説明

エンコーダ装置

【課題】 エンコーダシートの透明部への汚れの付着を防ぎ、エンコーダ装置の誤検知を抑制するようにしたエンコーダ装置を提供する。
【解決手段】 発光部31と、発光部31からの光を受ける受光部32と、発光部31と受光部32との光路H間を通過するように移動され、その移動方向に光が通るべき透明部41と光を遮るべき非透明部42とを交互に並べた縞パターン43を有する、非導電性材質によって板状に形成されたエンコーダシート40と、を備え、エンコーダシート40の非透明部42の表面には、非導電性材質によって突起部42bが形成され、突起部42bはエンコーダシート40が帯電された状態で、自身の表面に不平等電界が形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置に使用するエンコーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に使用されるDCモータの制御方法として、光学式の透過型センサと、表面に光を透過する透明部および光を遮光する非透明部を等間隔に縞状に設けた円形状もしくは直線状のエンコーダシートとから構成されるエンコーダ装置の情報をフィードバックさせる制御方法が一般的に知られている。
【0003】
このエンコーダシートには、一般的にPET材に代表される合成樹脂製の透明フィルムが用いられている。この透明フィルムは、誘電体のため表面に電荷を帯びやすい。このエンコーダシート近傍に電荷を帯びた物質があると、エンコーダシートに汚れが吸着する。特にエンコーダシートの透明部に汚れが吸着すると、正確な情報が得られず正常にDCモータを制御することができない。
【0004】
そこで、インクジェット記録装置において、エンコーダシートにインクミストが付着しても、読取精度を低下させることなく位置を検出する目的で、汚れが集中しやすい、エンコーダシート端部を読み取らず、中央部を読み取るエンコーダ装置が提案されている(特許文献等1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006―234410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このエンコーダ装置では、多量に汚れが発生した場合、エンコーダシートの透明部の中央にも汚れが付着し、その汚れにより、エンコーダ装置が誤検知してしまいDCモータの制御が正常に出来ない問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために鑑み、エンコーダシートの透明部への汚れの付着を防ぎ、エンコーダ装置の誤検知を抑制するようにしたエンコーダ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、エンコーダ装置として、発光部と、前記発光部からの光を受ける受光部と、前記発光部と前記受光部との間の光路を通過するように移動され、その移動方向に前記光が通るべき透明部と前記光を遮るべき非透明部とを交互に並べた縞パターンを有する、非導電性材質によって板状に形成されたエンコーダシートと、を備え、前記エンコーダシートの前記非透明部の表面には、非導電性材質によって突起部が形成され、該突起部は前記エンコーダシートが帯電された状態で、自身の表面に不平等電界が形成されることを特徴とする。
【0009】
上記構成とするので、帯電された状態のエンコーダシートの周囲に浮遊している帯電状態の浮遊粒子は、不平等電界による電荷の密度が高い非透明部に形成される突起部の表面に付着しやすくなり、かつ、三次元的な突起部の表面の面積が合わさった非透明部としての全表面積が、透明部の二次元的な表面の面積よりも大きくなるため、エンコーダシートの透明部への汚れ(浮遊粒子)の付着を抑制(減少)し、エンコーダ装置としての誤検知が抑制できることとなる。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明のエンコーダ装置において、前記突起部の表面には、非導電性材質によって補助突起部が形成され、該補助突起部は前記エンコーダシートが帯電された状態で、自身の表面に不平等電界が形成されることを特徴とするので、さらに、三次元的な突起部の表面の面積が合わさった非透明部としての全表面積が、透明部の二次元的な表面の面積よりも大きくなるため、エンコーダシートの透明部への汚れ(浮遊粒子)の付着を抑制(減少)機能が向上し、エンコーダ装置としての誤検知が抑制できる機能を向上できる。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明のエンコーダ装置において、前記突起部、前記補助突起部の非導電性材質を、導電性材質に替えたことを特徴とするので、三次元的な突起部の表面近傍が同電位となるため、電界分布のバラツキが少なくなり、突起部の表面全体で汚れ(浮遊粒子)の付着を均一化して安定させることができるため、エンコーダ装置としての誤検知を抑制できる機能をさらに向上させることができる。