説明

エアロゾルデポジション装置、蓄電デバイス用極板、セパレータ、および蓄電デバイス

【課題】脆性材料からなる粉体をガス中に分散させたエアロゾルを基板に噴霧し、材料粉体の構造物を基板上に形成させるエアロゾルデポジション装置を提供する。
【解決手段】エアロゾル濃度安定化容器21の内壁において、エアロゾルが導入される入口近傍の内壁面、エアロゾルが最初に衝突する面近傍の内壁面、およびエアロゾルが排出される出口近傍の内壁面の少なくともいずれかの箇所を、算術平均表面粗さRaを0.25以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性材料からなる粉体をガス中に分散させたエアロゾルを基板に噴霧し、材料粉体の構造物を基板上に形成させるエアロゾルデポジション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、蓄電デバイスの一種である非水電解質二次電池の電極の製造方法として、活物質粒子(粉体)を溶融あるいは蒸発させずに気流中に分散させ、この気流を集電体に吹き付けて活物質粒子を集電体に衝突させ、衝撃力で活物質粒子を集電体表面に接着させる電極の製造方法が注目されている。この製造方法によれば、活物質粒子を直接的に集電体表面に接着できるので、集電性を高めることができ、電極の容量に寄与しないバインダーおよび導電材を不要にできるので、体積あたりの容量の高い電極が得られる。
【0003】
上述の電極の製造方法の一つが、エアロゾルデポジション法と呼ばれる製造方法である。エアロゾルデポジション法では、活物質粒子である脆性材料からなる粉体をガス中に分散させてエアロゾルを発生させ、金属やガラス、セラミックやプラスチックなどの基板にそのエアロゾルをノズルから噴霧して、エアロゾルを基板に衝突させる。脆性材料からなる粉体は、衝突時の衝撃で変形・破砕されることで基板と接合し、基板上に粉体の構造物が形成される。加熱手段を必要としない常温で構造物が形成可能であり、焼成体と同等の機械的強度を有する構造物を得ることができる。
【0004】
エアロゾルデポジション法では、均一な粉体の層を形成するために、エアロゾルを長期的に安定して発生させることが重要となる。そこで、粉体をエアロゾル化して一定量に供給するために、エアロゾル発生器内壁、配管(経路)内部、成膜室内壁の少なくとも1箇所にフッ素樹脂または導電性フッ素樹脂コーティング、鏡面加工を施し、材料粒子の凝集や目詰まりを防止するエアロゾルデポジション装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
同様に、エアロゾルを一定量供給するために、成膜室(第一のチャンバー)以外に、エアロゾルの濃度を安定化させ、エアロゾル濃度安定化容器(第二のチャンバー)を設けるエアロゾルデポジション装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−89826号公報
【特許文献2】特開2006−200013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エアロゾル発生器内壁、配管内部、成膜室内壁の少なくとも1箇所にフッ素樹脂または導電性フッ素樹脂コーティング、鏡面加工を施すことで、エアロゾル濃度をある程度安定化させることができる。しかしながら、フッ素樹脂または導電性フッ素樹脂コーティングを施した場合、粉体との摩擦で剥がれた樹脂コーティング層がエアロゾルとともに運ばれ、不純物として構造物に含まれる可能性がある。一方、鏡面加工では、不純物が混入する可能性はなくなるが、長期的には、エアロゾルの圧力変動等があるので、エアロゾルの濃度を安定化させて、エアロゾルを一定量で供給することは困難となる。
【0007】
また、成膜室以外に、エアロゾル濃度安定化容器を設けることで、長期的にエアロゾル
濃度をある程度安定化させることができる。しかしながら、装置の運転を継続すると、粉体がエアロゾル濃度安定化容器の内壁に付着し、付着した粉体が容器内壁面に付着層を形成して厚みを増していき、エアロゾル濃度が不安定になる。更に、付着層から粉体の凝集粉が発生して、成膜室への配管やノズルに詰まりを生じさせるという課題がある。
【0008】
