説明

ゲッタシステムを含む白色または紫外LED

LED(30)は、ゲッタシステムを含んでおり、このゲッタシステムは、ゲッタ材料(13)と金属部分(10)を備え、ゲッタ材料は金属部分から光学的にシールドされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲッタシステムを含む白色または紫外LEDに関する。
【背景技術】
【0002】
LED(発光ダイオード)は、例えば、交通信号灯、一般の指示灯、自動車におけるトーチあるいは標識灯、液晶ディスプレイのバックライトおよび現在開発中であるその他の種々応用等の、種々の応用において、光源として使用されている。このタイプの光源の普及には、白色LED源の安定供給が必要である。
【0003】
LEDにおける発光は、電子と電子のホールが、例えば、アルミニウム・ガリウム・砒素(AlGaAs)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)等の半導体材料中で再結合することによって起こる。それぞれの半導体材料は、スペクトルのある範囲の光のみを発光する。例えば、AlGaAsは赤外および赤色領域で、GaNはグリーンおよびブルー領域で、AlNは紫外(UV)領域で発光する。
【0004】
従って、白色光を作るには、三原色を発光する三つの異なるLEDを用いることが可能である。しかしながらこの解決方法は、特に提供可能なスペースが限られている応用においてはあまり評価されない。その代わりに、紫外あるいはブルー領域で発光する一個のLEDであって、その中にこれらの光を吸収しより高い波長の光を再発光する蛍光体と呼ばれる材料を有する、LEDを用いることが可能である。グリーンおよび赤(青色LEDの場合)あるいは三原色(紫外LEDの場合)を発光する蛍光体の混合物を用いることによって、白色の発光を得ることが可能である。
【0005】
青色あるいは紫外LEDの主要部分の断面を、図5に示す。このLEDは、一般に、その上に半導体材料Sの堆積を有する基板B(例えば金属またはセラミック材料によって形成されている)であって、電力供給のために電気フィードスルーLに接続された基板Bからなっている。この基板の周辺には、通常、金属材料で形成されたキャップCが密閉固定されている。このキャップの、基板の前面の部分には、ガラスVによって閉鎖された開口部があり、これによってLEDの発光を可能とする。このガラスはその周辺において開口の端部に、例えば、ロウ付け用ペースト(図示せず)によって、密封固定されている。LEDの内側に面するガラスの表面上に、蛍光体Fの層が堆積されている。基板、キャップおよびガラスで構成される組立体は、密封された空間Iを形成し、LEDの製造工程中、典型的には大気圧において不活性ガスで充填されており、LEDの動作部は、このようにして、機械的保護と同様に、周辺の大気から(即ち、大気ガスの化学的攻撃から)保護されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらのLEDの製造過程において、微量な酸素が空間Iにトラップされたまま残る。他の酸素源の可能性は、高温処理が実施される場合、特にデバイスの密封に関係した高温処理が実行される場合の、部品および材料によるガス放出に起因する。
【0007】
酸素が蛍光体の劣化を生じ、その結果、LEDの発光効率が時間と共に減少することが観測されている。その上、この点に関して決定的な証拠は無いけれども、LEDの動作に対して水が否定的な効果を持ち得ると信じられている。
【0008】
この問題は、本出願人の名前における特許出願WO2005/106958号において既に議論されている。この出願は、空間I内の微量の反応ガスを吸収することが可能なゲッタ材料を用いることを教示している。この材料として、例えば、湿気を吸収する場合は酸化カルシウムが、酸素を含むその他のガスの吸収のためにはジルコニウム−コバルト−希土類の合金(本出願人によってSt787(登録商標)の名前で製造され販売されている)が記載されている。この出願の教示によれば、空間Iを規定する内表面の内の一つの内表面上にゲッタ材料が堆積されている。しかしながらこの構成よれば、活性材料によって放射されゲッタに入射したブルーあるいは紫外光は、表面の形態に基づいて反射されず(あるいはほんの少しが反射され)、従って蛍光体に達せず、その結果LEDの発光効率にロスを生じる。
