説明

ガス検知管撮影装置、ガス検知管測定装置、ガス濃度測定システムおよびその方法

【課題】カメラを用いて複数のガス検知管を同時に撮影する際に、安定した画像が得られるガス検知管撮影装置を提供することを目的とする。
【解決手段】複数のガス検知管100を同一平面上に配列する支持部材106と、支持部材106に支持された複数のガス検知管100を照明する面発光型の照明手段103と、照明手段103と照明手段103による照明光が複数のガス検知管100を透過する透過光を撮影するカメラ110との間の空間を外光から遮光する筐体101とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検知管を用いたガス濃度測定に用いるガス検知管撮影装置、そのガス検知管撮影装置を用いたガス検知管測定装置、そのガス検知管測定装置を用いたガス濃度測定システムおよびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス濃度を測定するに際して、ガス検知管を用いた測定が行われている。ガス検知管は特定のガスにさらすと色変化を起こす試薬(検知剤)がガラス管の中に充填されており、その変色層の長さを読み取ることによりガス濃度を検出するものである。ガス検知管は取り扱いが容易であり、作業者の熟練の度合いによらず簡易かつ短時間で目的とするガス成分の濃度を検出することができる。
【0003】
従来、ガス検知管の変色長は目視で読み取っていたが、それを光学スキャナで読み取り、変色層を求める方法を本願発明者らは先に提案した(特許文献1、非特許文献1〜3)。自動読み取りによりデータの再現性が向上し、変色境界がぼやけているときにも再現性よく変色量を測定できる。更に、ごくわずかな色変化も検出でき、わずかな変色長の変化も測定可能である。また、検知管画像には雑音が多く混入するが、それも信号処理により低減することができる。これらに加えて連続吸引による蓄積効果を加えれば、目視読み取り装置より1桁以上高感度化を達成できる。
【0004】
しかし、1次元CCD等のラインセンサを用いた光学スキャナによって複数の検知管を読み取るためには、ラインセンサのライン方向と垂直方向に、センサまたは被写体を相対移動させて走査する機械的な機構が必要であり、装置の小型化にも限界があった。
【0005】
また、検知管の軸方向に平行にラインセンサを配置し、機械的走査をなくして光学的にガス検知管の変色長を読み取る読取装置も考えられるが、同時に測定できるのは1種類の検知管のみであり、複数の検知管を用いて複数のガスの濃度を同時に計測するには複数のラインセンサが必要となり、ラインセンサの制御回路等も複数必要となりコスト高が避けられない。
【0006】
更に、特許文献2においては、カメラを用いて複数の検知管を一度に撮影する測定装置が開示されている。しかし、2次元撮像センサを用いたカメラによって複数の検知管を同時に撮影するには、検知管とカメラを密着ではなく、離れた位置から撮影する必要がある。例えば、焦点距離4.7mmのカメラレンズと1/2型CCDセンサ(センサチップの対角長が8mm、縦横比3:4、長辺6.4mm)を備えたデジタルカメラで、長さ100mmの検知管の検知剤層をカメラの長辺に収まるように撮影するための被写体とカメラレンズの距離Lは、次式で計算することができる。
L=4.7mm×(100/6.4)=73mm
すなわち、被写体である検知管からカメラレンズを73mm以上離す必要があることが分る。
【0007】
離れた位置から被写体を照明し、その反射光をカメラで撮影する場合においては、照明光源と被写体とカメラの位置関係が一様ではなく、被写体の場所によってはガス検知管のガラス表面からの正反射光がカメラに入射する場合があり、安定した画像を得ることが難しかった。
【0008】
【特許文献1】特開2005−62026号公報(段落0030〜段落0031、図3)
【特許文献2】特開2002−131305号公報(段落0005、図1)
【非特許文献1】田中、吉岡、中本、森泉、“ガス検知管を用いた光学式悪臭センシングシステムによるガス干渉特性と感度向上の一検討”、電気学会論文誌、125E (2005)、pp64-69
【非特許文献2】田中、吉岡、中本、森泉、“ガス検知管を用いた悪臭センシングの研究”、電気学会論文誌、124E (2004)、pp321-326
【非特許文献3】田中、中本、森泉、“ガス検知管と1次元CCDイメージセンサを用いた可搬型悪臭センシングネットワークの研究”、電気学会ケミカルセンサ研究会、CHS-05-13 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明では、カメラを用いて複数のガス検知管を同時に撮影する際に、安定した画像が得られるガス検知管撮影装置、そのガス検知管撮影装置を用いたガス検知管測定装置、そのガス検知管測定装置を用いたガス濃度測定装置およびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前記した目的を達成するために創案されたものであり、請求項1に記載のガス検知管撮影装置は、ガス検知管を透過する透過光を2次元撮像素子を備えたカメラで撮影するためのガス検知管撮影装置であって、支持部材と、照明手段と、筐体と、を備える構成とした。
【0011】
かかる構成のガス検知管撮影装置によれば、複数のガス検知管は支持部材によってほぼ同一平面上に配列した状態で支持される。支持部材によって同一平面内に配列された複数のガス検知管は、面発光型の照明手段によって均一に照明される。そして複数のガス検知管を透過した透過光は、外光を遮光する筐体内を通過し、2次元撮像素子を備えたカメラに入射する。
【0012】
請求項2に記載のガス検知管撮影装置は、請求項1に記載のガス検知管撮影装置の構成に加え、ガス検知管とカメラとの間に、前記複数のガス検知管を透過する前記透過光を選択的に透過する遮光部材を設ける構成とした。
【0013】
かかる構成のガス検知管撮影装置によれば、照明手段から照射された照明光のうち、複数のガス検知管を透過した透過光のみが、遮光部材に設けられたスリットを選択的に通過し、カメラに入射する。
【0014】
請求項3に記載のガス検知管測定装置は、複数のガス検知管を透過する透過光を2次元撮像素子を備えたカメラで撮影するために、請求項1または請求項2に記載のガス検知管撮影装置と、カメラと、ポンプと、コントローラと、を備える構成とした。
【0015】
かかる構成によれば、ガス検知管測定装置は、ガス検知管撮影装置によってほぼ同一平面内に配列された複数のガス検知管を均一に照明し、複数のガス検知管を透過した透過光をカメラに入射することができる。コントローラは、ポンプを駆動(ON)させて、複数のガス検知管に検知対象となるガスを適宜な時間通気させ、またポンプを停止(OFF)してガス検知管へのガスの通気を休止することができる。また、コントローラは、照明手段を適宜なタイミングで点灯(ON)と消灯(OFF)を制御することができる。更に、コントローラは、カメラに対して適宜なタイミングで撮影させることができる。
ガス検知管測定装置は、コントローラを用いてポンプを適宜なタイミングでON/OFF制御することによりガス検知管にガス(大気)を通気し、ガス検知管に充填された検知剤と検知対象となるガス成分を反応させ検知剤を変色させる。そして、ガス検知管測定装置は、コントローラによって適宜なタイミングで照明手段をON/OFF制御するとともに、カメラを制御して、ガス検知管撮影装置によってほぼ平面上に配列された複数のガス検知管の透過光画像を撮影する。
【0016】
請求項4に記載のガス濃度測定システムは、画像データを送信する送信手段を有する請求項3に記載のガス検知管測定装置と、画像データを受信する受信手段と画像データを解析することでガス濃度を算出する画像解析手段とを有するデータ管理手段と、を備える構成とした。
【0017】
かかる構成のガス濃度測定システムによれば、ガス検知管測定装置によって適宜なタイミングでポンプ・照明手段・カメラを制御して、通気し変色した複数のガス検知管の透過光画像を撮影し、送信手段を用いてデータ管理手段に撮影した画像データを送信する。画像データの送信は、例えば、携帯電話等の通信手段を用いることができ、電子メールに画像データを添付してデータ管理手段が受信可能な所定のメールアドレス宛に送信する。一方、データ管理手段は受信手段を用いて、ガス検知管測定装置から送信された画像データを添付された電子メールを受信する。データ管理手段は電子メールに添付された画像データを取得し、その画像データから画像解析手段を用いてガス濃度を算出する。データ管理手段としてはコンピュータを用いることができ、適宜プログラムを実行することにより受信手段および画像解析手段として機能させることができる。送信手段からの送信形態が電子メールである場合は、コンピュータは受信手段として機能し、送信された電子メールのメールアドレスに接続して電子メールを受け取り、電子メールに添付された画像データを取得する。次にコンピュータは画像解析手段として機能し、取得した画像データ中のガス検知管の変色状況を解析し、ガス濃度を算出する。
