説明

ケーブル計尺装置

【課題】ケーブルの外表面に取り付けたICタグを利用して、ケーブルを正確に計尺するケーブル計尺装置を提供する。
【解決手段】計尺対象となるケーブル14の走行路24に配置されるものであって、走行中の前記ケーブル14に一定間隔を置いて固定されたICタグ22と通信を行って、当該ICタグ22の固定位置26を検出し、ICタグ22に記録された情報を取得する情報取得部36と、情報取得部36が取得した情報に基づいて計尺演算を実行する計尺演算処理部38と、計尺結果を表示出力する情報出力部40とを備えた。計数した結果を記録し出力することにより、ケーブル送り出し長を高精度に計測することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルの外表面に取り付けたICタグを利用して、ケーブルを正確に計尺することができるケーブル計尺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブル布設工事は道路交通の障害になることが多く、短時間で作業を進めることが要求される。このために、架空ケーブルも地下ケーブルも、予め布設場所にあわせて計尺をして、両端に端末処理をして出荷することが広く行われている(特許文献1参照)。また、予め決められた長さにケーブルを切断する方法も広く知られている。
【特許文献1】特開平5−42661号公報
【特許文献2】特開平7−139903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のケーブル計尺装置には、次のような解決すべき課題があった。
例えば、ケーブルの計尺には、走行するケーブルに接触して回転するローラ等が使用される。しかしながら、ケーブルの表面とローラとの間のスリップにより計尺精度が低くなるという問題があった。
また、ケーブルに計尺用のマークを付けておいてその数をカウントする方法も知られているが(特許文献2参照)、カウントエラーがあると計尺誤差が発生するという問題があった。
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、ケーブルの外表面に取り付けたICタグを利用して、ケーブルを正確に計尺するケーブル計尺装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の各実施例においては、それぞれ次のような構成により上記の課題を解決する。
〈構成1〉
計尺対象となるケーブルの走行路に配置されるものであって、走行中の上記ケーブルに一定間隔を置いて固定された複数のICタグと通信を行って、各ICタグの固定位置を検出し、上記各ICタグに記録された情報を取得する情報取得部と、上記情報取得部が取得した情報に基づいて計尺演算を実行する計尺演算処理部と、上記計尺演算処理部により得られた計尺結果を表示出力する情報出力部とを備えたことを特徴とするケーブル計尺装置。
【0005】
ケーブルに対して正確に一定間隔で複数のICタグを固定しておき、ケーブル送り出し装置近傍にICタグ用通信装置を配置し、送り出したケーブルの全てのICタグを通信装置により認識して、計数した結果を記録し出力することにより、ケーブル送り出し長を高精度に計測することができる。例えば、ケーブルを計尺し、両端にコネクタを接続したプレハブ式のケーブルアセンブリを正確に製造できる。また、ケーブルを布設した後は、ケーブルの布設情報の表示にも役立つ。
【0006】
〈構成2〉
構成1記載のケーブル計尺装置において、上記情報取得部は、上記ケーブルの外表面に近接して配置され、隣接する他のICタグの応答信号を排除する指向性アンテナを備えることを特徴とするケーブル計尺装置。
【0007】
各ICタグの固定位置を検出する場合には、隣接するICタグの応答信号を受信しないほうがよい。そこで、目前のケーブルの外表面上のICタグとのみ通信ができるように、遮蔽体を設けた。従って、混信による識別情報の読み取りエラーを防止できる。アンテナ自体を指向性あるものにしなくてよい。例えば、近傍に遮蔽体を配置してもよい。
【0008】
〈構成3〉
構成1記載のケーブル計尺装置において、上記情報出力部は、上記計尺演算処理部により得られた計尺結果を、上記ICタグの識別情報と対応させるように記録して表示出力することを特徴とするケーブル計尺装置。
【0009】
1本のケーブルを複数本に切り分けるような場合に、予め、切り分け箇所に印を付けながら計尺作業をすることがある。このとき、ケーブルの外被にインク等でマークを付けてもよいが、この例では、切り分ける場所の近傍のICタグの識別情報と計尺結果とを、記録用紙等に出力しておく。切り分け作業時には、該当するICタグを検出して、指示どおりの場所を切断すればよい。また、ケーブル外被への印字と併用して確認するようにしてもよい。
