説明

カメラ用羽根駆動装置

【課題】シャッタ装置などの地板に対してモータを確実に取り付けることを可能にしたカメラ用羽根駆動装置を提供すること。
【解決手段】固定子枠を構成している第1固定子枠5と第2固定子枠6とは、永久磁石回転子4を内部に軸受けし、外側にはそれらの軸受部を囲むようにしてコイル7を巻回しており、その外側にヨーク9を嵌装させている。そして、第2固定子枠6にはテーパ面6dが形成されている。また、ヨーク9は、二つの取付片9b,9cを有していて、それらを内側径方向へ押して撓ませておき、地板1に形成された孔1f,1gに挿入した後、その押圧力を解くと、取付片9b,9cは、自己の弾性による復元力によって原形に復し、先端のフック部9b−3,9c−2を、孔1f,1gの縁に係合させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタ羽根,絞り羽根,フィルタ羽根などの羽根部材をモータで駆動するようにしたカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話を含む情報端末装置用のカメラや、コンパクトカメラに採用されている小型のシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置などにおいては、羽根部材を、モータの回転子と一体の出力ピンによって直接又は間接に往復作動させるように構成したものが多い。そして、シャッタ装置の場合は、シャッタ羽根を2枚とし、それらを相反する方向へ往復作動させるようにしたものが多いが、携帯電話用のカメラのようにレンズ口径の極めて小さいカメラに採用されるシャッタ装置の場合には、シャッタ羽根を1枚としたものもある。そして、シャッタ羽根を2枚としたものの場合には、シャッタ羽根を回転させるようにしたものと、直線的に作動させるようにしたものとがある。また、それらのシャッタ装置の構成は、撮影レンズのバリア装置とすることが可能であることも知られている。
【0003】
また、小型カメラに採用されている絞り装置の場合は、最近ではもっぱら光量制御の目的だけで備えられていることと、低コスト化の要求が極めて大きいことから、従来のように、複数枚の絞り羽根を同時に同方向へ回転させて、略円形をした複数の絞り開口を規制できるようにしたものが少なくなってきており、その代わりに、ビデオカメラ用としては、2枚の絞り羽根を相反する方向へ直線的に作動させるものが多くなり、スチルカメラ用としては、小さい円形の開口部を有した絞り羽根を回転させることによって、その開口部を露光開口に進退させるようにしたものが多くなっている。また、小さい円形の開口部を有した絞り羽根を直線的に作動させるようにしたものも知られている。
【0004】
更に、フィルタ装置の場合は、上記の円形の開口部を有する絞り羽根と類似の形状をした部材(但し、その開口部は、露光開口と略同じ大きさの場合もある)に対し、その開口部の近傍位置にその開口部を覆うようにしてNDフィルタ板を取り付け、フィルタ羽根としたものが多くなっている。しかしながら、中には、そのような円形の開口部を有する部材を2枚用意し、それらの間に、NDフィルタ板のみで製作した部材を重合させ、3枚の部材を、あたかも1枚の羽根のようにして、同時に往復作動させるようにしたものも考えられているし、NDフィルタ板のみで1枚のフィルタ羽根を製作するようにすることも知られている。
【0005】
そして、このような装置のうち、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置は、単独でユニット化される場合もあるが、それらの二つ以上を一つのユニットとして構成される場合もある。
【0006】
また、上記した各羽根部材は、最近では、モータによって往復作動をさせられるようになってきたが、それらのモータの一つとして、ムービングマグネット型モータなどといわれている電流制御式のモータが知られている。このモータは、ステップモータよりも低コストで小型化し易いことが特徴であり、径方向に着磁(2極の場合が多い)された永久磁石を有する回転子が、その回転軸と平行になるように延伸させた出力ピン(駆動ピンともいう)を一つ又は二つ有しており、固定子コイルに対する通電方向に対応した方向へ所定の回転角度範囲内でだけ回転できるように構成されている。そして、この種のモータの回転子は、出力ピンが、略円柱形をした回転子の本体部と共に永久磁石製とされる場合もあるし、その本体部に対して一体成形された合成樹脂製とされる場合もある。
【0007】
