説明

キッチンキャビネット

【課題】作業者が座った姿勢で作業するとき、作業者の腰への負担を軽減することができるキッチンキャビネットを提供する。
【解決手段】本発明は、作業者が座った姿勢で使用可能なキッチンキャビネット(1)に関する。本発明によるキッチンキャビネット(1)は、キャビネット(2)と、キャビネットの上に搭載されるシンク等のキッチン設備(4)を有する。キャビネット(2)は、座った姿勢でキッチン設備(4)を使用する作業者の膝頭部(H1)を収容する凹部(18)と、座った姿勢の作業者の足部(H3)が下腿部(H2)に対して作業者の後方に位置するように作業者の下腿部(H2)を支持する下腿支持部(20)を有する。好ましくは、下腿支持部(20)は、作業者の下腿部(H2)をそれが延びる方向に沿って支持するための支持面(22)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチンキャビネットに係わり、更に詳細には、作業者が座った姿勢で使用できるキッチンキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
キャビネットの上に、シンク、キッチンカウンター、コンロ等のキッチン設備を搭載したキッチンキャビネットが、一般家庭で使用されている。また、近年、キッチンキャビネットにおける食器洗い、食材の切断、加熱調理等のキッチン作業を、作業者が座った姿勢で使用することができるキッチンキャビネットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
作業者が座った姿勢で使用できるキッチンキャビネットでは、作業者が長い間立っている必要がないので、作業者の足の疲れを軽減させることができる。
【0004】
また、特許文献1に記載されているキッチンキャビネットは、椅子に座った作業者の足を載せるための足休めバーを有している。
【0005】
【特許文献1】特開平9−51822号公報(図1〜図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
キッチンカウンターのキッチン設備、例えばシンク、キッチンカウンター、コンロは、作業者が座る位置に対して作業者の前方に配置されている。従って、作業者がキッチン作業を行うとき、作業者の上体が必然的に前傾するとともに、作業者の背中が丸くなりやすい。背中を丸めたままキッチン作業をし続けると、作業者の腰に負担がかかり、腰を痛める原因になることがある。このことは、足休めバーを有するキッチンキャビネットにおいても同様である。
【0007】
また、食材を切断したり食器を洗ったりする際、作業者が座ったままだと、作業者の手に十分な力をかけることができず、比較的固い食材を切断したり食器を強く擦ったりすることがしにくいことがあった。
【0008】
そこで、本発明の第1の目的は、作業者が座った姿勢で作業するとき、作業者の腰への負担を軽減することができるキッチンキャビネットを提供することにある。
【0009】
また、本発明の第2の目的は、作業者が座った姿勢で作業するとき、作業者の手に容易に力をかけることができるキッチンキャビネットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明によるキッチンキャビネットは、作業者が座った姿勢で使用可能なキッチンキャビネットであって、キャビネットと、キャビネットの上に搭載されるキッチン設備と、を有し、キャビネットは、座った姿勢でキッチン設備を使用する作業者の膝頭部を受入れるための凹部と、座った姿勢の作業者の足部が下腿部に対して作業者の後方に位置するように作業者の下腿部を支持する下腿支持部と、を有することを特徴としている。
【0011】
このように構成された、キッチンキャビネットでは、作業者が前傾したとき、作業者下腿部が下腿支持部で支持され、座った姿勢の作業者の足部が下腿部に対して作業者の後方に位置し、作業者の大腿が必然的に前下がりになる。それにより、下腿支持部がない場合と比較して、作業者は背中が丸まらない姿勢をとりやすくなり、作業者の腰への負担を軽減することができる。また、作業者が前傾したときの体重を下腿支持部で支持することができるので、作業者の手に容易に体重又は力をかけることができる。
【0012】
上記キッチンキャビネットの実施形態において、好ましくは、下腿支持部は、作業者の下腿部をそれが延びる方向に沿って支持するための少なくとも1つの支持面を有し、この支持面は、作業者に近づくにしたがって下方に傾斜する。
