説明

ガスタービンシステム

【課題】 熱交換機の耐久性の低下を抑制可能とするガスタービンシステムを提供する。
【解決手段】 ガスタービンシステム1は、ガスタービン10と、ガスタービン10の後段に設けられた発電機Gと、ガスタービン10の前段に設けられた冷却用クーラー20とを備えている。ガスタービン10は、タービン12と該タービン12の前段に配置された圧縮機11とを有している。冷却用クーラー20は、熱交換器22を用いて、ガスタービン10における空気の入口部分を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野に関する従来の技術として、特許文献1に記載の廃熱回収システム搭載車両が知られている。この廃熱回収システム搭載車両は、エンジンを冷却するための冷却水が循環する冷却水回路と、冷却水回路の冷却水からエンジンの廃熱を回収するランキンサイクルと、車室内に供給される空調風を冷却するエアコンサイクルと、ランキンサイクルの凝縮器及びエアコンサイクルの凝縮器のそれぞれに対して設けられた第1及び第2のモータファンと、これらのモータファンを制御するコントローラとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−188949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の廃熱回収システム搭載車両のように、エンジンの廃熱を回収するシステムにおいて、エンジン排気と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器は、高温のエンジン排気に曝されるため、その耐久性が低下する虞がある。
【0005】
本発明は、そのような事情に鑑みてなされたものであり、熱交換機の耐久性の低下を抑制可能とするガスタービンシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のガスタービンシステムは、空気と燃料との燃焼ガスによって駆動されるタービンを含むガスタービンと、ガスタービンにおける空気の入口部分を冷却する冷却手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このガスタービンシステムは、ガスタービンの入口部分を冷却する冷却手段を備えている。このため、このガスタービンシステムによれば、入口部分からガスタービンに供給される空気(入口空気)の温度を下げることができる。一般に、ガスタービンは、その入口空気の温度が低いほど出力が増加する。したがって、ガスタービンの入口空気の温度を下げれば、一定の出力を維持しつつ、タービンを駆動する燃焼ガスの温度を下げることができる。このため、このガスタービンシステムによれば、タービンの排気を比較的低い温度とすることができるので、タービンの排気に曝されるように熱交換器を配置した際にも、その熱交換器の耐久性の低下を抑制することが可能となる。
【0008】
本発明のガスタービンシステムは、車両に搭載されており、該車両の空調手段を上記冷却手段として用いる態様とすることができる。この場合、当該ガスタービンシステムを備える車両の重量を低減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱交換機の耐久性の低下を抑制可能とするガスタービンシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るガスタービンシステムの第1実施形態の構成を示す図である。
【図2】ガスタービンサイクルを示すグラフである。
【図3】図1に示されたガスタービンのサイクル圧力比と熱効率との関係を示すグラフである。
【図4】図1に示されたガスタービンのサイクル圧力比と出力との関係を示すグラフである。
【図5】図1に示されたガスタービンシステムの変形例の構成を示す図である。
【図6】本発明に係るガスタービンシステムの第2実施形態の構成を示す図である。
【図7】本発明に係るガスタービンシステムの第2実施形態の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係るガスタービンシステムの第1実施形態の構成を示す図である。図1に示されように、ガスタービンシステム1は、ガスタービン10と、ガスタービン10の後段に設けられた発電機Gと、ガスタービン10の前段に設けられた冷却用クーラー(冷却手段)20とを備えている。
