説明

クロノグラフ時計

【課題】モータ駆動中にクロノ計測動作をリセットして再スタート時の最初の駆動時に非回転となることを防止すること。
【解決手段】駆動制御部51は、リセットボタン19のリセット操作がモータ35駆動中に行われて回転検出回路55が非回転を検出した場合、駆動パルス発生回路52が出力するモータ駆動パルスGの極性を反転せずに終了し、スタート/ストップボタン18のスタート操作に応答して前回リセット時と同極性の駆動パルスUによってモータ35を駆動するように駆動パルス発生回路52を制御し、リセット後の再スタート時に前記同極性の駆動パルスUによってモータ35を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時刻の指示機能及び時間計測機能を有するクロノグラフ時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の指針を各々駆動するために複数の駆動モータを搭載し、時刻情報の表示を基本機能として更に時間計測行うクロノ計測機能を搭載したクロノグラフ時計において、各指針の駆動は前記駆動モータによって電気的に行い、クロノグラフ針の帰零をハートカムなどの機械的機構によって行うものが開発されている(例えば、クロノグラフ時計については特許文献1、2、モータについては特許文献3参照)。
【0003】
例えば、前記特許文献2記載のクロノグラフ時計では、クロノ計測動作中(図11)にリセットボタンを押した場合、接点部305が接触して、復針レバー128が復針伝達レバー280回転させ、ハートカム281、291によりクロノグラフ針の帰零が行われる。接点305が接触してクロノリセット信号が入力される時に、クロノ針駆動用の駆動パルスが出力中の場合、ハートカムによる規正と駆動パルスのタイミングが重なってしまいステッピングモータは非回転となってしまう。仮に回転検出を行って非回転を検出したとしても直後に補正駆動パルスを出力してしまう。このためクロノモータは回転しないまま集積回路(IC)内部に記憶された駆動パルスの極性のみが反転してしまい、クロノ計測を再スタートさせると、1回目の駆動時にステッピングモータが回転しないという問題がある。
一方、特許文献4には、クロノ動作中にリセット操作を行っても、リセットが働かないメカ的な安全機構を備えたクロノグラフ時計が開示されているが、前記クロノグラフ時計ではメカ機構が複雑となり、コストも高くなるという問題がある。
【0004】
尚、回転検出により運針を停止する発明として、特許文献5、6に記載された発明がある。特許文献5には、補正駆動時の回転検出の結果が非回転検出であった場合、運針を停止するようにしたアナログ電子時計が開示されている。異常磨耗や破損の防止を目的として、通常運針パルス駆動後、回転検出を行って非回転の場合には補正駆動パルス駆動を行い、再度回転検出を行って再び非回転の場合には運針停止するように構成している。また、特許文献6には、ユーザーに異常を報知することを目的として、秒針駆動用モータと時・分駆動用モーターを備える電子時計において、時・分駆動用モーターのロータの非回転を検出すると、秒針駆動用モータの駆動を停止するように電子時計が開示されている。いずれの発明も、再スタート時の非回転の問題を解決するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−3493号公報
【特許文献2】特開昭61−73085号公報
【特許文献3】特開2003−185765号公報
【特許文献4】特開2006−90769号公報
【特許文献5】特開2003−4872号公報
【特許文献6】特開昭59−20885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記問題に鑑み成されたもので、モータ駆動中にクロノ計測動作をリセットして再スタート時の最初の駆動時に非回転となることを防止することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、クロノ計測時に計測した時間を表示するクロノグラフ針と、前記クロノグラフ針を回転駆動するステッピングモータと、クロノ計測のスタート、ストップ及びリセットを操作する操作手段と、前記ステッピングモータが回転したか否かを検出する回転検出手段と、前記操作手段による操作に応答して前記ステッピングモータを駆動制御すると共に、前記回転検出手段による検出結果に応じた駆動パルスによって前記ステッピングモータを駆動制御する駆動制御手段と、前記操作手段のリセット操作に応答して機械的に前記クロノグラフ針を帰零して保持すると共にクロノ計測動作を電気的にリセットするリセット手段とを備え、前