説明

カラープリンタ及びカラープリント方法

【課題】 発熱素子がオーバー加熱状態となって断線しないように、記録紙の端部まで印画を行なって縁無しプリントを作成する。
【解決手段】 サーマルヘッドの発熱素子は、カラー感熱記録紙に黒色を印画する際の印画濃度を100%としたとき、50%の印画濃度で記録紙に接触しない状態で発熱させてもオーバー加熱状態とはならない。そのため、カラー感熱記録紙の側端に印画される画素の印画濃度が50%以下になるように補正を行なう。この補正は、対象となる画素のY,M,Cの各印画濃度を比較し、最も印画濃度の高い色を高濃度色とする。高濃度色の印画濃度が50%以上のときには、この高濃度色の印画濃度が50%になるように補正を行なう。また、他の2色の印画濃度は、高濃度色を50%に補正する際に用いた補正比率を用いて補正を行なうことにより、色バランスを崩さずに印画濃度を50%以下に下げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラープリンタ及びカラープリント方法に関し、更に詳しくは、縁無しプリント作成時のサーマルヘッドの空加熱による損傷を防止するカラープリンタ及びカラープリント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラープリンタによるカラープリントの作成において、記録面の全周に余白の無い緑無しプリントを作成できることが望まれている。この縁無しプリントを作成するには、記録紙の外側にはみ出るように印画を行なうのが一般的な手法とされている。例えば、記録紙にインクを吐出してカラー画像を形成する特許文献1記載のインクジェットプリンタでは、縁無しプリントを作成するために、記録紙の外側にはみ出るように印画を行なっている。
【0003】
しかし、上記インクジェットプリンタでは、記録紙からはみ出て印画されたインクが記録ドラムに付着し、後に印画される記録紙を汚すという問題があった。また、周知のカラー感熱プリンタも、上述した記録紙の外側まではみ出るような印画は適していない。
【0004】
カラー感熱プリンタは、イエロー感熱発色層,マゼンタ感熱発色層,シアン感熱発色層を備えたカラー感熱記録紙にサーマルヘッドを圧接させ、その状態で、カラー感熱記録紙を副走査方向に搬送しながら、3色の感熱発色層を面順次で発色させてフルカラー画像を形成する。サーマルヘッドは、印画素子である発熱素子を副走査方向に直交する主走査方向に配列した発熱素子アレイを備えており、副走査方向に搬送されるカラー感熱記録紙に対して画像をライン記録する。各発熱素子は、記録される画像の1画素に対応するように設けられている。
【0005】
上記発熱素子は、記録紙に接触していない状態で発熱させると(以下、このような発熱を空発熱と呼ぶ)、印画時の通常使用温度以上に温度が上昇してしまう、いわゆるオーバー加熱状態となる。発熱素子がオーバー加熱状態となると、カラー感熱記録紙の保護層等が付着してしまい、この付着した保護層等が焦げついて更に発熱素子の温度が上昇し、最後には発熱素子が断線して発熱できなくなる。発熱素子が断線すると、その発熱素子が担当する画素は印画されなくなるため、以降のカラープリントには、カラー感熱記録紙の地色の筋、いわゆる白筋が発生する。
【0006】
そこで、従来のカラー感熱プリンタでは、カラープリントの外周に1ドット分、すなわち発熱素子1個分の幅(例えば、80μm)程度の余白が生じるように印画を行なうことで、空発熱の発生を防止している。カラー感熱記録紙の搬送方向の先端及び後端の余白は、例えば、特許文献2に記載されているように、印画を開始するタイミング、及び印画を終了するタイミングを制御することにより所定の幅を得ている。また、搬送方向の側端の余白は、特許文献3に記載されているように、カラー感熱記録紙の幅をラインセンサで検出して駆動する発熱素子を限定することで、所定の幅を得るようにしている。また、このカラー感熱プリンタで縁無しプリントを作成する場合には、特許文献4及び5に記載されているように、印画後のカラー感熱記録紙の全周をカッターでカットしている。
