説明

クッション付きウェハー容器

【課題】ウェハーを横方向で収容した状態で確実に保持できるウェハーキャリヤを提供する。
【解決手段】容器とドアとを有するウェハー容器はウェハーの横方向の最小接触での支持を与え、また、前縁支持と後縁支持との間の一つの面的な支持を伴うことなく縦方向の支持を与える。ウェハーキャリヤは各ウェハーに対して互いに軸方向にずれた2つの異なる支持レベルを有している。第1の支持レベルは各ウェハーの左側及び右側において底面と接触するウェハー棚によって得られる。第2の支持レベルはウェハーを左側及び右側の縁部における一つの面的な支持を伴うことなく前縁及び後縁においてウェハーを保持するクッションによって与えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はウェハーの搬送、輸送及び貯蔵の際にウェハーを安全に保つためのクッションを有するウェハー容器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハーはその処理の際に様々な装置においてまた様々な場所で多くの処理段階を受ける。これらのウェハーはワークステーションからワークステーションへまた設備から設備へと搬送されねばならない。ウェハーを取り扱い、貯蔵し、輸送するための様々なタイプの輸送装置が周知となっている。このような装置はウェハーを軸方向に並んだ列、例えば25のウェハー列で保持するものである。ウェハーを設備から設備へと輸送する場合、またウェハーを含む容器が大きな衝撃を受けるような場合には、容器はウェハーを縦で保持するように構成される。縦のウエハーは端部で水平方向に吊下されたウェハーよりも衝撃や振動による損傷を受ける可能性が少ない。
【0003】
輸送容器の主たる構成要素は搬送の間にウェハーにクッションを与えて衝撃や振動による物理的な損傷を保護するための手段である。このような輸送容器及びクッション手段は例えば米国特許第4,043,451号、第4,248,346号、第4,555,024号、第5,253,755号、第5,273,159号及び第5,586,658号に開示されているように周知である。これらのタイプの容器は上端及び下端にクッションを設けた縦方向のウェハー受容チャンネルを有していた。これらの輸送装置はウェハー或いはディスクを場所から場所へと縦方向に搬送するために設計されたものであり、従来の処理ワークステーションは処理のためにウェハーを横方向に取り出す必要が有った。
【0004】
縦方向のキャリヤでは、ウェハー受容チャンネルは一般にウェハーを横方向の動きが最小でしっかりと保持するように設計されている。このようなキャリヤではまたウェハーがウェハーチャンネルの縦方向の面に当接することができるようになっている。このようなキャリヤの縦方向のスロットは一般に平滑であり、ウェハーを最小の摩耗と引っ掻きでスロットに出し入れできるような特徴は有していない。一方、横方向の処理キャリヤでは、ウェハー受容チャンネルはウェハーを横方向のウェハー棚上の着座位置から持ち上げてウェハーがキャリヤと接触することなくロボットによりスロットから取り出すことができるように比較的大きなものとなっている。さらに、製造設備内におけるウェハーの搬送、特に大きなウェハーの搬送に現在利用されている横方向のキャリヤはウェハーとの接触が最小となるように設計されている。Nysethに対して付与され本願の発明の所有者に譲渡された米国特許第5,788,082号を参照されたい。一対の棚がウェハーの底側と4つの接触領域で接触する。各領域は棚から延びる突部によりつくられており、棚との点或いは短い線での接触を行う。このような突部は従来の縦のウェハー輸送装置には見られないものであり、この従来の縦の輸送装置はこのような最小の接触を提供していない。つまり、従来の縦方向のキャリヤは製造設備における処理の中間段階の搬送モジュールとして利用するための横方向キャリヤとしての利用に理想的に適するものではない。
【0005】
大きなウェハーに対するウェハー処理の発展が“フラッタ(flutter)”として知られる現象を悪化させることとなった。このフラッタとはウェハーの規制された側、すなわちウェハー棚に対する振動或いは跳ね、或いは従来の縦のキャリヤにおいてはウェハーが載っているチャンネルの一側に沿う振動或いは跳ねのことである。このような振動や跳ねはキャリヤ内で粒子を発生してこれを飛ばし、ウェハーを損傷させることがあるので、極めて望ましくないことである。フラッタはウェハー容器が衝撃を受けると生じる。またフラッタはウェハーの2つの対向する端部(前縁及び後縁)が規制を受け、中間部分(左縁及び右縁)がウェハーの上面及び底面の一方だけで規制されている場合でも生じうる。このフラッタ現象は製造設備で現在利用されている300mmのウェハーにおいて特に顕著である。
【0006】
