説明

クロロプレンゴム及びそれを用いた接着剤

【課題】
接着物性、刷毛塗り性及び耐層分離性に優れた溶剤型接着剤を作成可能なクロロプレンゴム及びこれを用いた接着剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
ゲル浸透クロマトグラフ−多角度レーザー光散乱検出器(GPC−MALLS)を用いて測定される、線状ポリスチレンを基準ポリマーとする重量平均分子量100万〜150万での平均分岐指数gMが、1.00〜1.12であるクロロプレン系重合体組成物を提供する。これにより非芳香族溶剤接着剤において、耐層分離性に優れたクロロプレンゴムとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロプレンゴム及びそれを用いた接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロプレンゴムは、耐熱性、耐候性、耐オゾン性、耐薬品性、難燃性等に優れることから様々な用途に用いられている。
溶剤型接着剤もその代表例の一つであり、被着体適応性の広さや接着特性のバランスの良さから種々の用途で使用されている。近年、溶剤型接着剤に使用される溶剤はシックハウス症候群の原因となるトルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族系溶剤から非芳香族溶剤への転換が望まれている。しかしながら、この転換に伴って、溶剤型接着剤を貯蔵している際に有機溶剤に溶解する成分と不溶な成分に分離するいわゆる層分離が発生しやすくなってしまった。
溶剤型接着剤の層分離を改良する手段としては、(1)クロロプレン共重合体を、特定の構造を有する単量体とクロロプレンの共重合体とする方法、(2)クロロプレンゴムのポリマー構造を制御する方法などが発明されている。
(1)の例としては、クロロプレンと、特定のエチレン性不飽和スルホン酸やその塩との共重合体を、有機溶剤に溶解させることで、耐層分離性に優れる接着剤が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
(2)の例としては、ポリクロロプレンラテックスを加熱処理し、重クロロホルム溶媒中で測定される1H−NMRスペクトルにおいて、ケミカルシフト4.13〜4.30ppmに現れるピーク面積を制御することで、耐層分離性の優れる接着剤が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−076015号公報
【特許文献2】特開2010−275338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの手段によって、接着剤の耐層分離性は改良が認められるが、接着剤の接着力やハンドリング性(刷毛塗り性)を犠牲にしてしまう場合があり、更なる改良が必要であった。
例えば、特許文献1のように、クロロプレン以外の単量体を共重合させると、クロロプレン単独重合体に比べて、重合体の結晶化速度が遅くなるため、溶剤系接着剤として利用した場合に、初期接着力が不足する場合がある。
特許文献2のように、ポリクロロプレンラテックスを加熱処理する方法では、クロロプレン重合体の分子鎖中の水酸基を増加させることになる。そのため、ポリクロロプレンゴムの有機溶剤溶液である主剤と、イソシアネート化合物の硬化剤を組み合わせて、2液型の溶剤系接着剤として使用した場合に、主剤と硬化剤を混合してから、使用可能な粘度上限に達するまでの時間(ポットライフ)が短くなる場合がある。
【0005】
本発明は、得られる接着剤の、刷毛塗り性を維持しつつその耐層分離性を向上させることができるクロロプレンゴム及びそれを用いた接着剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ゲル浸透クロマトグラフ−多角度レーザー光散乱検出器(GPC−MALLS)を用いて測定される、線状ポリスチレンを基準ポリマーとする重量平均分子量100万〜150万での平均分岐指数gMが、1.00〜1.12であるクロロプレンゴムである。クロロプレンゴムのムーニー粘度は、55〜100ML(1+4)100℃であることが好ましい。また、トルエンに10質量%の濃度でクロロプレンゴムを溶解させて20℃に調整した溶液に、内径6mmの透明ガラス管を30mm沈めて2000rpmで30秒回転させた時、ガラス管内を上昇するトルエン溶液の最高高さが10mm以下となるものであることが好ましい。クロロプレンゴムは、非芳香族溶剤に溶解することで接着剤として用いることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、得られる接着剤の、刷毛塗り性を維持しつつその耐層分離性を向上させることができるクロロプレンゴム及びそれを用いた接着剤が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0009】
