説明

カーボン製ルツボ

【課題】直胴部と受け皿部との境界部分からのSiOガスの漏洩を防止し、SiC化の早期進行を防止するようにしたカーボン製ルツボを提供する。
【解決手段】シリコン等の金属単結晶引上げ装置に使用される石英ルツボ4を保持するためのカーボン製ルツボ5であり、直胴部9と受け皿部10とが分割されて構成されている。石英ルツボ4とカーボン製ルツボ5との間には、カーボン製ルツボ5の内面の、少なくとも直胴部9と受け皿部10との境界部分Aを覆うように、黒鉛質シート11が配置されている。黒鉛質シート11は膨張黒鉛シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン等の金属単結晶引上げ装置に使用される石英ルツボを保持するためのカーボン製ルツボに関するものである。
【背景技術】
【0002】
チョクラルスキー法(以下、「CZ法」という。)に用いられるルツボは、シリコンを溶融させるための石英ルツボとこれを収容する黒鉛ルツボとの二重構造となっている。近年、高収率でシリコン単結晶を得るため、大型サイズの単結晶が製造されるようになっている。それに伴い、黒鉛ルツボも大型のものが必要になっている。しかし、黒鉛ルツボの容量が多くなるにつれて、石英ルツボと黒鉛ルツボの熱膨張率の違いに起因する熱歪みも大きくなり、直胴部、特にその上縁部、及び底部から直胴部に連なる曲面部(以下、R部と称する)に応力が集中して黒鉛ルツボの割れが発生し易くなっている。この問題を解決するため、直胴部と受け皿部とが分割された黒鉛ルツボ(以下の特許文献1〜4参照)、直胴部に炭素繊維強化炭素材(C/C材)を用い、受け皿部に黒鉛材を用いた複合ルツボ(以下の特許文献5参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登実3012299号公報
【特許文献2】特開平07−25694号公報
【特許文献3】特開平09−263482号公報
【特許文献4】特開2000−247781号公報
【特許文献5】特開昭63−7174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シリコン単結晶引き上げ装置によりシリコン単結晶を成長させる間、シリコン融液よりSiOが揮発する。このSiOガスは、チャンバ内に導入されるArガスと共に真空ポンプでチャンバから排気されるが、一方で、黒鉛ルツボと石英ルツボの隙間にも入り込み、SiOと黒鉛ルツボのCが反応し、黒鉛ルツボ内面のSiC化が進行する。
さらに、この黒鉛ルツボのSiC化層とSiO(石英ルツボ)が反応し、SiCが消耗しながら、SiOとCOガスが発生する。これにより黒鉛ルツボ105の減肉(消耗)が進行していく。特に、黒鉛ルツボが分割されたものである場合、直胴部と受け皿部との境界部分でガスの流入・流出が起こり、著しく減肉が進行する。
【0005】
上記反応を以下にまとめる。
(1)石英ルツボとSiの反応
SiO+Si→2SiO
(2)石英ルツボと黒鉛ルツボとの反応
SiO+C→SiO+CO
SiO+C→SiC+O
(3)生成したSiOガスとルツボとの反応
2SiO+2C→2SiC+O
(4)生成したOガス、COガスとの反応(酸化)
+C→CO
+2C→2CO、2CO+C→2C(スス)+CO
【0006】
そして、これらの反応により著しく減肉が進行した黒鉛ルツボを使用すると、石英ルツボが減肉部分へ局部的に陥没していく。操業時間が長時間になると、陥没部に割れ目ができ、シリコン融液がこの割れ目から外へ漏れ出し、炉内にシリコン融液が溜まってしまう恐れがある。この為、減肉量がある一定量を超えると、黒鉛ルツボを新品に交換する必要がある。
【0007】
このように、ルツボが分割されたものである場合、直胴部と受け皿部との境界部分からのSiOガスが漏洩し、SiC化が早期に進行するという問題がある。
