説明

ガス濃度測定装置、ガス濃度測定方法及びプログラム

【課題】 検知対象ガスの存在状態において、0点の変動を防止し、周囲温度の変動によっても検知素子の感度が変化せず、検知対象ガス以外のガスの検知もなくしこて、500ppm程度以下の低濃度のガス成分に対しても高い検出精度を有する、ガス濃度測定装置、ガス濃度測定方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】 検知対象ガスの不存在状態と検知対象ガスの存在状態における検知素子2aの抵抗値の変化により検知対象ガスの濃度を測定するガス濃度測定装置であって、検知対象ガスの不存在状態にあっては、いかなる雰囲気温度においても、検知素子2a及び補償素子2bを予め定めた一つの素子温度に対応した抵抗値とする素子抵抗設定手段3を備えるガス濃度測定装置1などにより、課題を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、500ppm程度以下の低濃度ガスに対しても高い検出精度を有する、ガス濃度測定装置、ガス濃度測定方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
検知対象ガスのガス濃度を測定する機器として、ガスセンサが挙げられる。ガスセンサは、装置が、小型で、適宜移動することが可能であること、取扱いが容易であることなどガスクロマトグラフにない多くの利点がある。ガスセンサは、半導体式ガスセンサと接触燃焼式ガスセンサに大別される。
【0003】
半導体式ガスセンサは、低濃度のガス成分を測定することが可能であるという利点がある反面、感知するガス成分の選択性に劣り、使用範囲が限定されること、濃度上昇に伴い飽和に達して測定不能になること、吸着成分の除去再生が難しいこと等の欠点がある。
【0004】
一方、検知素子の抵抗値の変化を検出して検知対象ガスのガス濃度を感知する接触燃焼式ガスセンサは、触媒と素子温度を適宜選択することにより、感知するガス成分の選択性に優れ、かつ吸着成分の除去再生も容易であるため、特定のガス成分を選択的に感知する場合には非常に適しているといえる。
【0005】
ところが、接触燃焼式ガスセンサでは、上述したように、検知対象ガスのガス濃度を検知素子の抵抗値の変化により感知するため、検知素子の周囲温度に起因する抵抗値の変化もガス濃度の違いとして出力するという誤動作も発生する。この誤動作を回避するため、検知素子に抵抗値の温度係数がほぼ等しい補償素子を接続して、検知素子の周囲温度に起因する抵抗値の変化を打ち消すような温度補償を行っているが、500ppm程度以下の低濃度のガス成分に対して高い検出精度を要求する場合には、検知素子と補償素子の抵抗値の温度係数を完全に一致させること(則ち、温度補償における完全な相補性)が必要となるため、接触燃焼式ガスセンサの検知素子では、このような相補性を確保するために、製造やスクリーニングに多大の時間を要してしまうという技術的課題があった。
【0006】
そこで、特許文献1では、定電圧源からガスセンサモジュールに入力される電流値を検出することができる電流検出手段を設け、ガスセンサモジュールに入力される電流値を検出して、この電流値とガスセンサモジュールの周囲温度とガスセンサモジュールのセンサ出力データとの相関関係を予め求めておき、この相関関係に基づいて、ガスセンサモジュールのセンサ出力データと電流値とからガスセンサモジュールの周囲温度を求めることにより、検知素子と補償素子との抵抗値の温度係数を完全に一致させない場合であっても、製造やスクリーニングに多大の時間やコストを要しないガス検知装置を開示している。
【特許文献1】特開平10−38833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたガス検知装置であっても、検知素子と補償素子の物理量(質量、熱容量、熱伝導係数等)はそれぞれ異なり、検知素子と補償素子の構成する導電性コイルの電気抵抗も同一でない。それ故、例えば、検知素子と補償素子の雰囲気温度が校正時の雰囲気温度と約5℃程度上昇した場合には、検知素子と補償素子の抵抗値がそれぞれ約3Ω大きくなり、これに伴い、検知素子と補償素子のそれぞれの温度が変わるため、0点が変動してしまい、500ppm程度以下の低濃度ガスのガス成分の測定値に含まれる誤差がどうしても大きくなるという問題点があった。
【0008】
また、検知素子には、周囲温度が低くなると感度が落ち、周囲温度が高くなると感度が上がるという感度の温度特性もあるため、500ppm程度以下の低濃度ガスのガス成分に対して高い検出精度が要求される分野においては、周囲温度が変動しても、検知素子の感度が変化しないようにする必要があるが、特許文献1に記載されたガス検知装置では、検知素子の感度の変化を抑制することができないため、500ppm程度以下の低濃度ガスのガス成分を正確に測定することが困難であるという問題点があった。
【0009】
さらに、検知素子の周囲温度が変動して検知素子の感度が変化する結果として、検知素子が検知対象ガス以外のガスも検知してしまい、ガス濃度の測定値に含まれる誤差がさらに大きくなってしまうという問題点があった。
【0010】
本発明の目的とするところは、検知対象ガスの存在状態において、0点の変動を防止し、周囲温度の変動によっても検知素子の感度が変化せず、検知対象ガス以外のガスの検知もなくして、500ppm程度以下の低濃度のガス成分に対しても高い検出精度を有する、ガス濃度測定装置、ガス濃度測定方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者は、前記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、検知対象ガスの不存在状態において、検知素子がいかなる雰囲気温度であっても、検知素子の抵抗値を一定にした結果、上記目的を達成することを見出し、本発明をするに至った。
