説明

ケースモールド型コンデンサ及びこれに用いるバスバーの製造方法

【課題】ハイブリッド自動車等に使用されるケースモールド型コンデンサに関し、小型軽量化と低ESL化を犠牲にせず、低コスト化を図ることを目的とする。
【解決手段】N極バスバーが、夫々一端に接合部6a、6b、7a、8aを設けた複数のN極分割バスバー6〜8を上記接合部6a、6bと7a、8aを突き合わせて接合することによって一体化して構成され、かつ、上記接合部6a、6b、7a、8aがN極分割バスバー6〜8を構成する基材の幅方向に対して斜め方向に切断されることにより、この接合部の断面積が基材の幅方向に沿って接合部を設けた場合の断面積と比べて大きくなるようにすると共に、各接合部の両端に基材を部分的に延設した補強部6c、6d、7b、8b、8cを設けた構成により、材料歩留まり向上による低コスト化を図り、バスバーの大型化、不要な抵抗の発生を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器、電気機器、産業機器、自動車等に使用され、特に、ハイブリッド自動車のモータ駆動用インバータ回路の平滑用、フィルタ用、スナバ用に最適な金属化フィルムコンデンサをケース内に収容して樹脂モールドしたケースモールド型コンデンサ及びこれに用いるバスバーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、あらゆる電気機器がインバータ回路で制御され、省エネルギー化、高効率化が進められている。中でも自動車業界においては、電気モータとエンジンで走行するハイブリッド車(以下、HEVと呼ぶ)が市場導入される等、地球環境に優しく、省エネルギー化、高効率化に関する技術の開発が活発化している。
【0003】
このようなHEV用の電気モータは使用電圧領域が数百ボルトと高いため、このような電気モータに関連して使用されるコンデンサとして、高耐電圧で低損失の電気特性を有する金属化フィルムコンデンサが注目されており、更に市場におけるメンテナンスフリー化の要望からも極めて寿命が長い金属化フィルムコンデンサを採用する傾向が目立っている。
【0004】
そして、このような金属化フィルムコンデンサは、一般に金属箔を電極に用いるものと、誘電体フィルム上に設けた蒸着金属を電極に用いるものとに大別される。中でも、蒸着金属を電極(以下、金属蒸着電極と呼ぶ)とする金属化フィルムコンデンサは、金属箔のものに比べて電極の占める体積が小さく小型軽量化が図れることと、金属蒸着電極特有の自己回復機能(絶縁欠陥部で短絡が生じた場合に、短絡のエネルギーで欠陥部周辺の金属蒸着電極が蒸発・飛散して絶縁化し、コンデンサの機能が回復する性能)により絶縁破壊に対する信頼性が高いことから、従来から広く用いられているものである。
【0005】
また、このように構成された金属化フィルムコンデンサをHEV用として用いる場合には、使用電圧の高耐電圧化、大電流化、大容量化等が強く要求されるため、バスバーによって並列接続した複数の金属化フィルムコンデンサをケース内に収納し、このケース内にモールド樹脂を注型したケースモールド型コンデンサが開発され、実用化されている。
【0006】
図7(a)、(b)はこの種の従来のケースモールド型コンデンサの構成を示した平面断面図と正面断面図であり、図7において、21は樹脂製のコンデンサケース、22はコンデンサ素子を示す。23aおよび23bは一体に連なる接続金具であり、23aはコンデンサケース21に内蔵される部分、23bはコンデンサケース21から外部に出ている部分を示す。24はコンデンサ素子22を固定するエポキシ樹脂等の充填樹脂、25は電極部、26はケースモールド型コンデンサを外部に取り付けるための取り付け脚、27は充填樹脂24を注型する注型面を示すものである。
【0007】
そして、上記接続金具23aをコンデンサ素子22の電極部25に接続し、この接続金具23b(接続金具23aと一体に繋がっている)を外部機器等と接続することで電極部25と外部機器等を電気的に接続している。また、コンデンサケース21は、コンデンサ素子22全体と、接続金具23aを内蔵し、内部に充填樹脂24を充填させることによって固定しているものである。なお、図7において、コンデンサケース21の底部(注型面27)は、樹脂充填する前は開口面であり、この開口面を充填樹脂24を注型する面としている。更に、この注型面27から接続金具23bが表出し、コンデンサケース21から外部に導出されているものである。