【0013】
このように構成されたキッチンキャビネットでは、作業者の下腿部は、それが延びる方向に沿って支持面によって支持されるので、作業者が体重を前後に移動しても、作業者の下腿部が下腿支持部によって安定的に支持され、前傾しているときの作業者の上体移動を容易にすることができる。
【0014】
支持面を有する上記キッチンキャビネットの実施形態において、下腿支持部の支持面は、平面状であってもよいし、作業者の左右方向に湾曲する凹面であってもよい。
【0015】
また、支持面を有する上記キッチンキャビネットの実施形態において、好ましくは、支持面は、上支持面と、それよりも下方に設けられた下支持面とを有する。
【0016】
このように構成されたキッチンキャビネットは、身長が低く大腿部が短い作業者の下腿を上支持面によって支持し、身長が高く大腿部が長い作業者の下腿を下支持面によって支持することにより、身長が異なる作業者に対応することができる。
【0017】
また、支持面を有する上記キッチンキャビネットの実施形態において、好ましくは、支持面の水平方向に対する傾斜角度は、前記キッチン設備に応じて異なる。
【0018】
このように構成されたキッチンキャビネットでは、キッチン設備を使用する作業者の前傾姿勢を、キッチン作業に適した前傾姿勢に予め近づけることができる。
【0019】
この実施形態において、好ましくは、キッチン設備は、シンクとキッチンカウンターを有し、シンクに対応する支持面の傾斜角度は、キッチンカウンターに対応する支持面の傾斜角度よりも小さい。
【0020】
このように構成されたキッチンキャビネットでは、シンクにおいて作業を行う作業者の姿勢を、キッチンカウンターにおいて作業を行う作業者の姿勢よりも前傾させやすくすることにより、作業者が作業しやすい姿勢をとることが容易になる。
【0021】
また、本発明のキッチンキャビネットの実施形態において、好ましくは、更に、作業者が座るための椅子を有する。
【0022】
このように構成されたキッチンキャビネットでは、別に椅子を用意する必要がない。
【発明の効果】
【0023】
以上説明した通り、本発明によるキッチンキャビネットによれば、作業者が座った姿勢で作業するとき、作業者の腰への負担を軽減することができる。
【0024】
また、本発明によるキッチンキャビネットによれば、作業者が座った姿勢で作業するとき、作業者の手に容易に力をかけることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0026】
最初、図1〜図4を参照して、本発明によるキッチンキャビネットの第1の実施形態を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態であるキッチンキャビネットの斜視図である。図2は、椅子を展開した図1のキッチンキャビネットの部分的に断面にした斜視図である。図3は、図1のキッチンキャビネットの側面断面図であり、図4は、椅子を展開した図1のキッチンキャビネットの側面断面図である。
【0027】
図1及び図2に示すように、キッチンキャビネット1は、キャビネット2と、その上に装着されたシンク4とを有している。
【0028】
キャビネット2は、概略的には、作業者から見て左右方向A及び前後方向Bに延びる直方体形状をなし、前面2aと、側面2bと、上面2cとを有している。
【0029】
シンク4は、キャビネット2の上面2cに埋め込まれるように取付けられ、4つの側壁4a〜4dと、底壁4eと、水を供給するための給水部4fとを有している。手前側の側壁4aは、キャビネット2の前面2aよりも奥側に配置されている。
【0030】
キャビネット2は、キャビネット本体6と、キャビネット本体6に対して前後に移動可能な前面パネル組立体8とを有している。
【0031】
キャビネット本体6は、両側に配置された側板12と、両側の側板12を連結する連結部14とを有している。本実施形態では、連結部14は、シンク4の下に位置し、シンク4の底壁4eから下方に延びる第1の面14aと、第1の面14aの下端16aから延び且つ作業者に近づくにしたがって下方に傾斜する第2の面14bと、第2の面14bの下端16bから下方に延びる第3の面14cとを有している。第3の面14cは、キャビネット2の前面2aよりも奥側に配置されている。シンク4の底壁4eと、第1の面14aと、第2の面14bとにより、座った姿勢でシンク4を使用する作業者の膝頭部H1(図4参照)を収容する凹部18が形成される。
【0032】
