説明

オフセット作業機

【課題】作業部のロック解除操作やロック操作が煩わしくなく、またこれらの操作が忘れ難いオフセット作業機を提供する。
【解決手段】畦塗り機1は、後支持フレーム21に回動自在に設けられたフック部51と作業部40がオフセットした作業位置に移動するとフック部51を係止して作業部40を作業位置にロックする係止部材53を有するロック機構部50と、作業部40に回動自在に設けられ回動操作に伴ってフック部51を回動させてフック部51の係止部材53に対する係止状態を解除するロック解除操作レバー57と、フック部51の係止部材53に対する係止状態を解除したロック解除操作レバー57の回動を規制して作業部40と一体化したロック解除操作レバー57の回動操作に連動して作業部40を回動させるレバー回動規制部材63を備え、ロック解除操作レバー57は、フック部51のロック解除操作方向が作業部40の回動方向と同一である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の走行に伴って進行して、走行機体の走行位置に対して側方にオフセットした位置を作業する作業部を備え、作業部を走行機体に対して通常の前進作業位置とは反対側の後進作業位置に移動させるとともにその前後関係を反転させて、走行機体を後進させながら作業が可能なオフセット作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなオフセット作業機には、特許文献1に記載されているように、走行機体の後部に装着される装着部を取り付けた支持フレームに作業部を水平方向に回動可能に設けて、走行機体の進行方向に沿って圃場を畦塗りする畦塗り機がある。
【0003】
この畦塗り機70は、図6(平面図)に示すように、機体幅方向に延びる支持フレーム71の中央部から後方側へ張り出した張出部分71aの先端側に、整畦部72及び前処理部73を支持するとともに動力伝達機構を内装した伝動フレーム74を水平方向に回動自在に支持している。そして、整畦部72及び前処理部73からなる作業部75は、張出部分71aに対する伝動フレーム74の回動支点Oを中心として、作業部75が走行機体90の走行位置に対して一方側のオフセットした位置(前進作業位置Pf)と、作業部75が走行機体90の走行位置に対して他方側のオフセットした位置(後進作業位置Pb)との間を移動自在である。
【0004】
この畦塗り機70には、前進作業位置Pf、後進作業位置Pb及び走行機体の後方の格納位置に移動した作業部75を各位置においてロックするためのロック装置77が設けられている。このロック装置77は、伝動フレーム74の基端部に回動自在に設けられたフック部78と、張出部分71aの上部及び下部に固着された支持板79に突設されてフック部78と係合可能な係合ピン80とを有してなる。
【0005】
係合ピン80は、前進作業位置Pf、後進作業位置Pb、格納位置の各位置に対応した位置に配設され、フック部78に係合ピン80を係止することで、作業部75は各作業位置又は格納位置において固定される。フック部78は、その回動支点Qと同軸上に取り付けられてフック部78と一体化されたフックレバー81を回動操作することで、フック部78は回動支点Qを中心として回動して係合ピン80に係止・係止解除可能である。
【0006】
このように構成された畦塗り機70の作業部75を前進作業位置Pfから後進作業位置Pbに移動させる場合には、作業者は作業部75の回動支点Oの近くに配設されたフックレバー81を解除操作した後に、作業部75の先端側に移動して作業部75の先端側を直接に持って回動させる。作業部75の先端側を持つのは、モーメントの関係で作業部75を回動させる力を小さくするためである。そして、作業者は作業部75を後進作業位置Pbまで回動し、再び回動支点O側に移動してフックレバー81を係止操作する。
【0007】
【特許文献1】特開平10−4706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来の畦塗り機では、作業部の作業位置を変更する場合、回動支点の近くに設けられたフックレバーの位置と作業部を回動操作する作業部の先端側の位置とが離れているので、作業部の作業位置を変更する際に、作業者はこれらの間を移動する必要があった。このため、作業者にとって作業部のロック状態を解除したりロックしたりするレバー操作は煩わしく、さらに各作業位置でのこれらのレバー操作が忘れ易いという課題があった。