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明のエンコーダ装置において、前記エンコーダシートを透明で導電性の高い材質でコーティングし、前記エンコーダシートを接地若しくは直流電圧または交流電圧を印加したことを特徴とするので、接地時には映像力による仮想電荷、直流電圧または交流電圧時には、それぞれの電圧に応じた電荷がエンコーダシートに帯電する。よって前記説明の電界分布により透明部に対して被透明部に強い電界が発生する。結果として、透明部への浮遊粒子の付着を抑制(減少)することができ、微粒子付着による誤検知を抑制することができる。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明のエンコーダ装置において、前記エンコーダシートの前記透明部の表面積よりも前記非透明部の表面積を大きくしたことを特徴とするので、三次元的な突起部の表面の面積が合わさった非透明部としての全表面積が、透明部の二次元的な表面の面積よりも大きくなるため、エンコーダシートの透明部への汚れ(浮遊粒子)の付着を抑制(減少)機能が向上し、エンコーダ装置としての誤検知が抑制できる機能を向上できる。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明のエンコーダ装置において、前記エンコーダシートを、間に介在させるようにして相対向する一対の電極板を設け、この一対の電極板に直流電圧を印加させて、電極板間に直流電界を生じさせる直流電源部を備えさせることを特徴とするので、例えば、一方の電極板に接地の電位を、他方の電極板に正の電位を与えると、電極板間に位置するエンコーダシートの突起部に電界が収束(密度が高い)し、特に先端側が密度が高くなっているため、その周囲に浮遊する正の電荷をもった浮遊粒子が、正の電位の他方の電極板とエンコーダシートとの間に存在すれば、突起部に付着されやすくなり、負の電荷をもった浮遊粒子はエンコーダシートから遠ざかることとなることにより、汚れ(浮遊粒子)の付着を抑制(減少)する機能を向上させるうえで好適となり、しかも、相対向する電極板の間隔や、印加する直流電圧の強弱によって電極板の間の電界の強さを任意に調整することが可能となり、さらに付着を抑制(減少)する機能を向上させるうえで好適となる。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明のエンコーダ装置において、前記一対の電極板は、前記発光部と前記受光部との近傍位置で前記エンコーダシートの前記縞パターンの一部分と対峙するように設けられることを特徴とするので、これによって電極板の設置スペースの最少化を図ることが可能となる。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明のエンコーダ装置において、前記直流電源部に替えて交流電源部とし、前記一対の電極板に交流電圧を印加させて、電極板間に交流電界を生じさせることを特徴とするので、エンコーダシートのそれぞれの電極板と対向する一方若しくは他方の面に、正・負両方の電荷を帯電されることができ、エンコーダシートと電極板との間に浮遊する正・負に、それぞれ帯電した両方の浮遊粒子を非透明部に付着させることが可能となり、さらに透明部に対する汚れ(浮遊粒子)の付着を抑制(減少)する機能を向上させるうえで好適となる。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明のエンコーダ装置において、前記一対の電極板間の交流電界によって前記エンコーダシートの前記縞パターンにおける前記透明部の両側の非透明部を、極性が異なるように帯電させることを特徴とするので、非透明部の電界が強くなり、透明部に対する汚れ(浮遊粒子)の付着を抑制(減少)する機能を向上させるうえで好適となる。その際、前記エンコーダシートを透明で導電性の高い材質でコーテイングしている場合は、透明部と非透明部の絶縁処理を実施する。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明のエンコーダ装置において、前記エンコーダシートの周囲環境における気流の変化前に、前記電極板間の前記電界を生じさせることを特徴とするので、気流が大きく流れる前に電界をエンコーダシートに付与できるため、エンコーダシートに近づく電荷をもった浮遊粒子の付着を抑制(減少)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る画像形成装置の全体構成を示す概略構成図。
【図2】エンコーダ装置を適用したパンチ処理部の概略構造平面図。
