説明

ガス機器及びその消火システム

【課題】低コストで設置可能であり、少量の消火剤で確実に火災を自動消火できる、ガス機器及びその消火システムを提供すること。
【解決手段】ガス機器において発生した火災を消火するための消火システムであって、ガスコンロ1にガスを供給するためのガス管3と、このガス管3にて供給されたガスをガスコンロ1において燃焼させる火口2と、ガスコンロ1に設けられ、所定経路にて供給された消火剤を放出するための火口2と、この火口2における消火剤の放出を起動するための火災制御盤50とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス管にて供給されたガスを燃焼させるガス機器及びこのガス機器を含んだシステムに関し、特に、このガス機器において発生した火災を消火するためのガス機器及びその消火システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一般家庭における出火箇所としては厨房が多いことが知られており、この厨房における出火原因としては天ぷら油の過熱が上位に挙げられている。このような事態を防止するため、近年のガスコンロには、油の温度が約250度以上になると、これを温度センサが検知して自動的にガスを止める過熱防止機能が設けられている。
【0003】
しかしながら、このような過熱防止機能を設けた場合においても、天ぷら油の過熱は極めて短時間で生じ得るため、これを完全に防止できず、出火に至る場合があった。また、過熱防止機能を備えていないガスコンロも依然として使用されているので、やはり油の過熱による出火を完全には防止できていなかった。
【0004】
このような点に鑑みて、従来から、厨房での火災を消火するための各種の消火装置や消火システムが提案されている。具体的には、スプリンクラーシステム、消火器具、あるいは、レンジフード消火装置がある。
【0005】
このうち、スプリンクラーシステムは、厨房の天井に設置したスプリンクラーヘッドにて火災を感知すると、水道管から供給された消火水がスプリンクラーヘッドから自動的に放出されるシステムである。また、消火器具としては各種のものがあり、消火剤を充填したタンクのノズルを手動操作することによりこの消火剤を放出する消火器や、ガスコンロの上方等に設置され、火災の熱によって感熱部が溶解して消火液を自動的に放出する消火器具、あるいは、消火液が充填されているガラス容器を打撃により破壊し消火液を放出する消火器具が実用化されている(例えば、特許文献1参照)。また、レンジフード消火装置は、ガスコンロの上方にある換気用のレンジフードを、火災発生時に落下させ、あるいは、レンジフードに組み込んだ防火布を落下させて、消火剤の放出区画を形成し、この放出区画内に消火剤を放出して消火を行う装置である。
【0006】
【特許文献1】特開2004−242993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これら各種の消火装置や消火システムはいずれも一長一短があった。例えば、スプリンクラーシステムに関しては、自動的に消火できる点や消火水の放出量に制限がないという利点があるが、給水管を施設する等のために設備が大掛かりになるため、設置コストが高くなると共に既存住宅への設置やレイアウト変更が困難であり、また、一度起動されると広範囲に水が放出されて水損が大きいという欠点があった。
【0008】
また、消火器具に関しては、設置が簡易であり消火剤による汚損範囲も比較的狭いという利点があるが、手動にて操作する必要があるため、人が不在の場合には機能せず、また、人がいてもその操作の熟練度によっては完全に消火を行うことができなかったり、消火剤の容量に限りがあるために消火可能な範囲が比較的狭いという欠点があった。
【0009】
また、レンジフード消火装置に関しては、自動的に消火できるという利点があるが、レンジフードや防火布で形成した防火区画は比較的容積の大きなものになるため、消火剤が不足して火災を完全には消火できない可能性があった。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低コストで設置可能であり、少量の消火剤で確実に火災を自動消火できる、ガス機器及びその消火システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載のガス機器の消火システムは、ガス機器において発生した火災を消火するための消火システムであって、前記ガス機器にガスを供給するためのガス管と、前記ガス管にて供給されたガスを前記ガス機器において燃焼させる火口と、前記ガス機器に設けられ、所定経路にて供給された消火剤を放出するための消火口と、前記消火口における消火剤の放出を起動するための起動手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