【0008】
このように構成された従来のケースモールド型コンデンサは、ケースモールド型コンデンサの全体高さを高くすることなく、インダクタンスを抑えることができるというものであった。
【0009】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−338425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら上記従来のケースモールド型コンデンサをHEV用として使用する場合には、ハイブリッド自動車のモータ駆動用インバータ回路の平滑用としての複数個のコンデンサ素子を1つのケース内に収容したり、更には、フィルタ用やスナバ用としての複数個のコンデンサ素子を上記平滑用の複数個のコンデンサ素子と共に1つのケース内に収容して樹脂モールドした構成のものが主流となるため、このように複数個のコンデンサ素子を一対のバスバーで並列接続しなければならないことからバスバーの形状が複雑になって材料歩留まりが極めて悪くなるばかりでなく、バスバーの輸送や保管に多大なスペースが必要になって効率が悪く、取り扱いや作業性も悪くなり、このような問題の全てがコストアップに繋がってしまうという課題があった。
【0012】
従って、このような課題を解決するために考えられる手段の一つとして、バスバーを複数に分割して作製し、この分割品どうしを結合して一体化することによって一つのバスバーを作製することが検討され、このような方法が特許第3562431号公報で提案されている。
【0013】
すなわち、バスバー打抜用の金型寸法を超える大きさの大型バスバーの製造を可能にする方法を提案するものであり、具体的には、「打抜用金型で打ち抜き可能なバスバーの最大寸法よりも、同一平面上に配置するバスバーの寸法が超える場合において、同一層を構成するバスバーを複数に分割して、打抜用金型で複数回に分けて導電性金属板を打ち抜いて形成し、上記別個に打ち抜き形成した複数のバスバーを同一平面上で接続端が設けられた辺を対向配置すると共に上記接続端を屈折させずに延在させ、かつ、上記接続端に圧接刃を設け、電線の両端あるいは導電性材料からなる板材を圧接接続させて導通し、あるいは、上記接続端を電線端末に接続したメス端子に嵌合させて導通し、あるいは、上記接続端を上下に重ね合わせて溶接して、バスバー回路を形成する」というものである。
【0014】
しかしながら、このような技術を用いてバスバーを作製することによって大型バスバーの作製を可能にすることと、分割方法を工夫することによって材料歩留まりを向上させることはできるものの、複数のバスバーを電線や板材を介して接続したり、あるいは複数のバスバーを上下に重ね合わせて溶接したりするような接続方法では、バスバーが不要に大型化して重量が増加したり、また、不要な抵抗が発生する等の問題があり、本願発明のようなHEV用として用いられるバスバーにおいては、材料歩留まりの向上による低コスト化のみならず、小型軽量化と低ESL化が強く要求されるため、このような技術では対応できないという課題があった。
【0015】
本発明はこのような従来の課題を解決し、小型軽量化と低ESL化を犠牲にすることなく、低コスト化を実現することが可能なケースモールド型コンデンサ及びこれに用いるバ
スバーの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために本発明は、複数のコンデンサ素子を外部接続用の端子部を一端に備えたバスバーで接続してケース内に収容し、これらを樹脂モールドしたケースモールド型コンデンサにおいて、上記バスバーが、夫々一端に接合部を設けた複数の分割バスバーを上記各接合部どうしを突き合わせて接合することによって一体化して構成され、かつ、上記各接合部が分割バスバーを構成する基材の幅方向に対して斜め方向に切断されると共に、各接合部の両端に基材を部分的に延設した補強部を設けた構成としたものである。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によるケースモールド型コンデンサ及びこれに用いるバスバーの製造方法は、基材の幅方向に対して斜め方向に切断された接合部を一端に設け、かつ、接合部の両端に基材を部分的に延設した補強部を設けた複数の分割バスバーの各接合部どうしを突き合わせて接合することによって一体化した構成により、バスバーを分割することによって材料歩留まりを向上させて低コスト化を図ることが可能になるばかりでなく、突き合わせ接合により、バスバーが大型化したり、不要な抵抗が発生したりすることがないという効果が得られるものである。