【図3】同上概略構成側面図。
【図4】エンコーダ装置の透過型センサとエンコーダシートを示す図。
【図5】エンコーダシートを示す図。
【図6】エンコーダシートの変形例を示す図。
【図7】エンコーダシートの突起部の変形例を示す図。
【図8】エンコーダシートの突起部の変形例を示す図。
【図9】エンコーダシートの変形例を示す図。
【図10】エンコーダシートの変形例を示す図。
【図11】エンコーダシートの変形例を示す図。
【図12】電極板と組み合わせたエンコーダシートを示す図。
【図13】電極板の変形例を示す図。
【図14】電極板の変形例を示す図。
【図15】電極板と組み合わせたエンコーダシートの変形例を示す図。
【図16】電極板と組み合わせたエンコーダシートの変形例を示す図。
【図17】制御装置のブロック図。
【図18】ロータリエンコーダ装置の概略構造平面図。
【図19】ロータリエンコーダ装置のエンコーダシートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態につき付図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係るエンコーダ装置が使用される画像形成装置の一例としての複合複写機の内部機構の概略構造を示す図である。
【0021】
図1において、画像形成装置1は、画像形成部2と、シート後処理部3とで構成され、画像形成部2は用紙をストックして1枚づつ供給する給紙部4、用紙に画像を記録する画像記録部5、原稿画像を読み取る光学系の画像読取部6などを備えている。
【0022】
また、シート後処理部3は、用紙に対してパンチ穴を開けるためのパンチ処理部7、画像が形成された複数の用紙を束状にした用紙束の用紙幅を整える用紙整合部8、この用紙束を綴じ針で綴じるステイプル処理部9などを備えている。これら各機能部はそれぞれユニット化されて配設される。
【0023】
これらの各機能部の間には、用紙を搬送させるための搬送ベルト10や搬送ローラ11などの搬送手段によって機能される用紙搬送路12が設けられている。この用紙搬送路12の搬送手段は、用紙の表面に対して、高精度で画像の位置合わせ等を行う必要がある。そして、移動させる用紙を搬送させるには、摩擦係数が高く、コストが安価であることからゴム部材が搬送ベルト10や搬送ローラ11に用いられる。
【0024】
また、この搬送手段の制御手段としては、搬送ベルト10や搬送ローラ11による単位時間当りの用紙の移動量の精度や、所定時における搬送路上の所定地点の位置(移動位置)の精度が、形成される画像品質に大きな影響をおよぼすこととなる。したがって、この制御手段では、搬送ベルト10や搬送ローラ11の制御のために本発明のエンコーダ装置20が使用される。
【0025】
このエンコーダ装置20は、リニアエンコーダ装置21、ロータリエンコーダ装置22を総称するものである。先ず、前者のリニアエンコーダ装置21について説明する。このリニアエンコーダ装置21は、図1に示すパンチ処理部7に適用されるものである。
【0026】
このパンチ処理部7は用紙搬送路12の搬送経路中に設けられている。この用紙搬送路12の搬送上流側と搬送下流側には、搬送手段としてのゴム製の搬送ローラ対11a、11bが配設される。
【0027】
この搬送ローラ対11a、11bによって搬送される用紙は、その搬送過程で用紙と搬送ローラ対11a、11bとが擦れ合って用紙は正に帯電され、搬送ローラ対11a、11bのゴム部材は負に帯電されることにより、その際に紙粉と呼ばれる非透明の粉である浮遊粒子が発生するため、その周囲空間は浮遊粒子が存在する環境下におかれることとなる。
【0028】
この正に帯電された浮遊粒子は、クーロン力により、負に帯電された物質に引き寄せられる方向に力が働く。リニアエンコーダ装置21が、様々な要因で負に帯電してしまうと、正に帯電された浮遊粒子が付着しやすくなる。
【0029】
具体的なパンチ処理部7に設けられるリニアエンコーダ装置21は、図2に示すように、用紙搬送路12の用紙搬送方向Y(副走査方向)と直交する方向としての主走査方向Xの用紙Sの所定位置にパンチ孔を穿設するパンチユニット7aが駆動手段としてのDCモータ7bによっで駆動させる駆動プーリ7cと従動プーリ7dとの間に架け渡した無端状のパンチ駆動ベルト7eに連結されている。そして、パンチユニット7aはパンチ駆動ベルト7eによって主走査方向Xに移動(往動若しくは復動)される。このパンチユニット7aの移動量をリニアエンコーダ装置21によって検知し、用紙Sの所定の位置にパンチ孔を穿設することとなる。
【0030】
このリニアエンコーダ装置21は、図3、図4にも示すように、パンチユニット7aのパンチキャリッジ本体7fに設けられる光学式の透過型センサ30として、発光部31と、この発光部31からの光を受ける受光部32とを備える。また、発光部31と受光部32との間の光路Hを通過するように移動され、その移動方向Zにおいて光が通るべき透明部41と光を遮るべき非透明部42とを、一定の同じ間隔で交互に並べた縞パターン43が形成されたエンコーダシート40を備える。