すなわち、従来のエアロゾルデポジション装置では、エアロゾルを長期的に安定して発生させることができず、エアロゾル中の粉体の濃度が安定化しないので、基板上に粒子の構成材料からなる構造物を形成させる際に、形成速度が不安定となり、厚みにばらつきが生じる。更に装置の運転を継続すると、エアロゾル濃度安定器内では、容器内壁に形成された粒子の付着層が厚くなり、エアロゾル濃度の安定化が困難になる。また付着層の一部は凝集粉としてノズルに繋がる配管へ送られ、配管やノズルの目詰まりを生じさせるので、成膜を中断して配管やノズルの清掃を行う回数が増え、生産性を高めることができない状況であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のエアロゾルデポジション装置は、粉体を収容し、ガスを導入して前記粉体のエアロゾルを発生させるエアロゾル発生器と、前記エアロゾルが導入される入口近傍の内壁面、前記エアロゾルが最初に衝突する面近傍の内壁面、および前記エアロゾルが排出される出口近傍の内壁面の少なくともいずれかが、算術平均表面粗さRaが0.25以下の面で構成される、前記エアロゾルの濃度を安定化させるエアロゾル濃度安定化容器と、前記エアロゾル濃度安定化器から供給される前記エアロゾルを基材に噴霧させるノズルと、前記ノズルが設けられる成膜室とを有する構成とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粉体がエアロゾル濃度安定化容器の内壁に付着することを防止できるので、エアロゾル濃度を安定化できる。更に、粉体の凝集粉の発生を抑制できるので、配管やノズルの詰まりを防止し、エアロゾルを長期的に安定して発生させることを可能とする。その結果、基板上に粉体の構造物を形成させる際に、形成速度を一定に保つことができるので、構造物の厚みなどのばらつきを抑制でき、良好な構造物を形成することができる。更に、従来、成膜を中断し実施していた配管やノズルの清掃回数を低減できるので、生産性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
(実施の形態1)
〈エアロゾルデポジション装置1の構成〉
図1は、本実施の形態1で用いたエアロゾルデポジション装置1の概略図である。
【0013】
エアロゾルデポジション装置1は、エアロゾルを発生させるための気体を供給するガスボンベ11、粉体である材料粒子20が納められるエアロゾル発生器13、エアロゾル発生器20で発生させたエアロゾルの濃度を安定化させるエアロゾル濃度安定化容器21、発生させたエアロゾルを基板に噴霧させて成膜(構造物を形成)させる成膜室である成膜チャンバー14で構成されている。また、ガスボンベ11は、配管12aを介してエアロゾル発生器13に連結されている。更に配管12bを介してエアロゾル濃度安定化容器21と連結されている。濃度安定化容器21と成膜チャンバー14とは、エアロゾルをノズル15に送り込むための配管12cで連結されている。なお、配管12cの一方の端部はエアロゾル濃度安定化容器21内に露出し、配管12cの他方の端部は成膜チャンバー14内に設置された、エアロゾルを噴霧させるノズル15に接続されている。
【0014】
なお、成膜チャンバー14は、基板16を設置する基板ホルダー17と、配管12dを介して接続されている排気ポンプ18を備えている。なお、基板ホルダー17は、横方向または縦方向に一定速度で移動させる機構(詳細は図示せず)を備え、ノズル15は、基板16に対向して配置されている。
【0015】
〈エアロゾルデポジション装置1の動作〉
次に、本実施の形態おけるエアロゾルデポジション装置1の動作を説明する。
【0016】
ガスボンベ11からエアロゾルを発生させるための気体を、バルブ19を開き毎分数〜十数リットルの流量でエアロゾル発生器13に供給する。エアロゾル発生器13では、納められた材料粒子20を供給した気体で巻き上げ、エアロゾルを発生させる。発生させたエアロゾルは、エアロゾル濃度安定化容器21に送られ、エアロゾル濃度を安定化させた後、成膜チャンバー14に設置されたノズル15に供給される。この時、成膜チャンバー14内は、排気ポンプ18を動作させて真空度が調整されている。基板ホルダー17に設置した基板16に向けて、ノズル15からエアロゾルを噴霧させ、基板16上に材料粒子20からなる構造物を成膜する。
【0017】
〈エアロゾル濃度安定化容器21の構成〉
次に、本実施の形態おける特徴的な構成を有するエアロゾル濃度安定化容器21について、詳細に説明する。
【0018】
図2、および3に、図1におけるエアロゾル濃度安定化容器21のX−X断面図、および図1におけるエアロゾル濃度安定化容器のY−Y断面図を示す。また、図4に、図3におけるエアロゾル濃度安定化容器21のZ−Z断面図を示す。各図において、エアロゾルの流れを矢印で示し、内壁面の算術平均表面粗さRa(表面粗さRaは、日本工業規格JIS0601−1994に定められる)が0.25以下の部分を、間隔の狭い斜線で示す。なお間隔の広い斜線は、他の内壁面の断面を示す。