【0018】
更に、例えば、分割バスバーの接合部どうしをレーザー溶接によって接合する場合に、上記接合部は基材の幅方向に対して斜め方向に切断されているために、溶接部の断面積がバスバーの幅方向に沿って切断した場合の断面積よりも大きいため、溶接強度の安定化を図ることができると共に、接合部の両端に設けた補強部により、レーザー溶接時の始端側あるいは終端側において基材の溶融による欠け落ちが部分的に発生しても、接合強度を十分に保証することができるという効果が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例によるケースモールド型コンデンサの構成を示した樹脂モールド前の平面図
【図2】同ケースモールド型コンデンサに使用されるN極バスバーの構成を示した斜視図
【図3】(a)〜(c)図2に示すN極バスバーを構成するN極分割バスバーを示した平面図
【図4】同ケースモールド型コンデンサに使用されるバスバーの製造方法を説明するための斜視図
【図5】同ケースモールド型コンデンサに使用されるバスバーの製造方法を説明するための斜視図
【図6】同ケースモールド型コンデンサに使用されるバスバーの接合部を示した断面概念図
【図7】(a)従来のケースモールド型コンデンサの構成を示した平面断面図、(b)同正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施例を用いて、本発明の特に全請求項に記載の発明について説明する。
【実施例】
【0021】
図1は本発明の一実施例によるケースモールド型コンデンサの構成を示した樹脂モールド前の平面図であり、図1において、1と2は金属化フィルムコンデンサ(以下、コンデンサ素子1、2と呼ぶ)であり、このコンデンサ素子1、2は、ポリプロピレンからなる誘電体フィルムの片面、または両面に金属蒸着電極を形成した金属化フィルムを一対とし
、上記金属蒸着電極が誘電体フィルムを介して対向する状態で巻回した後にプレス加工によって偏平に加工し、両端面に亜鉛を溶射したメタリコン電極を形成することによってP極電極(図示せず)とN極電極(図示せず)の一対の取り出し電極を夫々設けて構成されたものである。
【0022】
なお、本実施例においては上記コンデンサ素子1を2個使用して平滑用として用い、コンデンサ素子2を2個使用してフィルタ用として用いた、合計4個のコンデンサ素子1、2による構成を例にして示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
3はP極バスバー、4はN極バスバーであり、このP極バスバー3とN極バスバー4によって上記合計4個のコンデンサ素子1、2を並列接続しているものであり、このP極バスバー3とN極バスバー4の詳細については後述する。なお、図1においては、P極バスバー3、N極バスバー4共に、本願発明とは直接関係ない部分を一部省略し、全体構成を分かり易くして記載しているものである。
【0024】
5は上面を開放した樹脂(本実施例においてはPPS(ポリフェニレンサルファイド)を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない)製の箱型のケース、5aはこのケース5を被装着機器等に取り付けるための取り付け脚であり、このケース5内に上記P極バスバー3とN極バスバー4によって並列接続された合計4個のコンデンサ素子1、2が収容されているものである。
【0025】
また、このケース5内には図示しないモールド樹脂(本実施例においてはエポキシ樹脂を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない)が充填されており、このモールド樹脂により、上記合計4個のコンデンサ素子1、2と、この合計4個のコンデンサ素子1、2を並列接続した上記P極バスバー3、N極バスバー4の一部を除く大半の部分をケース5内に固定するようにしているものである。
【0026】