記駆動制御手段は、前記操作手段のリセット操作が前記ステッピングモータ駆動時に行われて前記回転検出手段が非回転を検出した場合、前記操作手段の再スタート操作に応答して前回リセット時と同極性の駆動パルスによって前記ステッピングモータを駆動制御することを特徴とするクロノグラフ時計が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るクロノグラフ時計によれば、モータ駆動中にクロノ計測動作をリセットして再スタート時の最初の駆動時に非回転となることを防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係るクロノグラフ時計のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るクロノグラフ時計のクロノグラフ機構の機械的構成の概要を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るクロノグラフ時計の外観を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るクロノグラフ時計のタイミング図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係るクロノグラフ時計1は、図3に示すように、腕時計の形態で、中心軸線C1のまわりで回転され現在時刻を表示する時刻針(時針11、分針12及び秒針13)を備えると共に、クロノグラフ針(中心軸線C2のまわりで回転されるクロノグラフ秒針14及び中心軸線C3のまわりで回転されるクロノグラフ分針15)を備える。
例えば、D1方向に二段引出した状態で巻真16を回すことにより時刻針11〜13を回転することができ又、巻真16をD1方向に一段引出した状態で巻真16を回すことにより窓を介して表示される日車の日付17を変更できるように構成されている。クロノグラフ時計1の通常の時刻表示にかかわる動作は、通常の電子時計と同じであり、当業者に周知であるので、以下では、通常運針に係る構造や機能や動作については、記載を省略する。
【0011】
クロノグラフ時計1では、クロノグラフ針14、15は、ステッピングモータによって電気的に駆動制御され、機械的構成によって帰零制御される。
クロノグラフ時計1では、スタート/ストップボタン18をA1方向に押すことにより、クロノグラフ時計1によるクロノグラフ動作の開始、停止が指示される。より詳しくは、クロノグラフ動作の開始/停止とは、クロノグラフ針14、15の運針の開始/停止を指し、後述のようにこれに関連して電気的な駆動系の動作及びクロノグラフ針の電気的な位置情報の保持が行われる。但し、場合によっては、クロノグラフ針の電気的な位置情報は保持していなくてもよい。尚、スタート/ストップボタン18及びリセットボタン19は操作手段を構成している。
【0012】
クロノグラフ時計1では、また、リセットボタン19をB1方向に押すことにより、クロノグラフ時計1によるクロノグラフ動作のリセットすなわち初期状態への復帰(帰零)が指示される。より詳しくは、クロノグラフ動作のリセットとは、クロノグラフ針14、15の初期位置(正時位置)への強制的な復帰(帰零)、並びにクロノグラフ針14、15の運針の規正及びクロノグラフ針の電気的な位置情報のリセットを指す。
【0013】
まず、クロノグラフ時計1のスタート、運針及び帰零にかかわる機械的な構造5及び動作について、主として、図2の(a)及び(b)に基づいて説明する。なお、クロノグラフ時計1のスタート、運針及び帰零にかかわる機械的な構造5は、図1のブロック図の左側部分にも、簡単に示されている。
クロノグラフ時計1は、通常運針用(時刻針運針用)モータ(図示せず)とは別にクロノグラフ針運針用モータ35を備え、該クロノグラフ針運針用モータ35は、回転駆動された際、クロノグラフ針運針用輪列36を介して、クロノグラフ針14、15を運針させる。
【0014】
前記通常運針用モータやクロノグラフ針運針用モータ35は、時計用に使用されている周知構成のステッピングモータである(例えば前記特許文献2参照)。前記ステッピングモータは、ロータ収容孔及びロータの停止位置を決める位置決め部を有するステータと、前記ロータ収容孔内に配設されたロータと、駆動コイルとを有し、前記駆動コイルに交互に極性の異なる交番信号(駆動パルス)を供給して前記ステータに磁束を発生させることによって前記ロータを回転させると共に、前記位置決め部に対応する位置に前記ロータを停止するようにしたステッピングモータである。極性の異なる駆動パルスによって交互に駆動する毎に所定角度(例えば180度)ずつ前記ロータが連続的に回転し、複数の同相の駆動パルスによって続けて駆動しても最初の駆動パルスによって回転した場合には2番目以降の同相の駆動パルスでは回転しないような構成となっている。
