説明

ガス漏洩検出機構

【課題】ガス漏洩の検出対象の規模や面積が大きい場合にも適し、漏洩を検出するとともに捕集した気体を速やかに排気することのできる、ガス漏洩検出機構を提案する。
【解決手段】空気よりも軽い気体の漏洩の発生を検出するための機構であって、気体の漏洩が発生する空間の天井面10に、上方へ凸状の溝11を形成し、該溝11の内部における最高位置に気体濃度検出センサ12を設けた。前記溝11の上部又はその近傍を構成する壁に、外部と連通可能であって開閉可能な開口部11bを形成した。そして、気体濃度検出センサ12と開口部11bの開閉駆動手段とを制御装置15に接続し、気体濃度が所定濃度を超えたことが検出されれば、開口部11bを開放させるよう制御した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管等から漏洩したガスを迅速且つ確実に検知するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水素ガスを扱う施設において、水素ガスの漏洩を迅速且つ確実に検出する方法としては、水素ガスが通過する配管を二重配管構造等の密閉構造として、漏洩した水素ガスを捕集して検出する方法が知られている。この検出構造では、配管が密である場合や、複雑である場合や、配管経路が長い場合等には、配管を二重に構成したり、捕集機構を構成したり、メンテナンスしたりすることが複雑となり、また、コストがかかるという不具合があった。
そこで、より簡易な構造にて水素ガスの漏出を検出する方法が提案されている。例えば、特許文献1や特許文献2に記載の技術である。
【0003】
特許文献1では、配管における破損検出装置が公開されている。この技術では、略中央部に水素濃度測定器が取り付けられたフードを配管に被せ、破損箇所から流出するガスを該フードで捕集する。水素は極めて軽い気体であるので、検出したい箇所にフードを被せることで、容易に水素が捕捉することができる。
【0004】
また、特許文献2では、燃料電池用ケースの構造が公開されている。この技術は、燃料電池用ケース上部材の少なくとも一部に空気より軽い気体を捕集する捕集部を形成し、該捕集部に水素を検出する水素検出センサを取り付けたものである。ケース内部において漏出した水素は、漏出した箇所に拘わらず、空気よりも極めて軽いためにケース上部材に沿って最上部に形成された水素捕集部に集まる。水素捕集部に集まった水素は、水素捕集部の略中央に取り付けられた水素検出センサによって直ちに検出される。
【特許文献1】特開昭58−5627号公報
【特許文献2】特開2002−367648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、水素ガスの漏洩を発生する箇所を、二重配管等して個々に被覆するする必要がないので、構造が簡易となり、コストの削減も実現することができる。
しかし、ガス漏洩の検出対象の規模や面積が大きい場合には、フードやケースを形成することは困難である。
また、捕集した水素ガスをいかに処理するかが課題となる。水素ガスは空気と混合したのち、何らかの原因により引火すれば、爆発するおそれがあるため、速やかに大気拡散させる事が好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、空気よりも軽い気体の漏洩の発生を検出するための機構であって、気体の漏洩が発生する空間の天井面に、上方へ凸状の溝を形成し、該溝の内部における最高位置に気体濃度検出センサを設けたものである。
【0008】
請求項2においては、前記溝の上部又は上部近傍を構成する壁に、外部と連通可能な開口部を形成し、該開口部を開閉可能としたものである。
【0009】
請求項3においては、前記気体濃度検出センサと前記開口部の開閉駆動手段とを、制御手段に接続し、前記気体濃度検出センサにて検出された気体濃度が所定濃度を超えると、制御手段が前記開口部の開閉駆動手段を駆動し、開口部を開放させるよう制御するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、ガス漏洩の検出対象の規模や面積が大きい場合においても、ガス漏洩検出機構を簡易に構成することができる。
【0012】
請求項2においては、開口部を開放して溝に流入した気体を大気拡散させることができる。
【0013】