クッションを有する横方向ウェハーキャリヤは周知である。Nyseth及びKrampotichに対して付与され本発明の所有者に譲渡された米国特許第5,915,562号を参照されたい。この特許はドアを位置固定した後に内側に動いてウェハーの前縁に係合する能動クッションを開示している。このようなクッションが与えられた(受動的かつ能動的な)横方向キャリヤではそれでも一つの面だけで前後端の中間を規制されている。このためウェハーはフラッタを受ける。このような構成を90°回転させて縦方向輸送装置を提供すると、フラッタの問題は大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,043,451号明細書
【特許文献2】米国特許第4,248,346号明細書
【特許文献3】米国特許第4,555,024号明細書
【特許文献4】米国特許第5,253,755号明細書
【特許文献5】米国特許第5,273,159号明細書
【特許文献6】米国特許第5,586,658号明細書
【特許文献7】米国特許第5,788,082号明細書
【特許文献8】米国特許第5,915,562明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このため、縦の輸送装置と同様に有効に機能でき、しかもウェハーを横向きにした場合における最小接触の利点を有するキャリヤが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ウェハーキャリヤへの第1及び第2クッションの取付は本質的に同様な方法で行うことができる。まず、ウェハーキャリヤは各クッションに対する第1緊締構造を有している。一つの第1緊締部がウェハーキャリヤのドアの内面に配置され、もう一つの第1緊締部がウェハーキャリヤ容器の後部内壁に配置されている。各クッションは相補的な第2緊締部を有している。第1及び第2緊締部は例えば下から支えることによりタブと協働係合する複数のフィンガを有しているのが好ましい。より詳しくは、フィンガはキャリヤの内面と平行でかつ間隔を置いて位置し、それらが一連のスロットを与えるようになっている。タブはクッションから延びるものであって、クッションがウェハーキャリヤに対して取り付けられたり取り外されたりするに伴ってフィンガと内壁とにより限定されたスロットと摺動係合するように寸法設定されている。各クッションの各側のタブ間にはランドが延びており、このランドは取付工具のピンを受容するように寸法設定された複数の開口を有している。第1及び第2クッションは取付け及び取外しのために手動で一時的に変形でき、このような一時的な変形は取付工具によって達成されるのが好ましく、それによって手動取扱に関連するウェハー粒子或いはその他の汚染物による汚染を減少させることができる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態の更なる特徴及び利点は、クッションのウェハー受取部材さらにはクッション材料それ自身の形状ウェハーの移動が有効かつ穏やかに規制されることである。好ましい実施形態において、各クッションは複数のウェハー受取部材を有し、これらは2組の平行な列でその長さに沿って延びている。このような平行列の各々のウェハー受取部材は互い違いとなっていて、各部材のガイド機能が最大としている。このために、ウェハー受取部材はクッションとの係合に先立って或いは係合の間にウェハーをガイドし保持するように機能する収束面を有している。
【0011】
本発明の好ましい実施形態の一つの目的は便宜的なウェハーサポート、或いは軸方向にずれた搬送レベルを提供する取り外し可能な第2ウェハーサポート或いはクッションを備えた棚上の着座レベルを備えたウェハーキャリヤの提供にある。
【0012】
本発明の一つの目的はウェハーをキャリヤ内に確実に保持するクッションを備えたウェハーキャリヤの提供にある。
【0013】
本発明のもう一つの目的は搬送及び貯蔵の間におけるウェハーの汚染を減少させることにある。
【0014】
本発明の好ましい実施形態のもう一つの目的はドアを取り付けたときにウェハーをウェハーキャリヤ内において一つのレベルで支持し、ドアを外したときに異なるレベルで支持することにある。
【0015】
本発明の好ましい実施形態のさらなる特徴はクッションがウェハーを第1の操作レベルから第2の搬送レベルへと持ち上げるように機能することである。
【0016】
第1のクッションは平行列のウェハー受取部材とV字トラフ状のクッション部材との間に介在された一対の長手方向チャンネルを有している。第1クッションの側部が互いに押されるとチャンネルが一時的に変形して取り付け及び取り外しを容易とする。第2クッションはクッションの本体の長手方向軸に沿う優先的な折り曲げラインすなわちリビングヒンジ(living hinge)を有している。これらの折り曲げラインすなわちリビングヒンジはクッションの側部が互いに押されたときに第2クッションがそれ自身で本質的に折れ曲がることを可能とする。第2クッションが通常の平らな状態に戻ることを確実とするために、優先的な折り曲げラインすなわちリビングヒンジはクッションの全長よりも少ない長さで延びている。優先的な折り曲げラインを有しないクッション本体の部分はクッションを通常の平らな状態に復元させる機能を果たす。
