説明

ガイド装置及び研削装置並びにそれを用いた希土類金属磁石の加工方法

【課題】蛇腹内への粉塵の侵入をより低減することのできるガイド装置を提供する。
【解決手段】直線状に延設されたガイドバー11と、ガイドに沿って往復移動する滑り軸受け16、17と、滑り軸受け16、17の移動方向一端側に配置されてガイドバー11を覆い、滑り軸受け16、17の往復移動に伴って伸縮する第1の蛇腹14、第2の蛇腹15と、第1の蛇腹14の内部と第2の蛇腹15の内部とを連通する第2流路11b、第4流路12a、分岐管24、分岐管25、第5流路13a及び第3流路11cとからなるガス連通路と、ガス連通路を構成する分岐管24、分岐管25に対して大気圧を超える圧力を付与するガス供給源27を備えるガイド装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の駆動部分を構成するガイド装置に関し、工作機械から出される粉塵、特に数ミクロンの微小な粉塵の付着を防止するガイド装置及び研削装置並びにそれを用いた希土類金属磁石の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研削装置は、一般的に、ベースに配設されたガイドに沿って往復移動するテーブルを備えており、このテーブルに被削材を固定し、テーブルを移動させつつ、回転する砥石で被削材を研削する。この研削に伴って切粉や砥石屑等(以下、粉塵と総称する)が発生する。この粉塵がガイドに付着すると、テーブルのスムーズな往復移動を妨げ、研削の精度を劣化させる原因にもなる。そこで、ガイドの両端部周囲を伸縮自在な一対の蛇腹で各々カバーすることが行われていた。
ところが、テーブルの移動に伴って蛇腹が伸縮するため、蛇腹がふいごとしての機能を持つことになり、伸びる側の蛇腹内の気圧が下がるために、微小な隙間から空気が流入する。この外部から流入する空気とともに粉塵が蛇腹内に侵入し、ガイドに付着することになる。
【0003】
このような問題点を解消するために、特許文献1及び特許文献2は、蛇腹内を正圧とすることを提案している。しかるに、例えば、上記テーブルが往復移動する場合、左右の蛇腹内では交互に加圧、減圧が繰り返されるので、粉塵を引き込みやすい。したがって、単に蛇腹内を正圧にしただけでは粉塵の侵入を充分に阻止することができない。蛇腹の膨張時、減圧されて粉塵を引き込んでしまう。蛇腹内の圧力を高めるとテーブル等の往復動の動作を妨げる虞がある。
【0004】
また、特許文献3は、図4に示す工作機械を提案している。この工作機械は、ガイドレール113に沿って往復移動するテーブル114の両端に、伸縮自在な蛇腹118、119が取付けられている。支持具115で支持された被削材116を砥石117で研削するために、テーブル114が往復移動すると、例えば蛇腹118内の気圧が上昇し、蛇腹119内の気圧が降下しようとするが、ベース112に形成された空気流通路120が、蛇腹118、119内の空気を流通させるので、その気圧が均等化される。よって、蛇腹119に、外部から粉塵を含んだ空気が侵入しない、と特許文献3は述べている。ところが、特許文献3の提案においても、テーブル114の移動速度が速くなると粉塵の侵入を十分に阻止することが難しくなる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−94284号公報
【特許文献2】特開平11−347948号公報
【特許文献3】特開2002−126970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような技術的課題に基づいてなされたもので、テーブル、その他の移動体の移動速度が速くなっても、蛇腹内への粉塵の侵入を低減することのできるガイド装置を提供することを目的とする。また本発明は、そのようなガイド装置を備えた研削装置、さらにこの研削装置を用いた希土類金属磁石の加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特許文献2には、2つの蛇腹を連通させ、2つの蛇腹のうちの一方の蛇腹に対してガスを供給して2つの蛇腹内を正圧にすることが開示されているが、本発明者等の検討によれば前述したように粉塵の侵入を十分に阻止することができない。