【0015】
クロノグラフ時計1は、クロノグラフ秒針14のあるクロノグラフ秒真21に取付けられたクロノグラフ秒カム22及びクロノグラフ分針15のあるクロノグラフ分真23に取付けられたクロノグラフ分カム24を備える。
クロノグラフ時計1は、また、復針伝達第一レバー(以下では、「復針伝達レバーB」ともいう)25、復針伝達第二レバー(以下では、「復針伝達レバーA」ともいう)26及び復針レバー27を備えると共に、停止レバー28を備える。
クロノグラフ秒カム22、クロノグラフ分カム24及び復針レバー27は規正機構を構成し、復針伝達第二レバー26及び復針レバー27は解除手段を構成している。また、クロノグラフ秒カム22、クロノグラフ分カム24、復針レバー27、復針伝達第一レバー25、復針伝達第二レバー26は機械的リセット手段を構成している。また、復針伝達第一レバー25、復針伝達第二レバー26及び復針レバー27はレバー手段をも構成している。
【0016】
復針伝達第一レバー25は、基準位置J1(図2の(b)の実線)と帰零位置J2(図2の(a)の実線で(b)の点線)との間で回動可能であり、位置決めピン25aが係合する溝を備えたばね状位置決め部材29と係合して、基準位置J1又は帰零動作位置J2に位置決めされる。復針伝達第二レバー26は、長穴26aで復針伝達第一レバー25のピン25bに係合している。復針伝達第一レバー25が基準位置J1から帰零位置J2に移動され位置設定されると、復針伝達第二レバー26が基準位置K1(図2の(b)の実線)から帰零位置K2(図2の(a)の実線で(b)の点線)に移動される。
【0017】
一方、復針伝達第二レバー26が帰零位置K2から基準位置K1に移動され位置設定されると、復針伝達第一レバー25が帰零位置J2から基準位置J1に移動され位置決めされる。
復針レバー27は、長穴27aで復針伝達第二レバー26のピン26bに係合し、復針伝達第二レバー26の基準位置K1又は帰零位置K2への位置設定に応じて、基準位置M1(図2の(b)の実線)又は帰零位置M2(図2の(a)の実線で(b)の点線)に位置決めされる。
復針レバー27が帰零位置M2に設定されると、復針レバー27は、秒ハンマー部27bでクロノグラフ秒カム22を叩いてクロノグラフ秒針14を初期位置に帰零させると共に、分ハンマー部27cでクロノグラフ分カム24を叩いてクロノグラフ分針15を初期位置に帰零させる。
【0018】
停止レバー28は、ばね部28a、係合腕部28b及び係止腕部28cを備え、帰零時の訂正制御位置ないし規正位置E2(図2の(a)の実線で(b)の点線)と訂正制御解除位置ないし規正解除位置E1(図2の(b)の実線)との間でピン28dのまわりで回動可能である。停止レバー28の係止腕部28cは、該停止レバー28が規正位置E2にある状態SE2ではクロノグラフ運針用モータ35のロータ歯車35aにつながるクロノグラフ運針用輪列36のいずれかの車36aに対して係合して輪列36の回転を規正し、停止レバー28が規正解除位置E1にある状態SE1では、輪列36の車36aから離されて、モータ35のロータ歯車35a及び輪列36の回転を許容する。
【0019】
ばね部28aにおいて規正位置E2に向かう方向の偏倚力を受けている停止レバー28は、復針伝達第一レバー25が帰零位置J2から基準位置J1に回動変位される際に、係合腕部28bにおいて復針伝達第一レバー25の腕部25dと係合して帰零時の規正位置E2から規正解除位置E1に回動変位される。一方、復針第一レバー25が基準位置J1から帰零位置J2に移動されると、該復針第一レバー25の腕部25dと係合腕部28bとの係合が解除されるので停止レバー28はばね部28aのばね力により規正解除位置E1から規正位置E2に戻される。
【0020】
クロノグラフ時計1が、図2の(a)に示した帰零(リセット)状態S2にある際に、スタート/ストップボタン18がA1方向に押圧操作されると、復針伝達第二レバー26が突起部26cでA1方向に押されて位置K2から位置K1に変位されると共に、復針伝達第一レバー25が位置J2から位置J1に変位され、復針レバー27が位置M2から位置M1に変位される。これにより、ハンマー部27b、27cによるハートカム22、24及びクロノグラフ針14、15の回転規正(帰零制御)が解除される。また、復針伝達第一レバー25の位置J2から位置J1への回動に応じて、該復針伝達第一レバー25の腕部25dに腕部28bで係合した停止レバー28が規正位置E2から規正解除位置E1に回動され、停止レバー28の係止腕部28cがクロノグラフ輪列36から離脱して輪列36の回転規正(停止制御)を解除する。これにより、機械的制御機構5が状態S1に戻され、クロノグラフ針14、15が回転可能になる。
