【0056】
この後に射出成形などが行われることになるが、此れは前記図8に示した態様と同じように実施することができる。
【0057】
また、図13は、擬似コア220の周面に帯状ラベル11を設ける他の実施の形態を示している。この図に示す実施の形態では、合わさる事により擬似コア220の周面を覆う形状に形成された2つの湾曲部材50を擬似コア220の上部で支持し(図13(A))、その両側に帯状ラベル11を吸引する吸引部51が形成されている。即ち、2つの湾曲部材は、その両端の吸引部51で帯状ラベル11を吸引しながら擬似コア220を被覆するように回動することで(図13(B))、帯状ラベル11はテンションが架けられた状態で、擬似コア220の周面に巻きつくようになっている(図13(C))。このように形成された場合であっても、擬似コア220の周面に於ける長さ方向に沿う上部では、確実に帯状ラベル11を保持することが必要である。
【0058】
以上、図1〜13に示した本実施の形態にかかるインモールドラベル容器2の製造方法において、帯状ラベル11の大きさや形状等は、インモールドラベル容器2の大きさや形状に応じて決定されるが、インモールドラベル容器2の形状が前記のような円筒状であって、軸方向に径が異なっている場合、即ち容器の底側を窄めた円筒状である場合には、当該帯状ラベル11は、大凡扇形に形成されることが望ましい。また、上記したような帯状ラベル11は、必ずしもインモールドラベル容器2の側面全周にわたって捲回されている必要は無く、側面の一部(周方向及び軸方向)にだけ巻き付けるように設けることもできる。
【0059】
そして前記ラベルの材料となる前記ロール状のラベル用材料は、特に限定しないが、例えば樹脂フィルム或いは紙、或いは合成紙などを適用できる。
【0060】
以上のような本実施の形態では、ラベル貼着機構を適用したインモールドラベル容器2の製造装置10としたので、前記ラベルを樹脂フィルムとした場合、その厚さが50μm未満、更には40μm以下であっても採用することが可能となり、こうして薄いラベル用材料12であっても金型内における正確な位置決めを行うことができるのである。
【符号の説明】
【0061】
2 インモールドラベル容器
4a 打抜形成部
11 帯状ラベル
12 ラベル用材料
13 架台
14 ラベル搬送部
15 ラベル保持面
16 軌道
19 ガイド部材
20 擬似コア
22 プレート部材
24 移動パネル
25 案内溝
30 金型キャビティ
31 キャビティ内壁面
32 金型コア
34 製品搬送部
125 通気路
215a,b 吸気部
216 排気部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続状に供給されるラベル用材料から帯状のラベルを形成する帯状ラベル形成工程と、
形成した帯状のラベルを疑似コアの側面で保持する帯状ラベル保持工程と、
側面で帯状ラベルを保持した擬似コアを金型のキャビティに挿入し、帯状ラベルをキャビティの内壁面に装着する帯状ラベル装着工程と、
内壁面に帯状ラベルが装着されたキャビティ内に金型のコアを挿入して射出成形する射出成形工程を含むことを特徴とする、インモールドラベル容器の製造方法。
【請求項2】
前記装着工程は、擬似コアの平面中心を金型のキャビティの平面中心に一致させて、擬似コアをキャビティ内に進入させる移送工程と、擬似コアのキャビティ内への進入動作が完了した後に、帯状ラベルをキャビティの内壁面に移転させる移転工程とからなる、請求項1に記載のインモールドラベル容器の製造方法。
【請求項3】
前記移転工程は、フィルムに帯電させた静電気によって、擬似コアの側面に保持されたラベルを金型のキャビティ内壁面に付着させて行われる、請求項2に記載のインモールドラベル容器の製造方法。
【請求項4】
前記擬似コアは、放射方向に拡張可能に形成されており、
前記移転工程は、当該擬似コアがキャビティ内で拡張することにより行われる、請求項2又は3に記載のインモールドラベル容器の製造方法。
【請求項5】
前記帯状ラベル保持工程は、帯状のラベルを擬似コアの側面に巻きつけることにより行われる請求項1〜4の何れか一項に記載のインモールドラベル容器の製造方法。
【請求項6】
前記帯状ラベル装着工程に続いて、擬似コアを金型のキャビティから退出させる擬似コアの退出工程が実施され、
前記擬似コアは、先端部だけが分割可能に形成されており、
当該擬似コア退出工程では、擬似コアの先端部だけを残して後端部の退出を開始した後に、分割した先端部を退出させる、請求項1〜5の何れか一項に記載のインモールドラベル容器の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載のインモールドラベル容器の製造方法で製造されたインモールドラベル容器であって、
側面には帯状のラベルが捲回されて容器本体と一体化されていることを特徴とする、インモールドラベル容器。
【請求項8】
プラスチックを射出成型して形成された、底面と側面とを有するインモール
ドラベル容器であって、
側面には帯状のラベルが捲回されて容器本体と一体化されており、
当該ラベルの厚さが50μm未満である、請求項7に記載のインモールドラ
ベル容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−30372(P2012−30372A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169170(P2010−169170)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(300045891)サンプラスチックス株式会社 (4)
【出願人】(000006884)株式会社ヤクルト本社 (132)
【出願人】(593205831)東邦商事株式会社 (14)
【Fターム(参考)】