説明

ウレタン樹脂組成物及びこれを用いた電気電子部品

【課題】 低粘度化が可能であるとともに、熱伝導率、可撓性及び絶縁性の全てに優れたウレタン樹脂硬化物を得ることのできるウレタン樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 (A)ポリオール化合物、(B)ポリイソシアネート化合物、(C)可塑剤、(D)無機充填剤、及び、(E)ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する、ウレタン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気電子部品の絶縁処理に好適なウレタン樹脂組成物及びこれを用いた電気電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン樹脂組成物は、優れた絶縁特性及び可撓性を有しているため、各種絶縁材料として電気電子部品等に広く用いられている。これに対して、電気電子部品は、年々小型軽量化及び、動作温度の上昇傾向にあるとともに、動力に電力を用いた自動車等が実用化されつつある中で、高出力化の傾向にある。こうした電気電子部品の高性能化に伴って、電気電子部品に使用される絶縁材料に対しては、熱伝導率の向上が要求されている。また、電気電子部品に絶縁処理を施す際の作業性等の観点から、ウレタン樹脂組成物には、低粘度化が可能であることも要求されている。
【0003】
従来、ウレタン樹脂組成物の耐熱性を向上させる手法としては、3つ以上の官能基を有する単量体を用いたり、ウレタン樹脂中の骨格に強靭な構造を導入する手法が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。しかし、かかる手法により改質されたウレタン樹脂では、樹脂としての可撓性が低下するため、耐クラック性が劣るといった問題点があった。また、ウレタン樹脂自体が硬くなるために充分な無機充填剤を混合させることができなくなり、その結果、熱伝導効果が得られないといった2次的な弊害も出てくるといった問題点もあった。
【0004】
一方、ウレタン樹脂組成物に可塑剤を添加して、ウレタン樹脂組成物からなる硬化膜の可撓性を向上させることが検討されているが、この方法では、ウレタン樹脂組成物からなる硬化膜の絶縁性及び機械特性が低下するといった問題点があった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−258914号公報
【特許文献2】特開2008−120998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、低粘度化が可能であるとともに、熱伝導率、可撓性及び絶縁性の全てに優れたウレタン樹脂硬化物を得ることのできるウレタン樹脂組成物及びこのウレタン樹脂組成物を用いた電気電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、(A)ポリオール化合物、(B)ポリイソシアネート化合物、(C)可塑剤、(D)無機充填剤、及び、(E)ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する、ウレタン樹脂組成物を提供する。
【0008】
かかるウレタン樹脂組成物によれば、上記各成分を含む構成を有することにより、低粘度化が可能であるとともに、熱伝導率、耐熱性、可撓性及び絶縁性の全てに優れたウレタン樹脂硬化物を得ることができる。特に、本発明のウレタン樹脂組成物は、上記(E)ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することにより無機充填剤の分散性を向上でき、無機充填剤を高い濃度で充填しても低粘度化が可能となる。
【0009】
また、本発明のウレタン樹脂組成物において、上記(E)ポリグリセリン脂肪酸エステルのグリセリンの平均重合度は、2〜20であることが好ましい。(E)ポリグリセリン脂肪酸エステルのグリセリンの平均重合度が上記範囲内であることにより、ウレタン樹脂組成物における無機充填剤を高い濃度で充填しても、より十分な低粘度化が可能となる。
【0010】
また、本発明のウレタン樹脂組成物において、上記(E)ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、上記(A)ポリオール化合物及び上記(B)ポリイソシアネート化合物の総量100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましい。(E)ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が上記範囲内であることにより、ウレタン樹脂組成物における無機充填剤を高い濃度で充填しても、より十分な低粘度化が可能であり、且つ、熱伝導率により優れた硬化物を得ることができる。
【0011】
また、本発明のウレタン樹脂組成物において、上記(D)無機充填剤は、シリカ又はアルミナを含むことが好ましい。これにより、安価で熱伝導率のより優れた硬化物を得ることができる。
【0012】