他方、この種のモータの固定子としては、種々の構成が知られているが、それらの中の典型的な構成として、二つの固定子枠部材で構成した収容室内で回転子を軸受けし、それらの固定子枠の外側には、二つの軸受部を囲むようにしてコイルを巻回し、さらにその外側に、筒状をしたヨークを嵌装させるようにしたものが古くから知られている。そして、そのヨークの形状を変形させることによって、専用の取付部材を必要とすることなく、モータユニットを、上記のような各装置の地板に対して着脱できるようにした構成が、下記の特許文献1に記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開2003−215653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、固定子が上記のような典型的な構成をした電流制御式のモータで、上記のような各種の羽根部材を往復作動させるようにしたカメラ用羽根駆動装置に関するものである。ところで、特許文献1に記載されている構成は、地板に対するモータの取り付けを、ヨークに形成された取付片(折曲片)だけで行えるようにしたものであるため、従来のように、ビスを用いて取り付ける場合より低コスト化が可能となり、極めて有効なものである。ところが、最近のこの種の装置に対しても小型化の要求が一段と大きくなってきており、モータ自体の小型化はもとより、地板の平面形状や厚さを出来るだけ小さくせざるを得ない状況にある。
【0010】
そのため、そのような観点から見てみると、特許文献1に記載の構成では、モータを地板に取り付けるに際して、ヨークを回転させなければならないことから、幾つかの問題点がある。即ち、モータの場合には、小型化が要求されているからといって、駆動力を落としてもよいということではない。そのため、モータの小型化の一環として、固定子枠の外形を小さくすると、ヨークを回転させるときに、ヨークが、固定子枠の外側の凹溝に巻回されたコイルに接触し易くなって、コイルを破損させてしまう可能性があり、取付作業を慎重に行わざるを得なくなるという問題点がある。また、特許文献1に記載の構成は、モータの着脱時に、取付片(折曲片)が所定の回転角度だけ移動し得るようにする必要があることから、地板には、着脱時以外には不必要な分も含めて細長いスリットや挿入孔を形成している。そのため、地板を薄くしようとすると、取付部に所定の強度が得られず、取付時に変形させて、モータを所定の姿勢に取り付けにくくしてしまうという問題点がある。
【0011】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、シャッタ装置や絞り装置などの地板に対してムービングマグネット型モータを簡単に着脱でき、しかも、取付部のスペース効率が優れ且つ低コストで製作することができると共に、装置を小型化するうえにおいても極めて有効なモータの取付構成をしたカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、二つの枠部材によって筒状の両端に閉塞壁を設けた収容室を構成し該閉塞壁には各々軸受部を設けていると共に外面には該二つの軸受部を囲むように一連の凹溝を形成した固定子枠と、前記凹溝内に巻回されたコイルと、永久磁石を有していて前記収容室内で前記軸受部に軸受けされており前記コイルへの通電方向に対応した方向へ所定の回転角度範囲で往復回転させられる回転子と、前記回転子と一体であり前記収容室から外部に張り出された少なくとも一つの出力ピンと、筒状部と該筒状部から張り出していて該筒状部の径方向へ可撓性を有する複数の取付片とからなっており該筒状部は前記固定子枠の外周面に嵌装され該取付片は前記回転軸と平行に延伸した先端部に外側径方向に折り曲げたフック部を有しているヨークと、撮影光路用の開口部を有しているほか前記出力ピンを作動可能に貫通させている長孔と前記取付片の先端部を個々に貫通させている複数の取付孔とを有している地板と、を備えており、前記ヨークは、前記取付片を内側径方向へ撓ませて前記フック部を取付孔に挿入した後、該取付片の復元力を利用して該フック部を前記地板に係合させているようにする。
【0013】
