説明

ウエハー用運搬ケース

【課題】 運搬時の振動等の衝撃を確実に吸収して、ウエハーを確実に保護することができ、かつ、ケースへの出し入れ作業も容易に行うことができるウエハー用運搬ケースを提供すること。
【解決手段】 容器本体1を下蓋部材11と上蓋部材12とを開閉自在に構成して、かつ、この下蓋部材11の内側面には、少なくとも一つの高さが異なる三つの3点支持突起2を突設して、これら3点支持突起2の三箇所の各頂点に、前記ウエハーWの表面を当接して載置可能にする一方、前記上蓋部材12の内側面には、規制凸部3を突設して、容器本体1の閉塞時に、この規制凸部3の頂点を、前記ウエハーWの上面またはその近傍に配設されて浮き上がりを規制可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハー用運搬ケースの改良、更に詳しくは、運搬時の振動等の衝撃を確実に吸収して、ウエハーを確実に保護することができ、かつ、ケースへの出し入れ作業も容易に行うことができるウエハー用運搬ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、半導体ウエハーは、非常に薄くて破損しやすいために、運搬の際には、振動等の衝撃から保護する必要がある。
【0003】
従来、かかるウエハーの運搬具としては、ウエハーをケース体に収容し、ケースの内部に液体を充填するものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、かかる構造では、運搬の度に液体の注入および排出の手間がかかってしまうという問題があった。
【0005】
また、ケース体の側面を開閉自在にして、多数のウエハーを積層して収容するものが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、かかる構造では、積層したウエハー同士の衝突によって破損してしまうおそれがあり、また、積層されたウエハーをケースから一枚ずつ取り出す作業が面倒であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−148550号公報
【特許文献2】特開平8−207986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来のウエハー用運搬ケースに上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、運搬時の振動等の衝撃を確実に吸収して、ウエハーを確実に保護することができ、かつ、ケースへの出し入れ作業も容易に行うことができるウエハー用運搬ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0010】
即ち、本発明は、平板状のウエハーWを収容するためのケース体であって、
容器本体1を下蓋部材11と上蓋部材12とを開閉自在に構成して、かつ、この下蓋部材11の内側面には、少なくとも一つの高さが異なる三つの3点支持突起2を突設して、これら3点支持突起2の三箇所の各頂点に、前記ウエハーWの表面を当接して載置可能にする一方、
前記上蓋部材12の内側面には、規制凸部3を突設して、容器本体1の閉塞時に、この規制凸部3の頂点を、前記ウエハーWの上面またはその近傍に配設されて浮き上がりを規制可能にすると共に、
ウエハーWを3点支持突起2上に傾斜状態で載置して、前記3点支持突起2のうちの最大高さを有する高突起2A側の開口部からピックアップ具を差し入れ容易に構成するという技術的手段を採用したことによって、ウエハー用運搬ケースを完成させた。
【0011】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、容器本体1の下蓋部材11および上蓋部材12の一辺にそれぞれヒンジ連結部13を形成して、このヒンジ連結部13によって開閉自在に蝶着するという技術的手段を採用した。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、容器本体1のヒンジ連結部13には、枢軸13aおよび軸受部13bを対称的に形成して、これら対称的な部材同士をヒンジ連結して蝶着可能にするという技術的手段を採用した。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、3点支持突起2を略半球状体にして、ウエハーWを球状曲面の頂点に点接触可能にするという技術的手段を採用した。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、3点支持突起2を錐状体にして、ウエハーWを錐の頂点に点接触可能にするという技術的手段を採用した。
【0015】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、3点支持突起2をポリエーテル系ゴム材料で作製して、容器本体1の下蓋部材11の内側面に接着するという技術的手段を採用した。
【0016】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、容器本体1の下蓋部材11の内側面における3点支持突起2上にウエハーWを載置したときの周縁外側において、横ズレを防止するためのストッパ凸部4を突設するという技術的手段を採用した。
