説明

エマルジョン燃焼用混合器及びエマルジョン燃焼用混合液体供給システム

【課題】界面活性剤や還元水を用いなくても液体燃料と水とを充分にエマルジョン状に混合できるエマルジョン燃焼用混合器及びこれを用いたエマルジョン燃焼用混合液体供給システムを提供する。
【解決手段】エマルジョン燃焼用混合器10は、略筒状体の管状部12と、管状部12の内側を入口端12Aの側と出口端12Bの側とに隔てるように管状部12の内側に配置され、且つ、入口端12Aの側及び出口端12Bの側に連通する複数の貫通孔14Aが形成された攪拌器14と、を含み、管状部12は、内径が入口端12Aの側から出口端12Bの側に向かって小さくなる形状で攪拌器14よりも出口端12Bの側に配置された出口側縮径テーパ部12Cと、出口側縮径テーパ部12Cよりも出口端12Bの側の内周面に円周方向に沿って形成された出口側内周溝部12Dと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料及び水を混合するためのエマルジョン燃焼用混合器及びこれを用いたエマルジョン燃焼用混合液体供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体燃料に水を添加しエマルジョン状に混合して燃焼させるエマルジョン燃焼と称される技術が知られている。エマルジョン燃焼では燃焼時に水粒子の微小な水蒸気爆発が生じることにより液体燃料粒子が細分化される。これにより燃料と空気とが混合しやすくなり燃焼効率が向上する等の利点がある。又、NOxの発生を抑制することも可能である。
【0003】
このようなエマルジョン燃焼の効果を高めるためには液体燃料と水とを充分にエマルジョン状に混合することが好ましい。尚、界面活性剤を用いることで液体燃料と水のエマルジョン化を促進できるが、コストを削減できるという点では界面活性剤を用いることなく、液体燃料及び水をエマルジョン状に混合することが好ましい。そこで、例えば機械的な工夫や液体燃料と混合される水として還元水(酸化還元電位が低下した水)を用いることにより、界面活性剤を用いることなく液体燃料及び水をエマルジョン状に混合できるようにした様々な構造のエマルジョン燃焼用混合器が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−319971号公報
【特許文献2】特開2000−329308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来のエマルジョン燃焼用混合器を用いても液体燃料と水とを充分にエマルジョン状に混合できないことがあった。又、還元水を用いる場合、還元水の生成のためのコストを要するという問題もあった。
【0006】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、界面活性剤や還元水を用いなくても液体燃料と水とを充分にエマルジョン状に混合できるエマルジョン燃焼用混合器及びこれを用いたエマルジョン燃焼用混合液体供給システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、略筒状体で一方の端部である入口端から他方の端部である出口端に液体燃料及び水を混合してなる混合液体が一方向に流される管状部と、前記管状部の内側を前記入口端の側と前記出口端の側とに隔てるように前記管状部の内側に配置され、且つ、前記入口端の側及び前記出口端の側に連通する複数の貫通孔が形成された攪拌器と、を含み、前記管状部は、内径が前記入口端の側から前記出口端の側に向かって小さくなる形状で前記攪拌器よりも前記出口端の側に配置された出口側縮径テーパ部と、該出口側縮径テーパ部よりも前記出口端の側の内周面に円周方向に沿って形成された出口側内周溝部と、を有するエマルジョン燃焼用混合器により上記課題を解決するものである。
【0008】
尚、前記管状部は、前記出口側縮径テーパ部と前記出口側内周溝部との間に内径が前記出口側内周溝部における前記入口端の側の端部の内径よりも小さく前記出口側縮径テーパ部に隣接する中間小内径部を更に有し、前記中間小内径部と前記出口側内周溝部との境界において内径が前記入口端の側から前記出口端の側に不連続に拡大している構成とするとよい。
【0009】
又、前記出口側内周溝部の内周側面の少なくとも一部は内径が前記入口端の側から前記出口端の側に向かって小さくなるテーパ形状である構成とするとよい。
【0010】
又、前記管状部は、内径が前記入口端の側から前記出口端の側に向かって大きくなる形状で前記攪拌器よりも前記入口端の側に配置された入口側拡径テーパ部を更に有する構成とするとよい。
【0011】
又、前記攪拌器は、前記入口端の側から前記出口端の側に向かって外径及び内径が大きくなる略錐面体側面の形状を有する構成とするとよい。