本発明はまた、上記本発明のウレタン樹脂組成物を用いて絶縁処理された電気電子部品を提供する。
【0013】
かかる電気電子部品は、上記本発明のウレタン樹脂組成物を用いて絶縁処理されているため、熱伝導率、可撓性及び絶縁性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のウレタン樹脂組成物は、低粘度化が可能であるため作業性に優れ、また、熱伝導率に優れるため高い熱放散性を有し、可撓性に優れるため絶縁処理等に適し、更に絶縁性にも優れるウレタン樹脂硬化物を得ることができる。したがって、本発明のウレタン樹脂組成物を用いることにより、熱伝導率、可撓性及び絶縁性に優れた電気電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0016】
本発明のウレタン樹脂組成物は、(A)ポリオール化合物(以下、場合により「(A)成分」という)、(B)ポリイソシアネート化合物(以下、場合により「(B)成分」という)、(C)可塑剤(以下、場合により「(C)成分」という)、(D)無機充填剤(以下、場合により「(D)成分」という)、及び、(E)ポリグリセリン脂肪酸エステル(以下、場合により「(E)成分」という)を含有することを特徴とする。以下、これらの構成要素について、順次に説明する。
【0017】
<(A)ポリオール化合物>
本発明のウレタン樹脂組成物の樹脂成分を構成する(A)ポリオール化合物は、1分子中に1個又はそれ以上の水酸基を含有するものである。かかる(A)ポリオール化合物としては、例えば、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0018】
上記ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ブタジエン、イソプレンなどのジエン化合物と、必要によりスチレン、アクリロニトリルなどとを、例えば、金属リチウム、金属カリウム、金属ナトリウムなどのアニオン重合触媒の存在下で重合させたのち、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加重合させて得られるポリオール;上記ジエン化合物を、例えば、過酸化水素などの水酸基を有するラジカル開始剤によりラジカル重合させて得られるポリオール;これらのポリオールに水素添加したポリオールなどが挙げられる。
【0019】
上記ポリエーテルポリオールとしては、硬化性の向上の観点から、(A1)分子中に2〜3個の水酸基を有する化合物を含むことが好ましく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドまたはブチレンオキサイド、或いはそれらの混合物などのアルキレンオキサイドを、アルカリ触媒などの存在下で付加重合させたポリアルキレンポリオール;テトラヒドロフランをカチオン触媒下で重合させたポリテトラメチレングリコール;これらの混合物などが挙げられる。
【0020】
上記ポリエステルポリオールは、例えば、二塩基酸と多価アルコールとの重縮合反応、カプロラクトンの開環重合、又はアルキレンカーボネートとグリコールとのエステル交換反応から得られる。ポリエステルポリオールの具体例としては、ダイマー酸系ジオール、セバシン酸系ポリエステルポリオール、コハク酸系ポリエステルポリオール、ヒマシ油、水素化ヒマシ油、ヒマシ油エステル交換物等のポリオール化合物等が挙げられる。
【0021】
また、上記以外のポリオール化合物としては、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、グリセリン、N,N−ビス−2−ヒドロキシプロピルアニリン、N,N’−ビスヒドロキシイソプロピル−2−メチルピペラジン、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラヒドロフラン−アルキレンオキサイド共重合ポリオール、エポキシ樹脂変性ポリオール、部分ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体、また、これらの化合物の水素添加化合物等が挙げられる。
【0022】
上記ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオール等のポリオール化合物の中でも、耐クラック性の観点や寿命の観点から、ポリオレフィンポリオールが好ましく、水添ポリイソプレンジオール又は水添ポリブタジエンジオールがより好ましい。水添ポリイソプレンジオールは、エポール(出光石油化学(株)製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0023】
また、本発明のウレタン樹脂組成物は、硬化物の可撓性をより向上できる観点から、ポリオール化合物として、(A2)分子中に1個の水酸基を有する化合物を含むことが好ましく、例えば、1官能のヒマシ油エステル交換物等が挙げられる。
【0024】
(A)成分が(A2)分子中に1個の水酸基を有する化合物を含む場合の含有割合は、硬化性の観点から、(A)成分全量を基準として、1〜40質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。