【特許文献1】特開2001−317690号公報
【特許文献2】実開昭63−117159号公報
【特許文献3】特開2004−009611号公報
【特許文献4】特開2001−063166号公報
【特許文献5】特開2001−219610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3記載のカラー感熱プリンタは、製造時にサーマルヘッドとラインセンサーとの位置が調整され、それぞれの発熱素子と光電素子とが対応付けされている。この調整作業は、プリンタの平均的な使用環境温度である、例えば23°Cの環境条件下で行なわれている。しかし、カラー感熱記録紙やサーマルヘッドは、温度や湿度の変化によって伸び縮みし、サイズが僅かに変化する。カラー感熱記録紙や発熱素子のサイズが変化すると、本来ならばカラー感熱記録紙に接触する側端近傍の発熱素子が、カラー感熱記録紙の外側に配置されて空発熱を行なうことがあった。
【0008】
また、縁無しプリントを作成するために、印画後にカラー感熱記録紙の全周をカットするのは時間とコストがかかり、カット屑等の処分にも手間がかかるという問題があるため、カットせずに縁無しプリントを得ることのできるカラー感熱プリンタの登場が望まれている。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、発熱素子がオーバー加熱状態にならないようにカラー感熱記録紙の端部まで印画を行なうことにより、断線による白筋を発生させることなく縁無しプリントを作成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のカラープリンタは、記録紙の側端近傍に印画される画素を構成する複数の色の印画濃度を比較し、最も印画濃度の高い色を高濃度色として決定し、この高濃度色の印画濃度と、予め設定されている規定印画濃度とを比較し、高濃度色の印画濃度が規定印画濃度以上である場合には、高濃度色の印画濃度を規定印画濃度まで下げるように補正を行い、この時の補正比率を用いて他の色の印画濃度を補正する濃度補正手段を備えている。これにより、記録紙の側端近傍に印画される画素の印画濃度が下げられるため、記録紙からはみ出るように印画を行なう場合に生じる種々の問題を軽減することができる。
【0011】
また、印画濃度の補正は、記録紙の側端にあたる画素と、この画素に主走査方向において隣接する両隣の画素に対して行なうようにしたので、記録ヘッドと記録紙との間で位置ズレが生じても、縁無しプリントを作成することができる。
【0012】
また、記録紙としてカラー感熱記録紙を使用し、ライン印画ヘッドとしてサーマルヘッドを用いる場合には、発熱素子がカラー感熱記録紙に接触しない状態で発熱する空発熱を行なう際に、発熱素子の寿命に影響を与えない印画濃度の上限を規定印画濃度として設定するので、発熱素子のオーバー加熱による断線等は発生しない。なお、規定印画濃度としては、カラー感熱記録紙に黒色を印画する際の印画濃度を100%としたときに、50%の印画濃度を規定印画濃度としたので、発熱素子の寿命が短くなることはない。
【0013】
また、本発明のカラープリント方法は、記録紙を副走査方向に搬送し、搬送中の記録紙の側端を検出し、この検出結果に基づいて、記録紙に対する主走査方向の印画位置を決定し、記録紙の側端近傍に印画される画素を構成する複数の色の印画濃度を比較し、印画濃度の高い色を高濃度色として決定し、この高濃度色の印画濃度と、予め設定されている規定印画濃度とを比較し、高濃度色の印画濃度が規定印画濃度以上である場合には、高濃度色の印画濃度を規定印画濃度まで下げるように補正を行い、この時の補正比率を用いて他の色の印画濃度を補正し、副走査方向と直交する主走査方向に沿って配列された複数の印画素子で、記録紙上に設定された所定の記録エリアに対して異なる色の複数の画像を面順次に記録して1画面のカラー画像を形成する。