【0010】
〈構成4〉
構成1記載のケーブル計尺装置において、通信をして計尺中に上記各ICタグから取得された全ての情報を記憶する記憶装置と、上記ICタグから取得された情報の規則性から、読み取り誤りによる計尺エラーを修正する計尺演算処理部とを設けたことを特徴とするケーブル計尺装置。
【0011】
ケーブルに取り付けられたICタグはそれぞれ別々の識別情報をもつ。これらの情報が、例えば、シーケンシャルな数値データなら、1つだけICタグの情報読み取りエラーが生じていても、それを検出して、計尺結果を修正できる。これにより、例えば、一部のICタグが破損していても正確に計尺ができる。また、ケーブルを高速で走行させて読み取り誤りを生じても修正できる。故に、マークの読み取り等に比べても信頼性が高い計尺ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明では、
以下、本発明の実施の形態を実施例ごとに詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、実施例1のケーブル計尺装置を示すブロック図である。
図1に示すケーブル計尺装置は、計尺対象となるケーブル14の走行路24に配置される。ケーブル14は、サプライドラム16に巻き込まれている。これがケーブル送り出し装置20によって引き出され、巻き取りドラム18で巻き取られる。
【0014】
このケーブル14の走行路24中に、ケーブル計尺装置12を配置する。ケーブル14には、一定間隔置きにICタグ22が固定されている。ケーブル計尺装置12は、ICタグ22の固定位置26を検出して、ケーブル14の計尺を行う。
【0015】
図1に示すように、ケーブル計尺装置12は、アンテナ30と送信部32と受信部34と情報取得部36と計尺演算処理部38と情報出力部40と記憶装置44とプリンタ46を備える。なお、情報出力部40には、記録ヘッド42が接続されている。また、記憶装置44は、識別情報48と計尺情報50とを記憶している。送信部32は、アンテナ30を通じて問い合わせ信号52を送信し、ICタグ22を起動するために使用される。
【0016】
ICタグ22は、応答信号54を送信する。受信部34は、アンテナ30を通じてこの応答信号54を受信する機能を持つ。送信部32と受信部34の機能は、よく知られたICタグとの通信機能と変わらない。情報取得部36は、ICタグ22の固定位置を検出してICタグ22に記録された情報を取得する機能を持ち、識別情報48として記憶装置44に記憶させる。情報取得部36は、ケーブル14の外表面に近接して配置され、隣接する他のICタグ22の応答信号54を排除する指向性アンテナ30(図2)を備える。
【0017】
ICタグ22には、識別情報48が記録されており、取得された後、記憶装置44に記憶される。記憶装置44はICタグ22と通信をして、計尺中に各ICタグ22から取得された全ての情報を記憶する。計尺演算処理部38は、情報取得部36が取得した情報に基づいてケーブル14の計尺演算を実行する機能を持つ。また、計尺演算処理部38は、ICタグ22から取得された情報の規則性から、読み取り誤りによる計尺エラーを修正する。情報出力部40は、計尺演算処理部38の演算結果を受け入れて出力する機能を持ち、計尺情報50として記憶装置44に記憶させる。また、情報出力部40は、計尺結果を、ICタグ22の識別情報48と対応させるように記録して表示出力する。
【0018】
表示出力の方法には、プリンタ46を用いて紙に印刷し、配布して利用する他、記録ヘッド42にそのデータを転送し、ケーブル14に印刷する方法やICタグ22に書き込む方法等がある。記憶装置44に記憶された識別情報48や計尺情報50は、その後、ケーブル14の管理に広く利用される。
【0019】
図2は、上記のケーブル14に記録される情報や計尺情報50の情報の内容とICタグ22の情報読み取り方法を説明する説明図である。
図2(a)に示すように、ケーブル14には一定の間隔をあけて正確にICタグ22が装着されている。このICタグ22を端から順番にカウントしていけば、ケーブルの長さをそのまま計算することができる。
【0020】
例えば、ICタグ22が1m間隔に貼り付けられており、70mと15cmというような切り分け要求があるとすれば、1番目のICタグ22の場所から70番目のICタグ22の場所をカウントする。そして、70番目のICタグ22の場所からAの距離、すなわち、15cmを足した箇所57でケーブルを切断するようにすればよい。この切断箇所57には例えば、インクジェットプリンタなどを用いて線マークを引くとよい。
【0021】