【0009】
本発明は、このような課題に答えるためになされたものであり、作業部の作業位置を変更する場合に、作業部のロック状態を解除するレバー操作が煩わしくなく、また作業部をロック状態にするレバー操作が煩わしくなく、さらにこれらのレバー操作が忘れ難いオフセット作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するため、本発明は、以下の特徴を有する。特徴の一つは、走行機体の後部に装着部を介して装着され、走行機体の走行に伴って進行して該走行機体の走行位置に対して側方にオフセットした位置(例えば、実施形態における前進作業位置Pf、後進作業位置Pb)で作業する作業部を備え、作業部は、装着部を取り付けた支持フレームに設けられた回動支点を中心として一方のオフセットした作業位置と他方のオフセットした作業位置との間を回動自在に設けられているオフセット作業機(例えば、実施形態における畦塗り機1)において、支持フレーム(例えば、実施形態における後支持フレーム21)及び作業部のいずれか一方に回動自在に設けられたフック部と、支持フレーム及び作業部のいずれか他方に設けられ作業部がオフセットした作業位置に移動するとフック部に係止して作業部を作業位置にロックする係止部材を有してなるロック機構部と、作業部に回動自在に設けられ、回動操作に伴ってフック部を回動させてフック部の係止部材に対する係止状態を解除するロック解除操作レバーと、フック部の係止状態を解除したロック解除操作レバーの回動を規制して作業部と一体化した該ロック解除操作レバーの回動操作に連動して作業部を回動させるレバー回動規制手段(例えば、実施形態におけるレバー回動規制部材63)とを備え、ロック解除操作レバーによるフック部のロック解除操作方向と作業部の回動方向が同一であり、ロック解除操作レバーが一方側の作業位置から他方側の作業位置側へ回動されるに伴い、フック部のロック解除と作業部の回動が連続的に行われることである。
【0011】
この特徴によれば、ロック解除操作レバーによるフック部のロック解除操作方向と作業部の回動方向が同一であることで、作業部を一方のオフセットした作業位置から他方のオフセットした作業位置に変更する場合、ロック解除操作レバーを他方側の作業位置側へ回動させるに伴い、ロック解除操作レバーがフック部を回動してフック部の係止部材に対する係止状態を解除して作業部を非ロック状態にする。そして、さらにロック解除操作レバーを他方側の作業位置側へ回動させると、ロック解除操作レバーがレバー回動規制手段によって回動が規制されて作業部と一体化される。そして、さらに回動規制されたロック解除操作レバーをロック解除操作方向と同一方向に回動操作すると、作業部が他方のオフセットした作業位置側へ回動する。
【0012】
このように、作業部を一方のオフセットした作業位置から他方のオフセットした作業位置に移動させる場合、作業者はロック解除操作レバーの解除操作を行った後、その操作レバーを把持したままの状態でロック解除操作レバーをロック解除操作方向と同一方向に回動操作すればよい。つまり、作業者は、ロック解除操作レバーの回動操作を行うだけでフック部の係止解除と作業部の回動を行うことができ、作業部の回動操作を行う前に別の場所に移動してフック部のロック解除操作を行う必要はない。このため、作業者が作業部のロック解除を行うためのレバー操作が煩わしく感じることはない。さらに、ロック解除操作レバーの操作方向は、作業部のロック解除操作方向と作業部の回動操作方向が同一であり、またこれらの操作はロック解除操作レバーの連続的な操作であるので、作業者が作業部のロック解除操作を忘れる虞を無くすことができる。
【0013】
なお、レバー回動規制部材は、フック部の係止状態を解除したロック解除操作レバーの回動を規制するものであれば何れのものでもよい。例えば、レバー回動規制部材は、操作レバーと当接可能な部材や、操作レバー及び作業部の一方に設けられたロックピンと操作レバー及び作業部の他方に設けられてロックピンと係止可能な係合穴部からなるものや、ロック解除操作レバーの回動中心に設けられて操作レバーの回動範囲を規制するために設けられた部材でもよい。
【0014】
また特徴の一つは、レバー回動規制部材は、フック部の係止状態を解除するために回動操作されるロック解除操作レバーの回動範囲よりも広い回動範囲の両側に対応する位置にロック解除操作レバーが当接する当接面部を配置してなることである。
【0015】
