説明

エンジントルク変動吸収装置

【目的】 アイドル運転中におけるエンジンのトルク変動を吸収するエンジントルク変動吸収装置を提供すること。
【構成】 回転速度の変動を検出する手段として、エンジン回転数を検出するために従来から車両に搭載されているところの、周上に歯が設けられたギヤを有するエンジン回転センサ8を利用する。トルク変動吸収のために交流機2を発電機運転すべき時期,電動機運転すべき時期は、1回の回転変動中の任意に定めた基準パルス(例、回転速度が最も遅くなった時に発生される回転検出パルス…最長パルス)より数えて、何番目から何番目までのパルスの時ということは判明するから、それを決めておく。入力して来る回転検出パルスの基準パルスからの順番を数え、その順番に対応して決められている運転を行わせれば、適切な運転が出来る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エンジンのクランクシャフトに直結した交流機を、発電機運転および電動機運転することにより、エンジンのトルク変動を吸収するエンジントルク変動吸収装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】エンジンのアイドル運転の回転数は略一定であるが、細かく見ると、回転速度は1回転の間に小刻みに変動している。この変動は、ピストンが上下する際のトルク変化に起因している。従って、変動の回数は、エンジンのクランクシャフトに接続されている気筒数によって変わる。
【0003】図9は、アイドル運転時の4気筒エンジンの回転変動の1例を示す図である。エンジンが平均的には600rpmで回転している場合、即ち、クランクシャフトが0.1s(100ms)で1回転している場合を例にとっている。4気筒であるため、回転変動は1回転中に2回生ずる。
【0004】この回転変動は、車体の振動や騒音を引き起こすので、車体が静止しているアイドル運転中は、出来るだけ小であることが望まれる。なお、車両が走行している時は、回転変動による騒音が騒音全体に占める割合は小さく、あまり気にされない。
【0005】アイドル運転中の回転変動を吸収する方法として、クランクシャフトに交流機(例、同期交流機)を直結し、これによって吸収する方法が知られている。図10に、そのようなエンジントルク変動吸収装置が組み込まれた車両駆動部を示す。図10において、1はエンジン、20は交流機部、21はクラッチ部、22はトランスミッション部、23はプロペラシャフトである。
【0006】エンジン1とクラッチ部21との間に交流機部20を設け、交流機部20の回転軸をクランクシャフトと直結する。交流機部20を用いて回転変動を吸収する原理は、次の通りである。即ち、回転数が上昇するように回転変動している時は、交流機を発電機運転してトルクを消費し、回転数を下げる。逆に、回転数が低下するように回転変動している時は、交流機を電動機運転してトルクを与え、回転数を上げる。なお、電動機運転は、車両に搭載されている通常のバッテリの直流電圧をインバータにより交流電圧に変換し、これを印加することによって行う。
【0007】前記の制御を行うには、回転速度が上昇に転ずるか下降に転ずるかの検出を行わなければならないが、それを検出するのに、従来は、例えば次のような方法を採用していた。第1の方法は、エンジンサイクルの圧縮点を検出するセンサを用いる方法である。回転速度は、圧縮点で最も遅くなる性質を利用したものである。第2の方法は、エンジンの回転数に比例した電圧を発生する回転センサを用い、その電圧の変化を検出する方法である。電圧変化が正の時は回転数が上昇している時であり、負の時は回転数が下降している時である。
【0008】なお、エンジントルク変動吸収装置に関係する従来の文献としては、例えば特開昭61−223237号公報がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記した従来のエンジントルク変動吸収装置で採用されている回転速度変化の検出方法には、次のような問題点があった。圧縮点を検出する方法では、圧縮点を検出するセンサは、通常、車両に設けられておらず、特別に設けなければならないという点である。これは車両のコストを高める。また、変化が急激である時は、交流機の運転切り換えのタイミングを、適切とされる時点に精度よく合わせることが難しい。