【0025】
上述したポリオール化合物は、1種を単独で使用できる他、適当な2種以上を混合して用いることもできる。
【0026】
本発明のウレタン樹脂組成物において、上記(A)ポリオール化合物の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量を基準として、20〜95質量%であることが好ましく、30〜90質量%であることがより好ましく、40〜80質量%であることが特に好ましい。この含有量が20質量%未満であると、硬化不良になりやすくなる傾向があり、95質量%を超える場合でも硬化不良になりやすくなる傾向がある。
【0027】
<(B)ポリイソシアネート化合物>
本発明のウレタン樹脂組成物の樹脂成分を構成する(B)ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を含有するものである。かかる(B)ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の脂肪族−芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート;上記ポリイソシアネート化合物の環化三量体(イソシアヌレート変性体);上記ポリイソシアネート化合物のビューレット変性体;エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリアルカジエンポリオール、ポリアルカジエンポリオールの水素化物、部分鹸化エチレン−酢酸ビニル共重合体、ヒマシ油系ポリオール等のポリオール化合物と上記ポリイソシアネート化合物との付加反応物等が挙げられる。
【0028】
上記ポリイソシアネート化合物の中でも、硬度(低弾性率化)の観点から、ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。このジフェニルメタンジイソシアネートとしては、ミリオネートMTL(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名)、LF−1209(Huntsman(株)製、商品名)等が商業的に入手可能である。
【0029】
また、上記ポリイソシアネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
さらに、本発明に用いられる(B)ポリイソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネートのイソシアネート基をフェノール類、オキシム類、イミド類、メルカプタン類、アルコール類、ε−カプロラクタム、エチレンイミン、α−ピロリドン、マロン酸ジエチル、亜硫酸水素ナトリウム、ホウ酸等のブロック剤でブロックした、いわゆるブロックイソシアネート化合物を用いることもできる。
【0031】
上述したイソシアネート化合物の中でも、常温で液状のものが、ハンドリング性、混合性の観点から好ましく用いられる。
【0032】
本発明のウレタン樹脂組成物において、上記(B)ポリイソシアネート化合物は、上記(A)ポリオール化合物の1当量に対し、0.8〜1.2当量の範囲となる含有量で好適に用いられる。(B)ポリイソシアネート化合物の具体的な含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量を基準として、5〜80質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましく、20〜60質量%であることが特に好ましい。この含有量が5質量%未満であると、硬化不良になりやすくなる傾向があり、80質量%を超える場合でも硬化不良になりやすくなる傾向がある。
【0033】
<(C)可塑剤>
本発明にかかるウレタン樹脂組成物に用いられる(C)可塑剤は、ウレタン樹脂硬化物の可撓性をより向上できる観点から、水酸基を有しない可塑剤が好適である。この水酸基を有しない可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジウンデシルフタレート等のフタレート化合物;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート等の芳香族リン酸エステル;ポリ−α−オレフィン等のオレフィン系可撓化材などが挙げられる。トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート等の芳香族リン酸エステルは、それぞれTPP、TCP、CDPとして大八化学工業(株)から商業的に入手可能である。
【0034】
これらの中でも、(C)可塑剤としては、フタレート化合物がタック性の観点から好ましい。また、水素添加したものが耐候性等の安定性に好ましく、水素添加型ポリ−α−オレフィン及びポリ−α−オレフィンが、(A)成分と(B)成分との相溶性向上、安定性、硬化性、安全性等の観点から特に好ましい。かかる可塑剤の市販品としては、例えば、出光石油化学社製の水素添加型ポリ−α−オレフィン(商品名「PAO−5010」)、INEOS社製のポリ−α−オレフィン(商品名「DURASYN」)等を挙げることができる。これらの水酸基を有しない可塑剤は、1種を単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0035】