図2は上記N極バスバー4の構成を示した斜視図、図3(a)〜(c)は上記図2に示したN極バスバー4の構成を詳細に説明するために、3分割状態に打ち抜き加工された折り曲げ加工前のN極分割バスバーを示した平面図であり、図2と図3においてはこのN極バスバー4を例にして説明するが、上記P極バスバー3についてもN極バスバー4と同様に分割構造に構成されたものであるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0027】
図2において、4はN極バスバー、4a、4b、4cはこのN極バスバー4の一部を折り曲げ加工することによって設けられた端子部であり、この端子部4a、4b、4cは上記ケース5内に充填された図示しないモールド樹脂から夫々表出するようにしているものである。
【0028】
また、上記N極バスバー4は図中のA−A線において分割された3分割構造に打ち抜き加工されたものを夫々接合することにより一体化すると共に、所定の箇所を折り曲げ加工することによって作製されたものであり、上記3分割構造に打ち抜き加工されたN極バスバー4(以下、N極分割バスバー6、N極分割バスバー7、N極分割バスバー8と呼ぶ)の折り曲げ加工前の状態について、図3(a)〜(c)を用いて詳細に説明する。
【0029】
図3において、N極分割バスバー6の一端の6a、6b、N極分割バスバー7の一端の7a、N極分割バスバー8の一端の8aは、夫々上記N極バスバー4を図2で示すA−A線で分割した際に形成される接合部であり、この接合部6a、6b、7a、8aはN極バスバー4の幅方向(図2に示すW方向)に対して斜め方向に切断されたものであり、このように斜め方向に切断することにより、上記接合部6a、6b、7a、8aの断面積が幅方向(図2に示すW方向)に沿って切断した場合の断面積と比べて大きくなるようにしているものである。
【0030】
6c、6d、7b、8b、8cは上記接合部6a、6b、7a、8aの切断方向の始終端に基材を部分的に延設するように設けた補強部、6e、7cは上記コンデンサ素子1、2に形成されたN極電極に半田付け接続される接続部、6f、7d、8dは貫通孔であり、この貫通孔6f、7d、8dの一部は後述するN極分割バスバー6〜8を一体に接合する際に、治具に設けられた位置決めピン(図4に示す符号9a)に挿入されて位置決めを行うように使用されるものである。
【0031】
次に、上記図2、図3に示すように構成されたN極バスバー4の製造方法について詳細に説明するが、上記P極バスバー3についてもN極バスバー4と同様に分割構造に構成されたものであるため、ここでの説明は省略する。
【0032】
図4は上記N極バスバー4の製造方法を説明するための斜視図であり、図4において、6〜8は3分割されたN極分割バスバー、9はバスバー作製用の治具を示し、この治具9上に上記3つのN極分割バスバー6〜8を夫々所定の位置に載置して接合作業を行うものである。
【0033】
具体的には、図4に示すように、3つのN極分割バスバー6〜8を所定の位置に配置する。すなわち、N極分割バスバー6の接合部6aとN極分割バスバー7の接合部7aが突き合わせ状態で当接するように配置すると共に、N極分割バスバー6の接合部6bとN極分割バスバー8の接合部8aが突き合わせ状態で当接するように配置する。この時、治具9に設けられた位置決めピン9aに、N極分割バスバー6に設けられた貫通孔6f、N極分割バスバー7に設けられた貫通孔7d、N極分割バスバー8に設けられた貫通孔8dを夫々嵌め込むことにより、3つのN極分割バスバー6〜8を夫々所定の位置に位置決めする。
【0034】
続いて、図5に示すように、上記治具9上に夫々配置され、かつ、所定の位置に位置決めされたN極分割バスバー6〜8の上面に治具10、11を載置する。なお、この治具10、11の治具9に対する位置決めは、治具10に設けられた貫通孔10aを治具9に設けられた位置決めピン9bに嵌め込むと共に、治具11に設けられた穴11aを治具9に設けられた位置決めピン9bに嵌め込むことによって行うようにしているものである。
【0035】
続いて、このように治具9、10、11を介して所定の位置に位置決めされた3つのN極分割バスバー6〜8が夫々突き合わせ状態で当接した部分に図示しないレーザー光を照射してレーザー溶接を行うことにより、3つのN極分割バスバー6〜8を一体化してN極バスバー4を作製する。なお、本発明はこのようなレーザー溶接に限定されるものではなく、電子ビーム溶接、固相接合(摩擦攪拌接合)のいずれかの方法によっても同様に3つのN極分割バスバー6〜8を一体化してN極バスバー4を作製することが可能である。