これに対して、2つの蛇腹の両方に対して大気圧以上の圧力を付与することとしたところ、粉塵の侵入を著しく低減できることを知見した。本発明のガイド装置は以上の知見に基づくものであり、直線状に延設されたガイドと、ガイドに沿って往復移動する移動体と、移動体の移動方向一端側に配置されてガイドを覆い、移動体の往復移動に伴って伸縮する第1の蛇腹と、移動体の移動方向他端側に配置されてガイドを覆い、移動体の往復移動に伴って伸縮する第2の蛇腹と、第1の蛇腹の内部と第2の蛇腹の内部とを連通するガス連通路と、
第1の蛇腹の内部に対して大気圧を超える圧力を付与する第1の圧力付与経路と、第2の蛇腹の内部に対して大気圧を超える圧力を付与する第2の圧力付与経路とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のガイド装置において、第1の圧力付与経路及び第2の圧力付与経路を繋げることによって、ガス連通路を構成することができ、そうすることにより粉塵の侵入防止効果をより向上することができる。またこれによれば、配管等により、別途ガス連通路を作製する必要がない。
本発明は、種々の形態のガイド、移動体について適用することができるが、ガイドを棒状のものとする場合に、その長手方向に延設され、かつガス連通路を構成する中空孔を備え、第1の圧力付与経路及び第2の圧力付与経路からの大気圧を超える圧力を、この中空孔を介して第1の蛇腹及び第2の蛇腹に対して付与する形態とすることができる。ここで、ガス連通路の数は、1つに限定されない。上記のように、第1の圧力付与経路及び第2の圧力付与経路を繋げることによってガス連通路を構成し、さらにガイドに中空孔を設けてガス連通路を設けることもできる。
また本発明において、ガス供給源と、ガス供給源から供給されたガスの圧力を減圧して第1の圧力付与経路及び第2の圧力付与経路に供給する減圧弁を含むことが好ましい。ガスを減圧弁により定圧化することにより、ガスの圧力変動を抑制するのに効果的である。
【0009】
本発明のガイド装置において、ガイドは摺動面を有し、移動体は、摺動面を摺動しながらガイドに沿って往復移動する形態とすることができる。そしてこの場合、移動体とともにガイドに沿って往復移動し、かつガイドの摺動面を拭浄する拭浄手段を移動体の移動方向の両側に備えることが好ましい。
さらに、ガイドの摺動面に付着した粉塵を掻き取る掻取手段を、移動体に対して拭浄手段の外側に併設することが好ましい。
本発明のガイド装置は、第1の蛇腹、第2の蛇腹の内部に、粉塵が侵入することを防止するものであるが、粉塵の侵入を完全に阻止できない場合もある。侵入した粉塵がガイドの摺動面に付着し、摺動面と移動体との間に「カジリ」が発生することを防止するために、拭浄手段と掻取手段を設けることが好ましいのである。従来、金属加工等に掻取手段は用いられることがある。しかしこの場合、加工によって発生するものは、数百ミクロンから数ミリに及ぶような大きなサイズを有しており、粉塵とは呼べないほど大きなものである。多量の粉塵、特に数ミクロンサイズの微小な大きさの粉塵が発生する工作機械では掻取手段や拭浄手段は用いられてこなかった。カジリ防止には効果があるが、反面、拭浄手段と掻取手段による負荷抵抗を大きくしなければならず、移動体のスムーズな動きを妨げてしまう危険性があるためである。特に拭浄手段に付着した粉塵の量が多くなると、負荷抵抗は徐々に増加していく。そのため拭浄手段を頻繁に交換しなければならず、実用的ではなかったためと解される。本発明では蛇腹内に侵入する粉塵の量を著しく減らすことができたため、初めて実用レベルで拭浄手段と掻取手段が有効に活用でき、カジリを防止することが可能となった。
【発明の効果】
【0010】