これにより、記録紙の側端近傍に印画される画素の印画濃度が下げられるため、記録紙からはみ出るように印画を行なう場合に生じる種々の問題を軽減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のカラープリンタ及びカラープリント方法によれば、記録紙からはみ出るように印画を行なう場合に生じる種々の問題を軽減することができる。具体的には、インクジェットプリンタでは、記録紙からはみ出るインクの量を少なくすることができるので、はみ出したインクによる記録紙の汚損を低減させることができる。また、カラー感熱プリンタにおいては、発熱素子のオーバー加熱による断線を防止することができる。更に、余白のない縁無しプリントを作成することができるので、印画後に記録紙の全周をカットするような手間のかかる処理を省略することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1及び図2は、本発明を実施したカラー感熱プリンタの構成を示す概略図、及びブロック図である。カラー感熱プリンタ2には、記録紙ロール3がセットされる。この記録紙ロール3は、長尺のカラー感熱記録紙4がロール状に巻かれて形成されている。記録紙ロール3は、外周に当接された給紙ローラ5によって回転され、この回転により記録紙ロール3からカラー感熱記録紙4が図中左方に給送され、または巻き戻される。
【0016】
カラー感熱記録紙4の層構造を表す図3に示すように、カラー感熱記録紙4は、支持体8上にシアン(C)感熱発色層9,マゼンタ(M)感熱発色層10,イエロー(Y)感熱発色層11,保護層12が順次層設されている。各感熱発色層の発色濃度と印加される熱エネルギーの関係を表すグラフである図4に示すように、イエロー感熱発色層11は熱感度が最も高く、小さな熱エネルギーでイエローに発色する。最下層となるシアン感熱発色層9は熱感度が最も低く、大きな熱エネルギーでシアンに発色する。また、イエロー感熱発色層11は、420nmの近紫外線が照射されたときに、発色能力が消失する。マゼンタ感熱発色層10は、イエロー感熱発色層11とシアン感熱発色層9との中間程度の熱エネルギーでマゼンタに発色し、365nmの紫外線が照射されたときに発色能力が消失する。
【0017】
記録紙ロール3に対するカラー感熱記録紙4の給送方向の下流側には、カラー感熱記録紙4の上下面を挟み込んで搬送する搬送ローラ対15が配置されている。この搬送ローラ対15は、搬送モータ16によって回転駆動されるキャプスタンローラ17と、このキャプスタンローラ17に圧接するピンチローラ18とからなる。搬送モータ16は、モータドライバ19によって駆動される。
【0018】
ピンチローラ18は、図示しないシフト機構によって上下方向で移動自在とされており、カラー感熱記録紙4の給送時には上方に移動されてキャプスタンローラ17との間にカラー感熱記録紙4が通過可能な隙間を形成する。カラー感熱記録紙4の通過後には、下方に移動されてキャプスタンローラ17とともにカラー感熱記録紙4を挟み込む。カラー感熱記録紙4は、搬送ローラ対15によって図中左方のA方向(給送方向)と、図中右方のB方向(巻戻し方向)とに往復搬送される。
【0019】
搬送ローラ対15のA方向の上流側には、サーマルヘッド22とプラテンローラ23とがカラー感熱記録紙4の上下面を挟むように配置されている。図5に示すように、サーマルヘッド22は、熱伝導性のよい金属で形成されたヘッド基板25の下面に、多数の発熱素子26がカラー感熱記録紙4の搬送方向と直交するC方向(主走査方向)に沿ってライン状に配列された発熱素子アレイ27を備えている。この発熱素子アレイ27は、カラー感熱記録紙4の幅方向の全域に印画を行なうために、カラー感熱記録紙4の幅より長く設けられている。
【0020】
プラテンローラ23は、発熱素子アレイ27の下方に回転自在に配置されている。また、プラテンローラ23は、図示しないシフト機構によって上下方向で移動自在とされており、カラー感熱記録紙4の給送時及び巻戻し時には下方にシフトされてサーマルヘッド22との間に隙間を形成し、印画時には上方にシフトされてサーマルヘッド22に圧接する。