【0017】
第1及び第2クッションは上記したような様々な手段で一時的に変形できるけれども、例えば長手方向の切れ目のようなその他の手段を利用することもできることは明白である。
【0018】
好ましい実施形態において、クッションはウェハーがクッション材料自体によって移動を有効かつ穏やかに規制されるように、ウェハーにクッションを与えるように機能する。これに関し、好ましいクッション材料はデラウェア、ウィルミントン(Wilmington,Delaware)のE.I. Dupont De Nemours & Co.によって製造されており、業界においてHYTREL(登録商標)として知られているポリブチレンテレフタレートである。しかしながら、所望の弾性及び靱性を呈するその他の同様な材料を利用することもできる。
【0019】
利用において、本発明を採用したウェハーキャリヤは以下のように作動する。ウェハーはドアを取り外した状態でキャリヤ内に通常の方法で挿入され、ここでウェハーはウェハーとキャリヤとの接触を伴うことなく横方向に挿入される。次いで各ウェハーは下降されてウェハーの右及び左縁と底面とにおいて配置されたウェハー棚上に着座する。この時点でウェハーの最後部の縁は第2の長手方向のクッションとは接触していない。ドアを容器の挿入及び取出開口部内に着座させるに伴って、第1及び第2クッションのウェハー受取部材がウェハーの縁部と接触するようになる。ドアを引き続き着座させるとウェハー受取部材の収束面がウェハーを案内し支持しそして持ち上げて、内部ウェハー支持チャンネルのレベルの接触を解除して、第1及び第2クッションにより限定される第2支持レベルに動かす。ドアを最終的に着座させて位置をロックすると、ウェハー受取部材の収束面によって案内され、支持され、そして持ち上げられたウェハーの縁部はそれぞれのクッション部材内に着座し、ウェハーの側部の支持部とはもはや接触しなくなる。この状態でキャリヤを90度回転させてウェハーを縦向きにすることができる。ウェハーは移動や衝撃を有効かつ穏やかに規制され、輸送の際にフラッタを受けることはない。
【0020】
本発明の更なる目的、利点及び新規な特徴は以下の説明に部分的に記載されており、また或る部分は以下を精査することによって当業者に明白となるであろうし、本発明の実施によって分かることとなるであろう。本発明の目的及び利点は付属の特許請求の範囲において特に指摘した手段や組合せによって具現化しまた達成できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のウェハーキャリヤの斜視図を示すものである。
【図2】図1のドアの内面と、ドアに取り付けられる第1の長手方向クッションと取付工具との部分分解斜視図を示すものである。
【図3A】図2の第1の長手方向クッションの内向面の平面図を示すものである。
【図3B】図3Aの第1の長手方向クッションのA−A線に沿う断面図である。
【図3C】図3A及び図3Bの第1の長手方向クッションのウェハーガイド/サポートの構成を示す部分斜視図である。
【図4A】本発明の緊締装置の部分分解斜視図である。
【図4B】係合位置を実線で解離位置を破線で示した本発明の緊締装置の部分平面図である。
【図4C】第1の長手方向クッションの緊締部分の一方が対応するドアの緊締部分と係合したとき(実線)と解離したとき(破線)との部分断面図である。
【図5】ウェハーキャリヤの後部内壁に装着する前におけるウェハーキャリヤ容器と第2の長手方向クッションとの斜視図である。
【図6A】図5の第2の長手方向クッションの内向面の平面図を示すものである。
【図6B】図6Aの第2の長手方向クッションのB−B線に沿う断面図である。
【図6C】図6A及び図6Bのウェハーガイド/サポートと第2の長手方向クッションの苦ション部材の配置を示す部分斜視図である。
【図7】取付工具と第2の長手方向クッションとの部分分解斜視図である。
【図8A】第2の長手方向クッションの通常状態を示す端面図である。
【図8B】ウェハーキャリヤ容器に対する挿入及び取り出しのために曲がった状態における図8Aの第2の長手方向クッションの端面図である。
【図9】ウェハーキャリヤ容器の後壁に取り付けられた第2の長手方向クッションの部分断面図である。
【図10A】ウェハーキャリヤのドアを取り付ける前の容器内のウェハーの部分側面図である。
【図10B】ウェハーキャリヤのドアをウェハーキャリヤに取り付けた後の図10Aのウェハーの部分側面図である。
【図11A】従来技術のウェハーキャリヤにおける支持を示す概略図である。
【図11B】本発明によるウェハーキャリヤ内における支持の2つのレベルを示す概略図である。
