説明

グリスポンプ装置

【課題】 吐出部をベース体に着脱可能にし、吐出部を所望の数だけ使用できるようにして、汎用性を向上させる。
【解決手段】 グリスを収容する収容室2を有し収容室2に連通する連通口部4を備えたベース体1と、ベース体1の収容室2に連通しグリスを吸入する吸入口11及びグリスを吐出する吐出口12を備えるとともに吸入されたグリスを収納するシリンダ室13を有した吐出部本体14を備えた吐出部10と、吐出部10のシリンダ室13に対し進退動可能に設けられ進出時にシリンダ室13内のグリスを押し出して吐出口12から吐出させ退出時に収容室2のグリスを吸入口11から吸入させるピストン20と、ピストン20を進退動させる駆動部30とを備え、吐出部10及びピストン20の組を複数組備えるとともに、ベース体1に吐出部10を着脱可能にし、吐出部10を連通口部4から外したときピストン20が連通口部4内で遊動しうる閉塞体40を取付可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械や産業機械等にグリスを供給するグリスポンプ装置に係り、特に、グリスを吐出する吐出口を複数備えたグリスポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のグリスポンプ装置としては、例えば、特許文献1(WO2005/108849号公報)に記載されたものが知られている。図9に示すように、このグリスポンプ装置Saは、グリスが充填されるグリスタンクTaが取り付けられグリスタンクTaからのグリスが流入しこの流入したグリスを収容する収容室101を有したベース体100と、ベース体100に一体に設けられベース体100の収容室101に連通しこの収容室101からのグリスを吸入する吸入口111及びグリスを吐出する吐出口112を備えるとともに吸入口111及び吐出口112の間に設けられ吸入口111からのグリスを収納するシリンダ室113を有した吐出部110と、吐出部110のシリンダ室113に対し進退動可能に設けられ進出時にシリンダ室113内のグリスを押し出して吐出口112から吐出させ退出時に収容室101のグリスを吸入口111からシリンダ室113内に吸入させるピストン120と、ピストン120を進退動させる駆動部130とを備えるとともに、吐出部110及びピストン120の組を各ピストン120の軸線121が平行になるように複数組備えて構成されている。
【0003】
このグリスポンプ装置Saのベース体100にグリスタンクTaを取り付けると、グリスタンクTaからグリスが収容室101に流入して収容される。この状態で、駆動部130により各ピストン120を退出方向に移動させると、収容室101内に収容されていたグリスが吸入口111から各シリンダ室113内に吸入されるようになり、吸入されたグリスが各シリンダ室113内に収納される。各シリンダ室113にグリスが収納された後、駆動部130により各ピストン120を進出方向に移動させると、各ピストン120が各シリンダ室113内に進入し、各シリンダ室113内のグリスが押し出されて、各吐出口112からグリスが吐出される。これにより、シリンダ室113内に収納された量だけグリスを吐出させることができるので、所定量のグリスを吐出させることができる。また、吐出部110を複数備えているので、一度に複数の個所にグリスを吐出させることができ、そのため、給油効率が向上する。
【0004】
【特許文献1】WO2005/108849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この従来のグリスポンプ装置Saにおいては、使用したくない吐出部110の吐出口112を閉塞することができず、そのため、吐出部110を必要な数だけ使用することができないという問題があった。その理由は、使用したくない吐出部110の吐出口112を閉塞すると、吐出部110がベース体100に一体に設けられているため、閉塞した吐出部110においては、ピストン120がシリンダ室113に進入してシリンダ室113の容積を可変させることができず、グリスを押し出して吐出させることができないことから、ピストン120が停止させられ、装置が故障する原因になるからである。