【0010】回転センサの出力電圧の変化を検出する方法では、変化を検出するのにある程度の時間がかかってしまうので、やはり、交流機の運転切り換えのタイミングを、適切とされる時点に精度よく合わせることが難しい。また、トルク変動吸収運転を行っている時は、回転速度の変化は抑制されているので、回転センサの出力電圧の変化自体が小さくなり、変化が検出しにくくなる。本発明は、以上のような問題点を解決することを課題とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため、本発明では、エンジンに直結された交流機を、アイドル運転中に回転数を上昇させる回転変動が生じたときには発電機運転し、アイドル運転中に回転数を低下させる回転変動が生じたときには電動機運転することにより、エンジンのトルク変動を吸収するエンジントルク変動吸収装置において、軸がクランクシャフトに直結され、周上に歯が設けられているギヤを用いたエンジン回転センサと、該エンジン回転センサからの回転検出パルスの内の任意に定めた基準パルスを検知する手段と、入力する回転検出パルスを前記基準パルスより起算して計数する計数手段と、 前記基準パルスからのパルス順に応じた前記交流機を発電機運転するか電動機運転するかの運転パターンを定めた運転パターン表を保持し、入力して来たパルス順に対応して運転パターンを選択する運転パターン選択部とを具えることとした。
【0012】
【作 用】回転速度の変動を検出する手段として、エンジン回転数を検出するために従来から車両に搭載されているところの、軸がクランクシャフトに直結され、周上に歯が設けられているギヤを有するエンジン回転センサを利用する。使用するエンジン回転センサが決まれば、歯数は決まり、エンジンの型が決まれば、1回転中での回転変動の回数も決まる。
【0013】トルク変動吸収のために発電機運転すべき時期,電動機運転すべき時期は、1回の回転変動中の任意に定めた基準パルス(例、回転速度が最も遅くなった時に発生される回転検出パルス。言い換えればパルス幅が最長のパルス。)より数えて、何番目から何番目までのパルスの時ということは判明するから、それを決めておく。そうして、入力して来る回転検出パルスの基準パルスからの順番を数え、その順番に対応して決められている運転を行わせることにより、適切な運転をさせる。
【0014】運転時期の判定をするためのセンサとして、既設のエンジン回転センサを利用するので、圧縮点検出センサ等の特別のセンサを設ける必要がなくなり、コストが安くて済む。また、基準パルスから何番目のパルスが入力したかというだけで、回転速度の変動状態を検知しているので、回転数に比例した電圧の変化を調べて回転速度の変動を検出するものよりも、検出時間が短い。また、パルスの順番を検出すればよいから、検出が極めて容易である。
【0015】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
(全体構成の説明)図1は、本発明のエンジントルク変動吸収装置の実施例を示す図である。図1において、1はエンジン、2は交流機、2−1は界磁コイル、3は回転子位置検出器、4は電流検出器、5はインバータ、6はスイッチングユニット、7は整流回路、8はエンジン回転センサ、9は電圧調整器、10はインバータ制御回路、11は総合制御部、12はコンバータ制御回路、13は昇圧コンバータ、14はバッテリである。インバータ5の下半分に含まれるダイオードは、整流回路7と共に整流動作を行うのに兼用されている。
【0016】交流機2としては、例えば同期交流機が用いられる。電圧調整器9は、界磁コイル2−1への電流を制御する。インバータ5の中のスイッチングユニット6としては、例えばパワーMOSFETが使用される。これは、そのソースとドレイン間に、逆方向のダイオードが事実上形成されている構造となっている。パワーMOSFETは、そのゲートにゲート信号が入力されると導通される。導通の方向は、前記ダイオードとは逆方向である。
【0017】ゲート信号は、インバータ5より交流を発生させようとする時、インバータ制御回路10より与えられる。回転子位置検出器3は、回転子の回転位置を検出するものであり、ここからの検出信号を参考にして、各スイッチングユニット6へゲート信号を与えるタイミング(位相)を決定する。界磁コイル2−1に界磁電流が流され、且つ交流機2にインバータ5からの交流が印加される時は、交流機2は電動機運転される。界磁電流は流されるが、交流は印加されない時は、発電機運転される。なお、界磁電流も流されない時は、交流機2は単なるフライホイールとして回転する。
【0018】昇圧コンバータ13は、整流回路7の出力電圧でバッテリ14を充電する際に、昇圧して充電するために設けられたものである。昇圧せずに充電することも出来るから、昇圧コンバータ13は必須のものではない。昇圧コンバータ13としては、公知の構成のものを適用することが出来る。なお、昇圧して充電することの利点は、次の点にある。
【0019】第1の利点は、バッテリに回収されるエネルギーが多くなるという点である。もし昇圧コンバータ13がなければ、整流回路7の出力電圧がバッテリ電圧より低くなれば、充電できなくなる。しかし、昇圧コンバータ13があると、整流回路7の出力電圧がバッテリ電圧より低くなっても、それを昇圧した電圧がバッテリ電圧より大である限り、充電し続けることが出来るからである。