【図12】本発明の他のリフト手段によるシフトを示す概略図である。
【0022】
図面は単なる説明のためのものであり、請求された発明の範囲を制限することを意味するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示したように、取り外し可能なクッションシステムが、取り外し可能なドア20と容器90とを有するウェハーキャリヤ10に対して提供されている。
【0024】
図1及び図2に示すように、ドア20は外面22と内面24とを有している。内面24はクッション受容部26を有し、この受容部は溝すなわち引込部28と緊締装置(図4A及び図4Bにより詳細が示してある)の第1部分30とを有している。緊締装置の第1部分30は溝すなわち引込部28の周部のまわりで内面24に設けられた複数のフィンガ32を有しており、これらのフィンガは内面24から間隔を置いて位置しまた溝28に向けて突出している。フィンガ32と内面24とは互いに複数のスロット(図4Aに詳細を示す)を形成しており、これらのスロットは緊締装置の第2部分を受け入れるように寸法設定されている。
【0025】
図2に戻り、第1クッション40は緊締装置(図4A及び図4Bにより詳細が示してある)の第2部分56を有している。第2部分56はクッション40の両側に配置された複数のタブ58を有し、これらのタブはクッションの面内から外側に延びており、第1の緊締装置のフィンガ32と係合できる。クッション40はまた複数の開口(図3Aにより詳細が示してある)を有しており、これらの開口は取付工具70を受容するように寸法設定されている。
【0026】
取付工具70は第1セグメント72と第2セグメント78とを有する。第1及び第2セグメント72,78は複数の平行ピン76,82が取り付けられたアーム74,80を有している。平行ピン76,82はアーム74,80から離れる方向に延びており、これらは第1クッション40の開口と係合できる。取付工具70の第1及び第2セグメント72,78は互いに対してまたドア20に対して可動となっており、クッション40をドア20に取り付けたり取り外したりできる。
【0027】
図3A、図3B及び図3Cにより詳細に示されるように、第1クッション40は一対のチャンネル42を有し、これらの内向きの側はウェブ44によって互いに連結されており、このウェブは複数のV字形クッションセグメント46を有している。他方、チャンネル42の外向きの側にはウェブ44に対して上方かつ外方に延びるウィング48が設けられている。ウィング48はウェハーガイド/サポート50を支持しており、外縁で止まっていて、この外縁から緊締装置の第2部分56と、ランド64とが延びている。
【0028】
ウェハーガイド/サポート50は外側列のウェハー受取部材52と、内側列のウェハー受取部材54とを有している。図3Cに示すように、列52と列54とは互いに平行でかつ互い違いとなっている。列52,54は収束面53,55を有し、これらの収束面は、第1クッション40を取り付けたドア20が容器90とシール関係になるに伴って、ウェハーをガイドしかつ支持する役割を果たす。
【0029】
図3Aに戻り、緊締装置の第2部分56はウィング48から外側に延びる複数のタブ58を有している。各タブ58は緊締装置の第1部分30のフィンガ32と協働するリブすなわちフィン60を有している。ウィング48の縁部に設けられたランド64がまたタブ58の間に配置されており、またランドには取付工具70のピンを受け入れるように寸法設定された複数の開口66が貫設されている。
【0030】
図4A及び図4Bに示すように、緊締装置21は第1部分30と第2部分56とを有しており、これら第1及び第2部分はクッション40をウェハーキャリヤドア20に取り付けることができるようにするために、互いに対し連結可能となっている。第1部分30は複数のフィンガ32を有し第2部分56は複数のタブ58を有しているけれども、一つのタブとそれに対応するフィンガとの相互作用のみが図示してある。図示のようにタブ58はフィンガ32と面24との間に形成されたスロット45によって摺動式で受け入れられるように寸法設定されている。タブ58が動いてフィンガ32と係合するにつれて、タブ58はフィンガ32のガイド壁36と係合するリブ60の壁62によって整列され位置決めされる。タブ58がフィンガ32の内縁を越えると(図4Bに破線で示すように)タブ58はフィンガ32との係合から外れる。第1部分30は複数のフィンガ32を有し、第2部分56は複数のタブ58を有しているけれども、その他のタイプの緊締装置を利用することもできることを理解されたい。
【0031】