【0012】
即ち、本発明のガス濃度測定装置は、検知対象ガスと反応する燃焼触媒を混合し又は被覆した担体を導電性コイルに被覆してなる検知素子と、該検知素子と同一の材質及び同一の形状の導電性コイルに該検知対象ガスと反応しない担体を被覆してなる補償素子とを用いて、該検知対象ガスの不存在状態と該検知対象ガスの存在状態における該検知素子の抵抗値の変化により検知対象ガスのガス濃度を測定するガス濃度測定装置であって、前記ガス濃度測定装置は、検知対象ガスの不存在状態において、前記検知素子及び前記補償素子の両端電圧又は印可電流を可変して、いかなる雰囲気温度においても、前記検知素子及び前記補償素子を予め定めた一つの素子温度に対応した抵抗値に設定する素子抵抗設定手段を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明のガス濃度測定装置において、500ppm程度以下の低濃度のガス成分のガス濃度の測定に対してより高い検出精度を必要とする場合には、前記素子抵抗設定手段は、前記検知対象ガスの不存在状態において、前記補償素子を予め定めた一つの素子温度に対応した抵抗値に設定した時点における補償素子の両端電圧又は印可電流を測定する補償素子データ測定手段と、前記補償素子データ測定手段で測定した補償素子の両端電圧又は印可電流の測定値に基づき、補償素子の雰囲気温度と検知対象ガスの不存在状態における補償素子を予め定めた一つの素子温度に対応した抵抗値に設定した時点における補償素子の両端電圧又は印可電流との相関データ及び検知素子の雰囲気温度と検知対象ガスの不存在状態における検知素子を予め定めた一つの素子温度に対応した抵抗値とした時点における検知素子の両端電圧又は印可電流との相関データを格納した雰囲気温度データベースを参照して、検知素子の雰囲気温度を決定する雰囲気温度決定手段と、前記雰囲気温度決定手段で決定した検知素子の雰囲気温度に基づき、前記雰囲気温度データベースを参照して、検知素子の両端電圧又は印可電流を決定する検知素子データ決定手段と、前記検知素子データ決定手段で決定した検知素子の両端電圧又は印可電流に設定する検知素子設定手段を備える方が好ましく、また、前記検知対象ガスの存在状態における検知素子の出力電流又は両端電圧の測定値に基づき、検知素子の抵抗値を算出した後、該算出した検知素子の抵抗値に基づき、検知素子の抵抗値と検知対象ガスのガス濃度との相関データを格納した濃度補正データベースを参照して、検知対象ガスの濃度を決定する検知対象ガス濃度決定手段をさらに備える方がより好ましい。
【0014】
本発明のガス濃度測定方法は、検知対象ガスと反応する燃焼触媒を混合し又は被覆した担体を導電性コイルに被覆してなる検知素子と、該検知素子と同一の材質及び同一の形状の導電性コイルに該検知対象ガスと反応しない担体を被覆してなる補償素子とを用いて、該検知対象ガスの不存在状態と該検知対象ガスの存在状態における該検知素子の抵抗値の変化により検知対象ガスのガス濃度を測定するガス濃度測定方法であって、前記ガス濃度測定方法は、前記検知対象ガスの不存在状態において、前記補償素子の両端電圧又は印可電流を可変して、前記補償素子を予め定めた一つの素子温度に対応した抵抗値に設定した時点における補償素子の両端電圧又は印可電流を測定する第一のステップと、前記第一のステップで測定した補償素子の両端電圧又は印可電流の測定値に基づき、補償素子の雰囲気温度と検知対象ガスの不存在状態における補償素子を予め定めた一つの素子温度に対応した抵抗値に設定した時点における補償素子の両端電圧又は印可電流との相関データ及び検知素子の雰囲気温度と検知対象ガスの不存在状態における検知素子を予め定めた一つの素子温度に対応した抵抗値とした時点における検知素子の両端電圧又は印可電流との相関データを格納した雰囲気温度データベースを参照して、検知素子の雰囲気温度を決定する第二のステップと、前記第二のステップで決定した検知素子の雰囲気温度に基づき、前記雰囲気温度データベースを参照して、検知素子の両端電圧又は印可電流を決定する第三のステップと、前記検知素子の両端電圧又は印可電流を可変して、前記検知素子を前記第三のステップで決定した検知素子の両端電圧又は印可電流に設定する第四のステップと、前記検知対象ガスの存在状態における検知素子の出力電流又は両端電圧を測定する第五のステップを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明のガス濃度測定方法において、500ppm程度以下の低濃度のガス成分のガス濃度の測定に対してより高い検出精度を必要とする場合には、前記ガス濃度測定方法は、前記第五のステップで測定した検知素子の出力電流又は両端電圧の測定値に基づき、検知素子の抵抗値を算出した後、該算出した検知素子の抵抗値に基づき、検知素子の抵抗値と検知対象ガスのガス濃度との相関データを格納した濃度補正データベースを参照して、検知対象ガスのガス濃度を決定する第六のステップをさらに備える方が好ましい。
【0016】
