説明

キャスタ用ロック装置

【課題】家具の下端におけるキャスタの取付部分の厚さが小さくても、支障なく、かつ体裁よく取り付けることができるキャスタ用ロック装置を提供する。
【解決手段】脚3の下端に取り付けたケーシング38に、水平方向に移動可能な作動杆15と、それに連動して、垂直方向に移動させられる第1昇降体41とを設け、第1昇降体41の下降により、その下端に設けた第1係合部47が、キャスタ8における旋回部材33の上面に設けた第1被係合部36と係合して、旋回部材33の旋回を阻止するとともに、旋回部材33に設けた第2昇降体51が第1昇降体41により押し下げられ、その下端に設けた第2係合部55が、キャスタ8における車輪35の内面に設けた第2被係合部37と係合して、車輪35の回転を阻止するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーブルや椅子等の家具の下端に設けられ、それらの家具を移動し易くするキャスタの水平方向の旋回と、車輪の回転とを停止させるキャスタ用ロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のキャスタ用ロック装置には、昇降可能とした旋回軸の下端に設けた笠歯車状の旋回ロック部が下降して、支持ヨーク(旋回部材)に水平軸をもって枢着したロック片の先端部上面に設けた凹部に係合することにより、支持ヨークの旋回が阻止されるとともに、ロック片の先端部が、旋回ロック部により押し下げられることによって、ロック片の中間部下縁に設けた外歯状の走行阻止歯が、車輪の側面に設けた内歯状の走行ストップ部に噛合して、車輪の回転を阻止するようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、ワイヤを引き上げることにより、操作板の一端部に設けた係合嵌部を、枠体(旋回部材)の上部下面に設けた歯車状の係合受部に係合させて、枠体の旋回を阻止するとともに、操作板の他端部に設けた押圧体を、車輪の外周面に圧接させることにより、車輪の回転を阻止するようにしたものがある(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−348506号公報
【特許文献2】特許第3683952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来のものは、いずれも、作動部材である旋回軸や操作板等を上下動させるため、それらを、ロッドやワイヤを介して、操作レバーに連係させているので、キャスタの取付部分の直上に、ロッドやワイヤ等を収容する収容空間が必要である。
特許文献1の場合は、ロック付きキャスタの取付部分の直上に脚柱があるので、その中にロッドを体裁よく収容することができるが、特許文献1の図1等に示されているように、脚の下端より前方に突出する水平下部の前端部に設けたキャスタにロック装置を設けようとすると、上記ロッドが脚の水平下部の上方に露呈するので、見苦しい。
【0005】
また、特許文献2に記載されているものにおいては、ワイヤが水平脚の上方に露呈しているので、同様に見苦しい。
【0006】
さらに、特許文献1および2に記載されているものは、いずれも、キャスタの水平方向の旋回を阻止する手段と、車輪の回転を停止させる手段とが一体物で形成されているので、両手段のうちのいずれか一方の噛合が不完全な場合、他方の噛合も不完全となることがあり、作動の確実性に欠けるおそれがある。
【0007】
その他にも、特許文献1のものでは、笠歯車状の旋回ロック部を、1対の車輪間に設けなければならないので、旋回ロック部の外径を大とすることができず、相手側の歯との十分な噛合強度、すなわち旋回阻止力を得にくく、特許文献2のものでは、操作板に設けた押圧体を、車輪の外周面に圧接させるだけで、車輪の回転を阻止するようにしているので、十分な車輪の回転阻止力を得にくい等の問題もある。