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、吐出部をベース体に着脱可能にし、吐出部を所望の数だけ使用できるようにして、汎用性を向上させたグリスポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するため、本発明のグリスポンプ装置は、グリスが充填されるグリスタンクが取り付けられ該グリスタンクからのグリスが流入し該流入したグリスを収容する収容室を有したベース体と、該ベース体に設けられ該ベース体の収容室に連通し該収容室からのグリスを吸入する吸入口及びグリスを吐出する吐出口を備えるとともに該吸入口及び吐出口の間に設けられ該吸入口からのグリスを収納するシリンダ室を有した吐出部と、上記吐出部のシリンダ室に対し進退動可能に設けられ進出時に該シリンダ室内のグリスを押し出して上記吐出口から吐出させ退出時に上記収容室のグリスを吸入口からシリンダ室内に吸入させるピストンと、該ピストンを進退動させる駆動部とを備えるとともに、上記吐出部及びピストンの組を各ピストンの軸線が平行になるように複数組備えたグリスポンプ装置において、上記吐出部を、一端に吸入口を有し他端に吐出口を有するとともに、該吸入口及び吐出口の間にシリンダ室を有した吐出部本体を備えて構成し、該吐出部本体の一端側外側に雄ネジを形成し、上記ベース体の一側面に上記雄ネジが螺合する雌ネジが形成され上記収容室に連通する連通口部を設け、該ベース体の雌ネジに対する上記吐出部本体の雄ネジの螺合及び螺合解除により上記吐出部を上記ベース体に着脱可能にし、上記吐出部を上記連通口部から外したとき該連通口部に螺合し上記ピストンが該連通口部内で遊動しうる閉塞体を取付可能にした構成としている。
【0008】
これにより、このグリスポンプ装置でグリスを吐出させるときは、駆動部により、先ず、各ピストンを退出方向に移動させる。この場合、収容室内に収容されていたグリスが吸入口から各シリンダ室内に吸入されるようになり、吸入されたグリスが各シリンダ室内に収納される。次に、各シリンダ室にグリスが収納された後、駆動部により各ピストンを進出方向に移動させると、各ピストンが各シリンダ室内に進入され、各シリンダ室内のグリスが押し出されて、各吐出口からグリスが吐出される。これにより、シリンダ室内に収納された量だけグリスを吐出させることができるので、所定量のグリスを吐出させることができる。また、吐出部を複数備えているので、一度に複数の個所にグリスを吐出させることができ、そのため、給油効率が向上する。
【0009】
また、本装置に設けられた吐出部の数よりも少ない箇所にグリスを吐出させる場合は、使用したくない吐出部本体をベース体から取り外し、取り外した連通口部に閉塞体を螺合させて取り付ける。そして、上記と同様に駆動部により、ピストンを進退動させると、吐出部本体の吐出口からのみグリスが吐出され、閉塞体からはグリスが吐出されないようになる。このとき、閉塞体に対応するピストンは、連通口部内で遊動するので、グリスが吐出されなくても、ピストンは進退動することができ、そのため、装置が故障する等の事態を防止することができる。即ち、吐出部本体と閉塞体とをベース体に交換可能にしたので、吐出部が所望の数だけ使用できるようになり、そのため、汎用性が向上する。
【0010】
そして、必要に応じ、上記吐出部の吸入口側内部に、上記ピストンが摺動する弾性リングを嵌着し、上記吐出部の吐出口側内部に、上記シリンダ室からのグリスの吐出のみを許容するチェック弁を設けた構成としている。これにより、シリンダ室内にグリスが収納された後、ピストンをシリンダ室に進入させると、グリスがピストンによって押し出され、その圧力によってチェック弁が開いて吐出口からグリスが吐出される。また、ピストンがシリンダ室から退出するとチェック弁が閉じて吐出口からシリンダ室にグリスが逆流して流入する事態を防止する。更に、吸入口側内部に弾性リングを嵌着したので、ピストンの進退動時に、ピストンが弾性リングに摺動し、ピストンと弾性リングとでシリンダ室をシールするようになり、そのため、シリンダ室内のグリスが吸入口から漏れ出る事態を防止することができる。
【0011】
また、必要に応じ、上記複数のピストンを、その軸線が上記収容室を貫通し上記連通口部に進入するように上記ベース体の他側面側に形成した摺動孔に移動可能に支持した構成としている。これにより、ピストンがベース体側に支持されるので、吐出部本体とピストンとが別体となり、そのため、吐出部本体及び閉塞体の交換が容易になる。
【0012】