第1の蛇腹の内部に対して大気圧を超える圧力を付与する第1の圧力付与経路と、第2の蛇腹の内部に対して大気圧を超える圧力を付与する第2の圧力付与経路を設ける本発明によれば、移動体の移動速度が速くなっても、蛇腹内への粉塵の侵入をより低減することのできるガイド装置を提供することができる。さらに、拭浄手段と掻取手段を設けることにより、粉塵の侵入を完全に阻止できない場合であっても、侵入した粉塵により、ガイドの摺動面と移動体との間にカジリが発生することを防止し又はカジリ発生までの期間を長くすることができる。
また、本発明の研削装置は、以上のガイド装置を備えているため、研削加工中にガイドの摺動面と移動体との間のカジリ発生を著しく低減できる。したがって、研削加工の効率を向上することができる。
さらにまた、本発明の希土類金属磁石の加工方法によれば、以上のガイド装置を備えた研削装置を用いて行うため、希土類金属磁石の製造工程における研削加工の効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は本発明のガイド装置を適用した研削装置1の構成概略を示す正面図である。
研削装置1は、図示しない駆動モータにより、鉛直方向に往復移動するテーブル2を備えている。テーブル2上には、被削材GBをクランプするためのクランパ3、4を備えている。また、研削装置1は、被削材GBを研削するための回転砥石GWを備えている。研削装置1は、テーブル2が往復移動する過程で、クランパ3、4にクランプされた被削材GBを回転砥石GWで研削するものである。
【0012】
研削装置1は、ガイド装置10を備えている。
ガイド装置10は、テーブル2の往復移動の精度を確保するガイドバー11を備えている。ガイドバー11は円筒状をなしており、その両端部には、第1の蛇腹14内に一端が開口する第2流路11b及び第2の蛇腹15内に一端が開口する第3流路11cが形成されている。ガイドバー11の両端には、ヘッド12、13が取付けられている。ヘッド12には、一端が第2流路11bの他端に連通し、他端が後述する分岐管24と連通する第4流路12aが形成されている。また、ヘッド13には、一端が第3流路11cの他端に連通し、他端が分岐管25と連通する第5流路13aが形成されている。
【0013】
ガイドバー11の外周には所定の間隔を隔てて、本発明の移動体としての滑り軸受け16、17が配設されている。この滑り軸受け16、17は管状の連結部材22を介して一体化されている。ガイドバー11の外周には、拭浄手段であるフェルト18、19が所定の間隔を隔てて配設されている。フェルト18は滑り軸受け16に、また、フェルト19は滑り軸受け17に併設されている。ガイドバー11の外周には、また、掻取手段であるスクレーパ20、21が所定の間隔を隔てて配設されている。スクレーパ20はフェルト18に、また、スクレーパ19はフェルト21に併設されており、滑り軸受け16、17に対して、フェルト18、19の外側に位置する。
【0014】
連結部材22は、連結部材5を介してテーブル2と接続されている。したがって、テーブル2が図示しないアクチュエータにより往復移動するのに伴って、滑り軸受け16、17は、ガイドバー11の外周面を摺動する。換言すれば、テーブル2は、滑り軸受け16、17がガイドバー11を摺動しながら往復移動することにより、その往復移動の精度が確保される。
【0015】
ヘッド12には第1の蛇腹14の一端が取付けられている。第1の蛇腹14は、ヘッド12とスクレーパ20との間において、ガイドバー11の外周面に粉塵が付着するのを防止するものであり、第1の蛇腹14の他端はフェルト18の外周に取付けられている。ただし、この取付け位置は、ガイドバー11を覆うことができる限り任意である。
同様に、ヘッド13には第2の蛇腹15の一端が取付けられている。第2の蛇腹15は、ヘッド13とスクレーパ21との間において、ガイドバー11の外周面に粉塵が付着するのを防止するものであり、第2の蛇腹15の他端はフェルト19の外周に取付けられている。
【0016】