【0018】
請求項5に記載のガス濃度測定システムは、請求項4に記載のガス濃度測定システムにおいて、複数のガス検知管測定装置を有し、データ管理手段は、これらの複数のガス検知管測定装置から送信された画像データに基づいてガス濃度を算出するように構成した。
【0019】
かかる構成によれば、データ管理手段は、ガス検知管測定装置が配置された複数地点のガス濃度を収集することができる。
【0020】
請求項6に記載のガス濃度測定方法は、ガス濃度を測定するために、複数のガス検知管にガスを通気する通気ステップと、複数のガス検知管の透過光画像を撮影する撮影ステップと、撮影した画像データを送信する送信ステップと、送信された画像データを受信する受信ステップと、受信した画像データを解析してガス濃度を算出する画像解析ステップと、を含む。
【0021】
かかる手順によれば、ガス検知管測定装置によってポンプを駆動し、ほぼ同一平面上に配列された複数のガス検知管に対して検知対象となるガス(大気)を通気し、ガス検知管に充填された検知剤と通気したガス中に含まれるそれぞれのガス検知管の検出対象となるガス成分とを反応させて検知剤を変色させる。それぞれ所定のガス成分と反応して変色した複数のガス検知管は、面発光型の照明手段によって均一に照明され、ガス検知管を透過した透過光画像は、2次元撮像素子を備えたカメラによって同時に1枚の画像中に撮影される。撮影された画像データは、例えば、携帯電話等の通信手段を用いて電子メールに添付され、所定のメールアドレス宛に送信される。送信された電子メールは、例えば、コンピュータを受信手段として機能させて受信し、電子メールに添付された画像データを取得する。取得(受信)した画像データは、コンピュータを画像解析手段として機能させ、画像データ中のガス検知管画像の変色情報を解析することでガス濃度を算出する。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明によれば、ほぼ同一平面上に配列された複数のガス検知管の透過光を、外光が遮光された筐体を通して2次元撮像素子を備えたカメラに入射するため、カメラによって複数のガス検知管を、ガス検知管の表面反射や照明ムラの影響を受けることなく安定した画像を撮影することができる。
請求項2に記載の発明によれば、照明手段から照射された照明光のうち、複数のガス検知管を透過した透過光のみをカメラに入射するため、更に迷光等の影響を低減し、コントラスト良く複数のガス検知管の画像を撮影することができる。
請求項3に記載の発明によれば、カメラによるガス検知管撮影装置を用いた複数のガス検知管の撮影において、コントローラによってカメラと照明手段とポンプを制御するため、安定した複数のガス検知管の画像撮影を、人手をかけることなく自動的に行うことができる。
請求項4または請求項6に記載の発明によれば、ガス検知管測定装置によって撮影された複数のガス検知管の画像データを送信し、受信側で画像データを解析してガス濃度を算出するため、複数箇所にガス検知管測定装置を設置する場合においても、人手をかけることなく、広範囲な複数のガス成分の濃度測定を安定して行うことができる。
請求項5に記載の発明によれば、ガス濃度測定システムは、複数のガス検知管測定装置を配置した各地点のガス濃度データをデータ管理用コンピュータに収集することができるため、集計作業などに人手をかけることなくガス濃度分布を知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、発明を実施するための最良の形態について適宜図面を参照して説明する。
<装置の構成>
まず、図1を参照して、本発明によるガス濃度測定システム1の実施の形態について説明する。ここで、図1は、ガス濃度測定システム1の構成を説明するための図である。
図1に示す実施の形態においては、3台のガス検知管測定装置2A,2B,2Cが設置されている。各ガス検知管測定装置2A,2B,2Cに装着され、ガス濃度測定に供されるガス検知管は、それぞれのガス検知管測定装置2A,2B,2Cに取り付けられた送信手段を備えたカメラ(カメラ付き携帯電話)によってガス検知管の透過光画像が撮影される。撮影されたガス検知管の画像データは、携帯電話の電子メール機能によって電子メールに添付され、各携帯電話の最寄りの基地局11A,11B,11C、電話会社12、インターネット13、LAN(Local Area Network)等を介して、データ管理手段であるデータ管理用コンピュータ(ホストコンピュータ)20に送信される。データ管理用コンピュータ20は、受信した電子メールから画像データを取得し、その画像データを画像解析することによりガス濃度を算出し、算出したデータを記憶・管理する。
また、ガス濃度測定システム1は、複数のガス検知管測定装置2を地理的に広範囲な場所に配置し、ガス検知管測定装置2を配置した各地のガス濃度データをデータ管理用コンピュータ20が収集して、ガス濃度分布を得ることもできる。
なお、配置する場所は広範囲な場所に限らず、特定の地域や1つの建物、1つの室内であってもよく、ガス濃度分布の測定システムとして用いることもできる。
【0024】
次に、図2および図3を参照して、本実施の形態に係るガス検知管測定装置2およびガス検知管撮影装置10について説明する。ここで、図2は、ガス検知管撮影装置10を含むガス検知管測定装置2の構成を示す側面図であり、図3は、その斜視図である。
【0025】
ガス検知管撮影装置10は、筐体101と、コントローラ102と、照明手段103と、配管104aと、配管104bと、遮光部材105と、支持部材106と、から構成される。
【0026】
本実施の形態では、ガス検知管の撮影に際して、迷光等の影響が少なく安定した画像が得られるように、筐体101は黒色のアクリル板で構成され、後記する照明手段103と組み合わせることで筐体101の内部は暗箱を構成する。
ガス検知管撮影装置10の底部には、面発光光源からなる照明手段103が配置され、上方を均一に照明することができる。
照明手段103の上方には、測定に使用される複数(6本)のガス検知管100を支持する支持部材106が配置され、複数のガス検知管100は、支持部材106によってほぼ同一平面上に配列される。また、支持部材106は、メッシュ部材で形成され、照明手段103から照射される照明光を透過する。
更に上方には、ガス検知管100に合わせてスリットが形成された遮光部材105が配置され、ガス検知管100を透過した透過光のみを選択的に筐体101内に導入する。
前記したように、暗箱を構成する筐体101の上部には、カメラ110によりガス検知管100の透過光画像を撮影するための撮影穴101aが形成され、また、カメラ110の撮像ユニット110bのカメラレンズが撮影穴101aに合うように、カメラ110の設置位置を位置決めするための位置決め部材101bが設けられている。この位置決め部材101bは、使用するカメラの形状に合わせて位置を調節することができる。
【0027】
なお、本実施の形態では、照明手段103を底部に配置し、カメラ110を上部に取り付けるように構成したが、照明手段103が上部になるように構成してもよいし、光路が横向きになるように構成してもよい。
【0028】
ガス検知管測定装置2は、ガス検知管撮影装置10と、ポンプ107と、送信手段付きカメラ110と、コントローラ102とから構成され、ガス検知管100を装着することで、そのガス検知管100の検知対象となるガスの検出器として機能する。
すなわち、ポンプ107を稼動させることで測定対象となる大気(ガス)をガス検知管100に通気し、大気の通気により変色するガス検知管100を撮影することで、ガス検知管100の検知対象となるガス成分を検出するものである。
【0029】
ガス検知管測定装置2は、測定に使用するガス検知管100に測定対象のガス(大気)を通気するため、ガス検知管100の上流側および下流側に、それぞれテフロン(登録商標)製の配管104aおよび104bが備えられている。これらの配管は、ガス検知管100をガス検知管測定装置2に装着時に、ガス検知管100のそれぞれの端部と接続される。なお、上流側の配管104aの他端は大気に開放されており、下流側の配管104bの他端は、それぞれ1本毎に対応するポンプ107に接続される。ポンプ107を稼動させ、ポンプ側に吸引することで、上流側の配管104aの開口端から大気が吸引され、配管104aを通して測定対象となる大気がガス検知管100の内部に通気される。通気された大気中のそれぞれのガス検知管100の検知対象となるガス成分は検知剤と反応し、検知剤はガス成分の量に応じた長さまで変色する。