更に、必要に応じ、上記駆動部を、上記複数のピストンの基端が付帯される一つの板状部材と、該板状部材を上記ピストンの進出方向に付勢するスプリングと、励磁時に上記スプリングの付勢力に抗して上記板状部材を上記ピストンの退出方向に引張し非励磁時に上記スプリングの付勢力により上記板状部材を上記ピストンの進出方向に移動させるソレノイドとを備えた構成としている。これにより、ソレノイドに通電して励磁させると、このソレノイドによって板状部材がピストンの退出方向に引張されて移動する。また、ソレノイドへの通電を停止して非励磁にさせると、スプリングの付勢力によって板状部材がピストンの進出方向に移動する。このとき、一つの板状部材に複数のピストンが付帯されているので、この板状部材の進退動により、複数のピストンが同時に進退動する。即ち、複数のピストンを一度に進退動させることができるので、駆動部を簡易に構成することができる。
【0013】
更にまた、必要に応じ、上記板状部材の進退動動作を検知する検知装置を設けた構成としている。これにより、ピストンの進退動を毎回検知するので、確実にグリスが吐出されていることを認知することができる。また、複数のピストンが一つの板状部材に付帯されているので、板状部材の進退動動作を検知することにより、全てのピストンの検知を一度に行なうことができる。更に、板状部材の進退動回数を積算した場合、一度のグリスの吐出量は一定であるため、グリスの総吐出量を認知することができ、このことから、グリスタンク内のグリスの残量を認知することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のグリスポンプ装置によれば、ピストンを退出方向に移動させてグリスを吐出部のシリンダ室内に収納させ、その後、ピストンを進出方向に移動させて吐出部のシリンダ室内に進入させ、シリンダ室内のグリスを押し出して吐出口からグリスを吐出させる。本装置のピストンと吐出部との組は複数備えられており、吐出部の数よりも少ない箇所にグリスを吐出させる場合は、使用したくない吐出部本体をベース体から取り外し、閉塞体を取り付ける。そして、上記と同様に駆動部により、ピストンを進退動させると、吐出部本体の吐出口からのみグリスが吐出され、閉塞体からはグリスが吐出されないようになる。このとき、閉塞体に対応するピストンは、連通口部内で遊動するので、グリスが吐出されなくても、ピストンは進退動することができ、そのため、装置が故障する等の事態を防止することができる。即ち、吐出部本体と閉塞体とをベース体に交換可能にしたので、吐出部が所望の数だけ使用できるようになり、そのため、汎用性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係るグリスポンプ装置を説明する。
図1乃至図7には、本発明の実施の形態に係るグリスポンプ装置Sを示している。このグリスポンプ装置Sには、図2に示すような、グリスタンクTが取り付けられる。このグリスタンクTは、グリスが充填されるもので、容器本体50と、取付口部51とを備えてなる。
【0016】
本発明の実施の形態に係るグリスポンプ装置Sは、グリスタンクTが取り付けられグリスタンクTからのグリスが流入し流入したグリスを収容する収容室2を有したベース体1と、ベース体1に設けられベース体1の収容室2に連通し収容室2からのグリスを吸入する吸入口11及びグリスを吐出する吐出口12を備えるとともに吸入口11及び吐出口12の間に設けられ吸入口11からのグリスを収納するシリンダ室13を有した吐出部10と、吐出部10のシリンダ室13に対し進退動可能に設けられ進出時にシリンダ室13内のグリスを押し出して吐出口12から吐出させ退出時に収容室2のグリスを吸入口11からシリンダ室13内に吸入させるピストン20と、ピストン20を進退動させる駆動部30とを備えて構成されている。一つの吐出部10と一つのピストン20とを1組とし、この組を各ピストン20の軸線21が平行になるように複数組備えている。実施の形態では、6組備えている。
【0017】
ベース体1は、図1乃至図3,図6及び図7に示すように、一側面3に、雌ネジ8が形成され収容室2に連通する連通口部4が設けられている。また、他側面5側には、ピストン20を、その軸線21方向に移動可能に支持する摺動孔6が形成されている。更に、上面7に、グリスタンクTの取付口部51が取り付けられており、このグリスタンクTを保護するための着脱可能なカバー52が設けられている。