【0008】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、家具の下端におけるキャスタの取付部分の厚さが小さくても、支障なく、体裁よく取り付けることができるとともに、円滑かつ確実に作動することができ、さらに、車輪の回転と水平方向の旋回とを、強力に阻止することができるようにしたキャスタ用ロック装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 家具の下端に、上下方向を向く旋回軸をもって旋回自在に枢支された旋回部材に、車輪を水平軸をもって枢支したキャスタにおける、前記家具に対する旋回部材の旋回と、旋回部材に対する車輪の回転とをロックするキャスタ用ロック装置において、家具の下端に取り付けられたケーシングと、前記ケーシングに、ロック位置とアンロック位置とに水平方向に移動可能として設けられた作動杆と、前記作動杆のアンロック位置からロック位置、およびその逆方向への移動に連動して昇降するように、前記ケーシングに設けられ、かつ下端に、下降したときに前記旋回部材の上端面に設けられた前記旋回軸を中心とする内歯車状の第1被係合部と係合して、旋回部材の旋回を阻止する第1係合部が設けられた第1昇降体と、前記ケーシング内に設けられ、前記昇降体を下向きに付勢する第1付勢手段と、前記昇降体の下端に対向する位置において、前記昇降体の下降により押し下げられるようにして、前記旋回部材に昇降自在に設けられ、かつ下端部に、下降したときに前記車輪の側面に設けられた前記水平軸を中心とする内歯車状の第2被係合部と係合して、車輪の回転を阻止する第2係合部が設けられた第2昇降体と、前記旋回部材に設けられ、前記第2昇降体を上向きに付勢する第2付勢手段とを備えるものとする。
【0010】
(2) 上記(1)項において、第1昇降体が、ケーシング内に昇降自在に収容された本体の下端に、旋回軸を中心とするリング状の押え部を有するものとし、この押え部の下面で、第2昇降体の上端を押し下げるようにする。
【0011】
(3) 上記(1)または(2)項において、作動杆のアンロック位置からロック位置、およびその逆方向への移動に連動して、第1昇降体を昇降させる連動機構を、作動杆の一部に設けられ、かつ作動杆の移動方向に対して傾斜する第1傾斜面と、第1昇降体の一部に設けられ、かつ前記作動杆のロック位置からアンロック位置への移動により、前記第1傾斜面と摺接して、押し上げられるようにした第2傾斜面とを備える傾斜カム機構とする。
【0012】
(4) 上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、第2昇降体の下端部を二股状に分岐し、各分岐部の下端部に、旋回部材の両側方に配設した1対の車輪の対向面に設けた第2被係合部と係脱しうるようにした第2係合部をそれぞれ設ける。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、次のような効果を奏することができる。
請求項1記載の発明によると、作動杆を水平方向に移動することにより、車輪の回転と水平方向の旋回とを、阻止することができるようにしたので、家具の下端におけるキャスタの取付部分の厚さが小さくても、支障なく、体裁よく取り付けることができるとともに、第1被係合部を、旋回部材の上端面において旋回軸を中心とする大径の内歯車状に形成することができ、また第2被係合部も、車輪の側面において水平軸を中心とする大径の内歯車状に形成することができるので、旋回部材の旋回と、車輪の回転とを、高精度で、強力かつ確実に阻止することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によると、第1昇降体における本体の下端に、旋回軸を中心とするリング状の押え部を設け、この押え部の下面で、第2昇降体の上端を押し下げるようにしてあるので、旋回部材と第2昇降体とが、旋回軸を中心とするどのような向きに停止している場合でも、リング状の押え部により、第2昇降体を確実に押し下げることができる。
また、リング状の押え部は、上下方向の厚さを薄くできるので、家具の下端に体裁よく収容することができる。
【0015】
請求項3記載の発明によると、作動杆のアンロック位置からロック位置、およびその逆方向への移動に連動して、第1昇降体を昇降させる連動機構を、第1傾斜面と第2傾斜面とを備える傾斜カム機構としてあるので、連動機構の構造をきわめて簡素化することができるとともに、安価に製造することができる。
【0016】
請求項4記載の発明によると、双輪型のキャスタの両車輪を、単一の第2昇降体により、確実にロックすることができるとともに、第2昇降体は、両側が両車輪により覆われ、外部に露呈することがないので、体裁がよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