【0012】
又、本発明は、上記のいずれかに記載のエマルジョン燃焼用混合器と、前記混合液体を貯留するための混合液体貯留タンクと、該混合液体貯留タンクから前記エマルジョン燃焼用混合器に前記混合液体を供給するための混合液体供給部と、前記エマルジョン燃焼用混合器で混合された混合液体を前記混合液体貯留タンクに還流するための混合液体還流部と、を有するエマルジョン燃焼用混合液体供給システムより上記課題を解決するものである。
【0013】
尚、前記混合液体還流部は、前記混合液体を前記混合液体貯留タンクの底面に向けて吐出するように前記混合液体貯留タンクの中に配置された吐出部を有する構成とするとよい。
【0014】
又、前記混合液体還流部の前記吐出部は、先端が前記混合液体貯留タンクの底面の近傍に位置し、且つ、前記底面に垂直な方向に対し傾斜して配置されたパイプ状部材である構成とするとよい。
【0015】
又、前記混合液体供給部を第1の混合液体供給部として、前記混合液体貯留タンクから燃焼用器具に前記混合液体を供給するための第2の混合液体供給部を更に有する構成とするとよい。
【0016】
又、前記エマルジョン燃焼用混合器から燃焼用器具に前記混合液体が直接供給されるように構成し、前記混合液体還流部は前記エマルジョン燃焼用混合器で混合された混合液体のうち前記燃焼用器具に供給されない余剰の混合液体を前記混合液体貯留タンクに還流する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、界面活性剤や還元水を用いなくても液体燃料と水とを充分にエマルジョン状に混合できるエマルジョン燃焼用混合器及びエマルジョン燃焼用混合液体供給システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエマルジョン燃焼用混合器の構造を示す断面図
【図2】本発明の第2実施形態に係るエマルジョン燃焼用混合器の出口側内周溝部の形状を示す断面図
【図3】本発明の第3実施形態に係るエマルジョン燃焼用混合器の出口側内周溝部の形状を示す断面図
【図4】本発明の第4実施形態に係るエマルジョン燃焼用混合器の出口側内周溝部の形状を示す断面図
【図5】本発明の第5実施形態に係るエマルジョン燃焼用混合液体供給システムの概略構造を示す一部断面を含む側面図
【図6】同平面図
【図7】本発明の第6実施形態に係るエマルジョン燃焼用混合液体供給システムの概略構造を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1に示されるように、本発明の第1実施形態に係るエマルジョン燃焼用混合器10は、略筒状体で一方の端部である入口端12Aから他方の端部である出口端12Bに液体燃料及び水を混合してなる混合液体が一方向に流される管状部12と、管状部12の内側を入口端12Aの側と出口端12Bの側とに隔てるように管状部12の内側に配置され、且つ、入口端12Aの側及び出口端12Bの側に連通する複数の貫通孔14Aが形成された攪拌器14と、を含み、管状部12は、内径が入口端12Aの側から出口端12Bの側に向かって小さくなる形状で攪拌器14よりも出口端12Bの側に配置された出口側縮径テーパ部12Cと、出口側縮径テーパ部12Cよりも出口端12Bの側の内周面に円周方向に沿って形成された出口側内周溝部12Dと、を有することを特徴としている。尚、図1中の矢印は混合液体が流れる方向を示している。
【0021】
管状部12は、第1部材16、第2部材18、第3部材20及び第4部材22を有して構成されている。これら第1部材16、第2部材18、第3部材20及び第4部材22はいずれも筒状体で、この順で入口端12Aの側から出口端12Bの側に同軸的に並んで配置され、相互に螺合して結合されている。
【0022】
第1部材16の内周面は、入口端12Aの側の小内径部16Aと、第2部材18の側の大内径部16Bと、内径が小内径部から大内径部に(入口端12Aの側から出口端12Bの側に)向かって大きくなる形状で小内径部16A及び大内径部16Bの間に(攪拌器14よりも入口端12Aの側に)配置された入口側拡径テーパ部16Cと、を有している。尚、大内径部16Bの第2部材18側の端部近傍には、第2部材18との結合のための雌ねじが形成されている。又、第1部材16の外周面は、入口端12Aの側の小外径部16Dと、第2部材18の側の大外径部16Eと、を有する段付形状で、小外径部16Dには外部配管等との結合のための雄ねじが形成されている。
【0023】
第2部材18は、内径が第1部材16の小内径部16Aよりも大きく大内径部16Bよりもやや小さい。第2部材18における第1部材16側の端部には攪拌器14が一体に形成されている。尚、第2部材18の外周面における第1部材16側の部分には第1部材16との結合のための雄ねじが形成され、第2部材18の内周面における第3部材20側の端部近傍には第3部材20との結合のため雌ねじが形成されている。