本発明のプログラムは、検知対象ガスと反応する燃焼触媒を混合し又は被覆した担体を導電性コイルに被覆してなる検知素子と、該検知素子と同一の材質及び同一の形状の導電性コイルに該検知対象ガスと反応しない担体を被覆してなる補償素子とを用いて、該検知対象ガスの不存在状態と該検知対象ガスの存在状態における該検知素子の抵抗値の変化により検知対象ガスのガス濃度を測定するガス濃度測定方法に使用するプログラムであって、前記プログラムは、検知対象ガスの不存在状態において、前記補償素子の両端電圧又は印可電流を可変して、前記補償素子を予め定めた一つの素子温度に対応した抵抗値に設定した時点における補償素子の両端電圧又は印可電流を測定する第一のステップと、前記第一のステップで測定した補償素子の両端電圧又は印可電流の測定値に基づき、補償素子の雰囲気温度と検知対象ガスの不存在状態における補償素子を予め定めた一つの素子温度に対応した抵抗値に設定した時点における補償素子の両端電圧又は印可電流との相関データ及び検知素子の雰囲気温度と検知対象ガスの不存在状態における検知素子を予め定めた一つの素子温度に対応した抵抗値とした時点における検知素子の両端電圧又は印可電流との相関データを格納した雰囲気温度データベースを参照して、検知素子の雰囲気温度を決定する第二のステップと、前記第二のステップで決定した検知素子の雰囲気温度に基づき、前記雰囲気温度データベースを参照して、検知素子の両端電圧又は印可電流を決定する第三のステップと、前記検知素子の両端電圧又は印可電流を可変して、前記検知素子を前記第三のステップで決定した検知素子の両端電圧又は印可電流に設定する第四のステップと、前記検知対象ガスの存在状態における検知素子の出力電流又は両端電圧を測定する第五のステップを含む処理を実行させることを特徴とする。
【0017】
本発明のプログラムにおいて、500ppm程度以下の低濃度のガス成分のガス濃度の測定に対してより高い検出精度を必要とする場合には、前記プログラムは、前記第五のステップで測定した検知素子の出力電流又は両端電圧の測定値に基づき、検知素子の抵抗値を算出した後、算出した検知素子の抵抗値に基づき、検知素子の抵抗値と検知対象ガスのガス濃度との相関データを格納した濃度補正データベースを参照して、検知対象ガスの濃度を決定する第六のステップをさらに備える方が好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、検知対象ガスの不存在状態では、検知素子がいかなる雰囲気温度であっても、検知素子の抵抗値を一定にする結果、検知対象ガスの存在状態においては、0点の変動を防止し、周囲温度の変動によっても検知素子の感度が変化せず、検知対象ガス以外のガスの検知もなくして、500ppm程度以下の低濃度のガス成分を正確に測定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。本発明のガス濃度測定装置の基本的な構成の一実施態様を図1に示す。ガス濃度測定装置1は、検知部2と、定電流回路4a、測定部5、制御部6、演算部7、記憶部8及び表示部9を組み込んだ基板3とを備える。
【0020】
検知部2は、検知素子2a及び補償素子2bを有する。検知素子2aは、検知対象ガスと反応しない担体を導電性コイルに被覆し、更に検知対象ガスと反応する燃焼触媒を被覆してなるものでもよく、検知対象ガスと反応しない担体と検知対象ガスと反応する燃焼触媒を混ぜ合わせたものを被覆してなるものであってもよい。補償素子2bは、検知素子2aと同一の材質及び同一の形状の導電性コイルに検知対象ガスと反応しない担体を被覆してなる。
【0021】
定電流回路4aは、制御部6から送られた信号に従い、検知素子2a及び/又は補償素子2bに流す電流値を連続的又は段階的に可変して、検知素子2a及び/又は補償素子2bに流す電流値を変更し、検知素子2a及び/又は補償素子2bの両端電圧を調整する。
【0022】
測定部5では、検知素子2a及び/又は補償素子2bの両端電圧、印可電流、出力電流を測定し、制御部6の要求する測定値を制御部6に送信する。
【0023】
制御部6では、測定部5から送られた測定値及び演算部7から送られた決定した抵抗値や検知対象ガスのガス濃度に対して必要な処理を行う。具体的には、例えば、電源スイッチをONにした直後、測定部5から送られた検知素子2a及び補償素子2bの両端電圧の測定値を確認して、検知素子2a及び補償素子2bの両端電圧を標準電圧とすべく、検知素子2a及び補償素子2bに流す電流値を変更することを指令する信号を定電流回路4aに送信する処理、測定部5から送られた検知素子2a及び補償素子2bの測定値が標準電圧であることを確認した後、補償素子2bの両端電圧を連続的又は段階的に可変すべく、補償素子2bに流す電流値を変更することを指令する信号を定電流回路4aに送信すると共に、補償素子2bの両端電圧及び印可電流を測定し、その測定値を制御部6に送ることを指令する信号を測定部5に送信する処理、測定部5から送られた補償素子2bの両端電圧及び印可電流の測定値を演算部7に送信する処理、演算部7から送られた計算された補償素子2bの抵抗値が予め定めた一つの素子温度に対応した抵抗値(以下、「指定抵抗値」と言うことがある。)か確認し、指定抵抗値である場合には、両端電圧の可変を中止して補償素子2bに流す電流値を固定することを指令する信号を定電流回路4aに送信すると共に、補償素子2bの両端電圧を測定し、測定した両端電圧の測定値のみを制御部6に送ることを指令する信号を測定部5に送信する処理、測定部5から送られた補償素子2bの両端電圧の測定値を演算部7に送信する処理、演算部7から送られた決定した検知素子2aの両端電圧にすべく、検知素子2bに流す電流値を変更することを指令する信号を定電流回路4aに送信する処理、測定部5から送られた検知対象ガスの存在状態における検知素子2aの両端電圧及び出力電流の測定値を演算部7に送信する処理、演算部7から送られた決定した検知対象ガスのガス濃度を表示部9で表示できる形式に変換して、表示部9に送信する処理などを行う。
【0024】
演算部7では、制御部6から送られた測定値に基づき、必要な計算などの処理を行う。具体的には、制御部6から送られた補償素子2bの両端電圧及び印可電流の測定値に基づき、補償素子2bの抵抗値を計算し、計算した補償素子2bの抵抗値を制御部6に送信する処理、制御部6から送られた補償素子2bの両端電圧の測定値に基づき、雰囲気温度データベース8aを参照して、検知素子2aの雰囲気温度を決定する処理、決定した検知素子2aの雰囲気温度に基づき、雰囲気温度データベース8aを参照して、検知素子2aの両端電圧を決定し、決定した両端電圧を制御部6に送信する処理、制御部6から送られた検知対象ガスの存在状態における検知素子2aの両端電圧及び出力電流の測定値に基づき、検知素子2aの抵抗値を算出する処理、算出した検知素子2aの抵抗値に基づき、濃度補正データベース8bを参照して、検知対象ガスのガス濃度を決定する処理、決定した検知対象ガスのガス濃度を制御部6に送信する処理などを行う。