クロロプレンゴムは、クロロプレン単量体及びクロロプレン単量体とこれと共重合可能な単量体を乳化/分散剤の存在下で乳化重合して得られる乳濁液(ラテックス)を、凍結凝固乾燥して得られる合成ゴムである。クロロプレン単量体とは、2−クロロ−1,3−ブタジエンである。クロロプレン単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸又はそのエステル類、メタクリル酸又はそのエステル類、硫黄等が例示される。また、これらの単量体を必要に応じて2種類以上併用することもできる。本発明における共重合可能な単量体の添加量は、特に限定するものではないが、クロロプレンゴムとしての性状を維持するために全単量体100質量部に対し、30質量部以下が好ましい。
【0010】
乳化重合で使用する、乳化/分散剤は、特に限定されるものではなく、通常のクロロプレンの乳化重合に使用されているアニオン型、ノニオン型、カチオン型など各種のものが使用できる。アニオン型の乳化剤としては、カルボン酸型、硫酸エステル型等があり、例えば、ロジン酸塩、炭素数が8〜20個のアルキルスルホネート、アルキルアリールサルフェート、ナフタリンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドの縮合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0011】
これらの乳化/分散剤の中でも、重合終了後の凍結凝固乾燥時のフィルム状のクロロプレンゴムに、適当な強度を持たせて過度の収縮および破損を防ぐことができるという理由から、ロジン酸又はそのアルカリ金属塩を使用することが最も好ましい。ロジン酸は、樹脂酸、脂肪酸などの混合物である。樹脂酸としては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロピマル酸、ジヒドロイソピマル酸、セコデヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸などが含まれ、脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸などが含まれている。これらの成分組成は、ガムロジン、ウッドロジン、トールロジンに分類されるロジン採取方法の違い、松の産地及び樹種、蒸留精製、不均化(不均斉化)反応によって変化するものであり、本発明では限定されない。乳化安定性や取り扱いやすさを考慮するとナトリウム塩またはカリウム塩の使用が好ましい。ロジン酸塩の添加量は、特に限定されないが、全単量体100質量部に対し、0.5〜5質量部が好ましく、1〜4質量部がより好ましい。0.5質量部よりも少ないと、乳化安定性が不良となり重合を安定して行うことができなくなる。また、5質量部よりも多いと、得られたクロロプレンゴムを溶剤型接着剤とした場合に、その耐水強度や層分離安定性が低下する。
【0012】
乳化重合を行う際の重合温度は特に限定するものではないが、好ましくは0〜55℃である。重合温度をこの範囲に設定することによって、反応液中の水が凝固することなく、また、クロロプレンが揮発することもない。
【0013】
クロロプレンゴムの分子量は、連鎖移動剤の添加量によって調節できる。つまり、連鎖移動剤の添加量を増やすとクロロプレンゴムの分子量を小さくすることができ、添加量を減らすと分子量を大きくすることができる。用いる連鎖移動剤は特に限定されるものではなく、クロロプレンの重合に一般的に用いられる連鎖移動剤が使用可能である。連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタンやt−ドデシルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドやジエチルキサントゲンジスルフィド等のジアルキルキサントゲンジスルフィド類、ヨードホルム等が例示できる。
【0014】
連鎖移動剤の使用量は、特に限定されないが、クロロプレン系重合体の分子量(あるいは重合体を単離して得られるクロロプレンゴムのムーニー粘度)が適正となるように選定される。アルキル基の構造や目標とする分子量によって異なるが、一般にはクロロプレン系単量体100重量部に対して0.05〜5.0重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部の範囲で用いられる。
