説明

ガススプリング

【課題】ガススプリングの出力ロッドに作用する外力に起因する曲げモーメントによりガススプリングの耐久性が低下するのを防止する。
【解決手段】ガススプリング12は、シリンダ本体20と、ガス収容室21と、ガス圧を受圧する出力ロッド22と、シリンダ本体20のロッド挿通孔の内周部に装着されてシリンダ本体20と出力ロッド22間をシールするシール部材24とを有する。出力ロッド22をガイドするためシリンダ本体20の端部から出力ロッド進出側へ一体的に延びるガイドシリンダ28と、出力ロッド22のうちの出力端側部分に形成され且つガイドシリンダ28に摺動自在に装着されてガイドシリンダ28のロッド挿通孔29から外部へ突出すると共に出力ロッド22の進退移動の最大ストロークよりも長く形成されたガイドロッド部22bとを備えたガイド機構27を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガススプリングに関し、特に出力ロッドがその軸心と平行方向へ進退するようにガイドするガイド機構を設けたガススプリング、このガイド機構と出力ロッドの回転を規制する回転規制機構を設けたガススプリングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インデクサー装置(揺動テーブル装置)、プレス装置、ロボットアーム等の装置には、回転軸が軸支持部に回転自在又は回動自在に枢支され、この回転軸にテーブルユニット、可動盤、アーム等の部材が支持されている。
これらの装置には、装置自体及び/またはワーク等の重量により、不釣り合いモーメントが作用したり、振動発生原因となる動的慣性力が作用するため、それらを相殺するためのガススプリングやエアシリンダを組み込んだバランサ装置が設けられることが多い。
【0003】
国際公開WO2005/038291号公報には、インデクサー装置にガススプリングとカム機構からなるバランサ装置を設けた例が開示されている。
特開平7−116897号公報には、プレス装置に慣性負荷変動を補償するエアシリンダとカム機構からなるバランサ装置を設けた例が開示されている。
【0004】
特開平9−277094号公報には、機械装置の回転軸に発生する変動トルクを相殺する変動トルク相殺装置であって、エアシリンダと、圧縮スプリングと、カム機構とからなる変動トルク相殺装置が開示されている。
特開2011−7282号公報には、ガススプリングのシリンダ本体をトラニオン支持したガススプリングが開示されている。このガススプリングでは、出力ロッドの先端にピストン部が設けられ、ロッド挿通孔の内周部にシール部材が設けられている。
【0005】
ガススプリングには、出力ロッドの基端部のピストン部にガス圧を受圧するピストン受圧型のガススプリングと、出力ロッドにガス圧を受圧するロッド受圧型のガススプリングとがある。
【0006】
ピストン受圧型のガススプリングでは、ピストン部にシール部材を設けるため、ガイドとなる出力ロッドの表面と、シリンダ本体の内面を鏡面状に研磨加工することが必要であるため製作費が高価になる。ロッド受圧型のガススプリングでは、構造がシンプルである上、出力ロッドの表面のみ鏡面状に研磨加工すればよいため、製作費の面で有利である。そのため、ロッド受圧型のガススプリングが広く採用されている。
【0007】
このロッド受圧型のガススプリングは、シリンダ本体と、その内部の圧縮ガスを収容したガス収容室と、このガス収容室の圧縮ガスのガス圧を受圧する出力ロッドであって、シリンダ本体の端壁部に形成されたロッド挿通孔からシリンダ本体外へ突出する出力ロッドと、ロッド挿通孔において出力ロッドとシリンダ本体間をシールするシール部材等で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開WO2005/038291号公報
【特許文献2】特開平7−116897号公報
【特許文献3】特開平9−277094号公報
【特許文献4】特開2011−7282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記バランサ装置等に適用するガススプリングの場合、出力ロッドで押圧する相手方部材から出力ロッドに作用する大きな反力により、出力ロッドに曲げモーメントが作用し、シール部材の耐久性が低下したり、出力ロッドに付着する異物により出力ロッドの表面に傷が発生し、その傷でシール部材が損傷してシール性が低下し、ガス収容室の圧縮ガスがリークし、ガススプリングの機能や耐久性が低下するという問題、或いはガス収容室に頻繁に圧縮ガスを補充しなければならないという問題がある。