【0025】
記憶部8には、雰囲気温度データベース8a及び濃度補正データベース8bが格納される。
【0026】
雰囲気温度データベース8aには、例えば、検知素子2aと補償素子2bの雰囲気温度は、同じであるという仮定の下、雰囲気温度と、検知対象ガスの不存在状態における検知素子2aを指定抵抗値に設定した時点における検知素子2aの両端電圧と、検知対象ガスの不存在状態における補償素子2bを指定抵抗値に設定した時点における補償素子2bの両端電圧との相関データ(図3(a))が格納されている。
【0027】
検知素子2aの物理量(質量、熱容量、熱伝導係数等)及び検知素子2bの物理量(質量、熱容量、熱伝導係数等)には若干の個体差があり、検知素子2aの構成する導電性コイルの電気抵抗及び補償素子2bの構成する導電性コイルの電気抵抗も完全に同一でない。それ故、雰囲気温度データベース8aには、検知対象ガスのガス濃度の測定精度をより高くするため、ガス濃度測定装置毎に求めた、雰囲気温度と、検知対象ガスの不存在状態における検知素子2aを指定抵抗値に設定した時点における検知素子2aの両端電圧と、検知対象ガスの不存在状態における補償素子2bを指定抵抗値に設定した時点における補償素子2bの両端電圧との相関データを格納するのが好ましい。
【0028】
なお、雰囲気温度と、検知対象ガスの不存在状態における検知素子2aを指定抵抗値に設定した時点における検知素子2aの両端電圧と、検知対象ガスの不存在状態における補償素子2bを指定抵抗値に設定した時点における補償素子2bの両端電圧との相関データは、例えば、以下に示す方法により求めることができる。
【0029】
まず、ある定められた温度にした空間(例えば、恒温槽、オーブンなど)の中に、検知素子2aと補償素子2bを置いた後、検知素子2aと補償素子2bのそれぞれの両端電圧を可変して、検知素子2a及び補償素子2bを指定抵抗値に設定する。検知素子2a及び補償素子2bが指定抵抗値になり、検知素子2a及び補償素子2bの素子温度が安定したと考えられる時点で、検知素子2aと補償素子2bのそれぞれの両端電圧を測定する。
【0030】
次に、検知素子2aと補償素子2bを置いた空間の温度を順次変更(例えば、−10℃から5℃毎に150℃まで)して、上述と同様の方法により、検知素子2a及び補償素子2bが指定抵抗値になり、検知素子2a及び補償素子2bの素子温度が安定したと考えられる時点で、検知素子2aと補償素子2bのそれぞれの両端電圧を測定する。
【0031】
ここで、検知素子2aと補償素子2bを置いた空間の温度の個数を多くして、検知素子2aと補償素子2bのそれぞれの両端電圧を測定すればする程、雰囲気温度と、検知対象ガスの不存在状態における検知素子2aを指定抵抗値に設定した時点における検知素子2aの両端電圧と、検知対象ガスの不存在状態における補償素子2bを指定抵抗値に設定した時点における補償素子2bの両端電圧との相関データの数が増え、より正確な雰囲気温度を決定することができるようになる。
【0032】
濃度補正データベース8bには、検知素子2aの抵抗値と検知対象ガスのガス濃度との相関データが格納される(図4)。
【0033】
検知素子2aの物理量(質量、熱容量、熱伝導係数等)及び検知素子2bの物理量(質量、熱容量、熱伝導係数等)には若干の個体差があり、検知素子2aの構成する導電性コイルの電気抵抗及び補償素子2bの構成する導電性コイルの電気抵抗も完全に同一でない。それ故、濃度補正データベース8bは、検知対象ガスのガス濃度の測定精度をより高くするため、ガス濃度測定装置毎に、例えば、以下に示す方法により求めた、検知素子2aの抵抗値と検知対象ガスのガス濃度との相関データを格納するのが好ましい。
【0034】
まず、ある定められた温度(例えば、0℃)にした空間(例えば、恒温槽)の中に、検知素子2aと補償素子2bを置いた後、補償素子2bの両端電圧を可変し、補償素子2bを指定抵抗値にする。補償素子2bが指定抵抗値になり、補償素子2bの素子温度が安定した時点で、補償素子2bの両端電圧を測定する。
【0035】
次に、雰囲気温度データベース8aを参照し、測定した補償素子2bの両端電圧に基づいて、検知素子2aの両端電圧を決定し、決定した検知素子2aの両端電圧になるように、検知素子2aの両端電圧を可変する。
【0036】
次いで、検知対象ガスを所定の濃度含んだ空間を作成し、その空間内に検知素子2aを置いて、検知素子2aの抵抗値を測定する。その後、検知素子2aを置いた空間に含まれる検知対象ガスのガス濃度を順次高濃度にして、その都度の検知素子2aの抵抗値を測定すれば、検知素子2aの抵抗値と検知対象ガスのガス濃度との相関データの数が増え、より正確な検知対象ガスのガス濃度を決定することができるようになる。
【0037】
表示部9では、検知対象ガスのガス濃度を表示する。表示部9としては、例えば、検知対象ガスのガス濃度の測定値をデジタル表示するデジタル表示機などが挙げられる。
【0038】
上述したように、図1に示す本発明のガス測定装置では、検知素子2a及び/又は補償素子2bの両端電圧を標準電圧から変更して、いかなる雰囲気温度の下においても、検知素子2a及び/又は補償素子2bが、予め定めた一つの素子温度とすることができるため、指定抵抗値に設定することが可能となり、その結果として、検知対象ガスの存在状態において、0点の変動を防止し、周囲温度の変動によっても検知素子の感度が変化せず、検知対象ガス以外のガスの検知もなくすことができる。