【0021】
サーマルヘッド22は、ヘッドドライバ30によって駆動され、搬送ローラ対15によってA方向に搬送されるカラー感熱記録紙4に圧接し、発熱素子アレイ27の各発熱素子26を発熱させて各感熱発色層9〜11を発色させる。これにより、カラー感熱記録紙4には複数列の印画ラインがA方向に沿って印画され、画像が形成される。プラテンローラ23は、カラー感熱記録紙4の搬送に応じて従動回転して、カラー感熱記録紙4と発熱素子アレイ27との摺接を補助する。
【0022】
搬送ローラ対15のA方向下流側には、給紙時にカラー感熱記録紙4の給送方向先端を検出する先端検出センサ33が配置されている。この先端検出センサ33には、例えば、カラー感熱記録紙4の先端に検査光を照射する投光部と、カラー感熱記録紙4で反射した検査光を受光する受光部とを備えたフォトインタラプタが用いられている。
【0023】
図5に示すように、サーマルヘッド22のA方向上流側で、カラー感熱記録紙4の搬送経路の下方には、カラー感熱記録紙4の両側端4a,4bに対面する位置に側端検出センサ36,42が対称に配置されている。側端検出センサ36は、カラー感熱記録紙4の側端4aに検査光を照射するライン状のLED37と、検査光に照明されたカラー感熱記録紙4の側端4aを撮像するCCDラインセンサ38とが一つの基板上に平行に設置されたもので、カラー感熱記録紙4の側端4aの主走査方向位置を検出する。CCDラインセンサ38は、主走査方向に配列された複数個の撮像素子39からなる。また、CCDラインセンサ38の各撮像素子39と発熱素子アレイ27の各発熱素子26とは、主走査方向における配列が同ピッチにされている。そのため、発熱素子単位でカラー感熱記録紙4の側端の主走査方向位置を検出することができる。
【0024】
なお、もう一方の側端検出センサ42は、側端検出センサ36と同じものであり、LED43,CCDラインセンサ44,撮像素子45を備え、カラー感熱記録紙4の側端4bの主走査方向位置を検出する。これらの側端検出センサ37,42は、センサドライバ48,49により駆動される。
【0025】
サーマルヘッド22と側端検出センサ36,42は、カラー感熱プリンタ2の製造時に、発熱素子26と撮像素子39,45との主走査方向の位置が合致するように位置調整が行なわれる。また、この位置調整時には、発熱素子26と撮像素子39,45とが対応付けされる。例えば、発熱素子アレイ27の中央HCに対して、寸法誤差の無い標準寸法のカラー感熱記録紙4の幅方向の中心線CLが合致していると仮定し、このときにカラー感熱記録紙4の図中左方側端4aに対面する撮像素子39をSL1、右方側端4bに対面する撮像素子45をSR1とする。そして、これらの撮像素子SL1,SR1に対応する発熱素子26をHL1,HR1とする。この撮像素子SL1,SR1、及び発熱素子HL1,HR1は、基準撮像素子及び基準発熱素子として印画位置決定部50に記録される。
【0026】
図6に示すように、実際にカラー感熱記録紙4が搬送されて印画が行なわれる際に、カラー感熱記録紙4の搬送位置が主走査方向でずれている場合には、印画位置決定部50によって、次のような手順で駆動する発熱素子が決定される。まず、カラー感熱記録紙4の側端4a,4bを検出した撮像素子が、SL1’,SR1’として特定される。この撮像素子SL1’,SR1’が、基準となる撮像素子SL1,SR1に対してどちらの方向に何ドット分離れた位置にあるのかはすぐに分かり、更に撮像素子と発熱素子とは主走査方向において同ピッチで配列されているため、下記数式1及び2に示すように、撮像素子SL1’,SR1’と基準撮像素子SL1,SR1との差を基準発熱素子HL1,HR1に加算すれば、主走査方向で位置のずれたカラー感熱記録紙4に対して印画を行なう際に駆動される両端の発熱素子HL1’,HR1’を簡単に特定することができる。
HR1’=HR1+(SR1−SR1’)・・・・数式1
HL1’=HL1+(SL1−SL1’)・・・・数式2
【0027】