【0019】
図2、3、および4に示すように、本実施の形態1では、エアロゾル濃度安定化容器21の内壁において、エアロゾル導入口211近傍の内壁面B領域、エアロゾルが最初に衝突する面近傍の内壁面C領域、およびエアロゾル排出口212近傍の内壁面A領域が、算術平均表面粗さRaが0.25以下となる面で構成されている。
【0020】
次に、エアロゾル濃度安定化容器21におけるエアロゾルの流れを、図2、3、および4に基づき説明する。
【0021】
まず、図3に示すように、エアロゾル発生器13で発生させたエアロゾルが、導入口211からエアロゾル濃度安定化容器21に送られる。この時、エアロゾル濃度安定化容器21内でエアロゾルが拡散され、導入口211近傍のB領域で乱流が発生する。また、エアロゾルが最初に当たる内壁面のC領域近傍でも、エアロゾルの流れ方向が変るため乱流が発生する。さらに、図2で示すように、配管12cへ排出される排出口212近傍のA領域でも、流れが収束するために乱流が発生する。エアロゾルの濃度を安定化させて均一化することにつながる、エアロゾルの撹拌は、上述の乱流の発生により行われていると思われる。一方で、乱流の発生箇所近傍の内壁面では、材料粒子20が激しく衝突する。そこで、本実施の形態1では、乱流の発生箇所近傍である上述の導入口211の近傍(B領域)、最初に壁に当たる近傍(C領域)、排出口212近傍(A領域)の内壁面の表面粗さを滑らか(算術平均表面粗さRaで0.25以下)にする。これにより、材料粒子の内壁への付着が抑制できるので、エアロゾルの濃度を安定化することができる。さらに、凝集粉の発生も抑制できるので、配管12a、12b、12cやノズル15での凝集粉による詰まりの発生確率も低下させることができる。また、エアロゾルを長期的に安定して発
生させることを可能とするので、基板16上に材料粒子20からなる構造物を形成させる際に、構造物の形成速度を一定に保つことができ、厚みなどのばらつきが抑えられた良好な構造物を形成することができる。更に、成膜を中断して配管やノズルの清掃を行う回数が低減され、生産性を高めることができる。
【0022】
なお、算術平均表面粗さRaは、材料粒子の内壁への付着を抑える観点から、0.25以下であることが好ましい。さらに、表面が荒れていないことが材料粒子の内壁への付着を抑える効果を奏するので、算術平均表面粗さRaは0.01〜0.03程度がより好ましい。なお、0.01〜0.03の算術平均表面粗さRaは、内壁面を鏡面研磨を施すことで得られる。
【0023】
また、算術平均表面粗さRaを0.25以下にする箇所については、エアロゾル導入口211近傍の内壁面B領域、エアロゾルが最初に衝突する面近傍の内壁面C領域、およびエアロゾル排出口212近傍の内壁面A領域の3箇所すべてではなく、3箇所の少なくともいずれかの箇所としても、すくなからず材料粒子の内壁への付着を抑える効果を得られる。
【0024】
さらに、上述箇所に加えて他の箇所へ展開してもかまわない。例えば、エアロゾル濃度安定化容器21について図5に示すように内壁の上部と下部(算術平均表面粗さRaが0.25以下の部分を斜線で示す)、更に、図6に示すように内壁面全て(算術平均表面粗さRaが0.25以下の部分を斜線で示す)としても構わない。なお、エアロゾルデポジション装置21を構成するエアロゾル発生器13の流れも乱流状態であり、その内壁面も材料粒子の付着が顕著である。配管12a、12b、12cでのエアロゾルの流れは層流であるが、凝集粉が持ち込まれると管内部に付着することになる。従って、図1に示す配管12bと12cの内面、エアロゾル発生器13の内壁面や成膜チャンバー14の内壁面を滑らか(算術平均表面粗さRaを0.25以下)にすることも、凝集粉の発生を抑えることも効果的である。特に、ノズル15に近い配管12cの内面の表面粗さを滑らか(算術平均表面粗さRaを0.25以下)にすることが、ノズル15の目詰まり抑制に効果があるので好ましい。
【0025】
なお、エアロゾル濃度安定化容器21は、別途粉体の分級の機能もあり、凝集粉がエアロゾル発生器13から送られてきても、重量差により容器底部に落とされる。しかし、濃度安定化容器21内に材料粒子の付着部が存在すると、エアロゾル発生器13から送られた凝集粉が付着部にトラップされ、容器底部に落下されにくくなる。更にエアロゾル濃度安定化容器21の上部(エアロゾルの排出口212付近)で、凝縮粉がトラップされると、そのままエアロゾル濃度安定化容器21から出て行くことになり、ノズル15や配管12cで目詰まりを起こすことになる。つまり、エアロゾル濃度安定化容器21の分級の機能をよりよく得るためには、エアロゾル濃度安定化容器21の内壁面を特に滑らかにして、粒子付着が生じないようにすることが重要となる。
