説明

ガスセンサ

【課題】水分を含む混合ガス中の所定の検知対象ガスの濃度を検出するガスセンサにおいて、検出素子の被水を防止するとともに、検知対象ガスの濃度の検出についての応答性を向上させる。
【解決手段】ガスセンサ100は、主配管10と、ベンチュリ管12と、ガス検知室20と、配管14とを備える。主配管10と、ベンチュリ管12とは、直列に接続されており、これらには、混合ガスの主流が流れる。主配管10の側面には、主配管10と連通するガス検知室20が接続されている。そして、このガス検知室20と、ベンチュリ管12の絞り部分とが、配管14によって接続されている。ガス検知室20内には、検知対象ガスの濃度を検出する検出素子30が配置されている。ガス検知室20のガス導入口22には、撥水フィルタ24が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関し、詳しくは、水分を含む混合ガス中の所定の検知対象ガスの濃度を検出するガスセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、検知対象ガスの濃度を検出するガスセンサについて、多湿環境で使用するのに適したガスセンサが提案されている。例えば、下記特許文献1には、被検知ガス(検知対象ガス)が触媒に接触した際に燃焼する熱を利用し、検出素子と温度補償素子との電気抵抗の差異から被検知ガスの濃度を検出するガスセンサに関する技術が記載されている。このガスセンサは、検出素子と温度補償素子を収容するケース(ガス検知室)の被検知ガス導入口に撥水フィルタを配置することによって、被検知ガスが流れる流路の水分がガス検知室内に浸入するのを防止している。この結果、検出素子の被水を防止し、検出素子の素子破壊や、感度低下を防止することができる。
【0003】
【特許文献1】特表2003/042678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載された技術では、撥水フィルタによって、ガス検知室内のガスの流れが阻害され、ガス検出室内で検知対象ガスが滞留し、循環が悪くなるため、検知対象ガスの濃度の検出についての応答性が悪かった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、水分を含む混合ガス中の所定の検知対象ガスの濃度を検出するガスセンサにおいて、検出素子の被水を防止するとともに、検知対象ガスの濃度の検出についての応答性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明では、以下の構成を採用した。
本発明のガスセンサは、
水分を含む混合ガス中の所定の検知対象ガスの濃度を検出するガスセンサであって、
前記混合ガスを流す主配管と、
該主配管における前記混合ガスの流れ方向の下流側に接続されたベンチュリ管と、
前記主配管から分岐して前記ベンチュリ管の絞り部分近傍に前記混合ガスを流すバイパス配管と、
該バイパス配管内に配置され、前記検知対象ガスの濃度を検出する検出素子と、
前記バイパス配管において、前記混合ガスの流れ方向の前記検出素子の上流側に設けられた撥水フィルタと、
を備えることを要旨とする。
【0007】
本発明では、主配管、および、ベンチュリ管に混合ガスを流したときに、主配管の内径とベンチュリ管の絞り部分の内径との差によって、主配管における混合ガスの流速よりも、ベンチュリ管の絞り部分における混合ガスの流速の方が高くなり、ベルヌーイの定理によって、ベンチュリ管における絞りの上流側と絞り部分と間に圧力差が生じる。このとき、ベンチュリ管の絞り部分の圧力は、上流側の圧力よりも低くなる。このため、バイパス配管内の混合ガスは、ベンチュリ管に引き込まれ、主配管からバイパス配管に混合ガスが流れる。したがって、バイパス配管において、混合ガスの流れ方向の検出素子の上流側(例えば、主配管とバイパス配管との接合部等)に撥水フィルタが設けられていても、バイパス配管内の混合ガスは、滞留せずに、速やかに掃気することができる。この結果、主配管に流れる混合ガス中の検知対象ガスの濃度が変化したときの、検知対象ガスの濃度の検出についての応答性を向上させることができる。また、バイパス配管において、混合ガスの流れ方向の検出素子の上流側に設けられた撥水フィルタによって、主配管からバイパス配管内の検出素子近傍への水分の浸入を防止することができる。つまり、本発明のガスセンサによって、検出素子の被水を防止するとともに、検知対象ガスの濃度の検出についての応答性を向上させることができる。また、本発明では、バイパス配管内を掃気するためのポンプ等を設置する必要もない。
【0008】
なお、本発明のガスセンサにおいて、撥水フィルタとともに、多孔質金属板を設けるようにしてもよい。
【0009】
こうすることによって、撥水フィルタの通気性を大きく損なうことなく、バイパス配管に混合ガスが流入するときの圧力変動による撥水フィルタの変形や、破損を抑制することができる。
【0010】
また、本発明のガスセンサにおいて、バイパス配管における混合ガスの流れ方向の検出素子の上流側のバイパス配管内に、さらに、混合ガスを加熱するヒータを設けるようにしてもよい。
【0011】
こうすることによって、混合ガス中の水分が撥水フィルタをわずかに透過した場合であっても、その水分がバイパス配管内で凝結することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき以下の順序で説明する。
A.実施例:
B.変形例:
【0013】
A.実施例:
図1は、本発明の一実施例としてのガスセンサ100の概略構成を示す断面図である。このガスセンサ100は、水分を含む混合ガス中の所定の検知対象ガスの濃度を検出するガスセンサであり、例えば、水素と酸素との電気化学反応によって発電する燃料電池を備える燃料電池システムにおいて、燃料電池のアノードから排出される水分を含むアノードオフガス中の水素の濃度を検出するために用いられる。
【0014】