【0024】
第3部材20の内周面における第2部材18側の端部には前記出口側縮径テーパ部12Cが形成されている。又、第3部材20の内周面における出口側縮径テーパ部12Cよりも出口端12B側の部分(出口側縮径テーパ部12Cと出口側内周溝部12Dとの間の部分)は、中間小内径部12Eである。尚、中間小内径部12Eの内径は一定である。又、中間部12Eの内径は、第1部材16の小内径部16Aの内径と等しい。又、第3部材20の外周面における第2部材18側の端部近傍には第2部材18との結合のための雄ねじが形成され、外周面における第4部材22側の部分には第4部材22との結合のため雄ねじが形成されている。
【0025】
第4部材22の内周面は、第3部材20の側の大内径部22Aと、出口端12Bの側の小内径部22Bと、これら大内径部22A及び小内径部22Bの間に(攪拌器14よりも出口端12Bの側に)配置された縮径テーパ部22Cと、を有している。尚、小内径部22Bの内径は、第1部材16の小内径部16Aの内径や第3部材20の中間小内径部12Eの内径と等しい。縮径テーパ部22Cは、前記出口側内周溝部12Dの内周側面に相当し、内径が大内径部22Aの側から小内径部22Bの側に(入口端12Aの側から出口端12Bの側に)向かって小さくなるテーパ形状である。一方、第3部材20における縮径テーパ部22Cに対向する軸方向の端面は軸方向に対して垂直な平面であり、管状部12は、中間小内径部12Eと出口側内周溝部12Dとの境界において内径が入口端12Aの側から出口端12Bの側に不連続に拡大している。尚、大内径部22Aには、第3部材20との結合のための雌ねじが形成されている。又、第4部材22の外周面は、第3部材20の側の大外径部22Dと、出口端12Bの側の小外径部22Eと、を有する段付形状であり、小外径部22Eには外部配管等との結合のための雄ねじが形成されている。
【0026】
攪拌器14は、入口端12Aの側から出口端12Bの側に向かって外径及び内径が大きくなる略錐面体側面の形状を有している。又、上記のように攪拌器14は、管状部12を構成する第2部材18に一体に形成されており、第2部材18における入口端12Aの側の端部から入口端12Aの側に突出するように設置されている。攪拌器14には、数十個程度(例えば20〜80程度)の貫通孔14Aが形成されている。貫通孔14Aの直径は数百μm〜数mm程度(例えば0.5〜2.0mm程度)である。
【0027】
尚、液体燃料としては、例えば、重油、灯油、軽油、廃油、アルコール又はジメチルエーテル等を用いることができる。
【0028】
次に、エマルジョン燃焼用混合器10の作用について説明する。
【0029】
エマルジョン燃焼用混合器10には、液体燃料及び水を混合してなる混合液体が管状部12の入口端12Aから他方の端部である出口端12Bに一方向に流される。混合液体は、まず管状部12を構成する第1部材16の小内径部16Aから入口側拡径テーパ部16Cを経て減速されつつ大内径部16B(攪拌器14の入口端12Aの側)に至る。混合液体は攪拌器14の貫通孔14Aを通過する際に加速され、各貫通孔14Aから噴出する混合液体は相互に衝突・混合しつつ出口側縮径テーパ部12Cに衝突する。又、混合液体は、攪拌器14の貫通孔14Aを通過することによりキャビテーションのような状態となる。これにより混合液体は著しく攪拌され、液体燃料の粒子が分離して液体燃料の粒子の間に水の粒子が入り込みやすくなり、液体燃料と水との油中水滴型のエマルジョン化が進行する。
【0030】
次に、混合液体は、出口側縮径テーパ部12Cを経て中間小内径部12Eに流入する。この際も、混合液体は、管状部12の内径の変化により攪拌され、液体燃料と水とのエマルジョン化が更に進行し、又、液体燃料と水との分離が抑制される。
【0031】
次に、混合液体は、中間小内径部12Eから出口側内周溝部12Dを経て管状部12を構成する第4部材22の小内径部22Bに流入する。この際、混合液体は出口側内周溝部12Dにおける内径の変化等により更に攪拌される。特に、出口側内周溝部12Dの内周側面は出口側縮径テーパ部12Cと同様に内径が入口端12Aの側から出口端12Bの側に向かって小さくなるテーパ形状であるので、混合液体は出口側縮径テーパ部12Cにおけると同様に出口側内周溝部12Dのテーパ形状の内周側面に衝突して著しく攪拌される。又、中間小内径部12Eと出口側内周溝部12Dとの境界において内径が入口端12Aの側から出口端12Bの側に不連続に拡大しているので、この点でも混合液体は著しく攪拌される。これにより液体燃料と水との油中水滴型のエマルジョン化が一層進行する。