このようなマークを付けてケーブルの計尺を行い、その後、ケーブルを引き出しながら順番に切り分けていくとよい。なお、こうした作業を行う場合に、ICタグからの情報読み取りは、比較的正確に行うことができるので、必ずしもケーブルをゆっくり一定の速度で送り出す必要がない。比較的高速に送り出しても十分に計尺が可能である。
【0022】
従って、この発明では、計尺処理をスピーディに行えるという効果がある。また、計尺後、ケーブルにマークを付ける方法としてICタグにその情報を書き込む方法も考えられる。この例では、図2(a)に示すように、各ICタグにそれぞれ切り分けされるケーブルのユニット番号と各タグがその端に存在するものか、端から何番目に存在するものかといった情報を記録するようにしている。そして、切り分け箇所に最も近いICタグには、そのICタグから何センチ離れた部分を切り分けるといった情報を書き込んでもよい。このようにすれば、その後、ICタグの情報を読み取って正確にケーブルの切り分けができる。
【0023】
図2(b)には、記憶装置44に記録する計尺情報50(図1)の例を示した。図2(b)に示すように、計尺情報50には、例えば、製品コード58と製造番号60と全長62と始端識別コード64と終端識別コード66とタグ間隔68とを記録する。
製品コード58や製造番号60は、各切り分けられたケーブルを識別するためのものである。全長62は、計尺した長さを示す。始端識別コード64と終端識別コード66は、先端あるいは後端に配置されたICタグの識別コードを示す。タグ間隔68は、取り付けられたタグの間隔を示す。もちろんこの他にも様々な情報を記録し、その後の管理に利用するとよい。また、この情報を記録できるような大容量のICタグが用いられていれば、全ての情報をICタグに書き込めばよい。
【0024】
図2(c)は、ICタグから識別情報を読み取る場合の装置主要部断面図を示す。
計尺装置本体70の先端には、アンテナ30が取り付けられている。これによってICタグ22との通信をする。ここで、もしICタグ22の前後に隣接する他のICタグ22と同時に通信が行われると、どのICタグ22と通信をしたのか判別ができず、正確な計尺ができない。
【0025】
そこで、例えば、図示のように金属製の遮蔽体72を計尺装置本体70に取り付けておく。これによって、極めて狭い範囲でのみICタグ22との通信が行えるようにする。これで一つのICタグ22とのみ通信を行い、正確にICタグ22の固定位置26を検出し、計尺を行うことができる。なお、アンテナ30を十分に指向性があるものにしたり、あるいは、十分にICタグ22とアンテナ30とを接近させないと通信が行えないような構成にすることによって、同様の効果が得られる。
【0026】
図3は、本発明の装置の具体的な動作を説明するフローチャートである。
ステップS11では、ケーブル送り出し装置20がケーブル14の送り出しをスタートして、ケーブル14の計尺を開始する。
ステップS12では、送信部32が問い合わせ信号52を送信してICタグ22から応答信号54を受信する。受信部34は受信した応答信号54を情報取得部36に渡す。情報取得部36はここで該当するICタグ22の識別情報48を取得する。
【0027】
ステップS13では、情報取得部36が記憶装置44に識別情報48を記録して、データベースを生成する。
ステップS14では、計尺演算処理部38が識別情報の規則性を検査する。
例えば、順番に並んだICタグから取得した識別情報が、「100」「101」「102」というように1番ずつ増加している。この状況で、「103」がなくて「104」が取得されたときは、1個のICタグの応答信号を受信しなかっり、送受信のときの信号読み取りエラーが生じたものと判断される。次のICタグの識別情報を取得したときに「105」であれば、前者という判断ができる。
【0028】
ステップS15では、計尺演算処理部38が、「読み取りエラー検出」かどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS16の処理に移行し、ノーのときはステップS17の処理にジャンプする。
【0029】
ステップS16では、計尺演算処理部38がエラー原因に従った取得情報の補正をする。このようにICタグの識別情報を取得してケーブルの計尺を行うと、従来よりも正確に信頼性の高い計尺が可能である。
【0030】
ステップS17では、計尺演算処理部38が計尺長計算をする。ステップS18では、計尺演算処理部38が、その計尺長が「目標値?」かどうかという判断をする。この判断の結果がノーのときはステップS12の処理に戻って、次のICタグ22の識別情報48読み取り動作を繰り返す。イエスのときはステップS19の処理に移行する。