【0010】
従来のロッド受圧型のガススプリングでは、ロッド挿通孔の内周部にシール部材が装着されると共に、このシール部材の近くにおいてそのロッド挿通孔の内周部に出力ロッドをガイドする軸心方向の長さが短いガイド部を形成するのが一般的である。この場合、前記の曲げモーメントによる複数の反力の支点間距離が小さくなるため、大きな反力が発生し、その反力による面圧も大きくなる。その結果、前記のようなシール部材の摩耗や損傷などの問題が生じる。
【0011】
そこで、出力ロッドに曲げモーメントが作用しないように、出力ロッドの出力端側部分と出力ロッド本体とを分断したり、受圧用ピストン部と出力ロッドとを分断したりする技術も公知である(特許文献3参照)。
【0012】
特許文献2の図5に示すバランサ装置のガススプリングでは、出力ロッドをガイドするガイド機能を高めているが、出力ロッドの外周部にシール部材を装着するため、シリンダ本体の内面を鏡面加工する必要があり、製作費が高価になる。特許文献4のガススプリングは、ピストン受圧型のプル型のガススプリングであるため、上述のように、シリンダ本体の内面や出力ロッドの表面を鏡面加工する必要があり、製作費が高価になる。
【0013】
他方、前記バランサ装置等では、ガススプリングの出力ロッドの先端にローラ部材を受け、このローラ部材を板状のカム部材の外周面に圧接させるカム機構が採用される。
この場合でも、出力ロッドがその軸心回りに回転しないように規制する回転規制機構が設けられていなかったため、出力ロッドがその軸心回りに回転してカム機構の機能が損なわれてしまうという問題がある(特許文献2,3,4参照)。
【0014】
本発明の目的は、出力ロッドがその軸心と平行方向へ進退するようにガイドするガイド機構であって出力ロッドの最大ストロークよりも長いガイド機構を備えたガススプリング、出力ロッドがその軸心回りに回転しないように規制する回転規制機構を備えたガススプリングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1のガススプリングは、シリンダ本体と、このシリンダ本体内に形成され圧縮ガスを封入したガス収容室と、このガス収容室に挿入され圧縮ガスのガス圧を受圧する出力ロッドと、シリンダ本体のロッド挿通孔の内周部に装着されてシリンダ本体と出力ロッド間をシールするシール部材とを有するガススプリングにおいて、前記出力ロッドがその軸心と平行方向へ進退するように出力ロッドをガイドするガイド機構を設け、前記ガイド機構が、前記シリンダ本体の端部から出力ロッド進出側へ一体的に延びるガイドシリンダと、前記出力ロッドのうちの出力端側部分を成形するガイドロッド部であって前記ガイドシリンダに摺動自在に装着されてガイドシリンダのロッド挿通孔から外部へ突出すると共に前記出力ロッドの進退移動の最大ストロークよりも長く形成されたガイドロッド部とを備えたことを特徴としている。
【0016】
請求項2のガススプリングは、請求項1の発明において、前記ガイドロッド部の進退移動を許容しながらガイドロッド部がガイドシリンダに対して前記軸心回りに回転しないように規制する回転規制機構であって、出力ロッドの進出移動の限界位置を決める機能を有する回転規制機構を設けたことを特徴としている。
【0017】
請求項3のガススプリングは、請求項1または2の発明において、前記ガイドシリンダの出力ロッド進出側の先端近傍部にガイドロッド部を面接触にてガイドする環状の第1ガイド部を形成し、前記ガイドシリンダの長さ方向途中部にガイドロッド部を面接触にてガイドする環状の第2ガイド部を形成し、前記第1,第2ガイド部の間においてガイドロッド部とガイドシリンダ間に環状のグリース充填隙間を形成し、このグリース充填隙間にグリースを充填したことを特徴としている。
【0018】
請求項4のガススプリングは、請求項1〜3の何れか1項の発明において、前記ガイドシリンダの下端から出力ロッドが下方へ突出するようにシリンダ本体とガイドシリンダと出力ロッドが鉛直の倒立姿勢に配置され、前記ガス収容室の下部に潤滑油が収容されたことを特徴としている。
【0019】
請求項5のガススプリングは、請求項2の発明において、前記回転規制機構は、ガイドロッド部の両側側部に前記軸心と平行に形成された1対の規制溝と、前記ガイドシリンダに固定されて1対の規制溝に夫々係合した1対の規制ピンとで構成されたことを特徴としている。
【0020】
請求項6のガススプリングは、請求項2の発明において、前記回転規制機構は、ガイドロッド部に貫通状に前記軸心と平行に形成されたスリット孔と、前記スリット孔に挿通されて両端部がガイドシリンダに固定された規制ピン部材とで構成されたことを特徴としている。
