クリップ
【課題】燃料タンクの外側に張り込まれる遮蔽部材のこの張り込み状態を容易に且つ安定的に維持できるようにする。
【解決手段】燃料タンクTの外面Taを覆うように備えられる面状をなす遮蔽部材Iの端末部Iaの接続用クリップである。接続させ合わされる遮蔽部材Iの端末部Ia間に亘るベース1に、各端末部Ia、Iaに形成された接続用貫通孔Ibへの挿入凸部2を備えて遮蔽部材Iの内面側に位置される第一パーツFと、この第一パーツFの各挿入凸部2、2に対する掛合部3を備えてこの掛合部3により遮蔽部材Iの外面Ic側から第一パーツFに組み合わされる第二パーツMとからなる。
【解決手段】燃料タンクTの外面Taを覆うように備えられる面状をなす遮蔽部材Iの端末部Iaの接続用クリップである。接続させ合わされる遮蔽部材Iの端末部Ia間に亘るベース1に、各端末部Ia、Iaに形成された接続用貫通孔Ibへの挿入凸部2を備えて遮蔽部材Iの内面側に位置される第一パーツFと、この第一パーツFの各挿入凸部2、2に対する掛合部3を備えてこの掛合部3により遮蔽部材Iの外面Ic側から第一パーツFに組み合わされる第二パーツMとからなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料タンクの保護のためにこの燃料タンクの外面を覆うように備えられる面状をなす遮蔽部材の端末部を接続させるために用いられるクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの燃料タンクの外面には、この燃料タンクを保護するために、典型的には、燃料タンクを熱から保護したり、物理的な衝撃や衝突から燃料タンクを保護するために、面状をなす遮蔽部材が張り込まれることが少なくない。
【0003】
図18はその典型的な一つの手法を示したものである。この手法では、遮蔽部材Iにより燃料タンクTを包み、その端末部Ia同士を接着して燃料タンクTの外面Taをかかる遮蔽部材Iで覆うようにしている。
【0004】
また、燃料タンクの外面に溶着されるベース部材に、板状をなす遮蔽部材に取り付けたクリップ部材を嵌め付けて、燃料タンクの外面をかかる遮蔽部材で覆うようにしたものもある。(特許文献1参照)
【0005】
しかるに、前者の手法では、接着剤Pの塗布を要すると共に、端末部の接続はかかる接着にのみ依存されることから、燃料タンクの膨張などを考慮すると、長期に亘り端末部の接続状態を安定的に保ち難い。
【0006】
一方、後者の手法においても、遮蔽部材の張り込みに先立ち、燃料タンクへのベース部材の溶着を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−331643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の燃料タンクの外側に張り込まれる遮蔽部材のこの張り込み状態を容易に且つ安定的に維持できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、第一の観点から、クリップを、燃料タンクの外面を覆うように備えられる面状をなす遮蔽部材の端末部の接続用クリップであって、
接続させ合わされる遮蔽部材の端末部間に亘るベースに、各端末部に形成された接続用貫通孔への挿入凸部を備えて、遮蔽部材の内面側に位置される第一パーツと、
この第一パーツの各挿入凸部に対する掛合部を備え、この掛合部により遮蔽部材の外面側から第一パーツに組み合わされる第二パーツとからなるものとした。
【0010】
かかる構成によれば、遮蔽部材の燃料タンクの外面への張り込みに先立って、この外面にベースにおける挿入凸部の形成側と反対の側を接しさせるようにして第一パーツを配した後、この第一パーツの挿入凸部を接続対象となる遮蔽部材の各端末部に形成された接続用貫通孔にそれぞれ入れ込むことで、第一に、燃料タンクの外面に張り込まれる遮蔽部材の隣接する端末部を第一部材を介して離間を阻止した状態で接続させることができる。次いで、第二に、このように遮蔽部材の端末部間に亘る第一パーツに第二パーツの掛合部を掛合させることにより、両パーツの間で端末部を挟み込み状に保持して、前記離間の阻止状態を両パーツを掛合させるだけで安定的に維持させることができる。
【0011】
前記第一パーツの挿入凸部に、さらに、遮蔽部材の接続用貫通孔への挿入終了状態において、この接続用貫通孔における遮蔽部材の外面側に位置される孔縁に引っかかる仮止め部を形成させておけば、燃料タンクの外面に配置された第一パーツの挿入凸部を遮蔽部材の接続用貫通孔に入れ込ませた状態を、第二パーツをこの第一パーツに掛合させる前の状態においても、仮に維持させることができる。
【0012】
前記第一パーツの挿入凸部を、内側に第二パーツの掛合部を受け入れてこれと掛合される中空体として構成させておくこともある。このようにした場合、遮蔽部材の接続用貫通孔内において第一パーツと第二パーツを掛合させて組み合わせることができる。
【0013】
前記第一パーツのベースに、さらに、燃料タンクの外面に形成された突出部を納めてこの突出部の形成位置に第一パーツを位置づけさせる凹所を形成させておけば、前記突出部部をかかる凹所に納めることで、遮蔽部材の張り込みに先立ち、燃料タンクの外面の所定の位置に第一パーツを位置づけることができる。
【0014】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、第二の観点から、クリップを、燃料タンクの外面を覆うように備えられる面状をなす遮蔽部材の端末部の接続用クリップであって、
遮蔽部材の内面側に位置される座部の一面側にこの遮蔽部材の端末部に形成された接続用貫通孔への挿入部を備えて遮蔽部材の各端末部にそれぞれ備えられる第一パーツと、
接続させ合わされる遮蔽部材の端末部間に亘る基板に、第一パーツの挿入部に対する掛合部を備え、この掛合部により遮蔽部材の外面側から遮蔽部材の各端末部に備えられた第一パーツに組み合わされる第二パーツとからなるものとした。
【0015】
かかる構成によれば、遮蔽部材の燃料タンクの外面への張り込みに先立って、この遮蔽部材の各端末部に第一パーツを備えさせた後、遮蔽部材を燃料タンクの外面を覆ってこの燃料タンクの外側にセットさせた状態から、セットされた遮蔽部材の各端末部に備えられた第一パーツに第二パーツの掛合部を掛合させることにより、両パーツの間で端末部を挟み込み状に保持して各端末部の離間を阻止することができる。また、かかるクリップにあっては、遮蔽部材の接続用貫通孔に備えられる第一パーツ同士は各々別体とされていることから、燃料タンクの外面の形状如何に関わらず、各第一パーツの座部は燃料タンクの外面に密着させ易く、遮蔽部材の張り込み状態をクリップにより無理なく維持させることができる。
【0016】
前記第一パーツの挿入凸部に、さらに、遮蔽部材の接続用貫通孔への挿入終了状態において、この接続用貫通孔における遮蔽部材の外面側に位置される孔縁に引っかかる仮止め部を形成させておけば、第一パーツの挿入凸部を遮蔽部材の接続用貫通孔に入れ込ませた状態を、第二パーツをこの第一パーツに掛合させる前の状態においても、維持させることができる。
【0017】
前記第一パーツの挿入凸部を、内側に第二パーツの掛合部を受け入れてこれと掛合される中空体として構成させておくこともある。このようにした場合、遮蔽部材の接続用貫通孔内において第一パーツと第二パーツを掛合させて組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、燃料タンクの外側に張り込まれる遮蔽部材のこの張り込み状態を第一パーツと第二パーツとの掛合をもって容易に、且つ第一パーツの挿入凸部を遮蔽部材の接続用貫通孔に入れ込ませることをもって安定的に、維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、燃料タンクに第一例にかかるクリップを利用して遮蔽部材を張り込む手順を示した断面構成図である。
【図2】図2は第一例にかかるクリップの分離斜視構成図である。
【図3】図3は第一例にかかるクリップの第一パーツの平面図である。
【図4】図4は第一例にかかるクリップの第一パーツの底面図である。
【図5】図5は図3におけるA−A線位置での断面図である。
【図6】図6は図3におけるB−B線位置での断面図である。
【図7】図7は第一例にかかるクリップの第二パーツの平面図である。
【図8】図8は図7におけるC−C線位置での断面図である。
【図9】図9は第一例にかかるクリップの第二パーツの底面図である。
【図10】図10は、燃料タンクに第二例にかかるクリップを利用して遮蔽部材を張り込む手順を示した断面構成図である。
【図11】図11は第二例にかかるクリップの分離斜視構成図である。
【図12】図12は第二例にかかるクリップの第一パーツの平面図である。
【図13】図13は第二例にかかるクリップの第一パーツの側面図である。
【図14】図14は図12におけるD−D線位置での断面図である。
【図15】図15は図13におけるE−E線位置での断面図である。
【図16】図16は第二例にかかるクリップの第二パーツの平面図である。
【図17】図17は第二例にかかるクリップの第二パーツの側面図である。