この特徴によれば、レバー回動規制部材は、フック部の係止状態を解除するために回動操作されたロック解除操作レバーの回動範囲よりも広い回動範囲の両側に対応する位置にロック解除操作レバーが当接する当接面部を配置してなることで、一方のオフセットした作業位置から他方のオフセットした作業位置側へ作業部を回動させる場合には、回動範囲の一方側に対応する位置に設けた当接面部にロック解除操作レバーが当接し、他方のオフセットした作業位置から一方のオフセットした作業位置側へ作業部を回動させる場合には、回動範囲の他方側に対応する位置に設けた当接面部にロック解除操作レバーが当接する。このため、レバー回動規制部材によって回動規制された側のロック解除操作レバーの回動操作によって、作業部を一方のオフセットした作業位置と他方のオフセットした作業位置との間を自由に回動させることができる。
【0016】
なお、レバー回動規制部材は、レバー回動規制部材に2つの当接面部を対向して配設してなるものや、一つのレバー回動規制部材に一つの当接面部を設け、この当接面部同士が回動角度の所定範囲の両側に対向配置されるように二つのレバー回動規制部材を設けたものでもよい。
【0017】
また特徴の一つは、フック部は、弾性部材(例えば、実施形態におけるねじりコイルばね54)により常に係止部材側へ附勢されているとともに、ストッパ部材により係止部材に係止可能な回動角度に維持されていることである。
【0018】
この特徴によれば、フック部は、弾性部材により常に係止部材側へ附勢されるとともに、ストッパ部材により係止部材に係止可能な回動角度に維持されることで、ロック解除操作レバーによって作業部が一方側のオフセットした作業位置から他方側のオフセットした作業位置に回動するに伴い、係止部材がフック部に当接すると、フック部は弾性部材の附勢に抗して係止部材の移動に応じて回動して係止部材に係止され、弾性部材の附勢によってフックが係止部材側へ回動してフック部の係止部材に対する係止状態を維持して、作業部は他方のオフセットした作業位置に固定される。このようにロック解除操作レバーによる作業部の回動操作だけでフック部を係止部材に係止することができ、フック部の係止操作は容易であり、作業者がこの係止操作を煩わしく感じることはない。さらに、作業部のロックは、ロック解除操作レバーによる作業部の回動操作の一連で行われるので、作業者が作業部のロック操作を忘れる虞もない。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係わるオフセット作業機によれば、上記特徴を有することにより、作業部の作業位置を変更する場合に、作業部のロック状態を解除するレバー操作が煩わしくなく、また作業部をロック状態にするレバー操作が煩わしくなく、さらにこれらのレバー操作が忘れ難いオフセット作業機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係わるオフセット作業機の好ましい実施の形態を図1から図5に基づいて説明する。本実施の形態は、オフセット作業機の一例である畦塗り機について説明する。なお、オフセット作業機としては、畦塗り機の他に、圃場に連続的な溝を形成する溝掘り機でもよい。
【0021】
畦塗り機1は、図1(平面図)及び図2(側面図)に示すように、走行機体90の後部に設けられた三点リンク連結機構(図示せず)に連結されて、走行機体90の前進走行及び後進走行に応じて畦塗り作業を行うものである。この畦塗り機1は、走行機体90に装着されて走行機体90からの動力が入力される入力軸11を備えた装着部10と、装着部10に対して機体幅方向(左右方向)に揺動可能なオフセット機構部20と、オフセット機構部20の移動端側(後端側)に設けられた回動支点Oを中心として水平方向に回動可能に配設されて走行機体90の走行位置に対して側方にオフセットした位置で作業を行なう作業部40とを有してなる。
【0022】
装着部10は、走行機体90の3点リンク連結機構に連結されるマスト13とロアーヒッチピン14を備えた連結部12と、連結部12の後側を取り付けた本体支持フレーム15とを有してなる。本体支持フレーム15の左右方向の中央部には前述した入力軸11が設けられている。入力軸11は、走行機体90のPTO軸(図示せず)からの動力が図示しない伝動軸を介して伝達されるようになっている。
【0023】