【0039】
なお、本発明のガス濃度測定装置は、赤外線分析計より検知対象ガスを早く測定することができ、半導体式ガスセンサより検知対象ガスを正確に測定することができる優れものである。
【0040】
本発明のガス濃度測定装置の基本的な構成の他の一実施態様を図2に示す。上述した事項と同様の部分は記載を省略する。ガス濃度測定装置1は、検知部2と、定電圧回路4b、測定部5、制御部6、演算部7、記憶部8及び表示部9を組み込んだ基板3とを備える。
【0041】
定電圧回路4bは、制御部6から送られた信号に従い、検知素子2a及び/又は補償素子2bにかける両端電圧を連続的又は段階的に可変して、検知素子2a及び/又は補償素子2bの両端電圧を変更し、検知素子2a及び/又は補償素子2bの印可電流を調整する。
【0042】
制御部6では、具体的には、例えば、電源スイッチをONにした直後、測定部5から送られた検知素子2a及び補償素子2bの印可電流の測定値を確認して、検知素子2a及び補償素子2bの印可電流を標準電流とすべく、検知素子2a及び補償素子2bにかける電圧値を変更することを指令する信号を定電圧回路4bに送信する処理、測定部5から送られた検知素子2a及び補償素子2bの測定値が標準電流であることを確認した後、補償素子2bの印可電流を連続的又は段階的に可変すべく、補償素子2bにかける電圧値を変更することを指令する信号を定電圧回路4bに送信すると共に、補償素子2bの両端電圧及び印可電流を測定し、その測定値を制御部6に送ることを指令する信号を測定部5に送信する処理、測定部5から送られた補償素子2bの両端電圧及び印可電流の測定値を演算部7に送信する処理、演算部7から送られた計算された補償素子2bの抵抗値が指定抵抗値かどうか確認し、指定抵抗値である場合には、補償素子2bに流れる印可電流の可変を中止して補償素子2bにかける電圧値を固定することを指令する信号を定電圧回路4bに送信すると共に、補償素子2bの印可電流を測定し、測定した印可電流の測定値のみを制御部6に送ることを指令する信号を測定部5に送信する処理、測定部5から送られた補償素子2bの印可電流の測定値を演算部7に送信する処理、演算部7から送られた決定した検知素子2aの印可電流にすべく、検知素子2bにかける電圧値を変更することを指令する信号を定電圧回路4bに送信する処理、測定部5から送られた検知対象ガスの存在状態における検知素子2aの両端電圧及び出力電流の測定値を演算部7に送信する処理、演算部7から送られた決定した検知対象ガスのガス濃度を表示部9で表示できる形式に変換して、表示部9に送信する処理などを行う。
【0043】
演算部7では、制御部6から送られた測定値に基づき、必要な計算などの処理を行う。具体的には、制御部6から送られた補償素子2bの両端電圧及び印可電流の測定値に基づき、補償素子2bの抵抗値を計算し、計算した補償素子2bの抵抗値を制御部6に送信する処理、制御部6から送られた補償素子2bの印可電流の測定値に基づき、雰囲気温度データベース8aを参照して、検知素子2aの雰囲気温度を決定する処理、決定した検知素子2aの雰囲気温度に基づき、雰囲気温度データベース8aを参照して、検知素子2aの印可電流を決定し、決定した印可電流を制御部6に送信する処理、制御部6から送られた検知対象ガスの存在状態における検知素子2aの両端電圧及び出力電流の測定値に基づき、検知素子2aの抵抗値を算出する処理、算出した検知素子2aの抵抗値に基づき、濃度補正データベース8bを参照して、検知対象ガスのガス濃度を決定する処理、決定した検知対象ガスのガス濃度を制御部6に送信する処理などを行う。
【0044】
雰囲気温度データベース8aには、例えば、検知素子2aと補償素子2bの雰囲気温度は、同じであるという仮定の下、雰囲気温度と、検知対象ガスの不存在状態における検知素子2aを指定抵抗値に設定した時点における検知素子2aの印可電流と、検知対象ガスの不存在状態における補償素子2bを指定抵抗値に設定した時点における補償素子2bの印可電流との相関データ(図3(b))が格納されている。
【0045】
検知素子2aの物理量(質量、熱容量、熱伝導係数等)及び検知素子2bの物理量(質量、熱容量、熱伝導係数等)には若干の個体差があり、検知素子2aの構成する導電性コイルの電気抵抗及び補償素子2bの構成する導電性コイルの電気抵抗も完全に同一でない。それ故、雰囲気温度データベース8aには、検知対象ガスのガス濃度の測定精度をより高くするため、ガス濃度測定装置毎に求めた、雰囲気温度と、検知対象ガスの不存在状態における検知素子2aを指定抵抗値に設定した時点における検知素子2aの印可電流と、検知対象ガスの不存在状態における補償素子2bを指定抵抗値に設定した時点における補償素子2bの印可電流との相関データを格納するのが好ましい。
【0046】
なお、雰囲気温度と、検知対象ガスの不存在状態における検知素子2aを指定抵抗値に設定した時点における検知素子2aの印可電流と、検知対象ガスの不存在状態における補償素子2bを指定抵抗値に設定した時点における補償素子2bの印可電流との相関データは、例えば、以下に示す方法により求めることができる。
【0047】
まず、ある定められた温度にした空間(例えば、恒温槽、オーブンなど)の中に、検知素子2aと補償素子2bを置き、その後、検知素子2aと補償素子2bの印可電流を可変して、検知素子2aと補償素子2bを指定抵抗値に設定する。検知素子2aと補償素子2bが指定抵抗値になった後、検知素子2aと補償素子2bの素子温度が安定したと考えられる時点で、検知素子2aと補償素子2bのそれぞれの印可電流を測定する。
【0048】
次に、検知素子2aと補償素子2bを置いた空間の温度を順次変更(例えば、−10℃から5℃毎に150℃まで)して、上述と同様の方法により、検知素子2aと補償素子2bが指定抵抗値になった後、検知素子2aと補償素子2bの温度が安定した時点で、検知素子2aと補償素子2bのそれぞれの印可電流を測定する。
