説明

カチオン性オリゴヌクレオチド、ならびに関連の合成および使用の方法

【課題】診断上または臨床上のモニター目的のためのアンチセンス治療薬および核酸ハイブリダイゼーションアッセイにおいて有用なカチオン性ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドを提供すること。
【解決手段】以下の構造(I):


を有する少なくとも1つのカチオン性ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドであって、ここで、W、XおよびY、Z、R、RおよびRは、本明細書中に規定されるとおりであり、Pは2つの異なる立体異性体的配置で存在し得る不斉的なリン原子を表し、そして、さらに結合は立体的に均一である、オリゴヌクレオチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は一般に核酸化学に関する。より詳細には、本発明は、カチオン性ヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドに関する。さらに、本発明は、このようなオリゴヌクレオチドを調製するための方法および試薬に関する。本発明は、診断上または臨床上のモニター目的のためのアンチセンス治療および核酸ハイブリダイゼーションアッセイにおける応用を有する。
【背景技術】
【0002】
背景
改変されたヌクレオシド間ホスホジエステル結合を含む配列特異的オリゴヌクレオチドは、治療的応用のためのアンチセンス分子、および診断または治療の効力のモニター応用のための核酸ハイブリダイゼーションプローブとしての有用性を有する。
【0003】
好結果のアンチセンス分子および核酸ハイブリダイゼーションプローブは、生理学的条件下で目的の一本鎖または二本鎖の標的核酸配列と特異的に結合しなければならない。このような分子およびプローブはまた、インタクトの細胞によって効果的に取り込まれなければならず、そしてヌクレアーゼ分解に対して抵抗性でなければならない。
【0004】
ホスホジエステル骨格が、これらの規準を満足する試みにおいて改変されてきた。例えば、ホスホジエステル骨格は、ホスホネート骨格(Millerら(1980) J.Biol.Chem. 255:9659−9665)、ホスホトリエステル骨格(Plessら(1977) Biochemistry 16:1239−1250)またはホスホロチオエート骨格(Stecら(1984) J.Am.Chem.Soc. 106:6077−6079)で置換されてきた。
【0005】
オリゴヌクレオチド骨格改変に対する1つのアプローチは、ヌクレオシド間ホスホジエステル(「PDE」)結合の負の電荷を取り除いて中性骨格、例えば、メチルホスホネート(Vyazovkinaら(1994) Nucleic Acids Res. 22:2404−2409)、ホスホルアミデート(Jaegerら(1988) Biochemistry 27:7237−7246)またはペプチド核酸(Egholmら(1992) J.Am.Chem.Soc. 114:1895−1897)を生成することであった。
【0006】
オリゴヌクレオチド骨格を改変するための別のアプローチは、アニオン性PDE基をカチオン性基で置換することであった。カチオン性置換基は、ホスホルアミデート結合を介してヌクレオシド間リン原子に結合させてきた(Letsingerら(1988) J.Am.Chem.Soc. 110:4470−4471)。カチオン性基はまた、アニオン性酸素がリン−炭素結合を介してカチオン性基で置換されているホスホネート誘導体を介してオリゴヌクレオチドに導入され得る。従って、骨格が交互の(alternating)ホスホジエステルおよび立体異性体的に純粋な(2−アミノエチル)−ホスホネート結合からなるオリゴヌクレオチドの調製、ならびに(アミノメチル)−ホスホネートからなる骨格を含むオリゴヌクレオチドの調製は、それぞれ、Fathiら(1994) Nucleic Acids Res. 22:5416−5424およびFathiら(1994) Bioconjugate Chem. 5:47−57に報告されている。
【0007】
Patilら(1994) Biorg.Medicinal Chem.Lett. 4:2663−2666は、立体異性体的に純粋な改変ジヌクレオシドを使用して、交互の立体調節されたアニオン性ホスホロチオエートおよびアニオン性PDE結合を有するデカチミジレートを合成する、ホスホロチオエートの立体異性体を含むオリゴチミジレートアナログの合成を報告した。
【0008】
Peyrottesら(1994) Nucleosides & Nucleotides 13:2135−2149は、予め生成したダイマーを使用して、メトキシホスホルアミデートヌクレオシド間結合を有するオリゴマーを調製した。さらに、オリゴ(dT)と比較した場合、メトキシホスホルアミデートヌクレオシド間結合を有するオリゴマーは、ポリ(dA)またはポリ(A)とハイブリダイズしたときの温度安定性の減少を示した。
【0009】
標準的なホスホジエステルヌクレオシド間結合のみを有するオリゴヌクレオチドより大きな標的核酸への親和性を有するカチオン性ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドが当該分野において必要とされている。このようなオリゴヌクレオチドは、アンチセンス治療剤、および核酸ハイブリダイゼーションアッセイにおけるプローブとして役立ち得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要旨
従って、診断上または臨床上のモニター目的のためのアンチセンス治療薬および核酸ハイブリダイゼーションアッセイにおいて有用なカチオン性ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドを提供することが本発明の目的である。
【0011】
カチオン性ヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドを合成する方法を提供することが本発明の別の局面である。
【0012】
カチオン性ヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドプローブを使用する核酸ハイブリダイゼーションアッセイを提供することが、本発明のなお別の目的である。
【0013】
本発明の1つの実施態様において、構造(I)を有するカチオン性ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドが提供される。
【0014】
【化13】

ここで、
Wは、O、SおよびSeからなる群より選択される;
XおよびYは、O、S、C(R)Rからなる群より独立して選択され、ここでRおよびRはHおよびC〜Cアルキル、ならびにNR(RはHまたはC〜Cアルキルである)からなる群より独立して選択される;
Zは、O、S、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、C〜CアルキニレンおよびNR(RはHまたはC〜Cアルキルである)からなる群より選択され、ただしW、XおよびYがOである場合、ZはO、SまたはNRである;
は、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、C〜Cアルキニレン、単環式アリーレンおよび結合からなる群より選択される;
およびRは、H、C〜Cアルキル、1〜4のNH基で置換されたC〜Cアルキル、および単環式アリールからなる群より独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、5員環または6員環のアルキルまたはアリール環、またはN、OもしくはSを含む複素環を形成するよう結合され得る;そして
ここで、Pは2つの異なる立体異性体的配置で存在し得る不斉的なリン原子を表し、
そして、さらにこの結合は立体的に均一(stereouniform)である。
【0015】
本発明の別の実施態様において、交互のカチオン性およびアニオン性ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドを提供する。ここで、カチオン性ヌクレオシド間結合は構造(II)を有する。
【0016】
【化14】

ここで、W、X、Y、Z、R、RおよびRは上記の規定の通りであり、ただし、W、XおよびYがOである場合、ZはOまたはSであり、ここでPは、2つの異なる立体異性体的配置で存在し得るリン原子であってもよいしまたはそうでなくともよく、そしてさらにその結合は立体的に均一であってもよいしまたはそうでなくてもよい。
【0017】
本発明のなお別の実施態様において、以下の構造(II)を有する少なくとも1つのカチオン性ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドを提供する。
【0018】
【化15】

ここで、W、X、Y、Z、R、RおよびRは上記の規定の通りであり、ただし、W、XおよびYがOである場合、ZはOまたはSである。
【0019】
本発明のさらなる実施態様において、以下の構造(I)を有する少なくとも1つのカチオン性ヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドを作成するための方法を提供する。
【0020】
【化16】

ここで、
Wは、O、SおよびSeからなる群より選択される;
XおよびYは、O、S、C(R)Rからなる群より独立して選択され、ここでRおよびRはHおよびC〜Cアルキル、ならびにNR(RはHまたはC〜Cアルキルである)からなる群より独立して選択される;
Zは、O、S、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、C〜CアルキニレンおよびNR(RはHまたはC〜Cアルキルである)からなる群より選択され、ただしW、XおよびYがOである場合、ZはO、SまたはNRである;
は、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、C〜Cアルキニレン、単環式アリーレンおよび結合からなる群より選択される;
およびRは、H、C〜Cアルキル、1〜4個のNH基で置換されたC〜Cアルキル、および単環式アリールからなる群より独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、5員環または6員環のアルキルまたはアリール環、またはN、OもしくはSを含む複素環を形成するよう結合され得る;そして
ここで、Pは2つの異なる立体異性体的配置で存在し得る不斉的なリン原子を表し、そして、さらにこの結合は立体的に均一であり、この方法は、
(a)カチオン性ヌクレオシド間結合および3’−O−TBDMS保護基を含む、保護されたカチオン性ヌクレオチドダイマーのポイントラセミ(point rasemic)混合物を合成する工程;
(b)必要に応じて、上記混合物に立体異性体を溶解する工程;
(c)工程(b)において単離されたカチオン性ヌクレオチドダイマーを脱保護する工程;
(d)工程(c)において提供された脱保護されたカチオン性ヌクレオチドダイマーを、Cl−P(N(iPr))−O−BCEとの反応によって、対応する3’−O−CHCHCNホスホルアミダイト誘導体に変換する工程;および
(e)3’−O−CHCHCNホスホルアミダイト誘導体を、オリゴヌクレオチド鎖の保護されていないヒドロキシル含有末端ユニットに結合する工程、
を含む。
【0021】
本発明のなお別の実施態様において、核酸ハイブリダイゼーションアッセイを提供する。このアッセイは、
(a)少なくとも1つのカチオン性ヌクレオシド間結合を含む標識されたオリゴヌクレオチドプローブを提供する工程;
(b)このプローブを一本鎖分析物核酸にハイブリダイズさせて、標識された二重鎖を生成させる工程;および
(c)この標識された二重鎖を検出する工程、
を含む。
【0022】
さらに、本発明によって、以下が提供される。
(項目1)以下の構造(I):
【0023】
【化1】

を有する少なくとも1つのカチオン性ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドであって、ここで;
Wは、O、SおよびSeからなる群より選択され;
XおよびYは、O、S、C(R)R、およびNRからなる群より独立して選択され、ここでRおよびRはHおよびC〜Cアルキルからなる群より独立して選択され、RはHまたはC〜Cアルキルであり;
Zは、O、S、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、C〜CアルキニレンおよびNRからなる群より選択され、ここで、RはHまたはC〜Cアルキルであり、ただしW、XおよびYがOである場合、ZはO、SまたはNRであり;
は、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、C〜Cアルキニレン、単環式アリーレンおよび結合からなる群より選択され;
およびRは、H、C〜Cアルキル、1〜4個のNH基で置換されたC〜Cアルキル、および単環式アリールからなる群より独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、5員環もしくは6員環のアルキルもしくはアリール環、またはN−、O−もしくはS−を含む複素環を形成するよう結合され得;そして
ここで、Pは2つの異なる立体異性体的配置で存在し得る不斉的なリン原子を表し、
そして、さらに該結合は立体的に均一である、オリゴヌクレオチド。
(項目2)項目1に記載のオリゴヌクレオチドであって、ここで、前記ヌクレオシド間結合を含むヌクレオチドダイマーのポイントラセミ混合物がシリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用して分割される場合、前記カチオン性ヌクレオシド間結合の立体異性体的配置が、最初に溶出した立体異性体の配置に対応する、オリゴヌクレオチド。
(項目3)項目1に記載のオリゴヌクレオチドであって、ここで、前記ヌクレオシド間結合を含むヌクレオチドダイマーのポイントラセミ混合物がシリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用して分割される場合、前記カチオン性ヌクレオシド間結合の立体異性体的配置が、二番目に溶出した立体異性体の配置に対応する、オリゴヌクレオチド。
(項目4)ZがNRである、項目2に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目5)RがHである、項目4に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目6)XおよびYがOである、項目4に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目7)RがC〜Cアルキレンである、項目4に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目8)Rが(CHである、項目7に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目9)RおよびRがC〜Cアルキルである、項目4に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目10)RおよびRがCHである、項目9に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目11)WがSである、項目4に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目12)ZがNRである、項目1に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目13)RがHである、項目12に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目14)RがC〜Cアルキレンである、項目12に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目15)Rが(CHである、項目14に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目16)RおよびRが1〜4個のNH基で置換されたC〜Cアルキルである、項目12に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目17)RおよびRが−CHCHNHである、項目16に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目18)以下の構造(I):
【0024】
【化2】