図示するように、ガスセンサ100は、主配管10と、ベンチュリ管12と、ガス検知室20と、配管14とを備えている。主配管10と、ベンチュリ管12とは、直列に接続されており、これらには、主配管10からベンチュリ管12へ混合ガスの主流が流れる。ベンチュリ管12は、流体の流れを絞ることによって、流速を増加させ、この流速が高い部分において、流速が低い部分よりも低い圧力を発生させるものである。主配管10の内径、および、ベンチュリ管12の絞り部分の内径は、任意に設定可能である。
【0015】
主配管10の側面には、主配管10と連通するガス検知室20が接続されている。そして、このガス検知室20と、ベンチュリ管12の絞り部分とが、配管14によって接続されている。したがって、主配管10から分岐して、ガス検知室20のガス導入口22から導入された混合ガスは、ガス検知室20、ガス検知室20のガス排出口28、配管14を通って、ベンチュリ管12に流れる。ガス検知室20、および、配管14は、本発明におけるバイパス配管に相当する。
【0016】
ガス検知室20内には、検知対象ガスの濃度を検出する検出素子30や、検出素子30から出力された信号の信号処理を行う回路基板40が配置されている。検出素子30としては、半導体素子等、種々の素子を適用することができる。なお、検出素子30は、ガス検知室20内において、混合ガスが滞留しにくい部分に配置されている。また、回路基板40は、ガス検知室20の外部に配置するようにしてもよい。
【0017】
ガス検知室20のガス導入口22には、撥水フィルタ24と、多孔質金属板26とが配置されている。撥水フィルタ24によって、主配管10を流れる混合ガス中の水分が、ガス検知室20に浸入するのを防止することができる。また、多孔質金属板26によって、撥水フィルタ24の通気性を大きく損なうことなく、ガス検知室20に混合ガスが流入するときの圧力変動による撥水フィルタ24の変形や、破損を抑制することができる。
【0018】
以上説明した本実施例のガスセンサ100によれば、主配管10、および、ベンチュリ管12に混合ガスを流したときに、主配管10の内径とベンチュリ管12の絞り部分の内径との差によって、主配管10における混合ガスの流速よりも、ベンチュリ管12の絞り部分における混合ガスの流速の方が高くなり、ベルヌーイの定理によって、ベンチュリ管12における絞りの上流側と絞り部分と間に圧力差が生じる。このとき、ベンチュリ管12の絞り部分の圧力は、上流側の圧力よりも低くなる。このため、配管14内の混合ガスがベンチュリ管12に引き込まれ、主配管10からガス検知室20、および、配管14に混合ガスが流れる。したがって、ガス検知室20のガス導入口22に撥水フィルタ24が設けられていても、ガス検知室20、および、配管14内の混合ガスは、滞留せずに、速やかに掃気することができる。この結果、主配管10に流れる混合ガス中の検知対象ガスの濃度が変化したときの、検知対象ガスの濃度の検出についての応答性を向上させることができる。また、撥水フィルタ24によって、主配管10からガス検知室20内の検出素子30近傍への水分の浸入を防止することができる。つまり、本実施例のガスセンサ100によって、検出素子30の被水を防止するとともに、検知対象ガスの濃度の検出についての応答性を向上させることができる。また、ガス検知室20内を掃気するためのポンプ等を設置する必要もない。
【0019】
B.変形例:
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、以下のような変形例が可能である。
【0020】
B1.変形例1:
上記実施例では、ガス検知室20のガス導入口22に、撥水フィルタ24とともに多孔質金属板26を備えるものとしたが、多孔質金属板26を備えないようにしてもよい。
【0021】
B2.変形例2:
上記実施例のガスセンサ100において、ガス検知室20内に、さらに、混合ガスを加熱するためのヒータを備えるようにしてもよい。こうすることによって、主配管10を流れる混合ガス中の水分が撥水フィルタ24をわずかに透過した場合であっても、その水分がガス検知室20内で凝結することを防止することができる。
【0022】
B3.変形例3:
上記実施例のガスセンサ100において、さらに、ベンチュリ管12の絞りを制御する手段を備えるようにし、例えば、主配管10を流れる混合ガスの流量に応じて、この絞りを制御するようにしてもよい。こうすることによって、主配管10を流れる混合ガスの流量が比較的少ない場合でも、検知対象ガスの濃度の検出についての応答性を向上させることができる。
【0023】
B4.変形例4:
上記実施例では、ガスセンサ100は、ガス検知室20と配管14とを備えるものとしたが、両者が一体となった1つのバイパス配管を備えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例としてのガスセンサ100の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
100…ガスセンサ
10…主配管
12…ベンチュリ管
14…配管
20…ガス検知室
22…ガス導入口
24…撥水フィルタ
26…多孔質金属板
28…ガス排出口
30…検出素子
40…回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含む混合ガス中の所定の検知対象ガスの濃度を検出するガスセンサであって、
前記混合ガスを流す主配管と、
該主配管における前記混合ガスの流れ方向の下流側に接続されたベンチュリ管と、
前記主配管から分岐して前記ベンチュリ管の絞り部分近傍に前記混合ガスを流すバイパス配管と、
該バイパス配管内に配置され、前記検知対象ガスの濃度を検出する検出素子と、
前記バイパス配管において、前記混合ガスの流れ方向の前記検出素子の上流側に設けられた撥水フィルタと、
を備えるガスセンサ。

【図1】
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