【0049】
ここで、検知素子2aと補償素子2bを置いた空間の温度の数を多くして、検知素子2aと補償素子2bのそれぞれの印可電流を測定すればする程、雰囲気温度と、検知対象ガスの不存在状態における検知素子2aを指定抵抗値に設定した時点における検知素子2aの印可電流と、検知対象ガスの不存在状態における補償素子2bを指定抵抗値に設定した時点における補償素子2bの印可電流との相関データの数が増え、より正確な雰囲気温度を決定することができるようになる。
【0050】
上述したように、図2に示す本発明のガス測定装置では、検知素子2a及び/又は補償素子2bの両端電圧を標準電圧から変更して、いかなる雰囲気温度の下においても、検知素子2a及び/又は補償素子2bが、予め定めた一つの素子温度とすることができるため、指定抵抗値に設定することが可能となり、その結果として、検知対象ガスの存在状態において、0点の変動を防止し、周囲温度の変動によっても検知素子の感度が変化せず、検知対象ガス以外のガスの検知もなくすことができる。
【0051】
本発明のガス濃度測定方法を用いて検知対象ガスの濃度を測定する過程の一例を図6に基づき説明する。
【0052】
検知対象ガスの不存在状態において、以下の過程により、0点の温度調整を行う。
【0053】
検知素子2a及び補償素子2bのそれぞれの両端電圧を標準電圧(例えば、2.35V)にする(ステップ101)。その後、補償素子2bの両端電圧を可変して、補償素子2bを指定抵抗値とし(ステップ102)、補償素子2bの両端電圧を測定する(ステップ103)。
【0054】
測定した補償素子2bの両端電圧に基づいて、雰囲気温度データベース8aを参照し、補償素子2bの雰囲気温度を決定する(ステップ104)。このとき、例えば、測定した補償素子2bの両端電圧(VRX)が雰囲気温度データベース8aにない場合には、雰囲気温度データベース8aから、測定した補償素子2bの両端電圧(VRX)に最も近い補償素子2bの両端電圧を2点選び出し(VRn ,VR(n−1))、その2点の補償素子2bの両端電圧(VRn ,VR(n−1))に対応する補償素子2bの雰囲気温度(T ,Tn−1)の間の値に直線関係が成立するとして、補償素子2bの雰囲気温度(T)を、T=((VRX−VR(n−1))/(VRn−VR(n−1)))×(T−Tn−1)+Tn−1という式から算出した値に決定する。
【0055】
決定した補償素子2bの雰囲気温度に基づいて、雰囲気温度データベース8aを参照し、検知素子2aの両端電圧を決定する(ステップ105)。このとき、例えば、決定した補償素子2bの雰囲気温度(T)が雰囲気温度データベース8aにない場合には、雰囲気温度データベース8aから、決定した補償素子2bの雰囲気温度(T)に最も近い補償素子2bの雰囲気温度を2点選び出し(T ,Tn−1)、その2点の補償素子2bの雰囲気温度(T ,Tn−1)に対応する検知素子2aの両端電圧(VSn ,VS(n−1))の間の値に直線関係が成立するとして、検知素子2aの両端電圧(VSX)を、VSX=((T−Tn−1)/(T−Tn−1))×(VSn−VS(n−1))+VS(n−1)という式から算出した値に決定する。
【0056】
決定した検知素子2aの両端電圧になるように、検知素子2aの両端電圧を可変する(ステップ106)。
【0057】
500ppm程度以下の低濃度のガス成分のガス濃度の測定に対してより高い検出精度を必要とする場合には、検知対象ガスの存在状態において、以下の過程により、感度調整を行う。
【0058】
検知素子2aの出力電流(ISX)を測定し(ステップ107)、決定した検知素子2aの両端電圧(VSX)を測定した検知素子2aの出力電流(ISX)で割り、検知素子2aの抵抗値(RSX=VSX/ISX)を決定する(ステップ108)。
【0059】
決定した検知素子2aの抵抗値(RSX)に基づき、濃度補正データベース8bを参照して、検知対象ガスのガス濃度(N)を決定する(ステップ109)。このとき、例えば、決定した検知素子2aの抵抗値(RSX)が濃度補正データベース8bにない場合には、濃度補正データベース8bから、決定した検知素子2aの抵抗値(RSX)に最も近い検知素子2aの抵抗値を2点選び出し(RSn ,RS(n−1))、その2点の検知素子2aの抵抗値(RSn ,RS(n−1))に対応する検知対象ガスの濃度(N ,Nn−1)の間の値に直線関係が成立するとして、検知対象ガスの濃度(N)を、N=((RSX−RS(n−1))/(RSn−RS(n−1)))×(N−Nn−1)+Nn−1という式から算出した値に検知対象ガスのガス濃度(N)を決定する。
【0060】
上述した0点の温度調整、さらに感度調整を行うことにより、0点の変動及び感度の変化による測定濃度の誤差を非常に効果的に抑制することができ、特に500ppm程度以下の低ガス濃度に対しても、極めて高い検出精度を有することになる。
【0061】
本発明のガス濃度測定方法を用いて検知対象ガスの濃度を測定する過程の他の一例を図7に基づき説明する。
【0062】
検知対象ガスの不存在状態において、以下の過程により、0点の温度調整を行う。
【0063】
検知素子2a及び補償素子2bのそれぞれの印可電流を標準電流(例えば、55mA)にする(ステップ201)。その後、補償素子2bの印可電流を可変して、補償素子2bを指定抵抗値にし(ステップ202)、補償素子2bの印可電流を測定する(ステップ203)。
【0064】