【0036】
このように構成された本実施例によるケースモールド型コンデンサは、複雑な形状のN極バスバー4を分割し、3つのN極分割バスバー6〜8としたものを接合して一体化したN極バスバー4を作製するようにした構成ならびに製造方法により、材料歩留まりを大幅に向上させることが可能になるという格別の効果を奏するものであり、本実施例においては、N極バスバー4を分割しない場合の材料歩留まりが約20%であるのに対し、分割することによって材料歩留まりが約50%に向上するものである。
【0037】
更に、バスバーを分割構造にすることによる効果は材料歩留まりの向上によるコストダウンのみならず、電流経路が最短になるようにバスバーを分割することによって低ESL化を図ったり、流れる電流および周波数によってはバスバーの板厚を薄くしたり、ボルト
締結等により強度が必要な部分については板厚を厚くしたり、等の最適化が図り易くなるため、極めて効率の良いバスバー設計を可能にし、軽量化を図ることも可能になるという格別の効果を奏するものである。
【0038】
また、上述のような接合作業を行うにあたり、本発明においては、3つのN極分割バスバー6〜8の各接合部6a、6b、7a、8aどうしを夫々突き合わせて接合するようにしているため、バスバーが大型化したり、不要な抵抗が発生したりすることがないばかりでなく、3つのN極分割バスバー6〜8の各接合部6a、6b、7a、8aどうしを夫々突き合わせて接合した2箇所の連結部が同一線上に配設されるようにしているため、この2箇所の連結部を連続して接合することができるようになるため、効率の良い接合作業を行うことができるようになるという格別の効果を奏するものである。
【0039】
また、上記接合部6a、6b、7a、8aの断面積が基材の幅方向に沿って切断した場合の断面積と比べて大きくなるようにしているため、接合面積が増大することによって接合強度の安定化を図ることができると共に、切断方向の始終端に基材を部分的に延設するように設けた補強部6c、6d、7b、8b、8cを設けた構成により、接合作業時の始端側あるいは終端側において、基材の溶融による欠け落ちが部分的に発生したとしても、接合強度を十分に保証することができるという格別の効果を奏するものである。
【0040】
また、上記接合強度をより安定化させるためには、レーザー溶接(電子ビーム溶接、固相接合においても同じ)作業時の始端と終端における接合装置の出力を、他の部分における同出力よりも低くすることが好ましく、また、同作業時の始端と終端における接合作業のタクトを、他の部分における同タクトよりも遅くすることが好ましいものである。
【0041】
また、上記各接合部6a、6b、7a、8aどうしを夫々突き合わせて接合した接合部分は、図6にその詳細を示すように、接合加工作業側の面の連結部12の接合ビード幅寸法B1に対し、裏面側の同接合ビード幅寸法B2が40%以上になるように接合することが好ましく、これ以下では裏面側における基材の溶融状態にバラツキが発生し、接合強度が低下する恐れがあるために好ましくないものである。
【0042】
また、上記各接合部6a、6b、7a、8aどうしを夫々突き合わせて接合した連結部12の裏面側は、溶融した基材が回り込んで基材の厚み以上に膨れる可能性があるため、この裏面側が上記コンデンサ素子1、2と対向するようにN極バスバー4を配設すると、N極バスバー4の連結部12がコンデンサ素子1、2と当接する恐れがあるために好ましくなく、従って、接合加工開始側の面が上記コンデンサ素子1、2と対向するように配設することが好ましいものであり、これは上記P極バスバー3についても同様である。
【0043】
なお、本実施例においては、上記P極バスバー3、N極バスバー4を分割する構成の一例として、基材の幅方向に対して斜め方向に直線状に切断した例を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、基材の幅方向に対してS字形状や波形状等の曲線の組み合わせ形状に、または基材の幅方向に対して斜め方向にS字形状や波形状等の曲線の組み合わせ形状に切断することも有効であり、このようにS字形状や波形状等の曲線の組み合わせ形状に切断することによっても接合部の断面積を大きくすることができるため、上記実施例と同様に接合強度の安定化を図ることができるものである。