研削装置1は、ガス供給源27を設けており、このガス供給原27はガス流通配管23に向けてガスを供給する。被削材GBが希土類金属磁石のような酸化性の高い材料の場合は非酸化ガス、例えば窒素ガスを用いることが好ましい。ガス流通配管23上には減圧弁26が配置されており、ガス供給原27から供給される窒素ガスの圧力を低減し、減圧弁26から先のガス流通配管23に対して定圧のガスを供給することができる。例えば、供給される窒素ガスの圧力Pは、1〜10kPa程度すればよい。
ガス供給配管23は、2つの分岐管24、25に分岐されている。一方の分岐管24は、ヘッド12に接続されており、分岐管24の中空部とヘッド12の第4流路12aが連通している。また、分岐管25は、ヘッド13に接続されており、分岐管25の中空部とヘッド13の第5流路13aと連通している。したがって、第1の蛇腹14及び第2の蛇腹15は、分岐管24及び分岐管25を介して連通している。このような構造とすることにより第1の蛇腹14及び第2の蛇腹15の各々に加圧することができるので、たとえ第1の蛇腹14及び第2の蛇腹15の一方の蛇腹が減圧状態になっても、その内部は負圧にならず外部からの粉塵の侵入を阻止することができる。また、第1の蛇腹14及び第2の蛇腹15の一方の蛇腹が急激に膨張することによりその内部が負圧になった場合は、他方の蛇腹はその分強く正圧となっているので、定圧に戻すためのガス移動が、外部すなわち大気圧以上に強く起こり、やはり外部からの粉塵を侵入させにくくする。
【0017】
ガイド装置10は以上のような構成を有しており、第1の蛇腹14の内部、第2の蛇腹15の内部、第2流路11b、第3流路11c、第4流路12a、第5流路13a、分岐管24及び分岐管25の内部は、実質的に閉じた系を構成し、この系には大気圧P+窒素ガス圧Pの圧力が付与されている。
【0018】
次に、研削装置1、特にガイド装置10の部分の動作について説明する。
図示しないアクチュエータがテーブル2をガイドバー11に沿って往復移動させる。この往復移動に伴い、被削材GBも往復直線移動する。回転砥石GWが被削材GBに対して相対的に移動し、被削材GBの表面を研削する。
【0019】
第1の蛇腹14及び第2の蛇腹15は、テーブル2の往復移動に追従して伸縮する。その際、第1の蛇腹14及び第2の蛇腹15は、ガイドバー11の表面を外部から隔離し、研削で発生する粉塵がガイドバー11の表面に付着することを防止する。
テーブル2が図1の状態から上方に移動したとする。そうすると、第1の蛇腹14内の空間の容積が減少し、一方、第2の蛇腹15内の空間の容積は増加する。これに伴い、第1の蛇腹14内の空間の圧力は上昇し、第2の蛇腹15内の空間の圧力は降下しようとする。ところが、第2の蛇腹15の内部へは分岐管25を介して窒素ガス圧Pによる圧力付与を行っている。したがって、第2の蛇腹15内の空間の圧力降下が付与圧力以内の圧力降下であれば、第2の蛇腹15内は正圧すなわち大気圧以上の圧力を維持でき、外部からのガス流入及び粉塵の流入を防止できる。しかも、第1の蛇腹14の内部と第2の蛇腹15の内部は、第2流路11b、第4流路12a、分岐管24、分岐管25、第5流路13a及び第3流路11cからなるガス連通路(第1のガス連通路)を介して連通している。そのために、第1の蛇腹14の内部の気体が、第1のガス連通路を通じて、第2の蛇腹15の内部に流入しようとする。したがって、第2の蛇腹15内で付与圧力以上の圧力降下がおきたとしても、第1の蛇腹14内ではその分だけ圧力上昇が起きているので、外部すなわち大気圧以上に第1の蛇腹14から第2の蛇腹15に向けてガス移動が起き、やはり第2の蛇腹15内への外部からの粉塵の侵入を防止できる。また、第1の蛇腹14及び第2の蛇腹15が連通しているため、第1の蛇腹14内の空間の圧力上昇、及び第2の蛇腹15内の空間の圧力降下が抑制され、付与圧力以上の圧力降下がおきにくい構造となっている。
【0020】