しかしながら、上記の特許文献1〜5には、直胴部と受け皿部との境界部分からのSiC化進行に対する有効な対策は開示されておらず、従来より、直胴部と受け皿部との境界部分からのSiOガスの漏洩を防止するようにしたカーボン製ルツボが所望されていた。
【0008】
本発明は、上記の実情を鑑みて考え出されたものである。その目的は、直胴部と受け皿部との境界部分からのSiOガスの漏洩を防止し、SiC化の早期進行を防止するようにしたカーボン製ルツボを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明は、直胴部と受け皿部とが分割されたカーボン製ルツボであって、カーボン製ルツボの内面の、少なくとも直胴部と受け皿部との境界部分を覆うように、黒鉛質シートを配置したことを要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、直胴部と受け皿部との境界部分を黒鉛質シートが覆うことにより、境界部分からのSiOガスの漏洩が防がれ、カーボン製ルツボのSiC化の早期進行を防止することができる。
【0011】
本発明においては、前記黒鉛質シートは膨張黒鉛シートであるのが好ましい。
上記構成によれば、膨張黒鉛シートはクッション性が高いので、黒鉛質シートが挟み付けられた場合、石英るつぼと境界部分との間で圧縮されて隙間なく配置され、SiOガスの漏洩を更に抑止することができる。
【0012】
本発明においては、前記黒鉛質シートは、その灰分が100ppm以下であるのが好ましい。
上記構成によれば、黒鉛質シートから生じる金属系の不純物を少なくでき、特に半導体用途の金属単結晶において品質の安定化に繋げることができる。
【0013】
本発明においては、前記直胴部は炭素繊維強化炭素複合材(C/C材)から成り、前記黒鉛質シートは、前記境界部に加えて、直胴部の内面全体を覆うように配置されているのが好ましい。
上記構成によれば、ボーラスで「くわれ」の生じ易いC/C製直胴部と境界部分とを同時に覆うことで、カーボン製るつぼの耐久性を飛躍的に向上させることができる。
【0014】
本発明においては、前記直胴部は複数に分割された黒鉛製分割片で構成され、前記黒鉛質シートは、前記境界部に加えて、直胴部の内面全体を覆うように配置されているのが好ましい。
上記構成によれば、黒鉛で受け皿部と別体の直胴部を形成した場合には、直胴部が温度変化により割れが生じ易くなるため、直胴部を分割化することが必須となる。しかし、直胴部を分割化すると、分割部分でSiOガスの漏洩が生じる恐れがある。そこで、上記構成のように、分割部分と境界部分とを黒鉛質シートで覆うことでSiOガスの漏洩により生じる不具合を防止できる。
【0015】
本発明においては、前記受け皿部は、底部と、底部から前記直胴部に連なる曲面状部分(R部分)とで構成され、前記黒鉛質シートは、前記境界部に加えて、直胴部の内面全体から前記曲面状部分まで一体に覆うように配置されているのが好ましい。
上記の構成によれば、直胴部、境界部分、及び最も消耗の大きい受け皿部のR部を一体に覆うことで、確実にSiOガスの漏洩を防いで、局部的なSiC化を抑制することができる。
【0016】
本発明においては、前記黒鉛質シートは、カーボン製ルツボの内面を一体に覆うように配置されているのが好ましい。
上記構成によれば、一体のシートで内面を被覆することで隙間が生じ難くなり、SiOガスの漏出やカーボン製ルツボと石英るつぼとの接触等を防止することができる。
【0017】
本発明においては、前記黒鉛質シートは、受け皿部内面を覆う平面円形状のシートと、直胴部内面を覆う筒状のシートが組み合わされ、両シートが境界部分で重ね合わされた構成であるのが好ましい。
上記構成によれば、受け皿部と直胴部とを別体として、とりわけ直胴部の上下寸法が大きくなった場合(太陽電池における融液の大容量化)でもシートの加工を容易にすることができる。また両シートが重ね合わされているため、石英るつぼと受け皿部が接触する不具合も防ぐことができる。