上記(C)可塑剤の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総量を基準として、5〜80質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましく、30〜50質量%であることが特に好ましい。この含有量が5質量%未満であると、引張弾性率が大きくなる傾向になり、80質量%を超えるとベタツキが大きくなり、実用上使用し難くなる傾向にある。
【0036】
<(D)無機充填剤>
本発明のウレタン樹脂組成物に用いる(D)無機充填剤は、シリカ及び/又はアルミナを含むことが好ましく、必要に応じてその他の無機微粒子を含んでいても良い。
【0037】
シリカとしては、純粋なシリカを用いても良いし、シリカ成分を含む天然又は合成鉱物を用いても良い。そのようなシリカとしては、二酸化珪素(石英、石英ガラス、シリカゲルなど)、溶融シリカ、結晶シリカ、タルク、各種ガラス類、珪藻土、粘土鉱物(モンモリロナイト等)、活性白土、合成ゼオライトなどが挙げられる。
【0038】
また、アルミナとしては、純粋なアルミナを用いても良いし、アルミナ成分を含む天然又は合成鉱物を用いても良い。そのようなアルミナとしては、アルミナ、各種セラミック類、カオリン、合成ゼオライト、マイカなどを挙げることができる。
【0039】
また、その他の、必要に応じて含んでも良い無機化合物(微粒子状)としては、炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、フッ化イッテルビウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン等が挙げられる。
【0040】
本発明のウレタン樹脂組成物に用いる(D)無機充填剤は、上述のように、シリカ及びアルミナの一方又は両方を含むことが好ましい。その理由は、シリカは、価格、樹脂との分散性及び機械強度の観点から好ましいからであり、アルミナは、熱伝導性の観点から好ましいからである。
【0041】
上記アルミナの平均粒径は、2〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましく、7〜20μmがさらに好ましい。アルミナの市販品としては、例えば、商品名「DAM−10」(電気化学社製)、商品名「AA−18」(住友化学社製)等が挙げられる。
【0042】
また、熱伝導率の向上、及び低粘度化の観点から、平均粒径が15〜30μmの無機充填剤と、平均粒径が2〜12μmの無機充填剤とを組み合わせて用いることが好ましい。
【0043】
本発明のウレタン樹脂組成物において、(D)無機充填剤の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総量100質量部に対し、100〜600質量部であることが好ましく、200〜500質量部であることがより好ましく、300〜500質量部であることが特に好ましい。この含有量が、100質量部未満であると機械強度及び/又は熱伝導性が低下する傾向にあり、600質量部を超えると粘度が高くなり作業性が劣る傾向にある。
【0044】
<(E)ポリグリセリン脂肪酸エステル>
本発明のウレタン樹脂組成物に用いる(E)ポリグリセリン脂肪酸エステルは、例えば、ポリグリセリンと脂肪酸とをエステル化して得られるものである。(E)ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0045】
【化1】



[式中、複数のRは各々独立に、水素原子又は脂肪酸残基(アシル基)であり、nはグリセリンの平均重合度である。]
【0046】
上記グリセリンの平均重合度nは、無機充填剤の分散性の観点から、2〜20であることが好ましく、4〜15であることがより好ましい。
【0047】
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸は、無機充填剤の分散性の観点から、炭素数が6〜30のものであることが好ましく、炭素数が8〜20のものであることがより好ましい。
【0048】
本発明のウレタン樹脂組成物において、(E)ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対し、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.02〜5質量部であることがより好ましく、0.05〜3質量部であることが特に好ましく、0.1〜2質量部であることが最も好ましい。この含有量が0.01質量部未満では低粘度化に対する効果が低下する傾向にあり、10質量部を超えると熱伝導率が低下する傾向にある。
【0049】
これら(E)ポリグリセリン脂肪酸エステルは、味の素ファインテクノ社、東亜合成社、花王社、ライオン社、ダウコーニング社等から商業的に入手可能である。
