説明

エンボスを有する靴の中敷き、その製造方法および製造装置

【課題】エンボス中芯を有する段ボール紙に関する技術を利用して、容易に潰れることがなく耐久性に富み、足裏のツボを刺激する効果が永続するとともに、汗を吸収する効果がある靴の中敷きを、廉価に提供すること。この靴の中敷きを製造する方法および装置をも提供する。
【解決手段】織布または不織布の表層(2)、段ボール紙のKライナ原紙を用いた中間層(3)および段ボール紙の中芯原紙を用いた裏面層(4)が、それぞれの間に接着剤の層(5)を介して接着され、裏面から表面に向かって突出するエンボス(6)を多数有するとともに、靴の内部に適合する外形を与えられた靴の中敷き(1)。製造は、Kライナ原紙と布地をあわせた二層品に、中芯原紙を一体化して三層品とし、これをエンボス加工するとともに、圧着して圧着品とする。これを加熱し、接着を完全にしてブランクを得、靴の内部に適合した形状に打ち抜いて中敷きとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボスを有する新規な靴の中敷きに関する。本発明はまた、この新規な靴の中敷きを製造する方法および装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
靴の中に中敷きを置いて、滑りをよくしたり、ムレを軽減したり、あるいは水虫などの予防をすることが行なわれている。また、足裏のツボを刺激して健康増進に役立てることも行なわれている。後者の目的には、プラスチックの成形品で突起をもった専用の中敷きが製造されているが、プラスチックでは足ムレの原因となる汗の吸収がないこと、サイズごとに成形型を用意しなければならず、製品はどうしても高価なものとなることが難点である。そこで、汗を吸収する働きがあり、より簡易で安価に提供できるものとして、片面段ボール紙を靴の内部の形状に合わせた形状に打抜いた中敷きが提案された。この靴の中敷きにおいては、段ボール紙のフルートの方向は、横方向である。
【0003】
片面段ボール紙を打抜いて製造した靴の中敷きは、安価に提供できるが、使用中に段ボール紙を構成する材料から紙粉が出て、靴下に付着して困るという欠点が避けられない。片面段ボール紙のフルートはさして強力なものではないから、体重がかかれば、使用し始めて短時間で潰れてしまうし、とくに靴の中で足裏が前後の方向にずれるような力が加わると、容易にフルートが倒れてしまう。結局、片面段ボール紙製の靴の中敷きは、すこぶる耐久性の低い消耗品であり、ツボを刺激するという目的も、あまり達成できないで終わっている。
【0004】
発明者らは、段ボール紙の製造技術に関して研究し、中芯を在来の波型のコルゲート形状から独立の突起であるエンボス形状に変更したものを発明した。あわせて、その製造方法および製造装置を完成して、別途提案した。その過程で、このエンボス中芯を有する段ボール紙を片面段ボール紙の状態で使用すれば、上記した靴の中敷きに応用できることを着想した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記の着想にもとづき、エンボス中芯を有する段ボール紙に関する技術を利用して、容易に潰れることがなく耐久性に富み、足裏のツボを刺激する効果が永続する靴の中敷きを、比較的廉価に提供することにある。そのような靴の中敷きを製造する方法および装置を提供することもまた、本発明の目的に含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の靴の中敷きは、図1および図2にその構造を示すように、織布または不織布からなる表層(2)、段ボール紙のKライナ(クラフトライナ)材料からなる中間層(3)および段ボール紙の中芯原紙からなる裏面層(4)が、それぞれの間に接着剤の層(5)を介して接着され、裏面から表層に向かって突出するエンボス(6)を多数有するとともに、靴の内部に適合する外形を与えられた靴の中敷き(1)である。
【0007】
この靴の中敷きを製造する本発明の方法は、図3に示すように、下記の諸工程からなる:
[表層布地加湿工程]
表層用の織布または不織布からなる布地(2A)を、Kライナ原紙との貼合わせに先だって加湿する工程、
[第一の貼合わせ工程]
Kライナ原紙(3A)に接着剤液を塗布し、加湿された布地とあわせてゴムロールに挟んで一体化し、二層品(1A)を形成する第一の貼合わせ工程、
[二層品加湿工程]
布地(2A)とKライナ原紙(3A)とからなる二層品(1A)を、中芯原紙(4A)との貼合わせに先だって加湿する工程。
[第二の貼合わせ工程]
中芯原紙(4A)に接着剤液を塗布し、第一の貼合わせ工程で得た二層品(1A)とあわせてゴムロールに挟んで一体化し、三層品(1B)とする第二の貼合わせ工程、
[加湿工程]
得られた三層品(1B)に対し、表裏から水分を与えて柔軟にする加湿工程、
[エンボス・圧着工程]
加湿され柔軟になった三層品(1B)をエンボスロールおよびゴムロールで挟んでエンボス加工し、裏面から表面の方向に突出するエンボス(6)を多数形成するとともに、三層品を形成する各層を圧着して圧着品(1C)とするエンボス・圧着工程、
[加熱・接着工程]