また、ポンプ107を停止すると、ガス検知管100への大気の通気も停止し、再度ポンプ107が稼動されるまで変色反応は休止する。
【0030】
ガス検知管撮影装置2は、ガス検知管100を用いた測定作業を自動的に行うようにコントローラ102を備える。コントローラ102は、MCU(Micro-Controller Unit)を具備し、MCUとカメラ110とを接続するためのケーブル111、MCUによって照明手段103およびポンプ107のON/OFFを制御するための周辺回路等から構成される。コントローラ102は、ポンプ107と照明手段103とカメラ110を制御し、ガス検知管測定装置2は測定作業を自動的に行うことができる。コントローラ102の詳細については後記する。
【0031】
ガス検知管測定装置2の好ましい実施の形態では、画像データを送信する送信手段110cを備え、カメラ110によって撮影されたガス検知管の画像データは、送信手段110cを用いてデータ管理手段であるデータ管理用コンピュータ20(図1参照)に送信する。なお、本実施の形態では、カメラ110として、カメラ(カメラ本体110a、撮像ユニット110b)と送信手段110cを一体化したカメラ付き携帯電話を用いている。
【0032】
次に、ガス検知管測定装置2の各構成手段について順次説明する。
(照明手段)
まず、図4を参照して、照明手段103を詳細に説明する。ここで図4(a)は、照明手段103の構成を示す側面図であり、図4(b)はその斜視図である。
照明手段103は、筐体103aと、冷陰極管103bと、インバータ103cと、電源ケーブル103dと、拡散板103eと、から構成される。
本実施の形態においては、照明手段103は、冷陰極管103bを光源とする面発光光源を構成する。一様な面発光型の照明光を得るために、冷陰極管103bは面内で屈曲した形状をしている。また、冷陰極管103bから発光される光は、白色アクリル板からなる拡散板103eによって拡散され、発光面内の輝度分布の均一性が優れた面発光型の照明光を得ることができる。
冷陰極管103bの両端の電極は、直流−交流変換するインバータ103cに接続され、高圧高周波交流を供給することで発光する。また、照明手段103の電源ケーブル103dは、コントローラ102によってON(点灯)/OFF(消灯)が制御できるようにパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を用いた制御回路を介して電源に接続される。
【0033】
このような面発光型の照明手段103として、例えば、秋月電子社製、面発光冷陰極管バックライトセットM−416を利用することができる。
なお、面発光型の照明手段103としては冷陰極管を光源とするものに限らず、撮影に必要な光量が得られるものであれば、LED(発光ダイオード)、有機EL(エレクトロルミネッセンス)等を光源とするものでもよい。
【0034】
(カメラ)
図2および図3に示したカメラ110は、本体110aと、撮像ユニット110bと、通信手段110cと、を備える。
カメラ110は、複数のガス検知管100を同時に撮影するため、2次元撮像素子を備えたデジタルカメラを用いる。撮像ユニット110bは、カメラレンズと2次元撮像素子とから構成され、カメラレンズによって2次元撮像素子上に結像された画像を電気信号(画像データ)に変換する。変換された画像データは、カメラ本体110aにおいて、適宜AD(アナログ−デジタル)変換、画像圧縮処理され、図示しないカメラ本体110aの内蔵メモリに記憶される。
また、広範囲にわたる複数箇所での同時測定を可能にするため、カメラ110は送信手段110cを備え、撮影した画像データを送信することができる。このような装置として、カメラ付き携帯電話があり、例えば、NTTドコモ社のムーバP506iCを用いることができる。この携帯電話は、2.0メガピクセルの画素数を有する2次元CCDセンサを用いたデジタルカメラを備え、カラー撮影をすることができる。また、デジタルカメラで撮影した画像データを電子メールに添付して、指定したメールアドレス宛に送信する電子メール送信機能を有する。
【0035】
また、カメラ110は、ケーブル111を介してコントローラ102と接続され、コントローラ102からの命令にしたがって、カメラ撮影、電子メール送信等の処理を実行することができ、ガス検知管測定装置2は人手を介することなく、自動的にガス検知管100の測定処理を行うことがきる。
【0036】
なお、NTTドコモ社の携帯電話の制御手順については、同社の下記ホームページにおいて公開されている。
(参考資料)
「自動車携帯電話サービスを利用するための技術参考資料(デジタル方式)第3.2版」, 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ,2004年6月9日
http://www.nttdocomo.co.jp/binary/pdf/corporate/technology/document/pdc/jidoushadenwa.pdf
【0037】
また、カメラ110は、カメラ付き携帯電話に限定されず、カメラと送信手段(通信手段)は一体型でなくともよい。また、送信手段は携帯電話に限定されずPHS(Personal Handy-phone System)でもよく、無線LANや有線LAN等の他の送信手段であってもよい。
【0038】
(ガス検知管)
ガス検知管100は、数mm〜十数mm程度の一定内径のガラス管内に、アルミナ、シリカゲル等からなる数十μm程度の粒径の粒体に、検知対象となるガスと反応して変色する試薬をコーティングした検知剤が充填されている。ガラス管の一端から検体であるガス(大気)を通気することで、検知対象となるガス成分の吸入量に応じ、ガス導入端(上流端)から排気端(下流端)に向けて変色層が伸びて行く。変色層の長さは、通気量(体積)を一定とすると、検知対象となるガス濃度が高いほど長く、低いほど短くなる。
【0039】
ガス検知管100は、検知ガスの種類によって検知剤が異なり変色する色も異なる。ガス検知管は市販されており、例えば、ガステック社製のNo.122P(トルエン用)、No.71(メチルメルカプタン用)を用いることができ、更に種々のガスに対応したガス検知管を利用することができる。
【0040】
(支持部材)
支持部材106は、照明手段103の上方に配置され、測定に使用される複数(6本)のガス検知管100をほぼ平面状に配列した状態で支持する。支持部材106は、上部が開口した箱型形状をしており、上部の開口部からガス検知管100の着脱をすることができる。また、支持部材106は、照明手段103から照射される照明光がガス検知管100を照明することができるようにメッシュ部材で形成されている。
【0041】
なお、支持部材106は、照明光を一様に透過する構成であれば、下面側はメッシュ部材でなく透明アクリル板のような透明部材であってもよいし、ガス検知管100の端部のみ支持するようにし、変色層の領域は開口する構成としてもよい。また、照明手段103の上面の拡散板103eが支持部材を兼ねるようにし、拡散板103eがガス検知管100を直接支持するように構成してもよい。
【0042】
(遮光部材)
遮光部材105は、支持部材106の上方に配置され、ガス検知管100に合わせてスリットが形成された黒色のアクリル樹脂で形成される。遮光部材105は、ガス検知管100を透過した透過光のみを選択的に筐体101内に導入し、ガス検知管撮影時において迷光等の影響を低減する。
【0043】
より好ましくは、ガス検知管100を透過する透過光全体ではなく、ガス濃度の測定に必要な検知剤の充填領域に合わせてスリットが形成し、検知剤の充填領域を透過した透過光のみを透過するように構成してもよい。
なお、遮光部材105は、黒のアクリル板で構成したが、つや消し塗装や無光沢の黒紙を貼付して、更に迷光の影響を低減するようにしてもよい。
また、筐体101の内部の筐体内部についても同様に、つや消し塗装や無光沢の黒紙を貼付するようにしてもよい。
【0044】
(ポンプ)
ポンプ107は、配管104bを介してガス検知管100の下流端に接続され、ポンプ107の駆動によりポンプ側に吸引し、ガス検知管100内に大気を通気する。ポンプ107の電源ラインはパワーMOSFETを介して5Vの直流電源に接続され、コントローラ102によってON(駆動)/OFF(停止)が制御される。
ポンプ107は、6本のガス検知管100それぞれに対して同型のポンプを1台ずつ接続し、各ガス検知管100を均等な吸引力で吸引する。
なお、複数のガス検知管100を均等に吸引できる吸引力のポンプ107であれば、6本の下流側の配管104bを集合し、1台のポンプで吸引するように構成してもよい。
また、ポンプ107の駆動電源は直流電源に限らず、交流電源であってもよい。更に、複数のポンプを組み合わせるよう構成してもよい。
【0045】
(コントローラ)