【0020】第2の利点は、トルク変動の吸収が良好に行われるという点である。昇圧コンバータ13により電圧を高くするので、バッテリ14として従来より定格電圧の高いバッテリを用いることが出来る。定格電圧を高くすると、インバータ5で交流に変換して交流機2を電動機運転する際、大きな電動機電流を流すことが出来る。すると、高トルクを発生させることが出来るから、トルク変動の吸収が良好に行われる。
【0021】第3の利点は、昇圧コンバータは任意の時間、出力をオン,オフできるから、エンジンの回転が上昇している期間だけに限って、発電機運転させることができるという点である。
【0022】総合制御部11には、エンジン回転センサ8から回転検出パルスが入力される。また、種々の車両情報および整流した出力電圧(V)検出信号が入力される。総合制御部11は、入力されて来る情報を分析して、電圧調整器9,インバータ制御回路10およびコンバータ制御回路12等に指令を発して、制御動作をさせる。例えば、車両が停止してアイドル運転に入った時を検知すると、回転速度の変化を検出して、インバータ制御回路10,コンバータ制御回路12等に指令を発し、エンジンのトルク変動を吸収する制御動作を行わせる。
【0023】即ち、回転数が上昇するように回転変動している時は、交流機2を発電機運転する。その発電電圧を整流し、昇圧コンバータ13で昇圧してバッテリ14を充電して、増加しようとしているトルクのエネルギーを消費し、回転数を減少させる。逆に、回転数が低下するように回転変動している時は、バッテリ14の電圧をインバータ5で交流に変換し、それを交流機2に印加して電動機運転する。エンジン1はトルクを与えられ、回転数は増加する。
【0024】(回転変動の検出手段について)本発明では、回転変動の検出手段として、公知のエンジン回転センサ8を利用する。図2に、そのエンジン回転センサの構成を示す。8−1はギヤ、8−2は軸、8−3は磁石、8−4はコイルである。ギヤ8−1は、磁性体で作られたギヤであり、例えばエンジンのリングギヤあるいはPTO(Power Take Off) のギヤを利用することが出来る。その軸8−2は、エンジンのクランクシャフトに直結されている。
【0025】ギヤ8−1が回転すると、磁石8−3の直下に歯が来た時と溝が来た時とで、コイル8−4に鎖交する磁束が変化するので、コイル8−4に誘起される電圧は、歯の移動と共にパルス状に周期的に変化する。このような構成のエンジン回転センサ8を、エンジン回転数の検出という本来の目的で利用する場合は、発生するパルスの数を計数することにより、回転数を検出する。
【0026】しかし、本発明のエンジントルク変動吸収装置ためには、発生されるパルスをそのようには利用しない。本発明では、回転変動の1周期の内の、どの時期にあたるかを検知するために利用する。そのため、回転変動の1周期の間に発生するパルスの内で、周期内のパルスを計数するのに都合のよい位置にあるパルスを、基準パルスとして定める。例えば、パルス幅を測定して、最長パルスを基準パルスとして定める。
【0027】回転速度が速い時には、1つの歯が磁石8−3の直下を移動する時間は短いので、コイル8−4から出力されるパルスの幅は短い。回転速度が遅い時には、ゆっくりと移動するので、パルスの幅は長くなる。最長パルスは、1周期の内で1つと特定されるから、基準パルスとして用いることが出来る。
【0028】ギヤ8−1の機械的構造が決まれば、周囲の歯の数は決まるから、1回転で発せられるパルスの数は決まる。仮に、歯の数は40であるとすると、1回転で40個のパルスが出る。トルク変動の周期は、エンジンの気筒数によって決まるが、4気筒であるとすると、図9で示したように1回転で2回の変動があるから、変動の周期は1/2回転の期間である。パルス数にすると、20個のパルスが出る期間である。
【0029】図3は、回転変動と回転検出パルスの長さとの関係を示す図である。曲線イは、図9の曲線と同様のものである。点A,Cで回転速度は最も遅く、点Bで最も速い。ロは、エンジン回転センサ8の検出信号を基に発生されるパルスであり、回転速度が最も遅い点A,Cでパルス幅は最大となり、回転速度が最も速い点Bで最小となる。
【0030】(交流機の運転パターンについて)以下の説明では、基準パルスとして最長パルスを選定した場合を例にとって説明する。1回の変動周期内のパルス20個に、最長パルスを先頭として、順次番号を付ける。先頭番号を0番とすると、最後のパルスの番号は19となる。図9を参照すれば分かるように、トルク変動を吸収するためには、点A〜Bの範囲では交流機2を発電機運転し、点B〜Cの範囲では電動機運転することが要請されるわけであるが、その時期を、パルスの番号で特定することが出来る。この特定は、予め行っておくことが出来る。なぜなら、エンジンの型が決まり(例、気筒数など)、ギヤ8−1の歯の数が決まると、図3のような変動パターンは予め分かるからである。そのパターンを示したのが、図4である。