図4Cを参照すると、第1のクッション40がドア20の内面24に取り付けられているところが示されている。ここで、図4A及び図4Bには単一のタブとそれに関連するフィンガだけが示されている。しかしながら、タブ58はフィンガ32と内面24とにより形成されたスロット34に摺動式に受け入れられることが理解されるであろう。タブ58のフィンガ32との非係合位置が破線で示されている。クッション材料は比較的柔軟なものであり、チャンネル42の側部が互いに向けて曲がることができるようになっている。つまり、ウィング48に圧力が加えられるとウィングがウェブ44に対して動いてタブ58のフィンガ32との係合が外れる。この圧力は手か取付工具70(図示しない)によって加えられることに注目されたい。
【0032】
図5に示すように、取り外し可能なクッションシステムは容器90と第2クッション120とを有している。容器は上部92,底部、側部96,前部及び後部を有しており、これらは内側104とクッション受取部108とを有する内部102を限定している。内側104は便宜的なウェハーサポート106を有し、これは複数のウェハーを横向きで支持する第1のサポートレベルを形成している。第2クッション120は図では便宜的なウェハーサポート106に対する非取付向きで示してある。
【0033】
図6A、図6B及び図6Cにより詳細に示すように、第2クッション120は一対の線状セクション124を有する本体部122を有し、線状セクションはリビングヒンジ(living hinge)126によって互いに可動に連結されており、このリビングヒンジは本体部122の両端から長手方向に沿って部分的に延びている。線状セクション124はウェハーガイド/サポート128を支持するものであり外縁で止まっており、この外縁から緊締装置の第2部分136と、ランド144とが延びている。
【0034】
ウェハーガイド/サポート128は外側列のウェハー受取部材130と、内側列のウェハー受取部材132と、クッション部材134の列とを有している。図6Cに示すように、列130と132とは互いに平行でありかつ互い違いとなっており、一方、列134の部材は両列のウェハー受取部材に対応している。列130,132は収束面131,133を有し、これらの収束面は第1クッション40を取り付けたドア20を容器90とシール関係とすることによりウェハーがクッション120と接触するに伴って、ウェハーをガイドしかつ支持する役割を果たす。
【0035】
図6Aに戻り、緊締装置の第2部分136は線状セクション124から外側に延びる複数のタブ138を有している。各タブ138は緊締装置の第1部分110のフィンガ112と協働するリブすなわちフィン140を有している。線状セクション124の縁部に設けられたランド144はまたタブ138間に配置されており、ランドには取付工具70のピンを受け入れるように寸法設定された複数の開口146が貫設されている。
【0036】
図7に示すように、第2クッション120は緊締装置(図4A及び図4Bにより詳細に示す)の第2部分136を有している。第2部分136はクッション120の両側に配置されてクッションの面内から外側に延びる複数のタブ138を有しており、これらが第1緊締装置のフィンガ112と係合できるようになっている。クッション120はまた取付工具70を受容するように寸法設定された複数の開口(図6Aにより詳細に示す)を有している。
【0037】
取付工具70は第1セグメント72と第2セグメント78とを有する。第1及び第2セグメント72,78は複数の平行ピン76,82が取り付けられたアーム74,80を有している。平行ピン76,82はアーム74,80から離れる方向に延びており、これらは第1クッション40の開口と係合できる。取付工具70の第1及び第2セグメント72,78は互いに対してまたドア20に対して可動となっており、クッション40をドア20に取り付けたり取り外したりできる。
【0038】
図8A及び図8Bは第2クッションを通常の平らな状態と、緊締装置の第1部分110及び第2部分136の係合或いは解離を可能とする曲がった状態とで示している。図8Aにおいて、第2クッション120のタブ138とクッション受取面108のフィンガ(破線で示す)とが並んだ状態を見ることができるであろう。この図において第2クッションは通常の平らな状態にある。図8Bにおいて、タブ138とクッション受取面108のフィンガ(同様に破線で示す)とが並んだ状態を見ることができるであろう。ここではタブ138はフィンガとクッション受取面とによって形成されたスロットから十分に解離しており、クッション120を容器(図示しない)から取り出すことができるようになっている。クッション材料は比較的柔軟なものであり、リビングヒンジ125ひいては線状セクションが互いに向けて曲がることができるようになっている。つまり、線状セクション124に圧力が加えられると線状セクション互いに対して動いてタブ138のフィンガ112との係合が外れる。この圧力は手か取付工具70(図示しない)によって加えられることに注目されたい。
【0039】
図9に示すように第2クッション120は容器90の後部クッション受取面108に取り付けられており、タブ138はフィンガ112に係合連結されている。
