説明

カメラ等光学機器の雲台

【課題】
カメラ等光学機器等のレンズの倍率を大きくした場合でも、容易に目標物をカメラ等光学機器のレンズの視野内にとらえることが出来、シャッターチャンスを逃すことのない、或いは目標物を見失うことのない雲台を提供することを課題とする。
【解決手段】
カメラ等光学機器を搭載し、上下方向、水平方向にカメラ等光学機器のレンズの向きを自在に回動可能なカメラ等光学機器の雲台において、上下にカメラ等光学機器を搭載可能とし、上側カメラと下側カメラの光軸調整が可能なカメラ等光学機器の雲台を提供する。これにより、上側に低倍率のカメラ等光学機器、下側に高倍率のカメラ等光学機器を搭載し2台の光軸調整をすれば、低倍率のカメラ等光学機器で目標物をとらえると同時に、高倍率のカメラ等光学機器でも目標物をとらえることが出来、シャッターチャンスを逃すことのない、或いは目標物を見失うことのない雲台を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ等光学機器を搭載して、写真撮影、自然観察等が可能なカメラ等光学機器の雲台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラ等光学機器を使用して、写真撮影や自然観察等を行う際、カメラ等光学機器を搭載する雲台が使用される。雲台は、上下、左右に回動可能で、雲台を使用することにより、自在にカメラ等光学機器を目標物に対向させることが出来るとともに、カメラ等光学機器のブレを無くし、安定した状態で写真撮影や自然観察等が出来る。ところで、カメラ等光学機器は、レンズの倍率を大きくすることにより、遠くの目標物の写真撮影や観察が可能となるが、倍率を大きくすればするほど、目標物をカメラ等光学機器の視野内にとらえることが難しくなり、視野内にとらえるために時間がかかってしまう。特に、鳥などの動いている目標物の写真撮影や観察はシャッターチャンスを逃したり、観察出来なかったりしてしまうことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記の問題点を解決するためのもので、カメラ等光学機器等のレンズの倍率を大きくした場合でも、容易に目標物をカメラ等光学機器の視野内にとらえることを可能とする雲台を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、本発明によるカメラ等光学機器の雲台は、上下に2台のカメラ等光学機器を搭載するとともに、前記2台のカメラ等光学機器の光軸調整をする機構を有する。前記2台のカメラ等光学機器を搭載するため、第一のカメラ等光学機器を搭載するU字状の第一の搭載アームと、第二のカメラ等光学機器を搭載するU字状の第二の搭載アームと、前記第一の搭載アームと前記第二の搭載アームを結合する第一の締付ネジと第二の締付ネジと、を具備している。
【0005】
前記第一の搭載アームには前記第一の締付ネジと前記第二の締付ネジのためのタップ穴と、前記第二の搭載アームには前記第一の締付ネジと前記第二の締付ネジが挿通する複数の孔と、を具備している。これにより、前記第一の搭載アームと前記第二の搭載アームの間隔を変えることが出来る。
【0006】
前記第二の締付ネジが挿通する複数の前記孔は横長の長円孔であり、前記長円孔の側面に貫通する押しネジを具備している。これにより、前記第一の搭載アームに対する前記第二の搭載アームの傾きを調整することが出来、前記2台のカメラ等光学機器の垂直方向の光軸調整をすることができる。
【0007】