オフセット機構部20は、図1及び図3(背面図)に示すように、本体支持フレーム15の左側に前端部が枢結されて後端部がオフセット機構部20の移動端側に配設された後支持フレーム21の左側に枢結された左側リンク部材22と、左側リンク部材22の右側に並設され、本体支持フレーム15の右側に前端部が枢結されて後端部が後支持フレーム21の右側に枢結された右側リンク部材23と、左側リンク部材22の下方に並設されて前側端部が左側リンク部材22の前側を支持する支持軸24の下端部に枢結されて後側端部が左側リンク部材22の後端部の回動支点Oと同軸上に配設されて後支持フレーム21から下方へ突設された支持軸25の下端部に枢結された下側リンク部材26とを有して平行リンク機構を構成している。つまり、オフセット機構部20は、本体支持フレーム15、左側リンク部材22、右側リンク部材23、下側リンク部材26及び後支持フレーム21によって平行リンク機構を形成している。
【0024】
作業部40は、走行機体90からの動力を作業部40に伝達する動力伝達機構を内蔵した伝動フレーム41を備えている。この伝動フレーム41は、先端部が支持軸25に対して水平方向に回動自在に取り付けられて、作業部40は支持軸25の中心軸を回動支点Oとして水平方向に回動可能である。
【0025】
伝動フレーム41の先端側には、前側から後側に向かって、圃場の周辺に沿って形成された旧畦を切り崩して土盛りを行なう前処理部43と、盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける整畦部45が設けられている。
【0026】
前処理部43は、伝動フレーム41に回転自在に支持された図2に示す耕耘ロータ44を備える。この耕耘ロータ44は、伝動フレーム41内の動力伝達機構を介して動力が伝達されて回転可能である。整畦部45は、伝動フレーム41に回転自在に支持された多面体ドラム46を備える。この多面体ドラム46は伝動フレーム41内の動力伝達機構を介して動力が伝達されて回転可能である。
【0027】
伝動フレーム41の一方側の側面には一方側へ突出した前進作業用の前側受動クラッチ48が設けられ、伝動フレーム41の他方側の側面には前側受動クラッチ48と同軸上に配設されて他方側へ突出した後進作業用の後側受動クラッチ49が設けられている。前側受動クラッチ48は、本体支持フレーム15に取り付けられて入力軸11から伝達される動力により回転駆動する前側駆動クラッチ16と係合して動力が伝達され、後側受動クラッチ49は本体支持フレーム15に取り付けられて入力軸11から伝達される動力により回転駆動する後側駆動クラッチ17と係合して動力が伝達される。前側駆動クラッチ16及び後側駆動クラッチ17は、圧縮ばね18を介して機体前後方向に移動自在に支持されており、この圧縮ばね18によって、これらの駆動クラッチ16,17が対応する受動クラッチ48,49と係合し及び離脱する際に前後方向に移動して、これらクラッチの係合及び離脱を容易にしている。
【0028】
前側駆動クラッチ16及び後側駆動クラッチ17は、本体支持フレーム15の後側に機体幅方向に所定間隔を有して配設されている。即ち、前側駆動クラッチ16及び後側駆動クラッチ17は、作業部40が前進作業位置Pfに移動すると、前側駆動クラッチ16に前側受動クラッチ48が係合し、作業部40が後進作業位置Pbに移動すると、後側駆動クラッチ17に後側受動クラッチ49が係合するように配設されている。またこれらの駆動クラッチは、いずれか一方に動力が伝達されると、他方の駆動クラッチも共に回転駆動するようになっている。
【0029】
このように構成された畦塗り機1には、前進作業位置Pf及び後進作業位置Pbの各作業位置に移動した作業部40をロック状態にするロック機構部50と、ロック機構部50を手動によってロック解除操作可能なロック解除操作レバー57が備えられている。
【0030】
ロック機構部50は、後支持フレーム21の左右両側の上面に回動自在に設けられた一対のフック部51と、作業部40から延びる伝動フレーム41の先端側上部に突設されてフック部51に係止する係止部材53とを有してなる。
【0031】
フック部51は、板状に形成され、伝動フレーム41に突設された支持軸52に略水平方向に回動自在に取り付けられ、支持軸52の中心軸線を回動支点として回動自在である。フック部51の回動支点よりも後方側には係止部材53と係合可能な係合凹部51aが設けられ、係合凹部51aよりも後方側には作業部40の回動支点O側に傾く傾斜面部51bが設けられ、傾斜面部51bよりも機体幅方向外側には段部51cが設けられている。