【0032】
このように、エマルジョン燃焼用混合器10は、入口側拡径テーパ部16C、攪拌器14、出口側縮径テーパ部12Cに加え、出口側内周溝部12Dを備えているので液体燃料と水とを充分にエマルジョン状に混合することができる。例えば、界面活性剤や還元水を用いなくても液体燃料と水とをエマルジョン状に充分に混合することが可能である。
【0033】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0034】
前記第1実施形態では、管状部12を構成する第4部材22の縮径テーパ部22Cと第3部材20における縮径テーパ部22Cに対向する軸方向の端面とが近接しており、縮径テーパ部22Cが出口側内周溝部12Dの内周側面のほぼ全部に相当する。
【0035】
これに対し、図2に示されるように、本第2実施形態では、第4部材22の縮径テーパ部22Cと第3部材20における縮径テーパ部22Cに対向する軸方向の端面との間に一定の軸方向の隙間があり、縮径テーパ部22Cは出口側内周溝部12Dの内周面の一部のみを構成し、出口側内周溝部12Dの内周面における縮径テーパ部22C以外の部分の内径は一定である。他の構成は前記第1実施形態と同じであるので図1と同一符号を付することとして説明を省略する。
【0036】
このように、縮径テーパ部22Cが出口側内周溝部12Dの内周側面の一部のみを構成し、出口側内周溝部12Dの内周面における縮径テーパ部22C以外の部分の内径が一定である場合も、液体燃料と水とを充分にエマルジョン状に混合することができる。
【0037】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0038】
前記第1及び第2実施形態では、管状部12を構成する第4部材22に縮径テーパ部22Cが形成されており、縮径テーパ部22Cが出口側内周溝部12Dの内周側面の全部又は一部を構成している。
【0039】
これに対し、図3に示されるように、本第3実施形態では、第4部材22の大内径部22Aと小内径部22Bとの間に縮径テーパ部22Cが存在せず、出口側内周溝部12Dの内周側面の内径は一定である。他の構成は前記第1及び第2実施形態と同じであるので図1及び2と同一符号を付することとして説明を省略する。
【0040】
このように、出口側内周溝部12Dの内周側面の内径が一定である場合も、液体燃料と水とを充分にエマルジョン状に混合することができる。
【0041】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
【0042】
前記第1実施形態では、管状部12を構成する第4部材22に内径が入口端12Aの側から出口端12Bの側に向かって小さくなるテーパ形状の縮径テーパ部22Cが形成され、第3部材20における縮径テーパ部22Cに対向する軸方向の端面は軸方向に対して垂直な平面であり、縮径テーパ部22Cが出口側内周溝部12Dの内周側面のほぼ全部に相当する。
【0043】
これに対し、図4に示されるように、本第4実施形態では、第4部材22の大内径部22Aと小内径部22Bとの間に縮径テーパ部が存在しない。一方、第3部材20における出口端12Bの側の端部には内径が入口端12Aの側から出口端12Bの側に向かって大きくなるテーパ形状の拡径テーパ部20Aが形成され、拡径テーパ部20Aが出口側内周溝部12Dの内周側面を構成している。
【0044】
このように、出口側内周溝部12Dの内周側面が、内径が入口端12Aの側から出口端12Bの側に向かって大きくなるテーパ形状の拡径テーパ部20Aである場合も、液体燃料と水とを充分にエマルジョン状に混合することができる。
【0045】
尚、前記第1〜第4実施形態において、管状部12は、第1部材16、第2部材18、第3部材20及び第4部材22を有して構成されているが、管状部の構成は必ずしもこれに限定されない。例えば、管状部は単一の部材からなる構成としてもよい。又、管状部は2又は3の部材からなる構成としてもよい。又、管状部は5以上の部材からなる構成としてもよい。
【0046】
又、前記第1〜第4実施形態において、攪拌器14は管状部12を構成する第2部材18に一体に形成されているが、攪拌器は管状部に螺合等により結合される構成としてもよい。
【0047】
又、前記第1〜第4実施形態において、攪拌器14は入口端12Aの側から出口端12Bの側に向かって外径及び内径が大きくなる略錐面体側面の形状を有しているが、他の形状の攪拌器を用いてもよい。例えば、管状部12の軸方向に対して略垂直な円板形状であり軸方向の貫通孔が形成された構造の攪拌器を用いてもよい。
【0048】
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