逆に、テーブル2が図1の下方に移動したとする。そうすると、第1の蛇腹14内の空間の容積が増加し、一方、第2の蛇腹15内の空間の容積は減少する。これに伴い、第1の蛇腹14内の空間の圧力は降下し、第2の蛇腹15内の空間の圧力は上昇しようとする。ところが、第1の蛇腹14の内部へは分岐管25を介して窒素ガス圧Pによる圧力付与を行っている。しかも、第1の蛇腹14の内部と第2の蛇腹15の内部は、第1のガス連通路を介して連通している。そのために、第2の蛇腹15の内部の気体が、第1のガス連通路を通じて、第1の蛇腹14の内部に流入しようとする。したがって、第1の蛇腹14内で付与圧力以上の圧力降下がおきたとしても、第2の蛇腹15内ではその分だけ圧力上昇が起きているので、外部すなわち大気圧以上に第2の蛇腹15から第1の蛇腹14に向けてガス移動が起き、やはり第1の蛇腹14内への外部からの粉塵の侵入を防止できる。また、第1の蛇腹14及び第2の蛇腹15が連通しているため、第1の蛇腹14内の空間の圧力降下、及び第2の蛇腹15内の空間の圧力上昇が抑制され、付与圧力以上の圧力降下がおきにくい構造となっている。
【0021】
テーブル2の移動速度が遅い場合には、第1の蛇腹14及び第2の蛇腹15の2つのうちの一方の蛇腹に対してガス圧を付与しても第1の蛇腹14及び第2の蛇腹15内部への粉塵の侵入を阻止することができる。しかし、テーブル2の移動速度が例えば150mm/secと速い場合には、第1の蛇腹14内の空間の圧力及び第2の蛇腹15内の空間の圧力変動抑制には不十分である。
【0022】
そこでガイド装置10、第1の蛇腹14及び第2の蛇腹15の各々に対して圧力を付与できる構成とすることにより、第1の蛇腹14及び第2の蛇腹15内部の圧力変動を抑制し、粉塵の侵入を十分に阻止することができる。この場合、テーブル2が図1の状態から上方に移動したとする。そうすると、分岐管25に存在していたガスが、ヘッド13の第5流路13a及び第3流路11cを介して第2の蛇腹15内の空間に流入することができる。このとき、分岐管24に存在していたガスは第1の蛇腹14の空間の容積が減少することに伴って、分岐管25の方に移動する。このような構造とすることにより、第1の蛇腹14及び第2の蛇腹15の各々に加圧することができるので、たとえ一方の蛇腹が減圧状態になっても、外部からの粉塵の侵入を阻止することができる。
【0023】
以上のように、分岐管24及び分岐管25を第1の蛇腹14及び第2の蛇腹15の間のガス連通路とし、かつ両方の蛇腹に加圧し、大気圧Paを超える圧力にしておくことにより、テーブル2の移動速度が速い場合であっても、第1の蛇腹14内から第2の蛇腹15内へのガスの移動、または第2の蛇腹15内から第1の蛇腹14内への窒素ガスの移動を迅速に行うことができる。さらに、減圧弁26を介してガス供給原27から当該系内に大気圧Paを超える圧力が付与されているために、テーブル2の移動に伴って第1の蛇腹14内部及び第2の蛇腹15内部が負圧になることを防止している。
【0024】
研削装置1は、以上のようにして第1の蛇腹14内部及び第2の蛇腹15内部への粉塵の侵入を阻止しているが、侵入を完全になくすことは容易ではない。ガイド装置10の使用期間が長期に亘る場合にはなおさらである。そこで、やむなく侵入した粉塵がガイドバー11の摺動面に付着した場合でも、それを除去すべく設けたのがスクレーパ20、21である。スクレーパ20、21は、第1の蛇腹14内部及び第2の蛇腹15内部へ侵入し、かつガイドバー11の外周面に付着した粉塵を、テーブル2の往復移動に伴って、掻き取ることができる。ただし、スクレーパ20、21は、その内周面がガイドバー11に対して若干の隙間を空けて、あるいは、軽く接触して配設されている。強く接触すると掻き取り効果は大きくなるが、反面、接触抵抗が大きくなり、スムーズな動作を妨げてしまう。スムーズな動作を妨げない程度の力による接触が好ましい。そのため、スクレーパ20、21の弾性変形や機械的精度未満のサイズの粉塵を掻き取ることはできず、スクレーパ21を通過してしまうことも想定される。このような微小な粉塵が滑り軸受け16、17に到達するのを阻止するために、ガイド装置10は、フェルト18、19を配設している。フェルト18、19はガイドバー11の外周面に接触しており、微小な粉塵を拭浄して滑り軸受け16、17に到達するのを阻止することができる。なお、スクレーパ20、21としてはニトリルゴム等のゴム材、ステンレス等の金属材料が例示される。また、粉塵の拭浄を行うものとしては、フェルト以外に発泡ポリウレタン等を用いることができる。