図5および図6を参照して、コントローラ102を詳細に説明する。ここで、図5は、コントローラ102の構成を示す回路図であり、図6はコントローラ102に付随する回路を示す回路図であって、(a)はリセット回路、(b)は照明手段103と接続するための制御回路、(c)はポンプ107と接続するための制御回路である。
コントローラ102は、MCU102a、リセット回路102b、割込入力回路102c、制御回路102d、102e、スイッチ102f、レギュレータREG、水晶発振子CRYSTAL、抵抗素子、コンデンサ、LED等から構成される。
【0046】
MCU102aは、演算回路、RAM、フラッシュメモリ又はROM、入出力回路等から構成される、いわゆる1チップマイコンである。本実施の形態ではMCU102aとして、マイクロチップ・テクノロジー社の8ビットマイクロコントローラ PIC16F84A を用いている。
MCU102aには、MCU102aの動作クロックを生成するための水晶発振子CRYSTALと、5V電源を供給するためのレギュレータREGが接続される。
また、リセット信号入力端子(MCLR)、割込信号入力端子(RB0/INT)にはそれぞれリセット回路102b、割込入力回路102cが接続される。図6(a)に示す回路は、リセット回路102bおよび割込入力回路102cの例であり、抵抗素子、コンデンサ、ダイオードおよびスイッチSWから構成される。リセット回路および割込入力回路はスイッチSWが開の状態では出力端子(OUT)からはH(High)レベルが出力され、スイッチSWを閉じるとL(Low)レベルが出力される。スイッチSWは例えば押しボタン型スイッチを用いることができ、それぞれ、リセット回路および割込入力回路のスイッチSWを押下することでMCU102aに対してリセット信号、割込信号を入力できるよう構成されている。
【0047】
図5に戻って、他の入出力端子である端子RB1、RB2には、それぞれポンプ107、照明手段103のON/OFFを制御するための制御回路102d、102eが接続されている。
図6(b)は、制御回路102eと照明手段103の接続の様子を示す回路図である。制御回路102eは、MOSFETと、2個の抵抗素子から構成される。照明手段103に供給される12Vの直流電源のグランド側はMOSFET(回路図では2SK2231を使用)を介して接地される。制御回路102eの入力端子(IN)はMCU102aの入出力用の端子RB2に接続され、MCU102aからHレベルの信号が出力され、MOSFETのゲートに印加されるとMOSFETのドレイン・ソース間に電流が流れ、照明手段103が点灯(ON)する。また、MCU102aの入出力用の端子RB2からLレベルの信号が出力されると、制御回路のMOSFETのドレイン・ソース間の電流が流れず、照明手段103は消灯(OFF)する。
図6(c)は、制御回路102dとポンプ107の接続の様子を示す回路図である。ポンプに供給する直流電源の電圧が5Vであり、制御回路102dの入力端子(IN)と接続するMCU102aの入出力端子がRB1である以外は、前記した照明手段103の場合とON/OFF制御の動作は同じであるので説明は省略する。
【0048】
図5に戻って、MCU102aの入出力用の端子RA0,RA1,RA2はケーブル111(図3参照)を介してカメラ110に接続される。MCU102aの入出力用の端子RA0,RA1はデータ送受信用(TX信号,RX信号)に用いられ、カメラ110との通信を行うことができる。MCU102aはこのカメラ110との通信により、カメラ110に対してカメラ撮影、電子メール送信等の処理を命令することができる。
また、端子RA2はカメラ110への電源供給(charge)のために供され、カメラ110の図示しない内蔵バッテリの容量の制約を受けることなく長時間の測定が可能となる。
【0049】
MCU102aの入出力用の端子RB4ないしRB7にはスイッチ102fが接続され、スイッチ102fによって4ビットのデータ入力値を設定することができる。
本実施の形態では、スイッチ102fは設定値が数値表示されるデジタルスイッチを用いているが、安価なディップスイッチ等を用いてもよい。
【0050】
MCU102aは以上説明した構成により、MCU102a内の図示しないプログラム用メモリに記憶されたプログラムにしたがって、カメラ110、照明手段103、ポンプ107を制御することができる。
【0051】
本実施の形態では、コントローラ102としてMCUを用いた例を説明したが、ノート型PC(Personal Computer)等の汎用のコンピュータを用いて構成することもできる。また、リセット回路、制御回路等は前記した回路に限定されるものではなく、同等の機能を実現するものであればどのような形態のものでも用いることができる。
【0052】
(データ管理用コンピュータ(データ管理手段))
図7を参照して、データ管理手段であるデータ管理用コンピュータ(ホストコンピュータ)20について説明する。ここで、図7はデータ管理用コンピュータ20において実行する機能の構成を示すブロック図である。
データ管理用コンピュータ20では、メール受信手段210と、画像データ記憶手段211と、画像解析手段212と、ガス濃度データ表示手段213と、して機能するプログラムが実行される。
ガス検知管測定装置2A等によって、ガス検知管画像を撮影した画像データを添付した電子メールが送信される(図1参照)。データ管理用コンピュータ20は、メール受信手段210を用いて受信メールの有無を確認し、受信メールがある場合は受信メールに添付された画像データを取得し、画像データ記憶手段211に記憶する。
画像データ記憶手段211に記憶された画像データは、画像解析手段212を用いて、ガス検知管の変色層の長さに基づいてガス濃度を算出する。データ管理用コンピュータ20は、算出したガス濃度データをオペレータの要求に応じて、ガス濃度データ表示手段213を用いて数値あるいはグラフ等の形式で表示する。
【0053】
また、データ管理用コンピュータ20は、複数のガス検知管測定装置20が配置された各地点のガス濃度を収集することができるため、ガス検知管測定装置を配置した地域のガス濃度分布を得ることもできる。そして、ガス濃度データ表示手段213を用いて地図上にガス濃度分布を表示することができる。
各手段の詳細については順次説明する。
【0054】
(メール受信手段(受信手段))
メール受信手段210は、各ガス検知管測定装置が送信する電子メールのメールアドレスを順次検索し、受信メールがあると、その受信メールから添付された画像データを取得し、画像データ記憶手段211に記憶する。
【0055】
(画像解析手段)
図8を参照して、画像解析手段212について説明する。ここで図8は、画像解析手段212の構成を示すブロック図である。
画像解析手段212は、画像データ取得手段220と、検知管画像切出手段221と、平均化処理手段222と、差分処理手段223と、移動平均処理手段224と、変色層面積算出手段225と、ガス濃度算出手段226と、ブランクデータ記憶手段227と、変色層面積記憶手段228と、検量線データ記憶手段229と、ガス濃度データ記憶手段230と、から構成される。
【0056】
画像解析手段212は、画像データ取得手段220を用いて、ガス検知管を撮影した画像データを画像データ記憶手段211から読み出す(取得する)。また、画像データの取得に併せて、画像データ中に撮影されたガス検知管に対応する検知対象情報も取得する。この検知対象情報は、ガス検知管で検知したガスの種類に関する情報であり、変色する色に関する情報、ガス検知管のサイズに関する情報等が含まれ、変色する色に応じてRGBの3色の輝度信号から最適の色信号を選択する。また、ガス検知管のサイズ情報は、検知剤が充填され変色可能な領域の長さに相当し、後段の検知管画像切出手段221において、解析対象とするガス検知管の変色可能領域を適確に切出すために用いられる。
【0057】
検知管画像切出手段221は、画像データに含まれる複数のガス検知管画像から、解析対象とする1本のガス検知管画像の切出しを行う。また、前記した検知対象情報に基づき、RGBの3色から構成されるカラー画像の輝度信号から、そのガス検知管の解析に適した色の輝度信号を選択する。
例えば、変色が白色から黄色に変化するものである場合、後段の画像解析処理においては、画像データのカラー信号の内、黄色に対する感度の最も高いB色(Blue)信号を選択する。また、白色から赤色系に変色する場合は、G色(Green)信号を選択し、青色系に変色する場合はR色(Red)信号を選択するという具合に、色変化の情報に基づいて最適なカラー信号を選択することで、画像解析によるガス濃度の検出を精度よく行うことができる。
【0058】
図9(a)は、ガス検知管測定装置2から送信された電子メールに添付された画像データそのまま(生画像)を、データ管理用コンピュータ20の画面に表示した様子を示す。画面にはガス検知管測定装置2に装着された6本のガス検知管の画像200aないし200fが表示されている。