【0031】
このリニアエンコーダ装置21は、後述する制御装置50における制御部51によって制御される。すなわち、エンコーダシート40の透明部41と非透明部42の光透過量の違いにより、信号を取り出し、パンチユニット7aの移動量を検知し、任意の位置に用紙をパンチする。
【0032】
また、エンコーダシート40は非導電性材質によって所定長さ及び幅で帯板状に形成される。また、非導電性材質としては、電荷をためることが可能な誘電体としての合成樹脂であるポリエステル系樹脂や、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
【0033】
また、図5に示すように、エンコーダシート40の非透明部42の主表面42a(図示では両面のうちの一方の面)には、非導電性材質によって突起部42bが形成される。この突起部42bは三次元形態のものを別体で形成し、非透明部42の二次元的な主表面42aに接合したり、この非透明部42の二次元的な主表面42aに三次元形態の突起部42bを一体形成することもできる。この突起部42bはエンコーダシート40として帯電された状態で、突起部42b自身の表面には不平等電界が形成されるものである。
【0034】
この突起部42aの三次元形態としては、エンコーダシート40の非透明部42の主表面42aからシート厚み方向に、先端に移行するに従ってその横断面積が縮小するように曲率半径を順次小さくするように、例えば円錐状に突出形成している。
【0035】
そして、エンコーダシート40が帯電すると、その周囲の電荷が突起部42bの先端側に収束(密度が高い)するような不平等電界が生じることとなり、用紙Sが正に帯電され、エンコーダシート40が負に帯電される状態になると、その周囲に浮遊する紙粉と呼ばれる非透明の粉である正に帯電された浮遊粒子が、同じ負に帯電されるエンコーダシート40の突起部42bの表面に付着しやすくなる。
【0036】
この浮遊粒子の付着機能は、二次元的(平面的)な透明部41の表面積よりも、三次元的な表面を持つ突起部42bを含む非透明部42全体の表面積が大きくなることと、不平等電界が生じている突起部42bの表面個所の浮遊粒子の付着機能が相まって相乗的に高まり、浮遊粒子が透明部41より非透明部42に付着されやすくなる結果、透明部41への浮遊粒子の付着を抑制(減少)することができ、微粒子付着による誤検知を抑制することができる。
【0037】
また、突起部42bを複数にすることにより、非透明部42全体の表面積を透明部41の表面積よりもさらに大きくすることができるため、透明部41に対する浮遊粒子の付着を抑制(減少)する機能を向上させるうえで好適となる。また、図6に示すように、突起部42bを非透明部42の一方の面に限らずに、他方の面にも合わせて形成することもでき、これによって突起部42bの表面に浮遊粒子がさらに付着されやすくなり、透明部41に対する浮遊粒子の付着をさらに抑制(減少)することができる。
【0038】
また、図7に示すように、突起部42bの形状についても、円錐状には何ら限定されず、不平等電界を生じさせる形状であれば、角錐状、多角(六角、八角、十二角など)錐状などに形成することも可能である。
【0039】
また、図8に示すように、突起部42b自体の表面に、さらに複数の補助突起部42cを形成することもできる。これによってさらに非透明部42全体の表面積を透明部41の表面積よりもさらに大きくすることができるため、透明部41に対する浮遊粒子の付着を抑制(減少)する機能を向上させるうえで好適となる。この補助突起部42cの形状も突起部42bの形状と同様に形成することができる。
【0040】
また、エンコーダシート40の変形例としては、図9に示すように、突起部42b、若しくは補助突起部42cが設けられる突起部42b、または、これらの複数種の突起部42bが任意に組み合わされたエンコーダシート40を、透明で導電性の高い材質でコーティングし、エンコーダシート40を接地若しくは直流電圧または交流電圧を印加するようにして構成することもできる。この透明で導電性の高い材質としては、酸化インジウムスズ、酸化スズなどが挙げられる。このことによって、接地時には映像力による仮想電荷、直流電圧または交流電圧時には、それぞれの電圧に応じた電荷がエンコーダシート40に帯電する。よって前記説明の電界分布により透明部41に対して非透明部42に強い電界が発生する。結果として、透明部41への浮遊粒子の付着を抑制(減少)することができ、微粒子付着による誤検知を抑制することができる。
【0041】