【0025】
研削装置1は、種々の被削材GBに対して適用することができるが、例えば、金属粉末、セラミックス粉末を加圧成形した成形体の研削に用いることが有効である。成形体は強度が低いため、金属粉末、セラミックス粉末を焼結した焼結体に比べて加工速度を速くすることができる。この加工速度を速くする場合、テーブル2の移動速度を速くするためである。ただし、本発明によるガイド装置10は、研削に限らず、種々の工作機械、その他の機械一般に使用できることは当業者であれば容易に理解することができよう。
【0026】
図2に、ガイド装置10の好ましい形態を示している。
図2のガイド装置10は、ガイドバー11の内部に長手方向に貫通する第1流路11aが形成されており、ガイドバー11の両端部の第2流路11b及び第3流路11cが第1流路11aとガイドバー11の外部とを連通している。
ガイド装置10は以上のような構成を有しており、第1の蛇腹14の内部、第2の蛇腹15の内部、第1流路11a、第2流路11b、第3流路11c、第4流路12a、第5流路13a、分岐管24及び分岐管25の内部は、実質的に閉じた系を構成し、この系には大気圧P+窒素ガス圧Pの圧力が付与されている。
【0027】
テーブル2が図2の状態から上方に移動したとする。そうすると、第1の蛇腹14内の空間の容積が減少し、一方、第2の蛇腹15内の空間の容積は増加する。これに伴い、第1の蛇腹14内の空間の圧力は上昇し、第2の蛇腹15内の空間の圧力は降下しようとする。ところが、第1の蛇腹14の内部と第2の蛇腹15の内部は、第1流路11a、第2流路11b及び第3流路11cからなるガス連通路(第2のガス連通路)をも介して連通している。そのために、第1の蛇腹14の内部の気体が、前述した第1のガス連通路に加えてこの第2の連通路を通じて、第2の蛇腹15の内部に流入する。したがって、第1の蛇腹14内の空間の圧力上昇、及び第2の蛇腹15内の空間の圧力降下をより抑制することができ、付与圧力以上の圧力降下をより発生しにくくしている。そのため外部からの粉塵の侵入を更に防止することができる。
【0028】
逆に、テーブル2が図2の下方に移動したとする。そうすると、第1の蛇腹14内の空間の容積が増加し、一方、第2の蛇腹15内の空間の容積は減少する。これに伴い、第1の蛇腹14内の空間の圧力は降下し、第2の蛇腹15内の空間の圧力は上昇しようとする。ところが、第1の蛇腹14の内部と第2の蛇腹の内部は、第2のガス連通路をも介して連通している。そのために、第2の蛇腹15の内部の気体が、前述した第1のガス連通路に加えて第2のガス連通路を通じて、第1の蛇腹14の内部に流入する。したがって、第1の蛇腹14内の空間の圧力降下、及び第2の蛇腹15内の空間の圧力上昇がより抑制することができ、付与圧力以上の圧力降下をより発生しにくくしている。そのため外部からの粉塵の侵入を更に防止することができる。
【0029】
図2に示すガイド装置は、第1のガス連通路及び第2のガス連通路を備えている。したがって、第1の蛇腹14内から第2の蛇腹15内へ、またはその逆に移動することのできるガスの量が多くなり、第1の蛇腹14内から第2の蛇腹15内の圧力変動抑制効果が増すという効果を奏する。
【0030】
研削装置1は、第1の蛇腹14内部及び第2の蛇腹15内部を連通するガス連通路をガイドバー11内に形成しているが、本発明はこの形態に限定されない。
例えば、図3に示す研削装置30のように、連通管28をガイドバー11、第1の蛇腹14及び第2の蛇腹15の外部に設けることもできる。この場合、ガイドバー11の一端側の内部に第6流路11dを形成する。この第6流路11dは、ガイドバー11の一方端に開口するとともに、ガイドバー11の対向する側面に開口している。そしてヘッド12の内部には、第7流路12bがT字状に形成されており、第7流路12bの一端は分岐管24に連通し、他端は連通管28の一端に連通している。