画像解析手段212は、6本の検知管の画像200aから200fに対して順次解析を行うが、検知管画像切出手段221に対して、この内の1本の画像切出しを指示する。検知管画像切出手段221は指示された検知管画像を切出す。図9(b)に、1本の検知管画像を切出した様子を示す。
【0059】
平均化処理手段222は、切出された1本の検知管画像の画像データに対して、ガス進行方向と垂直方向に画素値(輝度信号)の平均化を行う。図9(b)において、矢印xで示した水平方向がガス進行方向である。平均化処理手段222は、ガス検知管画像の垂直方向(矢印yの方向)の矢印Lyで示した範囲の画素値を、ガス進行方向のLxで示した範囲において1画素毎に平均値を算出する。すなわち、検知管画像の水平方向および垂直方向の画素数を、それぞれLx個、Ly個とすると、Ly個の平均値をLx組だけ算出する。
この平均化処理によって、検知剤が粒体であることによる撮影画像中の粒状ノイズ(画像ムラ)を低減することができる。また、この演算の結果、検知剤層の各位置と輝度値の関係を表すデータを得ることができる。
【0060】
差分処理手段223は、平均化処理手段222で算出された検知剤層と輝度値の関係を示すデータと、未使用(未変色)のガス検知管を撮影していられたブランクデータとの差分を計算し、変色による輝度変化を算出する。カメラで撮影して得られた輝度値は、変色前を白色とすると、変色前が最も輝度値が高く、変色により照明光を吸収するため輝度値が低下する。したがって、変色前のブランクデータから変色後の輝度データを減算する差分値を輝度変化として計算することで、変色前を0とし、変色により数値が増加する輝度変化データに変換することができる。
また、ブランクデータとの差分を計算することにより、ガス検知管の表面反射やカメラの感度ムラ等の雑音成分を相殺し、ガス濃度の検出を精度よく行うことができる。
ブランクデータは、測定開始前の未変色の状態の画像を撮影して、前記した平均化処理手段222で平均化処理したデータとして得ることができる。このブランクデータをブランクデータ記憶手段227に記憶しておき、変色したガス検知管の画像データを解析するときに読み出して用いる。
【0061】
移動平均処理手段224は、差分処理手段223で算出された差分データに対して移動平均処理を行う。ここで移動平均とは、検知剤層の位置xに対する輝度変化の関係を示すデータにおいて、位置x(単位は画素=ピクセルとする)を1画素ずつシフトして前後所定の画素範囲の輝度値の平均値を算出するフィルタ処理であり、高空間周波数のノイズを低減することができる。すなわち、水平方向の検知剤の粒状性に起因する粒状ノイズや、変色層の他の色ムラを低減することができる。
本実施の形態では、17次の移動平均フィルタ(中心の画素を含め、前後8画素の輝度変化値を平均する)を用いる。なお、移動平均フィルタのサイズは17次に限定されるものではなく、ノイズのレベルに応じて適宜変更してもよい。また、参照する画素値の単純平均ではなく、中心の画素から遠くなるほど重みを減じた加重平均を算出するようにしてもよい。
【0062】
変色層面積算出手段225は、移動平均処理手段224で算出した検知剤層の位置xと輝度変化の関係を示すデータから変色層面積を算出する。変色層面積の算出方法について、図10を参照して説明する。ここで図10は、移動平均処理手段224によって算出された検知剤層の位置xと輝度変化の関係を、ガス検知管と対比して模式的に表した図である。
図10において、上方のグラフは、検知剤層のガス進行方向における位置(変色距離)をx、輝度変化をf(x)としたときの両者の関係を示すグラフである。ガス検知管は左端から右方に向かって変色し、このグラフの斜線部分が変色した領域であることを示す。
fyaは、完全に変色したときの輝度変化の平均値である。一方、未変色の領域では、前記した差分処理により輝度変化値は0である。グラフ中ほどの輝度変化がなだらかに変化する領域は、変色が進行中の領域である。このように変色層と未変色層の境界が曖昧な場合においても適切に変色量を検出できるように、本実施の形態では、変色長の代わりに変色層面積を用いる。
【0063】
検知剤が充填された層の全範囲における輝度変化の総和をS(図10において斜線で示した面積S=変色層面積)、検知剤の全粒子中で反応した生成物質の個数をP[個/cm]とすると、SとPとの間に比例関係(S∝P)があることを利用してガス濃度を求める。変色層面積Sは、区分求積法により算出する。
【0064】
次に、区分求積法について説明する。Δxをサンプリング間隔[cm/pixel]、nをデータ数[pixel]、xはx=Δx×iで、図10の検知剤左端を原点として原点からの長さ、f(x)をxにおける輝度変化とし、図10における斜線部の面積をSとすると、(1)式からSを求めることができる。
【0065】
【数1】

【0066】
変色層面積算出手段225は、算出した変色層面積をガス濃度算出手段226に出力するともに、変色層面積記憶手段228に記憶する。
なお、この画像解析の手法については、本願発明者らにより前記した非特許文献1に詳しく開示されている。
【0067】
ガス濃度算出手段226は、変色層面積算出手段225で算出された変色層面積データおよび変色層面積記憶手段228に記憶された前回または/およびそれ以前の変色層面積データを読み出して変色速度を算出し、検量線データ記憶手段229に予め記憶された変色速度とガス濃度の関係を表す検量線データを参照してガス濃度を算出する。算出したガス濃度データはガス濃度データ記憶手段230に記憶する。
【0068】
このガス濃度算出の手順について、適宜図面を参照して説明する。
まず、変色速度とガス濃度の関係を示す検量線データの作成方法について、トルエンガスを検出対象ガスとしたときの実験例について説明する。
まず、サンプリングバッグ(GLサイエンス社製、材質はフッ素樹脂)に 100ppb のトルエンガスを詰めた。ガス濃度はPID検出器(Photo Ionization Detector,REA社 モデルPGM-7240)を用いて確認した。サンプリングバッグ中のトルエンガスを一定の通気速度でガス検知管(ガステック社、トルエン用ガス検知管No.122P)に導入し、適宜な間隔でガス検知管画像を撮影して前記した手順で変色層面積を算出した。また、使用したトルエンガス検知管は白色から茶色に変色するため、B色のカラー信号を用いた。
図16に、その実験結果を示す。通気時間に比例して一定速度で変色層面積が増加することがわかる。ここで、グラフの傾きである変色層面積の増加速度(以降、変色速度と呼ぶ)は、そのガス濃度に依存する。この依存関係について次の実験で説明する。
なお、通気時間が20分位で変色層面積の増加が飽和するが、これはガス検知管の端部まで変色したためである。
【0069】
次に、様々なトルエンガスの濃度について、前記した通気時間と変色層面積の関係を測定した結果を図17に示す。通気時間とともに変色層面積は直線的に増加し、ガス検知管の端部まで変色すると変色層面積は飽和する。そして、変色速度は濃度に依存することがわかる。
この実験結果から、各ガス濃度について変色層面積が直線的に変化する部分の傾きを、その濃度の変色速度として算出した。そうして得られたトルエンガス濃度と変色速度の関係を図18に示す。変色速度からガス濃度を算出する本手法では、図中矢印で示した16ppbまで測定可能であることが分った。
【0070】
図8に戻って、本実施の形態では、このようなガス濃度と変色速度の関係を検量線データとして、検知対象とする様々なガスに対して予め求めておき、検量線データ記憶手段229に記憶しておく。
ガス濃度算出手段226は、変色層面積算出手段225で新たに算出された変色層面積データと前回の測定時の変色層面積データとから変色速度を算出し、前記検量線データを用いて、その変色速度に対応するガス濃度を算出する。算出したガス濃度データは、ガス濃度データ記憶手段230に記憶する。
なお、変色速度算出においては、前回の測定値のみを参照するのではなく、更に過去の測定値を参照して変色速度を算出するように構成してもよい。
【0071】
(ガス濃度データ表示手段)
図7に戻って、ガス濃度データ表示手段213は、画像解析手段212において算出され、画像解析手段212のガス濃度データ記憶手段230(図8参照)に記憶されるガス濃度データを、オペレータの要求に応じてデータ管理用コンピュータの画面に表示する。
図19にガス濃度測定結果の表示例を示す。ガス濃度は約15分間隔で測定期間と休止期間を設定し、測定期間中は約1分間隔で測定を繰り返した。また休止期間中はポンプを停止し、ガス検知管の変色が進行しないようにした。
そして、データ管理用コンピュータ20の図示しないキーボード、マウス等の入力手段を介して入力されたオペレータの指示に従い、2点鎖線で囲まれたA,B,C3箇所のガス濃度を前記した手順で算出し、変色層面積の経時変化を示すグラフ上に表示したものである。