載のガス機器の消火システムは、請求項1に記載のガス機器の消火システムにおいて、前記ガス機器における火災の発生を検知する火災検知手段を備え、前記起動手段を、前記火災検知手段において火災の発生が検知された場合に、前記消火口から前記消火剤を放出させる消火制御手段として構成したことを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載のガス機器の消火システムは、請求項1又は2に記載のガス機器の消火システムにおいて、前記ガス機器の前記火口における加熱温度を検知する温度検知手段を備え、前記起動手段を、前記温度検知手段において加熱温度が所定温度以上になったことが検知された場合に、前記消火口から前記消火剤を放出させる消火制御手段として構成したことを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載のガス機器の消火システムは、請求項1から3のいずれか一項に記載のガス機器の消火システムにおいて、前記起動手段を、消火剤の放出を手動にて起動するためのスイッチ手段として構成したことを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に記載のガス機器の消火システムは、請求項1から4のいずれか一項に記載のガス機器の消火システムにおいて、前記消火剤を供給するためのもので、前記ガス管に連結された消火管と、前記ガス管と前記消火管との連結位置に配置され、前記消火管により供給された消火剤を前記ガス管に導入する切換を行う切換手段とを備え、前記起動手段は、前記切換手段を制御して前記消火剤を前記ガス管に導入することにより、前記火口を前記消火口として前記消火剤を放出可能としたことを特徴とする。
【0016】
また、請求項6に記載のガス機器の消火システムは、請求項1から5のいずれか一項に記載のガス機器の消火システムにおいて、前記消火口を、前記火口の外部において、当該火口又はその近傍位置に向けて配置された消火ノズルとして構成したことを特徴とする。
【0017】
また、請求項7に記載のガス機器の消火システムは、請求項1から6のいずれか一項に記載のガス機器の消火システムにおいて、前記ガス管におけるガスの供給を遮断するガス遮断手段を備え、前記起動手段は、前記火災検知手段において火災の発生が検知された場合に、前記ガス遮断手段を制御して前記ガスの供給を遮断させることを特徴とする。
【0018】
また、請求項8に記載のガス機器の消火システムは、請求項1から7のいずれか一項に記載のガス機器の消火システムにおいて、前記ガス機器の上方に配置され、消火剤放出区画を形成するための防火布を放出可能な防火布放出手段を備え、前記起動手段は、前記火災検知手段において火災の発生が検知された場合に、前記防火布放出手段を制御して前記防火布を放出させることを特徴とする。
【0019】
また、請求項9に記載のガス機器は、ガスを燃焼させるためのガス機器であって、前記ガスを燃焼させる火口と、所定経路にて供給された消火剤を放出するための消火口とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、起動手段にて消火剤の放出が起動され、この消火剤がガス機器の消火口から放出されるので、ガス機器において発生した火災を確実に消火できる。
【0021】
また、この発明によれば、火災検知手段にて火災が検知された際に消火剤が放出されるので、ガス機器の火災消火を自動的に行うことができる。また、一般住宅に設置されている火災検知器を利用して消火剤放出を起動でき、消火システムの設置コストを一層低減できる。
【0022】
また、この発明によれば、ガス機器の温度検知手段にて検知された加熱温度に基づいて消火剤が放出されるので、ガス機器の火災消火を自動的に行うことができる。また、既存のガス機器の過熱防止用の温度センサを利用して消火剤放出を起動でき、消火システムの設置コストを一層低減できる。
【0023】
また、この発明によれば、スイッチ手段にて消火剤を放出できるので、ユーザが火災を発見した場合にも迅速に消火を行うことができる。特に、ガスコンロの温度検知部や火災検知器を省略でき、消火システムの設置コストを一層低減できる。
【0024】
また、この発明によれば、消火剤をガス管に導入し、火口から消火剤を放出できるので、配管経路やガスコンロに特別な改造を施す必要がなく、消火システムの設置を容易に行うことができると共に、この設置のコストを一層低減できる。
【0025】
また、この発明によれば、火口とは個別に設けた消火ノズルから消火剤を放出できるので、消火剤放出区画を形成しなくても消火剤の散乱を防止できる。また、ガス管ではなく、消火ノズルと消火剤配管を介して消火剤を放出することで、三方弁を省略できる。
【0026】