【0026】
なお、本実施の形態1に示すエアロゾルデポジション装置1は、蓄電デバイスであるリチウムイオン電池用の正極や負極極板の活物質層形成、セパレータに多孔性電子絶縁層形成に用いることができる。例えば、材料粒子20となるリチウムイオン電池の正極活物質材料として用いられるリチウム含有複合酸化物は、特に脆性材料であり、さらに詳細には、LiNi0.81Co0.15Al0.04、LiNi0.33Co0.33Mn0.33などを用いる場合、本実施の形態1のエアロゾルデポジション装置1は、エアロゾル濃度安定化容器21の内壁に材料粒子20が付着することを防止できるので、エアロゾル濃度を安定化できることになる。その結果、構造物の厚みなどのばらつきを抑制でき、良好な構造物を形成することができる。すなわち、エアロゾルデポジション装置1により製造した正極、負極極板やセパレータを用いて蓄電デバイスを構成した場合、充放
電特性が安定化する蓄電デバイスを得ることができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例として、エアロゾル濃度安定化容器21の内壁の算術平均表面粗さRaを0.25と、0.40とした場合で、一定の時間内におけるノズル15の目詰まり発生の有無を調査した実施例と比較例について説明する。ノズル15の目詰まり発生の有無は、成膜を中断して配管やノズルの清掃を行うことを表し、生産性の比較の目安とした。なお、本発明は、実施例の構成に限定されない。
【0028】
(実施例1)
図1に示すエアロゾルデポジション装置1を用いて、以下の方法によりアルミナ膜を作製した。
【0029】
成膜チャンバー14にはHitzハイテクノロジー社製スパッタ装置を改造したものを用いた。エアロゾル発生器13は、ユニコントロールズ社製(容量2リットル)を用いた。
【0030】
次に、エアロゾル発生器13から内径4mmの配管12bをHitzハイテクノロジー社製のエアロゾル濃度安定化容器21(容量2リットル)内に引き込み、そこから内径4mmの配管12cを介して成膜チャンバー14内とつなぎ、その先端に噴射ノズル15(スプレーイングシステムジャパン製:YB1/8MSSP37)を設置した。噴射ノズル15から2mm離れた位置に、基板16として市販のスライドガラスを設置した。なお、基板ホルダー17は横方向に移動、噴射ノズル15は縦方向に移動できる可動式とした。これにより成膜する面積を決めることができた。一方で、エアロゾル発生器13とアルゴンボンベ11を内径4mmの配管12aで繋いだ。
【0031】
上記装置を用いて、平均粒径1μmのアルミナ粉(和光純薬工業株式会社製)200gをエアロゾル発生器13内に仕込んだ。次に、排気ポンプ18を作動させ、成膜チャンバー14からエアロゾル濃度安定化容器21、エアロゾル発生器13までを真空引きした。そして、エアロゾル発生器13内にアルゴンガスを送り込み、アルゴンガス中にアルミナ粒子を分散させてエアロゾルを発生させ、配管12b、エアロゾル濃度安定化容器21、配管12cを介して噴射ノズル15からエアロゾルを基板16に向けて噴霧した。このとき、アルゴンガスの流量は10〜20リットル/分とした。また、基板ホルダー17は横方向へ5mm、噴射ノズルは縦方向へ10mmの距離を、速度7mm/分で移動させ、基板16のスライドガラス上に面積50mmの長方形に構造物を重ねて成膜した。なお、成膜時間は3時間とし、アルミナ膜形成時における成膜チャンバー14内の真空度が、50Pa〜150Pa程度とした。ここで、エアロゾル濃度安定化容器21はステンレス製であり、内壁は電解研磨を施し、算術平均表面粗さRaを0.25とした。
【0032】
(比較例1)
ステンレス製のエアロゾル濃度安定化容器21の内壁にバフ研磨を施し、算術平均表面粗さRaを0.40とした以外、実施例1と同じエアロゾルデポジション装置1を用い、基板16上にアルミナ膜を作製した。
【0033】
(評価)
実施例1および比較例1において、成膜時間の3時間内におけるノズルの目詰まり発生の有無を調査、比較した。実施例1では、ノズル15に目詰まりは発生せず、厚み3μmのアルミナ膜が得られた。一方、比較例1では、約1時間30分経過後にノズル15に目詰まりが発生し、得られたアルミナ膜の厚みも1μm弱となった。成膜後、比較例1のエアロゾル濃度安定化容器21を大気に戻し、内壁を観察したところ、エアロゾルが供給さ