請求項3においては、気体の漏洩を検出するとともに、漏洩した気体を内部に滞留させることなく排気して、大気拡散させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施例に係るガス漏洩検出機構の正面図、図2は図1におけるX−X矢視断面図、図3はガス漏洩検出機構の応用例を示す図、図4は流入溝の別形態を示す図である。
図5はガス漏洩検出機構の制御機構を示すブロック図である。
【0015】
本発明に係るガス漏洩検出機構9は、水素ガスの漏洩の発生を検出するための機構である。但し、検出する気体は、水素ガスに限定されることなく、他の空気よりも軽い気体を検出するために本発明に係るガス漏洩検出機構9を利用することがでできる。
【0016】
前記ガス漏洩検出機構9は、図1及び図2に示す如く、建物7の天井部8に設けられる。
但し、ガス漏洩検出機構9を設ける場所は建物に限定されるものではなく、様々な用途に該ガス漏洩検出機構9を応用させることができる。例えば、図3(a)に示す如く、ガス配管42の接続部に被せるボックス41にガス漏洩検出機構9を備え、配管接続部のガス漏洩を検出したり、図3(b)に示す如く、燃料電池用ケース43にガス漏洩検出機構9を備えて、燃料電池スタック44のガス漏洩を検出したりすることができる。
【0017】
図1及び図2に示す如く、ガス漏洩検出機構9を備える建物7の天井部8において、天井面10に上方へ凸状の流入溝11・11・・・が形成される。該流入溝11・11・・・は天井面10を構成する天井板に一体的に形成される。流入溝11は建物7の天井部8における水素ガス捕集部として機能する。
流入溝11は、天井面10において複数本が平行に形成されており、少なくとも、漏洩の可能性のある設備上方の天井部の一部分において、好ましくは、建物7の天井部全域に亘って、設けられる。
【0018】
本実施例においては、前記流入溝11の断面形状を、中央上部に溝内部において最も高い位置に当たる部分(最上部11a)が形成される略五角形状としている。最上部11aは、流入溝11に亘って線状に延在している。
但し、流入溝11の断面形状はこれに限定されるものではなく、流入溝11の内部において最も高い位置に当たる部分(最上部)が該流入溝11の方向に亘って線状に形成されるものとすることができる。例えば、上下逆U字状としたり(図4(a))、片流れ状としたり(図4(b))、三角状としたり(図4(c))、することができる。
【0019】
そして、前記流入溝11の最上部11aには気体濃度検出センサ12が備えられる。気体濃度検出センサ12は一本の流入溝11につき、該流入溝11の長さに応じて複数個設けられる。本実施例では、気体濃度検出センサ12は流入溝11の最上部11aに沿って所定間隔ごとに設置される。
気体濃度検出センサ12は、水素ガスの気体濃度を検出するための手段である。各気体濃度検出センサ12は、制御装置15(図5)に電気的に接続されており、設定以上の濃度の水素ガスを検出すれば、制御装置15に検出信号を送信する。
【0020】
また、前記流入溝11の最上部11a又はその近傍には、開閉可能な閉塞部材18が備えられた開口部11bが形成される(図6・図7・図11・図12参照)。該開口部11bは建物7の外部と連通しており、流入溝11に流入した水素ガスを建物7の外部へ排気することができる。閉塞部材18は、開閉機構17によって動作し、これにより、通常は閉塞部材18にて閉塞された状態にある開口部11bが、開放又は閉塞される。
【0021】
そして、図5に示す如く、ガス漏洩検出機構9を制御する制御装置15には、気体濃度検出センサ12、警報手段19及びモータ16が、接続されており、警報手段19及びモータ16は該制御装置15の制御を受けて動作する。
前記開閉機構17は、電動式であって、モータ16にて駆動される。すなわち、流入溝11の開口部11bは、開閉駆動手段としてのモータ16及び開閉機構17が備えられており、該モータ16の動力を利用して、開口部11bが開閉駆動される。
【0022】
上述の如く構成されたガス漏洩検出機構9において、建物7の内部にて水素ガスの漏洩が発生すると、水素ガスは空気と比較して比重が極めて小さく軽い気体であるので、空気中を上昇する。そして、上昇して建物7の天井部8に至った水素ガスは、該天井部8でも最も高い場所に位置する流入溝11に流入する。