【0049】
本第5実施形態は、図5及び6に示されるようなエマルジョン燃焼用混合液体供給システム30に関する。エマルジョン燃焼用混合液体供給システム30は、前記第1〜第4実施形態のいずれかに記載のエマルジョン燃焼用混合器10と、混合液体を貯留するための混合液体貯留タンク34と、混合液体貯留タンク34からエマルジョン燃焼用混合器10に混合液体を供給するための第1の混合液体供給部36と、エマルジョン燃焼用混合器10で混合された混合液体を混合液体貯留タンク34に還流するための混合液体還流部38と、混合液体貯留タンク34から燃焼用器具32に混合液体を供給するための第2の混合液体供給部40と、を有している。
【0050】
更に、エマルジョン燃焼用混合液体供給システム30は、(水と混合される前の)液体燃料を貯留するための液体燃料貯留タンク42と、液体燃料貯留タンク42から混合液体貯留タンク34へ液体燃料を供給するための液体燃料供給部44と、混合液体貯留タンク34へ水を供給するための水供給部46と、を有している。
【0051】
燃焼用器具32は、例えばバーナーであり、温室用加温機、温風ボイラーユニット等のボイラー、溶融炉、焼却炉等に設置される。
【0052】
混合液体貯留タンク34は、略円筒形の缶状体で底面34Aは略平面である。混合液体貯留タンク34は、底面34Aの近傍にドレン用バルブ34Bを備えている。更に、混合液体貯留タンク34は、フロートセンサ48を備えている。フロートセンサ48は、第1フロート48A、第2フロート48B、第3フロート48C、を備え、これら3個のフロートは、この順で上から下に同軸的に並んで設置されている。第1フロート48Aは、例えば混合液体の液面の上限レベルを検知するために使用される。第2フロート48Bは、例えば初期状態で液体燃料又は水の一方だけが先行して供給された場合に、その液面のレベルを検知するために使用される。第3フロート48Cは、例えば混合液体の液面の下限レベルを検知するために使用される。
【0053】
第1の混合液体供給部36は、混合液体貯留タンク34の底面34Aの近傍に設置されたバルブ36Aと、ポンプ36Bと、バルブ36A及びポンプ36Bを接続する配管36Cと、ポンプ36B及びエマルジョン燃焼用混合器10を接続する配管36Dと、を有している。尚、図6では便宜上、配管36Dを二点鎖線で示している。
【0054】
混合液体還流部38は、混合液体貯留タンク34の上下方向の中央部よりもやや上側に設置されたバルブ38Aと、エマルジョン燃焼用混合器10及びバルブ38Aを接続する配管38Bと、バルブ38Aに接続され混合液体を混合液体貯留タンク34の底面34Aに向けて吐出するように混合液体貯留タンク34の中に配置された吐出部38Cと、を有している。尚、図6では便宜上、配管38Bを二点鎖線で示している。吐出部38Cは、先端が混合液体貯留タンク34の底面34Aの近傍に位置し、且つ、底面34に垂直な方向に対し傾斜して配置されたパイプ状部材である。底面34に垂直な方向(垂直方向)に対する吐出部38Cの傾斜角は例えば25°である。
【0055】
第2の混合液体供給部40は、混合液体貯留タンク34の上下方向の中央部よりもやや下側に設置されたバルブ40Aと、バルブ40A及び燃焼用器具32を接続する配管40Bと、を有している。
【0056】
液体燃料貯留タンク42は、混合液体貯留タンク34と同様の略円筒形の缶状体である。
【0057】
液体燃料供給部44は、液体燃料貯留タンク42と混合液体貯留タンク34とを接続する配管であり、先端の吐出部44Aは、液体燃料を混合液体貯留タンク34の底面34Aの近傍に吐出するように混合液体貯留タンク34の中に配置されている。又、液体燃料供給部44は、流量計44Bと、止め栓44Cと、電磁バルブ44Dと、を有している。
【0058】
水供給部46は、水道、井戸、水タンク(いずれも図示省略)等と混合液体貯留タンク34とを接続する配管であり、先端の吐出部46Aは、水を混合液体貯留タンク34の上部近傍に吐出するように混合液体貯留タンク34の中に配置されている。又、水供給部46は、減圧弁46Bと、流量計46Cと、止め栓46Dと、電磁バルブ46Eと、を有している。
【0059】
次に、エマルジョン燃焼用混合液体供給システム30の作用について説明する。
【0060】
