説明

ウエハ固定用ワックスリサイクル

【課題】スピンコータはワックスの無駄が多いことから、その廃液を回収し、異物除去・溶剤添加・粘度調整する事で、再利用可能な液状ワックスとする。
【解決手段】使用済み液状ワックスに、希釈溶剤と同一の溶剤を使って希釈し粘度を調整する。異物を除去するための濾過フィルターを通して使用済み廃ワックスをリサイクルする再生する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
半導体ウエハを研磨する際、ウエハを固定するために液状ワックスを使用する。同ワックスは、スピンコーターによって塗布成膜される為、その殆どが廃棄される。本発明は、今まで廃棄されてきた液状ワックスの再利用を目的として、異物除去・溶剤添加・粘度調整等を実施し、新品と同一条件で再使用ができる廃ワックスのリサイクルを行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体ウエハを研磨する際に使用している固定用ワックスは、ウエハの中心を軸に回転させながら液状ワックスを滴下し、遠心力によって均一に膜付けするスピンコーターによって行われている。このスピンコーターは、非常に精度良く均一に膜付けできる性能を有する反面、液状ワックスの使用量が多く、そのおよそ9割を廃棄し、産業廃棄物として廃棄処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3936482号
【特許文献2】特許第4391147号
【特許文献3】特許第3594517号
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スピンコーターは、成膜の均一性性能が良い反面、液状ワックスの使用量が多く且つ捨てるワックスが多いためその殆どが無駄になる。また捨てられたワックスには、メチルエチルケトンやイソプロピルアルコール、トルエンやメタノールなどの有機溶剤が多く含まれているため、産業廃棄物として処分されるにあたり環境に対しても問題が多い。
本発明は、この欠点・問題を解決するため、捨てられるべきワックスをリサイクルし再使用できる技術の確立を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
スピンコーターは、性能が良い反面液状ワックスの無駄が多いことから、その無駄を最小限にするために、その廃液を回収し、異物除去・溶剤添加・粘度調整をする事で、再利用可能な液状ワックスに再生する。
【0006】
異物除去方法については、0.05umから3umの間の何れかのメッシュサイズのフィルターを使用し濾過する事で行われる。メッシュサイズは、液状ワックスの粘度によって選定される。粘度が3cP未満と低い場合は、0.05umから0.2umの細かなメッシュのフィルターを使用する。3cPを以上30cp未満では、0.5umから2um程度のメッシュのフィルターを使用する。30cPを超える比較的高い粘度では、2umから3um程度のメッシュのフィルターを使用する。
【0007】
粘度調整方法については、使用前の液状ワックスに含まれる希釈溶剤と同一の溶剤を使って希釈し粘度を調整する。この時常に粘度計で実際の粘度を測定しながら、元の液状ワックスと同じ粘度に調整するか、適量の溶剤で希釈し均一に混ざったものを粘度計で測定する。おもな溶剤はメチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、トルエン、エチルアルコールなどである。
【0008】
また、液状ワックスの種類によっては、液状ワックスの主原料であるレジンを追加し粘度調整を行う場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下,本発明の実施の形態を添付図に基づいて説明する。
本発明による液状ワックス再生技術は、図1に示すようにクリーンな環境にするためのHEPAフィルター1と、同フィルターと4辺を囲まれたクリーンルームまたはクリーンベンチ2内に収納されリサイクルされる。
【0010】
クリーンルームまたはクリーンベンチ2内に、密閉式使用済み液状ワックス回収タンク7(以下回収タンクと言う)が置かれ、使用済み回収ワックス導入配管10(以下回収ワックス導入配管と言う)から回収されたワックスが使用済み回収ワックス導入バルブ11(以下回収ワックス導入バルブと言う)を通して回収タンク7内に入れられる。この時回収ワックス導入バルブ11はノーマリクローズ型のバルブで、手動または自動のどちらでもよい。使用済み液状ワックスを導入する時、回収タンク7内の空気を抜くためにベント配管15とベントバルブ16を通して大気に解放される。ベントバルブ16は、ノーマリーオープン型のバルブで、故意に制御しない限り大気解放されタンク内圧の上昇を防ぐ事ができる安全装置としての機能も持ち合わせている。また使用済み液状ワックスの粘度が高く、回収タンク7内に入るのが困難な場合は、ベント配管15に真空ポンプ26を接続し、回収タンク7内を減圧にする事で使用済み液状ワックスの導入を助ける事ができる。
【0011】
使用済み液状ワックスを適量回収タンク7に入れた後、希釈溶剤を希釈溶剤導入配管12から希釈溶剤導入バルブ13を通して回収タンク7内に入れられる。この時希釈溶剤導入バルブ13はノーマリクローズ型のバルブで、手動または自動のどちらでもよい。
【0012】
回収タンク7内に入れられた使用済み回収ワックスと希釈溶剤を均一に混ぜる為に撹拌用羽8を使って回転させながら混ぜ希釈する。撹拌用羽8の回転制御は、同用制御装置9によって行われる。
【0013】
使用済み液状ワックスを希釈溶剤によって調合されたワックス17は、粘度計14によって目的の粘度であるか測定する。粘度計14は、調合済みワックス17の粘度が10cP未満の低い場合振動式を使用し、10cP以上の場合回転式を使用する。しかしながら、調合済みワックスの粘度は、その殆どが10cP未満であるため振動式を使用する。また、調合済みワックス17は、異物除去前の粘度であることから、濾過フィルター20を通して得られた再生済みワックス25との差を見るため、濾過フィルター20の後段から再生済みワックス25を適量採取し、毛管粘度計や落球粘度計などで測定する事がある。