前記第一の搭載アームには第一のカメラを取付けるための第一の取付台と、前記第二の搭載アームには第二のカメラを取付けるための第二の取付台とを有し、前記第一、第二の搭載アームの両方あるいは何れか一方には、ピンと該ピンを中心とする円弧状の長円孔を具備し、前記第一の取付台と第二の取付台の両方あるいは何れか一方が、前記ピンを中心として位置調整されてネジ止めされる。これにより、前記2台のカメラ等光学機器の水平方向の光軸調整をすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカメラ等光学機器の雲台は、カメラ等光学機器2台を搭載するとともに、2台の光軸合わせが出来る。したがって、1台は低倍率、もう1台は高倍率のカメラ等光学機器を搭載することにより、カメラの場合であれば、先ず低倍率のカメラで目標物をとらえ、高倍率カメラのシャッターを押せば、高倍率のカメラのファインダをのぞくことなしに高倍率撮影が可能となる。したがって、シャッターチャンスを逃すことなく写真撮影が出来る。また、望遠鏡などの光学機器の場合であれば、先ず低倍率の望遠鏡などの光学機器で目標物をとらえ、その後高倍率の望遠鏡などの光学機器で目標物を追跡し観察することが出来る。したがって、目標物を見失うことなく、拡大して目標物の観察が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(実施例)本発明は、カメラ、望遠鏡、双眼鏡等の光学機器に幅広く適用可能であるが、以下カメラを例にとって説明する。図1は本発明の雲台に2台のカメラを搭載した状態を示しており、この場合、上側に低倍率カメラ、下側に高倍率カメラを搭載している。
【0010】
支持台1が回転軸2に取付けられ、回転軸2は図示しない三脚に取付けられている。この回転軸1から上の部分が、雲台といわれているものである。水準器3は、前記三脚により調整される雲台の水平性を確認するためのものである。
【0011】
第一の搭載アーム4は、下側のカメラを搭載支持するためのもので、U字状になっていてその下部中央にカメラが取付けられている。第二の搭載アーム5は、上側のカメラを搭載支持するためのもので、逆U字状になっていて、その上部中央にカメラが取付けられている。
【0012】
図2は、本発明の雲台の俯瞰図であり、図3(a)は雲台の正面図、図3(b)はA、A’の断面図である。以下図2、図3を用いて説明する。下側カメラ取付台6は、図示しないネジにより第一の搭載アーム4に取付けられており、下側カメラ取付台6の溝部に下側カメラの取付部を勘合させ、ネジ7にて下側カメラを固定させる。下側カメラ取付台6の拡大図を図4に示す。上側カメラ取付台8は、第二の搭載アーム5に二本のネジ9により取付けられており、上側カメラ取付台8の溝部に上側カメラの取付部を勘合させ、ネジ10にて上側カメラを固定させる。上側カメラ取付台8の拡大図を図5に示す。
【0013】
第二の搭載アーム5は、締付ネジ11および締付ネジ12で第一の搭載アーム4に固定される。後述するように調整用押しネジ13で締付ネジ12の側面を押すことにより、締付ネジ11を中心として、第一の搭載アーム4と第二の搭載アーム5の相対的傾きが調整される。
【0014】
また、第二の搭載アーム5には、締付ネジ11の丸孔18、締付ネジ12用の長円孔19が複数あけられており、カメラの大きさに応じて第一の搭載アーム4と第二の搭載アーム5の間隔を変更可能にしている。
【0015】
第一の搭載アーム4は、ネジ14により支持台1に取付けられている。支持台1の、ネジ14に対応する部分には、図6に示すようにベアリング15が埋め込まれ、ネジ14はベアリングの内輪を貫通している。これにより、ネジ14を締めてない状態のときは、第一の搭載アーム4と第二の搭載アーム5の組立体はベアリング15を中心として支持台1に対して垂直方向に回動可能となっている。ネジ14を締め付けると、支持台1と第一の搭載アーム4が締め付けられ、第一の搭載アーム4と第二の搭載アーム5の組立体は支持台1に固定される。一方、回転軸2は図示しないベアリングを内蔵しており、雲台を水平方向に回動可能にしている。回転軸2には図示しないネジがもうけられており、このネジを締め付けることにより回転軸2はロックされる。すなわち、本発明の雲台は、ベアリングを内蔵した回転軸2により水平方向に回動し、ベアリング15により垂直方向に回動することにより、自在にカメラの方向を決めることが出来るとともに、任意の方向でカメラを固定できる。
【0016】