【0015】
乳化重合を終了させるためには、定法に従い重合禁止剤を添加すればよい。重合禁止剤としては、クロロプレンゴムの製造に一般的に用いられるものであれば特に制限は無く、例えば、フェノチアジン、ジエチルヒドロキシルアミン、ハイドロキノン、t−ブチルカテコール、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ハイドロキノンメチルエーテル等が使用できる。
【0016】
これらのうち、非水溶性のものを使用する場合は、クロロプレンや有機溶剤に溶解後、界面活性剤を共存させて水性乳濁液として用いればよい。
【0017】
乳化重合終了後のラテックスから重合体を単離する方法としては、凍結凝固法、塩析による方法、押出機による方法等、一般に知られている何れの方法を用いても良いが、通常、凍結凝固法が用いられる。
【0018】
本発明のクロロプレンゴムは、線状ポリスチレンを基準ポリマーとする重量平均分子量100〜150万の範囲の平均分岐指数gMが1.00〜1.12である。1.00より小さいと、刷毛塗り性が低下する。1.12より大きいと、十分な耐層分離性を得ることができない。
【0019】
平均分岐指数gMは、ポリクロロプレン鎖が線状であるか非線状であるかということを表した指数である。gM値が低い程、重合体鎖の分岐度は高く非線状であることを示す。本発明では、基準ポリマーとして、線状ポリスチレンを用いてクロロプレンゴムを相対比較する(基準ポリマー及び測定法については実施例参照)。gMの定義及び測定原理については、特開2005−220349などに記載がある。
【0020】
クロロプレンゴムのgM値を低くするには、クロロプレンゴムの分岐度を高くすればよく、例えば、クロロプレンの乳化重合の際の重合率を高くしたり、重合温度を上げたり、分子量が大きくなるように調整すればよい。
【0021】
本発明のクロロプレンゴムは、ムーニー粘度が55〜100ML(1+4)100℃であることが好ましい。55より小さいと接着剤の溶液粘度を使用領域にするために使用するクロロプレンゴムの量が多くなる場合がある。100より大きいと、接着剤の溶解時間が長くなる場合がある。
【0022】
本発明のクロロプレンゴムは、これを用いて得られる接着剤を被着体に塗り伸ばす際の刷毛塗り性の良さにも特徴がある。刷毛塗り性は、20℃に調整したクロロプレンゴムの10%トルエン溶液に、内径6mmのガラス管を30mm沈めて2000rpmで30秒回転させた時、ガラス管内を上昇するトルエン溶液の最高高さを計測することで評価できる。その高さが10mmを越えるクロロプレンゴムを接着剤に使用すると、刷毛で被着体に塗工する際の作業性が悪くなる場合がある。また、塗り伸ばした時に波状となり、接着層の厚みが不均一になるので、十分な接着強度が得られない場合がある。
【0023】
ガラス管内を上昇するトルエン溶液の最高高さを低くするには、クロロプレンゴムの分岐度を小さくすればよく、例えば、クロロプレンの乳化重合の際の重合率を低くしたり、重合温度を低く抑えたり、分子量が小さくなるように調整すればよい。
【0024】
本発明のクロロプレンゴムは、有機溶剤に溶解させ、金属酸化物、粘着付与樹脂、老化防止剤などの一般に用いられる添加剤を混合することによって接着剤とすることができる。混合方法は特に限定されないが、クロロプレンゴムをオープンロールなどの混練機を用いて素練りし、金属酸化物等の薬品の混合を行ういわゆる「混練法」、混練機を用いることなく、クロロプレンゴムと配合薬品を直接有機溶剤に溶解するいわゆる「直溶法」の何れの方法でもよい。
【0025】
本発明の溶剤系接着剤に用いる溶剤は、シックハウス症候群の原因物質となるトルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族系溶剤ではなく、n―ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの非芳香族系溶剤であって、単独ではクロロプレンゴムの溶解性に乏しい貧溶媒同士の混合体のみにてクロロプレンゴムを溶解することが好ましい。
【0026】
溶剤型接着剤を調製する際には、粘着付与樹脂を添加することが好ましい。この際に用いる粘着付与樹脂としては、特に限定するものではなく、溶剤型接着剤に一般的に使用される何れの粘着付与樹脂も使用可能である。具体的には、アルキルフェノール樹脂、ロジン樹脂、ロジンエステル、重合ロジン樹脂、水添ロジン樹脂、ポリテルペン樹脂、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5留分系石油樹脂、C9留分系石油樹脂、C5/C9留分系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂などが例示される。接着物性の観点からは、特にアルキルフェノール樹脂の使用が好ましい。