混合液体貯留タンク34には、液体燃料貯留タンク42から液体燃料供給部44を介して液体燃料が供給され、又、水道、井戸、水タンク等から水供給部46を介して水が供給される。この際、例えば、まず液体燃料のみを混合液体貯留タンク34に供給する。第2フロート48Bにより液体燃料の液面が所定のレベルに達したことを検知したところで液体燃料の供給を停止すると共に水の供給を開始する。尚、水は液体燃料よりも比重が大きいので、吐出された水は液体燃料の下方に移動し、液体燃料は上方に移動する。これにより、液体燃料と水とがある程度攪拌される。第1フロート48Aにより混合液体の液面が所定のレベルに達したことを検知したところで水の供給を停止する。これにより、液体燃料と水が所定の混合比で液体燃料貯留タンク42に貯留される。尚、まず水のみを混合液体貯留タンク34に供給し、第2フロート48Bにより水の液面が所定のレベルに達したことを検知したところで水の供給を停止すると共に液体燃料の供給を開始してもよい。この場合も、液体燃料は水よりも比重が小さいので、吐出された液体燃料は上方に移動し水は下方に移動し、液体燃料と水とがある程度攪拌される。フロートセンサ48、液体燃料供給部44の電磁バルブ44D、水供給部46の電磁バルブ46E等により液体燃料及び水の供給量を制御し、液体燃料と水の混合比を自動的に調整することができる。尚、液体燃料と水の混合比の調整は作業者が手動で行ってもよい。
【0061】
このように液体燃料及び水を混合してなる混合液体貯留タンク34に貯留された混合液体は、第1の混合液体供給部36を介してエマルジョン燃焼用混合器10に供給され、エマルジョン燃焼用混合器10において前記第1〜第4実施形態において説明したように充分にエマルジョン状に混合される。エマルジョン燃焼用混合器10においてエマルジョン状に混合された混合液体は、混合液体還流部38を介して混合液体貯留タンク34へ還流される。混合液体は、混合液体還流部38の吐出部38Cから混合液体貯留タンク34の底面34Aに向けて吐出され、ここでも混合液体が攪拌される。特に、吐出部38Cは、先端が混合液体貯留タンク34の底面34Aの近傍に位置し、且つ、底面34に垂直な方向に対し傾斜して配置されているので混合液体を攪拌する効果が高められている。これにより、液体燃料と水とのエマルジョン化が更に促進される。又、液体燃料と水との分離が抑制される。このように、混合液体貯留タンク34とエマルジョン燃焼用混合器10との間で混合液体が循環することにより、混合液体は充分にエマルジョン化された状態を保持しつつ混合液体貯留タンク34に貯留される。尚、一旦エマルジョン化された混合液体は、容易には液体燃料と水とに分離しない。特に、液体燃料と水との混合比(容積比)が85(液体燃料):15(水)〜90(液体燃料):10(水)程度であれば、エマルジョン化された混合液体が液体燃料と水とに再分離することを抑制する効果が高く好ましい。
【0062】
混合液体貯留タンク34に貯留された充分にエマルジョン化された混合液体の一部は、第2の混合液体供給部40を介して燃焼用器具32に供給されて燃焼する。混合液体は、充分にエマルジョン化され液体燃料が極小微粒子となっているので酸素と接触しやすい。従って、COの発生が抑制され、完全燃焼又は完全燃焼に近い燃焼を実現できる。
【0063】
尚、混合液体が燃焼用器具32に供給されて燃焼することにより、混合液体貯留タンク34に貯留された混合液体の量が減少する。この減少分を補うように、混合液体貯留タンク34には、液体燃料貯留タンク42から液体燃料供給部44を介して液体燃料が供給され、又、水道、井戸、水タンク等から水供給部46を介して水が供給される。例えば、第3フロート48Cにより混合液体の液面が所定の下限のレベルに達したことを検知したところで混合液体貯留タンク34への液体燃料及び水の供給を開始する。これにより、燃焼用器具32において継続して完全燃焼又は完全燃焼に近い燃焼を行うことができる。
【0064】
次に、本発明の第6実施形態について説明する。
【0065】
前記第5実施形態に係るエマルジョン燃焼用混合液体供給システム30は、エマルジョン燃焼用混合器10で混合された混合液体の全部が混合液体還流部38を介して混合液体貯留タンク34へ還流される。
【0066】
これに対し、図7に示されるように、本第6実施形態に係るエマルジョン燃焼用混合液体供給システム50は、エマルジョン燃焼用混合器10から燃焼用器具32に混合液体が直接供給されるように構成され、混合液体還流部38はエマルジョン燃焼用混合器10で混合された混合液体のうち燃焼用器具32に供給されない余剰の混合液体を混合液体貯留タンク34に還流するように構成されている。尚、第2の混合液体供給部は備えていない。他の構成は前記第5実施形態に係るエマルジョン燃焼用混合液体供給システム30と同様であるので同様の構成については図5及び6と同一符号を付することとして説明を省略する。
【0067】
このように、エマルジョン燃焼用混合器10から燃焼用器具32に混合液体が直接供給されるように構成され、混合液体還流部38がエマルジョン燃焼用混合器10で混合された混合液体のうち燃焼用器具32に供給されない余剰の混合液体を混合液体貯留タンク34に還流する場合も、エマルジョン燃焼用混合器10において混合液体が充分にエマルジョン化され液体燃料が極小微粒子となって燃焼用器具32に供給されるので燃焼時において液体燃料と酸素とが接触しやすい。従って、COの発生が抑制され、完全燃焼又は完全燃焼に近い燃焼を実現できる。