【0021】
一方、クロノグラフ時計1が、図2の(b)に示したスタート状態ないし運針状態S1にある際に、リセットボタン19がB1方向に押圧操作されると、復針伝達第一レバー25が突起部25cでB1方向に押されて復針伝達第一レバー25が位置J1から位置J2に変位される。復針伝達第一レバー25が位置J1から位置J2に変位されると、一方では、該レバー25に係合した復針伝達第二レバー26が位置K1から位置K2に移動され、該レバー26に係合した復針レバー27が位置M1から位置M2に移動して、秒ハンマー27b及び分ハンマー27cが秒ハートカム22及び分ハートカム24を叩いてクロノグラフ秒針14及びクロノグラフ分針15を帰零させ、他方では、停止レバー28に対する腕部25dの係止が解除され停止レバー28が位置E1から位置E2に回動されて、腕部28cでクロノグラフ輪列36に係合して、輪列36を規正する。
【0022】
クロノグラフ時計1について、図2の(a)及び(b)に示した機械的構造5に関連する範囲で電気的な側面について言えば、次のとおりである。
クロノグラフ時計1が、図2の(a)に示したリセット状態S2にある際に、スタート/ストップボタン18がA1方向に押圧されると、該スタート/ストップボタン18はその奥端の近傍においてA2方向の偏倚力を及ぼすスタート/ストップスイッチバネ33を押して、接点部34を閉じさせ、該接点部34を介して、スタート信号Pa(図1)を発生させる。なお、クロノグラフ時計1が、図2の(b)に示したスタート状態S1にある際に、スタート/ストップボタン18がA1方向に押圧されると、該スタート/ストップボタン18はスタート/ストップスイッチバネ33を押して、接点部34を閉じさせ、該接点部34を介して、ストップ(停止)信号Pb(図1)を発生させる。
【0023】
一方、クロノグラフ時計1が、図2の(b)に示したスタート状態(又はストップ状態)S1にある際に、リセットボタン19がB1方向に押圧されると、該リセットボタン19はその奥端の近傍においてB2方向の偏倚力を及ぼすリセットスイッチバネ31を押して、接点部32を閉じさせ、該接点部32を介して、リセット信号Qa(図1)を発生させる。
以上のような動作のうち、以下では、図2(a)の帰零状態S2において、スタート/ストップボタン18がA1方向に押圧された際のスタート動作の開始及び進行を中心に、より詳しく説明する。
【0024】
即ち、スタート/ストップボタン18のA1方向押圧に伴い、一方では、スイッチ接点34を介して電気的な駆動開始信号Paが出されてこれによりモータ35の回転駆動が行われ、他方では、復針伝達第二レバー26の回動に伴う復針レバー27の回動により機械的な帰零制御状態が解除されると共に、該復針伝達第二レバー26及び復針伝達第一レバー25の回動に伴う停止レバー28の回動により輪列36の係止(停止制御状態)が解除されて、運針が機械的に許容される(機械的な規正が解除される)。
【0025】
ここで、クロノグラフ時計1が適正に動作し、計時が正確に行われるためには、機械的な規正解除が完了した後でモータ35の回転駆動が行われる必要がある。このクロノグラフ時計1では、構造の複雑化及びこれに要するコストの増加を避けつつ、機械的な規正解除が完了した後で電気的な駆動が行われることを確実に行わせるようにしている。以下では、この点を中心に詳しく説明する。
【0026】
次に、クロノグラフ時計1の電気的駆動機構6の概要を、図2の機械的構造5を参照しつつ、主として図1のブロック図に基づいて説明する。
クロノグラフ時計1のクロノグラフ運針用モータ35の回転は、発振回路41及び分周回路42を介して与えられるクロックパルスに基づいて駆動制御されるクロノグラフ針運針用モータ35の駆動制御用集積回路50によって、制御される。
【0027】
モータ駆動制御用集積回路50は、基本駆動制御部51と、駆動パルス発生回路52と、モータ駆動回路53と、帰零制御部54と、回転検出回路55とを有する。ここで、クロノグラフ針運針用モータ35の駆動手段は、モータ駆動回路53からなり、クロノグラフ針運針用モータ35の駆動制御手段は、基本駆動制御部51と、駆動パルス発生回路52と、モータ駆動回路53と、回転検出回路55を有する。また、帰零制御部54は電気的にリセットする電気的リセット手段を構成しており、前述した機械的リセット手段とともにリセット手段を構成している。