【0021】
請求項7のガススプリングは、請求項2の発明において、前記回転規制機構は、ガイドロッド部の両側側部に前記軸心と平行に面取りして形成された1対の面取り部と、前記ガイドシリンダに固定されて1対の面取り部に夫々係合した1対の規制ピン部材とで構成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、ガイド機構のガイドロッド部は出力ロッドの進退移動の最大ストロークよりも長く形成されているため、出力ロッドが進退動作するとき、ガイドロッド部がガイドシリンダのロッド挿通孔から外部へ突出するだけで、出力ロッドのうちのガイドロッド部以外の出力ロッド本体が外部へ突出することがないため、出力ロッド本体に異物が付着して出力ロッド本体に傷がつくことはなく、出力ロッド本体につく傷によりシール部材を損傷することがなく、シール部材のシール性能を長期に亙って維持することができる。
【0023】
しかも、ガイド機構により出力ロッドをその軸心と平行方向へ円滑に移動するようにガイドできるため、ガイドロッド部に作用する曲げモーメントをガイド機構で吸収することができ、出力ロッド本体に曲げモーメントが作用するのを確実に防止して、シール部材の摩耗や損傷を抑制し、シール性能の低下を防止することができる。
上記のようにガイドロッド部を長く形成するため、上記の曲げモーメントに対抗する複数の反力の支点間距離が大きくなり、それら反力が小さな反力となるから、ガイドシリンダとガイドロッドの摩耗を抑制する面でも有利である。
また、シリンダ本体とガイドシリンダを一体的に形成し、ガイドロッド部を含めて出力ロッドを一体部材に形成するため、部材数を少なくして簡単な構造にすることができる。
【0024】
請求項2の発明によれば、回転規制機構により、出力ロッドが軸心回りに回転しないように規制することができると共に、出力ロッドの進出移動の限界位置を決めることができる。
【0025】
請求項3の発明によれば、第1ガイド部をガイドシリンダの先端近傍部に形成するため、外力によりガイドロッド部に作用する曲げモーメントを極力小さくすることができると共に、第2ガイド部をガイドシリンダの途中部に形成するため、第1,第2ガイド部間の支点間距離を大きくして、前記曲げモーメントに対抗する複数の反力を小さくすることができる。第1,第2ガイド部間においてガイドシリンダとガイドロッド部間に環状のグリース充填隙間を形成し、そこにグリースを充填するため、ガイドシリンダとガイドロッド部間に作用する摩擦力を小さくし、それらの摩耗を抑制することができる。
【0026】
請求項4の発明によれば、ガススプリングが倒立姿勢に配置され、ガス収容室の下部に潤滑油を収容するため、その潤滑油により出力ロッドとシール部材間を潤滑し且つガス密にシールすることができる。
【0027】
請求項5の発明によれば、簡単な構造の回転規制機構を達成できる。
請求項6の発明によれば、簡単な構造の回転規制機構を達成できる。
請求項7の発明によれば、簡単な構造の回転規制機構を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例に係るインデクサー装置の正面図である。
【図2】インデクサー装置の要部拡大縦断正面図である。
【図3】インデクサー装置の要部拡大縦断側面図である。
【図4】バランサ装置の縦断側面図である。
【図5】バランサ装置の縦断正面図である。
【図6】図4のVI−VI線断面図である。
【図7】変形例1の板カムとローラ部材の要部縦断面図である。
【図8】変形例2の板カムとローラ部材の要部縦断面図である。
【図9】変形例3の板カムとローラ部材の要部縦断面図である。
【図10】変形例4の板カムとローラ部材の要部縦断面図である。
【図11】実施例2のガススプリングの縦断側面図である。
【図12】図11のXII−XII線断面図である。
【図13】実施例3のガススプリングの縦断正面図である。
【図14】実施例4のガススプリングの縦断側面図である。
【図15】実施例5のガススプリングの縦断側面図である。
【図16】実施例6のガススプリングの縦断側面図である。
【図17】実施例7のガススプリングの縦断正面図である。
【図18】図17のガススプリングの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0030】
本実施例は、工作機械により機械加工を施すワークを着脱自在に装着するインデクサー装置に、本願特有のガススプリングを含む回転軸バランサ機構を適用した場合の一例である。以下、図1における上下左右方向を上下左右方向として説明する。
【0031】