【0031】図4は、交流機の運転パターンの例を示す図である。回転変動の1周期に対応するギヤ8−1の歯の数は、20個としている。〇印は、その運転を実行することを示している。即ち、エンジン回転センサ8から検出されるパルスの順番が、1〜6番の時は発電機運転し、14〜19番の時は電動機運転することを示している。〇印が付けられていないパルスもあるが、この例のエンジンでは何れの運転もする必要がないと判断されたためである。エンジンの種類によっては、すべてのパルスについて、いずれかの運転をするとの印が付けられることもあり得る。
【0032】(運転パターンの選択)このように、本発明では、予め定めた基準パルスを見つけ、それから数えて何番目のパルスでは、どういうパターンの運転をするかを選ぶというやり方をするから、回転検出パルスを処理して運転パターンを選択する動作を行う必要がある。そのような動作は、総合制御部11の中で行われる。
【0033】図5は、運転パターンを選択する部分の構成を示す図であり、総合制御部11の中に構成される。符合は、図1のものに対応し、15はカウンタ、16は運転パターン選択部、17は初期値設定部である。エンジン回転センサ8からの回転検出パルスは、カウンタ15と初期値設定部17とに入力される。
【0034】初期値設定部17は、エンジンが回転し始めてから数回転程度の間だけ働けばよい。その中身は、実質的には基準パルス発見部を成しており、基準パルスを発見した時に、カウンタ15の値をリセットする(発見の仕方については、後で図6で説明する)。つまり、パルス番号を「0」とする。どのパルスが基準パルスかは、数回転の時間があれば検出できる。いったん基準パルスが検知されれば、パルスの計数を継続している限り、どのパルスが基準パルスかは把握することが出来る。
【0035】なぜなら、ギヤの歯の数は決まっており、1周期のパルス数は決まっているからである(歯が20個なら、20発おきのパルスが基準パルス)。それゆえ、初期値設定部17は、エンジンが始動したあと、1回だけ基準パルスを検知し得る期間だけ作動すればよい。
【0036】カウンタ15としては、回転変動の1周期のパルス数で自動的にリセットされるリングカウンタ等が望ましい。例えば、1周期のパルス数が20個であれば、20個のパルスが入力すると、カウント値が0にリセットされるカウンタである。勿論、初期値設定部17からリセット信号が入力された時には、リセットされる構成としておく。このようなカウンタ15の出力は、入力して来た回転検出パルスが、基準パルスから数えて何番目のパルスかということを知らせることになる。
【0037】運転パターン選択部16には、図4に示した交流機2の運転パターンが格納されており、カウンタ15のカウント値に対応する運転パターンを選択する。選択された運転パターンに応じて、インバータ制御回路10およびコンバータ制御回路12に運転指令が出される。
【0038】図7は、運転パターンを選択するまでの前記のような動作を説明するフローチャートである。
ステップ1…初期値設定部17によって基準パルス(例、最長パルス)が検出された時、パルス番号Mを0とする。
ステップ2…カウンタ15から出るパルスの順番に従って、運転パターン表を読む。
【0039】ステップ3…パルス番号が発電機運転すべき範囲の番号であるかどうか調べる。これは、運転パターン選択部16で行われる。
ステップ4…その範囲であれば、発電機運転するようコンバータ制御回路12に指令を出す。
ステップ5…パルスの順番が電動機運転すべき範囲の番号であるかどうか調べる。これも、運転パターン選択部16で行われる。
ステップ6…その範囲であれば、電動機運転するようインバータ制御回路10に指令を出す。
【0040】ステップ7…次の回転検出パルスが入力して来たら、パルス番号Mを1つカウントアップする。これは、カウンタ15で行われる。
ステップ8…パルス番号Mが、1周期の最後の番号ME に達しているか調べる。達していなければ、そのままステップ2に戻る。
ステップ9…達していれば、パルス番号Mをリセットして(M=0として)、ステップ2に戻る。
【0041】図6は、最長パルスを基準パルスとした場合の、最長パルスを発見するための動作を説明するフローチャートである。この動作は、初期値設定部17で行われる。
ステップ1…入力されて来る回転検出パルスの任意のパルスに着目して、そのパルスの番号Nを0とする。
ステップ2…パルス幅を示すパラメータTを予め設けておき、これに番号Nのパルスのパルス幅TN を入れる。なお、TN は、ここでは図8に示すような、パルス幅とする。