【0044】
更にまた、このようなS字形状や波形状等の曲線の組み合わせ形状の接合部どうしをレーザー溶接によって接合する際に、S字形状や波形状等の曲線の組み合わせ形状は複数の曲線が連続した構成であるために、レーザー光を定速で連続走行しながら照射することができるようになり、この結果、安定した溶接作業を行うことが可能であるという効果を有するものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によるケースモールド型コンデンサは、小型軽量化と低ESL化を犠牲にすることなく、低コスト化を実現することが可能であるという効果を有し、特に、ハイブリッド自動車等の自動車用分野のコンデンサ等として有用である。
【符号の説明】
【0046】
1、2 コンデンサ素子
3 P極バスバー
4 N極バスバー
4a、4b、4c 端子部
5 ケース
5a 取り付け脚
6、7、8 N極分割バスバー
6a、6b、7a、8a 接合部
6c、6d、7b、8b、8c 補強部
6e、7c 接続部
6f、7d、8d、10a 貫通孔
9、10、11 治具
9a、9b 位置決めピン
11a 穴
12 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端面に一対の電極が夫々設けられた複数のコンデンサ素子を外部接続用の端子部を一端に備えた一対のバスバーで接続し、これらをケース内に収容して少なくとも上記バスバーの端子部を除いて樹脂モールドしたケースモールド型コンデンサにおいて、上記一対のバスバーが、夫々一端に接合部を設けた複数の分割バスバーを上記各接合部どうしを突き合わせて接合することによって一体化して構成され、かつ、上記各接合部が分割バスバーを構成する基材の幅方向に対して斜め方向に切断されると共に、各接合部の両端に基材を部分的に延設した補強部を設けたものであるケースモールド型コンデンサ。
【請求項2】
一対のバスバーが、夫々少なくとも3つの分割バスバーを接合して一体化されると共に、上記接合部どうしを接合した連結部のうち、少なくとも2箇所の連結部が同一線上に配設されるようにした請求項1に記載のケースモールド型コンデンサ。
【請求項3】
複数に分割された分割バスバーに、夫々貫通孔を設けた請求項1に記載のケースモールド型コンデンサ。
【請求項4】
複数に分割された分割バスバーの接合部どうしを接合した各連結部の接合加工開始側の面がコンデンサ素子と対向するように配設した請求項1に記載のケースモールド型コンデンサ。
【請求項5】
複数に分割された分割バスバーの接合部どうしを接合した各連結部の接合加工作業側の面の接合ビート幅寸法に対し、裏面側の接合ビート幅寸法が40%以上となるようにした請求項1に記載のケースモールド型コンデンサ。
【請求項6】
基材の幅方向に対して斜め方向に切断した接合部を一端に設けると共に、上記接合部の両端に基材を部分的に延設した補強部を設け、かつ、複数の貫通孔を設けた複数の分割バスバーを準備し、この複数の分割バスバーに設けた各接合部どうしを突き合わせた状態で治具上に配置すると共に、上記分割バスバーに設けた複数の貫通孔を上記治具に設けられた位置決めピンに挿入して各分割バスバーを所定の位置に位置決めし、この状態で各分割バスバーの接合部どうしが突き合わせ状態で当接した部分を、レーザー溶接、電子ビーム溶接、固相接合のいずれかの方法を用いて接合することにより、複数の分割バスバーを一体に接合して一つのバスバーを作製するようにしたバスバーの製造方法。
【請求項7】
レーザー溶接、電子ビーム溶接、固相接合のいずれかの接合方法を用いた接合作業時の始端と終端における接合装置の出力を、他の部分における同出力よりも低くした請求項6に記載のバスバーの製造方法。
【請求項8】
レーザー溶接、電子ビーム溶接、固相接合のいずれかの接合方法を用いた接合作業時の始端と終端における製造作業のタクトを、他の部分における同タクトよりも遅くした請求項6に記載のバスバーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−23331(P2012−23331A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8363(P2011−8363)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】