ステップS19では、情報出力部40が記録情報の生成をする。その結果は、ステップS20で、記憶装置44に記憶される。これもデータベースとしてその後利用される。また、必要に応じてプリンタ46にも出力される。
【0031】
さらに、この実施例では、ステップS21で、計尺結果を記録ヘッド42に転送して、例えば、切り分け位置のケーブル14に固定されたICタグ22にそのデータを記録する。なお、記録ヘッド42を例えば、インクジェットプリンタにして、ケーブルの切り分け箇所近傍に計尺情報50を直接印刷するようにしてもよい。
【0032】
以上説明した本発明のケーブル計尺方法及び計尺装置は、次のような効果を備える。
【0033】
1.線速が一定でかつ比較的遅い製造ラインで、ケーブルに一定間隔で正確に計尺用のICタグを取り付けるのでICタグの取り付け精度を高くできる。
【0034】
2.一方、ケーブルを計尺して切断するときには、巻き取り速度は高速でよいし、速度むらがあってもよい。また、送り出しローラとの間のスリップも全く問題にならない。
【0035】
3.ICタグの情報を読み取って計尺をするので、マークの読み取りと比較して、読み取りエラーが生じにくい。
【0036】
4.マークは印刷装置の保守管理、印刷制御が容易でなく、ケーブル外観に影響を与え、消えやすいといった問題がある。しかし、ICタグは埋め込み、接着、その他任意の方法で比較的簡単にケーブルに固定でき、外観に影響を与えずに比較的多くの情報を記録できる。故に計尺だけでなく他の用途にもあわせて利用できる。
【0037】
5.隣接するICタグに、例えば順に規則的に識別情報が記録されていると、万一、読み取りエラーが生じても、ICタグ隣同士の関係から演算処理により訂正ができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1のケーブル計尺装置を示すブロック図である。
【図2】同ケーブル計尺装置による情報読み取り方法を説明する説明図で、(a)はケーブルに装着したICタグのタグ記録情報を示す説明図、(b)は記憶装置に記録する計尺情報の例を示す説明図、(c)は、ICタグから識別情報を読み取る場合の装置主要部断面図である。
【図3】本発明に係わるケーブル計尺装置の具体的な動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
12 ケーブル計尺装置
14 ケーブル
16 サプライドラム
18 巻き取りドラム
20 ケーブル送り出し装置
22 ICタグ
24 走行路
26 固定位置
28 ケーブル計尺装置
30 アンテナ
32 送信部
34 受信部
36 情報取得部
38 計尺演算処理部
40 情報出力部
42 記録ヘッド
44 記憶装置
46 プリンタ
48 識別情報
50 計尺情報
52 問い合わせ信号
54 応答信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計尺対象となるケーブルの走行路に配置されるものであって、
走行中の前記ケーブルに一定間隔を置いて固定された複数のICタグと通信を行って、各ICタグの固定位置を検出し、前記各ICタグに記録された情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部が取得した情報に基づいて計尺演算を実行する計尺演算処理部と、
前記計尺演算処理部により得られた計尺結果を表示出力する情報出力部とを備えたことを特徴とするケーブル計尺装置。
【請求項2】
請求項1記載のケーブル計尺装置において、
前記情報取得部は、前記ケーブルの外表面に近接して配置され、隣接する他のICタグの応答信号を排除する指向性アンテナを備えることを特徴とするケーブル計尺装置。
【請求項3】
請求項1記載のケーブル計尺装置において、
前記情報出力部は、前記計尺演算処理部により得られた計尺結果を、前記ICタグの識別情報と対応させるように記録して表示出力することを特徴とするケーブル計尺装置。
【請求項4】
請求項1記載のケーブル計尺装置において、
通信をして計尺中に前記各ICタグから取得された全ての情報を記憶する記憶装置と、
前記ICタグから取得された情報の規則性から、読み取り誤りによる計尺エラーを修正する計尺演算処理部とを設けたことを特徴とするケーブル計尺装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−29784(P2006−29784A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204193(P2004−204193)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000002255)昭和電線電纜株式会社 (71)
【Fターム(参考)】