また、この発明によれば、ガス遮断手段を制御してガスの供給を遮断させるので、火災エネルギーの供給を断って消火を促すと共に、火災消火後においてもガスが供給され続けてガス中毒やガス爆発を招く危険性を解消する。
【0027】
また、この発明によれば、防火布にて形成した消火剤放出区画内に消火剤を放出するので、窒息効果によって消火を促すことができる。また、消火剤が散乱することを防止できると共に、消火剤を狭い範囲に集中させて消火効果を向上させることができる。従って、消火剤の量が限られている場合においても、少量の消火剤を効率よく放出して消火を行うことができる。
【0028】
また、この発明によれば、ガス機器に消火剤を放出するための消火口を設けたので、消火剤タンク等を接続することでガス機器から消火剤を放出でき、ガス機器自身に消火機能を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る熱感知器の各実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕本発明の基本的構成を説明した後、〔II〕本発明の実施の形態について説明し、〔III〕最後に、本発明の実施の形態に対する変形例について説明する。
【0030】
〔I〕本発明の基本的構成
まず、本発明の基本的構成について説明する。本発明は、ガス機器に消火剤を放出する機能を設けたことを基本的特徴としている。ガス機器の具体的形態は任意であるが、以下では、厨房で料理を行うために使用されるガスコンロを対象として説明する。この消火剤の放出形態としては、ガスを燃焼させる火口から直接消火剤を放出するものと、火口ではなく別個に設けた消火ノズルから消火剤を放出するものがある。また、消火剤の放出を促すトリガーとしては、過熱防止のためにガスコンロに設けられている温度センサ、火災発生を検知する火災検知器、あるいは、手動にて消火剤の放出を指示するための操作ボタンを挙げることができる。
【0031】
また、ガスコンロによる消火剤の放出に伴い、各種の機器を連動制御する。例えば、ガス管におけるガス供給を遮断するガスマイコンメータを動作させたり、ガス管に接続された三方弁を動作させてこのガス管に消火剤を導入する。あるいは、パラシュート型消火装置を動作させることで、ガスコンロの上部を防火布で覆って消火剤放出区画を形成し、この消火剤放出区画の内部に消火剤を放出する。
【0032】
〔II〕本発明の実施の形態
次に、本発明に係る熱感知器の各実施の形態について説明する。ただし、これら各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0033】
〔実施の形態1〕
まず、本発明の実施の形態1に係るガス機器の消火システム及びガス機器について説明する。最初に、本実施の形態1に係る消火システムの構成について説明し、その後、この消火システムにおける消火制御処理について説明する。
【0034】
(消火システムの構成について)
図1は、本実施の形態1に係るガス機器の消火システムを備えた厨房周辺の正面図である。この図1に示すように、本実施の形態1に係る消火システムは、ガス機器としてのガスコンロ1、ガスマイコンメータ10、消火剤タンク20、火災検知器30、パラシュート型消火装置40、及び、消火制御盤50とを備えて構成されている。
【0035】
このうち、ガスコンロ1は、概略的には従来のガスコンロと同様に構成されており、2つの火口2を備えて構成されており、この火口2において、ガス管3にて供給されたガスを燃焼させる。また、この火口2は、後述するように消火剤を放出するための消火口としても機能する。
【0036】
このガスコンロ1には、従来と同様の過熱防止機能を達成するため、火口2における加熱温度を検知する温度検知部4(後述する図2のみに図示)が設けられている。この温度検知部4は、公知の技術を用いて構成でき、例えば、五徳5の内部に設置された温度センサを備え、五徳5に載せられた調理器具の底面にこの温度センサを接触させてその温度を測定するもので、特許請求の範囲における温度検知手段に対応する。このように測定された温度は、ガスコンロ1に設けられた図示しない制御部に入力され、この制御部は、測定された温度が所定の閾値(例えば、油発火温度である360度より下の250度。以下、過熱防止閾値と称する。)を超えた場合に、ガス供給を停止させて火災発生を防止する。
【0037】
また、ガスマイコンメータ10は、ガス遮断信号を受信した際にガス管3によるガスの供給を遮断するもので、特許請求の範囲におけるガス遮断手段に対応する。
【0038】