【0018】
本発明においては、前記受け皿部は複数に分割された黒鉛製分割片で構成され、前記黒鉛質シートは、前記分割片同士の突合せ部分付近を覆う受け皿シート部と、前記境界部分を覆う境界シート部とを備えた構成であるのが好ましい。
上記構成によれば、少ないシートの量で、SiOガスの漏洩を防止し、局部的なSiC化を抑制するのに十分な効果を得ることができる。
【0019】
本発明においては、前記黒鉛質シートは、複数枚を重ねた構成であるのが好ましい。
上記構成によれば、受け皿部と直胴部との間に生じる段差への対応が容易となり、またクッション性を高めて段差付近の隙間の発生を抑制し、当該隙間からのSiOガスの漏洩を防止することができる。
【0020】
本発明においては、前記黒鉛質シートは、厚さが0.2〜1.0mm、かさ密度が0.7〜1.3g/cmであるのが好ましい。
上記構成によれば、中敷として必要なシート厚み及びかさ密度として、高い性能を備えさせることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、直胴部と受け皿部との境界部分を黒鉛質シートが覆うことにより、境界部分からのSiOガスの漏洩が防がれ、カーボン製ルツボのSiC化の早期進行を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施の形態に係るシリコン単結晶引き上げ装置の要部断面図。
【図2】ルツボの拡大断面図。
【図3】黒鉛質シートの他の配置態様を示す図。
【図4】黒鉛質シートの他の配置態様を示す図。
【図5】図4の配置態様に使用される黒鉛質シートの形状を示す図。
【図6】黒鉛質シートの他の配置態様を示す図。
【図7】図6の配置態様に使用される黒鉛質シートの形状を示す図。
【図8】平面円形状のシート11aの形状を示す図。
【図9】実施の形態3に使用される受け皿部10の平面図。
【図10】実施の形態3に使用される黒鉛質シートの形状を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
(金属単結晶引上げ装置の構成)
図1は本実施の形態に係るシリコン単結晶引き上げ装置の要部断面図、図2はルツボの拡大断面図である。図1において、1は単結晶引き上げ装置、2はシャフト、4はシリコン融液3を収容する石英ルツボ4、5は石英ルツボ4を保持するカーボン製ルツボである。カーボン製ルツボ5の外周にはヒータ6が配置されており、このヒータ6によりカーボン製ルツボ5及び石英ルツボ4を介してシリコン融液3を加熱し、インゴット7を引き上げながらシリコン単結晶を作製する。
【0024】
カーボン製ルツボ5は、略円筒状の直胴部9と受け皿部10とを備え、直胴部9と受け皿部10とが分割された構成となっている。直胴部9は受け皿部10に載置され、直胴部9と受け皿部10の各突合せ面が嵌合されて固着化されている。そして、石英ルツボ4とカーボン製ルツボ5との間において、カーボン製ルツボ5の内面の、少なくとも直胴部9と受け皿部10との境界部分Aを覆うように、黒鉛質シート11が配置されている。
直胴部9は炭素繊維強化炭素(C/C材)製であり、受け皿部10は黒鉛製である。この受け皿部10は、底部10aと、底部10aから直胴部9に連なる曲面状部分(以下、R部と称する)10bとで構成されている。
【0025】
黒鉛質シート11は、膨張黒鉛シートであるのが好ましい。なぜなら、膨張黒鉛シートはクッション性が高いので、黒鉛質シート11が挟み付けられた場合、石英ルツボ4と境界部分Aとの間で圧縮されて隙間なく配置され、SiOガスの漏洩を更に抑止することができるからである。
【0026】