また、エンコーダシート40の変形例としては、図10に示すように、突起部42b、若しくは補助突起部42cが設けられる突起部42b、または、これらの複数種の突起部42bが任意に組み合わされたエンコーダシート40の縞パターン43を構成する透明部41と非透明部42について、移動方向Zにおける透明部41と非透明部42との合計長さL1を変えずに、その移動方向Zにおける透明部41の長さL2よりも非透明部42の長さL3を長くするように構成(帯幅は一定)することもできる。これによって非透明部42全体の表面積が大きくなり、その表面に浮遊粒子が付着されやすくなり、透明部41への浮遊粒子の付着を抑制(減少)することができ、微粒子付着による誤検知を抑制することができる。
【0042】
また、エンコーダシート40の変形例としては、上記実施の形態では、突起部42b、補助突起部42cを備えるエンコーダシート40の材質を非導電性材質としているも、この材質に何ら限定されす、導電性の高い材料(金属など)に替えることも可能となる。
【0043】
このように、エンコーダシート40を導電性材質で形成した場合、図11に示すように、エンコーダシート40(突起部42b、補助突起部42cを含む)が負極に帯電した状態では、突起部42bの表面に破線で示す等電位面HDが発生する。これによってエンコーダシート40の近傍に正の電荷をもった浮遊粒子Pが近づくと突起部42bに付着されることとなる。
【0044】
また、用紙と人の皮膚との摩擦帯電により、負の電荷に帯電されるような浮遊粒子Pが発生した場合には、エンコーダシート40の突起部42bの電界により、その浮遊粒子Pをエンコーダシート40から遠ざける力が発生するためエンコーダシート40の透明部42に対する浮遊粒子Pの付着を抑制(減少)することができる。
【0045】
また、エンコーダシート40の非透明部42、突起部42bの表面が同電位となるため、電界分布(不平等ではない)のバラツキが少なくなり、浮遊粒子Pの付着を抑制(減少)機能を向上させるうえで好適となる。
【0046】
つぎにリニアエンコーダ装置21の他の実施の形態としては、図12に示すように、導電性の高い材質(金属など)で形成される突起部42b、若しくは補助突起部42cが設けられる突起部42b、または、これらの複数種の突起部42bが任意に組み合わされたエンコーダシート40を、間に介在させるようにして相対向する一対の電極板44、45を設ける。この一対の電極板44、45に直流電圧を印加させて、電極板44、45の間に直流電界を生じさせる直流電源部46を備えさせて構成することもできる。この一対の電極板44、45は、エンコーダシート40の長さに対して、その全長にわたって設けたり、その長さの一部分にわたって設けることができる。
【0047】
このように構成するリニアエンコーダ装置21では、例えば、一方の電極板44に接地の電位を、他方の電極板45に正の電位を与えると、一対の電極板44、45の間に位置するエンコーダシート40の突起部42bに電界が収束(密度が高い)し、特に先端側が密度が高くなっている。これによって、その周囲に浮遊する正の電荷をもった浮遊粒子Pが、正の電位の他方の電極板45とエンコーダシート40との間に存在すれば、突起部42bに付着されやすくなり、負の電荷をもった浮遊粒子Pはエンコーダシート40から遠ざかることとなる。一方、負の電位の他方の電極板44とエンコーダシート40との間に、正の電荷をもった浮遊粒子Pが存在すれば、エンコーダシート40から遠ざかり、負の電荷をもった浮遊粒子Pは突起部42bに付着されやすくなる。
【0048】
この直流電源部46に接続される電極板44、45を備えるリニアエンコーダ装置21では、相対向する電極板44、45の間隔や、印加する直流電圧の強弱によって電極板44、45の間の電界の強さを任意に調整することが可能となり、浮遊粒子Pの付着を抑制(減少)する機能を向上させるうえで好適となる。
【0049】
また、一対の電極板44、45の変形例としては、図13に示すように、パンチユニット7aのパンチキャリッジ本体7fにおいてエンコーダシート40の通過を許容する通路7g内に設ける透過型センサ30における発光部31と受光部32との近傍位置において、通路7g内を通過移動するエンコーダシート40の縞パターン43の一部分、すなわち縞パターン43を構成する少なくとも一組の透明部41と非透明部42と対峙するように一対の電極板44、45を設けることができる。これによって電極板44、45の設置スペースの最少化を図ることが可能となる。
【0050】
また、一対の電極板44、45の変形例としては、図14に示すように、三次元的な形態を備える突起部42bと同様な形状で、電極板44、45におけるエンコーダシート40の縞パターン43側に対向する表面に電極突起部45aを設けることができる。この電極突起部45aは電極板45と同様な材質によって形成される。この構成によることにより図12に示す実施の形態に比べ、直流電源部46によって生じさせる電極板44、45の間の直流電界を、低電圧によって発生可能となるため、直流電源部46の小型化、省スペース化、低コスト化に寄与することができることとなる。また、両面に突起部42bを設けるエンコーダシート40であれば、他方の電極板44に電極突起部44aを形成することもできる。