また、消火剤タンク20は、任意の消火剤を放出可能に充填する充填手段であり、消火剤としては、例えば、リン酸二水素アンモニウムを主成分とする油火災対応の粉末消火剤が充填されている。この消火剤タンク20は、消火剤配管21を介して三方弁22に接続されている。また、三方弁22は、消火剤配管21を介して供給された消火剤をガス管3の内部に導入可能とする切換弁であり、特許請求の範囲における切換手段に対応する。この消火剤タンク20は、通常時は開放状とされると共に三方弁22にて閉鎖状態とされており、この三方弁22が起動されることによってその内部の消火剤がガス管3に自動的に圧送される。ただし、消火剤の誤放出を一層確実に防止するためには、後述する消火制御盤50からの制御信号によって消火剤タンク20を開放状としてもよい。また、三方弁22は、ガス管3の任意の位置に配置できるが、ガスコンロ1に極力近い位置に配置することが、消火剤の放出量を低減するためには好ましい。
【0039】
また、火災検知器30は、火災を検知するもので、特許請求の範囲における火災検知手段に対応する。この火災検知の原理は任意であるが、例えば、特定波長を検出することによる炎検知、散乱光式や減光式等による煙検知、あるいは、サーミスタ等の熱検知素子による熱検知によって、火災を検知することができる。この火災検知器30は、ガスコンロ1において発生した火災を検知可能な任意の位置に配置され、例えば、本実施の形態1においては、ガスコンロ1の斜め上方の天井面に設置されている。
【0040】
また、パラシュート型消火装置40は、防火布41(図5〜7にのみ図示)を落下させることによって、この防火布41の内部空間を消火剤放出区画とするものであり、特許請求の範囲における防火布放出手段に対応する。このパラシュート型消火装置40は、ガスコンロ1の上方における壁面に設置されている。
【0041】
また、消火制御盤50は、消火システムの各部を制御するもので、特許請求の範囲における起動手段及び消火制御手段に対応する。図2は、消火システムの電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。この図2に示すように、消火制御盤50は、制御部51、メモリ52、及び、タイマ53を備えて構成されており、ガスコンロ1の温度検知部4、ガスマイコンメータ10、三方弁22、パラシュート型消火装置40、及び、火災検知器30に電気的に接続されている。
【0042】
このうち、メモリ52は、消火制御盤50における各種の処理を実行するために必要な情報を不揮発的に記憶するための記憶手段であり、特に、ガスコンロ1の温度検知器にて検知された温度に基づいて火災発生を断定するための所定の閾値(例えば、上述した過熱防止閾値よりも上の温度であり、360度。以下、火災断定閾値と称する)が記憶されている。また、タイマ53は、消火制御盤50における各種の処理を実行するために必要な計時を行うものであり、特に、パラシュート型消火装置40が起動されてから、防火布41が落下して消火剤放出区画が形成されるまでの時間(以下、放出区画形成時間と称する)を計時する。
【0043】
また、制御部51は、消火制御盤50の各部を制御するための制御手段であり、例えば、メモリ52に記憶されたプログラムをロードして実行するCPU(Central Processing Unit)を備えて構成されている。この制御部51は、機能概念的に、火災判断部54及び消火制御部55を備えて構成されている。このうち、火災判断部54は、火災検知器30及びガスコンロ1の温度検知部4からの出力に基づいて、ガスコンロ1における火災発生の有無を判断する火災判断手段である。また、消火制御部55は、火災判断部54にて火災が発生したと判断された場合に、消火等に必要な所定制御を実行する消火制御手段である。これら各部の具体的処理内容については後述する。なお、消火制御盤50は、図示以外の場所に配置されてもよく、例えば、厨房の収納棚の内部に設置してもよい。
【0044】
(消火システムの消火制御処理について)
次に、この消火システムにおける消火制御処理について説明する。図3は、消火制御処理のフローチャート、図4〜7は、火災状態から消火状態に至る過程を示す図である。まず、図3に示すように、消火制御盤50の火災判断部54は、火災検知器30からの火災発報信号の入力の有無を監視する(ステップSA−1)。
【0045】
また、火災判断部54は、ガスコンロ1の温度検知部4からの温度出力信号にて取得される温度が、メモリ52に記憶されている火災断定閾値を越えているか否かを監視する(ステップSA−2)。なお、このように火災断定閾値を用いるのは、ガスコンロ1における過熱温度が過熱防止閾値を越えても何らかの原因でガス供給の停止が行われていない可能性があり、火災断定閾値にまで至った場合には天プラ油が発火点に至る可能性が高いと判断するためである。
【0046】
そして、図4のように天プラ鍋から火災が発生した場合、火災判断部54は、火災検知器30からの火災発報信号の入力があった場合、あるいは、温度検知部4からの温度出力信号にて取得される温度が火災断定閾値を越えている場合に、ガスコンロ1において火災が発生したと判断し、その旨を示す信号を消火制御部55に出力する。