サーマルヘッド22のA方向下流側で搬送経路の上方には、光定着器52が配置されている。光定着器52は、イエロー用定着ランプ53とマゼンタ用定着ランプ54とからなり、イエロー用定着ランプ53は、発光ピークが420nmの近紫外線を放射して、カラー感熱記録紙4のイエロー感熱発色層11を定着する。また、マゼンタ用定着ランプ54は365nmの紫外線放出してマゼンタ感熱発色層10を定着する。この光定着器52は、ランプドライバ55によって駆動される。
【0028】
光定着器52のA方向下流側には、長尺のカラー感熱記録紙4を記録エリアごとにカットするカッター58が設けられている。カッター58の下流側には、カットされたシート状のカラー感熱記録紙4を排出する排紙口59が配置されている。
【0029】
図2に示すように、カラー感熱プリンタ2は、システムコントローラ63によって全体が制御されている。システムコントローラ63は、例えば、CPU,プログラムROM,ワークRAM等からなるマイクロコンピュータであり、PUは、プログラムROMに記憶されている制御プログラムに従ってプリンタ2の各部を制御し、その時々に生じる一時的なデータをワークRAMに記憶してプリンタの制御に利用する。
【0030】
システムコントローラ63には、インターフェース回路(I/F)66が接続されている。このI/F66には、種々のコネクタが設けられており、パーソナルコンピュータ(PC)やデジタルスチルカメラ、メモリカードの記録内容を読み取るカードリーダー等が接続されて画像データが入力される。
【0031】
I/F66を介して入力された画像データは、画像メモリ69に記録される。画像メモリ69に記録された画像データは、システムコントローラ63を介してプリントデータ形成部70に読み込まれる。プリントデータ形成部70は、読み込んだRGBの画像データをYMCのプリントデータに変換するデータ変換部や、YMCの各プリントデータを記録するフレームメモリ、これらのフレームメモリから読み出した1ライン分のプリントデータを記録するラインメモリ等を備えている。ラインメモリから読み出された1ライン分のプリントデータは、ヘッドドライバ30に入力され、ヘッドドライバ30は、1ライン分のプリントデータに基づいてサーマルヘッド22の各発熱素子26を駆動する。
【0032】
濃度補正部73は、カラー感熱記録紙4の側端4a,4bにあたる画素のプリントデータを補正して、その印画濃度を変更する。本出願人による実験の結果、発熱素子26の寿命は、空発熱を行なわない場合で3000枚程度となっている。また、カラー感熱記録紙4に黒色を発色させる熱エネルギーで空発熱を行なった場合には、寿命が極端に短くなり、およそ200枚程度となる。これに対し、カラー感熱記録紙4にグレーを発色させる熱エネルギーで空発熱を行なった場合には、寿命が低下しないことが分かった。なお、カラー感熱記録紙4に黒色を発色させる際には、Y,M,Cの各印画時に各感熱発色層の100%の熱エネルギーが印加され、グレーを発色させる際には、Y,M,Cの各印画時に各感熱発色層に黒色のおよそ50%程度の熱エネルギーが印加される。
【0033】
以上の実験結果から、100%の熱エネルギーで発色される印画濃度、すなわち100%の印画濃度での空発熱では発熱素子26の寿命が短くなるが、50%の熱エネルギーで発色される50%の印画濃度の空発熱では、発熱素子26の寿命に影響が及ばない。濃度補正部73は、この実験結果を利用して、カラー感熱記録紙4の側端4a,4bにあたる画素の印画濃度が50%以下になるように補正する。具体的には、カラー感熱記録紙4の側端4aにあたる画素のY,M,Cの各プリントデータのうち、最大の印画濃度の色(以下、高濃度色と呼ぶ)の印画濃度が50%を越えている場合にはこれを50%に補正し、他の色の印画濃度は色バランスが崩れないように、高濃度色を50%に補正したときの比率を用いて補正を行なう。
【0034】