【図18】図18は従来の遮蔽部材の張り込みの手法を示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1〜図18に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。図1〜図9はこの発明を適用して構成されたクリップの第一例を、図10〜図17はこの発明を適用して構成されたクリップの第二例を、ぞれぞれ示している。
【0021】
この実施の形態にかかるクリップは、燃料タンクTの保護のためにこの燃料タンクTの外面Taを覆うように備えられる面状(つまり、シート状、マット状、板状などの面的な広がりを持った)をなす遮蔽部材Iの端末部Iaを接続させるために用いられるものである。図示の例では、かかる遮蔽部材Iとしてのマット状をなすインシュレーターI’の端末部Iaを、かかるクリップで接続させるようにしている。すなわち、図示の例では、燃料タンクTの外面Taを覆うように配されるインシュレーターI’の二つの端末部Ia、Iaを、この二つの端末部Ia、Iaに離間を生じさせないように、かかるクリップで接続させるようにしている。典型的には、かかるクリップは、燃料タンクTを一枚のインシュレーターI’で包むように覆った場合のこの一枚のインシュレーターI’の両端末部Ia、Iaの接続のために用いられる。あるいはまた、かかるクリップは、燃料タンクTの外面Taを複数枚のインシュレーターI’で分割して覆った場合の、隣り合うインシュレーターI’の隣り合う端末部Iaの接続のために用いられる。図示の例では、後述のように、二つの端末部Ia、Iaの接続をなすように構成されているが、例えば、端末部Iaを隣接させて配される三枚以上のインシュレーターI’の各端末部Iaを単一のクリップをもって接続させるようにかかるクリップは構成可能である。
【0022】
(第一例)
先ず、図1〜図9に示される第一例について説明する。図1は第一例にかかるクリップを用いた遮蔽部材Iの張り込み手順を示しており、図1(a)に示されるように第一パーツFを配置させた後、図1(b)に示されるように遮蔽部材Iの両端末部Ia、Iaに形成された接続用貫通孔Ibに第一パーツFの挿入凸部2を差し入れ、最後に図1(c)に示されるように第一パーツFに第二パーツMを接続用貫通孔Ibを利用して掛合・組み合わせる。また、図3〜図6は第一パーツFを、図7〜図9は第二パーツMを、それぞれ示している。
【0023】
かかるクリップは、遮蔽部材Iの燃料タンクTの外面Taへの張り込みに先立って、この外面に配置される第一パーツFと、この第一パーツFに遮蔽部材Iの端末部Iaを係止させて端末部Ia間の離間を阻止した状態からこの第一パーツFに掛合・組み合わされて第一パーツFとの間で端末部Iaを挟み込み状に保持する第二パーツMとから構成されている。
【0024】
第一パーツFは、接続させ合わされる遮蔽部材Iの端末部Ia間に亘るベース1に、各端末部Iaに形成された接続用貫通孔Ibへの挿入凸部2を設けさせてなる。図示の例では、ベース1は、外郭形状を略小判形状とした板状をなすように構成されている。挿入凸部2は、かかるベース1の一面1aからこの一面1aに直交する向きに突き出すように設けられている。図示の例では、挿入凸部2は、かかるベース1の両端部にそれぞれ形成されている。すなわち、図示の例では、ベース1は二つの挿入凸部2、2を備えており、接続され合わされる一方の端末部Iaに形成された接続用貫通孔Ibに挿入凸部2の一方を入れ込ませ、かつ、接続され合わされる他方の端末部Iaに形成された接続用貫通孔Ibに挿入凸部2の他方を入れ込ませることで、両端末部Ia、Ia間の離間を阻止するようになっている。ベース1は、接続させ合わされる端末部Ia間に亘る大きさを備えるものであれば、その形状や大きさは必要に応じて変更させて構わない。また、接続させ合わされる端末部Iaに接続用貫通孔Ibが複数ある場合には、これに対応した数の挿入凸部2をベース1に備えさせて、第一パーツFを構成させても構わない。
【0025】
図示の例では、二つのかかる挿入凸部2、2はいずれも、筒一端2aを前記ベース1の一面1aに一体に連接させた円筒状をなす中空体として構成されている。この挿入凸部2の筒他端2bは開放されており、後述するように、第二パーツMとの組み合わせ時にこの第二パーツMの掛合部3がこの筒他端2bから挿入凸部2内に差し込まれ受け入れられるようにしてある。挿入凸部2は、筒一端2aから筒他端2bに向かうに連れて、外径を漸減させるように構成されている。また、挿入凸部2の外面部には、筒両端2a、2b間に亘る溝2cが、隣り合う溝2cとの間に間隔を開けて、挿入凸部2の筒軸を巡る向きに複数形成されている。また、挿入凸部2の側部には、二箇所の窓孔状をなす掛合孔2dが形成されている。この二箇所の掛合孔2d、2dは、挿入凸部2におけるベース1の長さ方向に沿った縁部1bに向けられた側部にそれぞれ設けられており、挿入凸部2はその直径方向両側にそれぞれ掛合孔2dを備えるようになっている。各掛合孔2d、2dはそれぞれ、前記溝2c内に設けられると共に、挿入凸部2の筒軸方向に長い略長方形の孔縁形状を持つように構成されている。また、各掛合孔2dと挿入凸部2の筒一端2aとの間には、各掛合孔2dと挿入凸部2の筒他端2bとの間よりも大きい間隔が形成されている。
【0026】
また、この実施の形態にあっては、かかる第一パーツFのベース1に、燃料タンクTの外面Taに形成された突出部を納めてこの突出部の形成位置に第一パーツFを位置づけさせる凹所1cが形成されている。図示の例では、かかる凹所1cは、ベース1における二つの挿入凸部2、2の間となる箇所に形成されており、ベース1の幅方向に亘る溝状をなすようにように形成されている。凹所1cは、ベース1の他面1dから一面1a側に凹み込んだ溝状をなし、また、溝両端はベース1の長さ方向に沿った縁部1bにおいて外方に開放されている。図示の例では、この凹所1cの形成位置でもベース1の肉厚寸法を一定にさせており、これにより凹所1cの形成位置においてベース1の一面1aは隆起されている。また、かかる凹所1cの溝幅は、ベース1の幅方向中程の位置に近づくに連れて狭まるように形成されている。これによりこの実施の形態にあっては、燃料タンクTの外面Taに外側に突き出すように形成された前記突出部としてのビード部Tbを、かかる凹所1cに納めることで、遮蔽部材Iの張り込みに先立ち、燃料タンクTの外面Taの所定の位置に第一パーツFを位置づけることができるようになっている。(図1(a))
【0027】
また、この実施の形態にあっては、かかる第一パーツFの挿入凸部2に、遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ibへの挿入終了状態において、この接続用貫通孔Ibにおける遮蔽部材Iの外面Ic側に位置される孔縁に引っかかる仮止め部2eが形成されている。図示の例では、かかる仮止め部2eは挿入凸部2における前記筒他端2bと前記掛合孔2dとの間から外側に突き出す爪体として構成されている。すなわち、図示の例では、かかる仮止め部2eも挿入凸部2の直径方向両側にそれぞれ形成されている。両仮止め部2e、2eの突きだし先端2f間の寸法は、遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ibの内径よりもやや大きく、また、仮止め部2eとベース1の一面1aとの間の距離は遮蔽部材Iの厚さと略等しくなるようにしてある。これにより、この実施の形態にあっては、燃料タンクTの外面Taに配置された第一パーツFの挿入凸部2を遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ibに入れ込ませた状態を、第二パーツMをこの第一パーツFに掛合させる前の状態においても、仮に維持させることができるようになっている。図示の例では、かかる仮止め部2eにおけるベース1に向き合う掛合面2gと背中合わせの位置にある上面は、この仮止め部2eの突きだし先端2fに向かうに連れてこの仮止め部2eの挿入凸部2の筒軸方向に沿った厚さ寸法を漸減させるように傾斜した案内面2hとなっており、遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ibへの挿入凸部2の入れ込みをこの案内面2hによってスムースに行えるようにしてある。図示の例では、マット状をなすインシュレーターI’の接続用貫通孔Ibを仮止め部2eによりやや押し広げるようにしてこの接続用貫通孔Ibに挿入凸部2が入れ込まれ、この仮止め部2eが接続用貫通孔Ibにおける遮蔽部材Iの外面Ic側に位置される孔縁部に至った挿入終了位置で接続用貫通孔Ibのこの孔縁部に仮止め部2eが引っかかりベース1との間で遮蔽部材Iを仮保持するようになっている。(図1(b))
【0028】