図1に示すように、インデクサー装置1は、テーブルユニット2、テーブルユニット2上に旋回可能に装備されたターンテーブル3、テーブルユニット2に固定された左右1対の回転軸2a,2b、回転軸2aを回転自在に支持する軸支持部を含む左軸支持機構3、回転軸2bを回動自在に支持する軸支持部を右軸支持機構4、テーブルユニット2と回転軸2a,2bを水平な回転軸心A回りに回動駆動する電動モータ5aを有する回動駆動機構5、回転軸バランサ機構10などを備えている。
【0032】
図1〜図3に示すように、回動駆動機構5は右軸支持機構4に設けられ、この回動駆動機構5から回転軸2bに駆動力が入力されて、テーブルユニット2が回動駆動される。この回動駆動機構5は、回転軸2bに固定されたウォームホイール5bと、このウォームホイール5bに噛合した縦向き姿勢のウォームギヤ5cと、このウォームギヤ5cを回転駆動可能な電動サーボモータ5aとで構成されている。
【0033】
テーブルユニット2には、図1の旋回軸心B回りに旋回可能なターンテーブル3と、その回転駆動機構(図示略)が設けられ、このターンテーブル3にワークWが着脱自在に装着され、ワークWに機械加工が施される。
【0034】
ここで、テーブルユニット2及びターンテーブル3に載置したワークWの重心が回転軸2a,2bの回転軸心Aと一致しない場合、回転軸2a,2bにはこのテーブユニット2とターンテーブル3とワークWの偏荷重により回転モーメントが発生する。回転軸バランサ機構10は、上記の回転モーメントの全部又は一部を相殺するバランスモーメントを発生する為のものである。
【0035】
次に、図2〜図6に基づいて、回転軸バランサ機構10について説明する。
回転軸バランサ機構10は、 右軸支持機構4の軸支持フレーム4aの右端近傍部の上端部に倒立姿勢に固定されている。この回転軸バランサ機構10は、回転軸2bにその軸心に対して偏心状態に外嵌固定されたほぼ楕円形の板カム11と、ガススプリング12と、このガススプリング12の出力ロッド22の先端部に回転自在に取り付けられて板カム11に押圧されるローラ部材13等を有する。尚、軸支持フレーム4aの右端部は、カバー板4bで塞がれている。
【0036】
前記板カム11は、テーブルユニット2が図1に示す最下位置のときに、図4に示すように回転軸心Aからローラ部材13までの距離が最大となるような姿勢にして、複数のボルト14により回転軸2bに固定されている。ローラ部材13は、出力ロッド22のうちのガイドロッド部22bの下端部に水平なピン部材15により回転自在に取り付けられている。
【0037】
ローラ部材13は、ガススプリング12により大きな押圧力で板カム11に押圧されている。テーブルユニット2の揺動位置(つまり、回転軸2a,2bの回転位置)に応じて、ローラ部材13と接触する板カム11の外周面の接触部に水平面に対して傾斜した接触角が発生し、その接触角と上記の押圧力により板カム11に前記バランスモーメントが付加される。板カム11の形状は一例を示すものであるが、回転軸心Aからローラ部材13との接触部までの距離は、図4の状態において最大で、図4の状態から回転軸2a,2bが回転するのに応じて漸減していき、180度回転した状態で最小となる。
【0038】
板カム11が図4の状態から回転軸2a,2bが90度まで回転する間は上記の接触角が漸増し、その後回転軸2a,2bが180度まで回転する間は上記の接触角が漸減する。つまり、テーブルユニット2が図1の状態(0度回転位置)から90度回転した90度回転位置においてバランスモーメントが最大になり、その90度回転位置から0度回転位置又は180度回転位置の方へ離隔するにつれて、バランスモーメントが漸減していき、0度回転位置と180度回転位置では、バランスモーメントが零になる。
【0039】
図2〜図5に示すように、ガススプリング12は、シリンダ本体20と、このシリンダ本体20内に形成され且つ高圧の圧縮ガス(例えば、7〜10MPaの圧縮窒素ガス)を封入したガス収容室21と、このガス収容室21に挿入され圧縮ガスのガス圧を受圧する出力ロッド22と、シリンダ本体20のロッド側端壁部20aのロッド挿通孔23の内周部に装着されてシリンダ本体20と出力ロッド22間をシールするシール部材24とを有する。ガイドシリンダ28の下端部からガイドロッド部22bが下方へ延びるようにガススプリング12は鉛直の倒立姿勢に配設されている。
【0040】