【0047】
この信号を受けた消火制御部55は、図3に示すように、まず、ガスマイコンメータ10に遮断信号を出力することにより、ガスマイコンメータ10にガス供給を遮断させる(ステップSA−3)。この遮断信号を受けたガスマイコンメータ10では、ガス管3によるガス供給を遮断する。このことにより、火災エネルギーの供給を断って消火を促すと共に、火災消火後においてもガスが供給され続けてガス中毒やガス爆発を招く危険性を解消する。
【0048】
次いで、消火制御部55は、パラシュート型消火装置40に起動信号を出力することにより、このパラシュート型消火装置40から防火布41を落下させる(ステップSA−4)。この起動信号を受けたパラシュート型消火装置40は、図5に示すように、扉42を開くことにより、防火布41を落下させる。また、消火制御部55は、図3に示すように、パラシュート型消火装置40に起動信号を出力すると同時にタイマ53による計時を開始し、放出区画形成時間が経過したか否かを監視する(ステップSA−5)。このように放出区画形成時間の経過を待つのは、防火布41が落下される前に消火剤を放出したのでは、この消火剤が厨房に散乱してその汚損を招く可能性があるためであり、防火布41の落下が完了してから消火剤を放出するためである。
【0049】
そして、放出区画形成時間が経過した時点において、図6に示すように、落下した防火布41によってガスコンロ1の上部が略覆われることにより、この防火布41の内部空間としての消火剤放出区画43が形成される。この時、消火制御部55は、図3に示すように、三方弁22に切換信号を出力することにより、この三方弁22に配管切換えを行わせる(ステップSA−6)。このことにより、消火剤タンク20からの消火剤が消火剤配管21及び三方弁22を介してガス管3に導入され、ガスコンロ1の火口2から放出される。この結果、図7に示すように、防火布41にて形成された消火剤放出区画43に消火剤が放出され、この消火剤が天プラ鍋の上方にも周り込んで、火災が消火される。すなわち、本実施の形態1においては、火口2が消火剤を放出する消火口を兼ねる。これにて消火制御処理が終了する。この後、火災消火が人為的に確認された時点で、防火布41はパラシュート型消火装置40に再び収納され、ガスマイコンメータ10がガス作業員によって復旧され、三方弁22を戻すことによってガス供給が再開される。
【0050】
(実施の形態1の効果)
このように本実施の形態1によれば、ガスコンロ1の加熱温度又は火災検知器30の検知結果に基づいて火災有無が判断され、火災発生時には自動的に消火剤が放出されて、火災が消火される。特に、ガスコンロ1の加熱温度が火災断定閾値を超えた場合に火災が発生したと判断することで、ガスコンロ1の既存の過熱防止機能を用いて、火災発生を一層確実に検知することができる。既存のガス管3と火口2を介して消火剤を放出できるので、配管経路やガスコンロ1に特別な改造を施す必要がなく、消火システムの設置コストを低減できる。また、最初にガス供給を遮断することにより、火災エネルギーの供給を断って消火を促すと共に、火災消火後においてもガスが供給され続けてガス中毒やガス爆発を招く危険性を解消する。また、防火布41にて消火剤放出区画内43を形成するので、窒息効果によって消火を促すことができる。また、消火剤放出区画内43に消火剤を放出するので、厨房等に消火剤が散乱することを防止できると共に、消火剤を火源に集中させて消火効果を向上させることができる。従って、消火剤の量が限られている場合においても、少量の消火剤を効率よく放出して消火を行うことができる。また、放出区画形成時間の経過を待ってから消火剤を放出することで、消火剤放出区画内43への消火剤の放出を一層確実に行うことができる。
【0051】
〔実施の形態2〕
次に、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態2に係るガス機器の消火システム及びガス機器について説明する。本実施の形態2に係る消火システムは、消火剤の放出を手動で起動することで、実施の形態1に係る消火システムに比べて一層簡易に構成されている。最初に、本実施の形態1に係る消火システムの構成について説明し、その後、この消火システムにおける消火制御処理について説明する。なお、実施の形態1と略同様の構成については、必要に応じて、実施の形態1において使用したのと同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0052】
(消火システムの構成について)
図8は、本実施の形態2に係るガス機器の消火システムを備えた厨房周辺の正面図、図9は、図8のガスコンロの斜視図である。この図8に示すように、本実施の形態2に係る消火システムは、ガスコンロ60、ガスマイコンメータ10、及び、消火剤タンク20を備えて構成されている。