尚、モータ駆動制御用集積回路50は、更に、クロノグラフ秒をカウントし該クロノグラフ秒情報を保持するクロノグラフ秒カウンタ57、及びクロノグラフ分をカウントし該クロノグラフ分情報を保持するクロノグラフ分カウンタ58を有する。クロノグラフ時をカウントし該クロノグラフ時情報を保持するクロノグラフ時カウンタが更に設けられていてもよい。
【0028】
基本駆動制御部51は、クロノグラフ時計1が帰零(リセット)状態S2にある際におけるスタート/ストップボタン18の押下げに応じて接点部34を介して与えられるスタート信号ないし作動信号Paを受信する。
基本駆動制御部51は、スタート信号ないし作動信号Paを受取ると、チャタリング防止用の短い期間をおいて、駆動制御信号Pdを発する。以下では、後述の図4等に関連して特に断わらない限り、スタート信号ないし作動信号Paの受信時点と駆動制御信号Pdの送信時点とは、実質的に同一であるとする。駆動制御信号Pdは、クロノグラフ動作が行われている期間は高レベルに保たれる信号である。
基本駆動制御部51は、また、クロノグラフ時計1がスタート状態S1にある際におけるスタート/ストップボタン18の押下げに応じて接点部34を介して与えられるストップ(停止)信号Pbを受取る(又は接点部34からのスタート信号ないし作動信号Paの送出が停止される)と、駆動制御信号Pdの送信を停止する。
【0029】
基本駆動制御部51からの駆動制御信号Pdはクロノグラフ秒カウンタ57にも与えられ、クロノグラフ秒カウンタ57は、駆動制御信号Pdが高レベルに保たれている間、分周回路42から与えられるクロックパルスを受取ってクロノグラフ秒をカウントすると共に、該駆動制御信号Pdに基づいてクロノグラフとしての計時を開始した時点を始点として該時点から周期T毎にクロノグラフタイミングパルスPhを発する。このパルスPhの周期(クロノグラフ針駆動周期)Tは、クロノグラフ時計1の計時精度に対応し、例えば、1/100秒(即ち、10ms)である。
【0030】
駆動パルス発生回路52は、駆動制御信号Pdを受けると、通常のクロノグラフ針駆動用の主駆動パルスGをモータ駆動回路53に与える。モータ駆動回路53は、該主駆動パルスGに対応するモータ駆動パルスUをクロノグラフ針運針用モータ35に与えて、該モータ35を回転駆動する。以後、モータ35は極性の異なる通常の主駆動パルスU(P1−1、P1−2)によって交互に駆動されて所定角度ずつ回転することになる。
【0031】
一方、基本駆動制御部51が停止信号Pbを受けると、該駆動制御部51は、駆動制御信号Pdの送出を停止して(所望ならば、駆動停止信号Pfを与えてもよい)、駆動パルス発生回路53からの駆動パルスGの送出が停止され、モータ駆動回路53によるモータ駆動パルスUの送出が停止され、クロノグラフ針運針用モータ35の回転駆動が停止されて、該モータ35のロータないし出力軸の回転が停止し、クロノグラフ針運針用輪列36を介するクロノグラフ針14、15の運針が停止される。
【0032】
なお、リセットボタン19の押圧によりスイッチバネ31が押下げられて接点部32が閉じた場合、リセット信号Qaが帰零制御部54に与えられる。帰零制御部54は、接点部32からのリセット信号Qaを受取ると、駆動パルス発生回路52に駆動停止信号Pfを与える。その結果、駆動パルス発生回路52は、駆動パルスGの発生を停止して、モータ駆動回路53によるモータ駆動パルスUの送出を停止させる。従って、クロノグラフ針運針用モータ35の回転駆動が停止され、クロノグラフ針14、15の運針が停止される。
【0033】
尚、帰零制御部54は、リセット信号Qaの受信に応じて、クロノグラフ秒カウンタ57及びクロノグラフ分カウンタ58の内容をゼロにリセットする。帰零制御部54はリセットボタン19のリセット操作に基づくリセット信号Qaに基づき、クロノグラフをリセット制御(運針停止とカウンタリセット)する。
また、詳細は後述するが、リセットボタン操作時にモータ35が既に駆動中の時は回転検出回路55の結果に基づき、基本駆動制御部51は、回転検出回路55が非回転を検出した場合は機械的規正による非回転と判断して、モータ駆動回路53が次回駆動する予定の駆動パルスの極性は反転しない。これにより、帰零時の規正による非回転を検出した場合は、クロノ計測動作の再スタート時に前回と同相の駆動パルスUによって駆動を開始することになる。
【0034】
次に、図1のクロノグラフ時計1について、主としてモータ35の駆動制御時にリセットボタン19が操作されて非回転となった後、スタート/ストップボタン18が操作されてクロノ計測を再スタートした場合の動作を、図4のタイムチャートに基づいて、具体的に説明する。