一方、第二パーツMは、前記第一パーツFの各挿入凸部2に対する掛合部3を備え、この掛合部3により遮蔽部材Iの外面Ic側から第一パーツFに組み合わされるようになっている。図示の例では、かかる第二パーツMは、細長い板状をなす基板4に、この基板4の一面4aからこの一面4aに直交する向きに突き出した棒状をなす掛合部3を備えさせてなる。かかる掛合部3も基板4の両端部にそれぞれ形成されており、二箇所の掛合部3、3間の間隔は、第一パーツFの二箇所の挿入凸部2、2間の間隔と等しくなるようにしてある。すなわち、図示の例では、第一パーツFの一方の挿入凸部2に第二パーツMの一方の掛合部3が掛合し、かつ、第一パーツFの他方の挿入凸部2に第二パーツMの他方の掛合部3が掛合して、両パーツF、Mが遮蔽部材Iを挟んで組み合わされるようになっている。図示の例では、各掛合部3、3共に、基板4との連接側と反対の筒端を閉塞させた中空の円筒状をなすように構成されている。また各掛合部3、3共に、その直径方向両側にそれぞれ、弾性掛合片3aが備えられている。この弾性掛合片3aは、掛合部3における基板4の長さ方向に沿った縁部4bに向けられた側にそれぞれ設けられている。図示の例では、基板4における掛合部3の備えられた箇所には、基板4の幅方向に沿って長く続くスロット4cが形成されており、掛合部3はこのスロット4cの長さ方向略中程の位置において、このスロット4cを跨ぐようにして基板4に一体に連接されている。掛合部3の基板4との連接側の筒端はこのスロット4cに臨むと共に、掛合部3の直径方向両側にはそれぞれこの筒端から掛合部3の筒軸方向略中程の位置までの長さを持ってこの掛合部3を内外に貫通する二条の割溝3b、3bが形成されており、この二条の割溝3b、3b間がそれぞれ前記弾性掛合片3aとして機能するようにしてある。かかる弾性掛合片3aの外面部には、基板4の側を向いた掛合面3dを形成させる隆起部3cが形成されている。また、掛合部3の直径方向にそれぞれ形成されたかかる弾性掛合片3aの隆起部3cの頂部間の間隔は挿入凸部2の筒他端2b側の内径よりもやや大きくなるようにしてある。そして、遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ibに挿入凸部2を入れ込ませた第一パーツFのこの挿入凸部2に第二パーツMの掛合部3を入れ込んで遮蔽部材Iを挟んで両パーツF、Mを組み合わせる過程において、挿入凸部2の筒他端2bと掛合孔2dとの間の内面に前記隆起部3cが接して弾性掛合片3aは一旦内向きに撓み込まされると共に、弾性掛合片3aの隆起部3cが掛合孔2dに入り込む位置で撓み戻して前記掛合孔2dに掛合するようになっている。図示の例では、かかる隆起部3cは弾性掛合片3aの変形中心側から前記掛合面3dに向かうに連れて次第に外側に張り出すように構成されており、これによって前記撓み込みが円滑に生じるようになっている。また、図示の例では、第二パーツMの基板4の両端は掛合部3を中心とした仮想の円の円弧に沿った外縁を有し、かつ、基板4は中央に向かうに連れて幅を漸減させるように構成されている。
【0029】
この実施の形態にかかるクリップによれば、遮蔽部材Iの燃料タンクTの外面Taへの張り込みに先立って、この外面にベース1における挿入凸部2の形成側と反対の側を接しさせるようにして第一パーツFを配した後、この第一パーツFの挿入凸部2を接続対象となる遮蔽部材Iの各端末部Ia、Iaに形成された接続用貫通孔Ibにそれぞれ入れ込むことで、第一に、燃料タンクTの外面Taに張り込まれる遮蔽部材Iの隣接する端末部Iaを第一部材を介して離間を阻止した状態で接続させることができる。(図1(b))次いで、第二に、このように遮蔽部材Iの端末部Ia間に亘る第一パーツFに第二パーツMの掛合部3を掛合させることにより、両パーツF、Mの間で端末部Iaを挟み込み状に保持して、前記離間の阻止状態をワンタッチ、つまり両パーツF、Mを掛合させるだけで、安定的に維持させることができる。(図1(c))
【0030】
この実施の形態にあっては、特に、第一パーツFの挿入凸部2は内側に第二パーツMの掛合部3を受け入れてこれと掛合される中空体として構成されていることから、遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ib内において第一パーツFと第二パーツMを掛合させて組み合わせることができる。図示の例では、かかる組み合わせ状態において、第二パーツMのスロット4cに第一パーツFの仮止め部2eが納まるようになっている。また、図示の例では、第一パーツFの二つの挿入凸部2、2の一方は、第一パーツFのベース1の長さ方向においてその内径を第二パーツMの掛合部3の外径よりもやや大きく構成されており、(図3)前記組み合わせ作業における二つの挿入凸部2、2への対応する掛合部3の導入作業の容易化が図られている。
【0031】
なお、以上に説明したクリップにおける弾性変形特性を備えるべき箇所へのこの特性の付与は、前記第一パーツF及び第二パーツMを合成樹脂製の射出成型品とすることで、容易に確保させることができる。
【0032】
(第二例)
次いで、図10〜図17に示される第二例について説明する。図10は第二例にかかるクリップを用いた遮蔽部材Iの張り込み手順を示しており、図10(a)に示されるように遮蔽部材Iの両端末部Ia、Iaにそれぞれ形成された接続用貫通孔Ibに第一パーツFの挿入部20を差し入れて燃料タンクTの外側に遮蔽部材Iをセットした後、図10(b)に示されるように第一パーツFに第二パーツMを接続用貫通孔Ibを利用して掛合・組み合わせる。また、図12〜図15は第一パーツFを、図16及び図17は第二パーツMを、それぞれ示している。
【0033】
かかるクリップは、遮蔽部材Iの燃料タンクTの外面Taへの張り込みに先立って、この遮蔽部材Iの各端末部Iaにそれぞれ備えられる二以上の第一パーツFと、この第一パーツFを備えさせた遮蔽部材Iを燃料タンクTの外側にセットさせた状態から各端末部Iaにそれぞれ備えられた第一パーツFに掛合・組み合わされて各端末部Iaの離間を阻止する第二パーツMとから構成されている。
【0034】
第一パーツFは、遮蔽部材Iの内面側に位置される座部10の一面10a側にこの遮蔽部材Iの端末部Iaに形成された接続用貫通孔Ibへの挿入部20を備えてなる。そして、かかる第一パーツFはこの挿入部20を接続用貫通孔Ibに挿入することで遮蔽部材Iの各端末部Iaにそれぞれ備えられるようになっている。図示の例では、遮蔽部材Iは燃料タンクTの外面Taを覆ってこの燃料タンクTの外側にセットされた状態で、燃料タンクTの側部において両端末部Ia、Iaを突き合わせるようになっており、この両端末部Ia、Iaの一方と他方とにそれぞれ第一パーツFは備えられる。すなわち、図示の例では、二個の第一パーツF、Fと、一個の第二パーツMとにより、一組のクリップを構成させている。
【0035】
図示の例では、座部10は、円板状をなすように構成されている。挿入部20は、かかる座部10の一面10aの中央からこの一面10aに直交する向きに突き出すように設けられている。図示の例では、かかる挿入部20は、筒一端20aを前記座部10の一面10aに一体に連接させた円筒状をなす中空体として構成されている。この挿入部20の筒他端20bは開放されており、後述するように、第二パーツMとの組み合わせ時にこの第二パーツMの掛合部30がこの筒他端20bから挿入部20内に差し込まれ受け入れられるようにしてある。
【0036】
かかる第一パーツFの挿入部20に、遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ibへの挿入終了状態において、この接続用貫通孔Ibにおける遮蔽部材Iの外面Ic側に位置される孔縁部に引っかかる仮止め部20cが形成されている。図示の例では、かかる仮止め部20cは挿入部20における前記筒他端20bから側方に突き出す爪体として構成されている。図示の例では、かかる仮止め部20cは挿入部20の直径方向両側にそれぞれ形成されている。両仮止め部20c、20cはそれぞれ、挿入部20の筒軸に直交する向きに、前記筒他端20bから外側に向けて突き出されている。この仮止め部20cにおける座部10に向き合う下面はかかる筒軸の略直交する面となっていると共に、この仮止め部20cの上面はこの仮止め部20cの先端20dに向かうに連れてこの仮止め部の厚さを減少させるように傾斜されている。両仮止め部20c、20cの先端20d間の寸法は、遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ibの内径よりもやや大きく、また、仮止め部20cと座部10の一面10aとの間の距離は遮蔽部材Iの厚さと略等しくなるようにしてある。また、挿入部20における両仮止め部20c、20c間にある箇所には、その筒他端20b側を左右に分割する割溝20eが形成されており、両仮止め部20c、20cの形成箇所は、両仮止め部20c、20cの先端20d間の距離を狭めさせる内向きの撓み変形を生じるように構成されている。これにより、この実施の形態にあっては、第一パーツFの挿入部20を遮蔽部材Iの内面側(燃料タンクTの外面Taへの添装側)からその接続用貫通孔Ibに入れ込ませた状態を、第二パーツMをこの第一パーツFに掛合させる前の状態において、維持させることができるようになっている。図示の例では、かかる仮止め部20cにおける前記上面の傾斜により遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ibへの挿入部20の入れ込みをスムースに行えるようにしてある。図示の例では、マット状をなすインシュレーターI’の接続用貫通孔Ibを仮止め部20cによりやや押し広げるようにしてこの接続用貫通孔Ibに挿入部20が入れ込まれ、この仮止め部20cが接続用貫通孔Ibにおける遮蔽部材Iの外面Ic側に位置される孔縁部に至った挿入終了位置で接続用貫通孔Ibのこの孔縁部に仮止め部20cが引っかかり座部10との間で遮蔽部材Iを挟み込むようになってこの遮蔽部材Iに第一パーツFが簡単には分離しない状態で備えられるようになっている。(図10(a))