を有する少なくとも1つのカチオン性ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドであって、ここで;
Wは、Sであり;
XおよびYは、Oであり;
Zは、NHであり;
は、(CHであり;
およびRは、CHであり;そして
ここで、Pは不斉的なリン原子を表し、その結果、結合は、該ヌクレオシド間結合を含むヌクレオチドダイマーのポイントラセミ混合物がシリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用して分割される場合に最初に溶出した立体異性体の配置に対応する立体異性体的配置で存在する、オリゴヌクレオチド。
(項目19)カチオン性およびアニオン性ヌクレオシド間結合を交互に有するオリゴヌクレオチドであって、ここで、該カチオン性ヌクレオシド間結合が以下の構造(II):
【0025】
【化3】

を有し、ここで;
Wは、O、SおよびSeからなる群より選択され;
XおよびYは、O、S、C(R)R、およびNRからなる群より独立して選択され、ここでRおよびRはHおよびC〜Cアルキルからなる群より独立して選択され、RはHまたはC〜Cアルキルであり;
Zは、O、S、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、C〜CアルキニレンおよびNRからなる群より選択され、ここで、RはHまたはC〜Cアルキルであり、ただしW、XおよびYがOである場合、ZはOまたはSであり;
は、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、C〜Cアルキニレン、単環式アリーレンおよび結合からなる群より選択され;
およびRは、H、C〜Cアルキル、1〜4個のNH基で置換されたC〜Cアルキル、および単環式アリールからなる群より独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、5員環もしくは6員環のアルキルもしくはアリール環、またはN−、O−もしくはS−を含む複素環を形成するように結合され得;そして
ここで、Pは2つの異なる立体異性体的配置で存在してもよいししなくてもよいリン原子であり、
そして、さらに該結合は立体的に均一であってもよいしそうでなくてもよい、オリゴヌクレオチド。
(項目20)ZがNRである、項目19に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目21)RがHである、項目20に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目22)XおよびYがOである、項目20に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目23)RがC〜Cアルキレンである、項目20に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目24)Rが(CHである、項目23に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目25)RおよびRがC〜Cアルキルである、項目20に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目26)RおよびRがCHである、項目25に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目27)WがSである、項目20に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目28)RがC〜Cアルキレンである、項目20に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目29)Rが(CHである、項目28に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目30)RおよびRが1〜4個のNH基で置換されたC〜Cアルキルである、項目20に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目31)RおよびRが−CHCHNHである、項目30に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目32)以下の構造(II):
【0026】
【化4】

を有する少なくとも1つのカチオン性ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドであって、ここで;
Wは、O、SおよびSeからなる群より選択され;
XおよびYは、O、S、C(R)R、およびNRからなる群より独立して選択され、ここでRおよびRはHおよびC〜Cアルキルからなる群より独立して選択され、RはHまたはC〜Cアルキルであり;
Zは、O、S、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、C〜CアルキニレンおよびNRからなる群より選択され、ここで、RはHまたはC〜Cアルキルであり、ただしW、XおよびYがOである場合、ZはOまたはSであり;
は、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、C〜Cアルキニレン、単環式アリーレンおよび結合からなる群より選択され;
およびRは、H、C〜Cアルキル、1〜4個のNH基で置換されたC〜Cアルキル、および単環式アリールからなる群より独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、5員環もしくは6員環のアルキルもしくはアリール環、またはN−、O−もしくはS−を含む複素環を形成するように結合され得;そして
ここで、Pは2つの異なる立体異性体的配置で存在してもよいししなくてもよいリン原子であり、
そして、さらに該結合は立体的に均一であってもよいしそうでなくてもよい、オリゴヌクレオチド。
(項目33)以下の構造(I):
【0027】
【化5】

を有する少なくとも1つのカチオン性ヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドを作製するための方法であって、ここで:
Wは、O、SおよびSeからなる群より選択され;
XおよびYは、O、S、C(R)Rおよび、NRからなる群より独立して選択され、ここでRおよびRはHおよびC〜Cアルキルからなる群より独立して選択され、RはHまたはC〜Cアルキルであり;
Zは、O、S、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、C〜CアルキニレンおよびNRからなる群より選択され、ここで、RはHまたはC〜Cアルキルであり、ただしW、XおよびYがOである場合、ZはO、SまたはNRであり;
は、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、C〜Cアルキニレン、単環式アリーレンおよび結合からなる群より選択され;
およびRは、H、C〜Cアルキル、1〜4個のNH基で置換されたC〜Cアルキル、および単環式アリールからなる群より独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、5員環または6員環のアルキルまたはアリール環、またはN−、O−もしくはS−を含む複素環を形成するように結合され得;そして
ここで、Pは2つの異なる立体異性体的配置で存在し得る不斉的なリン原子を表し、
そして、さらに該結合は該オリゴヌクレオチドの分子間で立体的に均一であり、該方法は、以下の工程:
(a)該カチオン性ヌクレオシド間結合および3’−O−TBDMS保護基を含む、保護されたカチオン性ヌクレオチドダイマーのポイントラセミ混合物を合成する工程;
(b)必要に応じて、該混合物中の該立体異性体を分割する工程;
(c)工程(b)において単離された該カチオン性ヌクレオチドダイマーを脱保護する工程;
(d)工程(c)において提供された該脱保護されたカチオン性ヌクレオチドダイマーを、Cl−P(N(iPr))−O−BCEとの反応によって、対応する3’−O−CHCHCNホスホルアミダイト誘導体に変換する工程;および
(e)該3’−O−CHCHCNホスホルアミダイト誘導体を、オリゴヌクレオチド鎖の保護されていないヒドロキシル含有末端ユニットに結合する工程、
を包含する、方法。
(項目34)核酸ハイブリダイゼーションアッセイであって、以下の工程:
(a)少なくとも1つのカチオン性ヌクレオシド間結合を含む標識されたオリゴヌクレオチドプローブを提供する工程;
(b)該プローブを一本鎖分析物核酸とハイブリダイズさせて標識された二重鎖を生成する工程;および
(c)該標識された二重鎖を検出する工程
を包含する、核酸ハイブリダイゼーションアッセイ。
(項目35)前記カチオン性ヌクレオシド間結合が以下の構造(I):
【0028】
【化6】

を有する、項目34に記載の核酸ハイブリダイゼーションアッセイであって、
ここで:
Wは、O、SおよびSeからなる群より選択され;
XおよびYは、O、S、C(R)R、およびNRからなる群より独立して選択され、ここでRおよびRはHおよびC〜Cアルキルからなる群より独立して選択され、RはHまたはC〜Cアルキルであり;
Zは、O、S、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、C〜CアルキニレンおよびNRからなる群より選択され、ここで、RはHまたはC〜Cアルキルであり、ただしW、XおよびYがOである場合、ZはO、SまたはNRであり;
は、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、C〜Cアルキニレン、単環式アリーレンおよび結合からなる群より選択され;
およびRは、H、C〜Cアルキル、1〜4個のNH基で置換されたC〜Cアルキル、および単環式アリールからなる群より独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、5員環もしくは6員環のアルキルもしくはアリール環、またはN−、O−もしくはS−を含む複素環を形成するよう結合され得;そして
ここで、Pは2つの異なる立体異性体的配置で存在し得る不斉的なリン原子を表し、
そしてさらに該結合は立体的に均一である、核酸ハイブリダイゼーションアッセイ。
(項目36)項目34に記載の核酸ハイブリダイゼーションアッセイであって、ここで、前記オリゴヌクレオチドプローブは、カチオン性およびアニオン性ヌクレオシド間結合を交互に有し、ここで、該カチオン性ヌクレオシド間結合が以下の構造(II):
【0029】
【化7】

を有し、ここで;
Wは、O、SおよびSeからなる群より選択され;
XおよびYは、O、S、C(R)R、およびNRからなる群より独立して選択され、ここでRおよびRはHおよびC〜Cアルキルからなる群より独立して選択され、RはHまたはC〜Cアルキルであり;
Zは、O、S、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、C〜CアルキニレンおよびNRからなる群より選択され、ここで、RはHまたはC〜Cアルキルであり、ただしW、XおよびYがOである場合、ZはOまたはSであり;
は、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、C〜Cアルキニレン、単環式アリーレンおよび結合からなる群より選択され;
およびRは、H、C〜Cアルキル、1〜4個のNH基で置換されたC〜Cアルキル、および単環式アリールからなる群より独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、5員環もしくは6員環のアルキルもしくはアリール環、またはN−、O−もしくはS−を含む複素環を形成するように結合される、核酸ハイブリダイゼーションアッセイ。
(項目37)項目34に記載の核酸ハイブリダイゼーションアッセイであって、ここで、前記カチオン性ヌクレオシド間結合が以下の構造(II):
【0030】
【化8】