クロノグラフ時計1が、図2の(b)に示した運針状態S1にある際に、リセットボタン19がB1方向に押圧操作されると、リセットボタン19の押下げに伴い、スイッチバネ31を介して接点部32が閉じられて、時刻t0において該接点部32を介してリセット信号Qaが出る。このリセット信号Qaは、該リセットボタン19の押下げに伴う接点部32の閉成が継続される時点txまで継続する。リセット信号Qaが帰零制御部54に与えられると、帰零制御部54はチャタリング防止用の短い期間をおいてt3に帰零制御信号Pfを駆動パルス発生回路52に与える。
【0035】
一方、図2の(b)に示した運針状態S1にある際に、リセットボタン19がB1方向に押圧操作されると、時刻t1から始まる所定時間において、復針伝達第一レバー25が突起部25cでB1方向に押されて復針伝達第一レバー25が位置J1から位置J2に変位される。復針伝達第一レバー25が位置J1から位置J2に変位されると、一方では、該レバー25に係合した復針伝達第二レバー26が位置K1から位置K2に移動され、該レバー26に係合した復針レバー27が位置M1から位置M2に移動して、秒ハンマー27b及び分ハンマー27cが秒ハートカム22及び分ハートカム24を叩いてクロノグラフ秒針14及びクロノグラフ分針15を帰零させ、他方では、停止レバー28に対する腕部25dの係止が解除され停止レバー28が位置E1から位置E2に回動されて、腕部28cでクロノグラフ輪列36に係合して、輪列36を規正し、図2の(a)に示すリセット状態S2になる。
【0036】
モータ駆動回路53は時刻t0以前に一方の極性の主駆動パルスU(P1−1)で駆動しており、時刻t1より所定時間後の時刻t2において逆極性の主駆動パルスU(P1−2)でモータ35を駆動する。
クロノグラフ針14、15の機械的な規正とモータ35の駆動タイミングが重なるため、モータ35は、主駆動パルスU(P1−2)による駆動では回転せず、回転検出回路55が非回転を検出した後に停止状態となる。基本制御駆動部51は、回転検出部55が非回転を検出した場合は規正による非回転と判定し、次回駆動予定の駆動パルスの極性を反転せずにリセット状態となる。
尚、従来例の場合は図4の最下段に示したように、主駆動パルスU(P1−2)による駆動で非回転の場合には、時点t3において主駆動パルスU(P1−2)よりもエネルギの大きい補正駆動パルスP2によって強制回転させるが、この場合も規正されているため回転しないが、回転したものと判断して駆動パルスの極性を反転してリセット状態となる。
【0037】
クロノグラフ時計1が、図2の(a)に示した帰零(リセット)状態S2にある際に、スタート/ストップボタン18がA1方向に押圧操作されると、スタート/ストップボタン18の押下げに伴い接点部34が閉じられて、時刻t4において該接点部34を介してスタート信号Paが出る。このスタート信号Paは、該スタート/ストップボタン18の押下げに伴う接点部34の閉成が継続される時点まで継続される。スタート信号Paが基本駆動制御部51に与えられると、該基本駆動制御部51は、チャタリングの影響を避けるに必要な短い時間の後、クロノ計測動作を開始する。また、基本駆動制御部51は、スタート信号Paを受信すると、駆動中高レベルとなる駆動制御信号Pdを駆動パルス発生回路52に出力する。
【0038】
駆動パルス発生回路52は、クロノ計測開始からクロノ駆動周期T経過した時点t5において、前回リセットしたときの主駆動パルスU(P1−2)と同極性の主駆動パルスU(P1−2)によってモータを駆動するように駆動パルスGを発生し、モータ駆動回路53に駆動パルスGに対応する極性のモータ駆動パルスU(P1−2)を発生させる。このように、前回リセット時に駆動できなかった主駆動パルスU(P1−2)と同極性の主駆動パルスU(P1−2)によって駆動するため、正常に運針することができる。その後は、クロノ計時周期T毎に、異なる極性の主駆動パルスU(P1−1、P1−2)によって交互に駆動することにより運針動作を行う。
【0039】
一方、従来の駆動制御の場合、U(従来)として図4の最下段に示したように、クロノ計測動作を再開した時点から周期T後の時点t5においてモータ駆動パルスU(従来)として、前回リセット時の主駆動パルスP1ー2とは逆極性の主駆動パルスP1−1によって駆動されるため、非回転となり運針できない事態が発生していたのに対して、本実施の形態に係るクロノグラフ時計1では前述の如く、前回リセット時に駆動できなかった主駆動パルスU(P1−2)と同極性の主駆動パルスU(P1−2)によって駆動するため、正常に運針することができる。これにより、正確なクロノグラフ針14、15の運針が実現される。
【0040】
次に、以上の如く構成されたクロノグラフ時計1の動作を、図1から図4を参照しつつ、主として図5に示したフローチャートに基づいて説明する。このフローチャートは、図1のクロノグラフ時計1のうち、主として、集積回路50の基本駆動制御部51の動作を、該動作に対応するプログラムの処理の流れとして示したものである。