次に、上側カメラの光軸と、下側カメラの光軸を調整する機構について説明する。先ず、水平方向の光軸調整機構について説明する。図7は水平方向の光軸の調整機構である。実際には上下のカメラを搭載して、ファインダを覗いてする作業であるが、機構部を見やすくするため、カメラは省いてある。また、本実施例では、水平方向の光軸調整は上側カメラ取付台8の位置調整により行っているので、図7では上側カメラ取付台8の近傍だけを示している。
【0017】
第二の搭載アーム5には、ピン16を中心とする円弧状の長円孔17がピン16の両側にあけられており、この円弧状の長円孔17にネジ9が挿通され、上側カメラ取付台8をネジ止めする。光軸調整の時はネジ9を仮締めの状態にし、先ず下側カメラのファインダを覗き、ある目標物に対し、図1、図2の回転軸2によりファインダの水平方向の中央位置をあわせ、回転軸2を図示しないネジによりロックさせる。その後上側カメラのファインダを覗きながら、上側カメラ取付台8をピン16を中心にして少しずつ回し、下側カメラで合わせた目標物に上側カメラのファインダの水平方向の中央位置を合わせる。以上の作業により、2つのカメラの水平方向の光軸を合わせることができる。
【0018】
図3は、垂直方向の光軸の調整機構を説明する図である。水平方向の光軸調整と同様に実際には上下のカメラを搭載して、ファインダを覗いてする作業であるが、機構部を見やすくするため、カメラは省いてある。図3(a)は雲台の正面図、図3(b)はA、A’の断面図を示している。
【0019】
先ず、締付ネジ11、締付ネジ12ともに仮締めにしておく。調整用押しネジ13がない状態では、第二の搭載アーム5は締付ネジ11を中心として、締付ネジ12用の長円孔19の範囲で第一の搭載アーム4に対して図3(b)の二点鎖線のように動くが、動く量がコントロールできない。調整用押しネジ13で、締付ネジ12の側面を押すことにより、第二の搭載アーム5は第一の搭載第4に対して傾き、その量は調整用押しネジ13の回転量により微調整できる。調整前の初期段階では、調整用押しネジ13を反時計方向に回し、調整用押しネジ13の先端を長円孔19の左側面に持ってきておき、第二の搭載アーム5を図3(b)の二点鎖線の方向に寄せておく。その後先ず、下側カメラのファインダを覗き、ある目標物に下側カメラのファインダの垂直方向の中心位置を合わせ、ネジ14を締め付け固定する。次に、上側カメラのファインダを覗きながら、調整用押しネジ13を時計方向に回して締付ネジ12の側面を押し、第一の搭載アーム4に対して第二の搭載アーム5を締付ネジ11を中心として回転させながら、目標物にファインダの垂直方向の中心位置をあわせ、締付ネジ11、締付ネジ12を本締めする。以上により、上下2つのカメラの光軸を合わせることができる。なお、本実施例では水平方向の光軸調整を最初に行ったが、垂直方向の光軸調整を先にしてもかまわない。
【0020】
上記のように、低倍率の上側カメラの光軸と高倍率の下側カメラの光軸を一致させることにより、低倍率の上側カメラで目標物に合わせれば、高倍率の下側カメラは自動的に目標物に合うことになり、下側カメラの画像は上側カメラの画像と同じ目標物を拡大撮影することができる。
【0021】
なお、本実施例では、水平方向の光軸調整を上側カメラ取付台8で行っているが、下側カメラ取付台6でも同様の機構で水平方向の光軸調整が可能である。あるいは、上側カメラ取付台8、下側カメラ取付台6の両方で水平方向の光軸調整をできるようにしてもよい。また、本実施例では、ピン16を中心とする長円孔17を2個設けているが、片側1個でもかまわない。
【0022】
本実施例では、垂直方向の光軸調整を締付ネジ12側で行っているが、締付ネジ11側でも本実施例と同様の機構で垂直方向の光軸調整が可能である。また、本実施例では、調整用押しネジ13は長円孔19の片側だけに設けているが、長円孔19の両側に設ければ垂直方向の光軸調整が容易になる。さらに、本実施例では、第二の搭載アーム5が第一の搭載アーム4の内側になっているが、第二の搭載アーム5を第一の搭載アーム4の外側にすることも可能である。
【0023】