を有し、ここで;
Wは、O、SおよびSeからなる群より選択され;
XおよびYは、O、S、C(R)R、およびNRからなる群より独立して選択され、ここでRおよびRはHおよびC〜Cアルキルからなる群より独立して選択され、RはHまたはC〜Cアルキルであり;
Zは、O、S、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、C〜CアルキニレンおよびNRからなる群より選択され、ここで、RはHまたはC〜Cアルキルであり、ただしW、XおよびYがOである場合、ZはOまたはSであり;
は、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、C〜Cアルキニレン、単環式アリーレンおよび結合からなる群より選択され;
およびRは、H、C〜Cアルキル、1〜4個のNH基で置換されたC〜Cアルキル、および単環式アリールからなる群より独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、5員環もしくは6員環のアルキルもしくはアリール環、またはN−、O−もしくはS−を含む複素環を形成するように結合される、核酸ハイブリダイゼーションアッセイ。
【0031】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴は、以下の説明に部分的に記載され、そして以下を検討する際に部分的に当業者に明らかになるか、または本発明の実施によって学ばれ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
発明の詳細な説明
定義および名称:
本発明を詳細に開示および記載する前に、本発明が特定のアッセイ方式、材料または試薬(これらはもちろん変化し得る)に限定されないことを理解すべきである。本明細書中で使用される用語は特定の実施態様を記載する目的のためだけであり、そして限定する意図はないことも理解すべきである。
【0033】
本明細書および添付の請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が明らかに別のことを示さない限り、複数の指示物を含むことに注意しなければならない。従って、例えば、「カチオン性ヌクレオシド間結合」を含むオリゴヌクレオチドに対する言及は、2またはそれ以上のカチオン性ヌクレオシド間結合を含む複数のポリヌクレオチドも含む、などである。
【0034】
本明細書および以下の請求の範囲において、以下の意味を有すると定義される多くの用語に対する言及がなされる:
本明細書において使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2’−デオキシ−D−リボースを含む)、ポリリボヌクレオチド(D−リボースを含む)、プリン塩基またはピリミジン塩基のNーグリコシドまたはCーグリコシドである任意の他のタイプのポリヌクレオチド、ならびに非ヌクレオチド骨格(例えば、ポリアミド(例えば、ペプチド核酸(PNA))およびポリモルホリノ(polymorpholino;Anti−Virals, Inc.(Corvallis, Oregon)からNeugeneTMポリマーとして市販されている))、および他の合成配列特異的核酸ポリマー(ポリマーが、DNAおよびRNAで見出されるように、塩基対合および塩基重層を可能にする配置でヌクレオベース(nucleobase)を含むことを提供する)を含む他のポリマーに対する一般名称である。用語「ポリヌクレオチド」と「オリゴヌクレオチド」との間で長さの違いは意図されず、そしてこれらの用語は互換的に使用される。これらの用語は分子の一次構造のみをいう。従って、これらの用語は二本鎖および一本鎖DNA、ならびに二本鎖および一本鎖のRNA、DNA:RNAハイブリッド、およびPNAとDNAまたはRNAとの間のハイブリッドを含み、そして公知のタイプの改変体(例えば、当該分野において公知である標識、メチル化、「キャップ(cap)」、アナログでの1またはそれ以上の天然に存在するヌクレオチドの置換、ヌクレオチド間改変体)、ならびに非改変形態のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドもまた含まれる。ヌクレオチド間改変体は、例えば、非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメート、など)を有する改変体および負に荷電した結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を有する改変体、3’−オキシリボース部分または3’−デオキシリボース部分の2’−O−ヌクレオチド間結合を含む改変体、ペンダント部分、例えば、タンパク質(ヌクレアーゼ、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリLーリジンなどを含む)を含む改変体、インターカレーター(例えば、アクリジン、プソラレンなど)を有する改変体、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化力を有する金属など)を含む改変体、アルキル化剤を含む改変体、改変された結合(例えば、αアノマー核酸など)を有する改変体などである。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「ヌクレオシド」および「ヌクレオチド」は、公知のプリン塩基およびピリミジン塩基だけでなく、改変された他の複素環式塩基も含む部分を包含することが理解される。このような改変は、メチル化プリンまたはメチル化ピリミジン、アシル化プリンまたはアシル化ピリミジン、あるいは他の複素環を包含する。さらに、用語「ヌクレオシド」および「ヌクレオチド」は、従来のリボース糖およびデオキシリボース糖だけでなく、他の糖も含む部分を包含する。改変されたヌクレオシドまたはヌクレオチドもまた糖部分に改変を含む。例えば、ここで、1またはそれより多いヒドロキシル基がハロゲン、脂肪族基で置換されているか、あるいはエーテル、アミンとして官能化されているなどである。
【0036】
名称「3’」は、ヌクレオシド間結合の構造的な表示において使用される場合、結合に対して5’側に位置するヌクレオシドのリボース部分の3’炭素との結合をいう。名称「5’」は、ヌクレオシド間結合の構造的な表示において使用される場合、結合に対して3’側に位置するヌクレオシドのリボース部分の5’炭素との結合をいう。しかし、上記に示すように、本発明を、骨格の一部分としてリボース糖を含むオリゴヌクレオチドに限定する意図はない。従って、当業者は、本明細書中に示されるような、カチオン性ヌクレオシド間結合を含む新規なオリゴヌクレオチドが、伝統的な3’および5’ヌクレオシド間結合に限定される必要はないことを理解する。
【0037】
用語「カチオン性」は、本明細書中で使用される場合、約9未満、好ましくは約8未満のpHで正の電荷を有する化学的部分をいう。より好ましくは、中性に近い水溶液中の場合、すなわち約pH4〜pH8の範囲、好ましくは約pH7、最も好ましくは約pH7.3において、カチオン性部分は陽子を得て正の電荷を帯びる。従って、「カチオン性ヌクレオシド間結合」は、上記の条件下で正に帯電している置換基化学部分を含むような結合である。「カチオン性オリゴヌクレオチド」は、本明細書中では、1またはそれより多いカチオン性ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドを示すために使用される。
【0038】
用語「アルキル」または「低級アルキル」は、本明細書で使用される場合、1〜6個の炭素原子の、分枝または非分枝の飽和炭化水素基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル(「iPr」)、n−ブチル、イソブチル、t−ブチルなど)をいう。用語「アルキレン」または「低級アルキレン」は、本明細書で使用される場合、1〜6個の炭素原子を含む、二官能性の飽和分枝または非分枝炭化水素鎖をいい、そして例えば、メチレン(−CH−)、エチレン(−CH−CH−)、プロピレン(−CH−CH−CH−)、2−メチルプロピレン(−CH−CH(CH)−CH−)、ヘキシレン(−(CH−)などを含む。
【0039】
用語「アルケニレン」または「低級アルケニレン」は、本明細書中で使用する場合、2〜6個の炭素原子および少なくとも1つの二重結合を含む、二官能性の分枝または非分枝の炭化水素鎖をいう。用語「アルキニレン」または「低級アルキニレン」は、本明細書中で使用する場合、2〜6個の炭素原子および少なくとも1つの三重結合を含む、二官能性の分枝または非分枝の炭化水素鎖をいう。
【0040】
用語「アリール」は、本明細書中で使用される場合、1〜5の芳香族環を含む、代表的には、ハロゲンおよびC〜Cアルキルからなる群より選択される1またはそれより多い置換基で置換されていないかまたは置換されているかのいずれかの芳香族種をいう。
【0041】
用語「アリーレン」は二官能性芳香族部分をいい;「単環式アリーレン」はフェニレン基をいう。これらの基は上記で概説されるような4つまでの環置換基で置換されていてもよい。
【0042】
用語「複素環」はその従来の意味で使用され、複素原子(例えば、O、N、S、Pおよびハロゲン)を含む置換または非置換の芳香族環式分子および非芳香族環式分子を包含する。このような複素環の例には、ピロール、ピロリジン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、キノリン、インドール、ピリミジン、ピペラジン、ピペコリン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、プリンなどが含まれる。これらの基はまた、上記で概説したように、置換されていてもよい。
【0043】
「精製(された)」または「均質な」とは、ポリペプチドまたはヌクレオチド配列に言及する場合、同じタイプまたは立体異性体的配置の他の生物学的高分子が実質的に存在することなく、示された分子が存在することを意味する。用語「精製(された)」または「均質な」は、本明細書中で使用される場合、好ましくは少なくとも約90重量%、より好ましくは少なくとも約95重量%、そして最も好ましくは少なくとも約98重量%の同じタイプの生物学的高分子が存在することを意味する。
【0044】
用語「立体異性体」はその従来の意味で使用され、少なくとも1つの不斉的な原子を有する化学的化合物(この化合物は、同じ数および種類の原子ならびに同じ原子配置を有するが空間的な関係は異なる、2つまたはそれ以上の形態で存在し得る)をいう。不斉的なヌクレオシド間リン原子の場合、2つの可能な立体異性体的配置が存在する。
【0045】
用語「立体異性体的に純粋」または「立体化学的に純粋」とは、他の立体異性体が実質的に存在することなく1つの立体異性体が存在することを意味する。少なくとも1つの不斉的なヌクレオシド間リン原子を含む分子に言及する場合、この用語は、他の立体異性体的配置が実質的に存在することなく、その不斉的なヌクレオシド間リン原子の1つの立体異性体的配置が存在することを意味する。用語「立体化学的に純粋」は、本明細書中で使用される場合、好ましくは少なくとも約70重量%、より好ましくは少なくとも約80重量%、そして最も好ましくは少なくとも約90重量%の特定の立体異性体的配置のダイマーまたはオリゴヌクレオチドが、他の立体異性体的配置を除外して存在することを意味する。立体異性体の「分割」は、立体異性体が互いに分離されて立体異性体的に純粋な異性体を生成し得る手段を示す。「ポイントラセミ混合物(point racemic mixture)」または「ポイントラセミ化合物(point racemate)」は、本明細書中で、特定の不斉的なリン原子での両立体異性体が存在する立体異性体の混合物であると定義される。このような「ポイントラセミ混合物」は、代表的には、40%〜60%のオーダーの1つの立体異性体、およびこれに対応して60%〜40%の他の立体異性体を含むが、必ずしも必要ではない。しかし、一般的には、2つの立体異性体は概ね等量で存在する。例えば、不斉的なヌクレオシド間リンを有するダイマーでは、あるいは1つのこのような不斉的なリンを有するオリゴヌクレオチドでは、ポイントラセミ混合物は、一般的に、概ね等量の各立体異性体を含む。
【0046】
ヌクレオシド間結合が2つの異なる立体異性体的配置のうちの1つで存在し得るような、不斉的なリン原子を有する特定のカチオン性ヌクレオシド間結合に言及する場合、用語「立体的均一(stereouniform)」は、このヌクレオシド間結合を含むこのような分子の実質的な部分が、異なる立体異性体的配置で存在する結合を有することを意図する。「実質的な部分」は、好ましくは70%より大きい、より好ましくは80%より大きい、そして最も好ましくは90%より大きいこのようなヌクレオシド間結合が立体異性体的配置で存在することを意図する。
【0047】
立体異性体は、当該分野で公知の任意の種々の方法によって分割され得る。例えば、いくつかのラセミ混合物を、同様な立体異性体的配置の分子が、可視的に不斉的な結晶に集合する様式で結晶化させる。このような結晶は物理学的に分離されて、立体化学的に純粋な立体異性体を生成し得る。
【0048】
当該分野で周知である第2の方法は、ラセミ混合物が、第2の標準的な不斉的な分子と反応することを可能にする化学的手順を包含する。例えば、ラセミ化合物が酸である場合、光学的に活性なアミン(例えば、キニン、ブルシンまたはストリキニーネ)を使用してこの混合物を分割し得る。この方法は、標準的な物理学的手段(例えば、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなど)によって分離され得る2つの立体異性体を生成する。
【0049】
ヌクレオシド間リンに結合した置換基を含むオリゴヌクレオチドの場合、ヌクレオシド間リンでのキラリティーによって決定される異性体が、実際にジアステレオマーである。なぜなら、オリゴヌクレオチド骨格の糖成分がキラルであるからである。ジアステレオマーは従来の方法(例えば、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなど)によって分離され得る。
【0050】
ジアステレオマーである立体異性体は、薄層クロマトグラフィー(「TLC」)、またはアキラルな媒体を使用するカラムクロマトグラフィーを使用して分離され得る。立体異性体のTLC分割は、固相(例えば、シリカ)を含む適切なTLCプレート上で行われ得る。これは、必要に応じてキラル試薬などを含み、そして立体異性体を分割するに効果的である。TLCによって分離された立体異性体は、TLC基質およびプレートの展開に使用された溶媒中におけるそれらの差分(differential)溶解性によって特徴付けられ得る。代表的には、差分溶解性は、特定の溶媒系におけるプレート上での化合物の移動を、プレートの展開に使用された溶媒系の移動に対して決定することによって表される。従って、プレートの展開後のプレート上の立体異性体の位置は、溶媒の先端の位置に対する、化合物が塗布されたスポットから移動した距離として表される。この比は、代表的には、立体異性体のRfと呼ばれる。カラムクロマトグラフィーによる立体異性体の分割もまた、固相マトリックス(例えば、シリカゲル)を使用して行われ得る。これは、必要に応じて、当該分野において周知の技術および試薬を使用するキラル試薬を含む。より高いR、すなわち特定の溶媒系中のTLCプレート上でのより高い移動性を有するかまたはカラムから最初に溶出する立体異性体は、本明細書中では、「最初に溶出する」異性体と呼ばれる。一方、より低いRを有するかまたはカラムから2番目に溶出する立体異性体は、本明細書中では、「2番目に溶出する」異性体と呼ばれる。
【0051】
リン原子での絶対的な立体化学は、Fathiら(1994)Nucleic Acids Res.(前出)によって記載されるように、Loschnerら(1990)Nucleic Acids Res. 18:5083−5088の2D−NMR法によって決定され得る。絶対的な立体化学的配置もまた、当該分野において周知である従来の方法(例えば、旋光分散(optical rotatory dispersion)または円二色性(circular dichroism)測定)によって決定され得る。
【0052】
「随意の」または「必要に応じて」は、後に記載される事象または状況が生じてもよくまたは生じなくてもよいこと、ならびにその記載がその事象または状況が生じる例および生じない例を包含することを意味する。例えば、語句「必要に応じて置換されたアルキレン」は、アルキレン部分が置換されていてもよく、または置換されていなくてもよいこと、ならびにこの記載が置換されていないアルキレンおよび置換が存在するアルキレンの両方を包含することを意味する。
【0053】
新規なオリゴヌクレオチド
本発明の新規なオリゴヌクレオチドは、以下の構造(I)を有するカチオン性ヌクレオシド間結合を含む:
【0054】
【化17】