【0037】
また、図示の例では、かかる第一パーツFにおける両仮止め部20c、20cと座部10との間にはぞれぞれ、後述する第二パーツMの掛合部30に対する被掛合部20fが形成されている。図示の例では、かかる被掛合部20fは、仮止め部20cの直下位置において、挿入部20の筒軸に沿った縦向きの割溝20gをこの挿入部20の周方向に間隔を開けて二条設けると共に、この二条の縦向きの割溝20g、20gの溝下端間に亘る横向きの割溝20hを設けることで形成された挿入部20の一部でもある弾性片20iの下端内面部に、突出部20jを形成させてなる。一対の弾性片20i、20iの突出部20jの先端間の距離は、後述する第二パーツMの掛合部30の頸部30bの太さと略等しいが、頭部30a及び胴部30cの太さよりも小さくなっている。かかる突出部20jにおける挿入部20の筒他端20bに向けられた上面は、この突出部20jの先端に向かうに連れて次第に挿入部20の内径を狭める向きに傾斜しており、挿入部20内に第二パーツMの掛合部30を差し込ませたときにこの上面の傾斜により、突出部20jが掛合部30の頸部30bに納まる差し込み終了位置に至るまでは、掛合部30の頭部30aに押されて弾性片20iは外向きにスムースに撓み出されるようになっている。
【0038】
また、図示の例では、挿入部20の外側であって前記弾性片20iを挟んだ両側にはそれぞれ、座部10に下端を一定に連接させて前記筒他端20b側に延びるリブ20kが形成されている。
【0039】
一方、第二パーツMは、接続させ合わされる遮蔽部材Iの端末部Ia間に亘る基板40に、第一パーツFの挿入部20に対する掛合部30を備え、この掛合部30により遮蔽部材Iの外面Ic側から遮蔽部材Iの各端末部Iaに備えられた第一パーツFに組み合わされるようになっている。基板40は、接続させ合わされる端末部Ia間に亘る大きさを備えるものであれば、その形状や大きさは必要に応じて変更させて構わない。また、接続させ合わされる端末部Iaに接続用貫通孔Ibが複数ある場合には、これに対応した数の掛合部30を基板40に備えさせて、第二パーツMを構成させても構わない。
【0040】
図示の例では、かかる第二パーツMは、細長い板状をなす基板40に、この基板40の一面40aからこの一面40aに直交する向きに突き出した軸状をなす掛合部30を備えさせてなる。かかる掛合部30は基板40の両端部にそれぞれ形成されており、二箇所の掛合部30、30間の間隔は、突き合わされる端末部Ia、Iaに形成された接続用貫通孔Ib間の距離と等しくなるようにしてある。すなわち、図示の例では、遮蔽部材Iの突き合わされる端末部Iaの一方に備えられた第一パーツFの挿入部20に第二パーツMの一方の掛合部30が掛合し、かつ、遮蔽部材Iの突き合わされる端末部Iaの他方に備えられた第一パーツFの挿入部20に第二パーツMの他方の掛合部30が掛合して、両パーツF、Mが遮蔽部材Iを挟んで組み合わされ、かつ、第二パーツMによりかかる端末部Iaの離間が阻止されるようになっている。
【0041】
図示の例では、各掛合部30、30共に、頭部30aと頸部30bと胴部30cとを備えている。頭部30aは頭頂側を小径側にした截頭円錐状をなすように構成されている。胴部30cは一端を基板40の一面に一体に接合させると共に、その直径方向両側に軸方向に沿ったリブ状部30dを有している。頸部30bは頭部30aと胴部30cの他端とを連接させている。遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ibに挿入部20を入れ込ませた第一パーツFのこの挿入部20に第二パーツMの掛合部30を入れ込んで遮蔽部材Iを挟んで両パーツF、Mを組み合わせる過程において、挿入部20の被掛合部20fを構成する突出部20jに前記頭部30aが接してこの被掛合部20fを構成する弾性片20iは一旦外向きに撓み出されると共に、この突出部20jが頸部30bに納まる位置で撓み戻して、掛合部30と被掛合部20fとが掛合されるようになっている。図示の例では、かかる頭部30aを截頭円錐状に構成させることによっても、前記撓み込みが円滑に生じるようになっている。
【0042】
この実施の形態にかかるクリップによれば、遮蔽部材Iの燃料タンクTの外面Taへの張り込みに先立って、この遮蔽部材Iの各端末部Iaに第一パーツFを備えさせた後、遮蔽部材Iを燃料タンクTの外面Taを覆ってこの燃料タンクTの外側にセットさせた状態から、セットされた遮蔽部材Iの各端末部Ia、Iaに備えられた第一パーツFに第二パーツMの掛合部30を掛合させることにより、両パーツF、Mの間で端末部Iaを挟み込み状に保持して各端末部Iaの離間を阻止することができる。また、かかるクリップにあっては、遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ibに備えられる第一パーツF同士は各々別体とされていることから、燃料タンクTの外面Taの形状如何に関わらず、各第一パーツFの座部10は燃料タンクTの外面Taに密着させ易く、遮蔽部材Iの張り込み状態をクリップにより無理なく維持させることができる。例えば、遮蔽部材Iの端末部Iaが突き合わされる箇所において燃料タンクTの外面Taが最も外側に張り出すようにこの外面Taが湾曲されているような場合でも、この端末部Iaが突き合わされる箇所の両側においてそれぞれ第一パーツFの座部10を燃料タンクTの外面Taに密着させることができ、また、第二パーツMはこれよりも外側において場合によっては燃料タンクTの湾曲に倣った撓みを生じながら各第一パーツFに掛合されて各第一パーツF、F間の離間、つまり、遮蔽部材Iの端末部Ia間の離間を阻止する。
【0043】
この実施の形態にあっては、特に、第一パーツFの挿入部20は内側に第二パーツMの掛合部30を受け入れてこれと掛合される中空体として構成されていることから、遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ib内において第一パーツFと第二パーツMを掛合させて組み合わせることができる。
【0044】
なお、以上に説明したクリップにおける弾性変形特性を備えるべき箇所へのこの特性の付与は、前記第一パーツF及び第二パーツMを合成樹脂製の射出成型品とすることで、容易に確保させることができる。
【符号の説明】
【0045】
T 燃料タンク
Ta 外面
I 遮蔽部材
Ia 端末部
F 第一パーツ
M 第二パーツ
1 ベース
2 挿入凸部
3 掛合部
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料タンクの保護のためにこの燃料タンクの外面を覆うように備えられる面状をなす遮蔽部材の端末部を接続させるために用いられるクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの燃料タンクの外面には、この燃料タンクを保護するために、典型的には、燃料タンクを熱から保護したり、物理的な衝撃や衝突から燃料タンクを保護するために、面状をなす遮蔽部材が張り込まれることが少なくない。
【0003】
図18はその典型的な一つの手法を示したものである。この手法では、遮蔽部材Iにより燃料タンクTを包み、その端末部Ia同士を接着して燃料タンクTの外面Taをかかる遮蔽部材Iで覆うようにしている。
【0004】
また、燃料タンクの外面に溶着されるベース部材に、板状をなす遮蔽部材に取り付けたクリップ部材を嵌め付けて、燃料タンクの外面をかかる遮蔽部材で覆うようにしたものもある。(特許文献1参照)
【0005】
しかるに、前者の手法では、接着剤Pの塗布を要すると共に、端末部の接続はかかる接着にのみ依存されることから、燃料タンクの膨張などを考慮すると、長期に亘り端末部の接続状態を安定的に保ち難い。
【0006】
一方、後者の手法においても、遮蔽部材の張り込みに先立ち、燃料タンクへのベース部材の溶着を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−331643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の燃料タンクの外側に張り込まれる遮蔽部材のこの張り込み状態を容易に且つ安定的に維持できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、第一の観点から、クリップを、燃料タンクの外面を覆うように備えられる面状をなす遮蔽部材の端末部の接続用クリップであって、
接続させ合わされる遮蔽部材の端末部間に亘るベースに、各端末部に形成された接続用貫通孔への挿入凸部を備えて、遮蔽部材の内面側に位置される第一パーツと、