黒鉛質シート11として使用される膨張黒鉛シートは、厚さ0.2〜1.0mm、かさ密度0.7〜1.3g/cm程度のものが好ましい。
【0027】
また、黒鉛質シート11は、灰分が100ppm以下、特に好ましくは灰分50ppm以下の高純度のものが好ましい。黒鉛質シート11から生じる金属系の不純物を少なくでき、特に、半導体用途の金属単結晶において品質の安定化に繋げることができるからである。
なお、直胴部9や受け皿部10に熱分解炭素等の被覆や含浸が施されていてもよい。
【0028】
(黒鉛質シートの配置態様)
黒鉛質シート11の配置は、以下に述べる種々の態様が存在する。
(1)黒鉛質シート11を、カーボン製ルツボ5の内面の、直胴部9と受け皿部10との境界部分Aを覆うように配置する態様(図2参照)
このように黒鉛質シート11を直胴部9と受け皿部10との境界部分Aを覆うように配置すると、直胴部9と受け皿部10とが分割されたルツボにおいて特に問題となる境界部分AからのSiOガスの漏洩が防がれ、カーボン製ルツボのSiC化の早期進行を防止することができる。
【0029】
(2)黒鉛質シート11を、境界部分Aに加えて直胴部9の内面全体をも覆うように配置する態様(図3参照)
上記配置態様で黒鉛質シート11を配置すれば、ボーラスで「くわれ」の生じ易いC/C製直胴部9と境界部分Aとを同時に覆うことで、カーボン製ルツボ5の耐久性を飛躍的に向上させることができる。
【0030】
(3)黒鉛質シート11を、直胴部9の内面全体を覆うと共に、さらに受け皿部10のR部10bまで一体として覆うように配置する態様(図4参照)
上記配置態様で黒鉛質シート11を配置すれば、直胴部9、境界部分A、及び最も消耗の大きい受け皿部10のR部10bを一体に覆うことで、確実にSiOガスの漏洩を防いで、局部的なSiC化を抑制することができる。
この場合の黒鉛質シート11は、例えば、図5に示すように、上方は直胴部9に沿い、下端付近が受け皿部10のR部10bに沿うような形となる形状が用いられる。
【0031】
(4)黒鉛質シート11を、カーボン製ルツボ5の内面を一体として覆うように配置する態様(図6参照)
上記配置態様で黒鉛質シート11を配置すれば、一体のシートで内面を被覆することで隙間が生じ難くなり、SiOガスの漏出やカーボン製ルツボ5と石英ルツボ4との接触等を防止することができる。
この態様における黒鉛質シート11としては、例えば図7に示す形状のシートが用いられる。即ち、シート11の下端に切れ目30を入れてルツボ5の底面形状に沿わせると、底部は球状面を構成する。この際の切れ目30の大きさは、ルツボの受け皿部10の形状特に底部10aの曲率に合わせて適宜に決定すればよい。
【0032】
(5)黒鉛質シート11を、受け皿部10内面を覆う平面円形状のシート11aと、直胴部9内面を覆う筒状のシートが組み合わされ、両シートが境界部分で重ね合わされるように配置する態様
上記配置態様で黒鉛質シート11を配置すれば、受け皿部10と直胴部9とを別体として、とりわけ直胴部9の上下寸法が大きくなった場合(太陽電池における融液の大容量化)でもシートの加工を容易にすることができる。また両シートが重ね合わされているため、石英ルツボ4と受け皿部10が接触する不具合も防ぐことができる。
この態様における平面円形状のシート11aとしては、例えば、図8に示す形状のシートであり、筒状のシートとしては、例えば図5のような形状のシートである。図8に示す形状のシートでは、円形の外縁に設けられたスリット31により、円形の周辺がR部10bに沿うような形となり、図5のようなシートと組み合わせることでR部10bのやや下方で両シートが重なり合い、隙間のない配置とできる。
【0033】
(6)黒鉛質シート11は複数枚重ねて使用する態様