【0013】
ガスタービン10は、空気を吸入して圧縮する圧縮機11と、燃料を吸入して圧縮空気と混合させて燃焼させる燃料器(不図示)と、燃焼器からの燃焼ガスによって回転駆動されるタービン12とを有している。
【0014】
圧縮機11とタービン12とは回転軸13によって連結されている。圧縮機11は、回転軸13の回転によって回転駆動して空気を吸入し、吸入した空気を圧縮する。そして、圧縮機11は、その圧縮された圧縮空気を燃焼器に供給する。
【0015】
燃焼器では、圧縮機11から圧縮空気が供給されると共に燃料が供給され、圧縮空気と燃料とが混合して燃焼する。そして、燃焼器は、その燃焼ガスを、タービン12に供給する。
【0016】
タービン12は、燃焼器から供給された燃焼ガスによって回転駆動して回転軸13を回転させると共に、出力軸14を回転させて燃焼ガスを排気する。発電機Gは、出力軸14に連結されており、タービン12の出力を利用して発電を行う。
【0017】
冷却用クーラー20は、冷媒を循環させるための冷媒回路21と、冷媒回路21上に順に配設された熱交換器22、コンプレッサー23、熱交換器24及びしぼり25とを有している。
【0018】
熱交換器22は、空気冷却用の蒸発器として用いられる。熱交換器22は、圧縮機11の前段に配置されており、圧縮機11に供給される常温空気Pを冷却して冷却空気P0とする。つまり、熱交換器22は、ガスタービン10における空気の入口部分を冷却する。これにより、ガスタービン10(圧縮機11)には、比較的低温の冷却空気P0が供給されることとなる。
【0019】
熱交換器22において、常温空気Pとの熱交換を行った冷媒は、コンプレッサー23で圧縮された後に凝縮器としての熱交換器24で液化され、膨張弁としてのしぼり25において膨張させられた後に、再び熱交換器22に導入される。なお、コンプレッサー23には、発電機Gで生じたガスタービンシステム1の出力(電力)の一部が供給される。
【0020】
このように、本実施形態に係るガスタービンシステム1は、ガスタービン10における空気の入口部分を冷却する冷却用クーラー20を備えている。このため、このガスタービンシステム1によれば、ガスタービン10の入口空気を冷却することができる。
【0021】
図2は、入口空気の温度が常温の場合、及び、入口空気が冷却されている場合のそれぞれのガスタービン(GT)サイクルを示すグラフである。図2に示されるように、ガスタービン10は、入口空気を冷却すると、出力や効率が向上する。なお、ガスタービン10の効率は、供給した燃料が持つパワー量で出力を除することで求められる。
【0022】
以下、入口空気の温度を変化させた場合のガスタービン10の出力及び熱効率の変化について、図3及び図4を参照して具体的に説明する。
【0023】
図3は、入口空気の温度が15℃(常温)の場合、−35℃の場合、及び−85℃の場合のガスタービン10のサイクル圧力比と熱効率との関係を示すグラフであり、図4は、入口空気の温度が15℃の場合、−35℃の場合、及び−85℃の場合のガスタービン10のサイクル圧力比と出力との関係を示すグラフである。
【0024】
図3のグラフによれば、サイクル圧力比が5の場合のガスタービン10の熱効率は次のようになる。
入口空気の温度が15℃の場合:17%
入口空気の温度が−35℃の場合:19%
入口空気の温度が−85℃の場合:21%
【0025】
また、図4のグラフによれば、サイクル圧力比が5の場合のガスタービン10の出力は次のようになる。
入口空気の温度が15℃の場合:16kW
入口空気の温度が−35℃の場合:22kW
入口空気の温度が−85℃の場合:31kW
【0026】
このように、入口空気の温度を−85℃に冷却すると、入口空気の温度が15℃の場合に比べて、熱効率が4%、出力が15kW向上する。一般に、0.1kg/sの空気を15℃から−85℃まで(約100℃分)冷却するためには、0.1kg/s×100℃×定圧比熱(約1kJ/kg・K)(約10kW)が必要となる。したがって、出力の15kWの増加分のうちの10kWで入口空気を冷却すれば、正味の出力・熱効率は向上する。なお、この結果は、冷却用クーラー20の成績係数(COP)が1の場合であり、冷却用クーラー20の成績係数が2の場合には、半分の5kWで済む。
【0027】