この第一パーツの各挿入凸部に対する掛合部を備え、この掛合部により遮蔽部材の外面側から第一パーツに組み合わされる第二パーツとからなるものとした。
【0010】
かかる構成によれば、遮蔽部材の燃料タンクの外面への張り込みに先立って、この外面にベースにおける挿入凸部の形成側と反対の側を接しさせるようにして第一パーツを配した後、この第一パーツの挿入凸部を接続対象となる遮蔽部材の各端末部に形成された接続用貫通孔にそれぞれ入れ込むことで、第一に、燃料タンクの外面に張り込まれる遮蔽部材の隣接する端末部を第一部材を介して離間を阻止した状態で接続させることができる。次いで、第二に、このように遮蔽部材の端末部間に亘る第一パーツに第二パーツの掛合部を掛合させることにより、両パーツの間で端末部を挟み込み状に保持して、前記離間の阻止状態を両パーツを掛合させるだけで安定的に維持させることができる。
【0011】
前記第一パーツの挿入凸部に、さらに、遮蔽部材の接続用貫通孔への挿入終了状態において、この接続用貫通孔における遮蔽部材の外面側に位置される孔縁に引っかかる仮止め部を形成させておけば、燃料タンクの外面に配置された第一パーツの挿入凸部を遮蔽部材の接続用貫通孔に入れ込ませた状態を、第二パーツをこの第一パーツに掛合させる前の状態においても、仮に維持させることができる。
【0012】
前記第一パーツの挿入凸部を、内側に第二パーツの掛合部を受け入れてこれと掛合される中空体として構成させておくこともある。このようにした場合、遮蔽部材の接続用貫通孔内において第一パーツと第二パーツを掛合させて組み合わせることができる。
【0013】
前記第一パーツのベースに、さらに、燃料タンクの外面に形成された突出部を納めてこの突出部の形成位置に第一パーツを位置づけさせる凹所を形成させておけば、前記突出部部をかかる凹所に納めることで、遮蔽部材の張り込みに先立ち、燃料タンクの外面の所定の位置に第一パーツを位置づけることができる。
【0014】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、第二の観点から、クリップを、燃料タンクの外面を覆うように備えられる面状をなす遮蔽部材の端末部の接続用クリップであって、
遮蔽部材の内面側に位置される座部の一面側にこの遮蔽部材の端末部に形成された接続用貫通孔への挿入部を備えて遮蔽部材の各端末部にそれぞれ備えられる第一パーツと、
接続させ合わされる遮蔽部材の端末部間に亘る基板に、第一パーツの挿入部に対する掛合部を備え、この掛合部により遮蔽部材の外面側から遮蔽部材の各端末部に備えられた第一パーツに組み合わされる第二パーツとからなるものとした。
【0015】
かかる構成によれば、遮蔽部材の燃料タンクの外面への張り込みに先立って、この遮蔽部材の各端末部に第一パーツを備えさせた後、遮蔽部材を燃料タンクの外面を覆ってこの燃料タンクの外側にセットさせた状態から、セットされた遮蔽部材の各端末部に備えられた第一パーツに第二パーツの掛合部を掛合させることにより、両パーツの間で端末部を挟み込み状に保持して各端末部の離間を阻止することができる。また、かかるクリップにあっては、遮蔽部材の接続用貫通孔に備えられる第一パーツ同士は各々別体とされていることから、燃料タンクの外面の形状如何に関わらず、各第一パーツの座部は燃料タンクの外面に密着させ易く、遮蔽部材の張り込み状態をクリップにより無理なく維持させることができる。
【0016】
前記第一パーツの挿入凸部に、さらに、遮蔽部材の接続用貫通孔への挿入終了状態において、この接続用貫通孔における遮蔽部材の外面側に位置される孔縁に引っかかる仮止め部を形成させておけば、第一パーツの挿入凸部を遮蔽部材の接続用貫通孔に入れ込ませた状態を、第二パーツをこの第一パーツに掛合させる前の状態においても、維持させることができる。
【0017】
前記第一パーツの挿入凸部を、内側に第二パーツの掛合部を受け入れてこれと掛合される中空体として構成させておくこともある。このようにした場合、遮蔽部材の接続用貫通孔内において第一パーツと第二パーツを掛合させて組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、燃料タンクの外側に張り込まれる遮蔽部材のこの張り込み状態を第一パーツと第二パーツとの掛合をもって容易に、且つ第一パーツの挿入凸部を遮蔽部材の接続用貫通孔に入れ込ませることをもって安定的に、維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、燃料タンクに第一例にかかるクリップを利用して遮蔽部材を張り込む手順を示した断面構成図である。
【図2】図2は第一例にかかるクリップの分離斜視構成図である。
【図3】図3は第一例にかかるクリップの第一パーツの平面図である。
【図4】図4は第一例にかかるクリップの第一パーツの底面図である。
【図5】図5は図3におけるA−A線位置での断面図である。
【図6】図6は図3におけるB−B線位置での断面図である。
【図7】図7は第一例にかかるクリップの第二パーツの平面図である。
【図8】図8は図7におけるC−C線位置での断面図である。
【図9】図9は第一例にかかるクリップの第二パーツの底面図である。
【図10】図10は、燃料タンクに第二例にかかるクリップを利用して遮蔽部材を張り込む手順を示した断面構成図である。
【図11】図11は第二例にかかるクリップの分離斜視構成図である。
【図12】図12は第二例にかかるクリップの第一パーツの平面図である。
【図13】図13は第二例にかかるクリップの第一パーツの側面図である。
【図14】図14は図12におけるD−D線位置での断面図である。
【図15】図15は図13におけるE−E線位置での断面図である。
【図16】図16は第二例にかかるクリップの第二パーツの平面図である。
【図17】図17は第二例にかかるクリップの第二パーツの側面図である。
【図18】図18は従来の遮蔽部材の張り込みの手法を示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1〜図18に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。図1〜図9はこの発明を適用して構成されたクリップの第一例を、図10〜図17はこの発明を適用して構成されたクリップの第二例を、ぞれぞれ示している。
【0021】
この実施の形態にかかるクリップは、燃料タンクTの保護のためにこの燃料タンクTの外面Taを覆うように備えられる面状(つまり、シート状、マット状、板状などの面的な広がりを持った)をなす遮蔽部材Iの端末部Iaを接続させるために用いられるものである。図示の例では、かかる遮蔽部材Iとしてのマット状をなすインシュレーターI’の端末部Iaを、かかるクリップで接続させるようにしている。すなわち、図示の例では、燃料タンクTの外面Taを覆うように配されるインシュレーターI’の二つの端末部Ia、Iaを、この二つの端末部Ia、Iaに離間を生じさせないように、かかるクリップで接続させるようにしている。典型的には、かかるクリップは、燃料タンクTを一枚のインシュレーターI’で包むように覆った場合のこの一枚のインシュレーターI’の両端末部Ia、Iaの接続のために用いられる。あるいはまた、かかるクリップは、燃料タンクTの外面Taを複数枚のインシュレーターI’で分割して覆った場合の、隣り合うインシュレーターI’の隣り合う端末部Iaの接続のために用いられる。図示の例では、後述のように、二つの端末部Ia、Iaの接続をなすように構成されているが、例えば、端末部Iaを隣接させて配される三枚以上のインシュレーターI’の各端末部Iaを単一のクリップをもって接続させるようにかかるクリップは構成可能である。
【0022】
(第一例)
先ず、図1〜図9に示される第一例について説明する。図1は第一例にかかるクリップを用いた遮蔽部材Iの張り込み手順を示しており、図1(a)に示されるように第一パーツFを配置させた後、図1(b)に示されるように遮蔽部材Iの両端末部Ia、Iaに形成された接続用貫通孔Ibに第一パーツFの挿入凸部2を差し入れ、最後に図1(c)に示されるように第一パーツFに第二パーツMを接続用貫通孔Ibを利用して掛合・組み合わせる。また、図3〜図6は第一パーツFを、図7〜図9は第二パーツMを、それぞれ示している。
【0023】
かかるクリップは、遮蔽部材Iの燃料タンクTの外面Taへの張り込みに先立って、この外面に配置される第一パーツFと、この第一パーツFに遮蔽部材Iの端末部Iaを係止させて端末部Ia間の離間を阻止した状態からこの第一パーツFに掛合・組み合わされて第一パーツFとの間で端末部Iaを挟み込み状に保持する第二パーツMとから構成されている。
【0024】
