説明

クランプテスタ

【課題】電磁的なノイズが多い環境であっても、微弱な直流電流を正確に測定可能なクランプテスタを提供する。
【解決手段】電線を活線状態のままでクランプ可能となるように、所定の部位で分割してC字状に開くように設けられたリング状のクランプ部32と、クランプ部32に内蔵され、磁性体で構成された磁性体コア61を有するヘッドコア53と、磁性体コア61内を通過する磁界の強度を検出する磁気センサ55と、磁気センサ55で検出された磁界の強度に基づいて電線に流れる直流電流を算出する電流測定手段54とを具備するクランプテスタ30であって、磁性体コア61の少なくとも一部の外壁面には平板状の非磁性体部材62,63,64が取り付けられ、非磁性体部材62,63,64の少なくとも一部の外壁面には平板状の磁性体部材66,67が取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電流が流れる電線をクランプして、電線を流れる直流電流の値を測定できるクランプテスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電線を接断することなく活線の状態のままで、電線を流れる電流値を測定できるクランプテスタが知られている(例えば特許文献1参照)。
また、電線に流れる直流電流を測定するためのテスタは、電線の周囲に発生する磁界の磁路を形成させるための磁性体コアと、磁性体コアの一部を切欠いて磁性体コアを通過する磁界強度を検出するためのホール素子と、ホール素子で出力された電圧値に基づいて電線に流れる直流電流を算出する演算部とを備え、演算部によって算出された電流値が表示部にデジタル表示されるものが従来より知られている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−235735号公報
【特許文献2】特開2007−78374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、微弱な直流電流を測定する必要が出てきており、クランプテスタもmAオーダーの微弱な直流電流の測定ができるような構成となってきている。
しかし、たとえば車両のエンジンルーム内の配線における微弱な直流電流を測定するような場合、電磁的なノイズが多すぎるため、正確な直流電流の測定ができないおそれがあるという課題がある。
【0005】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、電磁的なノイズが多い環境であっても、mAオーダーの微弱な直流電流を正確に測定可能なクランプテスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかるクランプテスタによれば、電線を活線状態のままでクランプ可能となるように、所定の部位で分割してC字状に開くように設けられたリング状のクランプ部と、クランプ部に内蔵され、磁性体で構成された磁性体コア及び該磁性体コア内を通過する磁界の強度を検出する磁気センサを有するヘッドコアと、該ヘッドコアで検出された磁界の強度に基づいて電線に流れる直流電流を算出する電流測定手段とを具備するクランプテスタであって、前記磁性体コアの少なくとも一部の外壁面には平板状の非磁性体部材が取り付けられ、該非磁性体部材の少なくとも一部の外壁面には平板状の磁性体部材が取り付けられていることを特徴としている。
この構成を採用することにより、周囲に電磁的なノイズがあっても、微弱な直流電流を正確に測定することができる。理由としては、まず、磁性体コアの一部の外壁面に平板状の非磁性体部材を取り付けることにより、周囲のノイズを構成する磁界が磁性体コアに進入しないように非磁性体部材を磁気シールドとすることができる。さらに、非磁性体部材の外側に磁性体部材を配置することにより、周囲のノイズを構成する磁界が磁性体部材を磁路として磁力線を生じさせる。この磁性体部材を磁路として流れる磁力線は、平板状の磁性体部材内を平行に流れるために、非磁性体部材側へ進入するおそれがない。したがって、非磁性体部材の外壁面に平板状の磁性体部材を設けることにより、非磁性体部材だけで磁気シールドを構成するよりも高い磁気シールド効果を上げることができるものと考えられる。
【0007】
前記非磁性体部材及び磁性体部材は、前記磁性体コアのクランプ部の内側を向く内壁面以外の外壁面に取り付けられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、ノイズである周囲の磁界はシールドしつつも、電線を流れる微弱電流に基づいて生じる磁界は、磁性体コアを確実に通るようにすることができ、正確な直流電流値を測定できる。すなわち、クランプ部の内側に測定対象となるように配置された電線に対向する側は、非磁性体部材と磁性体部材が取り付けられておらずに、磁性体コアがむき出しになっているため、電線を流れる微弱電流に基づいて生じる磁界はシールドさせずに確実に検出できる。
【0008】
なお、前記非磁性体は真鍮であり、前記磁性体はパーマロイであることを特徴としてもよい。
さらに、前記磁性体部材は、ヘッドコアの上面及び下面に取り付けられていることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のクランプテスタによれば、周囲のノイズの影響を受けないようにして、微弱な直流電流であっても確実に測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