構造(I)については、W、X、Y、Z、R、RおよびRは上記の規定の通りである。
【0055】
この構造において、Pは、例えば、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、ホスホチオエステルまたはアルキルアミノホスホネート結合中に存在する不斉的なリン原子を表す。オリゴヌクレオチドは、アニオン性および/またはカチオン性ヌクレオシド間結合の任意の組み合わせを含み得る。オリゴヌクレオチドにおいて、カチオン性ヌクレオシド間結合は、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、ホスホチオエステル、アルキルアミノホスホネート結合の任意の組み合わせであり得る。
【0056】
不斉的なリン原子の存在の結果として、カチオン性ヌクレオシド間結合は、2つの立体異性体的配置のうちの1つで存在し得る。オリゴヌクレオチドは、以下に記載および例示されるように、2つの立体異性体のうちのただ1つが予め決定された任意のヌクレオシド間結合に存在するよう、すなわちオリゴヌクレオチド中の予め決定されたヌクレオシド間結合が立体的均一であるように調製され得る。
【0057】
上記のように、WはO、SおよびSeであり得る。特に好ましい実施態様において、Pが不斉的なリン原子であり、そしてこのような結合のそれぞれが立体的均一である場合、WはSである。
【0058】
XおよびYは、独立して、O、S、C(R)Rであり得、ここでRおよびRはHおよびC〜Cアルキル、ならびにNR(RはHまたはC〜Cアルキルである)からなる群より独立して選択される。好ましくは、XおよびYは独立してO、S、CH、NHであり、より好ましくは、XおよびYは共にOである。
【0059】
Zは、O、S、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、C〜CアルキニレンおよびNR(RはHまたはC〜Cアルキルである)であり得る。Pが不斉的なリン原子であり、そして各カチオン性ヌクレオシド間結合が立体的均一であるとき、W、XおよびYがOである場合、ZはO、SまたはNRである。好ましい立体的均一のカチオン性ヌクレオシド間結合において、ZはOまたはNHである。
【0060】
本発明の他の好ましい実施態様において、カチオン性ヌクレオシド間結合は立体的均一である必要はない。これらの実施態様において、W、XおよびYがOである場合、ZはOまたはSである。これらの実施態様のうちの1つのセットにおいて、オリゴヌクレオチドは、交互のカチオン性およびアニオン性ヌクレオシド間結合を含む。
【0061】
は、低級アルキレン、低級アルケニレン、低級アルキニレン、単環式アリーレンおよび結合からなる群より選択される。従って、例えば、Rが結合である場合、ZはNRに直接結合している。Rは、ヌクレオシド間リンとカチオン性中心との間のスペーサーを提供するよう選択され、そして核酸とハイブリダイズするための、カチオン性ヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドの親和性を最適化するよう選ばれ得る。Rとして有用な特に好ましい基には、(CHまたは(CHが含まれる。
【0062】
およびRは、H、低級アルキル、1〜4個のNH基で置換された低級アルキル、および単環式アリールの任意の組み合わせであり得る。あるいは、RおよびRは、5員環または6員環のアルキルまたはアリール環、またはN、OもしくはSを含む複素環を形成するよう結合され得る。Pが不斉的なリン原子であり、そしてこのような結合のそれぞれが立体的均一である場合、RおよびRは、H、CH、または1個のNH基で末端を置換された低級アルキルであることが好ましい。より好ましくは、RおよびRはCHNHまたはCHCHNHである。好ましい複素環には、ピロール、ピロリジン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、キノリン、インドール、ピリミジン、ピペラジン、ピペコリン、イミダゾール、ベンズイミダゾールおよびプリンが含まれ、これらはハロゲンまたはC〜Cアルキルで置換されていなくてもあるいは置換されていてもよい。好ましい複素環には、イミダゾール、モルホリン、ピロリジン、ピペラジン、ピペコリン、メチルピペラジンが含まれる。
【0063】
一般には、W、X、Y、Z、R、RおよびRは、生理学的な条件下で加水分解に対して化学的に非感受性であり、ヌクレアーゼに対して抵抗性であるオリゴヌクレオチドを提供し、そして/あるいは相補的なオリゴヌクレオチドと安定な二重鎖を形成するカチオン性ヌクレオシド間結合を、オリゴヌクレオチドに提供するよう選ばれる。
【0064】
1つの特に好ましい実施態様において、カチオン性ヌクレオシド間結合は下記の構造(III)を有する
【0065】
【化18】

ここで、Pは不斉的なリン原子を表し、その結果、この結合は、ヌクレオシド間結合を含むヌクレオチドダイマーのポイントラセミ混合物がシリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用して分割される場合、最初に溶出した立体異性体の配置に対応する立体異性体的配置で存在する。
【0066】
本明細書中で開示しそして特許請求したオリゴヌクレオチドは、カチオン性ヌクレオシド間結合によって置換される、任意の割合のアニオン性PDE結合を有し得る。従って、オリゴヌクレオチドは、カチオン性ヌクレオシド間結合によって置換される、約1個程度のアニオン性PDE結合を含み得、そしてカチオン性結合で置換される100%程度のアニオン性PDE結合を有し得る。負電荷と正電荷との割合は所望の正味の電荷を有するオリゴヌクレオチドを生成するよう変化し得る。オリゴヌクレオチドは、そこに組み込まれるカチオン性ヌクレオシド間結合の数に依存して、全体的に正、中性、または負の電荷を有し得る。
【0067】
オリゴヌクレオチドは交互のアニオン性およびカチオン性ヌクレオシド間結合を含むよう調製され得る。本明細書の下記の実施例4に記載するように、交互のアニオン性およびカチオン性ヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドは、DNAまたはRNAと、アニオン性の対応物より安定な二重鎖を形成する。
【0068】
アニオン性およびカチオン性ヌクレオシド間結合は、オリゴヌクレオチドじゅうにランダムに分布し得るか、またはアニオン性結合およびカチオン性結合のかたまりでオリゴヌクレオチド中に存在し得る。
【0069】
本発明の1つの好ましい実施態様において、オリゴヌクレオチドは、このオリゴヌクレオチド中の選択されたヌクレオシドの間に立体的均一なカチオン性ヌクレオシド間結合を有する。
【0070】
カチオン性ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドは、従来のオリゴヌクレオチド合成技術を使用して調製され得る。例えば、その結合において予め決定された立体異性体的配置を有するカチオン性ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドは、所望のホスホトリエステル、ホスホルアミデートまたはアルキルアミノホスホネート結合を有するダイマーブロックを合成し、ダイマーブロックの立体異性体を分割し、そしてダイマーブロックの分割された立体異性体を、固相オリゴヌクレオチド合成技術を使用してオリゴヌクレオチドに組み込むことによって調製され得る。最初に溶出する立体異性体または2番目に溶出する立体異性体のいずれかが、オリゴヌクレオチドに組み込まれ得る。例えば、以下の2つの立体異性体構造(IVa)および(IVb)を有するカチオン性チミジレートダイマーは、実施例1に記載されそしてスキーム1に示されるように、5’−HO−T−O−t−ブチルジメチルジシリル(「TBDMS」)をジメトキシトリチル(「DMT」)−T−O−P(OCH)−N(iPr)と反応させることによって調製され得る。
【0071】
【化19】

(ここで、Tはチミジレートヌクレオシドを表す)
【0072】
【化20】

DMT−T−O−P(OCH)−N(CHCH(V)を、テトラゾール中で5’−HO−T−O−TBDMS(VI)と反応させた。この反応が本質的に終了した後、この反応混合物を濃縮し、CHClで希釈し、そしてNaHCOおよび80%飽和NaClで抽出した。有機相を乾燥させ、濾過し、そしてエバポレートして粗ホスファイト−トリエステル中間体(VII)を生成した。この中間体を、ヨウ素の存在下で3−ジアミノプロピルアミンと反応させた。最終反応の生成物は、粗DMT−T−O−P(O)−(NH−(CH)−N(CH)−O−T−O−TBDMS(IVaおよびIVb)のポイントラセミ混合物である。
【0073】
さらに、このポイントラセミ化合物は、カチオン性ヌクレオシド間結合(この結合の配置は立体特異的である必要はない)を有するオリゴヌクレオチドを調製するために使用され得る。
【0074】
カチオン性ホスホルアミデートヌクレオシド間結合を有するオリゴマーは、実施例6に記載される2段階法を用いて調製され得る。この反応は、メチルホスファイト−トリエステル結合を有する予め合成されたダイマーをジチオジピリジンで酸化して、活性化されたS−Pyr−ホスホロチオジエステルを得ることを包含する。新たに形成された立体異性体は分割され得、そしてその後S−Pyr基は3−ジメチルプロピルアミンのような反応アミンで置換されて、所望の立体化学的配置中に所望のホスホルアミデートジエステル結合を有するダイマーを生成する。
【0075】
上記および実施例6に記載の2段階法は、カチオン性ホスホルアミデート結合オリゴマーの固相合成のために使用され得る。鎖伸張の間、オリゴマーをアミン溶液に曝さず、そして反応の終了時にすべてのS−Pyr−ホスホロチオジエステル結合をホスホルアミデート結合に変換する。固相合成の間にヌクレオシド間結合を改変するこの方法は、ホスホルアミデート結合での立体特異性を生じない。
【0076】
カチオン性ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドを調製する他の方法は、当業者に明らかである。
【0077】