シリンダ本体20の上端部にはリング部材20bを介して上端壁部材20cが固定され、シリンダ本体20の下端部分にはロッド側端壁部20aが形成され、ロッド側端壁部20aに形成された環状溝にガス収容室21の圧縮ガスを封止する合成樹脂製のシール部材24が装着されている。上端壁部材20c中央部には、ガス収容室21に圧縮ガスを充填する為のガス充填バルブ25が装着されている。ガス収容室21の下部に潤滑とガスシールの為の潤滑油26が収容されている。
【0041】
このガススプリング12においては、出力ロッド22がその軸心と平行方向へ進退するように出力ロッド22をガイドするガイド機構27が設けられている。このガイド機構27が、シリンダ本体20の端部から出力ロッド進出側へ一体的に延びるガイドシリンダ28と、出力ロッド22のうちの出力端側部分を形成するガイドロッド部22bであって、ガイドシリンダ28に摺動自在に装着されてガイドシリンダ28のロッド挿通孔29から外部へ突出すると共に出力ロッド22の進退移動の最大ストロークよりも長く形成されたガイドロッド部22bとを備えている。つまり、ガイド機構27は、出力ロッド22の進退移動の最大ストロークよりも長く形成されている。尚、本実施例のガイドロッド部22bは、上記最大ストロークの約2倍の長さを有するため、ガイド機構27も上記最大ストロークの約2倍の長さを有する。
【0042】
ガイドシリンダ28の外径はシリンダ本体20の外径と等しく形成され、ガイドシリンダ28の下端寄り部分には固定用フランジ28aが形成され、この固定用フランジ28aを軸支持フレーム4aに複数のボルトで固定することで、ガススプリング12が倒立姿勢に取り付けられている。ガイドロッド部22bは出力ロッド22のうちのガイドロッド部22b以外の部分(出力ロッド本体22a)よりも大径に形成されている。
【0043】
ガイドシリンダ28の出力ロッド進出側の先端近傍部にガイドロッド部22bを面接触にてガイドする環状の第1ガイド部31が形成され、ガイドシリンダ28の長さ方向途中部にガイドロッド部22bを面接触にてガイドする環状の第2ガイド部32が形成され、第1,第2ガイド部31,32の間においてガイドロッド部22bとガイドシリンダ28間に環状のグリース充填隙間33が形成され、このグリース充填隙間33にグリースが充填されている。グリース充填隙間33にグリースを充填する為の充填口33aがガイドシリンダ28に設けられている。
【0044】
第1,第2ガイド部31,32間の間隔は、出力ロッド22の進退移動の最大ストロークよりも小さく設定されている。図4に実線で図示のように出力ロッド22が最大限退入した状態においても、図4に鎖線で図示のように出力ロッド22が最大限進出した状態においても、ガイドロッド部22bは、第1,第2ガイド部31,32に当接してガイドされている。
【0045】
図4〜図6に示すように、このガススプリング12においては、さらに、ガイドロッド部22bの進退移動を許容しながらガイドロッド部22bがガイドシリンダ28に対して軸心C回りに回転しないように規制する回転規制機構34であって、出力ロッド22の進出移動の限界位置を決める回転規制機構34が設けられている。
この回転規制機構34は、ガイドロッド部22bの両側側部に軸心Cと平行に形成された1対の規制溝35と、ガイドシリンダ28に固定されて1対の規制溝35に夫々係合した1対の規制ピン36とを備えている。
1対の規制溝35は、図4に示すように、ガイドロッド部22bのうちのピン部15の軸心方向の両側側部(左右両側部)に形成される。つまり、1対の規制溝35は、ガイドロッド部22bに作用する外力による曲げモーメントに対抗する複数の反力が作用するガイドロッド部22bの両側側部(前後両側部)とは軸心Cの回りに90度位相を異ならせた部位に形成されている。そのため、曲げモーメントに対抗する反力を受ける部分には、規制溝35などがないから、反力を広い部分円筒面で受けることができる。
【0046】
ガイドロッド部22bの両側側部に軸心Cと平行な1対の面取り部35aが形成され、これら1対の面取り部35aに1対の規制溝35が夫々形成されている。規制溝35の長さは、出力ロッド22の進退移動のストロークよりも大きく、出力ロッド22の進退移動の妨げにならない長さに形成されている。但し、ガススプリング12を組み付ける前の状態において、1対の規制溝35の上端を1対の規制ピン36で夫々係止することにより、出力ロッド22がシリンダ本体20とガイドシリンダ28から脱落しないように構成してある。規制ピン36は、ガイドシリンダ28の壁部の取付け穴に嵌入し、フランジ部36aを1対のボルト37でガイドシリンダ28に固定することで取り付けられている。
【0047】
上記のガススプリング12の作用、効果について説明する。