例えば、図7に示すように、N列目の印画ラインPLnの側端4aにあたる画素Px1の補正前の各色の印画濃度が、以下の例1、例2に示すような場合、高濃度色の印画濃度が50%になるように補正を行い、この補正の比率を利用して他の色の印画濃度を補正する。この結果、側端4aにあたる画素PL1の補正後の印画濃度は、必ず50%以下となる。そのため、画素Px1の印画を行なう発熱素子HL1が、カラー感熱記録紙4やサーマルヘッド22の伸び縮みによって空発熱をしても寿命が短くなることはない。
例1
補正前 補正後
Y濃度=100% → Y濃度=50%
M濃度=60% → M濃度=30%
C濃度=80% → C濃度=40%
例2
補正前 補正後
Y濃度=40% → Y濃度=26.6%
M濃度=75% → M濃度=50%
C濃度=30% → C濃度=20%
【0035】
また、上記の濃度補正は、カラー感熱記録紙4の側端4a,4bにあたる画素Px1に対し、カラー感熱記録紙4の外側となる+1ドットの画素Px1+1、及びカラー感熱記録紙4の記録面上となる−1ドットの画素Px1−1に対しても行なうようにしている。すなわち、図5において、発熱素子26のHL1,HL1+1,HL1−1と、HR1,HR1+1,HR1−1とで印画が行なわれる画素に対して印画濃度の補正を行なう。これにより、温度や湿度の変化によってカラー感熱記録紙4やサーマルヘッド22が伸び縮みし、カラー感熱記録紙4とサーマルヘッド22との位置が多少ずれても、カラー感熱記録紙4の側端4a,4bには低印画濃度の画素が必ず印画されるため、印画環境等に影響されずに縁無しプリントを作成することができる。また、外周の画素は、その内側の通常の画像よりも印画濃度が下げられた低濃度画像であるため目立つことがなく、自然な縁無しプリントを作成することができる。
【0036】
次に、上記実施形態の作用について、図8〜10のフローチャートを参照しながら説明する。例えば、カラー感熱プリンタ2に接続されているPCにおいてプリント操作を行なうと、プリントを指示する信号とともに画像データがカラー感熱プリンタ2に入力される。システムコントローラ63は、I/F66から入力された画像データを画像メモリ69に記録する。
【0037】
プリントデータ形成部70は、システムコントローラ63を介して画像メモリ69からRGBの画像データを読み出し、YMCのプリントデータに変換する。このプリントデータは、プリントデータ形成部70内のフレームメモリに記録される。濃度補正部73は、フレームメモリ内に記録されているプリントデータのうち、カラー感熱記録紙4の側端4a,4bに印画される各印画ラインの画素と、この画素に主走査方向で隣接する画素の印画濃度を補正する。
【0038】
図9に示すように、濃度補正部73は、例えば図7に示す画素Px1のY,M,Cの印画濃度を比較する。比較した色のうちで最も印画濃度の高い色を高濃度色として特定し、この高濃度色の印画濃度が50%以上か否かを判定する。高濃度色が50%以下の場合には、空発熱が行なわれても発熱素子26の寿命低下が発生しないため、印画濃度の補正は行なわない。
【0039】
また、例えば、画素Px1の各色の印画濃度が、Y濃度=100%,M濃度=60%,C濃度=80%であった場合には、高濃度色であるイエローの印画濃度を50%に補正し、マゼンタ及びシアンの印画濃度をイエローの補正比率に合せて補正する。これにより、各色の印画濃度はY濃度=50%,M濃度=30%,C濃度=40%となるため、空発熱が行なわれても発熱素子26の寿命が短くなることはない。また、上記濃度補正は、各印画ラインの側端4a,4bにあたる画素、例えばPx1と、この画素Px1に隣接するPx1+1,Px1−1に対しても実施される。
【0040】
上記画像データの入力とともに、システムコントローラ63は、搬送モータ16を正転させてカラー感熱記録紙4をA方向に給紙する。この給紙時には、プラテンローラ23が下方に、ピンチローラ18が上方に移動されているため、カラー感熱記録紙4の通過経路が確保されている。カラー感熱記録紙4の先端が先端検出センサ33により検出されると、搬送モータ16の回転がいったん停止され、ピンチローラ18とプラテンローラ23が移動してカラー感熱記録紙4に圧接する。また、側端検出センサ36及び42は、カラー感熱記録紙4の側端4a,4bのC方向の位置を検出し、印画位置決定部50は、印画時に駆動される発熱素子の範囲を決定する。