また、キャビネット本体6は、座った姿勢の作業者の足部H3(図4参照)が下腿部H2(図4参照)に対して作業者の後方に位置するように作業者の下腿部を支持する下腿支持部20を有し、この下腿支持部20は、作業者の下腿部H2をそれが延びる方向に沿って支持するための支持面22を有している。本実施形態では、連結部14が下腿支持部20として機能し、第2の面14bが支持面22として機能する。支持面22は、平面状であり、水平方向Cに対して傾斜角度αで配置されている。傾斜角度αは、好ましくは、10〜35度である。なお、下腿部H2は、作業者の膝から足首までの部分をいい、足部H3は、足首から足先までの部分をいう。
【0033】
前面パネル組立体8は、キャビネット2の前面2aを構成するオモテ面24a及びその反対側のウラ面24bを有する前面パネル24と、前面パネル24のウラ面24bに回動可能に取付けられた椅子26とを有している。
【0034】
前面パネル24は、ウラ面24bから凹部18に向かって突出する突出部28を有し、突出部28は、基部28aから凹部18に向かって下方に傾斜する上面28bを有している。前面パネル24のオモテ面24aには、取っ手30が取付けられることが好ましい。
【0035】
椅子26は、前面パネル24の突出部28の基部28aに回動可能に取付けられ、基部28から凹部に向かって延びる座部26aと、基部28から上方に延びる背部26bとを有している。座部26aと背部26bとは互いに90度をなして一体に形成されている。突出部28の上面28bには、座部26aが下方に回動したときに当接して変形するクッション28cが設けられることが好ましい。
【0036】
図3及び図4に示すように、前面パネル組立体8は、収納位置8a(図3参照)と展開位置8b(図4参照)との間を移動可能である。詳細には、キャビネット本体6の側板12に、前後方向Bに延びるガイドレール12aが取付けられ、ガイドレール12aに沿って摺動するスライド部24cが前面パネル24の下端部24dから延びている。前面パネル24は、車輪32を有することが好ましい。この車輪32は、作業者が椅子26に腰掛けるときに転がらないように固定することが可能である。
【0037】
椅子26の背部26b、前面パネル24、シンク4の手前側の側壁4a及び第3の面14cは、前面パネル組立体8が収納位置にあるとき、前面パネル24のオモテ面24aとキャビネット2の前面2aとが同一面内にあり、背部26bが前面パネル24と側壁4aとの間の隙間に収容され、且つ、座部26aが凹部内に配置されるように構成されている。
【0038】
次に、第1の実施形態のキッチンキャビネットの使用方法を説明する。
【0039】
収納位置8aにある前面パネル組立体8をキャビネット本体6から展開位置8bまで引き出す。椅子26の座部26aは、前面パネル24の突出部28の上面に当接するまで前下がりに回動する。作業者は、椅子26に腰掛けるとともに、膝頭部H1を凹部18に入れ、下腿部H2の膝に近い部分を支持面22の上に載せる。それにより、作業者は、背を伸ばした状態で前傾姿勢をとることができる。その結果、作業者は、椅子26に座った状態で、シンクの底まで覗き込むことができ、シンクの底まで手を容易に入れることができる。
【0040】
このキッチンキャビネット1では、作業者は背中が丸まらない姿勢をとりやすくなり、作業者の腰への負担を軽減することができる。また、作業者が前傾したときの体重を下腿支持部20で支持することができるので、上半身を自由に動かすことができる。特に、作業者の下腿部H2が、支持面22によって前後方向に支持されるので、作業者が体重を前後に移動しても、作業者の下腿部H2が下腿支持部20によって安定的に支持され、前傾しているときの作業者の上体の前後移動を容易にすることができる。更に、手に体重をかけることが容易になり、食器を強く擦って洗うことができる。
【0041】
次に、図5を参照して、本発明によるキッチンキャビネットの第2の実施形態を説明する。図5は、本発明の第2の実施形態であるキッチンキャビネットの側面断面図である。
【0042】
図5に示すように、キッチンキャビネット40は、連結部42の形状がキッチンキャビネット1の連結部14と異なること以外、第1の実施形態のキッチンキャビネット1と同様の構成を有している。したがって、同様の構成要素には同じ参照符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてだけ説明する。
【0043】