また、収容室2は、図2に示すように、ベース体1内部に設けられ、グリスタンクTの取付口部51と連通し、略逆U字形に形成されている。
【0018】
吐出部10は、図1,図3,図4,図6及び図7に示すように、円筒状に形成され、一端に吸入口11を有し他端に吐出口12を有するとともに、吸入口11及び吐出口12の間にシリンダ室13を有した吐出部本体14を備えて構成されている。この吐出部本体14の一端側外側には、ベース体1の一側面3に形成された雌ネジ8に螺合する雄ネジ17が形成されており、ベース体1の雌ネジ8に対する吐出部本体14の雄ネジ17の螺合及び螺合解除により吐出部10をベース体1に着脱可能にしている。また、吐出部10の吸入口11側内部には、ピストン20が摺動する弾性リング15が嵌着されている。実施の形態では、弾性リング15として、Vリングを用いている。更に、吐出部10の吐出口12側内部には、シリンダ室13からのグリスの吐出のみを許容するチェック弁16が設けられている。このチェック弁16は、シリンダ室13内のグリスをシリンダ室13内に留める閉位置とシリンダ室13内から吐出させる開位置とに移動する弁体16aと、弁体16aを閉位置に付勢するスプリング16bとで構成されている。
また、吐出部10としては、種々の吐出量のものが用意され、適宜に選択される。この吐出量は、吐出部10のシリンダ室13の容積と同じである。本実施の形態では、シリンダ室13の容積を、0.01mlになるように形成したものを選択している。
【0019】
また、本実施の形態では、吐出部10をベース体1の連通口部4から外したとき、連通口部4の雌ネジ8に螺合しピストン20が連通口部4内で遊動しうる閉塞体40を取り付けることが可能である。この閉塞体40は、図5及び図7に示すように、カップ状に形成されてピストンが遊動しうる凹所41が形成され、連通口部4の雌ネジ8に螺合する雄ネジ43が形成されている。また、この閉塞体40の頭部42は、六角レンチが係合する形状に形成されている。
【0020】
ピストン20は、図1,図6及び図7に示すように、吐出部10のシリンダ室13の内壁に摺動する径の円柱状に形成されている。このピストン20は、軸線21が収容室2を貫通して先端22側が連通口部4に進入するようにベース体1の摺動孔6に支持されている。また、このピストン20の基端23は、後述の板状部材31に付帯されている。
【0021】
駆動部30は、図1,図6及び図7に示すように、6つのピストン20の基端23が付帯される一つの板状部材31と、板状部材31をピストン20の進出方向に付勢するスプリング32と、励磁時にスプリング32の付勢力に抗して板状部材31をピストン20の退出方向に引張し非励磁時にスプリング32の付勢力により板状部材31をピストン20の進出方向に移動させるソレノイド33とを備えて構成されている。この駆動部30は、ベース体1に設けられる断面コ字状の容器34の内部に収納されている。ソレノイド33への通電,非通電は、例えば、このグリスポンプ装置Sが取り付けられる機械側の制御部やコントローラからの指令により行なわれる。
【0022】
板状部材31は、円盤状に形成され、これにピストン20が等間隔で6つ付帯されている。この板状部材31は、ソレノイド33に接続されている仲介部材35に接続されている。
スプリング32は、板状部材31の一方面31aに当接して設けられており、板状部材31の一方面31aをその付勢力によって押圧して、ソレノイド33の非励磁時に板状部材31をピストン20の進出方向に移動させる。
【0023】
また、容器34内部には、板状部材31の進退動動作を検知する検知装置36が設けられている。この検知装置36は、図1に示すように、リミットスイッチで構成され、ソレノイド33の固定板33aに取り付けられており、ソレノイド33によって進退動する板状部材31によりON,OFFさせられて、検知信号を送出する。この検知信号は、例えば、このグリスポンプ装置Sが取り付けられる機械側の制御部やコントローラにおいて、板状部材31を介して各ピストン20の進退動動作が正常に行なわれていることを認知し、あるいはこの検知信号を計数し、例えば、グリスの総吐出量やグリスタンクT内のグリスの残量を認知できるようになっている。
【0024】
従って、このグリスポンプ装置Sを用いて、グリスを吐出させるときは、以下のようにする。先ず、複数の連通口部4の全てに吐出部10を取り付け、全ての連通口部4からグリスを吐出させる場合について説明する。