流入溝11に流入した水素ガスは、その中でも最も高い場所に位置する最上部11aに至り、この水素ガスが該最上部11aに設けられた気体濃度検出センサ12によって検出される。
【0023】
気体濃度検出センサ12により、気体中の水素濃度が所定の濃度より大きくなったことが検出されれば、その検出信号が制御装置15に受信される。
制御装置15では、気体濃度検出センサ12からの検出信号を受けて、警報手段19を発動させて警報を鳴らし、水素ガスの漏洩が発生したことを警報する。
【0024】
また、制御装置15では、モータ16に対して、開口部11bを開放するように駆動信号が送信される。モータ16より開閉機構17に動力が伝達されて閉塞部材18が操作され、開口部11bが開放される。これにより、流入溝11が外部と連通され、流入溝11に流入した水素ガスが、開口部11bを通じて建物7の外部へ移動し、大気に拡散される。
なお、流入溝11の開口部11bは、該流入溝11の最上部11a又はその近傍に設けられているので、水素ガスは空気との比重の差により自然に上昇し、速やかに建物7の外部へ排出される。
【0025】
上述の如く、本発明に係るガス漏洩検出機構9では、水素ガスの漏洩を検出し警報を発するとともに、漏洩した水素ガスを内部に滞留させることなく排気して、水素ガスを速やかに大気拡散する処理を行う。
従って、水素ガスの漏洩が発生したとしても、速やかに、これに対応する処置が為されることになり、安全性の向上に寄与することができる。
【0026】
また、本発明に係るガス漏洩検出機構9では、天井面10に、上方へ突である溝状の流路を形成して、該天井面10を構成する板材に、天井板としての機能と、水素ガス捕集部としての機能と、漏洩気体を検出する機能とを一体的に備えている。
従って、ガス漏洩の検出対象の規模や面積が大きい場合にも、ガスの漏洩を検出する機構を備えることができる。
そして、水素ガスの漏洩を発生する箇所を、二重配管等して個々に被覆する必要がなく、また、密閉する必要もないため、構造が簡易となり、装置や配管のメンテナンスが容易となり、コストの削減も実現することができる。
なお、ガス漏洩検出機構9は建物7の天井部8に構成されるので、既存の建物であっても、天井のみを改築することによって、ガス漏洩検出機構9を備えた建物とすることができる。
【0027】
ここで、流入溝11に設けられた開口部11bを開閉可能とする閉塞部材18の構成について、以下の実施例1及び実施例2において、詳細に説明する。
但し、閉塞部材18と流入溝11に形成される開口部11bの形態は以下の実施例に示す形態に限定されるものではなく、流入溝11の最上部又はその近傍に設けられた開口であって開閉可能であれば他の形態を採用することができる。
【実施例1】
【0028】
次に、流入溝11に設けられた開口部11bと、該開口部11bを開閉可能とする閉塞部材18の実施例1について説明する。
図6は実施例1に係る流入溝に設けた開口部の構造を示す拡大図、図7は開口部に備えた閉塞部材の別形態を示す図、図8は流入溝に設けた開口部が開閉する様子を示す図である。
【0029】
図6に示す如く、前記流入溝11に形成される開口部11bは、該流入溝11における最上部11a又はその近傍の壁面に複数開口される。
そして、図8にも示す如く、閉塞部材18は開口部11bの形状に合致する開口18aを形成した長尺板状部材であって、該閉塞部材18をスライドさせる開閉機構17が備えられる。モータ16にて開閉機構17が駆動されることによって、閉塞部材18がスライド駆動され、これにより、通常は閉塞部材18にて閉塞された状態にある流入溝11の開口部11bが開閉される。
【0030】
開口部11bを閉塞させるときには、流入溝11の開口部11bと閉塞部材18の開口18a以外の部分とを合致させる(図8(a))。
また、開口部11bを外部に対して開放させるときには、開口部11bを閉塞した状態から閉塞部材18を移動して(図8(b))、閉塞部材18の開口18aと流入溝11の開口部11bとを合致させる(図8(c))。
【0031】
なお、図7に示す如く、前記閉塞部材18を、流入溝11の壁部に形成された開口部11bに嵌入され、流入溝11の壁部を構成する板状の部材とすることもできる。この場合、開口部11bを外部に対して開放する際には、モータ16の動力にて開閉機構17は、閉塞部材18がその一辺を軸として外側に回転させる。
【実施例2】
【0032】