【0014】
調合済みワックス完成後、濾過フィルター20に送液するために、回収タンク7に接続されている回収ワックス導入配管10に接続されている回収ワックス導入バルブ11と、希釈溶剤を導入する希釈溶剤導入配管12に接続されている希釈溶剤導入バルブ13と、ベント配管15に接続されているベントバルブ16を閉じ、濾過フィルター20に送液する排出配管18に接続されている送液バルブ19を開く。
【0015】
調合済みワックス17は、回収タンク7内の圧力を高める圧送方式によって、濾過フィルター20に送られる。回収タンク7の内圧をあげる方法は、圧空ポンプ3によって300kPaG〜400kPaGの圧力の空気が作られ、圧力計付圧力調整器4によって100kPaG〜200kPaGに調整され、バルブ5を開く事で行われる。圧空ポンプ3は、既設のポンプでもよく、また毎分10リッター程度の小型のもので良い。
【0016】
圧送された調合済みワックス17は、排出配管18を通り送液バルブ19を開いて濾過フィルター20に送られる。濾過フィルター20内の空気抜きを行うために、濾過フィルターベント配管21に接続されている路かフィルターベントバルブ22を適宜開く事ができる。濾過中は路かフィルターベントバルブ22を閉とする。濾過された再生済み液状ワックス25は、送液配管23を通り、搬送用ボトル24に入れられ輸送される。
【0017】
濾過フィルター20は、0.05umから3umの間の何れかのメッシュサイズのフィルターを使用し濾過する事で行われる。メッシュサイズは、液状ワックスの粘度によって選定される。粘度が3cP未満と低い場合は、0.05umから0.2umの細かなメッシュのフィルターを使用する。3cPを以上30cp未満では、0.5umから2um程度のメッシュのフィルターを使用する。30cPを超える比較的高い粘度では、2umから3um程度のメッシュのフィルターを使用する。
【0018】
調合済みワックス17に多量の金属イオンがみとめられ、使用上金属イオンが問題となる場合は、金属イオン除去用フィルターを使う場合がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】装置全体図である。
【図2】ベント配管に真空ポンプを接続した図である。
【符号の説明】
1 HEPAフィルター
2 クリーンルームまたはクリーンベンチ
3 圧空ポンプ
4 圧力計付圧力調整器
5 バルブ
6 加圧配管
7 密閉式使用済み液状ワックス回収タンク
8 撹拌用羽
9 制御装置
10 使用済み回収ワックス導入配管
11 使用済み回収ワックス導入バルブ
12 希釈溶剤導入配管
13 希釈溶剤導入バルブ
14 粘度計
15 ベント配管
16 ベントバルブ
17 調合済みワックス
18 排出配管
19 送液バルブ
20 濾過フィルター
21 濾過フィルターベント配管
22 濾過フィルターベントバルブ
23 再生ワックス送液配管
24 搬送用タンク
25 再生済みワックス
26 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HEPAフィルター1によってクリーンな状態を保持しているクリーンルームまたはクリーンベンチ2内に、密閉式使用済み液状ワックス回収タンク7(以下回収タンクと言う)と、同ワックスを均一に撹拌する撹拌用羽8と、撹拌用羽8を制御する制御装置9と、使用済み液状ワックスを回収タンク7内に導入する使用済み回収ワックス導入配管10(以下回収ワックス導入配管と言う)と、導入の制御をする使用済み回収ワックス導入バルブ11(以下回収ワックス導入バルブと言う)と、希釈する溶剤を導入する希釈溶剤導入配管12と、導入の制御をする希釈溶剤導入バルブ13と、タンク内圧を外部に放出するベント配管15と、ベントの制御をするノーマリオープン型ベントバルブ16と、回収タンク7内で調合された調合済みワックス17の粘度を測定する粘度計14と、調合済み液状ワックス17を回収タンク7から外部に送り出す為に圧力の高い空気を導入する加圧配管6と、調合済みワックス17を外部に送液する排出配管18とで構成される調合部と、
次段に圧送送液するための圧空ポンプ3と、空気の圧力を自動的に調整する圧力計付圧力調整器4と、圧空を回収タンク7に導入制御するバルブ5と、圧力調整された圧空を回収タンク7内に導入する加圧配管6とで構成される加圧部と、
調合済みワックス17を外部に送液する排出配管18と、排出液を制御する送液バルブ19と、調合済みワックス17を濾過する濾過フィルター20と、濾過済み再生ワックスを搬送用タンク24に送液する再生ワックス送液配管23と、濾過フィルター20内の余分な空気を外部に放出するベント配管21と、ベントの制御をする濾過フィルターベントバルブ22とで構成される濾過部と、
濾過された再生済みワックス25を搬送する搬送用タンク24とで構成される配送タンク部とからなる液状ワックス再生技術。
【請求項2】
請求項1の濾過フィルター20は、調合再生ワックス17に金属イオンが含まれる場合、金属イオンを除去可能なフィルターに交換できる事を特徴とする液状ワックス再生技術。
【請求項3】
請求項1の粘度計14は、振動式や回転式の粘度計を使用する場合の他、毛管粘度計や落球粘度計など再生ワックス送液配管23の後段に取り付けてもよい事を特徴とする液状ワックス再生技術。
【請求項4】
請求項1で使用する使用済み回収液状ワックスの粘度が高く、導入する回収ワックス導入配管10を通して導入が困難な場合、ベント配管15に真空ポンプ26を接続し回収タンク7を陰圧にする事で流入を容易にする機能を持つ事を特徴とする液状ワックス再生技術。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−96346(P2012−96346A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257271(P2010−257271)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(309011181)株式会社吉崎産業 (1)
【Fターム(参考)】