まず、図1〜図3に、本実施形態のクランプテスタの外観構成を示す。
クランプテスタ30は、ほぼ直方体状の本体部31の先端にリング状に構成されたクランプ部32が設けられて構成されている。クランプ部32は中途部で半円状に分割されており、分割されたいずれか一方が本体部31側で回動することで、クランプ部32はC字状に開口する。
本体部31は、作業者が手で把持できる程度の大きさであり、表面に表示部34が配置されている。表示部34は、LCDが用いられている。しかし、表示部34の構成としては、特にLCDに限定するものではない。
また、本体部31には、電源スイッチ36が設けられている。
【0011】
また、本体部31の先端側の側面には、クランプ部32を開閉させるためのレバー42が設けられている。レバー42は、作業者が把持した手で操作できるような位置及び大きさとなるように設けられている。
レバー42を図1の破線矢印方向に操作すると、分割されたクランプ部32の可動側クランプ部32aが本体部31側を軸線として回動し、分割した部分が開口する(図1の破線)。こうして電線を活線のままでクランプ部32の円の内側に収納させることができる。
【0012】
次に、本実施形態の概略の内部構成について、図4に基づいて説明する。
クランプテスタ30の内部には、直流電流を測定する測定手段46と、測定手段46で測定された直流電流値を表示する表示部34が設けられている。
【0013】
測定手段46は、具体的にはクランプ部32の内部に配置されたヘッドコア53と、ヘッドコア53に設けられたホール素子55と、ホール素子55によって検出された出力電圧値に基づいてヘッドコア53にかかる磁界強度を算出し、この磁界強度に基づいて電流の値を測定する電流測定回路54とから構成される。なお、ここでは磁界強度を計測する磁気センサとしてホール素子を例にあげているが、磁界強度を計測する磁気センサとしては、磁気抵抗素子など他のセンサを用いても良い。
【0014】
ヘッドコア53は、ほぼ半円形に形成されている2つの磁性体コアから構成される。つまり、ヘッドコア53は、分割されたクランプ部32の双方に配置され、クランプ部32が円形となっている閉塞時には磁気的に結合してリング状のコアとなるものである。可動側クランプ部32a内に配置されるヘッドコア53が可動側コア53a、固定側クランプ部32b内に配置されるヘッドコア53が固定側コア53bである。
【0015】
直流電流の測定時に、クランプ部32の円の内側に活線である電線を配置することで、クランプ部32の円周に沿って電線に流れる電流に伴う磁界が生じる。この磁界は、ヘッドコア53内を磁路とし、ヘッドコア53内を磁界に基づく磁力線が通過する。
ヘッドコア53に設けられたホール素子55は、この磁界に基づいた強度の起電力を生じる。電流測定回路54は、ホール素子55で生じた起電力に基づいて、測定対象の電線を流れる直流電流の電流値を算出し、算出された電流値は後述する制御手段50に送信される。
【0016】
制御手段50は、CPU56と、ROM及びRAM等から構成される記憶手段48を備えている。また、制御手段50は、A/Dコンバータ58を有しており、A/Dコンバータ58が電流測定回路54からアナログ値で入力された電流値をデジタル値に変換する。
また、制御手段50には、電源スイッチ36と表示部34が接続されている。
制御手段50は、記憶手段48に予め記憶された制御プログラムを読み出して実行することにより、所定の動作を行うことができる。
【0017】
続いて、図5〜図6に基づいてヘッドコアについて説明する。
ヘッドコア53は、ほぼ半円状の可動側コア53aと、ほぼ半円状の固定側コア53bとを有している。可動側コア53aは、可動側クランプ部32a内に配置され、固定側コア53bは、固定側クランプ部32b内に配置される。可動側コア53a及び固定側コア53bのそれぞれには、可動側クランプ部32a及び固定側クランプ部32bのそれぞれのカバーへ取り付けるための取り付け用の取付穴59,59・・が形成されている。
クランプ部32が閉じている場合には、可動側コア53aの端面と固定側コア53bの端面との間には空隙60が生じるように構成されている。この空隙60に、ホール素子55が配置される。
【0018】
図6に示すように、ヘッドコアの中心に配置される磁性体コアは積層構造に構成されている。
図6は図5のA−A方向から見た固定側コア53bの側面図であり、ホール素子55が取り付けられた端面があらわになっている。
ヘッドコア53は平板状の磁性体材料が積層されて構成される磁性体コア(積層鉄心)61を有している。磁性体材料としては、パーマロイなどをあげることができる。パーマロイは、透磁率が高くコアの材質として好ましい。ただし、磁性体コア61の材料としてはパーマロイに限定するものではなく、鉄等の他の磁性体であってもよい。
【0019】
磁性体コア61の外周側壁面には、非磁性体材料で形成された磁気シールド部材62(特許請求の範囲でいう非磁性体部材)が取り付けられる。これにより、ヘッドコア53の外周側からの磁気ノイズの影響を小さくすることができる。磁気シールド部材62の磁性体コア61の外周側壁面への取り付けは接着剤などを用いて行う。
また、磁性体コア61の上面及び下面は、それぞれ非磁性体材料で形成された磁気シールド部材63,64が取り付けられる。磁気シールド部材63,64の磁性体コア61の上面及び下面への取り付けは接着剤などを用いて行う。なお、ここで磁性体コアの上面及び下面とは、クランプする電線の軸線方向に沿った方向を上下方向とした場合に、表示部34側を上面、表示部34が設けられていない側を下面としている。