なお、表示の形式は図19の例に限定されるものではなく、画面表示ではなくプリンタを接続して印刷するようにしてもよい。
【0072】
また、ガス濃度測定システム1は、複数のガス検知管測定装置2を配置し、地理的に広範囲な場所のガス濃度を測定することができる。そして、データ管理用コンピュータ20は、ガス濃度データ表示手段213を用いて、測定地点を含む地図を表示するとともに、各測定地点に対するガス濃度値を表示することができる。また、収集した複数地点のガス濃度データに基づき、例えばコンピュータグラフィックスの手法を用いて等濃度線を作成し、地図上に重畳表示し、ガス濃度分布を視覚的に分りやすく表示することもできる。
【0073】
<装置の動作>
(ガス濃度測定システムの動作)
図11を参照して、本発明の実施の形態に係る図1に示したガス濃度測定システム1の動作について説明する。ここで、図11は、ガス濃度測定システム1の処理の流れを示すフロー図である。
なお、図1に示す構成例では、ガス濃度測定システム1は3台のガス検知管測定装置2(2A,2B,2C)と1台のデータ管理手段(データ管理用コンピュータ)20から構成されるが、ガス検知管測定装置2は1台でもよく、2台以上の複数台を用いることもできる。
【0074】
まず、ガス検知管測定装置2(図2参照)による測定動作から説明を始める。ガス検知管測定装置2は、コントローラ102の制御によってポンプ107を駆動して、ガス検知管測定装置2に装着されたガス検知管100に大気を通気する(ステップS10)。
次に、ガス検知管測定装置2は、コントローラ102の制御にしたがって所定のタイミングでカメラ110を用いてガス検知管100の透過光画像の撮影を行う(ステップS11)。なお、撮影の際には、コントローラ102は照明手段103を点灯するように制御する。
ガス検知管測定装置2は送信手段110cを用いて、カメラ110によって撮影された画像データを電子メールに添付して、データ管理用コンピュータ20が受信可能なメールアドレス宛に送信する(ステップS12)。
【0075】
なお、画像データの送信および受信手段として、電子メールシステムを用いる場合は、ガス検知管測定装置2から送信される電子メールは所定のメールサーバに保存され、受信側のデータ管理用コンピュータ20は、任意のタイミングで受信した電子メールを受け取ることができるため、各ガス検知管測定装置2(2A,2B,2C)とデータ管理用コンピュータ20は、それぞれ非同期で動作することができる。
【0076】
一方、データ管理用コンピュータ20(図7参照)は、画像データを受信する受信手段であるメール受信手段210を用いてガス検知管測定装置2から送信された画像データを受信して、添付された画像データを取得する(ステップS20)。そして取得した画像データを画像データ記憶手段211に記憶する。
データ管理用コンピュータ20は、画像データ記憶手段211に記憶された画像データを読み出し、画像解析手段212を用いて、画像データを解析してガス濃度を算出する(ステップS21)。
データ管理用コンピュータ20は、算出したガス濃度データを、ガス濃度データ表示手段213を用いて、オペレータの要求に応じてデータ管理用コンピュータ20の図示しない画面に表示する(ステップS22)。
【0077】
なお、各ガス検知管測定装置2は、それぞれのコントローラ102の設定にしたがって、ガス検知管100の測定作業(ステップS10ないしステップS12)を適宜繰り返し実行する。
また、データ管理用コンピュータ20は、所定のタイミングで画像データの受信と、画像データの画像解析と、必要に応じてガス濃度データの表示と、を含む処理(ステップS20ないしステップS22)を繰り返し実行する。
【0078】
(ガス検知管測定装置の動作)
次に、図12を参照して、図2および図3に示した本発明の実施の形態に係るガス検知管測定装置2の動作について詳細に説明する。ここで、図12は、ガス検知管測定装置2の処理の流れを示すフロー図である。
なお、本実施の形態においては、ガス検知管測定装置2は、所定回数の連続測定と、所定時間の休止期間を交互に繰り返すようにコントローラ102によって制御される。
【0079】
まず、ガス検知管測定装置2の図示しない電源スイッチによって電源を投入すると、コントローラ102のMCU102aは、内蔵されるプログラムメモリからプログラムを読み出し、そのプログラムにしたがって処理を実行する。電源投入後、MCU102aは、端子RB4〜RB7に接続されたスイッチ102fによる設定値を読取り、変数Tに入力する(ステップS100)。
次にMCU102aは、端子RB1およびRB2にLレベルを出力し、それぞれ制御回路102d、102eを介してポンプ107および照明手段103のOFF状態を保つとともに、カウンタ変数ToffにステップS100で入力したT値を代入する(ステップ101)。
【0080】
この後、MCU102aは所定の時間遅延し(所定の時間アイドル状態を継続する)(ステップS102)、割込入力回路102cによって割込信号が入力されたか否かを確認する(ステップS103)。割込信号の入力がない場合は(ステップS103でNo)、カウンタ変数Toffの値を1つ減じ(ステップS104)、カウンタ変数Toffの値が0になったかどうかを確認する(ステップS106)。カウンタ変数Toffが0でない場合は(ステップS106でNo)、ステップS102に戻り、所定時間の遅延(ステップS102)、割込信号の確認(ステップS103)を繰り返す。ここで割込信号の入力が全くなされない場合(ステップS103が常にNo)について考えると、カウンタ変数Toffが0になるまで、すなわち、設定されたT回だけ遅延(ステップS102)が繰り返される。ここで、遅延時間として1分間が設定されていた場合について考えると、T値として例えば15が設定されていると、15分間遅延される。すなわち、15分間、ガス検知管測定装置2は休止状態を継続する。割込信号がある場合(ステップS105でYes)の処理の流れについては後記する。T回の遅延が行われると、カウンタ変数ToffもT回カウントダウンされて0になり(ステップS106でYes)、ステップS107に進む。
【0081】
ステップS107では、MCU102aは、端子RB1およびRB2にHレベルを出力し、それぞれ制御回路102d、102eを介してポンプ107および照明手段103をON状態にするとともに、カウンタ変数TonにT値を代入する。次にMCU102aは、カメラ110との通信用の端子RA0およびRA1からケーブル111(図3参照)介して、カメラ110に対してガス検知管100の撮影と、撮影して得られた画像データを電子メールに添付し、所定のメールアドレス宛に送信するように命令し、カメラ110は画像撮影とメール送信を実行する(ステップS108)。
【0082】
次に、MCU102aは、割込入力回路102cによって割込信号が入力されたか否かを確認し(ステップS109)、割込信号の入力がない場合は(ステップS109でNo)、カウンタ変数Tonの値を1つ減じ(ステップS110)、カウンタ変数Tonの値が0になったかどうかを確認する(ステップS112)。カウンタ変数Tonが0でない場合は(ステップS106でNo)、ステップS108に戻り、カメラ110によるガス検知管の撮影とその画像データを添付した電子メールの送信処理(ステップS108)、および割込信号の確認(ステップS109)を繰り返す。ここで、ステップS103と同様に、割込信号が全くなされない場合(ステップS109が常にNo)について考えると、カウンタ変数Tonが0になるまで、すなわち、設定されたT回だけカメラによる撮影とメール送信処理(ステップS108)が繰り返される連続測定状態となる。T値として例えば15が設定されていると、カメラ110による撮影とメール送信、すなわちガス検知管100の測定が繰り返される。T回の測定が行われると、カウンタ変数TonはT回カウントダウンされて0になり(ステップS112でYes)、ステップS101に戻る。ステップS101では、ポンプ107および照明手段103はOFFされ、ステップS102ないしステップS106からなる所定時間の休止状態となる。
【0083】
ここで、休止状態中において、MCU102aがステップS103で割込信号の入力を検知すると(ステップS103でYes)、MCU102aは、カウンタ変数Toffに0を代入するとともに、スイッチ102fによって設定されたT値を再入力する(ステップS105)。カウンタ変数Toffには0が入力されたため、次のステップS106においてはYesに分岐し、ポンプ107および照明手段103がONされ(ステップS107)、新たなT値にしたがって、ステップS108ないしステップS112からなる連続測定状態に移行する。
【0084】