図1〜図13は、本発明の一実施形態を備えるテーブルを示す。
図1〜図3に示すように、このテーブルは、前後方向を向く水平脚杆(1)の後部(中間部とすることもある)より脚柱(2)が立設された側面視ほぼL字状の左右1対の脚(3)(3)の上部に、天板(4)の中間部を、左右方向を向く水平軸(5)をもって枢着し、天板(4)が、図1に示すように、ほぼ水平をなす使用位置と、図2に示すように、脚柱(2)と平行の上下方向を向く折り畳み位置とに回動しうるようになっている。
【0018】
天板(4)と、その後部下方に設けた後面板(6)とを、図1に示す使用位置と、図2に示すように、後面板(6)が天板(4)の直下に位置するようにした折り畳み位置とに回動しうるようにするための回動機構(7)に関しては、本発明に直接関係しないので、詳細な説明は省略する。
【0019】
各脚(3)の水平脚杆(1)の下面前後部には、キャスタ(8)(8)と、各キャスタ用のロック装置(9)(9)とがそれぞれ設けられている。したがって、脚(3)(3)の下端に設けた4個のキャスタ(8)をもって、脚(3)(3)と、この脚(3)(3)によって支持された天板(4)とが支持されている。
【0020】
天板(4)の前部下面(左右方向に関しては、一側部または中央部)には、1個の
操作レバー(10)が、上下方向を向く軸(11)をもって、ロック位置(L)とアンロック位置(U)とに回動可能として枢着されている。
この操作レバー(10)は、上述した4個のロック装置(9)と、連係手段(12)をもって、操作レバー(10)のロック位置からアンロック位置への回動に連動して、全ロック装置(9)がロック解除され、また操作レバー(10)のアンロック位置からロック位置への回動に連動して、全ロック装置(9)がロックされるように互いに連係されている。
【0021】
次に、この連係手段(12)の詳細について説明する。
図4〜図6に示すように、左右の脚(3)の水平脚杆(1)の下面における前後方向の中間部には、回動リンク(13)の中間部が、上下方向を向く軸(14)をもって、枢着されている。
回動リンク(13)の一端と前方のロック装置(9)における作動杆(15)と、また回動リンク(13)の他端と後方のロック装置(9)における作動杆(15)とは、それぞれ前後方向を向く連結杆(16)(16)をもって、互いに連結されている。
【0022】
各連結杆(16)と回動リンク(13)の各端部との連結は、各連結杆(16)における軸(14)に近接した方の端部に固着した平面L字状の接続金具(17)の遊端部を、回動リンク(13)の各端部に、上下方向を向く軸(18)をもって連結することにより、軸(14)を中心として、両接続金具(17)が巴状の配置となるようにするのが好ましい。
【0023】
前方の連結杆(16)の後端に固着された接続金具(17)における軸(18)より後方に突出する延長部(17a)には、ワイヤ(19)の一端が止着されている。ワイヤ(19)は、軸(14)より後方における水平脚杆(1)の下面に設けられた保持片(20)に一端が止着された可撓性のガイドチューブ(21)内に挿入され、ガイドチューブ(21)とともに、脚(3)における水平脚杆(1)に沿って後方に向かった後、脚柱(2)内を通って、上方に立ち上がり、次いで天板(4)の下面に沿って、操作レバー(10)まで至っている。
【0024】
図7および図8に示すように、操作レバー(10)は、天板(4)の下面に固着したケーシング(22)内に、軸(11)をもって枢支された巻取ドラム(23)と一体に形成され、前端に形成された操作部(10a)が、ケーシング(22)の前面に形成された窓孔(24)を通って、前方に突出している。
【0025】
左右の脚(3)から延出してきたガイドチューブ(21)(21)の他端は、そこから引き出された各ワイヤ(19)(19)が、巻取ドラム(23)に重なることなく円滑に巻きつくように、巻取ドラム(23)の外周面の接線方向を向くようにして、ケーシング(22)に止着されている。
各ガイドチューブ(21)の他端から引き出された各ワイヤ(19)は、巻取ドラム(23)の外周面の一部に巻き付けられ、各ワイヤ(19)の他端に設けられた球状のワイヤエンド(25)は、巻取ドラム(23)の外周面に設けられた嵌合孔(26)に嵌合係止されている。
【0026】