【0042】ステップ3…最長パルスのパルス幅のパラメータTMAX を予め設けておき、ステップ2で得た新しいTの値がTMAX より大か調べる。大でなければ、ステップ5に進む。
ステップ4…TMAX より大であれば、TMAX をT(=TN )の値(←新しい最長値)に更新する。また、最長パルスの番号を示すパラメータN0 を予め設けておき、これに、更新に使ったパルスの番号Nを入れる。これにより、今まで入力して来たパルスの内で最長のパルス幅はTN であり、そのパルスは、ステップ1で入力して来たパルスを0番目として数えて、N番目に当たるパルスだということが分かる。
【0043】ステップ5…次のパルスが入力して来た時、パルス番号を1つ増やす。
ステップ6…増やしたパルス番号が、ギヤの歯の数等より決まる最終番号NE と等しいかどうか調べる。等しくなければ、ステップ2へ戻り、動作を繰り返す。等しくなったら、終了する。終了した時点でN0 を見ることにより、何番目のパルスが最長であったかを知ることが出来る。それが分かれば、その後もパルスを計数しておき、そのパルスが入力して来た時に、カウンタ15にリセット信号を送ればよい。
【0044】以上のように、エンジン回転センサ8から送られて来るパルスの中から、予め定めておいた基準パルスを見つけ、そのパルスから起算して、入力して来るパルスの順番を数える。そして、エンジンの型等を参考にして、何番目のパルスの時には交流機2をどういう種類の運転にするかを定めた運転パターン表に従い、運転パターンを決定する。
【0045】なお、前記した実施例では、1回の回転変動中での最長パルスを基準パルスとしたが、基準パルスは、1回の回転変動中でのパルス計数の起算点となるものであればよいから、任意の他のパルス、例えば最短パルスを基準パルスとしてもよい。
【0046】
【発明の効果】以上述べた如く、本発明のエンジントルク変動吸収装置によれば、交流機の運転時期の判定をするためのセンサとして、既設のエンジン回転センサを利用するので、圧縮点検出センサ等の特別のセンサを設ける必要がなくなり、コストが安くて済む。また、基準パルスから何番目のパルスが入力したかというだけで、回転速度の変動状態を検知しているので、回転数に比例した電圧の変化を調べて回転速度の変動を検出するものよりも、検出時間が短い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のエンジントルク変動吸収装置を示す図
【図2】 エンジン回転センサの構成を示す図
【図3】 回転変動と回転検出パルスの長さとの関係を示す図
【図4】 交流機の運転パターン表の例を示す図
【図5】 運転パターンを選択する部分の構成を示す図
【図6】 最長パルスを発見するための動作を説明するフローチャート
【図7】 運転パターンを選択するまでの動作を説明するフローチャート
【図8】 パルス長を示す図
【図9】 アイドル運転時の4気筒エンジンの回転変動の1例を示す図
【図10】 エンジントルク変動吸収装置が組み込まれた車両駆動部を示す図
【符号の説明】
1…エンジン、2…交流機、2−1…界磁コイル、3…回転子位置検出器、4…電流検出器、5…インバータ、6…スイッチングユニット、7…整流回路、8…エンジン回転センサ、8−1…ギヤ、8−2…軸、8−3…磁石、8−4…コイル、9…電圧調整器、10…インバータ制御回路、11…総合制御部、12…コンバータ制御回路、13…昇圧コンバータ、14…バッテリ、15…カウンタ、16…運転パターン選択部、17…初期値設定部、20…交流機部、21…クラッチ部、22…トランスミッション部、23…プロペラシャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンに直結された交流機を、アイドル運転中に回転数を上昇させる回転変動が生じたときには発電機運転し、アイドル運転中に回転数を低下させる回転変動が生じたときには電動機運転することにより、エンジンのトルク変動を吸収するエンジントルク変動吸収装置において、エンジンの回転に伴ってエンジンの回転角度を等分するよう複数のパルスを出力する回転センサと、該エンジン回転センサからの回転検出パルスの内の任意に定めた基準パルスを検知する手段と、入力する回転検出パルスを前記基準パルスより起算して計数する計数手段と、前記基準パルスからのパルス順に応じた前記交流機を発電機運転するか電動機運転するかの運転パターンを定めた運転パターン表を保持し、入力して来たパルス順に対応して運転パターンを選択する運転パターン選択部とを具えたことを特徴とするエンジントルク変動吸収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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