【0040】
図10Aでは、ウェハー“W”がウェハーキャリヤの第1のレベルでウェハーサポート106によって支持されている状態が示されており、第1クッション40と第2クッション120はウェハーキャリヤの前部(ドア)内面及び後部内面にそれぞれ位置している。ウェハーガイド/サポート50,128は内部容器のウェハーサポート106に対して位置がずれていることに注目されたい。また、ウェハーガイド/サポートの一部を形成する収束面53,55,131,133にも注目されたい。
【0041】
図10Bを参照すると、クッション40はドア20を容器90(図示しない)に取り付けることによってウェハーWと接触するに至っている。ドアを取り付けて容器に着座させると、第1及び第2クッション40,120の収束面55,133が協働してウェハーWをガイドし持ち上げて第2支持レベルで支持する。第1及び第2クッションが比較的柔軟で弾性を有することから、収束面においてまたクッション部材において変形が生じることに注目されたい。例えば第2クッション120のクッション部材134(実線及び破線で示す)を見られたい。これらの変形によって、ウェハーが第1及び第2クッションによって定められる搬送レベルにあるときに、ウェハーをより確実に保持することができる。
【0042】
図11A及び図11Bを参照すると、本発明と従来技術との比較の概略図が示されている。一つのウェハーが示されているけれども、キャリヤが数字150を付した破線で表してある。キャリヤは容器部151と、キャリアの前部開口を閉じるためのドア152とを有している。図11Aに示した従来技術のキャリヤにおいてウェハーはy軸方向に挿入されてウェハーの左縁156及び右縁157で棚に載せられ、これらはキャリヤの左側158及び右側159に対応している。棚は163を付した矢印で示すようにウェハーの左右の側においてウェハの底面160に上向き(y方向)の規制を与え、さらには164を付した矢印で示すように横方向の規制を与える。一般には168を付した矢印で示すようにウェハーの後縁166において後方からの横方向の支持も与えられる。一般に上向きの規制は例えばポリエーテルエーテルケトンやポリカーボネートで形成された棚のように剛性で非屈曲性のプラスチック部材によってなされる。ドア152を容器部分151に置くと、クッションとして構成された追加のウェハーサポートがy軸上の後方からの横方向規制170と、z軸上の上向きの規制172と、z軸上の下向きの規制174とがさらに与えられる。つまり、ウェハーWの側部におけるウェハーの下面に対する規制は有るが、上面180に対しては何も規制がない。このような条件はウェハーが図示したような横向き及び縦向きの両方の場合にフラッタの要因となるものである。縦向きの場合には一般にはウェハーの後縁においてウェハーの上面及び底面に対する規制もなされることに注目されたい。このような向きにおいてもフラッタは依然として生じる。
【0043】
図11BはウェハーW1が第1の支持レベルL1に位置し、そしてウェハーがW2を付した破線で示した第2の支持レベルL2に動いたところを示している。第1のレベルでは、ドアが取り付けられていない場合の図11Aを参照して上記で論じたと同様な支持が与えられる。ドアを取り付けるとウェハーは第2の支持レベルに軸方向に変位して、ウェハーの側部における支持がなくなる。好ましくは弾性クッションとして構成されたウェハーサポートによって破線で描いた力の矢印(及び隠れた力の矢印の点線)で示すようにウェハーの前縁及び後縁における支持が与えられる。このような支持によって前縁及び後縁の両方において上向きの規制180,内向きの規制182及び下向きの規制184が与えられる。このように前縁及び後縁を規制することによる支持の分離によってフラッタ現象が排除される。
【0044】
ウェハーはウェハー支持部材の収束面によって操作レベルと搬送レベルとの間でシフトするものとして図示したが、他のリフト手段によってもシフトを達成できることを理解されたい。例として、図12を参照すると、ウェハークッション200は例えばリビングヒンジによって4つのバーリンク202にヒンジ結合することで、ウェハーがy方向へ内向きに動くに伴い、ウェハーは4つのバーリンクの上方への回動作用によって持ち上げられて第2のレベルL2へシフトするようになっている。クッションのウェハー係合部分は206を付した位置までy方向及びz方向に動いてウェハーを軸方向に変位させる。すなわち、クッションは容器の内部ウェハーサポートに置かれ、隣接し、その上に位置され、或いはこれと協働する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハー及びディスクをほぼ横向きで貯蔵し輸送するための装置であって、
a)前部のウェハー挿入及び取出開口と、上部と下部と左側部と右側部とを有する内部と、背側部とを有する容器を有し、