測定した補償素子2bの印可電流に基づいて、雰囲気温度データベース8aを参照し、補償素子2bの雰囲気温度を決定する(ステップ204)。このとき、例えば、測定した補償素子2bの印可電流(IRX)が雰囲気温度データベース8aにない場合には、雰囲気温度データベース8aから、測定した補償素子2bの印可電流(IRX)に最も近い補償素子2bの印可電流を2点選び出し(IRn ,IR(n−1))、その2点の補償素子2bの印可電流(IRn ,IR(n−1))に対応する補償素子2bの雰囲気温度(T ,Tn−1)の間の値に直線関係が成立するとして、補償素子2bの雰囲気温度(T)を、T=((IRX−IR(n−1))/(IRn−IR(n−1)))×(T−Tn−1)+Tn−1という式から算出した値に決定する。
【0065】
決定した補償素子2bの雰囲気温度に基づいて、雰囲気温度データベース8aを参照し、検知素子2aの印可電流を決定する(ステップ205)。このとき、例えば、決定した補償素子2bの雰囲気温度(T)が雰囲気温度データベース9aにない場合には、雰囲気温度データベース8aから、決定した補償素子2bの雰囲気温度(T)に最も近い補償素子2bの雰囲気温度を2点選び出し(T ,Tn−1)、その2点の補償素子2bの雰囲気温度(T ,Tn−1)に対応する検知素子2aの印可電流(ISn ,IS(n−1))の間の値に直線関係が成立するとして、検知素子2aの印可電流(ISX)を、VSX=((T−Tn−1)/(T−Tn−1))×(ISn−IS(n−1))+IS(n−1)という式から算出した値に検知対象ガスのガス濃度(N)を決定する。
【0066】
決定した検知素子2aの印可電流になるように、検知素子2aの印可電流を可変する(ステップ206)。
【0067】
500ppm程度以下の低濃度のガス成分のガス濃度の測定に対してより高い検出精度を必要とする場合には、検知対象ガスの存在状態において、以下の過程により、感度調整を行う。
【0068】
検知素子2aの両端電圧(VSX)を測定し(ステップ207)、測定した検知素子2aの両端電圧(VSX)を決定した検知素子2aの印可電流(ISX)で割り、検知素子2aの抵抗値(RSX=VSX/ISX)を決定する(ステップ208)。
【0069】
決定した検知素子2aの抵抗値(RSX)に基づき、濃度補正データベース8bを参照し、検知対象ガスのガス濃度(N)を決定する(ステップ209)。このとき、例えば、決定した検知素子2aの抵抗値(RSX)が濃度補正データベース8bにない場合には、濃度補正データベース8bから、決定した検知素子2aの抵抗値(RSX)に最も近い検知素子2aの抵抗値を2点選び出し(RSn ,RS(n−1))、その2点の検知素子2aの抵抗値(RSn ,RS(n−1))に対応する検知対象ガスの濃度(N ,Nn−1)の間の値に直線関係が成立するとして、検知対象ガスの濃度(N)を、N=((RSX−RS(n−1))/(RSn−RS(n−1)))×(N−Nn−1)+Nn−1という式から算出した値に決定する。
【0070】
上述した0点の温度調整、さらに感度調整を行うことにより、0点の変動及び感度の変化による測定濃度の誤差が非常に効果的に抑制され、特に500ppm程度以下の低ガス濃度に対しても、極めて高い検出精度を持つことになる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、例えば、ガス、石油等の燃焼状態を測定する分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明のガス濃度測定装置の基本的な構成の一実施態様を説明する概念図である。
【図2】本発明のガス濃度測定装置の基本的な構成の他の一実施態様を説明する概念図である。
【図3】(a)雰囲気温度データベースに記憶されている情報の内容の一例を示す図、(b)雰囲気温度データベースに記憶されている情報の内容の他の一例を示す図である。
【図4】濃度補正データベースに記録されている情報の内容の一例を示す図である。
【図5】本発明のガス濃度測定方法を用いた検知対象ガスのガス濃度を測定する過程の一例を説明するフロー図である。
【図6】本発明のガス濃度測定方法を用いた検知対象ガスのガス濃度を測定する過程の他の一例を説明するフロー図である。
【符号の説明】
【0073】
1 ガス濃度測定装置
2 検知部
2a 検知素子
2b 補償素子
3 基板
4a 定電流回路
4b 定電圧回路
5 測定部
6 制御部
7 演算部
8 記憶部
8a 雰囲気温度データベース
8b 濃度補正データベース
9 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象ガスと反応する燃焼触媒を混合し又は被覆した担体を導電性コイルに被覆してなる検知素子と、該検知素子と同一の材質及び同一の形状の導電性コイルに該検知対象ガスと反応しない担体を被覆してなる補償素子とを用いて、該検知対象ガスの不存在状態と該検知対象ガスの存在状態における該検知素子の抵抗値の変化により検知対象ガスのガス濃度を測定するガス濃度測定装置であって、
前記ガス濃度測定装置は、検知対象ガスの不存在状態において、前記検知素子及び前記補償素子の両端電圧又は印可電流を可変して、いかなる雰囲気温度においても、前記検知素子及び前記補償素子を予め定めた一つの素子温度に対応した抵抗値に設定する素子抵抗設定手段を備えることを特徴とするガス濃度測定装置。
【請求項2】
前記素子抵抗設定手段は、
前記検知対象ガスの不存在状態において、前記補償素子を予め定めた一つの素子温度に対応した抵抗値に設定した時点における補償素子の両端電圧又は印可電流を測定する補償素子データ測定手段と、
前記補償素子データ測定手段で測定した補償素子の両端電圧又は印可電流の測定値に基づき、補償素子の雰囲気温度と検知対象ガスの不存在状態における補償素子を予め定めた一つの素子温度に対応した抵抗値に設定した時点における補償素子の両端電圧又は印可電流との相関データ及び検知素子の雰囲気温度と検知対象ガスの不存在状態における検知素子を予め定めた一つの素子温度に対応した抵抗値とした時点における検知素子の両端電圧又は印可電流との相関データを格納した雰囲気温度データベースを参照して、検知素子の雰囲気温度を決定する雰囲気温度決定手段と、