クロノグラフ時計1では、基本駆動制御部51は、最初の処理ステップS501において、クロノグラフ動作の開始(スタート)が指示されたか否かをチェックする。このスタートチェックステップS501は、スタート/ストップボタン18のA1方向押圧によるスイッチバネ33のA1方向変位によって接点部34が閉成され接触して接点部34から作動信号ないしスタート信号Paが集積回路50の基本駆動制御部51に与えられたか否かがチェックされることに対応する。
【0041】
スタート信号Paが出されていない場合、帰零制御部52はステップS508においてリセット(帰零)指示が出されたか否かをチェックする。このリセットチェックステップS508は、リセット(帰零)ボタン19のB1方向押圧によるスイッチバネ31のB1方向変位によって接点部32が閉成されて接点部32からリセット信号Qaが集積回路50の帰零制御部54に与えられたか否かがチェックされることに対応する。リセット信号Qaが出されていない場合、最初の処理ステップS501に戻る。リセット信号Qaが出されている場合、帰零制御部54はステップS509においてクロノグラフ秒カウンタ57及びクロノグラフ分カウンタ58の内容をゼロに戻すカウントリセット処理をした後、最初の処理ステップS501に戻る。
【0042】
基本駆動制御部51はスタートチェックステップS501においてクロノグラフ動作の開始指示(スタート信号Pa)を確認した場合、ステップS502において、クロノグラフ動作の計時周期T(この例では、例えば、1/100秒すなわち10ms(ミリ秒))に相当する時間が経過したかどうかをチェックする。計時周期Tに達するとステップS503に移る。これは、クロノグラフ秒カウンタ57において、クロノグラフ動作の計時開始時点以降の時間が計時され、計時周期Tに相当する時間に達すると、タイミングパルスPhが出されることに対応する。
【0043】
時間Tが経過した場合、駆動パルス発生回路52はクロノ針14、15を運針駆動するように駆動パルスGをモータ駆動回路53に与え、モータ駆動回路53は、該駆動パルスGに対応するモータ駆動パルスUをクロノグラフ針運針用モータ35に与えて、該モータ35を回転駆動する(ステップS503)。
回転検出回路55がモータ35は回転したと判定すると(ステップS504)、基本駆動制御部51は駆動パルス発生回路52が次回駆動予定の駆動パルスGの極性を反転するように制御した後(ステップS505)、帰零制御部54はリセットボタン19がリセット操作されたか否かを判定する(ステップS506)。帰零制御部54はステップS506においてリセットボタン19がリセット操作されていないと判定した場合、次にステップ507においてストップ操作されたか否かを判定する。基本駆動制御部51はスタート/ストップボタン18がストップ操作されていないと判定した場合にはステップS502に戻り、ストップ操作されている場合にはクロノ針14、15の駆動を停止(ステップS515)してステップS501に戻る。
【0044】
ステップS504において回転検出回路55が非回転と判定した場合、帰零判定部54がリセットボタン19はリセット操作されていないと判定した場合(ステップS510)、駆動パルス発生回路52が補正駆動パルスによる駆動を行った後、ステップS505に移行する(ステップS511)。
ステップS510においてリセットボタン19がリセット操作されたと判定したときには、基本駆動制御部51は駆動パルス発生回路52が次回駆動予定の駆動パルスUの極性を反転しないようにし(反転するように制御しない)(ステップS512)、帰零制御部54はクロノ針14、15の駆動を停止する(ステップS513)と共に、クロノ秒カウンタ57及びクロノ分カウンタ58をリセットし(ステップS514)た後ステップS501に戻る。その後、スタート/ストップボタン18がスタート操作されてステップS501以降の処理が再スタートした場合、最初のモータ駆動時にリセット時と同極性の主駆動パルスによって回転駆動されるため、モータ35を正常に回転させることができる。
ステップS506において帰零制御部54がリセット操作されたと判定した場合にはステップS513に移行する。
【0045】
以上述べたように、駆動制御部51は、リセットボタン19のリセット操作がモータ35駆動中に行われて回転検出回路55が非回転を検出した場合、駆動パルス発生回路52が出力するモータ駆動パルスGの極性を反転せずに終了し、スタート/ストップボタン18のスタート操作に応答して、モータ駆動回路53が前回リセット時と同極性の駆動パルスUによってモータ35を駆動するように駆動パルス発生回路52を制御し、リセット後のスタート時に前記同極性の駆動パルスUによってモータ35を駆動する。