また、ガイドバー11の他端側の内部に第8流路11eを形成する。この第8流路11eは、ガイドバー11の一方端に開口するとともに、ガイドバー11の対向する側面に開口している。そしてヘッド13の内部には、第9流路13bがT字状に形成されており、第9流路13bの一端は分岐管25に連通し、他端は連通管28の他端に連通している。
研削装置30において、研削装置1と同様の部分には図1と同様の符号を付している。
研削装置30においても、研削装置1と同様に、テーブル2の移動に伴う第1の蛇腹14及び第2の蛇腹15の内部の圧力変動を抑制することができる。
【0031】
また、研削装置1、30は、ガイドバー11が、テーブル2の移動をガイドするものであるが、本発明はこの形態に限定されない。例えば、特許文献3に開示された研削装置のように、ガイドレール113に沿って往復移動するテーブル114を備えた装置について適用することができる。この場合、蛇腹118、119の内部に大気圧超のガス圧を付与すればよい。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
32wt%Nd−0.5wt%Co−1wt%B−残部Feの組成の合金をストリップキャスト法で作製し、水素吸排出により粗粉化させた後、ジェットミルで窒素ガスを用いて粉砕して平均粒径4μmの原料合金粉を得た。
この原料合金粉を、1.5Tの磁場中で100MPaの圧力で成形して成形体を得た。成形体の寸法は、45×20×50mmである。また、固定クランパ3及び可動クランパ4の長さは各150mm、断面は45×10mmである。
【0033】
得られた成形体を被削材GBとして、フェルト18、19、スクレーパ20、21を設けていない以外は図1に示す研削装置1を用いて研削を行ない(実施例A)、45×15×50mmの板状形状に研削した。研削は1パスとし、切り込み量は5mmとした。回転砥石GWとしてダイヤモンド(60メッシュ)砥粒電着砥石を用い、下記に示す条件で研削加工を行った。また、フェルト18、19、スクレーパ20、21を設けていない以外は図2に示す研削装置1(実施例B)、実施例Bに対してフェルト18、19を設けた研削装置1(実施例C)、実施例Bに対してフェルト18、19、スクレーパ20、21を設けた研削装置1(実施例D)、を用いて、上記と同様の研削加工を行った。さらに比較として、図1の研削装置1において、第1流路11a、第2流路11b及び第3流路11cを介した第1の蛇腹14内部及び第2の蛇腹15内部の気体の移動のみを行うようにしたガイド装置を設け(比較例a)、また、図1の研削装置1において、第1の蛇腹14にのみガス圧を付与できるようにしたガイド装置を設け(比較例b)、実施例と同様に研削を行った。実施例A〜実施例D、比較例a〜bについて、滑り軸受け16、17に、粉塵によるかじりが発生するまでの研削回数を確認した。その結果を下記する。
【0034】
研削条件:砥石周速度;600m/min、成形体送り速度;15mm/sec
実施例A:50,000回にてカジリ発生
実施例B:56,000回にてカジリ発生
実施例C:60,000回にてカジリ発生
実施例D:240,000回にてカジリ発生
比較例a:12,000回にてカジリ発生
比較例b:20,000回にてカジリ発生
以上の結果から、2つの蛇腹を連通しただけの構造、あるいは1つの蛇腹にだけガス圧を付与する構造に対して、2つの蛇腹を連通し、かつ2つの蛇腹の両者にガス圧を付与する構造とすることにより、カジリ発生までの研削回数を3〜5倍とすることができることが判明した。これは粉塵の侵入を著しく抑制できたためである。また、フェルト18、19やスクレーパ20、21を取付けることで、カジリ発生防止に効果があることが判明した。特にフェルト18、19とスクレーパ20、21を両方取付けた場合(実施例D)は、フェルト18、19のみを取付けた場合(実施例C)に比べ、カジリ発生までの研削回数を4倍と著しく伸ばすことができ、これは単に2つを取付けて得られる効果の予想をはるかに越える良好な結果であった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を適用した研削装置の正面図である。