【0050】
<その他の成分>
また、本発明のウレタン樹脂組成物には、必要に応じてシラン系、アルミ系あるいはチタン系等のカップリング剤を添加することができる。ウレタン樹脂組成物にカップリング剤を添加することにより、樹脂成分と(D)無機充填剤との界面の濡れ性を向上させ、耐湿特性を向上させることができる。
【0051】
シランカップリング剤としては、例えば、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾリンシラン、N−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、N−3−(4−(3−アミノプロポキシ)ブトキシ)プロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリアジンシラン等のアミノシラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、4−グリシジルブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロルシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン類等が挙げられる。
【0052】
また、チタネートカップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルバイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート等が挙げられる。
【0053】
また、アルミネートカップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0054】
本発明のウレタン樹脂組成物がカップリング剤を含有する場合、その含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.5〜2質量部であることが好ましく、0.7〜1.0質量部であることがより好ましい。この含有量が0.5質量部未満では樹脂成分と(D)無機充填剤との界面の濡れ性が劣り、耐湿特性を向上させる効果が十分に得られない傾向がある。また、含有量が2質量部を超えるとウレタン樹脂組成物中にシランカップリング剤が未反応成分として残存し、硬化し難くなる傾向にある。
【0055】
また、本発明のウレタン樹脂組成物には、必要に応じて(E)成分以外のアニオン系、カチオン系、両性又はノニオン系の界面活性剤を添加することができる。
【0056】
また、本発明のウレタン樹脂組成物には、必要に応じて赤リン、ヘキサブロモベンゼン、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル、三酸化アンチモン等の難燃剤、ベンガラ、酸化第2鉄、カーボン、チタンホワイト等の着色剤、シリコーン系消泡剤、酸化防止剤等の各種添加剤を用いることができる。
【0057】
本発明のウレタン樹脂組成物の粘度(25℃)は、作業性の観点から、1〜50Pa・sであることが好ましく、1〜40Pa・sであることがより好ましい。
【0058】
ウレタン樹脂組成物の粘度(25℃)は、有機溶剤を加えることで低くすることは可能であるが、有機溶剤を用いると、熱硬化する際に気泡が発生し、その気泡が硬化物中に残った場合、絶縁性が低下する要因となる。そのため、本発明のウレタン樹脂組成物が有機溶剤を含む場合、その含有量は、有機溶媒を含めたウレタン樹脂組成物の全量を基準として、5質量%以下とすることが好ましく、3質量%以下とすることがより好ましく、1質量%以下とすることが特に好ましい。なお、本発明のウレタン樹脂組成物は、有機溶媒を添加することなく十分に低粘度化することが可能である。したがって、本発明のウレタン樹脂組成物は、作業性に優れるとともに、硬化物中への気泡の発生を十分に抑制することができる。
【0059】
本発明の電気電子部品は、上述した本発明のウレタン樹脂組成物を用いて絶縁処理されたものである。かかる電気電子部品は、絶縁処理を施す部位に上記ウレタン樹脂組成物を塗布等により配置し、ウレタン樹脂組成物を硬化させて硬化物(硬化膜)を形成することによって得ることができる。
【0060】
ウレタン樹脂組成物は、例えば、80〜120℃で1〜6時間加熱することにより硬化させることができる。
【0061】
ウレタン樹脂組成物を硬化させた硬化膜の25℃における引張弾性率は、5MPa以下であることが好ましく、0.01〜5MPaであることがより好ましく、0.02〜3MPaであることがさらに好ましく、0.1〜2MPaであることが特に好ましい。引張弾性率が0.01MPa未満であると、電気電子部品の基材を保護する効果が低くなる傾向にあり、5MPaを超えると耐熱衝撃性が低下し、熱衝撃によって硬化膜のクラックや基材の損傷等が発生しやすくなる傾向にある。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明をさらに詳述するが、本発明はこれによって制限されるものではない。
【0063】
[実施例1〜2及び比較例1〜4]