上記態様の使用により、受け皿部10と直胴部9との間に生じる段差への対応が容易となり、またクッション性を高めて段差付近の隙間の発生を抑制し、当該隙間からのSiOガスの漏洩を防止することができる。より詳しく説明すれば、直胴部9と受け皿部10とが分割されたルツボにおいては、受け皿部10と直胴部9との間に段差が生じる場合があり、当該隙間からSiOガスが漏洩する恐れがある。このような場合に、黒鉛質シート11は複数枚重ねて使用すると、クッション性が高められ、受け皿部10と直胴部9との間に生じる段差付近の隙間の発生が抑制されるので、当該隙間からのSiOガスの漏洩を防止することができる。
【0034】
(膨張黒鉛シートの製造方法)
膨張黒鉛シートは、以下の方法で作製される。1枚物の膨張黒鉛シートは膨張化黒鉛から製造されたシート状の材料であり、その代表例について説明すると以下の通りである。先ず、天然又は合成燐片状黒鉛やキッシュ黒鉛等を酸化剤で処理して、黒鉛粒子に層間化合物を形成せしめ、次いでこれを高温に加熱好ましくは急激に高温にさらして急膨張せしめる。この処理により黒鉛粒子の層間化合物のガス圧により、層平面直角方向に黒鉛粒子は拡大され通常100〜250倍程度に体積が急膨張するものである。この際使用される酸化剤としては層間化合物を形成せしめ得るものが使用され、例えば硫酸と硝酸との混酸、硫酸に硝酸ナトリウムや過マンガン酸カリ等の酸化剤を混合したものが例示できる。
次いで、不純物を灰分100ppm以下、特に好ましくは灰分50ppm以下に除去した後、この膨張化黒鉛を適宜な手段、例えば圧縮又はロール成形によってシート状に施して、膨張黒鉛シートを作製する。
次いで、上記方法で製造された膨張黒鉛シートを、上記配置態様に応じて所定寸法及び形状に裁断分割化して本発明に係る膨張黒鉛シート11を作製する。
【0035】
(実施の形態2)
本実施の形態2では、直胴部9が複数に分割された黒鉛製分割片で構成され、黒鉛質シート11は直胴部9の内面全体を覆うように配置された構成とされている。黒鉛で受け皿部10と別体の直胴部9を形成した場合には、直胴部9が温度変化により割れが生じ易くなるため、直胴部9を分割化することが必須となる。しかし、直胴部9を分割化すると、分割部分でSiOガスの漏洩が生じる恐れがある。そこで、本実施の形態2のように、分割部分(黒鉛製分割片の突合せ部分)と境界部分Aとを黒鉛質シート11で覆うことでSiOガスの漏洩により生じる不具合を防止できる。
【0036】
(実施の形態3)
本実施の形態3では、図9に示すように、受け皿部10を2分割した黒鉛製分割片40,40で構成するとともに、黒鉛質シート11は、図10に示すように、黒鉛製分割片40の分割部分A1(黒鉛製分割片同士の突合せ部分)付近を覆う受け皿シート部21と、前記境界部分Aを覆う境界シート部22とが一体的に形成された構成とされている。なお、境界シート部22には、R部に沿わせるため、外周内側にスリット41が設けられている。
【0037】
持ち運び等の利便性から、黒鉛製受け皿部10を、例えば2分割や3分割に分割しておき、分割された各部分を各々突合せて受け皿部10を構成する。しかしながら、このような分割構成であれば、黒鉛製分割片40の分割部分A1からSiOガスが通過するため、これら分割部分A1が選択的にSiC化するおそれがある。そこで、本実施の形態3における黒鉛質シート11は、局所的にSiC化するおそれのある部分(黒鉛製分割片40の分割部分A1及び境界部分A)のみを黒鉛質シート11で覆うべく、分割部分A1付近を覆う受け皿シート部21と、境界部分Aを覆う境界シート部22とを備えた黒鉛質シート11を使用する。このような黒鉛質シート11により、少ないシートの量で、SiOガスの漏洩を防止し、局部的なSiC化を抑制するのに十分な効果を得ることができる。
【0038】
本実施の形態では、2分割の例を示したが、3分割、4分割等に分割する構成であってもよい。また、受け皿シート部21と境界シート部22とを一体に設けているが、別体で設けるようにしてもよい。なお、一体であれば位置ずれを防止でき、別体であればシートの加工を簡便にできる。