そして、その場合、前記固定子枠と前記地板は、それらの一方に複数の位置決めピンが設けられ、他方には該位置決めピンの嵌合する複数の位置決め孔が設けられているようにしてもよいし、前記取付孔のうち少なくとも二つと前記取付片との係合だけによって、前記地板に対する前記固定子枠の取り付け状態が規制されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上記のような構成をしたモータを地板に取り付けるに際して、特許文献1に記載されている取付構成のように、固定子枠に対してヨークを回転させないので、固定子枠の外側に巻回されているコイルを損傷させる恐れがなく、取付作業が極めて簡単に行えるようになる。また、その取り付けのために地板に形成される取付孔は、最小限ヨークの取付片を地板の垂直方向から挿入することができるだけの大きさでよいため、地板の厚さを薄くしても、取付部の強度を十分維持することが可能である。しかも、特許文献1に記載の取付構成同様に、取付部のスペース効率が優れ且つ低コストで製作することができるという特徴も有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態を、図示した二つの実施例によって説明する。それらの実施例は、絞り装置とシャッタ装置とを一つのユニットとして構成したものであって、一般には絞り付きシャッタなどと言われているものである。しかしながら、絞り羽根やシャッタ羽根は周知の形状をしていて、それらの羽根と夫々のモータの出力ピン(駆動ピン)との連結構成も周知の構成をしたものである。そのため、図面においてはそれらの詳細は示されておらず、また、それらについての説明も簡単に行うだけにする。尚、図1〜図4は実施例1を説明するためのものであって、図5は実施例2を説明するためのものである。
【実施例1】
【0016】
図1〜図4を用いて、実施例1を説明する。そして、図1はカメラに組み込まれたとき被写体側から見た平面図であり、図2は図1のA―A線断面図であり、図3は図1及び図2に示されているヨークの斜視図であり、図4は地板にモータを取り付ける直前の状態を示した断面図である。本実施例の絞り付きシャッタは、図2から分かるように、被写体側から地板1,中間板2,補助地板3が所定の間隔で配置されていて、中間板2と補助地板3は、図示していない複数のねじによって、補助地板3側から地板1に取り付けられている。そして、地板1と中間板2の間をシャッタ羽根の羽根室とし、中間板2と補助地板3の間を絞り羽根の羽根室としている。しかしながら、周知のように、地板1と補助地板3との間を中間板2で仕切らず、地板1と補助地板3で構成された一つの羽根室内に、シャッタ羽根と絞り羽根の両方を配置するようにしてもかまわない。
【0017】
中間板2と補助地板3は、その平面形状が明示されていないが、図1に示されている地板1の平面形状と略同じ形状をしている。そして、地板1,中間板2,補助地板3は、それらの略中央部に、円形をした開口部を同心上に形成しているが、中間板2に形成されている開口部の直径が一番小さいため、図1においては地板1の開口部1aと中間板2の開口部2aだけが示されていて、補助地板3の開口部は示されていない。従って、本実施例においては、開口部2aが露光開口であって、被写体光路の最大口径を規制していることになる。
【0018】
地板1は合成樹脂製であって、被写体側の面には、カメラ本体への取付けに必要な三つの取付孔1b,1b,1bが設けられている。また、開口部1aを囲むようにして環状の凹部1cが形成されていて、図示していないレンズを地板1側に寄せて配置することができるようになっている。更に、地板1の被写体側には、シャッタ羽根駆動用のモータM1と絞り羽根駆動用のモータM2が取り付けられている。それらのモータM1,M2は、ムービングマグネット型モータなどと言われている周知の電流制御式のモータであって、本実施例の場合には全く同じ構成をしており、地板1に対する取付け方も同じである。そのため、以下においては、それらを代表して、シャッタ羽根駆動用のモータM1について詳細に説明する。
【0019】
先ず、回転子4は、径方向に着磁された2極の永久磁石を有しているが、本実施例の場合には、図2に明示されているように、回転軸4aと、その回転軸4aの径方向位置において回転軸4aと平行に延伸するように形成された出力ピン4bとが合成樹脂製となっていて、アウトサート加工によって円筒状の永久磁石と一体成形されている。そして、出力ピン4bは、上記の2極の境界線の延長線上に配置されている。尚、この種のモータの回転子としては、出力ピン4bも含めて全て永久磁石製としたものが知られているが、本発明においては、回転子4をそのように構成することを妨げない。
【0020】