カチオン性ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドは、核酸とで形成される二重鎖の安定性の増加の結果として、核酸に対するプローブとしての有用性を見出される。カチオン性および両性イオン性オリゴヌクレオチドは、核酸標的を含む二重鎖形成をさらに制御するために塩および/またはpHを使用する可能性を提供する。代表的には、オリゴヌクレオチドとRNA標的とのハイブリダイゼーションは、RNAにおける大規模な(extensive)2次構造および3次構造のために困難であり得る。しかし、低塩濃度で、これらの構造はよりずっと不安定である。RNA標的と、塩濃度によって制御され得る、すなわち低塩で安定な二重鎖を形成するカチオン性オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは、安定な二重鎖形成を可能にする。
【0078】
例えば、増加した二重鎖安定性を有するオリゴヌクレオチドは、遺伝子研究、生物医学研究および臨床診断学において一般に使用される核酸ハイブリダイゼーションアッセイにおける有用性を見出される。基本的な核酸ハイブリダイゼーションアッセイにおいて、一本鎖分析物核酸は、標識された一本鎖核酸プローブとハイブリダイズし、そして得られる標識された二重鎖を検出する。このようなアッセイにおけるハイブリダイゼーション工程は、適切なストリンジェンシー条件下で実施される。ストリンジェンシーは、熱力学的変数であるパラメータを変化させることによって制御され得る。このような変数は当該分野において周知であり、そしてホルムアミド濃度、塩濃度、カオトロピック塩濃度、pH、有機溶媒含有量、および温度を含む。好ましいストリンジェンシーの制御は、pHおよび塩濃度である。ストリンジェンシーは分析物配列の長さおよび性質に依存して変化し得る。
【0079】
この基本的なスキームの多様性は、正確性を向上させ、無関係(extraneous)の物質からの検出すべき二重鎖の分離を容易にし、そして/あるいは検出されるシグナルを増幅するように開発されてきた。1つのこのようなアッセイは、共有に譲渡されたUrdeaらの米国特許第4,868,105号に詳細に記載される(この開示は、本明細書中に参考として援用される)。さらに、塩濃度および/またはpHを変化させることによって二重鎖形成を制御する能力は、共有に譲渡されたCollinsらの米国特許出願第08/298,073号(この開示は、本明細書中に参考として援用する)に記載されるように、非特異的なハイブリダイゼーションに起因するバックグランドノイズを減少させるために、カチオン性ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドを、核酸ハイブリダイゼーションアッセイにおいて特に有用とする。
【0080】
カチオン性ヌクレオシド間結合を含むハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの構築が有用性を見出す別の応用は、アンチセンス化合物の設計においてである。アンチセンス化合物は、例えば、Chingら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 86:10006−10010、Broderら(1990)Ann.Int.Med. 113:604−618、Loreauら(1990)FEBS Letters 274:53−56、ならびにPCT公開第WO91/11535号、第WO91/09865号、第WO91/04753号、第WO90/13641号、第WO91/13080号、および第WO91/06629号に説明されるように、特定のタンパク質の産生を担うmRNAに結合し、そしてそのmRNAの生成を不能にするかまたは防ぐオリゴヌクレオチドである。従来のアンチセンス分子は、一般的に、種々のオリゴヌクレオチド種と反応し得る。三重構造(例えば、二本鎖オリゴヌクレオチド標的とハイブリダイズしたアンチセンス分子)もまた、アンチセンス機能を提供し得る。
【0081】
本発明のオリゴヌクレオチドは、これらを、アンチセンス分子として、天然に結合したオリゴヌクレオチドより望ましくする特性を有する。カチオン性ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドは、天然に存在するオリゴヌクレオチドを加水分解するヌクレアーゼに対してより抵抗性である。従って、カチオン性ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドは、細胞中でより長い半減期を有する。このようなオリゴヌクレオチドは、天然に存在する対応物より高い安定性で、細胞中の相補的なオリゴヌクレオチドと相互作用し得る。細胞中でのカチオン性ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドによるこの実質的に安定な複合体の形成は、遺伝子発現の選択的な阻害を可能にする。
【0082】
実験
本発明の実施には、他に指示しない限り、当該分野の技術の範囲内である合成有機化学、生化学、分子生物学などの従来の技術を用いる。このような技術は文献に十分に記載されている。例えば、Sambrook、FritschおよびManiatis、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(1989);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gaitら編、1984);Nucleic Acid Hybridization(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編、1984)および一連の、Methods in Enzymology(Academic Press、Inc.)を参照のこと。
【0083】
本明細書中で言及されるすべての特許、特許出願、および刊行物は、前出および後出の両方とも、本明細書中で参考として援用される。
【0084】
本発明は、その好ましい特定の実施態様に関して記載されるが、上記の説明および以下の実施例は、本発明の範囲を例示するが、限定しないことを意図することが理解される。本発明の範囲内の他の局面、利点および改変は、本発明に関連する分野における当業者に明白である。
【0085】
以下の実施例において、使用された数字(例えば、量、温度など)に関して精確さを確実にするための努力がなされたが、いくらかの実験誤差および偏差が考慮されるべきである。温度は常に℃で与えられ、他に示されなければ、圧力は大気圧かまたはほぼ大気圧である。
【0086】
NMR分光学。以下の実施例において、NMRスペクトルはVarian 300MHz装置で記録した。31Pスペクトルは121MHzにおいて、140ppmにセットされたトリメチルホスファイトに関して稼動させた。
【0087】
高速液体クロマトグラフィー。逆相高速液体クロマトグラフィー(「RP−HPLC」)分析および精製を、0.1M酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液(pH 7.5)中5%のCHCNへのCHCNの0〜50%グラジエント(25分間)、流速1mL/分にて溶出させるSupelco LC−18 5ミクロンカラム(25cm×4.6mm)で行った。
【実施例】
【0088】
実施例1
カチオンダイマー
DMT−T−O−PO(NH−(CH−N(CH)−O−T−O−TBDMSの合成
5’−HO−T−O−TBDMS(VI)(3.7グラム;10.4ミリモル)およびテトラゾール(20ミリモル)を乾燥アセトニトリル(2×100mL)とともに共エバポレートし、そして残渣を乾燥アセトニトリル(50mL)に溶解した。DMT−T−O−P(OCH)−N(iPr)(V)(10ミリモル)を、分液丸底フラスコ中の乾燥アセトニトリル(50mL)に溶解し、次いで、ゆっくり5’−HO−T−O−TBDMS/テトラゾール溶液に5分間の時間をかけて添加した。シリカプレート上の薄層クロマトグラフィー分析を、2回、5%メタノール/CHClで展開した。ここで、DMT陽性産物は、5’−HO−T−O−TBDMSよりわずかに速く移動し、反応が5分以内に完了した様であることを示した。
【0089】
反応混合物を穏やかに濃縮して少量とし、400mLのCHClで希釈しそして有機相を5%NaHCO水溶液(400mL)および80%飽和NaCl水溶液(400mL)で抽出した。有機相を固体NaSOで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして乾燥した。残渣をトルエン(100mL)およびアセトニトリル(2×200mL)とともに共エバポレートして、10グラムの粗製亜リン酸トリエステル中間体(VII)を得た。
【0090】
粗製中間体を、さらなる精製を行わずに直接使用して、アセトニトリル(200mL)に溶解した。希釈していない3−ジアミノプロピルアミン(10mL;16ミリモル)を溶液に直接添加し、続いて、急速撹拌しながら、ヨウ素(2.53グラム;10ミリモル)のアセトニトリル溶液(100mL)を滴下して加えた。添加するとヨウ素の紫色は直ちに消失し、僅かに黄色が、添加の完了後に残った。反応混合物を4℃で18時間放置した。
【0091】
次いで、反応混合物を少量まで穏やかに濃縮し、そして400mLのCHClで希釈した。この調製物の有機相を、15%の亜硫酸水素ナトリウム(300mL)、5%NaHCO水溶液(2×400mL)、そして80%飽和NaCl水溶液(2×400mL)で抽出した。有機相を固体NaSOで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして乾燥した。残渣を、トルエン(100mL)およびアセトニトリル(2×200mL)と共エバポレートし、12グラムの粗製DMT−T−O−PO(NH−(CH−N(CH)−O−T−O−TBDMS((IVa)および(IVb))を得た。
【0092】
生成物を、2% TEA/CHCl中のメタノール(0〜6%)のグラジエントを用いてシリカゲルクロマトグラフィー(2%トリエチルアミン(「TEA」)/CHClの溶媒系中に注いだ「600mL」のMerckシリカゲル60)で分画し、100mLの画分を得た。画分16〜25をプールし、そして濃縮した。画分を上記のようにシリカゲルクロマトグラフィーにより、2% TEA/CHCl中のメタノールの長い(drawn−out)グラジエント(2%(8画分)、4%(16画分)、5%(16画分)および6%(16画分)メタノール)で繰り返し、50mLの画分を採取した。3つのプールを単離した:#1、画分19〜22;#2、画分23〜32;そして#3、画分33〜40。各プールを濃縮し、そしてトルエンおよびアセトニトリルとともに共エバポレートして、以下の特性を有する3つのプールを得た。
【0093】
【化21】