第一パーツFは、接続させ合わされる遮蔽部材Iの端末部Ia間に亘るベース1に、各端末部Iaに形成された接続用貫通孔Ibへの挿入凸部2を設けさせてなる。図示の例では、ベース1は、外郭形状を略小判形状とした板状をなすように構成されている。挿入凸部2は、かかるベース1の一面1aからこの一面1aに直交する向きに突き出すように設けられている。図示の例では、挿入凸部2は、かかるベース1の両端部にそれぞれ形成されている。すなわち、図示の例では、ベース1は二つの挿入凸部2、2を備えており、接続され合わされる一方の端末部Iaに形成された接続用貫通孔Ibに挿入凸部2の一方を入れ込ませ、かつ、接続され合わされる他方の端末部Iaに形成された接続用貫通孔Ibに挿入凸部2の他方を入れ込ませることで、両端末部Ia、Ia間の離間を阻止するようになっている。ベース1は、接続させ合わされる端末部Ia間に亘る大きさを備えるものであれば、その形状や大きさは必要に応じて変更させて構わない。また、接続させ合わされる端末部Iaに接続用貫通孔Ibが複数ある場合には、これに対応した数の挿入凸部2をベース1に備えさせて、第一パーツFを構成させても構わない。
【0025】
図示の例では、二つのかかる挿入凸部2、2はいずれも、筒一端2aを前記ベース1の一面1aに一体に連接させた円筒状をなす中空体として構成されている。この挿入凸部2の筒他端2bは開放されており、後述するように、第二パーツMとの組み合わせ時にこの第二パーツMの掛合部3がこの筒他端2bから挿入凸部2内に差し込まれ受け入れられるようにしてある。挿入凸部2は、筒一端2aから筒他端2bに向かうに連れて、外径を漸減させるように構成されている。また、挿入凸部2の外面部には、筒両端2a、2b間に亘る溝2cが、隣り合う溝2cとの間に間隔を開けて、挿入凸部2の筒軸を巡る向きに複数形成されている。また、挿入凸部2の側部には、二箇所の窓孔状をなす掛合孔2dが形成されている。この二箇所の掛合孔2d、2dは、挿入凸部2におけるベース1の長さ方向に沿った縁部1bに向けられた側部にそれぞれ設けられており、挿入凸部2はその直径方向両側にそれぞれ掛合孔2dを備えるようになっている。各掛合孔2d、2dはそれぞれ、前記溝2c内に設けられると共に、挿入凸部2の筒軸方向に長い略長方形の孔縁形状を持つように構成されている。また、各掛合孔2dと挿入凸部2の筒一端2aとの間には、各掛合孔2dと挿入凸部2の筒他端2bとの間よりも大きい間隔が形成されている。
【0026】
また、この実施の形態にあっては、かかる第一パーツFのベース1に、燃料タンクTの外面Taに形成された突出部を納めてこの突出部の形成位置に第一パーツFを位置づけさせる凹所1cが形成されている。図示の例では、かかる凹所1cは、ベース1における二つの挿入凸部2、2の間となる箇所に形成されており、ベース1の幅方向に亘る溝状をなすようにように形成されている。凹所1cは、ベース1の他面1dから一面1a側に凹み込んだ溝状をなし、また、溝両端はベース1の長さ方向に沿った縁部1bにおいて外方に開放されている。図示の例では、この凹所1cの形成位置でもベース1の肉厚寸法を一定にさせており、これにより凹所1cの形成位置においてベース1の一面1aは隆起されている。また、かかる凹所1cの溝幅は、ベース1の幅方向中程の位置に近づくに連れて狭まるように形成されている。これによりこの実施の形態にあっては、燃料タンクTの外面Taに外側に突き出すように形成された前記突出部としてのビード部Tbを、かかる凹所1cに納めることで、遮蔽部材Iの張り込みに先立ち、燃料タンクTの外面Taの所定の位置に第一パーツFを位置づけることができるようになっている。(図1(a))
【0027】
また、この実施の形態にあっては、かかる第一パーツFの挿入凸部2に、遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ibへの挿入終了状態において、この接続用貫通孔Ibにおける遮蔽部材Iの外面Ic側に位置される孔縁に引っかかる仮止め部2eが形成されている。図示の例では、かかる仮止め部2eは挿入凸部2における前記筒他端2bと前記掛合孔2dとの間から外側に突き出す爪体として構成されている。すなわち、図示の例では、かかる仮止め部2eも挿入凸部2の直径方向両側にそれぞれ形成されている。両仮止め部2e、2eの突きだし先端2f間の寸法は、遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ibの内径よりもやや大きく、また、仮止め部2eとベース1の一面1aとの間の距離は遮蔽部材Iの厚さと略等しくなるようにしてある。これにより、この実施の形態にあっては、燃料タンクTの外面Taに配置された第一パーツFの挿入凸部2を遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ibに入れ込ませた状態を、第二パーツMをこの第一パーツFに掛合させる前の状態においても、仮に維持させることができるようになっている。図示の例では、かかる仮止め部2eにおけるベース1に向き合う掛合面2gと背中合わせの位置にある上面は、この仮止め部2eの突きだし先端2fに向かうに連れてこの仮止め部2eの挿入凸部2の筒軸方向に沿った厚さ寸法を漸減させるように傾斜した案内面2hとなっており、遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ibへの挿入凸部2の入れ込みをこの案内面2hによってスムースに行えるようにしてある。図示の例では、マット状をなすインシュレーターI’の接続用貫通孔Ibを仮止め部2eによりやや押し広げるようにしてこの接続用貫通孔Ibに挿入凸部2が入れ込まれ、この仮止め部2eが接続用貫通孔Ibにおける遮蔽部材Iの外面Ic側に位置される孔縁部に至った挿入終了位置で接続用貫通孔Ibのこの孔縁部に仮止め部2eが引っかかりベース1との間で遮蔽部材Iを仮保持するようになっている。(図1(b))
【0028】
一方、第二パーツMは、前記第一パーツFの各挿入凸部2に対する掛合部3を備え、この掛合部3により遮蔽部材Iの外面Ic側から第一パーツFに組み合わされるようになっている。図示の例では、かかる第二パーツMは、細長い板状をなす基板4に、この基板4の一面4aからこの一面4aに直交する向きに突き出した棒状をなす掛合部3を備えさせてなる。かかる掛合部3も基板4の両端部にそれぞれ形成されており、二箇所の掛合部3、3間の間隔は、第一パーツFの二箇所の挿入凸部2、2間の間隔と等しくなるようにしてある。すなわち、図示の例では、第一パーツFの一方の挿入凸部2に第二パーツMの一方の掛合部3が掛合し、かつ、第一パーツFの他方の挿入凸部2に第二パーツMの他方の掛合部3が掛合して、両パーツF、Mが遮蔽部材Iを挟んで組み合わされるようになっている。図示の例では、各掛合部3、3共に、基板4との連接側と反対の筒端を閉塞させた中空の円筒状をなすように構成されている。また各掛合部3、3共に、その直径方向両側にそれぞれ、弾性掛合片3aが備えられている。この弾性掛合片3aは、掛合部3における基板4の長さ方向に沿った縁部4bに向けられた側にそれぞれ設けられている。図示の例では、基板4における掛合部3の備えられた箇所には、基板4の幅方向に沿って長く続くスロット4cが形成されており、掛合部3はこのスロット4cの長さ方向略中程の位置において、このスロット4cを跨ぐようにして基板4に一体に連接されている。掛合部3の基板4との連接側の筒端はこのスロット4cに臨むと共に、掛合部3の直径方向両側にはそれぞれこの筒端から掛合部3の筒軸方向略中程の位置までの長さを持ってこの掛合部3を内外に貫通する二条の割溝3b、3bが形成されており、この二条の割溝3b、3b間がそれぞれ前記弾性掛合片3aとして機能するようにしてある。かかる弾性掛合片3aの外面部には、基板4の側を向いた掛合面3dを形成させる隆起部3cが形成されている。また、掛合部3の直径方向にそれぞれ形成されたかかる弾性掛合片3aの隆起部3cの頂部間の間隔は挿入凸部2の筒他端2b側の内径よりもやや大きくなるようにしてある。そして、遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ibに挿入凸部2を入れ込ませた第一パーツFのこの挿入凸部2に第二パーツMの掛合部3を入れ込んで遮蔽部材Iを挟んで両パーツF、Mを組み合わせる過程において、挿入凸部2の筒他端2bと掛合孔2dとの間の内面に前記隆起部3cが接して弾性掛合片3aは一旦内向きに撓み込まされると共に、弾性掛合片3aの隆起部3cが掛合孔2dに入り込む位置で撓み戻して前記掛合孔2dに掛合するようになっている。図示の例では、かかる隆起部3cは弾性掛合片3aの変形中心側から前記掛合面3dに向かうに連れて次第に外側に張り出すように構成されており、これによって前記撓み込みが円滑に生じるようになっている。また、図示の例では、第二パーツMの基板4の両端は掛合部3を中心とした仮想の円の円弧に沿った外縁を有し、かつ、基板4は中央に向かうに連れて幅を漸減させるように構成されている。
【0029】
この実施の形態にかかるクリップによれば、遮蔽部材Iの燃料タンクTの外面Taへの張り込みに先立って、この外面にベース1における挿入凸部2の形成側と反対の側を接しさせるようにして第一パーツFを配した後、この第一パーツFの挿入凸部2を接続対象となる遮蔽部材Iの各端末部Ia、Iaに形成された接続用貫通孔Ibにそれぞれ入れ込むことで、第一に、燃料タンクTの外面Taに張り込まれる遮蔽部材Iの隣接する端末部Iaを第一部材を介して離間を阻止した状態で接続させることができる。(図1(b))次いで、第二に、このように遮蔽部材Iの端末部Ia間に亘る第一パーツFに第二パーツMの掛合部3を掛合させることにより、両パーツF、Mの間で端末部Iaを挟み込み状に保持して、前記離間の阻止状態をワンタッチ、つまり両パーツF、Mを掛合させるだけで、安定的に維持させることができる。(図1(c))