【0009】
本発明の目的は、上記問題の影響を受けない、ゲッタ材料を含むLEDを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この目的は:半導体材料の堆積を有する基板;半導体材料の堆積に対して電力を供給するためのフィードスルー;基板の周辺に密封固定され基板の前面の一部分に開口を有するキャップ;LEDの内部に面する表面上に蛍光体の層を有するガラスであって、前記基板とキャップとこのガラスの組立て体が密封された空間を形成するように前記開口の端部に同様に密封固定されたガラス、とを有し、前記空間は不活性ガスで充填され、前記半導体材料の堆積を囲み、さらにゲッタ材料を含んでLEDにおいて、前記ゲッタ材料は、前記密封空間中に配置された金属部分の一表面上にのみ堆積され、その結果、前記空間に面する前記金属部分の表面がゲッタ材料の影響を受けないようにされていることを特徴とする、LEDによって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明のLEDに使用されるゲッタ材料の堆積を有する金属部分の第1の可能な実施形態の透視図である。
【図2】図2は、本発明のLEDに使用されるゲッタ材料の堆積を有する金属部分の第2の可能な実施形態の透視図である。
【図3】図3は、図1のゲッタを有する金属部分を含む、本発明のLEDの断面図である。
【図4】図4は、図2のゲッタを有する金属部分を含む、本発明のLEDの断面図である。
【図5】図5は、本明細書の導入部分で議論した、最も一般的な形式のLEDの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して本発明を説明する。
【0013】
図1は、本発明のLEDにおいて用いるためのゲッタを備えた第1の金属部分を示す。部分10は、3本の“レッグ”12を備える金属バンド11の形状を有している。この用語“金属バンド”は、純粋な金属あるいは金属合金で形成されたリング形状のバンドを意味する。“レッグ”は、バンド11を形成した同じ金属シートから、カッティングによって形成しても良いし、あるいは、別々に形成されその後、例えば溶接によって固定されても良い。バンド11の外面はゲッタ材料13の堆積によって被覆されている。
【0014】
図2は、本発明のLEDにおいて用いるためのゲッタを備えた金属部分の代替的実施形態を示す。この場合、金属部分20は、その外面にゲッタ材料22の堆積を被覆した金属バンド21でのみ形成される。
【0015】
バンド11およびバンド21の両方の場合において、図面では単純化のために、円筒状の表面をカッティングすることによって得られるリングの様な、閉じられた素子を示している。しかしながら、これらのバンドは、一般に、その一つの表面上にゲッタ材料を堆積した金属シートからスタートし、このシートを複数の断片にカッティングし、各断片を円に巻き上げ、この円を例えば各断片の二つの対向する端部を溶接によって閉じるか、あるいは、これらの対向する端部を固定せず単にオーバーラップさせて閉じることにより、形成することができる。
【0016】
バンド11または21を形成する材料は、LEDの製造条件に耐え、さらに、キャップを基板およびガラスに密封固定するために必要な溶接あるいはロウ付け作業の間に到達する温度に耐える、全ての金属(あるいは合金)である。キャップの固定作業の間に到達する温度は作業の特定のタイプに依存するために、バンドの金属はその結果として選択されなければならない。一実施形態では、好ましい材料はコバール(主に、鉄、ニッケルおよびコバルトで構成される合金)である。何故なら、コバールは図5の要素Vを形成するために使用されるガラスあるいは種々のタイプのスチールに類似する熱膨張係数を有しているから。
【0017】
ゲッタ材料は、例えば、チタン、ジルコニウムあるいはニオブのような単一の材料であっても良い。さらに一般的には、遷移元素、希土類およびアルミニウムの中から選択した少なくとも一個の元素を有する、チタンおよび/またはジルコニウムベースの合金、のような、ゲッタ合金が使用される。この場合、バンド11または21への接着は、種々の方法、例えば、本出願人の名前による米国特許第5,882,727号に記載するように、冷間圧延または、その後に溶剤を取り除き堆積を安定化するための熱処理を伴うシルクスクリーン印刷によって、あるいは例えばスパッタ等の薄膜堆積方法によって、行うことが可能である。