【0032】
フック部51を回動自在に支持する支持軸52には、フック部51の係合凹部51aを係止部材53側へ附勢するねじりコイルばね54が設けられ、このねじりコイルばね54によって、機体幅方向右側に配設されたフック部51は時計方向に附勢され、機体幅方向左側に配設されたフック部51は反時計方向に附勢されている。
【0033】
またフック部51は、作業部40の回動時に係止部材53が傾斜面部51bに当接するに伴ってねじりコイルばね54の附勢に抗してフック部51を回動させて係止部材53が係合凹部51a内に移動できるようにするために、傾斜面部51bが所定角度を有して内側に傾いた状態に維持されるようにストッパ部材55によって回動が規制されている。ストッパ部材55は、後支持フレーム21から下方に突設された棒状部材であり、その下側がフック部51の前側端面に接触してねじりコイルばね54による附勢方向と同一方向へのフック部51の回動を規制している。このため、作業部40をその回動支点Oを中心にして回動させて、作業部40が前進作業位置Pf及び後進作業位置Pbの各作業位置に移動すると、フック部51が自動的に係止部材53に係止されて作業部40を各作業位置にロックすることができる。
【0034】
このように構成されたロック機構部50によってロックされた作業部40のロック状態を手動で解除するロック解除操作レバー57は、伝動フレーム41の先端側に一端側が取り付けられて他端側が伝動フレーム41の基端側に沿って略水平方向に延びるレバー支持部材58上に回動自在に設けられている。
【0035】
ロック解除操作レバー57は、棒状のレバー本体部57aと、レバー本体部57aの他端部に装着された把手部57bと、レバー本体部57aの一端側端部に取り付けられて上方へ突出するピン部材57cとを有してなる。レバー本体部57aは把手部57b側から伝動フレーム41に沿って直線状に延び、先端側において本体支持フレーム15側に屈曲して形成され、レバー本体部57aの先端部に取り付けられたピン部材57cをフック部51の段部51cの近傍に配置している。ロック解除操作レバー57は、レバー本体部57aの直線状に延びる部分の先端側がレバー支持部材58に突設された支持軸59に回動自在に取り付けられて略水平方向に回動可能である。このため、把手部57bを介してピン部材57cがフック部51の段部51c側に接近する方向にロック解除操作レバー57を回動させると、ピン部材57cがフック部51の段部51cを押してフック部51が回動して、係止部材53に係止されたフック部51の係合状態を解除することができる。なお、把手部57bを介してピン部材57cがフック部51の段部51cに対して離反する方向にロック解除操作レバー57を回動させると、フック部51はねじりコイルばね54によって係止部材53側に回動する。
【0036】
ロック解除操作レバー57は、レバー支持部材58に取り付けられたレバー回動規制部材63によって伝動フレーム41に対する所定の回動範囲を超える回動が規制されるようになっている。レバー回動規制部材63は、図2(側面図)に示すように、板状の部材によって形成され、その上部にはロック解除操作レバー57のレバー本体部57aを受け入れる凹部64が設けられている。凹部64はその両端部に当接面部64aを有して側面視において矩形状に形成され、凹部64の幅Bはレバー本体部57aの外径よりも大きく、凹部64の高さHはレバー本体部57aの外径よりも短い長さを有している。このため、ロック解除操作レバー57が回動すると、そのレバー本体部57aが凹部64の幅方向両側のいずか一方の当接面部64aに当接して、当接した当接面部64aを超える側のロック解除操作レバー57の回動が規制される。
【0037】
凹部64の高さHは、ロック解除操作レバー57の回動を規制することがきれば何れの高さでもよい。また凹部64の幅Bは、ロック解除操作レバー57を回動させるに伴って回動するフック部51が係止部材53から少なくとも離脱可能な大きさを有している。従って、ロック解除操作レバー57は、凹部64の幅に対応したロック解除操作レバー57の回動範囲内での回動により、作業部40のロック状態を解除することができる。
【0038】
またロック解除操作レバー57は、レバー回動規制部材63によって回動が規制された状態で回動範囲を超える側に回動操作すると、作業部40と一体化された状態になる。このため、回動範囲を超える側にロック解除操作レバー63を回動操作すると、これに連動して作業部40を回動させることができる。