【0051】
また、図12〜図14に示すリニアエンコーダ装置21では、直流電源部46が接続された電極板44、45を備える実施の形態であるが、この変形例として、図15、図16に示すように、直流電源部46に替えて交流電圧を印加させて、電極板44、45の間に交流電界を生じさせる交流電源部47を設けることができる。
【0052】
この構成によることによりエンコーダシート40のそれぞれの電極板44、45と対向する一方若しくは他方の面に、正・負両方の電荷を帯電されることができる。交流の電位を与えない実施の形態に比べ、エンコーダシート40と電極板44、45に浮遊する正・負に、それぞれ帯電した両方の浮遊粒子をエンコーダシート40の非透明部42に吸着させることが可能となり、さらに透明部41に対する浮遊粒子Pの付着を抑制(減少)する機能を向上させるうえで好適となる。その際、前記エンコーダシート40を透明で導電性の高い材質でコーティングしている場合は、透明部41と非透明部42の絶縁処理を実施する。
【0053】
また、交流電位の与えかたが、透明部41の両側の非透明部42に対して極性の異なる電位を与えることで、非透明部42の電界が強くなり、透明部41に対する浮遊粒子Pの付着を抑制(減少)する機能を向上させるうえで好適となる。
【0054】
パンチ処理部7に設けられるリニアエンコーダ装置21は、エンコーダシート40の周囲環境における気流の変化前に、電極板44、45間に電界を生じさせるように制御することもできる。この制御は上述のエンコーダ装置20の実施の形態や変形例に適用できるものであり、具体的には、画像形成装置1として、図1に示すように、用紙の搬送手段としての用紙搬送路12に搬送ベルト10や搬送ローラ11が使用され、この各ローラ、ベルトによって用紙が搬送されると、その周囲において、用紙の移動、ローラの回転、ベルトの移動、ベルト及びローラを回転制御する駆動モータ(図示せず)によって空気の流れ(気流)に変化が生じる。
【0055】
これにより、その気流によって浮遊粒子がリニアエンコーダ装置21のエンコーダシート40側に流れてくると浮遊粒子がエンコーダシート40の透明部41に付着されやすくなる。これを解消するために空気の流れを変化させる要因である用紙の移動、ローラの回転、ベルトの移動、駆動モータが作動する状態を検知し、気流が大きく流れる前に直流電源部46や交流電源部47によって、電界をエンコーダシート40に付与し、電荷をもった浮遊粒子がエンコーダシート40の透明部41に付着することを抑制(減少)するようにできる。この制御は後述する制御装置50によって制御される。
【0056】
図17は本実施の形態に係る制御装置50の電気的制御系を示すブロック図である。図に示すように、制御装置50は、画像形成装置1を構成する画像形成部2、シート後処理部3、給紙部4、画像記録部5、画像読取部6、パンチ処理部7、用紙整合部8、ステイプル処理部9、用紙搬送路12の搬送ベルト10、搬送ローラ11、エンコーダ装置20などと接続されている。
【0057】
制御装置50は、これらを各電気的制御するCPU等の制御部51を備えており、この制御部51としては、図示しないマイコンが使用される。このマイコンの構成は周知であるため詳しい説明は省略するが、I/Oポートと、CPU、ROM及びRAMを備えて、これらがバスで接続されたものである。記憶部として機能するROM及びRAMのうち、ROMには演算等に必要な制御のための公知の各種プログラムが格納されている。
【0058】
この制御部51は、搬送手段の制御手段として機能し、搬送ベルト10や搬送ローラ11による単位時間当りの用紙の移動量や、また、用紙の所定時における搬送路上の所定地点の位置(移動位置)の検出や、エンコーダ装置20によるパンチユニット7aの移動制御の機能を有する。さらに、エンコーダ装置20の直流電源部46、交流電源部47の印加電圧などを制御する機能を備える。また、搬送ベルト10や搬送ローラ11を作動させた際、用紙の移動、ローラの回転、ベルトの移動、駆動モータが作動する状態を検知し、気流が大きく流れる前に直流電源部46や交流電源部47によって、電界をエンコーダシート40に付与する機能を有する。
【0059】
上述の実施の形態のエンコーダ装置20としてはリニアエンコーダ装置21について説明しているも、他のロータリーエンコーダ装置22においても適用できるものである。すなわち、図18に示すように、用紙搬送経路12において用紙Sを搬送すべき搬送ローラ対11a(11bは省略)は、軸固定具12a(ベアリング)によって回転自在に支持される回転軸12bの一端部の連結される円板状のエンコーダシート40aと、発光部31と受光部32を備える透過型センサ30で構成される。このエンコーダシート40aは、図19に示すように、透過型センサ30の発光部31と受光部32との光路を通過する方向としての円周方向に透明部41、非透明部42が一定の同じ間隔で交互に並べた縞パターン43を有する。