ケーシング(22)における巻取ドラム(23)に近接した部分に設けた収容孔(27)には、ゴム等の弾性体(28)と、それによって巻取ドラム(23)の外周面に圧接させられるようにした上下方向を向く円柱状の押圧体(29)とが収容されている。
巻取ドラム(23)の外周面には、操作レバー(10)を、ロック位置(L)とアンロック位置(U)としたとき、押圧体(29)が嵌合するようにした上下方向を向く浅い樋状の凹溝(30)(31)が設けられ、操作レバー(10)を、ロック位置(L)とアンロック位置(U)とにおいて、弾圧保持しうるようにしてある。
【0027】
操作レバー(10)の操作部(10a)を、図7に実線で示すロック位置(L)から、同じく想像線で示すアンロック位置(U)へ回動させると、両ワイヤ(19)(19)が、巻取ドラム(23)の外周面に巻き付けられて、ガイドチューブ(21)(21)から引き出され、左右の脚(3)の下面における回動リンク(13)が、図5に示すロック位置(L)から、図6に示すアンロック位置(U)へ回動させられ、前後の連結杆(16)(16)が互いに軸(14)に向かって引き寄せられ、4個のロック装置(9)の作動杆(15)が、ほぼ同時に引き出されて、すべてのロック装置(9)がロック解除され、テーブルを自由に動かすことができるようになる。
【0028】
操作レバー(10)の操作部(10a)を、図7に想像線で示すアンロック位置(U)から、同じく実線で示すロック位置(L)へ回動させると、両ワイヤ(19)(19)が緩められ、
ロック装置(9)に内蔵した、後述する圧縮コイルばね(48)の付勢力により、回動リンク(13)が上記と逆方向に回動させられ、前後の連結杆(16)(16)が互いに軸(14)から離れる方向に移動して、4個のロック装置(9)の作動杆(15)が、ほぼ同時にロック装置(9)内に進入し、すべてのロック装置(9)がロックされ、テーブルは不動となる。
【0029】
図7および図8に示すように、ケーシング(22)の前面における窓孔(24)の下方には、円弧面(22a)が形成されており、また操作レバー(10)における操作部(10a)の基部の下方には、この円弧面(22a)の半部を覆う円弧状の垂下片(10b)が設けられている。
操作レバー(10)を、実線で示すロック位置(L)としたとき、垂下片(10b)で覆われないで、前方に露呈する円弧面(22a)の左半部には、赤色に着色するか、または「LOCK」の文字を付し、操作レバー(10)を、想像線で示すアンロック位置(U)としたとき、垂下片(10b)で覆われないで、前方に露呈する円弧面(22a)の右半部には、青色に着色するか、または「FREE」の文字を付しておくのがよい。
【0030】
以上の構成中、回動リンク(13)、連結杆(16)(16)、ワイヤ(19)、ガイドチューブ(21)等により、連係手段(12)が形成されている。
【0031】
次に、各キャスタ(8)とそのロック装置(9)との詳細について説明する。なお、以下の説明で、前方のキャスタ(8)とそのロック装置(9)とのみについて説明し、後方のキャスタ(8)とそのロック装置(9)とについては、前方のキャスタ(8)とそのロック装置(9)と前後対称の同一構造であるので、説明を省略する。
図9および図10に示すように、各キャスタ(8)は、水平脚杆(1)の下端に、上下方向を向く旋回軸(32)をもって旋回自在に枢支された旋回部材(33)と、この旋回部材(33)の両側面に、水平軸(34)をもって枢支された1対の車輪(35)(35)とを備えている。
【0032】
旋回部材(33)の上面には、旋回軸(32)を中心とする内歯車状の第1被係合部(36)が設けられており、また、両車輪(35)(35)の対向面には、水平軸(34)を中心とする内歯車状の第2被係合部(37)が設けられている。
【0033】
図9〜図13に示すように、ロック装置(9)は、水平脚杆(1)の下端に取り付けられたケーシング(38)を備えている。このケーシング(38)は、上端が上端壁(38a)により閉塞された角筒状の垂直案内部(38b)と、この垂直案内部(38b)の一側面(図5に示す前部のキャスタ(8)用のロック装置(9)においては後面)に連設された角筒状の水平案内部(38c)とを備えている。
【0034】
ケーシング(38)の水平案内部(38c)には、上述の連結杆(16)に基端部が止着された角柱状の作動杆(15)が、前方のロック位置と後方のアンロック位置とに、前後方向に摺動可能として嵌合されている。