本実施例の固定子枠は、合成樹脂製の第1固定子枠5と第2固定子枠6とによって、軸方向の両端を閉塞された円筒状に構成されており、内部に、回転子4を軸受けしている。また、周知のように、第1固定子枠5と第2固定子枠6の外周面には、凹溝5a,6aが形成されており、それらの凹溝5a,6aをつなぐことによって、二つの軸受部を囲むようにした一連の環状凹溝が形成されている。そして、その環状の凹溝の中には、コイル7が巻回されている。また、第1固定子枠5の周面には窓5bが形成されており、第2固定子枠6には、回転軸4aを中心にした円弧状の長孔6bが形成されていて、回転子4が所定の回転角度内で回転し得るようになっている。更に、地板1,中間板2、補助地板3にも、それぞれ大きさは異なるが、長孔6bと相似形をした長孔1d,2b,3aが形成されていて、それらに上記の出力ピン4bが貫通されている。
【0021】
また、第2固定子枠6は、下面に二つの位置決めピン6c,6cを有していて、地板1に設けられている二つの位置決め孔1e,1eに嵌合させているが、位置決めピン6c,6cに相当する位置決めピンを地板1に設け、位置決め孔1e,1eに相当する位置決め孔を第2固定子枠6に設けるようにしても構わない。そして、第2固定子枠6の下方部に形成されている外周面には、平面形状をしたテーパ面6dが形成されている。尚、本実施例の第1固定子枠5には磁性体棒8が埋設されているが、周知のように、この磁性体棒8は、コイル7の非通電時において、回転子4の停止位置を磁気的に保持するためのものである。そして、その数は、図示されているように一つに限るものではない。
【0022】
本実施例のヨーク9は、全体として円筒形をしており、固定子枠にかぶせられている。このヨーク9には、図2における上端面に環状の縁部9aが形成されており、上記の位置決めピン6cと位置決め孔1eの嵌合が外れないように、固定子枠を上方から押え込んでいる。また、図2においてヨーク9の下側、即ち円筒形の開放端側には、その円筒形の中心軸を間にして、弾性を有している板状の二つの取付片9b,9cが形成されている。そして、取付片9bは、折曲部9b−1,垂直部9b−2,フック部9b−3からなっており、取付片9cは、垂直部9c−1,フック部9c−2からなっている。他方、地板1には、方形をした二つの孔1f,1gが形成されている。そして、孔1fには、取付片9bの垂直部9b−2が有している弾性の復元力を利用して、フック部9b−3が掛けられており、孔1gには、取付片9cの垂直部9c−1が有している弾性の復元力を利用して、フック部9c−2が掛けられている。
【0023】
ここで、地板1に対するモータM1の取付け方を説明する。上記の説明からも分かるように、本発明の固定子枠を構成している第1固定子枠5と第2固定子枠6とは、回転子4を内部に軸受けした状態で、凹溝5a,6aにコイル7を巻回することにより、予め、しっかりと一体化された状態に組まれている。また、ヨーク9は、そのようにして構成されている固定子枠に対して嵌装されているが、本実施例の場合には、固定子枠に対して必ずしも接着剤等を用いて一体化されていることを要しない。
【0024】
そこで、先ず、固定子枠に対してヨーク9を嵌装させた状態にしておき、取付片9b,9cの垂直部9b−2,9c−1を、筒状部の中心軸に向けて、即ち筒状部の内側径方向へ向けて押す。このとき、取付片9bの垂直部9b−2は、第2固定子枠6に接触していなかったので、上記のように押されたことによって、内側径方向へ撓まされる。他方、取付片9cの垂直部9c−2は、その一部だけが第2固定子枠6の外周面に接触しているので、上記のように押されたことによって、非接触部が内側径方向へ撓まされ、テーパ面6dに接触することになる。そして、図4は、このときの状態を示したものである。
【0025】
このようにヨーク9を変形させた状態にしておいて、先ず、フック部9b−3,9c−2を、孔1f,1gに挿入してゆき、その過程で、第2固定子枠6の位置決めピン6c,6cを、地板1の位置決め枠1e,1eに挿入して行く。そして、位置決めピン6c,6cが位置決め枠1e,1eに挿入し終わったとき、即ち第2固定枠6の底面が地板1の上面に接触したとき、垂直部9b−2,9c−1に対する押圧力を解く。それにより、垂直部9b−2,9c−1は、自己の復元力によって原形に復帰し、羽根室側においてフック部9b−3,9c−2を外側径方向へ移動させ、孔1f,1gの縁に係合させる。このようにしてモータM1の取り付けられた状態が、図1及び図2に示された状態である。
【0026】