上記のエンボスを形成され、圧着されてなる圧着品(1C)を、多数の加熱手段の列を通して加熱することにより、接着を完全にしてブランク(1D)を形成する接着工程、
および
[打ち抜き工程]
得られたブランク(1D)を所定の形状に打抜き、靴の内部に適合した形状を与えて靴の中敷き(1)とする打抜き工程。
【0008】
上記した靴の中敷きの製造方法の実施に使用する本発明の装置は、下記の構成部分からなる:
・布地の供給手段(E1)、Kライナ原紙の供給手段(E2)および中芯原紙の供給手段(E3)、
・布地を加湿するための、水蒸気吹き出しノズルを備えた第一の加湿器(F)、
・二層品(1A)を加湿するための、水蒸気吹き出しノズルを備えた第二の加湿器(G)
・Kライナ原紙(3A)に接着剤溶液を塗布し、加湿された布地(2A)と貼合わせるための、接着剤浴(H1)、接着剤適用ロール(H2)、および一対のゴムロール(H3,H4)からなる第一の接着剤塗布・貼合わせ装置(H)、
・中芯原紙(4A)に接着剤溶液を塗布し、加湿された二層品と貼合わせるための、接着剤浴(J1)、接着剤適用ロール(J2)、および一対のゴムロール(J3,J4)からなる第二の接着剤塗布・貼合わせ装置(J)、
・二層品(1A)に中芯原紙(4A)を貼合わせて得た三層品(1B)に、表裏から水分を与えるための、表面から水蒸気を吹き出すノズルを多数設けた加湿ドラム(K1,K2)を少なくとも2本、三層品の表裏が交互にドラムに接触するように配置した加湿装置(K)、
・加湿された三層品をエンボス加工して圧着品(1C)とするための、彫刻ロール(L1)およびゴムロール(L2)からなる型押し・圧着装置(L)、
・圧着品(1C)を加熱して接着剤の作用を完成させるための、熱盤(M1)を多数並べた加熱乾燥手段(M)、ならびに
・形成されたブランク(1D)を引取って、一定の形状に打抜くための引取り手段(N)および打抜き手段(図示してない)。
【発明の効果】
【0009】
本発明の靴の中敷きは、段ボール紙製造の材料であるKライナ用紙と中芯用紙とが積層された状態でエンボス加工されて固定されており、その表面には織布または不織布が積層された構造であるから、使用中に紙粉が発生するという心配はなく、汗をよく吸い取ってムレを防ぐことができる。エンボスは、その形状および寸法を、それが足裏のツボを刺激するという目的に最適なように選択することができる上に、強固に固定されていて容易に潰れることがないから、この中敷きは、耐久性がきわめて高い。プラスチック成型品の製造とちがって成形用の型を必要としないから、廉価に提供することができる。
【0010】
本発明の靴の中敷きの製造方法は、構成材料の積層、エンボス加工、一体化および打ち抜きの一連の工程を、効率よく実施できる。実施に当たっては、前記したエンボス中芯を有する段ボール紙製造技術が利用でき、その技術は、エンボス加工の工程を別にすれば、在来の段ボール紙製造のための技術が応用できる。この靴の中敷きの製造方法を実施するための本発明の製造装置は、エンボス加工の装置を別にすれば、在来の段ボール紙製造用の装置を利用して構成することができ、建設費に関して有利であるし、その運転も、ほとんど既知の技術を利用して行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
表面の織布または不織布としては、任意のものが使用できるが、エンボス加工に際して容易に変形できるものがよい。具体的には、吸収性のよい木綿のジャージ(平織り)が好適である。この織布または不織布は、柄模様を有していてもよいことはもちろんである。所望により、たとえばプリントなどの手法で、さまざまなキャラクターを表現して商品価値を高めることもできる。
【0012】
中間層(3)の材料としては、前記のように、在来の段ボール紙製造用のK(クラフト)ライナを用いる。Kライナは、パルプ100%からなるライナ用紙であって強度が高く、靴の中敷きの積層材を構成する中心的な材料として好適である。接着剤液としては、在来の段ボール紙の製造に使用されているポリ酢酸ビニルのエマルジョン、通称「木工用ボンド」が好都合である。
【0013】
エンボスは、前記したように、足裏のツボを刺激するという目的に合わせて、その寸法・形状を選択するが一例を挙げれば、図4に示したようなものになる。このエンボスを形成するためには、別途提案したエンボス中芯を有する段ボール紙製造技術に関して述べたような、エンボスの形状に合わせた突起を多数有する彫刻ロールと、その突起を受け止めてエンボス成形を実現するゴムロールとの組み合わせを使用するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の靴の中敷きの一例を示す平面図。
【図2】Aは図1の靴の中敷きの拡大端面図。Bはその層構成を示す拡大断面図。
【図3】本発明の靴の中敷きの製造方法について、工程を示す概念的な図。
【図4】図3の製造方法において、エンボス加工のために使用する彫刻ロールの突起の一例を示す図であって、Aは彫刻ロールの一部の平面図、Bは断面図。
【符号の説明】
【0015】
1 靴の中敷き
1A 二層品 1B 三層品 1C 圧着品 1D ブランク
2 織布または不織布からなる表層
2A 布地