作動杆(15)の前端部両側面には、前方に向かって上下に拡開し、上面が前上向き傾斜する傾斜面(39)をなす側面視ほぼ三角形の突部(40)(40)が設けられている。
また、作動杆(15)の両側面には、作動杆(15)がロック位置に達したとき、水平案内部(38c)の開口端部に当接して、それ以上前方に移動しないようにするためのストッパ(15a)が設けられている。
【0035】
ケーシング(38)の垂直案内部(38b)には、第1昇降体(41)における角柱状の本体(42)が、上下方向に摺動自在に嵌合されている。
本体(42)の中間部には、作動杆(15)が貫通しうるようにした前後方向を向く貫通孔(43)が設けられており、この貫通孔(43)の両内側面上部には、作動杆(15)の左右の傾斜面(39)(39)上に摺動自在に載置されるようにした、傾斜面(39)(39)と同一傾斜角度をもって前上向き傾斜する傾斜面(44)(44)が下端に設けられた内向き突部(45)(45)が設けられている。
【0036】
本体(42)の下端には、旋回軸(32)を中心とするリング状とした押え部(46)と、本体(42)の直下において、内歯車状の第1被係合部(36)の一部と噛合しうるようにした1個または複数の歯からなる第1係合部(47)とが、同一高さとなるようにして、一体的に設けられている。
【0037】
ケーシング(38)における垂直案内部(38b)の上端壁(38a)と、第1昇降体(41)における本体(42)の上端面との間には、第1付勢手段である圧縮コイルばね(48)が縮設されている。
第1昇降体(41)は、この圧縮コイルばね(48)により、常時下向きに付勢され、作動杆(15)がロック位置に位置しているときは、図9に実線で示すように、第1係合部(47)が旋回部材(33)の上面の第1被係合部(36)と噛合し、またリング状の押え部(46)が、第1被係合部(36)以外の旋回部材(33)の上面に当接または近接するロック位置に位置するようになっている。
【0038】
この状態から、作動杆(15)が、連結杆(16)により後方に引かれて、アンロック位置へ移動させられると、作動杆(15)の傾斜面(39)と第1昇降体(41)の傾斜面(44)とからなる傾斜カム機構(49)の作用により、傾斜面(44)とともに、第1昇降体(41)が、圧縮コイルばね(48)の付勢力に抗して押し上げられ、図9に想像線で示すように、第1係合部(47)が第1被係合部(36)から上方に離れたアンロック位置となる。
【0039】
旋回部材(33)の上面における押え部(46)の直下の位置には、有底孔(50)が設けられており、この有底孔(50)内には、第2昇降体(51)における上下方向を向く昇降軸(52)が、上下方向に摺動自在に嵌合されている。
旋回部材(33)の中間部には、有底孔(50)の中間部と直交する横孔(53)が設けられており、この横孔(53)には、昇降軸(52)の下端部より二股状に分岐して、旋回部材(33)の両側方に下向き鉤形をなして突出する、全体として下向きコ字状の二股部材(54)が、上下方向に摺動自在に嵌合されている。二股部材(54)の両側下端部には、両車輪(35)(35)の内面に設けられた内歯車状の第2被係合部(37)(37)と係脱する第2係合部(55)(55)が設けられている。
【0040】
有底孔(50)の底面と、二股部材(54)の下面中央との間には、圧縮コイルばね(48)の付勢力より付勢力が弱い、第2付勢手段である圧縮コイルばね(56)が縮設されている。
第2昇降体(51)は、この圧縮コイルばね(56)により、常時上向きに付勢され、第1昇降体(41)が、図9に想像線で示すように、アンロック位置に位置しているときは、昇降軸(52)の上端が、旋回部材(33)の上面より上方に突出し、かつ両第2係合部(55)(55)が、両車輪(35)(35)の第2被係合部(37)(37)より上方に離れたアンロック位置に位置している。
【0041】
この状態から、第1昇降体(41)がロック位置まで下降させられると、昇降軸(52)の上端が、第1昇降体(41)の押え部(46)により押し下げられ、第2昇降体(51)は、両第2係合部(55)(55)が、両車輪(35)(35)の第2被係合部(37)(37)に噛合するロック位置となる。
【0042】