【0017】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、容器本体1の外側面にスタック凸部5を形成して、複数の容器本体1を積み重ね可能にするという技術的手段を採用した。
【発明の効果】
【0018】
本発明にあっては、容器本体を下蓋部材と上蓋部材とを開閉自在に構成して、かつ、この下蓋部材の内側面には、少なくとも一つの高さが異なる三つの3点支持突起を突設して、これら3点支持突起の三箇所の各頂点に、前記ウエハーの表面を当接させしめて載置可能にする一方、前記上蓋部材の内側面には、規制凸部を突設したことによって、
容器本体の閉塞時に、この規制凸部の頂点を、前記ウエハーの上面またはその近傍に配設して浮き上がりを規制可能にすると共に、ウエハーを3点支持突起上に傾斜状態で載置され、前記3点支持突起のうちの最大高さを有する高突起側の開口部からピックアップ具を差し入れ容易にすることができる。
【0019】
したがって、本発明のウエハー用運搬ケースによれば、運搬時の振動等の衝撃を確実に吸収して、ウエハーを確実に保護することができ、かつ、ケースへの出し入れ作業も容易に行うことができることから、実用的利用価値は頗る高いものがあると云える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態のウエハー用運搬ケースを表わす斜視図である。
【図2】本発明の実施形態のウエハー用運搬ケースを表わす説明断面図である。
【図3】本発明の実施形態のウエハー用運搬ケースを表わす説明断面図である。
【図4】本発明の実施形態のウエハー用運搬ケースを表わす分解斜視図である。
【図5】本発明の実施形態のウエハー用運搬ケースの変形例を表わす分解斜視図である。
【図6】本発明の実施形態のウエハー用運搬ケースを積み重ねた状態を表わす説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態を、具体的に図示した図面に基づいて更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0022】
本発明の実施形態を図1から図6に基づいて説明する。図1中、符号1で指示するものは容器本体であり、この容器本体1は下蓋部材11と上蓋部材12とから構成されており、本実施形態では、ポリカーボネートにカーボン等の帯電防止材料を混合した材料を使用して成形する。
【0023】
また、符号2で指示するものは3点支持突起であり、この3点支持突起2をポリエーテル系ゴム材料(低アウトガス性)で作製して、容器本体1の下蓋部材11の内側面に接着することができる。本実施形態では、ウエハーWが安定する範囲のタック性やゴム硬度を選択することができる。
【0024】
更にまた、符号3で指示するものは規制凸部であり、この規制凸部3は、ウエハーWの浮き上がりを防止する部材であって、本実施形態では、前記3点支持突起2と同質の材料で作製する。
【0025】
更にまた、符号4で指示するものはストッパ凸部であり、このストッパ凸部4は、ウエハーWの収容時の横ズレを防止するための部材であって、前記3点支持突起2と同質の材料で作製する。
【0026】
しかして、本実施形態のウエハー用運搬ケースは、平板状のウエハーW(本実施形態では0.2〜1.0mm程度)を収容するためのケース体であって、構成するにあっては、まず、容器本体1は下蓋部材11と上蓋部材12とが開閉自在に構成されている(図2および図3参照)。
【0027】
本実施形態では、容器本体1の下蓋部材11および上蓋部材12の一辺にそれぞれヒンジ連結部13を形成して、このヒンジ連結部13によって開閉自在に蝶着することができる。
【0028】
更に、本実施形態では、図4に示すように、容器本体1のヒンジ連結部13には、枢軸13aおよび軸受部13bを対称的に形成して、これら対称的な部材同士をヒンジ連結して蝶着することができる。こうすることにより、蓋部材を同一形状にすることができるので、一つの金型で合理的に作製することができる。
【0029】
そして、この下蓋部材11の内側面には、少なくとも一つの高さが異なる三つの3点支持突起2を突設する。本実施形態では、インサート金型内においてプレス成形することにより一体成形する。
【0030】
また、本実施形態では、下蓋部材11に形成する3点支持突起2およびストッパ凸部4と、上蓋部材12に形成する規制凸部3およびストッパ凸部4との配置を同じくすることができ、成形方法としては、下蓋部材11および上蓋部材12とをインサート金型内においてそれぞれ逆向きに設置し、プレス成形することによって、対称的に成形することができる。このように対称成形することにより、ウエハーWを狭い範囲に挟み込んで確実に固定することができる。
【0031】
そして、これら3点支持突起2の三箇所の各頂点に、前記ウエハーWの表面を当接させて載置することができる。本実施形態では、3点支持突起2を略半球状体にして、ウエハーWが球状曲面の頂点に点接触させることができる。
【0032】
そして、前記上蓋部材12の内側面には、規制凸部3を突設して、容器本体1の閉塞時に、この規制凸部3の頂点が、前記ウエハーWの上面またはその近傍に配設されて、浮き上がりを規制することができる。