【0041】
図6及び図10に示すように、側端4a,4bを検出した撮像素子SL1’,SR1’と、基準撮像素子SL1,SR1及び基準発熱素子HL1,HR1とに基づいて、印画時に側端4a,4bにあたる発熱素子HL1’,HR1’が決定される。印画は、この発熱素子HL1’,HR1’に隣接する発熱素子HL1’+1とHR1’+1との間の複数個の発熱素子26により行なわれる。
【0042】
搬送モータ16の回転再開により、カラー感熱記録紙4は再びA方向に搬送される。これと同時に、プリントデータ形成部70内のフレームメモリからイエロー画像の1ライン分のプリントデータがラインメモリに読み出され、このラインメモリからヘッドドライバ30に入力される。サーマルヘッド22は、1ライン分のプリントデータに基づいて発熱素子アレイを発熱させ、カラー感熱記録紙4に1ラインのイエロー画像を印画する。この印画時には、側端4a,4bにあたる画素と、これに隣接する画素との印画濃度が補正されているため、温度や湿度の変化によってカラー感熱記録紙4やサーマルヘッド22が伸び縮みし、カラー感熱記録紙4とサーマルヘッド22との位置が多少ずれても、発熱素子26の寿命を低下させることなく縁無しプリントを作成することができる。
【0043】
イエロー画像の印画開始とともに、光定着器52のイエロー用定着ランプ53が点灯される。これにより、イエロー画像が印画されたイエロー感熱発色層11は、以後の加熱によって発色しないように定着される。
【0044】
イエロー画像の印画終了後、イエロー用定着ランプ53が消灯される。また、プラテンローラ23が下方に移動してカラー感熱記録紙4から離反する。システムコントローラ63は、搬送モータ16を逆転させ、カラー感熱記録紙4の先端が先端検出センサ33によって検出されるまで、カラー感熱記録紙4をB方向に搬送し、記録紙ロール3に巻き戻す。
【0045】
カラー感熱記録紙4の巻き戻し完了後、プラテンローラ23を再び上方に移動させ、搬送モータ16を正転させてカラー感熱記録紙4をA方向に搬送させる。また、サーマルヘッド22を駆動させてマゼンタ画像を1ラインずつ印画し、マゼンタ用定着ランプ54を点とさせてマゼンタ感熱発色層10を定着する。このマゼンタ画像の印画時にも、側端4a,4bにあたる画素と、これに隣接する画素との印画濃度が補正されているため、発熱素子26の寿命を低下させることなく縁無しプリントを作成することができる。
【0046】
マゼンタ画像の印画完了後、カラー感熱記録紙4は再び巻き戻され、シアン画像の印画が行なわれる。このシアン画像の印画時にも、側端4a,4bにあたる画素と、これに隣接する画素との印画濃度が補正されているため、発熱素子26の寿命を低下させることなく縁無しプリントを作成することができる。
【0047】
シアン画像の印画終了後、カッター58によってカラー感熱記録紙4の記録エリアの先端及び後端が余白を生じないようにカットされ、シート状のカラープリントが完成する。カラープリントの側端の画素は、その内側の通常の画像よりも印画濃度が下げられた低濃度画像であるため目立たず、自然な縁無しプリントとなる。このカラープリントは、排紙口59からプリンタ外に排出される。
【0048】
なお、上記実施形態では、Y,M,Cの画像のうち、最も印画濃度の高い色に合せて濃度補正を行なうようにしたが、最も発色熱エネルギーの高いシアンの画像の印画濃度が50%以下ならば、空発熱によって発熱素子26の寿命が低下することはない。そのため、シアン画像の印画濃度が50%を超えているときにのみ、印画濃度の補正を行なってもよい。
【0049】
上記実施形態は、カラー感熱プリンタを例に説明したが、熱転写プリンタ、熱溶融式プリンタ等、サーマルヘッドを使用する他形式のプリンタにも適用することができる。また、インクジェットプリンタに採用することもでき、この場合には、記録紙の外側にはみ出るインクの量を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明を実施したカラー感熱プリンタの構成を示す概略図である。