【0053】
ガスコンロ60は、図9に示すように、一対の消火ノズル61と、起動スイッチ62とを備えて構成されている。
【0054】
このうち、各消火ノズル61は、消火剤を放出するためのもので、特許請求の範囲における消火口及び消火ノズルに対応する。具体的には、各消火ノズル61は、料理等の障害にならない位置、すなわち、ガスコンロ60の奥側上面に設置されている。各消火ノズル61は上方に延出するように形成され、その略中間位置には、火口2に向けて消火剤を放出するための第1の放出口63を備え、その上端位置には、五徳5に載せられた天プラ鍋等の調理器具の上面に向けて消火剤を放出するための第2の放出口64とを備える。これら一対の消火ノズル61は、消火剤配管65、開閉弁66、及び、消火剤配管67を順次介して、図1の消火剤タンク20に接続されている。なお、消火ノズル61の形状や配置位置、消火剤配管の経路等については、任意に変更することができる。
【0055】
また、起動スイッチ62は、消火剤の放出を手動にて起動するためのもので、特許請求の範囲におけるスイッチ手段に対応する。この起動スイッチ62は、ガスコンロ60の前面における押しボタンとして設けられている。ただし、この起動スイッチ62の具体的構造や配置位置は任意に変更することができる。
【0056】
(消火システムの消火制御処理について)
次に、この消火システムにおける消火制御処理について説明する。ガスコンロ60において火災が発生したことを発見したユーザが起動スイッチ62を押圧すると、この起動スイッチ62から開閉弁66に開放信号が出力される。この開放信号を受けた開閉弁66は、消火剤タンク20からの消火剤を消火ノズル61に導入する。これにより、消火ノズル61の第1の放出口63及び第2の放出口64からそれぞれ消火剤が放出される。
【0057】
(実施の形態2の効果)
このように本実施の形態2によれば、ユーザの手動操作によって消火剤を放出することにより、実施の形態1のような温度検知部4や火災検知器30を省略できる。また、消火ノズル61によって火口2や調理器具に向けて直接消火剤を放出できるので、実施の形態1のように消火剤放出区画43を形成しなくても消火剤の散乱を防止できる。また、ガス管3ではなく、消火ノズルと消火剤配管を介して消火剤を放出することで、実施の形態1のような三方弁22を省略できる。
【0058】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0059】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。例えば、従来の消火システムや消火装置に比べて、設置コストや消火の確実性の問題を完全に解消できない場合においても、これらが若干でも向上している限りにおいて、本発明の課題が達成されている。
【0060】
(消火剤を放出させるトリガーについて)
実施の形態1においては温度検知部4と火災検知器10との両方を用いて火災発生の有無を判断していたが、いずれか一方を省略してもよい。あるいは、任意の他の方法や装置と連動させたり、2つ以上の方法や装置のANDをとって火災発生の有無を判断してもよい。例えば、煙検知器と熱検知器との火災発報信号のANDが得られた場合にのみ消火剤を放出するようにしてもよい。また、実施の形態1の温度検知部4及び火災検知器10と、実施の形態2の手動スイッチ62の両方を設けてもよい。
【0061】
(消火剤の放出機構について)
また、消火剤を放出するための具体的機構については、さらに種々の形態を取ることができる。例えば、消火ノズル61の第1の放出口63と第2の放出口64のいずれか一方を省略してもよく、あるいは、さらに多くの放出口を設けてもよい。また、消火ノズル61を五徳5の内部に組み込んだり、火口2の近傍に配置してもよい。また、消火ノズル61を天井や壁面に設け、ここから火口2や調理器具に向けて消火剤を放出してもよい。あるいは、消火ノズル61をガスコンロ1、60の中央付近に1つのみ設けると共に、火災発生位置を特定するための検知器(例えば、赤外線検知器)を設け、この検知器にて特定された火災発生位置に消火ノズル61を回転等にて配向させて、消火剤を放出させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
この発明は、消火システムの設置コストを低減し、消火に必要な消火剤の量を低減し、あるいは、消火剤による消火の確実性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態1に係るガス機器の消火システムを備えた厨房周辺の正面図である。
【図2】消火システムの電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図3】消火制御処理のフローチャートである。