ガイド機構27のガイドロッド部22bは出力ロッド22の進退移動の最大ストロークよりも長く形成されているため、出力ロッド22が進退動作するとき、ガイドロッド部22bがガイドシリンダ28のロッド挿通孔29から外部へ突出するだけで、出力ロッド22のうちのガイドロッド部22b以外の出力ロッド本体22aが外部へ突出することがないため、出力ロッド本体22aに異物が付着して出力ロッド本体22aに傷がつくことはなく、出力ロッド本体22aにつく傷でもってシール部材24が傷つくことがなく、シール部材24のシール性能を長期に亙って維持し、ガススプリング12の耐久性を高めることができる。
【0048】
しかも、ガイド機構27により出力ロッド22をその軸心Cと平行方向へ円滑に移動するようにガイドするため、ガイドロッド部22bに作用する曲げモーメントをガイド機構27で吸収することができ、出力ロッド本体22aに曲げモーメントが作用するのを確実に防止して、シール部材24の摩耗や損傷を抑制し、シール性能の低下を防止し、ガススプリング12の耐久性を確保することができる。
【0049】
上記のようにガイドロッド部22bを長く形成するため、上記の曲げモーメントに対抗する複数の反力の支点間距離が大きくなるため、それら反力が小さな力となるから、ガイドシリンダ28の第1,第2ガイド部31,32とガイドロッド部22bの摩耗を抑制する上で有利である。
【0050】
回転規制機構34により、出力ロッド22が軸心C回りに回転しないように規制することができるため、板カム11に対するローラ部材13の向きを一定に維持することができると共に、ガススプリング12の組み付け前の状態において、出力ロッド22の進出移動の限界位置を決める(出力ロッド22の脱落を防止する)ことができる。
第1ガイド部31をガイドシリンダ28の先端近傍部に形成するため、外力によりガイドロッド部22bに作用する曲げモーメントを極力小さくできると共に、第2ガイド部32をガイドシリンダ28の途中部に形成するため、第1,第2ガイド部31,32間の支点間距離を大きくし、曲げモーメントに対抗する複数の反力を小さくすることができる。
【0051】
第1,第2ガイド部31,32間においてガイドシリンダ28とガイドロッド部22b間に環状のグリース充填隙間33を形成し、そのグリース充填隙間33にグリースを充填するため、ガイドシリンダ28とガイドロッド部22b間に作用する摩擦力を小さくし、それらの摩耗を抑制することができる。
シリンダ本体20とガイドシリンダ28とを一体に同外径に形成し、且つガイドロッド部22bを含めて出力ロッド22を一体部材で形成するため、簡単な構造のガススプリングとすることができる。軸支持フレーム4aの頂部にガススプリング12を倒立姿勢に配置し、ガイドシリンダ28の固定用フランジ28aを介して軸支持フレーム4aの頂部に固定するため、ガススプリング12の取り付け構造が簡単になり、ガススプリング12が回転軸2bの端部外にはみ出さず、コンパクトなバランサ装置10を実現できる。
【0052】
ガススプリング12が倒立姿勢に配置され、ガス収容室21の下部に潤滑油26を収容するため、その潤滑油26により出力ロッド22とシール部材24間を潤滑し且つシールすることができる。回転規制機構34が1対の規制溝35と1対の規制ピン36からなるため、簡単な構造の回転規制機構34を達成できる。
ガイドロッド部22bを出力ロッド本体22aよりも大径に形成するため、ガイドロッド部22bの上端の段部を必要に応じてストッパとして活用することができる。
【0053】
次に、前記板カム11とローラ部材13を部分的に変更する変形例について説明する。
(1)図7に示すように、板カム11Aの外周部の軸心方向の一端部に狭幅のフランジ11aが形成され、このフランジ11aによりローラ部材13の一端をガイドするように構成されている。これにより、板カム11Aとローラ部材13の接触位置関係が安定する。
(2)図8に示すように、板カム11Bの外周部の軸心方向の両端部に狭幅のフランジ11bが形成され、このフランジ11bによりローラ部材13の両端をガイドするように構成されている。これにより、板カム11Bとローラ部材13の接触位置関係が安定する。
【0054】
(3)図9に示すように、板カム11Cの外周部に環状溝11cが形成され、ローラ部材13Cの外周部に上記の環状溝11cに係合する環状凸部13aが形成され、環状溝11cでもって環状凸部13aをガイドするように構成されている。
(4)図10に示すように、板カム11Dの外周部に環状凸部11dが形成され、ローラ部材13Dの外周部に上記の環状凸部11dに係合する環状溝13bが形成され、環状凸部11dでもって環状溝13bをガイドするように構成する。
【実施例2】
【0055】