以上説明したように、ガスタービン10の入口空気の温度を下げれば、ガスタービン10の出力が向上する。このため、ガスタービンシステム1によれば、ガスタービン10の入口空気の温度を下げることにより、一定の出力を維持しつつ、タービン12を駆動する燃焼ガスの温度を下げることができる。したがって、ガスタービンシステム1によれば、タービン12の排気を比較的低い温度とすることができる。
【0028】
その結果、例えば、図5に示されるように、ガスタービンシステム1において、タービン12の排気に曝されるように廃熱回収のための熱交換器30を配置した際に、その熱交換器30の耐久性の低下を抑制することが可能となる。
【0029】
また、ガスタービンシステム1においては、熱交換器22,30が、タービン12の高温の排気に曝されることが避けられるので、熱交換器22,30を構成する材料を比較的安価なものとすることができる。
【0030】
また、ガスタービンシステム1によれば、冷却用クーラー20の冷却により、ガスタービン10の入口空気の密度が増加するため、ガスタービン10を流れる空気の体積が減少する。このため、ガスタービン10を小型化することができる。
【0031】
さらに、ガスタービンシステム1によれば、上述したように、熱効率を維持しつつ燃焼器の燃焼温度を下げることができる。このため、燃焼器の燃焼温度を下げることによって、燃焼器で生じるNoxを低下させることができる。なお、図1及び図5に示されるガスタービン10において、タービン12と出力軸14とは直結している必要はない。すなわち、ガスタービン10は、タービン12の後段に別のタービンをさらに設置し、その別のタービンに出力軸14を接続して2軸形態にしてもよい。
【0032】
[第2実施形態]
図6及び図7は、本発明に係るガスタービンシステムの第2実施形態の構成を示す図である。図6及び図7に示されるガスタービンシステム1Aは、車両(EV)CAに非常用発電機として搭載されている点、及び、車両CAの室内用クーラー(エアコン:空調手段)Aを冷却用クーラー20として利用する(すなわち、室内用クーラーAと冷却用クーラー20とを兼用する)点で、第1実施形態に係るガスタービンシステム1と異なっている。
【0033】
このため、室内用クーラーAは、熱交換器22を用いて、圧縮機11に供給される空気を−85℃程度まで冷却できるように構成されている。このように室内用クーラーAを冷却用クーラー20として利用する際には、発電機Gで生じたガスタービンシステム1Aの出力(電力)の一部が室内用クーラーAに供給される。また、発電機Gで生じたガスタービンシステム1Aの出力(電力)の残部は、緊急用パワーとして車両CAに供給される。
【0034】
このようなガスタービンシステム1Aにおいては、室内用クーラーAと冷却用クーラー20とが兼用されるので、室内用クーラーAと冷却用クーラー20との両方を別個に利用する場合に比べて、当該ガスタービンシステム1Aが搭載される車両CAの重量を低減することができる。
【0035】
また、ガスタービンシステム1Aにおいては、室内用クーラーAと冷却用クーラー20とで部品が共有化されるので、室内用クーラーAと冷却用クーラー20とを別個に構成する場合に比べて、コストを低減することができる。
【0036】
さらに、ガスタービンシステム1Aにおいては、車両CAの停止中には燃焼温度を下げ、車両CAの走行中には効率を優先して燃焼温度を上げるといった制御が可能となるため、停止中の車両CAの周囲への熱害を低減することができる。
【符号の説明】
【0037】
1,1A…ガスタービンシステム、10…ガスタービン、12…タービン、20…冷却用クーラー、22…熱交換器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気と燃料との燃焼ガスによって駆動されるタービンを含むガスタービンと、
前記ガスタービンにおける前記空気の入口部分を冷却する冷却手段と、
を備えるガスタービンシステム。
【請求項2】
車両に搭載されており、該車両の空調手段を前記冷却手段として用いる請求項1に記載のガスタービンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−107554(P2012−107554A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256131(P2010−256131)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】