【図2】カラー感熱プリンタの構成を示すブロック図である。
【図3】カラー感熱記録紙の層構造を示す説明図である。
【図4】各感熱発色層の発色特性を示すグラフである。
【図5】サーマルヘッドと側端検出センサとの位置調整状態を示す説明図である。
【図6】印画時のカラー感熱記録紙の搬送状態を示す平面図である。
【図7】印画濃度の補正が行なわれる画素の一例を示す説明図である。
【図8】プリント手順を示すフローチャートである。
【図9】印画濃度の補正手順を示すフローチャートである。
【図10】印画時に駆動される発熱素子を特定する手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
2 カラー感熱プリンタ
4 カラー感熱記録紙
22 サーマルヘッド
26 発熱素子
27 発熱素子アレイ
36,42 側端検出センサ
50 印画位置決定部
73 濃度補正部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙を副走査方向に搬送する搬送手段と、
副走査方向と直交する主走査方向に沿って配列された複数の印画素子を有し、記録紙上に設定された所定の記録エリアに対して異なる色の複数の画像を面順次に記録して1画面のカラー画像を形成するライン印画ヘッドと、
搬送中の記録紙の側端を検出する検出手段と、
この検出結果に基づいて、記録紙に対する主走査方向の印画位置を決定する印画位置決定手段と、
記録紙の側端近傍に印画される画素を構成する複数の色の印画濃度を比較し、
最も印画濃度の高い色を高濃度色として決定し、
この高濃度色の印画濃度と、予め設定されている規定印画濃度とを比較し、
高濃度色の印画濃度が規定印画濃度以上である場合には、高濃度色の印画濃度を規定印画濃度まで下げるように補正を行い、
この時の補正比率を用いて他の色の印画濃度を補正する濃度補正手段とを設けたことを特徴とするカラープリンタ。
【請求項2】
前記側端近傍に印画される画素は、側端にあたる画素と、この画素に主走査方向において隣接する両隣の画素であることを特徴とする請求項1記載のカラープリンタ。
【請求項3】
前記記録紙は、支持体上に異なる色に発色する感熱発色層が設けられたカラー感熱記録紙であり、前記ライン印画ヘッドは、印画素子として感熱発色層を加熱する発熱素子が設けられたサーマルヘッドであり、前記規定印画濃度は、発熱素子がカラー感熱記録紙に接触しない状態で発熱する空発熱を行なう際に、該発熱素子の寿命に影響を与えない印画濃度の上限であることを特徴とする請求項1または2記載のカラープリンタ。
【請求項4】
前記規定印画濃度は、カラー感熱記録紙に黒色を印画する際の印画濃度を100%としたときに、50%の印画濃度であることを特徴とする請求項3記載のカラープリンタ。
【請求項5】
記録紙を副走査方向に搬送し、
搬送中の記録紙の側端を検出し、
この検出結果に基づいて、記録紙に対する主走査方向の印画位置を決定し、
記録紙の側端近傍に印画される画素を構成する複数の色の印画濃度を比較し、
最も印画濃度の高い色を高濃度色として決定し、
この高濃度色の印画濃度と、予め設定されている規定印画濃度とを比較し、
高濃度色の印画濃度が規定印画濃度以上である場合には、高濃度色の印画濃度を規定印画濃度まで下げるように補正を行い、
この時の補正比率を用いて他の色の印画濃度を補正し、
副走査方向と直交する主走査方向に沿って配列された複数の印画素子で、記録紙上に設定された所定の記録エリアに対して異なる色の複数の画像を面順次に記録して1画面のカラー画像を形成することを特徴とするカラープリント方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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