【0030】
この実施の形態にあっては、特に、第一パーツFの挿入凸部2は内側に第二パーツMの掛合部3を受け入れてこれと掛合される中空体として構成されていることから、遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ib内において第一パーツFと第二パーツMを掛合させて組み合わせることができる。図示の例では、かかる組み合わせ状態において、第二パーツMのスロット4cに第一パーツFの仮止め部2eが納まるようになっている。また、図示の例では、第一パーツFの二つの挿入凸部2、2の一方は、第一パーツFのベース1の長さ方向においてその内径を第二パーツMの掛合部3の外径よりもやや大きく構成されており、(図3)前記組み合わせ作業における二つの挿入凸部2、2への対応する掛合部3の導入作業の容易化が図られている。
【0031】
なお、以上に説明したクリップにおける弾性変形特性を備えるべき箇所へのこの特性の付与は、前記第一パーツF及び第二パーツMを合成樹脂製の射出成型品とすることで、容易に確保させることができる。
【0032】
(第二例)
次いで、図10〜図17に示される第二例について説明する。図10は第二例にかかるクリップを用いた遮蔽部材Iの張り込み手順を示しており、図10(a)に示されるように遮蔽部材Iの両端末部Ia、Iaにそれぞれ形成された接続用貫通孔Ibに第一パーツFの挿入部20を差し入れて燃料タンクTの外側に遮蔽部材Iをセットした後、図10(b)に示されるように第一パーツFに第二パーツMを接続用貫通孔Ibを利用して掛合・組み合わせる。また、図12〜図15は第一パーツFを、図16及び図17は第二パーツMを、それぞれ示している。
【0033】
かかるクリップは、遮蔽部材Iの燃料タンクTの外面Taへの張り込みに先立って、この遮蔽部材Iの各端末部Iaにそれぞれ備えられる二以上の第一パーツFと、この第一パーツFを備えさせた遮蔽部材Iを燃料タンクTの外側にセットさせた状態から各端末部Iaにそれぞれ備えられた第一パーツFに掛合・組み合わされて各端末部Iaの離間を阻止する第二パーツMとから構成されている。
【0034】
第一パーツFは、遮蔽部材Iの内面側に位置される座部10の一面10a側にこの遮蔽部材Iの端末部Iaに形成された接続用貫通孔Ibへの挿入部20を備えてなる。そして、かかる第一パーツFはこの挿入部20を接続用貫通孔Ibに挿入することで遮蔽部材Iの各端末部Iaにそれぞれ備えられるようになっている。図示の例では、遮蔽部材Iは燃料タンクTの外面Taを覆ってこの燃料タンクTの外側にセットされた状態で、燃料タンクTの側部において両端末部Ia、Iaを突き合わせるようになっており、この両端末部Ia、Iaの一方と他方とにそれぞれ第一パーツFは備えられる。すなわち、図示の例では、二個の第一パーツF、Fと、一個の第二パーツMとにより、一組のクリップを構成させている。
【0035】
図示の例では、座部10は、円板状をなすように構成されている。挿入部20は、かかる座部10の一面10aの中央からこの一面10aに直交する向きに突き出すように設けられている。図示の例では、かかる挿入部20は、筒一端20aを前記座部10の一面10aに一体に連接させた円筒状をなす中空体として構成されている。この挿入部20の筒他端20bは開放されており、後述するように、第二パーツMとの組み合わせ時にこの第二パーツMの掛合部30がこの筒他端20bから挿入部20内に差し込まれ受け入れられるようにしてある。
【0036】
かかる第一パーツFの挿入部20に、遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ibへの挿入終了状態において、この接続用貫通孔Ibにおける遮蔽部材Iの外面Ic側に位置される孔縁部に引っかかる仮止め部20cが形成されている。図示の例では、かかる仮止め部20cは挿入部20における前記筒他端20bから側方に突き出す爪体として構成されている。図示の例では、かかる仮止め部20cは挿入部20の直径方向両側にそれぞれ形成されている。両仮止め部20c、20cはそれぞれ、挿入部20の筒軸に直交する向きに、前記筒他端20bから外側に向けて突き出されている。この仮止め部20cにおける座部10に向き合う下面はかかる筒軸の略直交する面となっていると共に、この仮止め部20cの上面はこの仮止め部20cの先端20dに向かうに連れてこの仮止め部の厚さを減少させるように傾斜されている。両仮止め部20c、20cの先端20d間の寸法は、遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ibの内径よりもやや大きく、また、仮止め部20cと座部10の一面10aとの間の距離は遮蔽部材Iの厚さと略等しくなるようにしてある。また、挿入部20における両仮止め部20c、20c間にある箇所には、その筒他端20b側を左右に分割する割溝20eが形成されており、両仮止め部20c、20cの形成箇所は、両仮止め部20c、20cの先端20d間の距離を狭めさせる内向きの撓み変形を生じるように構成されている。これにより、この実施の形態にあっては、第一パーツFの挿入部20を遮蔽部材Iの内面側(燃料タンクTの外面Taへの添装側)からその接続用貫通孔Ibに入れ込ませた状態を、第二パーツMをこの第一パーツFに掛合させる前の状態において、維持させることができるようになっている。図示の例では、かかる仮止め部20cにおける前記上面の傾斜により遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ibへの挿入部20の入れ込みをスムースに行えるようにしてある。図示の例では、マット状をなすインシュレーターI’の接続用貫通孔Ibを仮止め部20cによりやや押し広げるようにしてこの接続用貫通孔Ibに挿入部20が入れ込まれ、この仮止め部20cが接続用貫通孔Ibにおける遮蔽部材Iの外面Ic側に位置される孔縁部に至った挿入終了位置で接続用貫通孔Ibのこの孔縁部に仮止め部20cが引っかかり座部10との間で遮蔽部材Iを挟み込むようになってこの遮蔽部材Iに第一パーツFが簡単には分離しない状態で備えられるようになっている。(図10(a))
【0037】
また、図示の例では、かかる第一パーツFにおける両仮止め部20c、20cと座部10との間にはぞれぞれ、後述する第二パーツMの掛合部30に対する被掛合部20fが形成されている。図示の例では、かかる被掛合部20fは、仮止め部20cの直下位置において、挿入部20の筒軸に沿った縦向きの割溝20gをこの挿入部20の周方向に間隔を開けて二条設けると共に、この二条の縦向きの割溝20g、20gの溝下端間に亘る横向きの割溝20hを設けることで形成された挿入部20の一部でもある弾性片20iの下端内面部に、突出部20jを形成させてなる。一対の弾性片20i、20iの突出部20jの先端間の距離は、後述する第二パーツMの掛合部30の頸部30bの太さと略等しいが、頭部30a及び胴部30cの太さよりも小さくなっている。かかる突出部20jにおける挿入部20の筒他端20bに向けられた上面は、この突出部20jの先端に向かうに連れて次第に挿入部20の内径を狭める向きに傾斜しており、挿入部20内に第二パーツMの掛合部30を差し込ませたときにこの上面の傾斜により、突出部20jが掛合部30の頸部30bに納まる差し込み終了位置に至るまでは、掛合部30の頭部30aに押されて弾性片20iは外向きにスムースに撓み出されるようになっている。
【0038】
また、図示の例では、挿入部20の外側であって前記弾性片20iを挟んだ両側にはそれぞれ、座部10に下端を一定に連接させて前記筒他端20b側に延びるリブ20kが形成されている。
【0039】
一方、第二パーツMは、接続させ合わされる遮蔽部材Iの端末部Ia間に亘る基板40に、第一パーツFの挿入部20に対する掛合部30を備え、この掛合部30により遮蔽部材Iの外面Ic側から遮蔽部材Iの各端末部Iaに備えられた第一パーツFに組み合わされるようになっている。基板40は、接続させ合わされる端末部Ia間に亘る大きさを備えるものであれば、その形状や大きさは必要に応じて変更させて構わない。また、接続させ合わされる端末部Iaに接続用貫通孔Ibが複数ある場合には、これに対応した数の掛合部30を基板40に備えさせて、第二パーツMを構成させても構わない。
【0040】
図示の例では、かかる第二パーツMは、細長い板状をなす基板40に、この基板40の一面40aからこの一面40aに直交する向きに突き出した軸状をなす掛合部30を備えさせてなる。かかる掛合部30は基板40の両端部にそれぞれ形成されており、二箇所の掛合部30、30間の間隔は、突き合わされる端末部Ia、Iaに形成された接続用貫通孔Ib間の距離と等しくなるようにしてある。すなわち、図示の例では、遮蔽部材Iの突き合わされる端末部Iaの一方に備えられた第一パーツFの挿入部20に第二パーツMの一方の掛合部30が掛合し、かつ、遮蔽部材Iの突き合わされる端末部Iaの他方に備えられた第一パーツFの挿入部20に第二パーツMの他方の掛合部30が掛合して、両パーツF、Mが遮蔽部材Iを挟んで組み合わされ、かつ、第二パーツMによりかかる端末部Iaの離間が阻止されるようになっている。