【0039】
このようにフック部51が係止部材53に係止された状態でロック解除操作レバー57を回動すると、フック部51が係止部材53から係止解除されて作業部40の後支持フレーム21に対するロック状態を解除することができ、さらにロック解除操作レバー57を回動させると、レバー回動規制部材63によってロック解除操作レバー57の回動が規制され、この状態でさらにロック解除操作レバー57を、作業部40のロック状態を解除した方向と同一方向に回動操作すると、操作レバーの回動操作に連動して作業部40が回動支点Oを中心として回動する。
【0040】
このため、例えば、作業部40を前進作業位置Pfから後進作業位置Pbに移動させる場合には、図1に示すように、先ず、図示しない作業者がロック解除操作レバー57の把持部57bを把持してこれを後方側に移動するように、ロック解除操作レバー57を時計方向に回動させる。ロック解除操作レバー57が時計方向に回動すると、レバー本体部57aの先端部に設けられたピン部材57cがフック部51の段部51cを押圧するように移動して、フック部51が反時計方向に回動する。その結果、フック部51は係止部材53から係止解除されて、作業部40は後支持フレーム21に対して非ロック状態になる。
【0041】
そして、さらにロック解除操作レバー57を作業部40のロック状態を解除した方向と同じ方向に回動操作すると、ロック解除操作レバー57のレバー本体部57aがレバー回動規制部材63の凹部64の当接面部64aに当接してロック解除操作レバー57の回動が規制されて、ロック解除操作レバー57は作業部40と一体化される。この状態でさらにロック解除操作レバー57を作業部40のロック状態を解除した方向と同一方向に回動操作すると、図4(平面図)に示すように、ロック解除操作レバー57の回動操作に連動して、作業部40が回動支点Oを中心に時計方向に回動し、前側受動クラッチ48が前側駆動クラッチ16から離脱して、図4(平面図)に示すように、作業部40は後進作業位置側へ移動する。このとき作業者はロック解除操作レバー57を把持しながら作業部40の回動とともに歩いて移動する。
【0042】
そして、図5(平面図)に示すように、作業部40が後進作業位置Pbに移動するに伴い、係止部材53がフック部51の傾斜面部51bに当接し、実線で示したフック部51はねじりコイルばね54の附勢に抗して時計方向に回動されて、二点鎖線で示す姿勢になる。そして、係止部材53がフック部51の係合凹部51a内に移動すると、ねじりコイルばね54によりフック部51が係止部材53側に回動されてフック部51が係止部材53に係止される。従って、作業部40は後進作業位置Pbにロックされた状態になる。なお、作業部40を後進作業位置Pbから前進作業位置Pfに移動させる場合の作業は、前述した作業部40を前進作業位置Pfから後進作業位置Pbに移動させる場合と同様なので、その説明は省略する。
【0043】
このように、作業部40をオフセットされた一方の作業位置から他方の作業位置に移動させる場合、作業者はロック解除操作レバー57によるフック部51のロック解除操作を行った後、ロック解除操作レバー57を把持したままの状態でロック解除操作レバー57をロック解除操作の方向と同一方向に回動操作すればよい。つまり、作業者は、ロック解除操作レバー57の回動操作を行うだけでフック部52の係止解除と作業部40の回動を行うことができ、作業部40の回動操作を行う前に別の場所に移動してフック部51の係止解除操作を行う必要はない。このため、作業者がフック部51を係止解除するためのレバー操作を煩わしく感じることはなく、またロック解除操作レバー57によりフック部51を係止解除するのに要する時間を短縮することができる。さらに、ロック解除操作レバー57の操作方向は、作業部40のロック解除操作方向と作業部40の回動操作方向が同一であり、またこれらの操作はロック解除操作レバー57の連続的な操作であるので、作業者がフック部を係止解除するレバー操作を忘れる虞もない。
【0044】