先ず、所望の吐出量の吐出部10を選択し、この吐出部10を構成する吐出部本体14の雄ネジ17をベース体1の連通口部4の雌ネジ8に螺合させて取り付ける。本実施の形態では、吐出量が0.01mlの吐出部10を選択しているが、必ずしもこれに限定されず、また、複数の連通口部4に取り付ける吐出部10を、夫々異なる吐出量のものとしても良い。
【0025】
また、グリスタンクTの装着は、ベース体1からカバー52を取り外し、グリスタンクTをその取付口部51においてベース体1に取り付け、それから、ベース体1にカバー52を取り付けて行なう。これにより、グリスタンクT内に充填されているグリスが取付口部51を通過してベース体1の収容室2内に流入可能になる。
【0026】
グリスポンプ装置Sを作動させるときは、例えば、このグリスポンプ装置Sが取り付けられる機械側の制御部やコントローラからの指令により駆動部30のソレノイド33の通電,非通電により行なう。詳しくは、図6(A)に示すように、ソレノイド33に通電して励磁させると、このソレノイド33によって仲介部材35がピストン20の退出方向に引張されて移動する。仲介部材35が引張されると、仲介部材35に接続されている板状部材31が引張され、板状部材31に付帯されている各ピストン20が一斉に退出方向に移動する。そして、各ピストン20の先端22が連通口部4から退出すると、収容室2内に収容されていたグリスが吸入口11から各吐出部10のシリンダ室13内に吸入されるようになり、吸入されたグリスが各シリンダ室13内に収納される。このとき、吐出部10の吐出口12側に設けられたチェック弁16の弁体16aはスプリング16bの付勢力によって閉位置に位置されているので、吐出口12からシリンダ室13内にグリスが逆流して流入する事態が防止される。
【0027】
各シリンダ室13内にグリスが収納された後は、図6(B)に示すように、ソレノイド33への通電を停止して非励磁にさせる。これにより、ソレノイド33によるスプリング32の抗力がなくなるので、スプリング32が板状部材31の一方面31aをその付勢力によって押圧して、板状部材31及び仲介部材35をピストン20の進出方向に移動させ、板状部材31に付帯されている各ピストン20が一斉に進出方向に移動する。そして、各ピストン20の先端22が各吐出部10のシリンダ室13内に進入すると、各シリンダ室13内に収納されているグリスが押し出され、その圧力によってスプリング16bの付勢力に抗してチェック弁16の弁体16aが開位置に移動し、各吐出口12からグリスが吐出される。この状態では、ピストン20と弾性リング15により吸入口11をシールするので、収容室2内のグリスはシリンダ室13内に収納されなくなる。
【0028】
これにより、シリンダ室13内に収納された量だけグリスを吐出させることができるので、所定量のグリスを吐出させることができる。また、吐出部10を複数備えているので、一度に複数の個所にグリスを吐出させることができ、そのため、給油効率が向上する。
【0029】
このように、ソレノイド33の通電,非通電により、グリスを吐出させた後、再びピストン20を退出させてシリンダ室13にグリスを収納させ、その後、ピストン20を進出させてグリスを吐出させる。このような動作を繰り返し行ない、所定箇所にグリスを供給する。このとき、吸入口11側内部に弾性リング15が嵌着されているので、ピストン20の進退動時に、ピストン20が弾性リング15に摺動し、ピストン20と弾性リング15とでシリンダ室13をシールするようになり、そのため、シリンダ室13内のグリスが吸入口11から漏れ出る事態を防止することができる。また、一つの板状部材31に複数のピストン20が付帯されているので、複数のピストン20を一度に進退動させることができ、そのため、駆動部30を簡易に構成することができる。
【0030】
また、検知装置36においては、ソレノイド33の励磁,非励磁により、板状部材31の進退動が検知される。この場合、検知装置36が板状部材31を介してピストン20の進退動を毎回検知することになるので、例えば、このグリスポンプ装置Sが取り付けられる機械側の制御部やコントローラにおいて、グリスが吐出されていることを認知することができる。この場合、複数のピストン20が一つの板状部材31に付帯されているので、一つの板状部材31の進退動動作を検知することにより、全てのピストン20の検知を一度に行なうことができる。