キッチンキャビネット40のキャビネット本体6は、両側に配置された側板12と、両側の側板12を連結する連結部42とを有している。連結部42は、シンク4の下に位置し、シンク4の底壁4eから下方に延びる第1の面42aと、第1の面42aの下端44aから延び且つ作業者に近づくにしたがって下方に傾斜する第2の面42bと、第2の面42bの下端44bから延び且つ作業者から遠ざかるにしたがって下方に傾斜する第3の面42cと、第3の面42cの下端44cから延び且つ作業者に近づくにしたがって下方に傾斜する第4の面42dと、第4の面42dの下端44dから下方に延びる第5の面42eとを有している。第5の面42eは、キャビネット2の前面2aよりも奥側に配置されている。シンク4の底壁4e及び第1の面42a〜第4の面42dにより、座った姿勢でシンク4を使用する作業者の膝頭部H1(図4参照)を収容する凹部46が形成されている。
【0044】
第2の本実施形態では、連結部42が下腿支持部20として機能し、第2の面42b及び第4の面42dがそれぞれ、上側の支持面22a及びそれよりも下方に設けられた下側の支持面22bとして機能する。上側の支持面22a及び下側の支持面22bは、両方とも平面状であり、水平方向Cに対してそれぞれ傾斜角度α1、α2で配置されている。傾斜角度α1、α2は、同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0045】
作業者がキッチンキャビネット40を使用する際、身長が低く大腿部H4(図4参照)が短い作業者は、下腿部H2(図4参照)を上側の支持面22aによって支持し、身長が高く大腿部H4が長い作業者は、下腿部H2を下側の支持面22bによって支持する。
【0046】
次に、図6を参照して、本発明によるキッチンキャビネットの第3の実施形態を説明する。図6は、本発明の第3の実施形態であるキッチンキャビネットを部分的に断面にした斜視図である。
【0047】
図6に示すように、キッチンキャビネット50は、第2の面14bに凹面が形成されていること以外、第1の実施形態のキッチンキャビネット1と同様の構成を有している。したがって、同様の構成要素には同じ参照符号を付してその説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0048】
連結部14は、第1の実施形態のキッチンキャビネット1と同様、シンク4の底壁4eから下方に延びる第1の面14aと、第1の面14aの下端16aから延び且つ作業者に近づくにしたがって下方に傾斜する第2の面14bと、第2の面14bの下端16bから下方に延びる第3の面14cとを有している。シンク4の底壁4eと、第1の面14aと、第2の面14bとにより、座った姿勢でシンク4を使用する作業者の膝頭部H1(図4参照)を収容する凹部18が形成されている。また、第2の面には、横方向に湾曲する凹面52が2つ形成され、各凹面52は、作業者に近づくにしたがって下方に傾斜するように延びている。
【0049】
本実施形態では、連結部14が下腿支持部20として機能し、凹面52が支持面22として機能する。支持面22は、凹形であり、水平方向Cに対して傾斜角度αで配置されている。
【0050】
作業者がキッチンキャビネット50を使用する際、作業者の左右の下腿部H2(図4参照)をそれぞれの凹面52によって支持する。
【0051】
作業者の下腿部H2の横移動が、凹面52によって阻止されるので、作業者が体重を前後に移動しても、作業者の下腿部H2が凹面52によって安定的に支持され、前傾しているときの作業者の上体の横移動を容易にすることができる。
【0052】
次に、図7を参照して、本発明によるキッチンキャビネットの第4の実施形態を説明する。図7は、本発明の第4の実施形態であるキッチンキャビネットの斜視図である。
【0053】
図7に示すように、キッチンキャビネット60は、キャビネット62と、その上に搭載された、シンク64a、キッチンカウンター64b、及びコンロ64cを有している。
【0054】
キャビネット62は、概略的には、作業者から見て左右方向A及び前後方向Bに延びる直方体形状をなし、前面62aと、側面62bと、上面62cとを有している。
【0055】
シンク64a及びコンロ64cは、キャビネット62の上面62cに埋め込まれるように取付けられ、キッチンカウンター64bは、上面62cの上に取付けられている。
【0056】