また、フック部51は、ねじりコイルばね54により常に係止部材53側へ附勢され、また係止部材53がフック部51の傾斜面部51bに当接するとねじりコイルばね54の附勢に抗して係合凹部51a内に係止部材53が移動できる方向に回動するので、作業部40が前進作業位置Pf及び後進作業位置Pbの各作業位置に移動するに伴って、フック部51が自動的に係止部材53に係止されて作業部40を各作業位置においてロックすることができる。このため、各作業位置における作業部40のロック作業は極めて容易であり、また作業部40をロックするためのロック解除操作レバー57の操作方向は、作業部40の回動操作方向と同一であり、またこれらの操作はロック解除操作レバー57の一連の操作であるので、作業者がフック部51をロックするレバー操作を忘れる虞を無くすことができる。
【0045】
さらに、ロック解除操作レバー57を一方の作業位置から他方の作業位置側に回動操作するだけで、一方の作業位置にロックされていた作業部40のロック状態を解除し、作業部40を他方の作業位置側に回動させ、さらに、作業部40を他方の作業位置にロックすることができ、確実に且つ連続的に作業部40の作業位置を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機の作業部が前進作業位置にある状態の平面図を示す。
【図2】作業部が前進作業位置にある畦塗り機の側面図を示す。
【図3】作業部が前進作業位置にある畦塗り機の背面図を示す。
【図4】作業部が本体支持フレームの後方にある状態の畦塗り機の平面図を示す。
【図5】畦塗り機の作業部が後進作業位置にある状態の畦塗り機の平面図を示す。
【図6】作業部が前進作業位置にある従来の畦塗り機の平面図を示す。
【符号の説明】
【0047】
1 畦塗り機(オフセット作業機)
10 装着部
21 後支持フレーム(支持フレーム)
40 作業部
50 ロック機構部
51 フック部
53 係止部材
54 ねじりコイルばね(弾性部材)
55 ストッパ部材
57 ロック解除操作レバー
63 レバー回動規制部材(レバー回動規制手段)
90 走行機体
O 回動支点
Pb 後進作業位置(作業位置)
Pf 前進作業位置(作業位置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に装着部を介して装着され、前記走行機体の走行に伴って進行して該走行機体の走行位置に対して側方にオフセットした位置で作業する作業部を備え、前記作業部は、前記装着部を取り付けた支持フレームに設けられた回動支点を中心として一方のオフセットした作業位置と他方のオフセットした作業位置との間を回動自在に設けられているオフセット作業機において、
前記支持フレーム及び前記作業部のいずれか一方に回動自在に設けられたフック部と、前記支持フレーム及び前記作業部のいずれか他方に設けられ前記作業部がオフセットした作業位置に移動すると前記フック部に係止して前記作業部を作業位置にロックする係止部材を有してなるロック機構部と、
前記作業部に回動自在に設けられ、回動操作に伴って前記フック部を回動させて前記フック部の前記係止部材に対する係止状態を解除するロック解除操作レバーと、
前記フック部の前記係止部材に対する係止状態を解除した前記ロック解除操作レバーの回動を規制して前記作業部と一体化した該ロック解除操作レバーの回動操作に連動して前記作業部を回動させるレバー回動規制手段とを備え、
前記ロック解除操作レバーによる前記フック部のロック解除操作方向と前記作業部の回動方向が同一であり、
前記ロック解除操作レバーが一方側の作業位置から他方側の作業位置側へ回動操作されるに伴い、前記フック部の係止解除と前記作業部の回動が連続的に行われることを特徴とするオフセット作業機。
【請求項2】
前記レバー回動規制手段は、前記フック部の係止状態を解除するために回動操作される前記ロック解除操作レバーの回動範囲よりも広い回動範囲の両側の対応する位置に前記ロック解除操作レバーが当接する当接面部を配置してなることを特徴とする請求項1に記載のオフセット作業機。
【請求項3】
前記フック部は、弾性部材により常に係止部材側へ附勢されているとともに、ストッパ部材により前記係止部材に係止可能な回動角度に維持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のオフセット作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−296923(P2009−296923A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153906(P2008−153906)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】