前記実施例1のガススプリング12を部分的に変更したガススプリングについて説明する。但し、実施例1と同様の構成要素に同一の符号を付して説明を省略する。
図11、図12に示すように、ガススプリング12Aの回転規制機構34Aは、出力ロッド22Aのガイドロッド部22cに水平方向に貫通状に前記軸心Cと平行に形成されたスリット孔40と、スリット孔40に挿通されて両端部がガイドシリンダ28Aに固定された規制ピン部材41とで構成されている。規制ピン部材41は、ガイドシリンダ28に形成したピン穴42と、スリット孔40と、ガイドシリンダ28Aに形成したピン穴43とに亙って挿通され、規制ピン部材41の一端部のフランジ41aがガイドシリンダ28に複数のボルト41bで固定されている。尚、規制ピン部材41の直径は、スリット孔40の幅よりも僅かに小さく設定されている。
【実施例3】
【0056】
前記実施例1のガススプリング12を部分的に変更したガススプリングについて説明する。但し、実施例1と同様の構成要素に同一の符号を付して説明を省略する。
図13、図14に示すように、ガススプリング12Bの回転規制機構34Bは、出力ロッド22Bのガイドロッド部22dの両側側部に前記軸心と平行に面取りして形成された1対の面取り部46と、ガイドシリンダ28Bに固定されて1対の面取り部46に夫々係合した1対の規制ピン部材47とで構成されている。規制ピン部材47の両端部はガイドシリンダ28Bに形成されたピン穴47aに挿入して支持されている。
【実施例4】
【0057】
前記実施例1のガススプリングを部分的に変更したガススプリングについて説明する。但し、実施例1と同様の構成要素に同一の符号を付して説明を省略する。
図15に示すように、ガススプリング12Cの回転規制機構34Cは、出力ロッド22の基端部(上端部)に前記軸心Cと直交状に固定されて張り出した被規制部材48と、この被規制部材48の1対のロッド孔49に摺動自在に挿通されてシリンダ本体20に対して出力ロッド22の回転を規制する1対の規制ロッド50を有する。被規制部材48はその中央部に円形穴を有し、この円形穴に出力ロッド22の上端部の上端軸部22eを嵌入させ、複数のボルト(図示略)でもって被規制部材48が出力ロッド22に固定されている。
【0058】
各規制ロッド50は、前記軸心Cと平行方向へ延び、その上端部は上端壁部材20cのピン穴51に係合され、その下端部はロッド側端壁部20aのピン穴52に係合されている。前記被規制部材48を1対の規制ロッド50で回転規制することにより出力ロッド22の回転を規制できるうえ、被規制部材48をロッド側端壁部20aで係止することで、ガススプリング12Cの組み付け前に、出力ロッド22が脱落しないようになっている。
【実施例5】
【0059】
前記実施例1のガススプリングを部分的に変更した例について説明する。但し、実施例1と同様の構成要素に同一の符号を付して説明を省略する。
図16に示すように、ガススプリング12Dのガス収容室21の容積を増やす為に、出力ロッド22Dに上端開放状で下端閉塞状の収容穴54が形成され、この収容穴54がガス収容室21に連通され、ガス収容室21と収容穴54とに圧縮ガスが収容されている。圧縮ガスの充填量が多くなるため、圧縮ガスのリークによるガス圧の低下を小さくすることができ、ガススプリング12Dの耐久性を高めることができる。
【実施例6】
【0060】
前記実施例1のガススプリングを部分的に変更した例について説明する。但し、実施例1と同様の構成要素に同一の符号を付して説明を省略する。
図17、図18に示すように、このガススプリング12Eの場合、シリンダ本体20とガイドシリンダ28Eが揺動自在となるようにトラニオン支持機構56によりトラニオン支持される。
【0061】
前記各規制ピン36には、シリンダ本体20の外側へ突出する支持軸57が同心状に一体形成されている。この支持軸57は規制ピン36よりも大径に形成され、この支持軸57の基端部のフランジ57aがガイドシリンダ28Eの凹部に複数のボルト58で固定されている。上記の1対の支持軸57を支持部材(図示略)のトラニオン支持機構56の1対の軸支持部58に回動自在に支持することにより、ガススプリング12Eが揺動自在にトラニオン支持される。尚、このガススプリング12Eは本実施例の回転軸バランサ装置10とは異なる装置に適用されるものである。
【0062】
前記実施例を部分的に変更する例について説明する。
(1)前記ガススプリング12,12A〜12Dは、回転軸バランサ装置に適用したガススプリングを例にして説明したが、本発明のガススプリングは、回転軸バランサ装置以外の種々の用途のガススプリングにも適用できることは勿論である。