また、例えば、このグリスポンプ装置Sが取り付けられる機械側の制御部やコントローラにおいて、この検知信号を計数し、例えば、グリスの総吐出量やグリスタンクT内のグリスの残量を認知することができる。
【0031】
次に、複数の連通口部4のうち、所定数の連通口部4からグリスを吐出させる場合について説明する。例えば、6つの連通口部4のうち、4つの連通口部4からグリスを吐出させ、2つの連通口部4を使用しない場合について説明する。
【0032】
この場合、2つの吐出部10の代わりに2つの閉塞体40を取り付ける。詳しくは、図7に示すように、2つの吐出部10をベース体1の連通口部4から取り外し、この2つの連通口部4の雌ネジ8に、各閉塞体40の雄ネジ43を螺合させて取り付ける。取り付けは、頭部42を六角レンチで回すことにより行なう。このとき、ピストン20はベース体1側に支持されているので、吐出部本体14とピストン20とが別体となり、そのため、吐出部本体14と閉塞体40との交換が容易になる。そして、上記と同様に駆動部30により、ピストン20を進退動させると、吐出部10の吐出口12からのみグリスが吐出され、閉塞体40からはグリスが吐出されないようになる。このとき、閉塞体40に対応するピストン20は、図7(B)に示すように、閉塞体40の凹所41内で遊動するようになる。従って、グリスが吐出されなくても、ピストン20は進退動することができ、そのため、装置が故障する等の事態を防止することができる。
このように、吐出部10と閉塞体40とをベース体1に交換可能にしたので、吐出部10が所望の数だけ使用できるようになり、そのため、汎用性が向上する。
【0033】
尚、上記実施の形態においては、ピストン20をベース体1側に設け、ピストン20と吐出部10とを別体にしたが、図8に示すように、ピストン20を吐出部10に設けて一体にしても良い。この場合、ピストン20を、その軸線21が収容室2を貫通するように吐出部本体14に形成した摺動孔18に移動可能に支持させ、駆動部30により、板状部材31がピストン20の進出方向に移動したとき、この板状部材31によりピストン20は押圧されて進出し、シリンダ室13内のグリスを押し出して吐出させる。また、内装したスプリング19によりピストン20を退出させてシリンダ室13内にグリスを収納させる。
【0034】
尚また、上記実施の形態において、吐出部10とピストン20との組を6組備えて構成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、何組でも良く、適宜変更して差支えない。
また、上記実施の形態において、収容室2を略逆U字形に形成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、各吸入口11及びグリスタンクTと連通していれば良く、適宜変更して差支えない。
更に、上記実施の形態において、板状部材31を円盤状に形成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、どのような形状でも良く、適宜変更して差支えない。
更にまた、上記実施の形態において、検知装置36をリミットスイッチで構成したが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態に係るグリスポンプ装置を示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るグリスポンプ装置を示す図1中A−A断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るグリスポンプ装置を示す正面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る吐出部を示し、(A)は側面断面図、(B)は斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る閉塞体を示し、(A)は側面断面図、(B)は斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るグリスポンプ装置を示し、(A)はピストンを退出させた状態、(B)はピストンを進出させた状態を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るグリスポンプ装置の吐出部及び閉塞体を取り付けた状態を示し、(A)はピストンを退出させた状態、(B)はピストンを進出させた状態を示す断面図である。