DMT−T−O−PO(NH−(CH−N(CH)−O−T−O−TBDMSの最初の精製物からのプール#2を、さらにシリカゲルクロマトグラフィー(2%TEA/CHClの溶媒系中に注いだ「400mL」のMerckシリカゲル60)により、2% TEA/CHCl中のメタノールのグラジエント(2%(16個の50−mL画分)、3%(8×50mL、10×25mL)、4%(16×50mL)および5%(6×50mL))を用いて、分画した。以下のように、3つのプールを単離した:プール#1、画分24〜34:最初に溶出する異性体、1.62グラム;プール#2、画分23〜32:異性体の混合物、0.73グラム;そしてプール#3、画分33〜40:2番目に溶出する異性体、1.2グラム。
【0094】
TBDMS基の脱離は、テトラブチルアンモニウムフルオライド(「TBAF」)を用いて達成した。19mLのアセトニトリル中のシリカ精製したDMT−T−O−PO(NH−(CH−N(CH)−O−T−O−TBDMS(最初の精製物からのプール#1(1.14グラム;0.95ミリモル))を、5当量のTBAF(THF中1MのTBAFの5mL)で2.5時間処理し、その時間で、反応は事実上完結した。反応混合物を250mLの塩化メチレンで希釈し、そして5%NaHCO水溶液(250mL)および80%飽和NaCl水溶液(250mL)で抽出した。有機相を固体NaSOで乾燥し、濾過し、そして乾燥するまでエバポレートした。残渣をトルエン(100mL)およびアセトニトリル(2×200mL)とともに共エバポレートした。プール#1からの粗製DMT−T−O−PO(NH−(CH)−N(CH)−O−T−O−Hを、シリカゲルクロマトグラフィー(2%TEA/CHCl溶媒系中に注いだ「250mL」のMerckシリカゲル60)により、2% TEA/CHCl中のメタノール(0〜18%)のグラジエント(0%(4画分)、3%(4画分)、6%(8画分)、9%(8画分)、12%(8画分)、15%(8画分)、18%(8画分))を用いて精製し、50mLの画分を採取した。画分32〜40をプールした。
【0095】
プールした画分32〜40の濃縮により、純粋なDMT−T−O−PO(NH−(CH−N(CH)−O−T−OH(最初に溶出する異性体;0.61グラム;0.57ミリモル)を得た。外部標準としてd−DMSOを用いたCHCl中の31P NMR:8.3ppm(100%);外部標準としてd−DMSOを用いたCHCN中の31P NMR:8.87ppm(100%)。
【0096】
同様に、シリカ精製したDMT−T−O−PO(NH−(CH−N(CH)−O−T−O−TBDMS(最初の精製物からのプール#3(0.8グラム;0.7ミリモル))を、5当量のTBAFで処理した。DMT−T−O−PO(NH−(CH−N(CH)−O−T−O−TBDMS(プール#1)についての上記のような、後処理(workup)および精製により、純粋なDMT−T−O−PO(NH−(CH−N(CH)−O−T−OH(より遅い異性体;0.57グラム;0.53ミリモル)を得た。31P NMR(外部標準としてd−DMSOを用いたCHCl):8.57ppm(98%)。
【0097】
実施例2
DMT−T−O−PO(NH−(CH−N(CH)−O−T−O−P(N(iPr))−O−BCE
の合成
DIPEA(5.7ミリモル)を含有するCHCl中のDMT−T−O−PO(NH−(CH−N(CH)−O−T−OH(最初に溶出する異性体;0.61グラム;0.57ミリモル)をCl−P(N(iPr))−O−BCE(1.14ミリモル;2倍過剰)と反応させた、ここで、BCEは、β−シアノエチルである。反応の進行を、2%TEA/CHCl中の8%メタノール中におけるTLCによりモニターした。反応混合物を4℃にて18時間放置した。反応混合物を250mLの塩化メチレンで希釈し、そして5%NaHCO水溶液(250mL)および80%飽和NaCl水溶液(250mL)で抽出した。有機相を固体NaSOで乾燥し、濾過し、そして乾燥するまでエバポレートした。残渣をトルエン(50mL)およびアセトニトリル(2×100mL)とともに共エバポレートして、0.6グラムを得た(0.47ミリモル)。31P NMR(外部標準としてd−DMSOを用いたCHCN):148.5、148.3、8.87ppm(積分:ホスホルアミダイト対ホスホルアミデートの比1/1)。
【0098】
DMT−T−O−PO(NH−(CH−N(CH)−O−T−OH(2番目に溶出する異性体;0.57グラム;0.53ミリモル)を、同様の手順を用いて、BCEホスホルアミダイトに変換し、0.6グラムの生成物を得た。31P NMR(外部標準としてd−DMSOを用いたCHCN):148.5、148.3、9.07ppm(積分:ホスホルアミダイト対ホスホルアミデートの比1/1)。
【0099】
DMT−T−O−PO(NH−(CH−N(CH)−O−T−O−TBDMSの立体異性体を、TLCおよびシリカ上のカラムクロマトグラフィーにより、容易に分離した。しかし、3’−O−TBDMS基の除去の後、それらをいずれの溶媒系におけるTLCによっても分割できなかった。
【0100】
DMT−T−O−PO(NH−(CH−N(CH)−O−T−O−P(N(iPr))−(O−BCE)についてのNMRデータ。
【0101】
(a)最初に溶出する異性体。H NMR(CDCl)δ(ppm):9.0(s、1H、NH、Dにより交換可能);7.48(s、1H、H6);7.45(s、1H、H6);7.45〜6.8(m、13H、トリチル);6.16(t、1H、H1’);6.15(t、1H、H1’);5.05(m、1H、H3’);4.16(m、1H、H3’);4.1(m、1H、H4’);4.05〜3.9(m、2H、H5’、5’);3.85(m、1H、H4’);3.75(s、6H、OCH3);3.28〜3.21(m、2H、H5’);2.9〜2.7(m、4H、NCH2);2.46(m、2H、H2’);2.3(s、6H);2.06(m、2H、H2’);1.74(s、3H、CH3);1.7〜1.5(m、2H、CH2);1.43(s、3H、CH3);1.0(s、9H);0.0(s、6H);31P NMR(CDCl):8.75ppm。
【0102】
(b)2番目に溶出する異性体:31P NMR(CDCl):9.1ppm。
【0103】
DMT−T−O−PO(NH−(CH−N(CH)−O−T−3’−O−P(N(iPr))−O−BCEについてのNMRデータ。
【0104】
(a)最初に溶出する異性体:31P NMR:148.5ppm、147.9ppm、8.75ppm(ホスホルアミダイト/ホスホルアミデートの積分比=1:1)。
【0105】
(b)2番目に溶出する:148.45ppm、147.96ppm、9.1ppm(ホスホルアミダイト/ホスホルアミデートの積分比=1:1)。
【0106】
実施例3
5’−O−DMT−U(2’−O−(CH))−3’−O−P(O)(NH−(CH−N(CH)−
5’−O−U(2’−O−(CH))−3’−ORの合成
5’−O−DMT−U(2’−O−(CH))−3’−O−P(O)(NH−(CH−N(CH)−5’−O−U(2’−O−CH)−3’−OR(ここでRはTBDMS、HまたはP(O−CHCHCN)−N(iPr)である)を、以下のように合成した。
【0107】
7.9ミリモルの5’−O−DMT−U(2’−O−CH)−3’−O−P(O−CH)−N(iPr)(MW721)を、市販の5’−O−DMT−U(2’−O−CH)−3’−OH(ChemGenes(Waltham、MA)から購入した)から調製した。5’−O−U(2’−O−CH)−3’−O−TBDMSを、5’−O−DMT−U(2’−O−CH)−3’−OH(Monomer Sciences(Huntsville、AL)から購入した)から調製した。5’−O−DMT−U(2’−O−CH)−3’−O−P(O−CH)−N(iPr)(MW7210)(7.9ミリモル)と5’−O−U(2’−O−CH)−3’−O−TBDMS(8ミリモル)とを、テトラゾール(16ミリモル)の存在下で、まずカップリングして、十分に保護された誘導体を調製し、ホスファイトトリエステル中間体を得た。ホスファイトトリエステル中間体(VII)(実質的に実施例1に記載の通り、水性後処理(aqueous workup)の後に直接使用した)を、2倍過剰の3−ジメチルアミノプロピルアミンと混合し、そしてCHCN中の0.1Mヨウ素溶液80mLと反応させた。実施例1に記載の水性後処理の後、この反応で8.54グラムの粗製生成物を得た。31P−NMR(外部標準としてd−DMSOを用いたCHCNにおいて):8.9および9.5ppm。
【0108】
実施例1および2の記載と同様にシリカゲルクロマトグラフィー(「700mL」のMerckシリカゲル60)による精製を行って、2つの画分プールを得た:最初に溶出する画分(画分番号32〜44、1.69グラム、31P−NMR 8.9ppm(100%))および画分番号47〜60、低速、1.62グラム、31P−NMR 8.9ppm(>5%)、9.5ppm(80%)、10.2+10.7ppm(合計18%)(正体不明)。
【0109】
実施例4
立体規定ホスホルアミデート結合
を交互に有するカチオン性オリゴマーの調製
アニオン性および立体均一なカチオン性ホスホルアミデート結合を交互に有するオリゴヌクレオチドを、カチオン性の立体異性体的に純粋なTp(+)Tダイマーホスホルアミダイトを取り込むことにより調製した。ここで、Tp(+)Tは、ヌクレオシド間のリン原子上のカチオン性ジメチルアミノプロピルアミド置換基を示し、そしてTp(−)Tは、従来のホスホジエステルヌクレオシド間結合を示す。
【0110】
以下のオリゴマーを、実施例1〜3に記載した方法を用いて合成した:(Tp(+)Tp)T(最初に溶出する異性体を用いる);(Tp(+)Tp)T(2番目に溶出する異性体を用いる);および(Tp(+)Tp)T(ポイントラセミ化合物、すなわち、任意の1位置における第1および2番目に溶出する異性体のランダム混合物)。
【0111】
カチオン性ダイマーを用いたオリゴマー合成を、Millipore Expedite DNA合成装置上で、10分間のカップリング工程を用いて行った。DMT−Tp(+)T BCE(最初に溶出する異性体または2番目に溶出する異性体、あるいはポイントラセミ化合物(ほぼ等量の第1および2番目に溶出する異性体))を、乾燥アセトニトリルに溶解して、0.1Mの濃度にした。合成したオリゴマー配列は、7サイクルのダイマー付加によるDMT−(Tp(+)Tp)Tであった;最終DMTは取り出されなかった。NHOH水溶液を用いて(1時間/20℃)、粗製オリゴマーを支持体から切断した。上清を濃縮し、そして残渣を400μLの水に再溶解した。20分付近に1つの主要なピーク溶出を示したすべての場合、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による粗製オリゴマー生成物の分析を、実験のセクションに記載したように行った。
【0112】
完全長DMT生成物を逆相HPLC(「RP−HPLC」)により、100μL(約43A260単位)の注入により精製した。20分付近のピーク溶出を集め(約1mL)、そしてエバポレートして乾燥した。残渣を200μLの80%酢酸水溶液に1時間再溶解して、5’−末端のDMT基を除去した。酸溶液をエバポレートにより除去し、そして残渣を、100μLの80%酢酸水溶液に再溶解した。溶液を1時間室温にて放置し、次いで、エバポレートして乾燥した。残渣を約0.5mLの水に溶解した。水溶液を約0.5mLの酢酸エチルで2回洗浄し、次いで凍結乾燥した。細かい粒子状の物質を遠心分離により除去した。脱トリチル化したオリゴマーを、最終的にRP−HPLCにより、上記と同じ手順を用いて精製した。
【0113】
実施例5
異性体分解によるダイマーブロックの調製
本実施例に記載する方法は、1つのモノマータイプを用いた、固体支持体上でのモノマー単位からのカチオン性オリゴマーの合成に使用し得る。この方法は、ヌクレオシドメチルホスホルアミダイトを用いて例証された。
【0114】
A.ホスホロチオエートダイマーTp(S)Tを、ピリジン中の2〜4倍過剰のMeSO−Clで処理した。出発物質を完全に消費して、2つの新たな31P NMRシグナルを67ppm/68ppmで得た。反応混合物をジメチルアミノプロピルアミン(「DMAPA」)でクエンチしたとき、67ppm/68ppmのシグナルは、直ちに、72ppm/73ppmの新たなペアに置き替えられた;Nu−O−P−(O)(NH−R)−O−Nuに対応する、8.8ppm/9.4ppmのシグナルは、観察されなかった。
【0115】
B.20℃にて、MeSO−Cl(20μL;2倍過剰)を、ピリジン中の5’−O−DMT−T−O−P(S)O−O−5’−T−3’−O−TBDMS(0.2M溶液の0.6mL)に添加した。反応は、31P NMRにより67/6ppmおよび67/0ppmの2つの新たなシグナルで判断されるように、数分で完了した。DMAPA(ホスホロチオエートに対して4倍過剰)を添加し、そして反応を進行させた。5分より短い時間の後、31P NMRは、67.6ppmおよび67.0ppmの2つのシグナルが完全に消失し、新たな73.5ppmおよび72.9ppmの、2つのシグナルに置き替えられたことを示した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、NaHCOおよびNaClで抽出した。粗製生成物のTLCは、2つのDMT/糖陽性スポットを示し、これは、2%TEA/8%MeOH/90%CHCl中で、5’−O−DMT−T−O−P(O)(NH−(CH−N(CH)−O−5’−T−3’−O−TBDMSよりわずかに速く移動した。従って、反応は排他的に、いずれのS活性化を伴うことなくO活性化に導く。
【0116】
実施例6
カチオン性ヌクレオシド間ホスホルアミデート結合を有する
カチオン性ダイマーの調製
本実施例は、カチオン性ホスホルアミデート結合したオリゴマーの2段階合成を記載する。この反応は、メチルホスファイト−トリエステル結合を、ジチオジピリジンで酸化して、活性化S−Pyr−ホスホロチオジエステルを得、続いてアミンで置換して所望のホスホルアミデートジエステル結合を得る工程を包含する。このスキームは、カチオン性ホスホルアミデート結合オリゴマーの固相合成に関して魅力的である。鎖延長の間、オリゴマーはアミン溶液に曝されず、そして反応の終了時にすべてのS−Pyr−ホスホロチオジエステル結合は、ホスホルアミデート結合に変換される。
【0117】
トリエチルアミン(0.1mL)を、CHCN中のDMT−O5’−T−O3’−P(O−(CH))−O5’−O3’−TBDMSの溶液(0.3mL;0.2M)に添加した。CHCN中の5倍過剰のジチオピリジン(0.3mL;1.0M)を添加し、そして反応を20℃にて進行させた。反応の経過に続いてNMRを行った。
【0118】
出発物質の2つの立体異性体に対応する最初の140ppmの2つのシグナルは、3時間後に消失し、そしてDMT−O5’−T−O3’−PO(S−Pyr)−O5’−T−O3’−TBDMSの2つの立体異性体に対応する20.3ppm/20.6ppmの新たな2つのシグナルに置き換わった。
【0119】
0.2mLの3−ジメチルプロピルアミンを、NMRチューブに直接加えた。約1時間後、20.3ppm/20.6ppmシグナルは、DMT−O5’−T−O3’−PO(NH−(CH−N(CH)−O5’−T−O3’−TBDMSの2つの立体異性体に対応する9.1ppm/8.8ppmの2つの新たなシグナルに置き換わった。薄層クロマトグラフィー分析により、ヌクレオチド的な物質のみが、実施例1に記載の方法により調製された化合物の純種のサンプルとともに共移動することを確認した。
【0120】
実施例7
カチオン性ホスホルアミデート結合の
オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション特性への効果
オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション特性へのカチオン性ヌクレオシド間結合の効果を、アニオン性およびカチオン性ホスホルアミデート結合を交互に有するオリゴヌクレオチドを用いて評価した。カチオン結合は立体異性体的に純粋であった。従って、カチオン性オリゴヌクレオチドを合成するのに用いたダイマーブロックは、実施例1に記載されたように調製した、立体異性体的に純粋なTp(+)Tダイマーホスホルアミデートであった。ポイントラセミの[Tp(+)Tp(−)]T(ここでp(+)およびp(−)は上記に定義された通りである)を、Letsingerら(1988)J.Am.Chem.Soc.110:4470〜4471に記載された通りに合成した。[Tp(+)Tp(−)]Tの構造を有するオリゴヌクレオチドアナログを、固体支持体上で、シリカゲルカラムから最初にまたは2番目に溶出する5’−O−DMT−Tp(+)T−3’−P(N(iPr)−O−CHCHCNの純粋な立体異性体、あるいは最初に溶出する異性体と2番目に溶出する異性体とのポイントラセミ混合物のいずれかを用いて、標準的なホスホルアミダイト化学を用いて合成した。各合成の生成物を、RP−HPLCによりDMT形態で精製し、続いて80%酢酸水溶液で脱トリチル化した。最終生成物を貯蔵のために凍結乾燥した。
【0121】
陽性および陰性結合を交互に含有するカチオン性ホモチミジンオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション特性を、ポリ(dA)およびポリ(A)標的配列に対して評価した。15mMリン酸緩衝液(pH 7.3)において、Perkin Elmer Lambda 2 UV/Vis分光光度計で、熱融解分析を行った。カチオン性オリゴヌクレオチドの濃度は約5μMであった。1℃/分の温度勾配で、260nm、280nm、および330nmにおいて、吸光度の変化を測定した。Tは、温度に対するA260のプロットにおける最大傾斜領域の中点に対応する温度である。
【0122】
二重鎖形成についてのオリゴヌクレオチド配列および融解温度を表1および2に示す。
【0123】
【化22】