【0033】
また、本実施形態では、容器本体1の下蓋部材11の内側面における3点支持突起2上にウエハーWを載置したときの周縁外側において、横ズレを防止するためのストッパ凸部4を突設することができ、このストッパ凸部4として、三箇所に壁状の部材を形成することができる。
【0034】
然る後、ウエハーWを3点支持突起2上に傾斜状態で載置して、このウエハーWの縁部が、前記3点支持突起2のうちの最大高さを有する高突起2A側においては、下蓋部材11の外周縁に干渉しない高さに持ち上げられるので、この開口部から、ピンセット等のピックアップ具を容易に差し入れることができる。
【0035】
このようにして、ウエハーWを確実に保護して運搬することができるとともに、ウエハーWの出し入れ作業も容易に行うことができるので、非常に使い勝手が良い。
【0036】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、規制凸部3の形状は、横長形状のものであっても良く、ウエハーWの浮き上がりを防止できれば良い。
【0037】
また、本実施形態では、図5に示すように、3点支持突起2を円錐や多角錐などの錐状体にして、ウエハーWをこの錐の頂点に点接触させることもできる。
【0038】
更にまた、図6に示すように、容器本体1の外側面にスタック凸部5を形成して、これらを嵌合または掛止して、複数の容器本体1を上下に積み重ね可能にすることもでき、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0039】
1 容器本体
11 上蓋容器
12 下蓋容器
13 ヒンジ連結部
13a 枢軸
13b 軸受部
2 3点支持突起
2A 高突起
3 規制凸部
4 ストッパ凸部
5 スタック凸部
W ウエハー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状のウエハー(W)を収容するためのケース体であって、
容器本体(1)は下蓋部材(11)と上蓋部材(12)とが開閉自在に構成されており、かつ、この下蓋部材(11)の内側面には、少なくとも一つの高さが異なる三つの3点支持突起(2)が突設されており、これら3点支持突起(2)の三箇所の各頂点に、前記ウエハー(W)の表面が当接して載置可能である一方、
前記上蓋部材(12)の内側面には、規制凸部(3)が突設されており、容器本体(1)の閉塞時に、この規制凸部(3)の頂点が、前記ウエハー(W)の上面またはその近傍に配設されて浮き上がりを規制可能であると共に、
ウエハー(W)が3点支持突起(2)上に傾斜状態で載置され、前記3点支持突起(2)のうちの最大高さを有する高突起(2A)側の開口部からピックアップ具を差し入れ容易に構成したことを特徴とするウエハー用運搬ケース。
【請求項2】
容器本体(1)の下蓋部材(11)および上蓋部材(12)の一辺にそれぞれヒンジ連結部(13)が形成されており、このヒンジ連結部(13)によって開閉自在に蝶着されていることを特徴とする請求項1記載のウエハー用運搬ケース。
【請求項3】
容器本体(1)のヒンジ連結部(13)には、枢軸(13a)および軸受部(13b)が対称的に形成されており、これら対称的な部材同士をヒンジ連結して蝶着可能であることを特徴とする請求項2記載のウエハー用運搬ケース。
【請求項4】
3点支持突起(2)が略半球状体であり、ウエハー(W)が球状曲面の頂点に点接触可能であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載のウエハー用運搬ケース。
【請求項5】
3点支持突起(2)が錐状体であり、ウエハー(W)が錐の頂点に点接触可能であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載のウエハー用運搬ケース。
【請求項6】
3点支持突起(2)がポリエーテル系ゴム材料で作製されており、容器本体(1)の下蓋部材(11)の内側面に接着されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載のウエハー用運搬ケース。
【請求項7】
容器本体(1)の下蓋部材(11)の内側面における3点支持突起(2)上にウエハー(W)を載置したときの周縁外側において、横ズレを防止するためのストッパ凸部(4)が突設されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載のウエハー用運搬ケース。
【請求項8】
容器本体(1)の外側面にスタック凸部(5)が形成されており、複数の容器本体(1)を積み重ね可能にしたことを特徴とする請求項1〜7の何れか一つに記載のウエハー用運搬ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−126408(P2012−126408A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277661(P2010−277661)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000105936)サカセ化学工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】