【0027】
粘着付与樹脂の配合量は、特に限定するものではないが、クロロプレンゴム100質量部に対し、10〜100質量部が好ましく、20〜80質量部がより好ましい。更に好ましくは、30〜70質量部である。
【0028】
また、溶剤型接着剤には、クロロプレンゴムが経年劣化する際に発生する塩酸を捕捉する目的や、アルキルフェノール樹脂とキレート化反応を起こさせる目的で金属酸化物を配合することも好ましい。
金属酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム等が例示されるが、これらに限定するものではない。本発明の接着剤では、酸化マグネシウムと酸化亜鉛を併用することが、接着剤の貯蔵中の粘度安定性が良好であるため好ましい。
金属酸化物の配合量も、特に限定されるものではないが、クロロプレンゴム100質量部に対して0.5〜15質量部が好ましく、2〜10質量部がより好ましい。
【0029】
クロロプレンゴム接着剤には、上述した以外にも、要求性能に合わせて、充填剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、塩素化ゴム、塩素化ポリエチレン、着色剤、硬化剤等を任意に添加することができる。
【0030】
本発明のクロロプレンゴムは、グラフト糊に使用しても良い。グラフト糊とは、クロロプレンゴムをトルエン、メチルエチルケトン等の溶剤に溶かし、メタクリル酸メチル等の単量体を添加し、ベンゾイルパーオキサイド等の重合開始剤を用いグラフト重合した改質クロロプレンゴムを用いた溶剤型接着剤であり、軟質塩ビ素材の接着に有用である。
【0031】
以下、実施例及び比較例により本発明の効果を詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。なお、以下の説明においてとくに断りのない限り、部、及び%は質量基準で表す。
【実施例】
【0032】
[実施例1]
[クロロプレンゴムの製造]
内容積5リットルの反応機を用いて、窒素雰囲気下、純水100部に不均化ロジン酸カリウム塩ロンヂスK−25(荒川化学工業社製)12部、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドの縮合物のナトリウム塩(商品名デモールN:花王製)0.5部、水酸化ナトリウム0.3部を溶解した。この溶液中にクロロプレン100部、ドデシルメルカプタン0.12部を加え乳化した後、過硫酸カリウムを開始剤として用い、窒素雰囲気下で10℃で乳化重合を行った。クロロプレンの重合率が75%に達したところでフェノチアジン乳濁液を加え重合を停止させた。次いで、減圧下で加熱し、未反応のクロロプレンを回収した。得られたポリクロロプレンラテックスを希酢酸によりpH7に調整後、定法の凍結凝固法によりシートとし、これを乾燥させてクロロプレンゴムを得た。平均分岐指数gM、ムーニー粘度ML(1+4)100℃、刷毛塗り性試験の結果を表1に示す。
【0033】
[平均分岐指数gM測定サンプルの調整]
線状ポリマーとして、東ソー社製スタンダードポリスチレンF−128(Mw=109万、Mw/Mn=1.08)と東ソー社製スタンダードポリスチレンF288(Mw=288万、Mw/Mn=1.09)をそれぞれ20mg測りとり、混合して20mlのTHF(特級、99.5%、和光化学工業社製)に23℃で溶解し、標準液とした。クロロプレンゴム40mgを20mlの特級THF(和光化学株式会社製)に23℃で溶解し、クロロプレンゴムの0.2%THF溶液を作製した。その溶液を0.5μmのフィルターでろ過し、測定サンプルとした。
【0034】
[平均分岐指数gMの測定]
平均分岐指数gMはGPC−MALLSにより測定した。MALLSは、ワイアットテクノロジー社製DAWN−DSP−F、ポンプはShodex社製DS−4、RI検出器はShodex社製RI−71を用いて行った。分離カラムはTSKgel GMHHR−H(30)を用い、流速は1ml/min、カラム温度は23℃、200μlの注入量で測定した。標準はジーエルサイエンス社製ポリスチレンスタンダード(Mw=30,300、Mw/Mn=1.0)を用いた。
ワイアットテクノロジー社製解析ソフトASTRAによりデータ処理を行い、基準試料に対する測定サンプルの回転2乗半径の比と分子量の相関を算出する。重量平均分子量100〜150万の範囲の分岐指数の平均をgMとする。