【0124】
【化23】

【0125】
【化24】

表1および表2のハイブリダイゼーションデータは、速く溶出する立体異性体形態に対応する立体異性体的ホスホルアミデート結合を有するカチオン性オリゴヌクレオチドが、DNA標的と非常に安定な二重鎖を形成することを示す。加えて、試験したカチオン性オリゴヌクレオチド(最初に溶出する、またはポイントラセミ化合物)についての二重鎖安定性が示されたこれらのデータは、実質的に塩濃度非依存性であった。このハイブリダイゼーション挙動は、天然に発生する全アニオン性オリゴヌクレオチド(塩濃度に非常に依存するそのDNA標的と二重鎖を形成する)ときわめて異なる。一般的に、2番目に溶出する立体異性体に対応する立体異性体的ホスホルアミデート結合を有するカチオン性オリゴヌクレオチドは、DNA標的との安定な二重鎖を形成しない。
【0126】
例えば、この実験において、正常な全アニオン性オリゴヌクレオチド−ポリ(dA)二重鎖についてのTは、塩濃度が1.0Mから0.1Mまで、さらに塩添加なしまで下げられた場合、53℃から35℃まで、さらに25℃まで減少した。対照的に、最初に溶出するTp(+)T異性体から調製されたカチオン性オリゴヌクレオチドは、塩濃度非依存性である最高のT値を有した。塩がない場合でさえ(この条件下では、天然オリゴマーに対する二重鎖安定性の劇的な損失が観察された)、最初に溶出するTp(+)T異性体から調製されたカチオン性オリゴヌクレオチドで得られたT値は56℃であった。2番目に溶出するTp(+)T異性体から調製されたカチオン性オリゴヌクレオチドは、塩がない場合および0.1M NaClの場合に、ポリ(dA)と安定な二重鎖を形成しなかった。1.0M NaClの場合でさえ、2番目に溶出する異性体は、最初に溶出する異性体から調製されたカチオン性ヌクレオチドで得られたT値より低いT値(−17℃)を示した。Tp(+)Tのポイントラセミ混合物から調製されたカチオン性オリゴヌクレオチドは、塩濃度が0および低い場合、中間の安定性を有する二重鎖DNA分子を形成した;しかし、ポイントラセミ化合物についてのT値は、塩非依存性であり、そして塩が添加されない場合、ポイントラセミ化合物で得られたT値は、全アニオン性オリゴヌクレオチドよりも大きかった。
【0127】
より高いT値を反映して、ポリ(A)標的との二重鎖安定性は、最初に溶出するカチオン性オリゴマーについて、全アニオン性オリゴマーについてよりも高かった。2番目に溶出する異性体は、ポリ(A)と安定な二重鎖を形成しなかったが、ポイントラセミ化合物は、中間の二重鎖安定性を示した。
【0128】
実施例8
カチオン性ホスホトリエステル結合の
オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション特性への効果
(1)全標準ホスホジエステルヌクレオシド間結合(5’−TTTTTTTTTTTTTTT−3’);(2)交互のアニオン性標準PDE結合およびカチオン性ホスホルアミデートヌクレオシド間結合、ここでカチオン性N−置換基はジメチルアミノプロピルである([Tp(N+)Tp(−)]Tと表す)(Letsingerら(1988)J.Am.Chem.Soc. 110:4471〜4472);および(3)交互の標準PDE結合およびカチオン性ホスホトリエステルヌクレオシド間結合、ここでカチオン性置換基はジメチルアミノプロピル(「[Tp(O+)Tp(−)T]」と表す)である(固体支持体上で、標準的なホスホルアミダイト化学を用いて合成される)を有する3つのチミジンオリゴヌクレオチドを調製した。
【0129】
交互の陽性および陰性の結合を含有するカチオン性ホモチミジンオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション特性を、ポリ(dA)に対して、実施例7に記載したように評価した。結果を表3に示す。
【0130】
【化25】

表3のデータは、[Tp(O+)Tp(−)]Tオリゴマーが、塩濃度に非依存性であり、そして全アニオン性チミジン15マーよりも、10℃(0.1M NaCl)および21℃(NaClなし)高いTを有することを示す。加えて、[Tp(O+)Tp(−)]Tオリゴマーは、[Tp(N+)Tp(−)]Tオリゴマーよりも安定なポリ(dA)との二重鎖を形成する。
【0131】
実施例9
チミジンおよび2’−O−メチルウリジン両性イオン性誘導体の
二重鎖標的へのハイブリダイゼーション
両性イオン性のチミジンおよび2’−O−メチルウリジン誘導体の二重鎖標的d(T1515)へのハイブリダイゼーションを研究し、このようなオリゴヌクレオチドの、二本鎖DNAについてのプローブとしての有用性を示した。他のオリゴマーの非存在下で、d(T1515)は、高安定性のdT.dA幹(stem)を有する自己相補的(self−complementary)構造を形成する(0.1 M NaCl中でT 62℃;1 M NaCl中でT 78℃)。すべての立体均一両性イオン性オリゴマーを、上記実施例1から6までに記載した手順、またはHornら(1996)Tetrahedron Lett.37:743〜745およびChaturvediら(1996)Nucleic Acids Res. 24:2318〜2323に記載された手順を用いて調製した。上記のように、より高いRを有する立体異性体を、本明細書中で、「最初に溶出する」異性体と表し、より低いRを有する立体異性体を、本明細書中で、「2番目に溶出する」異性体と表す。
【0132】
オリゴチミジレート誘導体の二重鎖標的d(T1515)に対する親和性は、プローブの電荷および立体化学ならびに溶液のイオン強度に強く依存する(表4)。両性イオン性異性体の1つ、d(T+T−)T(最初に溶出する)は、0.1M NaCl中でさえ、標的との比較的安定な三本鎖複合体を形成した。d(T+T−)T(最初に溶出する)とd(T1515)との等モル混合物についての融解曲線は、両性イオン性鎖の二重鎖セグメントからの解離についての遷移(T 24℃)、ならびにd(T1515)の変性についての遷移(T 68℃)を示した。そして0℃におけるd(T+T−)T(最初に溶出する)のd(T1515)での滴定について滴定液対A260のプロットは、dT.dA.dTモチーフを有する複合体のために、2つのオリゴマーの等モル濃度での遷移点を示した(データは示さず)。同じ条件下で、dT15も両性イオン性異性体オリゴマーd(T+T−)T(2番目に溶出する)もd(T1515)と顕著には相互作用しなかった。高塩溶液(0.1M NaCl)では、dT15は、d(T1515)に結合した(T 30℃)。d(T+T−)T(最初に溶出する)により形成した複合体の安定性はまた、塩濃度の増大とともに増加した(1.0M NaCl中でのT 32℃)。しかし、Tの上昇は、全アニオン性プローブの場合よりも低かった。オリゴマーd(T+T−)T(2番目に溶出する)は、1M NaCl中でさえも、d(T1515)と顕著に結合しなかった。
【0133】
ホスホジエステルオリゴヌクレオチドプローブ中の2’−O−メチルウリジンによるチミジンの置換が、プローブとで形成される三本鎖複合体の安定性を増強することが示されている(Escudeら(1992)C.R.Acad.Sci.Paris III、315:521〜525)ので、立体異性体的オリゴマー(U’+U’−)dT(最初に溶出する)および(U’+U’−)dT(2番目に溶出する)を調製して、二本鎖標的への両性イオン性オリゴヌクレオチドの結合に対するこの置換体の効果を調べた。(U’+U’−)dT(最初に溶出する)(T35℃、0.1M NaCl)は、チミジンアナログ、d(T+T−)T(最初に溶出する)(T24℃、0.1M NaCl)よりも効果的にd(T1515)に結合した。異性体オリゴマー(U’+U’−)dT(2番目に溶出する)も、その対応するホスホジエステルコントロールU’14dTも、これらの条件下ではd(T1515)と顕著に相互作用しなかった。三本鎖複合体についての結果とは対照的に、2’−O−メチルウリジン誘導体(U’+U’−)dT(最初に溶出する)は、ポリ(dA)の等価物への結合が、チミジンアナログd(T+T−)T(最初に溶出する)より効果的でないことが見出された。0M NaCl、0.1M NaCl、および1.0M NaCl溶液中での二本鎖複合体の形成についてのT値は、それぞれ、(U’+U’−)dT(最初に溶出する)について35℃、36℃、および41℃であり、そしてd(T+T−)T(最初に溶出する)については、58℃、58℃、および58℃であった(Hornら、Tetrahedron Lett.前出を参照のこと)。
【0134】
【化26】

混合dT、dCオリゴマーd(T+T−)(T+C−)T(最初に溶出する)およびd(T+T−)(T+C−)T(2番目に溶出する)のデータを表5に示す。標的d[A(GA)(TC)]は、用いた条件(pH 7.0においてT 68℃、そしてpH 6.0においてT 67℃;0.1M NaCl)下で自己会合する。dT、dCペンタデカマーは、dTまたはdU’ペンタデカマーがd(T1515)に結合する親和性よりも高い親和性で、d[A(GA)(TC)]に結合し、そして、dCを含有する三本鎖構造について予想された(Lipsett、M.N.、J.Biol.Chem. 239:1256〜1260(1964))ように、親和性は、pH 6において、pH 7の場合よりも大きかった。両性イオン性プローブの1つ、d(T+T−)(T+C−)Tb(最初に溶出する)、および標的d[A(GA)(TC)]により、pH 7の低塩溶液(0.1M NaCl)中で、三本鎖複合体の熱的安定性が形成された。T値は、対応する全ホスホジエステルプローブによって形成された複合体についてのT値よりも23℃高かった。両性イオン性オリゴヌクレオチドの高い親和性が、配列ならびにイオン電荷およびリンにおける立体化学に依存することが、実験により示された。この実験で、d(T+T−)T(最初に溶出する)は、不適合の標的、d[A(GA)(TC)]とペアになり、そしてd(T+T−)(T+C−)Tb(最初に溶出する)は、同様に、d(T1515)とペアになった。これらの系のいずれもが、安定な三本鎖複合体を与えなかった(表4および5)。
【0135】
【化27】