以上から明らかなように、この実施形態によると、操作レバー(10)の操作部(10a)を、ロック位置(L)からアンロック位置(U)へ回動させると、両ワイヤ(19)(19)が引かれて、左右の脚(3)の下面における回動リンク(13)が、ロック位置(L)からアンロック位置(U)へ回動させられ、前後の連結杆(16)(16)が互いに軸(14)に向かって引き寄せられ、4個のロック装置(9)の作動杆(15)が、ほぼ同時に引き出され、各ロック装置(9)においては、傾斜カム機構(49)の作用により、第1昇降体(41)がアンロック位置まで上昇させられ、それに伴って、第1係合部(47)が第1被係合部(36)から上方に離脱するとともに、第2昇降体(51)が、圧縮コイルばね(56)の付勢力により、アンロック位置まで持ち上げられ、両第2係合部(55)(55)が、両車輪(35)(35)の第2被係合部(37)(37)より上方に離脱する。
したがって、4個のキャスタ(8)がすべてフリー、すなわちアンロック状態となるので、テーブルを自由に動かすことができるようになる。
【0043】
操作レバー(10)の操作部(10a)を、アンロック位置(U)からロック位置(L)へ回動させると、両ワイヤ(19)(19)が緩められ、ロック装置(9)に内蔵した圧縮コイルばね(48)の付勢力により、回動リンク(13)が上記と逆方向に回動させられ、前後の連結杆(16)(16)が互いに軸(14)から離れる方向に移動して、4個のロック装置(9)の作動杆(15)が、ほぼ同時にロック位置に移動させられ、各ロック装置(9)においては、圧縮コイルばね(48)の付勢力により、第1昇降体(41)がロック位置まで押し下げられ、それに伴って、第1係合部(47)が第1被係合部(36)と噛合し、水平脚杆(1)に対する旋回部材(33)の旋回を強力に阻止するとともに、第2昇降体(51)の上端が、第1昇降体(41)の押え部(46)により、ロック位置まで押し下げられて、両第2係合部(55)(55)が、両車輪(35)(35)の第2被係合部(37)(37)に噛合して、各車輪(35)の回転が強力に阻止される。
したがって、4個のキャスタ(8)のすべての旋回部材(33)の旋回と、各車輪(35)の回転と強力に阻止されるので、テーブルは不動となる。
【0044】
なお、ロック操作時のタイミングによっては、第1係合部(47)が第1被係合部(36)の歯の直上に乗り、または第2係合部(55)の先端が、第2被係合部(37)のいずれかの歯の先端に乗って、それらが即座に噛合せず、第1昇降体(41)がロック位置の手前で停止することがあるが、そのような場合は、第1昇降体(41)に圧縮コイルばね(48)の下向きの付勢力が常時掛かっているので、その後に、旋回部材(33)または車輪(35)がわずかに移動しただけで、それらが確実に噛合するので、支障が生じることはない。
また、このような不完全噛合時に、作動杆(15)と第1昇降体(41)と第2昇降体(51)とのストロークのずれを、圧縮コイルばね(48)(56)により吸収しうるようにしてあるので、各部に過剰な応力が生じることがなく、耐久性を高めることができる。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲内で、次のような変形した態様で、実施することもできる。
(a) 傾斜カム機構(49)における両傾斜面(39)(44)のうち、いずれか一方を単なるピンとする。
(b) 作動杆のアンロック位置からロック位置、およびその逆方向への移動に連動して、第1昇降体を昇降させる連動機構を、傾斜カム機構(49)以外の同様の作用をする移動方向変換機構とする。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、テーブルのキャスタだけでなく、椅子、ワゴンその他の家具におけるキャスタ用のロック装置に適用することができる。
また、双輪のキャスタだけでなく、単輪のキャスタにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態を備えるテーブルの使用状態の側面図である。
【図2】同じく、折畳み状態の側面図である。
【図3】同じく、使用状態の背面図である。
【図4】同じく、脚の下端部の縦断側面図である。
【図5】同じく、キャスタをロック状態としたときの脚の底面図である。
【図6】同じく、キャスタをアンロック状態としたときの脚の底面図である。
【図7】同じく、操作レバーとそのケーシングとの拡大平面図である。
【図8】同じく、操作レバーとそのケーシングとを斜め上方から見た斜視図である。
【図9】同じく、前部のキャスタおよびそのロック装置の取付部分の拡大縦断側面図である。