【図2】本発明を適用した他の研削装置の正面図である。
【図3】本発明を適用した他の研削装置の正面図である。
【図4】特許文献3に開示された研削装置の正面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…研削装置、2…テーブル、3,4…クランパ、5…連結部材、
10…ガイド装置、11…ガイドバー、11a…第1流路、11b…第2流路、11c…第3流路、11d…第6流路、11e…第8流路、12、13…ヘッド、12a…第4流路、12b…第7流路、13a…第5流路、13b…第9流路、14…第1の蛇腹、15…第2の蛇腹、16、17…滑り軸受け、18、19…フェルト、20、21…スクレーパ、22…連結部材、23…ガス流通配管、24、25…分岐管、26…減圧弁、27…ガス供給源、28…連通管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に延設されたガイドと、
前記ガイドに沿って往復移動する移動体と、
前記移動体の移動方向一端側に配置されて前記ガイドを覆い、前記移動体の往復移動に伴って伸縮する第1の蛇腹と、
前記移動体の移動方向他端側に配置されて前記ガイドを覆い、前記移動体の往復移動に伴って伸縮する第2の蛇腹と、
前記第1の蛇腹の内部と前記第2の蛇腹の内部とを連通するガス連通路と、

前記第1の蛇腹の内部に対して大気圧を超える圧力を付与する第1の圧力付与経路と、
前記第2の蛇腹の内部に対して大気圧を超える圧力を付与する第2の圧力付与経路と、
を備えることを特徴とするガイド装置。
【請求項2】
前記第1の圧力付与経路及び前記第2の圧力付与経路が繋がることによって、前記ガス連通路を構成することを特徴とする請求項1に記載のガイド装置。
【請求項3】
前記ガイドは、その長手方向に延設され、かつ前記ガス連通路を構成する中空孔を備え
前記第1の圧力付与経路及び前記第2の圧力付与経路からの前記大気圧を超える圧力を、前記中空孔を介して前記第1の蛇腹及び前記第2の蛇腹に対して付与することを特徴とする請求項1又は2に記載のガイド装置。
【請求項4】
ガス供給源と、前記ガス供給源から供給されたガスの圧力を減圧して前記第1の圧力付与経路及び前記第2の圧力付与経路に供給する減圧弁を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガイド装置。
【請求項5】
前記ガイドは摺動面を有し、
前記移動体は、前記摺動面を摺動しながら前記ガイドに沿って往復移動し、
前記移動体とともに前記ガイドに沿って往復移動し、かつ前記ガイドの前記摺動面を拭浄する拭浄手段を前記移動体の前記移動方向の両側に備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガイド装置。
【請求項6】
前記ガイドの前記摺動面に付着した粉塵を掻き取る掻取手段を、前記移動体に対して前記拭浄手段の外側に併設することを特徴とする請求項5に記載のガイド装置。
【請求項7】
被削材を研削する回転砥石と、
前記被削材を前記回転砥石に対して相対的に往復動させる移動装置と、
前記移動装置の往復動をガイドするガイド装置と、を備え、
前記ガイド装置として請求項1〜6のいずれかに記載のガイド装置を用いることを特徴とする研削装置。
【請求項8】
請求項7に記載の研削装置を用いて成形体又は焼結体を研削すること特徴とする希土類金属磁石の加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−253310(P2007−253310A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84546(P2006−84546)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】