3つのペアの立体異性体的両性イオン性15マーをこの研究のために調製した。第1のペアはチミジンから誘導され、第2のペアは2’−O−メチルウリジンから誘導され、そして第3のペアはチミジンおよびデオキシシチジンから誘導された。それぞれの場合において、所定のオリゴマーにおけるすべてのホスホルアミデート結合は、同じ形状を有した。熱変性実験は、三本鎖複合体の形成におけるこれらの交互カチオン性−アニオン性オリゴヌクレオチドの関係が、改変されたリン酸結合のキラリティに非常に依存することを示した。
【0136】
それぞれの場合、立体異性体的なプローブの1つ(最初に溶出する異性体と表される)は、対応する全ホスホジエステルプローブが結合するよりも効果的に相補的二本鎖DNA標的に結合する。pH 7の0.1M NaCl水溶液中におけるTの増強は、dTおよびdT、dC両性イオン性15マー(d(T+T−)T(最初に溶出する)およびd(T+T−)(T+C−)T(最初に溶出する))について、20℃のオーダーであり、そして2’−O−メチルウリジン誘導体((U’+U’−)dT(最初に溶出する))について、約35℃である。1M NaCl溶液中におけるTの増強は、比較して小さいが、しかし依然とし顕著である。プローブはいくつかのdCユニットを含むが、pH 7において、d(T+T−)(T+C−)T(最初に溶出する)の親和性が比較的高いことは注目すべきである。二本鎖標的に対するこの非対称的な混合塩基プローブの強力な結合は、2つのピリミジンおよび1つのプリン鎖から誘導された他の三本鎖複合体においてと同様に、第3の鎖がプリン鎖と平行に配向する構造と一致する。
【0137】
最初に溶出する立体異性体的オリゴマーでの結果と対照的に、リンにおける配置が反対であるホスホルアミデートオリゴマー(2番目に溶出する)は、二本鎖標的に対して非常に低い親和性を示した。異性体の絶対的配置がまだ確定的に指定されてなく、そして三本鎖複合体のジオメトリーについての構造的情報が限定されているので、これらの相違の理由についての推測は早尚である。しかしながら、興味深いことに、二本鎖DNAに対するオリゴヌクレオチドプローブの結合を有利にするホスホルアミデート連結における配置は、二本鎖複合体を得るための一本鎖標的への結合を有利にするものと同じである(Hornら、Tetrahedron Lett.前出)。
【0138】
Gryaznovらは、オリゴデオキシリボヌクレオチドN3’−P5’ホスホルアミデート誘導体がDNA二重鎖に結合して異常に安定なpyr.pur.pyrおよびpur.pur.pyr複合体を与えることを示している(Gryaznovら、(1994)J.Am.Chem.Soc. 116:3143〜3144およびGryaznovら、(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92:5798〜580)。Nielsenらは、「ペプチド核酸」(PNA)が、鎖侵入により、適切なDNA配列と相互作用してPNA.pur.PNA三本鎖セグメントを与えることを見出した(Nielsenら、(1991)Science 254:1497〜1500;Chernyら、(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:1667〜1670;およびNielsenら、(1993)Nucleic Acids Res. 21:197〜200)。立体均一カチオン性ホスホルアミデート誘導体は、二本鎖DNA標的に強力に結合するオリゴヌクレオチドアナログの別のファミリーを含む。これらの3つのファミリーは、物理的および化学的性質ならびに、疑いなく、生物学的系における挙動もまた、互いに異なるので、それらは、化学者に、特定のアプリケーションのためのDNA結合剤を調製(tailoring)する豊富な機会を提供する。
【0139】
実施例10
Hornら(Tetrahedron Lett.前出)は、以前に、1M NaCl溶液におけるd(T+T−)T(2番目に溶出する)とポリ(dA)との1/1 dT/dA混合物について、260nmで得られた融解曲線の異常な特徴に言及した。融解曲線はT値で約20℃異なる2つの遷移を示した。第1の遷移は、2つのd(T+T−)T(2番目に溶出する).ポリ(dA)二重鎖セグメントの可逆的な不均化から生じて、dA.dA.dTモチーフおよびd(T+T−)T(2番目に溶出する)の鎖を有する三重鎖を与えるようであり、そして第2の遷移は、遊離のポリ(dA)およびd(T+T−)T(2番目に溶出する)を与える三重鎖の可逆的解離を示す。いくつかの証拠がこの結論を支持する。
【0140】
(i)2つの遷移が、280nmで測定した融解曲線、および260nmで測定した融解曲線において現れる(Chaturvediら、Nucleic Acids Res. 前出、を参照のこと)。280nm曲線中のより高い温度遷移は淡色(hypochromic)である。特徴的には、dT.dA二重鎖およびdT.dA.dT三重鎖の解離についての遷移は、これらの波長で濃色(hyperchromic)である。この結果は、新規構造を有する複合体の解離を示す。
【0141】
(ii)低塩溶液(0〜0.1M NaCl)中で得られた融解曲線は、塩濃度に非依存的な1つの遷移(T約22℃)を示した。塩濃度が増加するにつれて、第2の遷移が、次第により高い温度に現れた。第2の遷移についての塩依存性は、両性イオン性および2つのアニオン性鎖を含有する三本鎖複合体の解離についての予想と一致する。
【0142】
(iii)オリゴマーの溶液を80℃から0℃までゆっくり冷却することによって得られる会合曲線は、遷移が完全に可逆的であることを示した。さらなる試験として、1M NaCl中のd(T+T−)T(2番目に溶出する)とポリ(dA)との1dT/1dA混合物を80℃から25℃まで冷却し、そしてその低い方の温度で2時間保持してゆっくりと平衡化を起こさせた。その2時間の間には吸光度の変化は起こらなかった。これは、系がこの温度において安定であることを示している。次いで、温度が、低い方の遷移についての範囲を超えて18℃までさらに下げられた場合、260nmでの吸光度は急速に低下し、そして2分間以内に平衡に達した。
【0143】
(iv)1dT/2dAヌクレオチド比のd(T+T−)T(2番目に溶出する)とポリ(dA)との混合物を0℃から80℃まで加熱すると、1つの遷移(T 42℃;1M NaCl)が観察された。このことは、三本鎖複合体が過剰のd(T+T−)T(2番目に溶出する)が存在しない場合、0℃で安定であることを例示している。
【0144】
(v)これらの結果に一致して、1M NaCl(pH 7.0)中のd(T+T−)T(2番目に溶出する)のポリ(dA)での滴定は、30℃においては、0℃における場合の2倍のポリ(dA)を消費し、そしてその遷移点は、30℃での1dT/2dA複合体、および0℃での1dT/1dA複合体の形成に対応した。コントロールとして、dT15をまた同じ条件下でポリ(dA)により滴定した。これらの実験は、遷移点が、1.0M NaCl中0℃、1.0M NaCl中30℃、および0.1M NaCl中0℃での滴定について、予想通り、それぞれ2dT/1dA、1dT/1dA、および1dT/1dAに対応することを示した。また、0.1M NaCl中0℃でのd(T+T−)T(2番目に溶出する)の滴定は、1dT/1dA比を与えた。
【0145】
(vi)1.0M NaCl中で、d(T+T−)T(2番目に溶出する)と、d(CCA15CC)の1つまたは2つの等価物との混合物を加熱すると、1つの遷移(T 26℃)が見られた。この結果は、ポリ(dA)の場合の第2の遷移の出現が、ポリ(dA)がdA.dA.dT三本鎖複合体を安定化するヘアピン構造に折り畳まれ得るという事実に関連し得ることを示唆した。したがって、本発明者らは、d(T+T−)T(2番目に溶出する)と、より短く、十分に規定されたオリゴマーd(A1515)(これも、ヘアピン構造に折り畳まれ得る)とのハイブリダイゼーションを試験した。形成した複合体はいくらかより不安定であった(1.0M NaCl中で、不均化反応についてT 約17℃、そして三重鎖の解離についてT 約32℃;Chaturvediら、Nucleic Acid Res. 前出、を参照のこと)が、この標的は、実際に、ポリ(dA)の挙動を擬態した。d(A1515)単独についての加熱曲線との比較は、これらの遷移点が実際に、d(T+T−)T(2番目に溶出する)とこの標的オリゴヌクレオチドとの相互作用を反映していることを示した。ポリ(dA)の場合と同様に、遷移は可逆的であった。
【0146】
d(T+T−)T(2番目に溶出する)およびポリ(dA)からの2つの異なる複合体の形成はさらに、CDスペクトルデータ(Chaturvediら、Nucleic Acids Res.、前出を参照のこと)により支持される。5℃、1M NaCl中で、等濃度のdTおよびdAユニットを含有するd(T+T−)T(2番目に溶出する)とポリ(dA)との混合物のCDスペクトルは、0.1M NaCl中での、d(T+T−)T(2番目に溶出する)とポリ(dA)との同じ組合せのCDスペクトル、ならびに0.1M NaCl中および1M NaCl中のポリ(dT).ポリ(dA)のスペクトルと非常に類似している。255nm〜300nmの領域で観察される2つのピークおよび谷(trough)は特徴的であり(Wellsら(1970)J.Mol.Biol. 54:465〜497を参照のこと)、そしてポリ(dT).ポリ(dA)の二重鎖のサインとしての役割を果たす。これらのすべての系におけるスペクトルの類似は、塩基のスタッキングがすべての場合においてほとんど同じであることを示す。したがって、これらのデータは、5℃、1M NaCl中における、d(T+T−)T(2番目に溶出する)およびポリ(dA)から誘導された複合体についての従来の二重鎖構造を示す。d(T+T−)T(2番目に溶出する)とポリ(dA)との溶液を27℃まで加温した場合、非常に異なるスペクトルが得られた。247nmにおける谷は深くなり、259nmにおけるピークは減少し、268nmにおける谷は消失し、そして282nmにおけるピークは増大した。次いで、溶液を冷却したとき、27℃において得られたスペクトルは容易に、0℃において得られたスペクトルに戻った。これらの変化は、溶液を加熱および冷却する際に観察されるUV吸収の変化によく相関する。さらに、27℃において得られるスペクトルは、遊離d(T+T−)T(2番目に溶出する)とポリ(dA)との混合物について予想されたスペクトルとかなり異なる。本発明者らは、27℃において得られたスペクトルが、ポリ(dA)およびd(T+T−)T(2番目に溶出する)から誘導されたdA.dA.dT三本鎖複合体の存在によるとする。この指摘は、27℃の1M NaCl中における、2dA/1dT比のポリ(dA)およびd(T+T−)T(2番目に溶出する)のCDスペクトルが、27℃での、1dA/dT比のポリ(dA)およびd(T+T−)T(2番目に溶出する)について得られたスペクトルに類似しているであろうという予想、およびそれは5℃までの冷却の際に変化しないままであろうという予想に導く。これらの結果は実際に観察された。
【0147】
27℃の1M NaCl中における、オリゴマーd(T+T−)T(最初に溶出する)とポリ(dA)との1dT/1dA混合物についてのCDスペクトルは、ポリ(dT).ポリ(dA)二重鎖のスペクトルに非常に類似している。d(T+T−)T(2番目に溶出する)の場合と対照的に、dA.dA.dT三重鎖の形成についての証拠は見つからなかった。CDスペクトルは、5℃に冷却する際に実際に変化せず、ポリ(dA)の第2の等価物の添加によって顕著に変化しなかった。これらの結果は、融解曲線からのデータを支持し、d(T+T−)T(最初に溶出する)が、ポリ(dA)と二重鎖を形成するが、dA.dA.dT三重鎖は形成しないことを示している。
【0148】
驚くべき平衡のセットが、1M NaCl溶液において2番目に溶出するd(T+T−)T異性体およびポリ(dA)またはd(A1515)を含有する系について見出された。2番目に溶出するd(T+T−)T異性体およびポリ(dA)を1dT/1dAの比で含有する系については、0℃において成分は二本鎖複合体を形成し;30℃においては成分はdA.dA.dT三本鎖複合体および遊離d(T+T−)T(2番目に溶出する)の等価物として存在し;そして50℃においては複合体は完全に解離する。状態間の遷移は、比較的鋭く(T 22℃およびT 42℃)、そして平衡は、溶液を加熱および冷却する際に共に急速に確立される。d(A1515)を含有する系は、同じスキームに適合するが、dC鎖はリンカーとして作用し、2つのdA15セグメントの配向を容易にする。ホスホルアミデート結合の配置の重要性は、オリゴマーd(T+T−)T(最初に溶出する)が、d(T+T−)T(2番目に溶出する)とは対照的に、このタイプの三本鎖複合体を形成しなかったという事実によって示される。
【0149】
これらの平衡における2つの特徴は、いくつかの関連する先例がないわけではないが、通常ではない:(i)排他的にdA.dA.dT3つ組元素(triad)を含有する安定な三本鎖複合体の形成;および(ii)二本鎖複合体の熱的に誘導された不均化による三本鎖複合体の形成。多くのpur.pur.pyr三重鎖の例が報告されている(Lipsett、(1964)J.Biol.Chem. 239:1256〜1260;Annaら、(1989)Science 241:456〜459;Bealら、(1992)Nucleic Acids Res. 20:2773〜2776;およびPilchら、(1991)Biochemistry 30:6081〜6087、を代表的なケースとして参照のこと)が、記載されているdA.dA.dTの3つ組元素を含む安定な複合体はまた、dGユニットもプリン鎖の1つに含む。Pilchら、は「グアニン残基の存在は、短いpur.pur.pyr三重鎖の安定化に重大であるようである」と記載している(Pilchら、Biochemistry、前出)。しかし、リボヌクレオチドファミリーについて、Broitmanら、(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84:5120〜5124は、三本鎖複合体、ポリ(A).ポリ(A).ポリ(U)を記載している。これは、ポリ(A)の重合度が約28〜150の範囲にあるときに形成し得る。そしてLauceriら、(1996)Angew.Chem.Int.Ed.Engl. 35:215〜216は、低濃度のカチオン性ポルフィリンが、高分子量のポリ(A)(>400bp)からのポリ(A).ポリ(A).ポリ(U)三本鎖複合体の形成を誘導することを示している。熱的に誘導された不均化に関して、pyr.pur.pyr複合体を与える例が、リボヌクレオチド[ポリ(A).ポリ(U)](Milesら、(1964)Biochem.Biophys.Res.Comm.14:129〜136;Stevensら(1964)Biopolymers 2:293〜314;およびBroitmanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、前出)、およびデオキシリボヌクレオチドポリマー[ポリ(dTdC).ポリ(dGdA)](Leeら、(1979)Nucleic Acids Res. 6:3073〜3091;Leeら、(1984)Nucleic Acids Res. 12:6603〜6613;およびHampelら、(1991)Biochemistry 30:4455〜4459)の両方について報告されている。
【0150】
オリゴヌクレオチドd(T+T−)T(2番目に溶出する)を含むdA.dA.dT複合体の異常な安定性、およびその形成に導く不均化反応は、プローブ中の立体均一側鎖の存在を反映しなければならないようである。このキラリティーを有する両性イオン性オリゴマーの性質は、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションに基づく新規な自己アセンブリー系を設計するのに有用であることを証明し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載されるようなカチオン性オリゴヌクレオチド。

【公開番号】特開2008−13571(P2008−13571A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208670(P2007−208670)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【分割の表示】特願平9−508693の分割
【原出願日】平成8年8月1日(1996.8.1)
【出願人】(500095333)バイエル コーポレイション (8)
【出願人】(507270621)ノースウェスタン ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】