従って、これまで説明した手順を逆に行えば、モータM1を地板1から取り外せることになる。要するに、本実施例の場合には、ヨーク9を嵌装した状態にしておき、地板1の面に対して単に垂直方向へ移動させるだけで、モータM1を地板1に対して着脱することが可能になっている。そのため、組み付け過程においては、第1固定子枠5と第2固定子枠6とからなる固定子枠に対してヨーク9の相対位置を変えるようなことがないので、コイル7を損傷させることがない。尚、本実施例の場合には、ヨーク9に、二つの取付片9b,9cを設けているが、必要によっては取付片を三つ以上設けるようにしても差し支えない。また、本実施例の場合には、第2固定子枠6は、垂直部9c−1に対向する面にだけテーパ面6dを形成しているが、他方の垂直部9b−2に対向する面にも形成することを妨げない。更に、本実施例の場合には、ヨーク9に縁部9aを形成しているが、接着剤等を用いて第1固定子枠5と第2固定子枠6の少なくとも一方にヨーク9を一体化するようにした場合は、この縁部9aは必ずしも必要ではない。
【0027】
そこで、次に、二つの羽根室内の構成を説明する。地板1と中間板2の間には,2枚のシャッタ羽根10,11が配置されている。そして、その形状と取付構成は明示されていないが、周知の構成をしている。即ち、シャッタ羽根10,11は、地板1に設けられた二つの軸に対して個々に回転可能に取り付けられていて、それらに形成されている長孔の両方に、上記の出力ピン4bを嵌合させている。従って、回転子4が図1において時計方向へ回転すると、シャッタ羽根10,11は開口部2aを開いてゆき、その後、回転子4が反時計方向へ回転すると、開口部2aを閉じるように構成されている。
【0028】
また、中間板2と補助地板3の間には,1枚の絞り羽根12が配置されているが、この絞り羽根12の形状と取付構成も明示されていない。しかし、それらは、周知のものと同じである。即ち、この絞り羽根12には、開口部2aよりも直径の小さな絞り開口部と、モータM2の出力ピンを嵌合させる孔が形成されていて、地板1に設けられた軸に回転可能に取り付けられている。従って、モータM2の回転子が、図1において反時計方向へ回転すると、絞り羽根12も反時計方向へ回転し、絞り開口部を開口部2aに挿入し、該回転子が時計方向へ回転すると、絞り羽根12は開口部2aから退くようになっている。
【実施例2】
【0029】
次に、主に、図5を用いて実施例2を説明するが、この図5は、実施例1の説明に用いた図4と同様に、地板に対してモータを取り付ける直前の状態を示した断面図である。また、本実施例の構成は、実施例1の構成と殆ど同じであるため、図5においては、図4に示されている部材,部位と同じものに、同じ符号を付けてある。そのため、以下においては、それらについての説明を省略し、実施例1の態様と異なる点だけを説明することにする。
【0030】
本実施例は、図4と図5を比較してみれば分かるように、実施例1のように、地板1に位置決め孔1e,1eを形成しておらず、第2固定子枠6には位置決めピン6c,6cを設けていない。また、実施例1の場合には、地板1の方形をした孔1f,1gは、図1から分かるように、ヨーク9の取付片9b,9cの垂直部9b−2,9c−1の面と平行になる辺の寸法が、取付片9b,9cの幅寸法よりもかなり大きく設定されているが、本実施例の場合には、殆ど同じ寸法に設定されていて、取付片9b,9cを貫通させ得る最小限の寸法となっている。更に、ヨーク9は、第1固定子枠5と第2固定子枠6の少なくとも一方に接着剤等で取り付けられている。
【0031】
上記のように、実施例1の場合には、位置決め孔1e,1eと位置決めピン6c,6cとの嵌合により、モータM1が、地板1の面と平行な方向へは移動できないように取り付けられていた。ところが、本実施例の場合には、そのような位置決め孔1e,1eと位置決めピン6c,6cを設けていないため、それに代わって、孔1f,1gの形状によって、そのような移動を制限し、モータM1の取付状態を規制するようにしている。即ち、本実施例の場合、モータM1は、図1において、取付片9b,9cの垂直部9b−2,9c−1の面と平行な辺の方向への移動は、その辺によって阻止され、その辺と平行な方向への移動は、その辺と直交する辺によって阻止されるようになっている。尚、本実施例の場合にも、ヨーク9に取付片を三つ以上形成し、それらの先端のフック部を係合させる孔を地板1に三つ以上形成するようにしてもよいが、その場合には、それらの全ての係合関係を本実施例のようにする必要はなく、少なくとも二つの係合関係を本実施例のようにしてあれば、そのほかは、実施例1の場合と同じであっても構わない。
【0032】