【図10】図9のX−X線断面図である。
【図11】前部のロック装置を斜め後ろから見た斜視図である。
【図12】前部のロック装置を、上下反転させて、斜め後ろから見た斜視図である。
【図13】ロック装置の内部機構の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
(1)水平脚杆
(2)脚柱
(3)脚
(4)天板
(5)水平軸
(6)後面板
(7)回動機構
(8)キャスタ
(9)ロック装置
(10)操作レバー
(10a)操作部
(10b)垂下片
(11)軸
(12)連係手段
(13)回動リンク
(14)軸
(15)作動杆
(15a)ストッパ
(16)連結杆
(17)接続金具
(17a)延長部
(18)軸
(19)ワイヤ
(20)保持片
(21)ガイドチューブ
(22)ケーシング
(22a)円弧面
(23)巻取ドラム
(24)窓孔
(25)ワイヤエンド
(26)嵌合孔
(27)収容孔
(28)弾性体
(29)押圧体
(30)(31)凹溝
(32)旋回軸
(33)旋回部材
(34)水平軸
(35)車輪
(36)第1被係合部
(37)第2被係合部
(38)ケーシング
(38a)上端壁
(38b)垂直案内部
(38c)水平案内部
(39)傾斜面(第1傾斜面)
(40)突部
(41)第1昇降体
(42)本体
(43)貫通孔
(44)傾斜面(第2傾斜面)
(45)内向き突部
(46)押え部
(47)第1係合部
(48)圧縮コイルばね(第1付勢手段)
(49)傾斜カム機構
(50)有底孔
(51)第2昇降体
(52)昇降軸
(53)横孔
(54)二股部材
(55)第2係合部
(56)圧縮コイルばね(第2付勢手段)
(L)ロック位置
(U)アンロック位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具の下端に、上下方向を向く旋回軸をもって旋回自在に枢支された旋回部材に、車輪を水平軸をもって枢支したキャスタにおける、前記家具に対する旋回部材の旋回と、旋回部材に対する車輪の回転とをロックするキャスタ用ロック装置であって、
家具の下端に取り付けられたケーシングと、
前記ケーシングに、ロック位置とアンロック位置とに水平方向に移動可能として設けられた作動杆と、
前記作動杆のアンロック位置からロック位置、およびその逆方向への移動に連動して昇降するように、前記ケーシングに設けられ、かつ下端に、下降したときに前記旋回部材の上端面に設けられた前記旋回軸を中心とする内歯車状の第1被係合部と係合して、旋回部材の旋回を阻止する第1係合部が設けられた第1昇降体と、
前記ケーシング内に設けられ、前記昇降体を下向きに付勢する第1付勢手段と、
前記昇降体の下端に対向する位置において、前記昇降体の下降により押し下げられるようにして、前記旋回部材に昇降自在に設けられ、かつ下端部に、下降したときに前記車輪の側面に設けられた前記水平軸を中心とする内歯車状の第2被係合部と係合して、車輪の回転を阻止する第2係合部が設けられた第2昇降体と、
前記旋回部材に設けられ、前記第2昇降体を上向きに付勢する第2付勢手段
とを備えることを特徴とするキャスタ用ロック装置。
【請求項2】
第1昇降体が、ケーシング内に昇降自在に収容された本体の下端に、旋回軸を中心とするリング状の押え部を有し、この押え部の下面で、第2昇降体の上端を押し下げるようにした請求項1記載のキャスタ用ロック装置。
【請求項3】
作動杆のアンロック位置からロック位置、およびその逆方向への移動に連動して、第1昇降体を昇降させる連動機構を、作動杆の一部に設けられ、かつ作動杆の移動方向に対して傾斜する第1傾斜面と、第1昇降体の一部に設けられ、かつ前記作動杆のロック位置からアンロック位置への移動により、前記第1傾斜面と摺接して、押し上げられるようにした第2傾斜面とを備える傾斜カム機構とした請求項1または2記載のキャスタ用ロック装置。
【請求項4】
第2昇降体の下端部を二股状に分岐し、各分岐部の下端部に、旋回部材の両側方に配設した1対の車輪の対向面に設けた第2被係合部と係脱しうるようにした第2係合部をそれぞれ設けた請求項1〜3のいずれかに記載のキャスタ用ロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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