表1に示す配合組成及び配合量で各成分を配合し、実施例1〜2及び比較例1〜4の絶縁処理用のウレタン樹脂組成物を調製した。このとき、表1中の(a)〜(i)成分をA材、(j)成分をB材として別々に調製し、使用時にA材とB材とを混合することによってウレタン樹脂組成物を調製した。
【0064】
なお、表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
<(A)ポリオール化合物>
(a)水酸基含有液状ポリブタジエン:poly bd R−45HT(商品名、出光石油化学社製)
(b)2官能のヒマシ油エステル交換物:URIC Y−403(商品名、伊藤製油社製)
(i)1官能のヒマシ油エステル交換物:URIC H−31(商品名、伊藤製油社製)
<(B)ポリイソシアネート化合物>
(j)ポリイソシアネート:ミリオネートMTL(商品名、日本ポリウレタン社製)
<(C)可塑剤>
(c)水酸基を含有しない可塑剤:DURASYN(商品名、INEOS社製、ポリ−α−オレフィン)
<(D)無機充填剤>
(d)Al(アルミナ):AA−18(商品名、住友化学社製、平均粒径:20μm)
(e)微小アルミナ:DAM−10(商品名、電気化学社製、平均粒径:10μm)
<(E)ポリグリセリン脂肪酸エステル>
(f)ポリグリセリン脂肪酸エステル(中性):アジスパーPN−411(商品名、味の素社製、固形分:40質量%、グリセリンの平均重合度:2〜20)
<界面活性剤(代替(E)成分)>
(g)アニオン系界面活性剤:リン酸オクチル
(h)ノニオン系界面活性剤:ステアリン酸グリセロール
【0065】
(粘度の測定)
上記ウレタン樹脂組成物を、ラボスターラーを用いて1000rpmで5分間攪拌し、10Torrで5分間真空脱泡した後、25℃の測定温度まで放置した。攪拌及び真空脱泡後のウレタン樹脂組成物について、25℃における粘度を、BL型粘度計を用いて測定した。その結果を表1に示す。
【0066】
(熱伝導率の測定)
上記ウレタン樹脂組成物を、ラボスターラーを用いて1000rpmで5分間攪拌し、10Torrで5分間真空脱泡した後、100℃で1.5時間加熱し、23℃で24時間養生させて硬化物を得た。得られた硬化物を150mm×60mm×8mmに切断して試験片を作製し、25℃の測定温度まで放置した後、試験片の25℃における熱伝導率を、京都電子工業(株)製の迅速熱伝導率計(商品名:Kemtherm ATM−D3)を用いて測定した。その結果を表1に示す。
【0067】
(硬度の測定)
上記ウレタン樹脂組成物を、ラボスターラーを用いて1000rpmで5分間攪拌し、10Torrで5分間真空脱泡した後、直径60mmの金属シャーレ中に30g注入し、90℃で4時間硬化させて硬化物を得た。得られた硬化物を、金属シャーレから取り出し、25℃の測定温度まで放置して試料とした。この試料の25℃における硬度を、高分子計器(株)製のゴム硬度計A型を用いて測定した。その結果を表1に示す。この硬度の値が低いほど、硬化物の可撓性が高いことを意味し、硬度が80以下であれば、絶縁処理用の硬化膜として十分な可撓性を有していると言える。
【0068】
(絶縁性の測定)
上記ウレタン樹脂組成物を、ラボスターラーを用いて1000rpmで5分間攪拌し、10Torrで5分間真空脱泡した後、100℃で1.5時間加熱し、23℃で24時間養生させて硬化物を得た。得られた硬化物を、JIS C2110に準拠して絶縁破壊試験を行い、これを絶縁性として評価した。その結果を表1に示す。
【0069】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオール化合物、(B)ポリイソシアネート化合物、(C)可塑剤、(D)無機充填剤、及び、(E)ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する、ウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記(E)ポリグリセリン脂肪酸エステルのグリセリンの平均重合度が2〜20である、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記(E)ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が、前記(A)ポリオール化合物及び前記(B)ポリイソシアネート化合物の総量100質量部に対して、0.01〜10質量部である、請求項1又は2に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)無機充填剤が、シリカ及び/又はアルミナを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のウレタン樹脂組成物を用いて絶縁処理された電気電子部品。


【公開番号】特開2010−280760(P2010−280760A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133284(P2009−133284)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】