【実施例】
【0068】
前記第5実施形態に係る図5及び6に示されるエマルジョン燃焼用混合液体供給システム30を用いて燃焼実験を行った。尚、エマルジョン燃焼用混合器10は前記第1実施形態に係る図1に示される構成のものを用いた。主な実験条件は以下のとおりである。
【0069】
気温:約20℃
風速:約2m
液体燃料:A重油
水:井戸水(非還元水)
混合比(容積比):87(A重油):13(水)
小内径部16A、22B、中間小内径部12Eの内径(直径):12mm
大内径部16Bの内径(直径):29mm
攪拌器14の貫通孔14Aの内径(直径):1mm
攪拌器14の貫通孔14Aの個数:51
攪拌器14の先端平面部の直径:7mm
第2部材18の内径(直径):24mm
大内径部22Aの内径(直径):27mm
ポンプ36Bの吐出し量:16.5リットル/時間
底面34Aに垂直な方向に対する吐出部38Cの傾斜角:25°
燃焼用器具32:温室用加温機HK-4025(ネポン株式会社製)
排気温度測定用の熱電対:端子箱付熱電対T08タイプK(株式会社 東京熱学製)
計測計:SRF106AS(株式会社 山武アドバンスオートメーションカンパニー製)
【0070】
尚、界面活性剤は使用しなかった。又、燃焼用器具32は、(温室内ではなく)屋外に設置した。以上の条件の下で燃焼用器具32に混合液体を供給し、約2時間、混合液体を燃焼用器具32で燃焼させた。まず予備燃焼として排気温度が約290℃になるまで継続して約28分間、混合液体を燃焼用器具32で燃焼させた。次に、本燃焼を行った。具体的には、排気温度が260℃程度になるように断続的に約100分間、混合液体を燃焼用器具32で燃焼させた。尚、排気温度は温室用加温機の排気口の位置における温度である。又、混合液体貯留タンク34には最初に約45リットルの混合液体を貯留し、途中で液体燃料、水の補給は行わなかった。排気温度、混合液体貯留タンク34内の混合液体の残量を数分〜10数分の間隔で測定した。測定結果を表1に示す。又、本燃焼における混合液体の総消費量、混合液体に含まれる液体燃料(A重油)の総消費量、本燃焼における液体燃料の平均消費量を表1に併記する。
【0071】
【表1】

【0072】
[比較例]
上記実施例に対し、混合液体ではなく液体燃料(A重油)のみを燃焼用器具32に供給した。尚、気温、風速は以下のとおりであった。
【0073】
気温:23℃
風速:0m(無風)
【0074】
他の条件は上記実施例と同じ条件の下で、実施例と同様に、まず予備燃焼として排気温度が約290℃になるまで継続して約18分間、混合液体を燃焼用器具32で燃焼させた。次に、本燃焼を行った。具体的には、排気温度が260℃程度になるように断続的に約105分間、混合液体を燃焼用器具32で燃焼させた。又、実施例と同様に排気温度、混合液体貯留タンク34内の液体燃料の残量を数分〜10数分の間隔で測定した。測定結果を表2に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
表1及び2に示されるように、実施例は比較例と同等の排気温度でありながら、実施例における液体燃料の平均消費量は比較例における液体燃料の平均消費量よりも少なかった。具体的には、比較例における液体燃料の1分間当たりの消費量は0.157リットルであったのに対し、実施例における液体燃料の1分間当たりの消費量は0.142リットルであった。即ち、実施例における液体燃料の平均消費量は比較例における液体燃料の平均消費量に対し約9.6%少なかった。このように本発明の実施例によれば界面活性剤や還元水を使用しなくてもエマルジョン燃焼の燃焼効率向上の効果が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、例えば、温室用加温機、ボイラー、溶融炉、焼却炉等に利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
10…エマルジョン燃焼用混合器
12…管状部
12A…入口端
12B…出口端
12C…出口側縮径テーパ部
12D…出口側内周溝部
12E…中間小内径部
14…攪拌器
14A…貫通孔
16…第1部材
16A…小内径部
16B…大内径部
16C…入口側拡径テーパ部
16D…小外径部
16E…大外径部
18…第2部材
20…第3部材
22…第4部材
22A…大内径部
22B…小内径部
22C…縮径テーパ部
22D…大外径部
22E…小外径部
30、50…エマルジョン燃焼用混合液体供給システム
32…燃焼用器具