このように、本実施例の構成によれば、実施例1のように、位置決め孔1e,1eと位置決めピン6c,6cを設けなくてもよいという利点がある。尚、地板1に対するモータM1の着脱作業は、実施例1の場合に準じて行われるので、その説明を省略する。また、実施例1の固有の構成についての説明以外は、実施例1で説明したことが本実施例にも適用される。更に、本実施例の場合には、上記したように、ヨーク9は、第1固定子枠5と第2固定子枠6の少なくとも一方に接着剤で取り付けられている。そのため、ヨーク9に形成されている縁部9aは必ずしも必要とするものではない。更にまた、実施例1のように、ヨーク9を、第1固定子枠5と第2固定子枠6とからなる固定子枠に対して、必ずしも接着する必要はなく、両者の相対位置関係がずれなければ、圧入状態で一体化しておくようにしてもよい。
【0033】
尚、上記の各実施例は、いずれも、絞り装置とシャッタ装置を一つのユニットとして構成したカメラ用羽根駆動装置の場合で説明したが、本発明は、そのような装置に限定されず、単体のシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,バリア装置として構成したものにも適用されるし、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置の二つ以上をユニット化したものにも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1の平面図である。
【図2】図1のA―A線断面図である。
【図3】図1及び図2に示されているヨークの斜視図である。
【図4】地板にモータを取り付ける直前の状態を示した実施例1の断面図である。
【図5】地板にモータを取り付ける直前の状態を示した実施例2の断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 地板
1a,2a 開口部
1b 取付孔
1c 凹部
1d,2b,3a,6b 長孔
1e 位置決め孔
1f,1g 孔
2 中間板
3 補助地板
M1,M2 モータ
4 回転子
4a 回転軸
4b 出力ピン
5 第1固定子枠
5a,6a 凹溝
5b 窓
6 第2固定子枠
6c 位置決めピン
6d テーパ面
7 コイル
8 磁性体棒
9 ヨーク
9a 縁部
9b,9c 取付片
9b−1 折曲部
9b−2,9c−1 垂直部
9b−3,9c−2 フック部
10,11 シャッタ羽根
12 絞り羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの枠部材によって筒状の両端に閉塞壁を設けた収容室を構成し該閉塞壁には各々軸受部を設けていると共に外面には該二つの軸受部を囲むように一連の凹溝を形成した固定子枠と、前記凹溝内に巻回されたコイルと、永久磁石を有していて前記収容室内で前記軸受部に軸受けされており前記コイルへの通電方向に対応した方向へ所定の回転角度範囲で往復回転させられる回転子と、前記回転子と一体であり前記収容室から外部に張り出された少なくとも一つの出力ピンと、筒状部と該筒状部から張り出していて該筒状部の径方向へ可撓性を有する複数の取付片とからなっており該筒状部は前記固定子枠の外周面に嵌装され該取付片は前記回転軸と平行に延伸した先端部に外側径方向に折り曲げたフック部を有しているヨークと、撮影光路用の開口部を有しているほか前記出力ピンを作動可能に貫通させている長孔と前記取付片の先端部を個々に貫通させている複数の取付孔とを有している地板と、を備えており、前記ヨークは、前記取付片を内側径方向へ撓ませて前記フック部を取付孔に挿入した後、該取付片の復元力を利用して該フック部を前記地板に係合させていることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記固定子枠と前記地板は、それらの一方に複数の位置決めピンが設けられ、他方には該位置決めピンの嵌合する複数の位置決め孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記取付孔のうち少なくとも二つと前記取付片との係合だけによって、前記地板に対する前記固定子枠の取り付け状態が規制されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−308677(P2006−308677A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128276(P2005−128276)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】