本実施例では、2台のカメラの重量バランスをよくするため、第一の搭載アーム4と第二の搭載アーム5は上下に配置され、Uの字が相向き合うようになっているが、同一方向に配置しても良いことはもちろんである。また、重量バランスを調整するため、第一の搭載アーム4と第二の搭載アーム5の組み立て体を支持台1に対して上下方向に位置調整して組立できるようにしている。図8に第一の搭載アーム4の詳細を示す。第一の搭載アーム4には、ネジ14用のタップ孔20が片側に4個設けられており、このタップ孔を選択することにより第一の搭載アーム4と第二の搭載アーム5の組み立て体の支持台1に対する上下方向の位置を調整し、カメラを垂直方向に回動させるときの重量バランスを調整できる。なお、タップ孔21は締付ネジ11および締付ネジ12用のタップ孔である。本実施例ではタップ孔20は4個であるが、必要に応じて増減してよいことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の雲台にカメラを搭載した状態を示す。
【図2】本発明の雲台を示す。
【図3】垂直方向の光軸調整機構を示す図で、(a)図は本発明の雲台の正面図を示す。(b)図は(a)図のA、A’断面図を示す。
【図4】下側カメラ取付台の拡大図を示す。
【図5】上側カメラ取付台の拡大図を示す。
【図6】支持台ベアリング部の拡大図を示す。
【図7】水平方向の光軸調整機構を示す。
【図8】第一の搭載アーム4の詳細を示す。
【符号の説明】
【0025】
1.支持台
2.回転軸
3.水準器
4.第一の搭載アーム
5.第二の搭載アーム
6.下側カメラ取付台
7.ネジ
8.上側カメラ取付台
9.ネジ
10.ネジ
11.締付ネジ
12.締付ネジ
13.調整用押しネジ
14.ネジ
15.ベアリング
16.ピン
17.長円孔
18.丸孔
19.長円孔
20.タップ孔
21.タップ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ等光学機器を搭載し、上下方向、水平方向にカメラ等光学機器のレンズの向きを自在に変更可能なカメラ等光学機器の雲台において、上下に2台のカメラ等光学機器を搭載するとともに、前記2台のカメラ等光学機器の光軸調整をする機構を有することを特徴とする、カメラ等光学機器の雲台。
【請求項2】
前記2台のカメラ等光学機器のうち、第一のカメラ等光学機器を搭載するU字状の第一の搭載アームと、第二のカメラ等光学機器を搭載するU字状の第二の搭載アームと、前記第一の搭載アームと前記第二の搭載アームを結合する第一の締付ネジと第二の締付ネジと、を具備することを特徴とする請求項1のカメラ等光学機器の雲台。
【請求項3】
前記第一の搭載アームには前記第一の締付ネジと前記第二の締付ネジのためのタップ穴と、前記第二の搭載アームには前記第一の締付ネジと前記第二の締付ネジが挿通する孔とを有し、前記第二の搭載アームの前記孔が複数設けられていることを特徴とする、請求項1のカメラ等光学機器の雲台。
【請求項4】
前記第二の搭載アームの複数の前記孔のうち、前記第二の締付ネジが挿通する複数の前記孔は横長の長円孔であり、前記長円孔の側面に貫通する押しネジを具備することを特徴とする、請求項1のカメラ等光学機器の雲台。
【請求項5】
前記第一の搭載アームには第一のカメラを取付けるための第一の取付台と、前記第二の搭載アームには第二のカメラを取付けるための第二の取付台とを有し、前記第一、第二の搭載アームの両方あるいは何れか一方には、ピンと該ピンを中心とする円弧状の長円孔を具備し、前記第一の取付台と第二の取付台の両方あるいは何れか一方が、前記ピンを中心として位置調整されてネジ止めされていることを特徴とする、請求項1のカメラ等光学機器の雲台。

【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−286985(P2008−286985A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131519(P2007−131519)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(307013259)
【Fターム(参考)】