b)内側に突出する棚を上下に重ねた一対のコラムを有し、一方のコラムはウェハーの左側と係合するために前記内部の左側部に配置されており、もう一方のコラムはウェハーの右側部と係合するために前記内部の右側部に配置されており、各棚は該棚に着座するウェハーの下側と接触するためのウェハー接触部を有し、前記一対のコラムはウェハーを前記棚に挿入し、配置し、前記棚から取り出すための複数のスロットを形成しており、各ウェハー接触部は第1の支持レベルを限定するものであり、
c)前記開口した前部を閉じるように寸法設定されたドアを有し、該ドアは内向面を有しており、
d)前記ドアの内向面に配置される第1クッションを有し、該第1クッションはウェハーの各々の前縁に係合してこれを規制することで、前記前縁において上向き、下向き及び内向きの規制を与えるための複数のウェハー着座部を有しており、
e)前記容器の内部において背側部に配置される第2クッションを有し、該第2クッションはウェハーの各々の背縁に係合して該背縁において上向き、下向き及び内向きの規制を与えるための、前記第1クッションのウェハー着座部に対応する複数のウェハー着座部を有しており、前記第1クッション及び前記第2クッションの対応するウェハー着座部の各々は第2の支持レベルを限定するものであり、該第2の支持レベルは各々対応する第1の支持レベルのすぐ上方に位置している、
装置。
【請求項2】
前記ウェハー着座部の各々はウェハーを着座位置にガイドするための傾斜部を有している請求項1の装置。
【請求項3】
前記ドアを前記容器に取り付けることによってウェハーの前記第1レベルから前記第2レベルへのシフトが生じる請求項2の装置。
【請求項4】
前記ドアは第1緊締部を有し、前記第1クッションは第2緊締部を有しており、前記第1及び第2緊締部は前記第1クッションを前記ドアの内面に解放可能に取り付けるために互いに協働係合する請求項1の装置。
【請求項5】
前記容器の前記背側部は第1緊締部を有し、前記第2クッションは第2緊締部を有し、前記第1及び第2緊締部は前記第2クッションを前記後部内面に解放可能に取り付けるために互いに協働係合する請求項1の装置。
【請求項6】
半導体ウェハー及びディスクを搬送し、貯蔵し、輸送するための装置に利用される弾性クッションであって、
a)細長い本体を有し、該本体は前側部及び後側部と、ウェブによって互いに隔てられた縁部とを有し、
b)前記前側部に取り付けられてこれから突出する複数のウェハー係合部分を有し、
c)当該クッションを前記装置に対して取り付けたり取り外したりするときに該クッションの変形を容易にするための手段を有する、
弾性クッション。
【請求項7】
変形を容易にするための前記手段は当該クッションの長さに亘って延びる少なくとも一つの弾性チャンネルを有しており、該チャンネルの側部は互いに対して可動となっていて、当該クッションの縁部間の距離が変形に応じて変化することができるようになっている請求項6の弾性クッション。
【請求項8】
当該クッションを前記装置に対して取り付けたり取り外したりするのに利用される取付工具の一対のピンのための一対の受入部をさらに有する請求項7の弾性クッション。
【請求項9】
少なくとも一つの薄くなった線状領域をさらに有し、該薄くなった線状領域がクッションの折り曲げを容易にして、当該クッションの縁部間の距離が変形に応じて変化することができるようになっている請求項7の弾性クッション。
【請求項10】
ウェハーキャリヤクッション取付け及び取外し工具とウェハークッションとの組合せであって、
工具は、
a)クッションの第1工具受入部に係合するための第1クッション接触部と、
b)クッションの第2工具受入部に係合するための第2クッション接触部とを有し、
c)前記第1クッション接触部と前記第2クッション接触部とは前記第1セグメントと前記第2セグメントが互いに対し近接及び離隔動できるように連結されており、
屈曲可能なウェハークッションは複数のウェハー係合部と、互いに対向配置された少なくとも一対のウェハー容器取付部と、一対の工具受入部とを有し、該ウェハークッションは少なくとも部分的に折れ曲がり可能となっており、前記工具の前記第1クッション接触部と第2クッション接触部とが前記ウェハークッションと係合し、これらのクッション接触部が互いに対して近接離隔すると前記ウェハークッションが曲がって該クッションを前記ウェハー容器から容易に取り外すことができる、
組合せ。
【請求項11】
前記第1及び第2クッション係合部は一対のピンを有し、前記クッションの工具受入部対は一対の開口を有し、前記ピンは前記開口により受け入れられるように寸法設定されている請求項10のウェハーキャリヤクッションと取付け及び取外し工具との組合せ。
【請求項12】
各々上面と底面とを有する複数のウェハーを軸方向に整列状態で保持するためのウェハーキャリヤであって、
開口した前部を有する容器と、前記開口した前部を閉じるために前記容器に着座できるドアとを有し、