キャビネット62は、両側に配置された収納部66と、両側の収納部66を連結するベース部68及び横方向支持部70とを有している。ベース部68は下方に配置され、横方向支持部70は上方に配置され且つシンク64a、キッチンカウンター64b及びコンロ64cを支持している。キャビネット62は、更に、椅子Cに座った作業者の足部H3(図4参照)が下腿部H2(図4参照)に対して作業者の後方に位置するように作業者の下腿部H2を支持する下腿支持部72a、72b、72cを、シンク64a、キッチンカウンター64b及びコンロ64cの左右方向Aの位置にあわせて有している。下腿支持部72a、72b、72cは、ベース部68に支持されている。下腿支持部72a、72b、72c及び横方向支持部70の間に、座った姿勢でシンク64a、キッチンカウンター64b及びコンロ64cを使用する作業者の膝頭部H1(図4参照)を収容する凹部74が形成される。
【0057】
下腿支持部72a、72b、72cはそれぞれ、作業者の下腿部H2をそれが延びる方向に沿って支持するための支持面76a、76b、76cを有し、支持面76a、76b、76cは、平面状であり、作業者に近づくにしたがって下方に傾斜している。支持面76a、76b、76cはそれぞれ、水平方向Cに対して傾斜角度α3、α4、α5で配置されている。傾斜角度α3、α4、α5は、好ましくは、10〜35度であり、α3<α4<α5の関係がある。
【0058】
作業者がキッチン設備で作業をする場合、キッチン設備の構造上、作業者は、シンク64aでの作業で最も前傾し、キッチンカウンター64bでの作業、コンロ64cでの作業の順に、前傾が小さくなる。支持面76a、76b、76cの水平方向Cに対する傾斜角度をキッチン設備に応じて変えておけば、キッチン設備を使用する作業者の前傾姿勢を、キッチン作業に適した前傾姿勢に予め近づけることができる。
【0059】
次に、下腿支持部を設けた第1の実施形態によるキッチンキャビネット1と、下腿支持部を設けない従来のキッチンキャビネットの比較を行った実験例を図8〜図12及び表1〜表2を参照して説明する。
【0060】
図8は、作業者の背骨につけたモーションキャプチャ用のマーカの位置を示す図である。マーカは、5箇所取付けられており、下方からマーカを結んでできた線の傾き角度の変化β1、β2、β3(時計回りを+の値とする。)を図8に示すように定めた。また、表1は、そのときの角度β1、β2、β3を示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1から分かるように、下腿支持部20がない場合、マーカが一方向に湾曲し、背中が大きく丸まっているのに対し、下腿支持部20がある場合、マーカがほぼ直線状をなし、僅かにS字形に湾曲していた。
【0063】
表2は、身長が異なる男女8人が、下腿支持部20がないキッチンキャビネットから下腿支持部20があるキッチンキャビネットに変えたときのアンケート結果である。
【0064】
【表2】

【0065】
表2から分かるように、腰への負担、洗いやすさ、上体の安定感について、下腿支持部20があるキッチンキャビネットが、下腿支持部20がないキッチンキャビネットよりも悪くなったと感じた人は少なく、良くなったと感じた人が圧倒的に多かった。
【0066】
図9は、下腿支持部20と椅子26とを分離し、それぞれの下にロードセル80、82を配置したキッチンキャビネットを示す図である。ロードセル80により、椅子26にかかる荷重F1を測定し、ロードセル82により、下腿支持部に係る荷重F2を測定した。作業者の体重−F1−F2で計算される荷重が、手にかけられる荷重になる。図10は、下腿支持部がある場合の測定結果を示し、図11は、下腿支持部がない場合の測定結果を示す。体重66Kg(647N)の作業者について測定したところ、荷重安定後、下腿支持部がない場合には、F1が約485N、F2が約85Nであり、下腿支持部がある場合には、F1が約369N、F2が約131Nであった。従って、手にかけられる荷重は、下腿支持部がある場合約147Nであり、下腿支持部がない場合、約77Nであり、下腿支持部がある場合のほうが下腿支持部がない場合よりも、手にかけられる荷重が大きくなっていた。
【0067】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0068】
本発明によるキッチンキャビネットの下腿支持部は、座った姿勢の作業者の足部H3が下腿部H2に対して作業者の後方に位置するように作業者の下腿部H2を支持することができれば、その構造は任意であり、キャビネットの凹部の一部分によって構成されていてもよいし、凹部とは別に設けられてもよい。また、下腿支持部の構造は、上記実施形態のように支持面を有していても良いし、線状の形態を有する支持部であっても良いし、それらの上にクッションが取付けられた構造であってもよい。