【0060】
なお、この回転軸12bを回転させるためのDCモータ12cが設けられており、該DCモータ12cはエンコーダシート40aに固定される歯車12dを介して回転軸12bに動力を伝える。このような構成されるロータリーエンコーダ装置22においても、リニアエンコーダ装置21と同様な上述の実施の形態や変形例で説明している構成を単独若しくは任意に組み合わせて形で採用できるのである。
【0061】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、各々の実施の形態は、本発明の説明のために一つ実施形態の部分として述べられている構成を、別の実施の形態において利用し、更に別の実施の形態とすることができる。
【符号の説明】
【0062】
31 発光部
32 受光部
40 エンコーダシート
41 透明部
42 非透明部
42b 突起部
42c 補助突起部
43 縞パターン
44 電極板
45 電極板
46 直流電源部
47 交流電源部
H 光路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部と、
前記発光部からの光を受ける受光部と、
前記発光部と前記受光部との間の光路を通過するように移動され、その移動方向に前記光が通るべき透明部と前記光を遮るべき非透明部とを交互に並べた縞パターンを有する、非導電性材質によって板状に形成されたエンコーダシートと、
を備え、
前記エンコーダシートの前記非透明部の表面には、非導電性材質によって突起部が形成され、該突起部は前記エンコーダシートが帯電された状態で、自身の表面に不平等電界が形成されることを特徴とするエンコーダ装置。
【請求項2】
前記突起部の表面には、非導電性材質によって補助突起部が形成され、該補助突起部は前記エンコーダシートが帯電された状態で、自身の表面に不平等電界が形成されることを特徴とする請求項1記載のエンコーダ装置。
【請求項3】
前記突起部の非導電性材質を、導電性材質に替えたことを特徴とする請求項1記載のエンコーダ装置。
【請求項4】
前記突起部、前記補助突起部の非導電性材質を、導電性材質に替えたことを特徴とする請求項2記載のエンコーダ装置。
【請求項5】
前記エンコーダシートを透明で導電性の高い材質でコーティングし、前記エンコーダシートを接地若しくは、直流電圧または交流電圧を印加したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のエンコーダ装置。
【請求項6】
前記エンコーダシートの前記透明部の表面積よりも前記非透明部の表面積を大きくしたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のエンコーダ装置。
【請求項7】
前記エンコーダシートを、間に介在させるようにして相対向する一対の電極板を設け、この一対の電極板に直流電圧を印加させて、電極板間に直流電界を生じさせる直流電源部を備えるさせることを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1項に記載のエンコーダ装置。
【請求項8】
前記一対の電極板は、前記発光部と前記受光部との近傍位置で前記エンコーダシートの前記縞パターンの一部分と対峙するように設けられることを特徴とする請求項7に記載のエンコーダ装置。
【請求項9】
前記直流電源部に替えて交流電源部とし、前記一対の電極板に交流電圧を印加させて、電極板間に交流電界を生じさせることを特徴とする請求項7または8に記載のエンコーダ装置。
【請求項10】
前記一対の電極板間の交流電界によって前記エンコーダシートの前記縞パターンにおける前記透明部の両側の非透明部を、極性が異なるように帯電させることを特徴とする請求項9に記載のエンコーダ装置。
【請求項11】
前記エンコーダシートの周囲環境における気流の変化前に、前記電極板間の前記電界を生じさせることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載のエンコーダ装置。

【図1】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−47560(P2012−47560A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189274(P2010−189274)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】