【0063】
(2)前記第1,第2ガイド部31,32に加えて、第2ガイド32の上方に離隔した位置に第3ガイド部を設けてもよい。
(3)前記実施例では、シリンダ本体20とガイドシリンダ28の外径を等しく形成したが、異なる外径に形成してもよい。ガイドロッド部22bは、出力ロッド本体22aよりも大きな外径に形成したが、等しい外径に形成してもよい。
【0064】
(4)前記ガススプリング12の外部のアキュムレータに圧縮ガスを収容しておき、ガススプリング12のガス収容室21をアキュムレータに接続してもよい。
(5)その他、当業者ならば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施例に部分的に変更を付加した形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0065】
12,12A〜12E ガススプリング
20 シリンダ本体
21 ガス収容室
22 出力ロッド
22b,22c,22d ガイドロッド部
26 潤滑油
27 ガイド機構
28,28A,28B,28E ガイドシリンダ
29 ロッド挿通孔
31,32 第1,第2ガイド部
33 グリース充填隙間
34,34A,34B 回転規制機構
35 規制溝
36 規制ピン
40 スリット孔
41 規制ピン部材
46 面取り部
47 規制ピン部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ本体と、このシリンダ本体内に形成され圧縮ガスを封入したガス収容室と、このガス収容室に挿入され圧縮ガスのガス圧を受圧する出力ロッドと、シリンダ本体のロッド挿通孔の内周部に装着されてシリンダ本体と出力ロッド間をシールするシール部材とを有するガススプリングにおいて、
前記出力ロッドがその軸心と平行方向へ進退するように出力ロッドをガイドするガイド機構を設け、
前記ガイド機構が、前記シリンダ本体の端部から出力ロッド進出側へ一体的に延びるガイドシリンダと、前記出力ロッドのうちの出力端側部分を形成するガイドロッド部であって前記ガイドシリンダに摺動自在に装着されてガイドシリンダのロッド挿通孔から外部へ突出すると共に前記出力ロッドの進退移動の最大ストロークよりも長く形成されたガイドロッド部とを備えた、
ことを特徴とするガススプリング。
【請求項2】
前記ガイドロッド部の進退移動を許容しながらガイドロッド部がガイドシリンダに対して前記軸心回りに回転しないように規制する回転規制機構であって、出力ロッドの進出移動の限界位置を決める機能を有する回転規制機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載のガススプリング。
【請求項3】
前記ガイドシリンダの出力ロッド進出側の先端近傍部にガイドロッド部を面接触にてガイドする環状の第1ガイド部を形成し、前記ガイドシリンダの長さ方向途中部にガイドロッド部を面接触にてガイドする環状の第2ガイド部を形成し、前記第1,第2ガイド部の間においてガイドロッド部とガイドシリンダ間に環状のグリース充填隙間を形成し、このグリース充填隙間にグリースを充填したことを特徴とする請求項1または2に記載のガススプリング。
【請求項4】
前記ガイドシリンダの下端から出力ロッドが下方へ突出するようにシリンダ本体とガイドシリンダと出力ロッドが鉛直の倒立姿勢に配置され、前記ガス収容室の下部に潤滑油が収容されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のガススプリング。
【請求項5】
前記回転規制機構は、ガイドロッド部の両側側部に前記軸心と平行に形成された1対の規制溝と、前記ガイドシリンダに固定されて1対の規制溝に夫々係合した1対の規制ピンとで構成されたことを特徴とする請求項2に記載のガススプリング。
【請求項6】
前記回転規制機構は、ガイドロッド部に貫通状に前記軸心と平行に形成されたスリット孔と、前記スリット孔に挿通されて両端部がガイドシリンダに固定された規制ピン部材とで構成されたことを特徴とする請求項2に記載のガススプリング。
【請求項7】
前記回転規制機構は、ガイドロッド部の両側側部に前記軸心と平行に面取りして形成された1対の面取り部と、前記ガイドシリンダに固定されて1対の面取り部に夫々係合した1対の規制ピン部材とで構成されたことを特徴とする請求項2に記載のガススプリング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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