したがって、従来はクロノ計測中にリセット操作を行うと、モータ35の駆動タイミングと帰零動作の規正タイミングが重なり、クロノ計測動作を再スタートした時に最初の駆動時に回転せず運針できないという問題があったが、本実施の形態ではモータ駆動中にリセットした場合でも次回スタート操作時の最初の駆動時に非回転となることを防止できるため、リセット後の再スタート時に確実にモータ駆動が可能であり正確な運針が可能になる。
【0046】
尚、前記実施の形態においては、クロノ秒針が6時側、クロノ分針が9時側に配置されたクロノグラフの例を用いて説明したが、針13をクロノ秒針として用いるセンタークロノグラフに適用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0047】
時刻針及びクロノグラフ針の駆動はモータによって電気的に行うと共に、リセット状態ではクロノグラフ針が動かないように機械的機構によって規正し、前記クロノグラフ針の駆動は前記機械的機構による規正を解除した後に行うようにした各種のクロノグラフ時計に適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 クロノグラフ時計
5 機械的帰零制御機構
6 電気的駆動機構
11 時針
12 分針
13 秒針
14 クロノグラフ秒針
15 クロノグラフ分針
16 巻真
17 日付
18 スタート/ストップボタン
19 リセットボタン
21 クロノグラフ秒真
22 クロノグラフ秒カム
23 クロノグラフ分真
24 クロノグラフ分カム
25 復針伝達第一レバー(復針伝達レバーB)
26 復針伝達第二レバー(復針伝達レバーA)
27 復針レバー
28 停止レバー
31 リセットスイッチバネ
32 接点部
33 スタートストップスイッチバネ
34 接点部
35 クロノグラフ針運針用モータ
36 クロノグラフ針運針用輪列
41 発振回路
42 分周回路
50 モータ駆動制御用集積回路
51 基本駆動制御部
52 駆動パルス発生回路
53 モータ駆動回路
54 帰零制御部
55 回転検出回路
57 クロノグラフ秒カウンタ
58 クロノグラフ分カウンタ
A1、A2 方向
B1、B2 方向
C1、C2、C3 中心軸線
D1 方向
G 駆動パルス
J1、K1、M1 基準位置
J2、K2、M2 帰零位置
Pa スタート信号(作動信号)
Pb 駆動停止信号
Pd 駆動制御信号
Pf 駆動停止信号
Qa リセット信号
S1 運針状態
S2 帰零状態
T 計時周期
U モータ駆動パルス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロノ計測時に計測した時間を表示するクロノグラフ針と、前記クロノグラフ針を回転駆動するステッピングモータと、クロノ計測のスタート、ストップ及びリセットを操作する操作手段と、前記ステッピングモータが回転したか否かを検出する回転検出手段と、前記操作手段による操作に応答して前記ステッピングモータを駆動制御すると共に、前記回転検出手段による検出結果に応じた駆動パルスによって前記ステッピングモータを駆動制御する駆動制御手段と、前記操作手段のリセット操作に応答して機械的に前記クロノグラフ針を帰零して保持すると共にクロノ計測動作を電気的にリセットするリセット手段とを備え、
前記駆動制御手段は、前記操作手段のリセット操作が前記ステッピングモータ駆動時に行われて前記回転検出手段が非回転を検出した場合、前記操作手段の再スタート操作に応答して前回リセット時と同極性の駆動パルスによって前記ステッピングモータを駆動制御することを特徴とするクロノグラフ時計。
【請求項2】
前記操作手段にはリセットボタンが含まれると共に、
前記リセット手段は、前記リセットボタンのリセット操作に応じて変位するレバー手段と前記レバー手段の変位に応じて前記クロノグラフ針を帰零して保持するカムとを有する機械的リセット手段と、前記リセットボタンのリセット操作に応じてクロノ計時カウンタをリセットする電気的リセット手段とを備えて成ることを特徴とする請求項1記載のクロノグラフ時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−22043(P2011−22043A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168255(P2009−168255)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】