【図4】火災状態から消火状態に至る過程を示す図である。
【図5】図4の次の過程を示す図である。
【図6】図5の次の過程を示す図である。
【図7】図6の次の過程を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係るガス機器の消火システムを備えた厨房周辺の正面図である。
【図9】図8のガスコンロの斜視図である。
【符号の説明】
【0064】
1、60 ガスコンロ
2 火口
3 ガス管
4 温度検知部
5 五徳
10 ガスマイコンメータ
20 消火剤タンク
21、65、67 消火剤配管
22 三方弁
30 火災検知器
40 パラシュート型消火装置
41 防火布
50 消火制御盤
51 制御部
52 メモリ
53 タイマ
54 火災判断部
55 消火制御部
61 消火ノズル
62 起動スイッチ
63 第1の放出口
64 第2の放出口
65 消火剤配管
66 開閉弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス機器において発生した火災を消火するための消火システムであって、
前記ガス機器にガスを供給するためのガス管と、
前記ガス管にて供給されたガスを前記ガス機器において燃焼させる火口と、
前記ガス機器に設けられ、所定経路にて供給された消火剤を放出するための消火口と、
前記消火口における消火剤の放出を起動するための起動手段と、
を備えたことを特徴とするガス機器の消火システム。
【請求項2】
前記ガス機器における火災の発生を検知する火災検知手段を備え、
前記起動手段を、前記火災検知手段において火災の発生が検知された場合に、前記消火口から前記消火剤を放出させる消火制御手段として構成したこと、
を特徴とする請求項1に記載のガス機器の消火システム。
【請求項3】
前記ガス機器の前記火口における加熱温度を検知する温度検知手段を備え、
前記起動手段を、前記温度検知手段において加熱温度が所定温度以上になったことが検知された場合に、前記消火口から前記消火剤を放出させる消火制御手段として構成したこと、
を特徴とする請求項1又は2に記載のガス機器の消火システム。
【請求項4】
前記起動手段を、消火剤の放出を手動にて起動するためのスイッチ手段として構成したこと、
を特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のガス機器の消火システム。
【請求項5】
前記消火剤を供給するためのもので、前記ガス管に連結された消火管と、
前記ガス管と前記消火管との連結位置に配置され、前記消火管により供給された消火剤を前記ガス管に導入する切換を行う切換手段とを備え、
前記起動手段は、前記切換手段を制御して前記消火剤を前記ガス管に導入することにより、前記火口を前記消火口として前記消火剤を放出可能としたこと、
を特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のガス機器の消火システム。
【請求項6】
前記消火口を、前記火口の外部において、当該火口又はその近傍位置に向けて配置された消火ノズルとして構成したこと、
を特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のガス機器の消火システム。
【請求項7】
前記ガス管におけるガスの供給を遮断するガス遮断手段を備え、
前記起動手段は、前記火災検知手段において火災の発生が検知された場合に、前記ガス遮断手段を制御して前記ガスの供給を遮断させること、
を特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のガス機器の消火システム。
【請求項8】
前記ガス機器の上方に配置され、消火剤放出区画を形成するための防火布を放出可能な防火布放出手段を備え、
前記起動手段は、前記火災検知手段において火災の発生が検知された場合に、前記防火布放出手段を制御して前記防火布を放出させること、
を特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のガス機器の消火システム。
【請求項9】
ガスを燃焼させるためのガス機器であって、
前記ガスを燃焼させる火口と、
所定経路にて供給された消火剤を放出するための消火口と、
を備えたことを特徴とするガス機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−212205(P2006−212205A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27930(P2005−27930)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】