また、ステップS107ないしステップS112からなる連続測定状態中において、MCU102aがステップS109で割込信号の入力を検知すると(ステップS109でYes)、MCU102aは、カウンタ変数Tonに0を代入するとともに、スイッチ102fによって設定されたT値を再入力する(ステップS111)。カウンタ変数Tonには0が入力されたため、次のステップS112においてはYesに分岐し、ポンプ107および照明手段103がOFFされ(ステップS101)、新たなT値にしたがった休止状態に移行する。
【0085】
この割込信号の入力は、ガス検知管測定装置2によって自動測定中にオペレータが測定間隔を変更したい場合に行う操作である。すなわち、スイッチ102fの設定を変えて、割込入力回路102cを介して割込信号を入力することで、新たなT値にしたがった測定動作を開始することができる。
また、MCU102aは、リセット回路102bを介してリセット信号が入力されると、何れのステップを実行中であってもその処理を中断し、電源投入時と同様にステップS100から実行を再開する。
【0086】
(データ管理用コンピュータの動作)
次に、データ管理用コンピュータ20の動作について、図13を参照して説明する。ここで、図13は、図7に示すデータ管理用コンピュータ20の処理の流れを示すフロー図である。
データ管理用コンピュータ20は、メール受信手段210によってメール受信処理を実行し、ガス検知管測定装置2からの電子メールを受信していないかどうかを確認し、受信した電子メールがあると、その電子メールに添付された画像データを取得し、画像データ記憶手段211に記憶する(ステップ200)。
次に、データ管理用コンピュータ20は、画像解析手段212を用いて、画像データ記憶手段211に記憶された画像データを読み出して、その画像を解析してガス濃度を算出し、算出したガス濃度データをガス濃度データ記憶手段230(図8参照)に記憶する(ステップS201)。
【0087】
ガス濃度が算出されると(ステップS201)、データ管理用コンピュータ20は、オペレータから図示しないキーボード等の入力手段を介してガス濃度データの表示要求があるかどうかを確認し(ステップS202)、表示要求があると(ステップS202でYes)、ガス濃度データ表示手段213を用いて、ガス濃度データ記憶手段230(図8参照)に記憶されたガス濃度データを読み出し、データ管理用コンピュータ20の図示しない表示画面に表示する(ステップS203)。ガス濃度データの表示が終了すると、データ管理用コンピュータ20は、再びメール受信処理(ステップS200)に戻る。また、ガス濃度データの表示要求がない場合は(ステップS202でNo)、データ管理用コンピュータ20は、ガス濃度データを表示することなく、メール受信処理(ステップS200)に戻る。
【0088】
(メール受信手段(受信手段)の動作)
次に、図14を参照して、図13に示すメール受信処理(ステップS200)について詳細に説明する。ここで、図14は、図7に示すメール受信手段210の処理の流れを示すフロー図である。
なお、本実施の形態では、9台のガス検知管測定装置2が稼動しており、それぞれのガス検知管測定装置2は、画像データを添付した電子メールを対応する所定のメールアドレス宛に送信するものである。
【0089】
メール受信手段210は、まず、配列変数fail[i]の全要素(i=1〜9)に0を代入する(ステップS300)。ここで、配列変数fail[i]は、i番目のガス検知管測定装置2からの電子メールの取得に失敗した回数をカウントする変数である。
【0090】
まず、1番目のガス検知管測定装置2からの電子メールを取得するために、変数iに1を設定する(ステップS301)。次にiが9以下かどうかを確認し(ステップS302)、9以下の場合は(ステップS302でYes)、変数iに設定されている番号のガス検知管測定装置2が電子メールを送信するメールアドレスに接続する(ステップS303)。接続したメールアドレスに電子メールがあるかどうかを確認し(ステップS304)、電子メールがある場合は(ステップS304でYes)、その電子メールを受け取るとともに、対応する配列変数要素fail[i] に0を代入して失敗回数をクリアする(ステップS305)。次に取得した電子メールにファイル添付された画像データを取得し(ステップS306)、その画像データを画像データ記憶手段211のガス検知管測定装置2毎に設けられた所定のフォルダに記憶する(ステップS307)。そして、画像データの取得が完了した電子メールは削除する(ステップS308)。変数iに1を加算して(ステップS309)、ステップS302に戻り、変数iが9以下であれば(ステップS302でYes)、次の番号iのガス検知管測定装置2からの電子メールの受信処理(ステップS303)に進む。以降は同様に、番号1から番号9までのガス検知管測定装置2からの電子メールの受信処理を順次行う。
【0091】
ステップS304において、iが9より大きい場合は(ステップS304でNo)、ガス検知管測定装置2からの電子メール受信処理が一巡した状態であるので、75秒間待機して(ステップS310)、再度、変数iに1を設定し(ステップS301)、1番目のガス検知管測定装置2からの電子メールの受信処理を繰り返す。ここで、待機時間の75秒間は、ガス検知管測定装置2の測定間隔に対応しており、測定間隔を変更する場合は、待機時間も対応して適宜設定するようにすればよい。
【0092】
また、ステップS304において、電子メールの受信がない場合は(ステップS304でNo)、対応する配列変数要素fail[i] に1を加算して(ステップS311)、その配列変数要素fail[i] が5以下かどうかを確認する(ステップS312)。ステップS312は、電子メールの取得に連続して失敗した累積回数が5回以下かどうかを確認するものである。累積回数が5回以下の場合は(ステップS312でYes)、その番号iの電子メール取得はスキップし、iを1つ進めて(ステップS309)、次の番号に対応するガス検知管測定装置2からの電子メールの受信処理を行う。
【0093】
他方、失敗の累積回数が6回になると(ステップS312でNo)、データ管理用コンピュータ20は、メール受信手段210による処理を中止する。
【0094】
なお、本実施の形態においては、各ガス検知管測定装置2は、それぞれの測定装置毎に異なるメールアドレス宛に画像データを添付した電子メールを送信するようにしたが、1つの共通のメールアドレス宛に送信し、データ管理用コンピュータ20は、各電子メールの送信者や電子メールの表題等の情報を確認して、どのガス検知管測定装置2から送られてきた電子メールかを判別するようにしてもよい。
【0095】
(画像解析手段の動作)
次に、図15を参照して図13に示す画像解析処理(ステップS201)について詳細に説明する。ここで、図15は、図8に示す画像解析手段212の処理の流れを示すフロー図である。
画像解析手段212は、画像データ取得手段220によって、画像データ記憶手段211から記憶される画像データを読み出し取得する(ステップS400)。取得した画像データは、検知管画像切出手段221を用いて、画像データに含まれる複数のガス検知管画像から1つの画像を切出す(ステップS401)。切出された1本のガス検知管の画像に対して、平均化処理手段222によってガス進行方向と垂直方向の画素値の平均化処理を行い(ステップS402)、平均化処理された画像データに対して、差分処理手段223を用いて、ブランクデータ記憶手段227に記憶されるブランクデータとの差分値を算出する(ステップS403)。更に、差分値データに対して、移動平均処理手段224を用いて移動平均処理を行い(ステップS404)、移動平均処理されたデータから変色層面積算出手段225を用いて変色層面積を算出する。算出した変色層面積データは、ガス濃度算出手段226に出力するとともに、変色層面積記憶手段228に記憶する(ステップS405)。
【0096】
そして、画像解析手段212は、ガス濃度算出手段226を用いて、変色層面積算出手段225で算出された変色層面積データと、変色層面積記憶手段228に記憶された前回または/およびそれ以前の変色層面積データとに基づいて変色速度を算出し、検量線データ記憶手段229に記憶された検量線データを参照してガス濃度を算出し、算出したガス濃度データをガス濃度データ記憶手段230に記憶する(ステップS406)。
【0097】
ガス濃度を算出すべきガス検知管の画像が残っている場合は(ステップS407でYes)、ステップS401に戻り、次のガス検知管に対するガス濃度算出処理(ステップS401ないしステップS406)を繰り返す。未処理のガス検知管画像がない場合は(ステップS407でNo)、画像解析手段212による処理を終了する。
【0098】