【0035】
[平均分岐指数gM(参考)の測定]
本特許においては、容易に入手でき、かつ品質が安定しているポリスチレンを標準物質とした。ポリスチレンとポリクロロプレンは化学構造が異なるため、ポリスチレンを標準物質として測定したポリクロロプレンの平均分岐指数gMは1.00を越える場合がある。
参考データとして、比較例1のクロロプレンポリマーを標準に用いてGPC−MALLS測定して得られた、平均分岐指数gM(参考)を表1及び表2に示す。
【0036】
[ムーニー粘度の測定]
クロロプレンゴムについて、JIS−K 6300に準拠し、100℃におけるムーニー粘度を測定した。
【0037】
[刷毛塗り性の評価]
クロロプレンゴム17gとトルエン153gをクロロプレンゴムが完全に溶解するまで混合攪拌し、クロロプレンゴムの10%トルエン溶液とする。20℃に調節した試験溶液に、内径6mmの透明ガラス管を30mm沈め、2000rpmで30秒回転させた。液面を基準として、ガラス管内を上昇した10%トルエン溶液の最高高さをノギスで測定した。
【0038】
[接着剤の調整]
アルキルフェノール樹脂(タマノル526:荒川化学工業社製)50部と酸化マグネシウム(キョウワマグ#150:協和化学工業社製)3部をシクロヘキサン100部に溶解させて、室温下、16時間キレート化反応させた。次に、そのシクロヘキサン溶液に対して、クロロプレンゴム100部、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(ノクラック200:大内新興化学工業社製)1部、酸化マグネシウム3部、酸化亜鉛1部、シクロヘキサン180部、n−ヘキサン75部、アセトン120部、酢酸イソプロピル55部を加え、クロロプレンゴムが完全に溶解するまで混合攪拌し、接着剤を得た。接着剤の粘度、耐層分離性及び剥離強度の結果を表1に示す。
【0039】
[接着剤の粘度測定]
接着剤を作成後、ブルックフィールド型粘度計を用いて25℃における粘度を測定した。
【0040】
[接着剤の耐層分離性試験]
接着剤をガラス製容器に入れ、遮光下、60℃の恒温水槽中に貯蔵した。8週間にわたり接着剤の外観観察を実施し、接着剤成分の分離が見られた週を記録した。
【0041】
[剥離強度]
剥離強度試験は、被着体として帆布を用い、JIS K 6854−3:1999に規定された方法に準じて行った。得られた接着剤を、帆布に約300g/mの塗布量となるように3回に分けて刷毛にて塗布し、最終塗布から30分放置した後、帆布の接着剤塗布面同士を張り合わせて圧着した。張り合わせたサンプルを23℃で7日間養生した後、200×25mmのサイズに裁断し、23℃雰囲気下で200mm/分の速度でT型剥離試験を行った。
【0042】
[実施例2]
ドデシルメルカプタンが0.11部、重合率が73%であること以外、実施例1と同様の条件で重合を行った。接着剤の調整は、キレート反応後に加える溶剤がシクロヘキサン203部、n−ヘキサン81部、アセトン130部、酢酸イソプロピル60部であること以外は実施例1の条件で行った。平均分岐指数gM、ムーニー粘度ML(1+4)100℃、刷毛塗り性試験、接着剤の粘度、耐層分離性、剥離強度の結果を表1に示す。
【0043】
[実施例3]
ドデシルメルカプタンが0.13部、重合率が79%であること以外、実施例1と同様の条件で重合を行った。接着剤の調整は、キレート反応後に加える溶剤が、シクロヘキサン157部、n−ヘキサン69部、アセトン110部、酢酸イソプロピル51部であること以外は実施例1の条件で行った。平均分岐指数gM、ムーニー粘度ML(1+4)100℃、刷毛塗り性試験、接着剤の粘度、耐層分離性、剥離強度の結果を表1に示す。
【0044】
[実施例4]
ドデシルメルカプタンが0.18部、重合温度が30℃であること以外、実施例1と同様の条件で重合を行った。接着剤の調整は、キレート反応後に加える溶剤が、シクロヘキサン157部、n−ヘキサン69部、アセトン110部、酢酸イソプロピル51部であること以外は実施例1の条件で行った。平均分岐指数gM、ムーニー粘度ML(1+4)100℃、刷毛塗り性試験、接着剤の粘度、耐層分離性、剥離強度の結果を表1に示す。
【0045】
[実施例5]
クロロプレン97部、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンが3部であること以外、実施例1と同様の条件で重合を行った。接着剤の調整は実施例1の条件で行った。平均分岐指数gM、ムーニー粘度ML(1+4)100℃、刷毛塗り性試験、接着剤の粘度、耐層分離性、剥離強度の結果を表1に示す。