前記雰囲気温度決定手段で決定した検知素子の雰囲気温度に基づき、前記雰囲気温度データベースを参照して、検知素子の両端電圧又は印可電流を決定する検知素子データ決定手段と、
前記検知素子データ決定手段で決定した検知素子の両端電圧又は印可電流に設定する検知素子設定手段を
備えることを特徴とする請求項1に記載のガス濃度測定装置。
【請求項3】
前記ガス濃度測定装置は、
前記検知対象ガスの存在状態における検知素子の出力電流又は両端電圧の測定値に基づき、検知素子の抵抗値を算出した後、該算出した検知素子の抵抗値に基づき、検知素子の抵抗値と検知対象ガスのガス濃度との相関データを格納した濃度補正データベースを参照して、検知対象ガスの濃度を決定する検知対象ガス濃度決定手段を
さらに備えることを特徴とする請求項2に記載のガス濃度測定装置。
【請求項4】
検知対象ガスと反応する燃焼触媒を混合し又は被覆した担体を導電性コイルに被覆してなる検知素子と、該検知素子と同一の材質及び同一の形状の導電性コイルに該検知対象ガスと反応しない担体を被覆してなる補償素子とを用いて、該検知対象ガスの不存在状態と該検知対象ガスの存在状態における該検知素子の抵抗値の変化により検知対象ガスのガス濃度を測定するガス濃度測定方法であって、
前記ガス濃度測定方法は、前記検知対象ガスの不存在状態において、前記補償素子の両端電圧又は印可電流を可変して、前記補償素子を予め定めた一つの素子温度に対応した抵抗値に設定した時点における補償素子の両端電圧又は印可電流を測定する第一のステップと、
前記第一のステップで測定した補償素子の両端電圧又は印可電流の測定値に基づき、補償素子の雰囲気温度と検知対象ガスの不存在状態における補償素子を予め定めた一つの素子温度に対応した抵抗値に設定した時点における補償素子の両端電圧又は印可電流との相関データ及び検知素子の雰囲気温度と検知対象ガスの不存在状態における検知素子を予め定めた一つの素子温度に対応した抵抗値とした時点における検知素子の両端電圧又は印可電流との相関データを格納した雰囲気温度データベースを参照して、検知素子の雰囲気温度を決定する第二のステップと、
前記第二のステップで決定した検知素子の雰囲気温度に基づき、前記雰囲気温度データベースを参照して、検知素子の両端電圧又は印可電流を決定する第三のステップと、
前記検知素子の両端電圧又は印可電流を可変して、前記検知素子を前記第三のステップで決定した検知素子の両端電圧又は印可電流に設定する第四のステップと、
前記検知対象ガスの存在状態における検知素子の出力電流又は両端電圧を測定する第五のステップを備えることを特徴とするガス濃度測定方法。
【請求項5】
前記ガス濃度測定方法は、
前記第五のステップで測定した検知素子の出力電流又は両端電圧の測定値に基づき、検知素子の抵抗値を算出した後、該算出した検知素子の抵抗値に基づき、検知素子の抵抗値と検知対象ガスのガス濃度との相関データを格納した濃度補正データベースを参照して、検知対象ガスのガス濃度を決定する第六のステップをさらに備えることを特徴とする請求項4に記載のガス濃度測定方法。
【請求項6】
検知対象ガスと反応する燃焼触媒を混合し又は被覆した担体を導電性コイルに被覆してなる検知素子と、該検知素子と同一の材質及び同一の形状の導電性コイルに該検知対象ガスと反応しない担体を被覆してなる補償素子とを用いて、該検知対象ガスの不存在状態と該検知対象ガスの存在状態における該検知素子の抵抗値の変化により検知対象ガスのガス濃度を測定するガス濃度測定方法に使用するプログラムであって、
前記プログラムは、検知対象ガスの不存在状態において、前記補償素子の両端電圧又は印可電流を可変して、前記補償素子を予め定めた一つの素子温度に対応した抵抗値に設定した時点における補償素子の両端電圧又は印可電流を測定する第一のステップと、
前記第一のステップで測定した補償素子の両端電圧又は印可電流の測定値に基づき、補償素子の雰囲気温度と検知対象ガスの不存在状態における補償素子を予め定めた一つの素子温度に対応した抵抗値に設定した時点における補償素子の両端電圧又は印可電流との相関データ及び検知素子の雰囲気温度と検知対象ガスの不存在状態における検知素子を予め定めた一つの素子温度に対応した抵抗値とした時点における検知素子の両端電圧又は印可電流との相関データを格納した雰囲気温度データベースを参照して、検知素子の雰囲気温度を決定する第二のステップと、
前記第二のステップで決定した検知素子の雰囲気温度に基づき、前記雰囲気温度データベースを参照して、検知素子の両端電圧又は印可電流を決定する第三のステップと、
前記検知素子の両端電圧又は印可電流を可変して、前記検知素子を前記第三のステップで決定した検知素子の両端電圧又は印可電流に設定する第四のステップと、
前記検知対象ガスの存在状態における検知素子の出力電流又は両端電圧を測定する第五のステップを含む処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項7】
前記プログラムは、
前記第五のステップで測定した検知素子の出力電流又は両端電圧の測定値に基づき、検知素子の抵抗値を算出した後、算出した検知素子の抵抗値に基づき、検知素子の抵抗値と検知対象ガスのガス濃度との相関データを格納した濃度補正データベースを参照して、検知対象ガスの濃度を決定する第六のステップをさらに備えることを特徴とする請求項6に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−75021(P2009−75021A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246321(P2007−246321)
【出願日】平成19年9月22日(2007.9.22)
【出願人】(592120623)株式会社坂口技研 (9)
【Fターム(参考)】