なお、本実施の形態では、変色速度に基づいてガス濃度を算出するが、変色速度を得るためには少なくとも2回分の測定データ(変色層面積データ)が必要である。したがって、変色層面積記憶手段228に1個以上の過去の測定データ(変色層面積データ)が記憶されていない場合(初回の変色層面積を算出時)は、画像解析手段212は、ガス濃度算出手段226によるガス濃度を算出しないようにする。あるいは、データ管理用コンピュータ20は、メール受信手段210によって各ガス検知管測定装置2に対応する画像データを2回以上取得したことを確認してから、画像解析手段212による画像解析処理(ガス濃度算出処理)を行うように制御してもよい。
【0099】
<実験例>
次に、本発明に係るガス検知管測定装置2を用いて撮影したガス検知管の透過光画像の輝度分布と、比較例としてカメラの方向から照明して撮影したガス検知管の反射光画像の輝度分布とを、それぞれ図20および図21に示す。
【0100】
それぞれの実験条件を示す。
(透過光画像)
照明手段:
面発光冷陰極管(秋月電子社、面発光冷陰極管バックライトセットM−416)
カメラ:
カメラ付き携帯電話(NTTドコモ社、ムーバP506iC)
B色のカラー信号を使用
ガス検知管:
トルエン用ガス検知管(ガステック社、ガス検知管No.122P)
【0101】
(反射光画像(比較例))
照明手段:
蛍光灯(松下電器産業社、ツイン蛍光灯FPL27EX−N、長さ245mm)
上記蛍光灯を装着した学習用電気スタンドを用い、カメラと略同じ高さで、蛍光管の軸方向をガス検知管の軸方向と略平行になるように配置して照明した。
カメラ、ガス検知管:
カメラ、ガス検知管、および照明手段以外の他の構成は透過光画像のときと同じものを用いた。
【0102】
トルエン用ガス検知管は、白色から褐色に変色する。図20および図21の図中、矢印で「褐色」と示したガス検知管の位置x[ピクセル]が0から40くらいまでがトルエンガスと反応して褐色に変色した層であり、「白色」と示した範囲が未反応および変色途中の層である。
図20において、グラフ左側の褐色領域およびグラフ右側の白色領域ともに、変色の境界である位置xが40から60の間を除けば、ほぼフラットな値を示している。
他方、図21においては、位置xが60から80の白色領域に比較して、位置xが80から100にかけての白色領域は輝度レベルが30ないし40程度持ち上がっている。これは、この領域において、照明光がガス検知管のガラス表面で正反射し、カメラに入射したためであり、反射型の照明では、撮影対象領域の全面で安定した画像撮影が難しいことを示している。
図20に示したように、面発光型照明を用いて透過光画像を撮影した場合は、撮影対象領域の全面に対して安定した画像撮影ができることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】実施の形態に係るガス濃度測定システムを用いる実施環境の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態に係るガス検知管撮影装置を含むガス検知管測定装置の構成を示す側面図である。
【図3】実施の形態に係るガス検知管撮影装置を含むガス検知管測定装置の構成を示す斜視図である。
【図4】実施の形態に係るガス検知管撮影装置の面発光光源の構成を示す側面図と斜視図である。
【図5】実施の形態に係るガス検知管測定装置のコントローラおよびその制御対象との接続を示す回路図である。
【図6】実施の形態に係るガス検知管測定装置のコントローラの周辺回路を示す回路図である。(a)はリセット回路(割込入力回路)、(b)は照明手段を制御するための制御回路、(c)はポンプを制御するための制御回路である。
【図7】実施の形態に係るガス濃度測定システムのデータ管理用コンピュータ(データ管理手段)の構成を示すブロック図である。
【図8】実施の形態に係るガス濃度測定システムの画像解析手段の構成を示すブロック図である。
【図9】画像解析手段による画像解析を説明するための図である。(a)はガス検知管測定装置から送信されたガス検知管を撮影した生画像であり、(b)は1本のガス検知管画像を切出した様子を示す画像である。
【図10】ガス検知管の変色層面積の算出方法を説明するための図である。
【図11】実施の形態に係るガス濃度測定システムの処理の流れを示すフロー図である。
【図12】実施の形態に係るガス検知管測定装置の処理の流れを示すフロー図である。
【図13】データ管理用コンピュータ(データ管理手段)の処理の流れを示すフロー図である。
【図14】メール受信手段の処理の流れを示すフロー図である。
【図15】画像解析手段の処理の流れを示すフロー図である。
【図16】トルエンガスの通気時間と変色層面積の関係を調べた実験結果を示すグラフである。
【図17】トルエンガスの通気時間と変色層面積の関係のガス濃度依存性調べた実験結果を示すグラフである。
【図18】トルエンガス濃度と変色速度の関係を示すグラフである。
【図19】塗装工場でのガス濃度測定結果を画面表示した様子を示す図面である。
【図20】実施の形態に係るガス検知管測定装置によってガス検知管を撮影した画像の輝度分布を示すグラフである。
【図21】従来の手法でガス検知管を撮影した画像の輝度分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0104】
1 ガス濃度測定システム
2、2A、2B、2C ガス検知管測定装置
10 ガス検知管撮影装置
20 データ管理用コンピュータ(データ管理手段)
100 ガス検知管
101 筐体
101a 撮影穴
102 コントローラ
103 照明手段
104a、104b 配管
105 遮光部材
106 支持部材
107 ポンプ
110 カメラ
110a カメラ本体
110b 撮像ユニット
110c 送信手段
210 メール受信手段(受信手段)
212 画像解析手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス検知管を透過する透過光を、2次元撮像素子を備えたカメラで撮影した画像を解析することによってガス濃度を測定するためのガス検知管撮影装置であって、
複数の前記ガス検知管を同一平面上に配列する支持部材と、
前記支持部材に支持された前記複数のガス検知管を照明する面発光型の照明手段と、
前記照明手段と、前記照明手段による照明光が前記複数のガス検知管を透過する透過光を撮影する前記カメラとの間の空間を外光から遮光する筐体と、
を備えたことを特徴とするガス検知管撮影装置。
【請求項2】
前記複数のガス検知管と前記カメラとの間に、前記複数のガス検知管を透過する前記透過光を選択的に透過する遮光部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載のガス検知管撮影装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガス検知管撮影装置と、
2次元撮像素子を備えたカメラと、
前記複数のガス検知管にガスを通気するポンプと、
前記カメラの撮影と、前記照明手段の点灯および消灯と、前記ポンプの駆動および停止とを制御するコントローラと、
を備えたことを特徴とするガス検知管測定装置。
【請求項4】
前記カメラで撮影した前記複数のガス検知管の画像データを送信する送信手段を有する請求項3に記載のガス検知管測定装置と、
前記送信手段で送信された前記画像データを受信する受信手段と、受信手段が受信した画像データを解析することでガス濃度を算出する画像解析手段と、を有するデータ管理手段と、
を備えたことを特徴とするガス濃度測定システム。
【請求項5】
複数の前記ガス検知管測定装置を有し、
前記データ管理手段は、前記複数のガス検知管測定装置から送信された画像データに基づいてガス濃度を算出すること、
を特徴とする請求項4に記載のガス濃度測定システム。
【請求項6】
ガス検知管を用いたガス濃度測定方法であって、
同一の平面内に配列した複数の前記ガス検知管にガスを通気する通気ステップと、
面発光型の照明手段によって前記複数のガス検知管を照明し、前記複数のガス検知管を透過する透過光を、2次元撮像素子を備えたカメラで撮影する撮影ステップと、
前記カメラで撮影された前記複数のガス検知管の画像データを送信する送信ステップと、
前記送信された画像データを受信する受信ステップと、
前記受信した画像データを解析してガス濃度を算出する画像解析ステップと、
を含むことを特徴とするガス濃度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−218878(P2007−218878A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43097(P2006−43097)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(504197640)ラジエンスウエア株式会社 (3)
【Fターム(参考)】