次に、流入溝11に設けられた開口部11bと、該開口部11bを開閉可能とする閉塞部材18の実施例2について説明する。
図9は実施例2に係るガス漏洩検出機構の正面図、図10は図9におけるY−Y矢視断面図、図11は流入溝に設けた開口部の構造を示す拡大図、図12は流入溝に設けた開口部の別形態の構造を示す拡大図である。
【0033】
図9及び図10に示す如く、前記流入溝11に形成される開口部11bは、該流入溝11における最上部11aに複数開口され、該開口部11bに筒状体31が上方へ延設されて、該筒状体31の上端部である外部に対する真の開口11cが、前記開口部11bの更に上方に設けられる。
なお、流入溝11の最上部11aには、適宜位置に気体濃度検出センサ12が備えられる。
【0034】
そして、流入溝11の開口部11bと真の開口11cとの間であって筒状体31の内部には、閉塞部材18が備えられ、該閉塞部材18にて筒状体31を閉塞又は開放することによって、流入溝11に形成された開口部11bが開閉される。
前記閉塞部材18は、筒状体31に回転可能に支承された板状体であり、筒状体31の内部断面を閉塞可能に形成される。閉塞部材18は、開閉機構17にて回転操作され、通常、筒状体31を閉塞した状態にある閉塞部材18が、回転することによって、筒状体31の内部が開通され、真の開口11cと開口部11bとが連通する。これにより、開口部11bが外部に対して開放され、流入溝11と外部とが連通される。
【0035】
なお、図12に示す如く、閉塞部材18と真の開口11cとの間であって筒状体31の内部に、ファン33を設けることもできる。開口部11bが外部に対して開放された状態において、ファン33を駆動させることによって、流入溝11にある気体を強制的に外部に排出させることができる。
この場合、ファン33は、制御装置15にて制御され、閉塞部材18を操作して流入溝11に形成された開口部11bを開放させるとともに、ファン33を駆動するように制御して、ガスの漏洩が検出されたときに、より速やかに漏出した気体を外部へ排気することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例に係るガス漏洩検出機構の正面図。
【図2】図1におけるX−X矢視断面図。
【図3】ガス漏洩検出機構の応用例を示す図。
【図4】流入溝の別形態を示す図。
【図5】ガス漏洩検出機構の制御機構を示すブロック図。
【図6】実施例1に係る流入溝に設けた開口部の構造を示す拡大図。
【図7】開口部に備えた閉塞部材の別形態を示す図。
【図8】流入溝に設けた開口部が開閉する様子を示す図。
【図9】実施例2に係るガス漏洩検出機構の正面図。
【図10】図9におけるY−Y矢視断面図。
【図11】流入溝に設けた開口部の構造を示す拡大図。
【図12】流入溝に設けた開口部の別形態の構造を示す拡大図。
【符号の説明】
【0037】
8 天井部
9 ガス漏洩検出機構
10 天井面
11 流入溝
11a 最上部
11b 開口部
12 気体濃度検出センサ
15 制御装置
16 モータ
17 開閉機構
18 閉塞部材
19 警報手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気よりも軽い気体の漏洩の発生を検出するための機構であって、
気体の漏洩が発生する空間の天井面に、上方へ凸状の溝を形成し、
該溝の内部における最高位置に気体濃度検出センサを設けた、
ことを特徴とするガス漏洩検出機構。
【請求項2】
前記溝の上部又は上部近傍を構成する壁に、外部と連通可能な開口部を形成し、
該開口部を開閉可能とした、
請求項1に記載のガス漏洩検出機構。
【請求項3】
前記気体濃度検出センサと前記開口部の開閉駆動手段とを、制御手段に接続し、
前記気体濃度検出センサにて検出された気体濃度が所定濃度を超えると、
制御手段が前記開口部の開閉駆動手段を駆動し、開口部を開放させるよう制御する、
請求項2に記載のガス漏洩検出機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−47066(P2006−47066A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227244(P2004−227244)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】