【0069】
また、上述した第4の実施形態の実施形態において、キッチン設備64a、64b、64cに応じて支持面76a、76b、76cの傾斜角度を変えたけれども、作業者の腰の負担を軽減できれば、キッチン設備ごとに傾斜角度を変えなくても良い。また、第1〜第4の実施形態を任意に組合せても良い。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施形態であるキッチンキャビネットの斜視図である。
【図2】椅子を展開した図1のキッチンキャビネットを部分的に断面にした斜視図である。
【図3】図1のキッチンキャビネットの側面断面図である。
【図4】椅子を展開した図1のキッチンキャビネットの側面断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態であるキッチンキャビネットの側面断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態であるキッチンキャビネットを部分的に断面にした斜視図である。
【図7】本発明の第4の実施形態であるキッチンキャビネットの斜視図である。
【図8】作業者の背骨につけたモーションキャプチャ用のマーカの位置を示す図である。
【図9】下腿支持部と椅子との下にロードセルを配置したキッチンキャビネットを示す図である。
【図10】下腿支持部がある場合の荷重測定結果を示す図である。
【図11】下腿支持部がない場合の荷重測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1、40,50 キッチンキャビネット
2 キャビネット
4 シンク
18、46 凹部
20 下腿支持部
22 支持面
22a 上支持面
22b 下支持面
26 椅子
64a シンク
64b キッチンカウンター
64c コンロ
72a、72b、72c 下腿支持部
76a、76b、76c 支持面
α、α1、α2 傾斜角度
α3、α4、α5 傾斜角度
H1 膝頭部
H2 下腿部
H3 足部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が座った姿勢で使用できるキッチンキャビネットであって、
キャビネットと、前記キャビネットの上に搭載されるキッチン設備と、を有し、
前記キャビネットは、座った姿勢で前記キッチン設備を使用する作業者の膝頭部を受入れるための凹部と、座った姿勢の作業者の足部が下腿部に対して作業者の後方に位置するように作業者の下腿部を支持する下腿支持部と、を有することを特徴とするキッチンキャビネット。
【請求項2】
前記下腿支持部は、作業者の下腿部をそれが延びる方向に沿って支持するための少なくとも1つの支持面を有し、この支持面は、作業者に近づくにしたがって下方に傾斜することを特徴とする請求項1に記載のキッチンキャビネット。
【請求項3】
前記下腿支持部の支持面が平面状であることを特徴とする請求項2に記載のキッチンキャビネット。
【請求項4】
前記下腿支持部の支持面が作業者の左右方向に湾曲する凹面であることを特徴とする請求項2に記載のキッチンキャビネット。
【請求項5】
前記支持面は、上支持面と、それよりも下方に設けられた下支持面とを有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のキッチンキャビネット。
【請求項6】
前記支持面の水平方向に対する傾斜角度は、前記キッチン設備に応じて異なることを特徴とする請求項2に記載のキッチンキャビネット。
【請求項7】
前記キッチン設備は、シンクとキッチンカウンターを有し、前記シンクに対応する前記支持面の傾斜角度は、前記キッチンカウンターに対応する前記支持面の傾斜角度よりも小さいことを特徴とする請求項6に記載のキッチンキャビネット。
【請求項8】
更に、作業者が座るための椅子を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のキッチンキャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−55090(P2008−55090A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238681(P2006−238681)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】