れる入口近傍の内壁面C領域と、供給されたエアロゾルが最初に当たる面近傍の内壁面B領域と、エアロゾルが排出される出口近傍の内壁面A領域付近にアルミナ粉が層状に付着していた。一方、実施例1のエアロゾル濃度安定化容器21の内壁には、アルミナ粉の付着が見られなかった。
【0034】
以上より、エアロゾル濃度安定化容器21の内壁の算術平均表面粗さRaを0.25にすることの効果が確認された。すなわち、エアロゾル濃度安定化容器21において、エアロゾルが供給される入口近傍と、供給されたエアロゾルが最初に衝突する面の近傍、およびエアロゾルが排出される出口近傍の内壁面の算術平均表面粗さRaを小さくすることで、ノズル15の目詰まりの抑制が期待できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、基板上に微粒子の粉体の構造物を形成させる際に、形成速度を一定に保ち、厚みなどのばらつきを抑制するため、エアロゾルを長期的に安定して発生させることが可能なエアロゾルデポジション装置として、産業上、有益に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のエアロゾルデポジション装置の一例を示す概略図
【図2】図1におけるエアロゾル濃度安定化容器のX−X断面図
【図3】図1におけるエアロゾル濃度安定化容器のY−Y断面図
【図4】図3におけるエアロゾル濃度安定化容器のZ−Z断面図
【図5】本発明の別の形態エアロゾル濃度安定化容器を示す概略図
【図6】本発明の別の形態エアロゾル濃度安定化容器を示す概略図
【符号の説明】
【0037】
1 エアロゾルデポジション装置
11 ガスボンベ
12a 配管
12b 配管
12c 配管
13 エアロゾル発生器
14 成膜チャンバー
15 ノズル
16 基板
17 基板ホルダー
18 排気ポンプ
19 バルブ
20 材料粒子
21 エアロゾル濃度安定化容器
211 エアロゾル導入口
212 エアロゾル排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を収容し、ガスを導入して前記粉体のエアロゾルを発生させるエアロゾル発生器と、
前記エアロゾルが導入される入口近傍の内壁面、前記エアロゾルが最初に衝突する面近傍の内壁面、および前記エアロゾルが排出される出口近傍の内壁面の少なくともいずれかが、算術平均表面粗さRaが0.25以下の面で構成される、前記エアロゾルの濃度を安定化させるエアロゾル濃度安定化容器と、
前記エアロゾル濃度安定化器から供給される前記エアロゾルを基材に噴霧させるノズルと、
前記ノズルが設けられる成膜室とを有するエアロゾルデポジション装置。
【請求項2】
前記エアロゾル安定化器の内壁面全面の算術平均表面粗さRaが、0.25以下である請求項1に記載のエアロゾルデポジション装置。
【請求項3】
前記エアロゾルを流通させる内面の算術平均表面粗さRaが0.25以下である、前記エアロゾル濃度安定化容器と前記ノズルとを結ぶ経路を有する請求項1または2に記載のエアロゾルデポジション装置。
【請求項4】
前記エアロゾルを流通させる内面の算術平均表面粗さRaが0.25以下である、前記エアロゾル発生器と前記エアロゾル濃度安定化容器とを結ぶ経路を有する請求項1から3のいずれかに記載のエアロゾルデポジション装置。
【請求項5】
前記エアロゾル発生器、および前記成膜室の内壁面の算術平均表面粗さRaが、0.25以下である請求項1から4のいずれかに記載のエアロゾルデポジション装置。
【請求項6】
活物質層が、
請求項1から5のいずれかに記載のエアロゾルデポジション装置を用いて、集電体である前記基板に活物質である前記粉体が噴霧されて構成される蓄電デバイス用極板。
【請求項7】
多孔性電子絶縁層が、
請求項1から5のいずれかに記載のエアロゾルデポジション装置を用いて、前記基板に無機粒子である前記粉体が噴霧されて構成されるセパレータ。
【請求項8】
セパレータと、
正極、および負極のいずれかに請求項6に記載の蓄電デバイス用極板を備える蓄電デバイス。
【請求項9】
請求項7に記載のセパレータと、
正極極板、および負極極板を備える蓄電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−161815(P2009−161815A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−904(P2008−904)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】