【図8】ピストンを吐出部に設けて一体に形成したグリスポンプ装置を示す断面図である。
【図9】従来のグリスポンプ装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
S グリスポンプ装置
T グリスタンク
1 ベース体
2 収容室
3 一側面
4 連通口部
5 他側面
6 摺動孔
7 上面
8 雌ネジ
10 吐出部
11 吸入口
12 吐出口
13 シリンダ室
14 吐出部本体
15 弾性リング
16 チェック弁
16a 弁体
16b スプリング
17 雄ネジ
18 摺動孔
19 スプリング
20 ピストン
21 軸線
22 先端
23 基端
30 駆動部
31 板状部材
31a 一方面
32 スプリング
33 ソレノイド
33a 固定板
34 容器
35 仲介部材
36 検知装置
40 閉塞体
41 凹所
42 頭部
43 雄ネジ
50 容器本体
51 取付口部
52 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリスが充填されるグリスタンクが取り付けられ該グリスタンクからのグリスが流入し該流入したグリスを収容する収容室を有したベース体と、該ベース体に設けられ該ベース体の収容室に連通し該収容室からのグリスを吸入する吸入口及びグリスを吐出する吐出口を備えるとともに該吸入口及び吐出口の間に設けられ該吸入口からのグリスを収納するシリンダ室を有した吐出部と、上記吐出部のシリンダ室に対し進退動可能に設けられ進出時に該シリンダ室内のグリスを押し出して上記吐出口から吐出させ退出時に上記収容室のグリスを吸入口からシリンダ室内に吸入させるピストンと、該ピストンを進退動させる駆動部とを備えるとともに、上記吐出部及びピストンの組を各ピストンの軸線が平行になるように複数組備えたグリスポンプ装置において、
上記吐出部を、一端に吸入口を有し他端に吐出口を有するとともに、該吸入口及び吐出口の間にシリンダ室を有した吐出部本体を備えて構成し、該吐出部本体の一端側外側に雄ネジを形成し、上記ベース体の一側面に上記雄ネジが螺合する雌ネジが形成され上記収容室に連通する連通口部を設け、該ベース体の雌ネジに対する上記吐出部本体の雄ネジの螺合及び螺合解除により上記吐出部を上記ベース体に着脱可能にし、上記吐出部を上記連通口部から外したとき該連通口部に螺合し上記ピストンが該連通口部内で遊動しうる閉塞体を取付可能にしたことを特徴とするグリスポンプ装置。
【請求項2】
上記吐出部の吸入口側内部に、上記ピストンが摺動する弾性リングを嵌着し、上記吐出部の吐出口側内部に、上記シリンダ室からのグリスの吐出のみを許容するチェック弁を設けたことを特徴とする請求項1記載のグリスポンプ装置。
【請求項3】
上記複数のピストンを、その軸線が上記収容室を貫通し上記連通口部に進入するように上記ベース体の他側面側に形成した摺動孔に移動可能に支持したことを特徴とする請求項1または2記載のグリスポンプ装置。
【請求項4】
上記駆動部を、上記複数のピストンの基端が付帯される一つの板状部材と、該板状部材を上記ピストンの進出方向に付勢するスプリングと、励磁時に上記スプリングの付勢力に抗して上記板状部材を上記ピストンの退出方向に引張し非励磁時に上記スプリングの付勢力により上記板状部材を上記ピストンの進出方向に移動させるソレノイドとを備えて構成したことを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載のグリスポンプ装置。
【請求項5】
上記板状部材の進退動動作を検知する検知装置を設けたことを特徴とする請求項4記載のグリスポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−65619(P2010−65619A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233313(P2008−233313)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(591231926)リューベ株式会社 (25)
【Fターム(参考)】