【0039】
(その他の事項)
(1)上記実施の形態では、シリコン単結晶引上げ装置に使用される石英ルツボを保持するためのカーボン製ルツボを例示したけれども、本発明はガリウム等の金属単結晶引上げ装置に使用される石英ルツボを保持するためのカーボン製ルツボにも適用することができる。
【0040】
(2)カーボン製ルツボは、直胴部9が炭素繊維強化炭素材(C/C材)から成り、網状に織り込まれた網状体で構成されている場合(例えば、特開平02−116696号公報や特開2009−203093号公報に開示されている網状体)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、シリコン等の金属単結晶引上げ装置に使用される石英ルツボを保持するためのカーボン製ルツボに適用される。
【符号の説明】
【0042】
1:単結晶引き上げ装置
4:石英ルツボ
5:カーボン製ルツボ
9:直胴部
10:受け皿部10
10a:受け皿部10の底部
10b:受け皿部10の曲面状部分(R部)
A:境界部分
A1:分割部分
40:黒鉛製分割片
21:受け皿シート部
22:境界シート部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直胴部と受け皿部とが分割されたカーボン製ルツボであって、
カーボン製ルツボの内面の、少なくとも直胴部と受け皿部との境界部分を覆うように、黒鉛質シートを配置したことを特徴とするカーボン製ルツボ。
【請求項2】
前記黒鉛質シートは膨張黒鉛シートである、請求項1記載のカーボン製ルツボ。
【請求項3】
前記黒鉛質シートは、その灰分が100ppm以下である、請求項1記載のルツボ保持部材。
【請求項4】
前記直胴部は炭素繊維強化炭素複合材から成り、前記黒鉛質シートは、前記境界部に加えて、直胴部の内面全体を覆うように配置されている、請求項1記載のカーボン製ルツボ。
【請求項5】
前記直胴部は複数に分割された黒鉛製分割片で構成され、前記黒鉛質シートは、前記境界部に加えて、直胴部の内面全体を覆うように配置されている、請求項1記載のカーボン製ルツボ。
【請求項6】
前記受け皿部は、底部と、底部から前記直胴部に連なる曲面状部分とで構成され、前記黒鉛質シートは、前記境界部に加えて、直胴部の内面全体から前記曲面状部分まで一体に覆うように配置されている、請求項1記載のカーボン製ルツボ。
【請求項7】
前記黒鉛質シートは、カーボン製ルツボの内面を一体に覆うように配置されている、請求項1記載のカーボン製ルツボ。
【請求項8】
前記黒鉛質シートは、受け皿部内面を覆う平面円形状のシートと、直胴部内面を覆う筒状のシートが組み合わされ、両シートが境界部分で重ね合わされた構成である、請求項7記載のカーボン製ルツボ。
【請求項9】
前記受け皿部は複数に分割された黒鉛製分割片で構成され、
前記黒鉛質シートは、前記分割片同士の突合せ部付近を覆う受け皿シート部と、前記境界部分を覆う境界シート部とを備えた、請求項7記載のカーボン製ルツボ。
【請求項10】
前記黒鉛質シートは、複数枚を重ねた構成である、請求項1記載のカーボン製ルツボ。
【請求項11】
前記黒鉛質シートは、厚さが0.2〜1.0mm、かさ密度が0.7〜1.3g/cmである、請求項1記載のカーボン製ルツボ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−56783(P2012−56783A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199233(P2010−199233)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000222842)東洋炭素株式会社 (198)
【Fターム(参考)】