ウェハーを上面側ではなく底面側において支持するために当該キャリヤに取り付けられた複数の対向配置されたウェハーサポートを有し、該ウェハーサポートは各ウェハーのための第1支持レベルを限定するものであり、
各ウェハーに係合するため当該キャリヤに取り付けられた複数のウェハー係合部材を有し、ウェハーは前記ウェハー係合部材によって動かされてウェハーの各々についての第1支持レベルから軸方向に変位した第2支持レベルへ位置することができる、
ウェハーキャリヤ。
【請求項13】
各係合部材は各ウェハーを動かすための傾斜部を有する請求項12のウェハーキャリヤ。
【請求項14】
一対のウェハークッションをさらに有し、その一方はドアに他方は当該キャリヤ内に配置され、前記ウェハークッション対は複数のウェハー係合部分を有している請求項12のウェハーキャリヤ。
【請求項15】
ウェハーは前記第2レベルにあるときには前記ウェハークッションにより各々その前縁及び後縁において支持され、前記第2レベルにあるときにはその左側部及び右側部において支持されない請求項12のウェハーキャリヤ。
【請求項16】
ウェハー及びディスクを搬送し貯蔵するためのウェハー取扱システムであって、
a)ウェハー挿入及び取出開口と、上部、底部、左側部、右側部及び後側部を有する内部とを有する容器を有し、前記右側部及び左側部はウェハー支持棚のコラムを各々有し、該ウェハー支持棚は複数の第1ウェハー支持レベルを限定しており、
b)前記挿入及び取出開口を閉じるためのドアを有し、該ドアは内向面を有しており、
c)前記ドアの内向面に解放可能に取り付けられる第1クッションを有し、
d)前記容器の背側部に解放可能に取り付けられる第2クッションを有し、前記第1クッションと第2クッションとは複数の第2支持レベルを限定しており、各第2支持レベルは第1の支持レベルに対応するとともにこれから上下方向に位置がずれており、
e)前記クッションを前記ウェハーキャリヤに対して取付け及び取外しするための取付工具を有し、
前記ドアの前記容器への取付によって、少なくとも一つのウェハーの前記第1支持レベルから前記第2支持レベルへのシフトが生じるウェハー取扱システム。
【請求項17】
長手方向のクッションをウェハーキャリヤに取り付けるための方法であって、
i)長手方向のクッションに係合するように寸法設定された第1及び第2セグメントを有する取付工具を設ける段階と、
ii)前記クッションの第1及び第2の側部を前記取付工具の前記第1及び第2セグメントと係合させる段階と、
iii)前記取付工具を動かす段階と、
iv)前記第1の長手方向のクッションを緊締部分を有するキャリヤの内向面に隣接して位置させる段階と、
v)前記長手方向のクッションの緊締部分が前記キャリヤの内向面の緊締部分と係合するように前記取付工具を動かす段階と、
を有する方法。
【請求項18】
半導体ウェハーを処理し、貯蔵し、搬送するのに利用されるウェハーキャリヤであって、
a)内向面を有するドアを有し、
b)ウェハー挿入及び取出開口と、上部と底部と側部と後面とを有する内部とを有する容器を有し、
c)第1組の対向するウェハーサポートを有し、該第1組の対向するウェハーサポートは第1支持レベルを限定するものであり、
d)第2組の対向するウェハーサポートを有し、該第2組の対向するウェハーサポートは前記第1レベルから軸方向に変位した第2支持レベルを限定するものであり、
当該ウェハーキャリアは前記第1支持レベル及び第2支持レベルにおいて複数のウェハーを支持する、
ウェハーキャリヤ。
【請求項19】
前記第1組の対向するウェハーサポートは前記ウェハーキャリヤ容器の内部側に位置し、前記第2組の対向するウェハーサポートは当該ウェハーキャリヤの前部及び後部内面に位置する請求項18のウェハーキャリヤ。
【請求項20】
ウェハーキャリヤであって、複数のウェハーを該キャリヤ内部において軸方向に整列配置した状態で支持するための複数のウェハーサポートを有し、該ウェハーサポートは各ウェハーを第1支持レベルで支持し、当該ウェハーキャリヤは、各ウェハーを当該キャリヤ内において前記第1支持レベルから軸方向に変位した第2支持レベルへと軸方向に動かすためのリフト手段をさらに有するウェハーキャリヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−233934(P2011−233934A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175099(P2011−175099)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【分割の表示】特願2007−65797(P2007−65797)の分割
【原出願日】平成11年7月9日(1999.7.9)
【出願人】(505307471)インテグリス・インコーポレーテッド (124)
【Fターム(参考)】