【0046】
[実施例6]
ドデシルメルカプタンが0.16部、重合率が85%であること以外、実施例1と同様の条件で重合を行った。接着剤の調整は、キレート反応後に加える溶剤が、シクロヘキサン70部、n−ヘキサン31部、アセトン49部、酢酸イソプロピル23部であること以外は実施例1の条件で行った。平均分岐指数gM、ムーニー粘度ML(1+4)100℃、刷毛塗り性試験、接着剤の粘度、耐層分離性、剥離強度の結果を表1に示す。
【0047】
[実施例7]
ドデシルメルカプタンが0.09部、重合率が63%であること以外、実施例1と同様の条件で重合を行った。接着剤の調整は、キレート反応後に加える溶剤が、シクロヘキサン235部、n−ヘキサン103部、アセトン165部、酢酸イソプロピル76部であること以外は実施例1の条件で行った。平均分岐指数gM、ムーニー粘度ML(1+4)100℃、刷毛塗り性試験、接着剤の粘度、耐層分離性、剥離強度の結果を表1に示す。
【0048】
[実施例8]
ドデシルメルカプタンが0.10部、重合率が85%であること以外、実施例1と同様の条件で重合を行った。接着剤の調整は、キレート反応後に加える溶剤がシクロヘキサン203部、n−ヘキサン81部、アセトン130部、酢酸イソプロピル60部であること以外は実施例1の条件で行った。平均分岐指数gM、ムーニー粘度ML(1+4)100℃、刷毛塗り性試験、接着剤の粘度、耐層分離性、剥離強度の結果を表1に示す。
【0049】
[比較例1]
ドデシルメルカプタン0.11部、重合率が68%であること以外、実施例1と同様の条件で重合を行った。接着剤の配合は実施例1の条件で行った。平均分岐指数gM、ムーニー粘度ML(1+4)100℃、刷毛塗り性試験、接着剤の粘度、耐層分離性、剥離強度の結果を表2に示す。
【0050】
[比較例2]
ドデシルメルカプタン0.14部、重合率が80%であること以外、実施例1と同様の条件で重合を行った。接着剤の配合はキレート反応後に加える溶剤が、シクロヘキサン192部、n−ヘキサン78部、アセトン125部、酢酸イソプロピル57部であること以外は実施例1の条件で行った。平均分岐指数gM、ムーニー粘度ML(1+4)100℃、刷毛塗り性試験、接着剤の粘度、耐層分離性、剥離強度の結果を表2に示す。
【0051】
[比較例3]
ドデシルメルカプタン0.10部、重合温度30℃、重合率が70%であること以外、実施例1と同様の条件で重合を行った。接着剤の配合はキレート反応後に加える溶剤が、シクロヘキサン151部、n−ヘキサン66部、アセトン108部、酢酸イソプロピル47部であること以外は実施例1の条件で行った。平均分岐指数gM、ムーニー粘度ML(1+4)100℃、刷毛塗り性試験、接着剤の粘度、耐層分離性、剥離強度の結果を表2に示す。
【0052】
[比較例4]
クロロプレン97部、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンが3部、重合率が68%であること以外、実施例1と同様の条件で重合を行った。接着剤の調整は実施例1の条件で行った。平均分岐指数gM、ムーニー粘度ML(1+4)100℃、刷毛塗り性試験、接着剤の粘度、耐層分離性、剥離強度の結果を表2に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル浸透クロマトグラフ−多角度レーザー光散乱検出器(GPC−MALLS)を用いて測定される、線状ポリスチレンを基準ポリマーとする重量平均分子量100万〜150万での平均分岐指数gMが、1.00〜1.12であるクロロプレンゴム。
【請求項2】
ムーニー粘度が、55〜100ML(1+4)100℃である請求項1記載のクロロプレンゴム。
【請求項3】
20℃に調整したクロロプレンゴムの10%トルエン溶液に、内径6mmの透明ガラス管を30mm沈めて2000rpmで30秒回転させた時、ガラス管内を上昇するトルエン溶液の最高高さが10mm以下となることを特徴とする請求項1または項2に記載のクロロプレンゴム。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか一項に記載のクロロプレンゴムを非芳香族溶剤に溶解することで得られる接着剤。

【公開番号】特開2012−188618(P2012−188618A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55356(P2011−55356)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】