【0041】
図示の例では、各掛合部30、30共に、頭部30aと頸部30bと胴部30cとを備えている。頭部30aは頭頂側を小径側にした截頭円錐状をなすように構成されている。胴部30cは一端を基板40の一面に一体に接合させると共に、その直径方向両側に軸方向に沿ったリブ状部30dを有している。頸部30bは頭部30aと胴部30cの他端とを連接させている。遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ibに挿入部20を入れ込ませた第一パーツFのこの挿入部20に第二パーツMの掛合部30を入れ込んで遮蔽部材Iを挟んで両パーツF、Mを組み合わせる過程において、挿入部20の被掛合部20fを構成する突出部20jに前記頭部30aが接してこの被掛合部20fを構成する弾性片20iは一旦外向きに撓み出されると共に、この突出部20jが頸部30bに納まる位置で撓み戻して、掛合部30と被掛合部20fとが掛合されるようになっている。図示の例では、かかる頭部30aを截頭円錐状に構成させることによっても、前記撓み込みが円滑に生じるようになっている。
【0042】
この実施の形態にかかるクリップによれば、遮蔽部材Iの燃料タンクTの外面Taへの張り込みに先立って、この遮蔽部材Iの各端末部Iaに第一パーツFを備えさせた後、遮蔽部材Iを燃料タンクTの外面Taを覆ってこの燃料タンクTの外側にセットさせた状態から、セットされた遮蔽部材Iの各端末部Ia、Iaに備えられた第一パーツFに第二パーツMの掛合部30を掛合させることにより、両パーツF、Mの間で端末部Iaを挟み込み状に保持して各端末部Iaの離間を阻止することができる。また、かかるクリップにあっては、遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ibに備えられる第一パーツF同士は各々別体とされていることから、燃料タンクTの外面Taの形状如何に関わらず、各第一パーツFの座部10は燃料タンクTの外面Taに密着させ易く、遮蔽部材Iの張り込み状態をクリップにより無理なく維持させることができる。例えば、遮蔽部材Iの端末部Iaが突き合わされる箇所において燃料タンクTの外面Taが最も外側に張り出すようにこの外面Taが湾曲されているような場合でも、この端末部Iaが突き合わされる箇所の両側においてそれぞれ第一パーツFの座部10を燃料タンクTの外面Taに密着させることができ、また、第二パーツMはこれよりも外側において場合によっては燃料タンクTの湾曲に倣った撓みを生じながら各第一パーツFに掛合されて各第一パーツF、F間の離間、つまり、遮蔽部材Iの端末部Ia間の離間を阻止する。
【0043】
この実施の形態にあっては、特に、第一パーツFの挿入部20は内側に第二パーツMの掛合部30を受け入れてこれと掛合される中空体として構成されていることから、遮蔽部材Iの接続用貫通孔Ib内において第一パーツFと第二パーツMを掛合させて組み合わせることができる。
【0044】
なお、以上に説明したクリップにおける弾性変形特性を備えるべき箇所へのこの特性の付与は、前記第一パーツF及び第二パーツMを合成樹脂製の射出成型品とすることで、容易に確保させることができる。
【符号の説明】
【0045】
T 燃料タンク
Ta 外面
I 遮蔽部材
Ia 端末部
F 第一パーツ
M 第二パーツ
1 ベース
2 挿入凸部
3 掛合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの外面を覆うように備えられる面状をなす遮蔽部材の端末部の接続用クリップであって、
接続させ合わされる遮蔽部材の端末部間に亘るベースに、各端末部に形成された接続用貫通孔への挿入凸部を備えて、遮蔽部材の内面側に位置される第一パーツと、
この第一パーツの各挿入凸部に対する掛合部を備え、この掛合部により遮蔽部材の外面側から第一パーツに組み合わされる第二パーツとからなることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
第一パーツの挿入凸部に、遮蔽部材の接続用貫通孔への挿入終了状態において、この接続用貫通孔における遮蔽部材の外面側に位置される孔縁に引っかかる仮止め部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
第一パーツの挿入凸部は、内側に第二パーツの掛合部を受け入れてこれと掛合される中空体として構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクリップ。
【請求項4】
第一パーツのベースに、燃料タンクの外面に形成された突出部を納めてこの突出部の形成位置に第一パーツを位置づけさせる凹所が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のクリップ。
【請求項5】
燃料タンクの外面を覆うように備えられる面状をなす遮蔽部材の端末部の接続用クリップであって、
遮蔽部材の内面側に位置される座部の一面側にこの遮蔽部材の端末部に形成された接続用貫通孔への挿入部を備えて遮蔽部材の各端末部にそれぞれ備えられる第一パーツと、
接続させ合わされる遮蔽部材の端末部間に亘る基板に、第一パーツの挿入部に対する掛合部を備え、この掛合部により遮蔽部材の外面側から遮蔽部材の各端末部に備えられた第一パーツに組み合わされる第二パーツとからなることを特徴とするクリップ。
【請求項6】
第一パーツの挿入部に、遮蔽部材の接続用貫通孔への挿入終了状態において、この接続用貫通孔における遮蔽部材の外面側に位置される孔縁に引っかかる仮止め部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のクリップ。
【請求項7】
第一パーツの挿入部は、内側に第二パーツの掛合部を受け入れてこれと掛合される中空体として構成されていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のクリップ。
【請求項1】
燃料タンクの外面を覆うように備えられる面状をなす遮蔽部材の端末部の接続用クリップであって、
接続させ合わされる遮蔽部材の端末部間に亘るベースに、各端末部に形成された接続用貫通孔への挿入凸部を備えて、遮蔽部材の内面側に位置される第一パーツと、
この第一パーツの各挿入凸部に対する掛合部を備え、この掛合部により遮蔽部材の外面側から第一パーツに組み合わされる第二パーツとからなることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
第一パーツの挿入凸部に、遮蔽部材の接続用貫通孔への挿入終了状態において、この接続用貫通孔における遮蔽部材の外面側に位置される孔縁に引っかかる仮止め部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
第一パーツの挿入凸部は、内側に第二パーツの掛合部を受け入れてこれと掛合される中空体として構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクリップ。
【請求項4】
第一パーツのベースに、燃料タンクの外面に形成された突出部を納めてこの突出部の形成位置に第一パーツを位置づけさせる凹所が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のクリップ。
【請求項5】
燃料タンクの外面を覆うように備えられる面状をなす遮蔽部材の端末部の接続用クリップであって、
遮蔽部材の内面側に位置される座部の一面側にこの遮蔽部材の端末部に形成された接続用貫通孔への挿入部を備えて遮蔽部材の各端末部にそれぞれ備えられる第一パーツと、
接続させ合わされる遮蔽部材の端末部間に亘る基板に、第一パーツの挿入部に対する掛合部を備え、この掛合部により遮蔽部材の外面側から遮蔽部材の各端末部に備えられた第一パーツに組み合わされる第二パーツとからなることを特徴とするクリップ。
【請求項6】
第一パーツの挿入部に、遮蔽部材の接続用貫通孔への挿入終了状態において、この接続用貫通孔における遮蔽部材の外面側に位置される孔縁に引っかかる仮止め部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のクリップ。
【請求項7】
第一パーツの挿入部は、内側に第二パーツの掛合部を受け入れてこれと掛合される中空体として構成されていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のクリップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−247566(P2010−247566A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96328(P2009−96328)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
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