3 Kライナ材料からなる中間層
3A Kライナ原紙
4 中芯原紙からなる裏面層
4A 中芯原紙
5 接着剤の層
6 エンボス
E1 布地の供給手段
E2 Kライナ原紙の供給手段
E3 中芯原紙の供給手段
F 第一の加湿器
G 第二の加湿器
H 第一の接着剤適用・貼合わせ装置
H1 接着剤浴 H2 接着剤塗布ロール H3,H4 一対のゴムロール
J 第二の接着剤適用・貼合わせ装置
J1 接着剤浴 J2 接着剤塗布ロール J3,J4 一対のゴムロール
K 加湿装置
K1,K2 加湿ドラム
L 型押し・圧着装置
L1 彫刻ロール L2 ゴムロール
M 加熱乾燥手段
M1 熱盤
N 引取り手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織布または不織布からなる表層(2)、段ボール紙のKライナ(クラフトライナ)用材料からなる中間層(3)および段ボール紙の中芯原紙からなる裏面層(4)が、それぞれの間に接着剤の層(5)を介して接着され、裏面から表層に向かって突出するエンボス(6)を多数有するとともに、靴の内部に適合する外形を与えられた靴の中敷き(1)。
【請求項2】
表層(2)が、木綿の平織りの布からなり、接着剤としてポリ酢酸ビニルのエマルジョンを使用した請求項1の靴の中敷き(1)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の靴の中敷きを製造する方法であって、下記の諸工程からなる製造方法:
[表層布地加湿工程]
表層用の織布または不織布からなる布地(2A)を、Kライナ原紙との貼合わせに先だって加湿する工程、
[第一の貼合わせ工程]
Kライナ原紙(3A)に接着剤液を塗布し、加湿された布地とあわせてゴムロールに挟んで一体化し、二層品(1A)を形成する第一の貼合わせ工程、
[二層品加湿工程]
布地(2A)とKライナ原紙(3A)とからなる二層品(1A)を、中芯原紙(4A)との貼合わせに先だって加湿する工程、
[第二の貼合わせ工程]
中芯原紙(4A)に接着剤液を塗布し、第一の貼合わせ工程で得た二層品(1A)とあわせてゴムロールに挟んで一体化し、三層品(1B)とする第二の貼合わせ工程、
[加湿工程]
得られた三層品(1B)に対し、表裏から水分を与えて柔軟にする加湿工程、
[エンボス・圧着工程]
加湿され柔軟になった三層品(1B)をエンボスロールおよびゴムロールで挟んでエンボス加工し、裏面から表面の方向に突出するエンボス(6)を多数形成するとともに、三層品を形成する各層を圧着して圧着品(1C)とするエンボス・圧着工程、
[加熱・接着工程]
上記のエンボスを形成され、圧着されてなる圧着品(1C)を、多数の加熱手段の列を通して加熱することにより、接着を完全にしてブランク(1D)を形成する接着工程、および
[打抜き工程]
得られたブランク(1D)を所定の形状に打抜き、靴の内部に適合した形状を与えて靴の中敷き(1)とする打抜き工程。
【請求項4】
請求項1に記載の靴の中敷き(1)を製造する装置であって、下記の構成部分からなる製造装置:
・布地の供給手段(E1)、Kライナ原紙の供給手段(E2)および中芯原紙の供給手段(E3)、
・布地を加湿するための、水蒸気吹き出しノズルを備えた第一の加湿器(F)、
・二層品(1A)を加湿するための、水蒸気吹き出しノズルを備えた第二の加湿器(G)
・Kライナ原紙(3A)に接着剤溶液を塗布し、加湿された布地(2A)と貼合わせるための、接着剤浴(H1)、接着剤塗布ロール(H2)、および一対のゴムロール(H3,H4)からなる第一の接着剤適用・貼合わせ装置(H)、
・中芯原紙(4A)に接着剤溶液を塗布し、加湿された二層品と貼合わせるための、接着剤浴(J1)、接着剤塗布ロール(J2)、および一対のゴムロール(J3,J4)からなる第二の接着剤適用・貼合わせ装置(J)、
・二層品(1A)に中芯原紙(4A)を貼合わせて得た三層品(1B)に、表裏から水分を与えるための、表面から水蒸気を吹き出すノズルを多数設けた加湿ドラム(K1,K2)を少なくとも2本、三層品の表裏が交互にドラムに接触するように配置した加湿装置(K)、
・加湿された三層品をエンボス加工して圧着品(1C)とするための、彫刻ロール(L1)およびゴムロール(L2)からなる型押し・圧着装置(L)、
・圧着品(1C)を加熱して接着剤の作用を完成させるための、熱盤(M1)を多数並べた加熱乾燥手段(M)、ならびに
・形成されたブランク(1D)を引取って、一定の形状に打抜くための引取り手段(N)および打抜き手段。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−200976(P2010−200976A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49982(P2009−49982)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年2月27日 日刊板紙段ボール新聞社発行の「板紙・段ボール新聞」に発表
【出願人】(595020849)アイキ工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】