34…混合液体貯留タンク
34A…底面
36…第1の混合液体供給部
38…混合液体還流部
38C、44A、46A…吐出部
40…第2の混合液体供給部
42…液体燃料貯留タンク
44…液体燃料供給部
46…水供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略筒状体で一方の端部である入口端から他方の端部である出口端に液体燃料及び水を混合してなる混合液体が一方向に流される管状部と、
前記管状部の内側を前記入口端の側と前記出口端の側とに隔てるように前記管状部の内側に配置され、且つ、前記入口端の側及び前記出口端の側に連通する複数の貫通孔が形成された攪拌器と、を含み、
前記管状部は、内径が前記入口端の側から前記出口端の側に向かって小さくなる形状で前記攪拌器よりも前記出口端の側に配置された出口側縮径テーパ部と、該出口側縮径テーパ部よりも前記出口端の側の内周面に同軸的に形成された出口側内周溝部と、を有することを特徴とするエマルジョン燃焼用混合器。
【請求項2】
請求項1において、
前記管状部は、前記出口側縮径テーパ部と前記出口側内周溝部との間に内径が前記出口側内周溝部における前記入口端の側の端部の内径よりも小さく前記出口側縮径テーパ部に隣接する中間小内径部を更に有し、前記中間小内径部と前記出口側内周溝部との境界において内径が前記入口端の側から前記出口端の側に不連続に拡大していることを特徴とするエマルジョン燃焼用混合器。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記出口側内周溝部の内周側面の少なくとも一部は内径が前記入口端の側から前記出口端の側に向かって小さくなるテーパ形状であることを特徴とするエマルジョン燃焼用混合器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記管状部は、内径が前記入口端の側から前記出口端の側に向かって大きくなる形状で前記攪拌器よりも前記入口端の側に配置された入口側拡径テーパ部を更に有することを特徴とするエマルジョン燃焼用混合器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記攪拌器は、前記入口端の側から前記出口端の側に向かって外径及び内径が大きくなる略錐面体側面の形状を有することを特徴とするエマルジョン燃焼用混合器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のエマルジョン燃焼用混合器と、前記混合液体を貯留するための混合液体貯留タンクと、該混合液体貯留タンクから前記エマルジョン燃焼用混合器に前記混合液体を供給するための混合液体供給部と、前記エマルジョン燃焼用混合器で混合された混合液体を前記混合液体貯留タンクに還流するための混合液体還流部と、を有することを特徴とするエマルジョン燃焼用混合液体供給システム。
【請求項7】
請求項6において、
前記混合液体還流部は、前記混合液体を前記混合液体貯留タンクの底面に向けて吐出するように前記混合液体貯留タンクの中に配置された吐出部を有することを特徴とするエマルジョン燃焼用混合液体供給システム。
【請求項8】
請求項7において、
前記混合液体還流部の前記吐出部は、先端が前記混合液体貯留タンクの底面の近傍に位置し、且つ、前記底面に垂直な方向に対し傾斜して配置されたパイプ状部材であることを特徴とするエマルジョン燃焼用混合液体供給システム。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれかにおいて、
前記混合液体供給部を第1の混合液体供給部として、前記混合液体貯留タンクから燃焼用器具に前記混合液体を供給するための第2の混合液体供給部を更に有することを特徴とするエマルジョン燃焼用混合液体供給システム。
【請求項10】
請求項6乃至8のいずれかにおいて、
前記エマルジョン燃焼用混合器から燃焼用器具に前記混合液体が直接供給されるように構成され、前記混合液体還流部は前記エマルジョン燃焼用混合器で混合された混合液体のうち前記燃焼用器具に供給されない余剰の混合液体を前記混合液体貯留タンクに還流するように構成されたことを特徴とするエマルジョン燃焼用混合液体供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−247080(P2010−247080A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99726(P2009−99726)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(596127565)日本環境保全株式会社 (1)
【Fターム(参考)】