上述した磁気シールド部材62,63,64としてはそれぞれ、真鍮を用いることが好ましい。真鍮は非磁性体材料の中でも入手しやすくコスト的に有利であり、実験的にも磁気シールド効果が高いことが判明しているためである。真鍮以外の材質としては、アルミニウム、銅などを用いることができる。
【0020】
さらに、磁性体コア61の上面及び下面に取り付けられた磁気シールド部材63,64のさらに外側には、平板状の磁性体部材66,67が取り付けられている。ここで、平板状の磁性体部材66,67としては、磁性体コア61と同じ材質を用いることができる。具体的には、パーマロイを用いると好適である。平板状の磁性体部材66,67の磁気シールド部材63,64への取り付けも接着剤などを用いて行う。
【0021】
このように、磁気シールド部材63,64のさらに外側に、平板状の磁性体部材66,67を設けたことにより、外部からの磁気的なノイズを平板状の磁性体部材66,67内で磁性体部材66,67に平行に磁力線として流すことができ、磁気シールト゛部材63,64への磁力線の進入を低減させ、微弱な直流電流の検出をさらに確実に行うことができる。
【0022】
また、ヘッドコア53のリング状の内側には、磁気シールド部材の取り付けは行われない。これは、ヘッドコア53の内側に測定対象となる電線を配置するため、電線を流れる微弱な直流電流に基づく磁界を確実に検出することをできるようにするためである。
【0023】
また図5では、可動側コア53aの磁性体コア61の固定側端部において、磁気シールド部材62,63,64及び磁性体部材66,67が設けられておらず、磁性体コア61が1mmほどあらわになっている部分があるが、これは可動側コア53aの可動側クランプ部32aへの取り付け等の製造上の問題でこのようにしている。
【0024】
なお、上述した実施形態では、ヘッドコアの上面と下面の磁気シールド部材のさらに外側に磁性体部材を設けるようにした。しかし、本発明としてはこの構成に限定するものではなく、ヘッドコアの上面と下面に加え、ヘッドコアの外周面の磁気シールド部材の外側にも磁性体部材を設けるようにしてもよい。
さらに、ヘッドコアの上面と下面の磁気シールド部材には磁性体部材を設けず、外周面の磁気シールド部材の外側のみに磁性体部材を設けるようにしてもよい。
【0025】
以上本発明につき好適な実施例を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のクランプテスタの平面図である。
【図2】図1のクランプテスタの側面図である。
【図3】図1のクランプテスタの底面図である。
【図4】本発明のクランプテスタの内部構成について説明するブロック図である。
【図5】ヘッドコアの平面図である。
【図6】図5に示したヘッドコアのうち、固定側コアの側面図である。
【符号の説明】
【0027】
30 クランプテスタ
31 本体部
32 クランプ部
32a 可動側クランプ部
32b 固定側クランプ部
34 表示部
36 電源スイッチ
42 レバー
46 測定手段
48 記憶手段
50 制御手段
53 ヘッドコア
53a 可動側コア
53b 固定側コア
54 電流測定回路
55 ホール素子
56 CPU
58 A/Dコンバータ
59 取付穴
60 空隙
61 磁性体コア
62,63,64 磁気シールド部材
66,67 磁性体部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を活線状態のままでクランプ可能となるように、所定の部位で分割してC字状に開くように設けられたリング状のクランプ部と、
クランプ部に内蔵され、磁性体で構成された磁性体コアを有するヘッドコアと、
前記磁性体コア内を通過する磁界の強度を検出する磁気センサと、
該磁気センサで検出された磁界の強度に基づいて電線に流れる直流電流を算出する電流測定手段とを具備するクランプテスタであって、
前記磁性体コアの少なくとも一部の外壁面には平板状の非磁性体部材が取り付けられ、該非磁性体部材の少なくとも一部の外壁面には平板状の磁性体部材が取り付けられていることを特徴とするクランプテスタ。
【請求項2】
前記非磁性体部材及び磁性体部材は、前記磁性体コアのクランプ部の内側を向く内周面以外の外壁面に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のクランプテスタ。
【請求項3】
前記非磁性体は真鍮であり、前記磁性体はパーマロイであることを特徴とする請求項1または請求項2記載のクランプテスタ。
【請求項4】
前記磁性体部材は、磁性体コアの上面及び下面に取り付けられている非磁性体部材の外側に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項記載のクランプテスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−92538(P2009−92538A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264159(P2007−264159)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000104098)カイセ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】