【0018】
水を吸収する特別な場合において、ゲッタ材料は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムあるいはバリウムから選択されたアルカリ土類金属の酸化物が好ましい。この場合、ゲッタ材料は、例えば、本出願人の名前における特許出願WO2004/072604号に記載されているように、ゲッタ材料をポリマー・マトリックス中に導入することによってバンドに接着させることが好ましい。
【0019】
図3は、本発明のLEDの断面を示す。LED30は基板31で形成され、この基板31上には電気フィードスルー33に接続された半導体材料32が存在する。さらに、この基板の端部において、基板と対向する部分において開口35を有するキャップ34が密封固定されており、開口35の近傍においてガラス36が固定され、このガラスのLEDの内部空間37に面する表面は蛍光体38で被覆されている。空間37はまた、図1に示す金属部分10を収容しているが、3本のレッグがバンド11の円周に沿って互いに120°をなして配置されているので、この断面図では(他の2本のレッグが断面図では示されないので)、レッグ12のみが示されている。レッグが基板31上に置かれかつゲッタ堆積13がキャップ34の内面に面するように、部分10は空間37内に配置されている。この構成により、ゲッタは空間37中の有害な微量ガスにアクセスすることができ、さらに、3本のレッグ12の間の広い空間によって、部分10の空間37に面する表面全体、従って、半導体堆積32によって放射される得る発光の可能な光学経路は反射性であり、放射光を蛍光体38に再度向かわせることができる。
【0020】
図3と同じように、図4は金属部分20を含むLEDを示している。この場合、LED40は同様に、半導体材料42の堆積を有する基板41と、この基板の周辺に固定されかつ開口45を有するキャップ44と、さらに、開口45の近傍に固定されたガラス46と、によって形成され、このガラスの、LEDの内部空間47に面する面上には蛍光体48が堆積されている。キャップ44の内面に向かって金属部分20が固定され、この金属部分20は、キャップの内面に向かう表面上にのみゲッタ堆積22を備えるバンド21によって形成され、一方、空間47に面するバンド21の表面には堆積が無く従って反射性である。このタイプのバンド20は、例えば、一個またはそれ以上の溶接スポットによって適切な位置に保持することが可能である。あるいは、例えば硬化鋼バネのような弾性金属によって形成されるバンドを使用し、平面形状に復帰する自然の傾向を利用してかつそれによってキャップ内壁へ押付けることにより、バンドを適切な位置に保持することが可能である。
【0021】
図3および4において、ゲッタ材料の堆積がLEDのキャップの限定された高さ部分に延びている実施形態が示されているが、ある特別な実施形態では、この堆積は、LEDのキャップの高さの最も大きな部分をカバーするより大きな延長部分を有していることも可能である。明らかに、このようなゲッタ材料の堆積は、ゲッタシステムの金属部分からシールドされなければ成らない。このような場合、ゲッタ材料をシールドする金属部分がキャップの高さのかなりの部分をカバーする結果となるので、その反射効率を向上させるために、ゲッタシステムの金属部分上に紫外放射の多層反射体を堆積あるいは配置することが有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体材料(32;42)の堆積をその上に有する基板(31;41);前記半導体材料の堆積に電力を供給するためのフィードスルー(33;34);前記基板の周辺に密封固定されかつ、前記基板の前面である、その一部分に開口(35;45)を有するキャップ(34;44);前記LEDの内部に面する表面上に蛍光体(38;48)の層を有するガラス(36;48)であって、前記基板、キャップおよびガラスから成る組立部が密封された空間(37、47)を形成するように、前記開口の端部に密封固定されたガラス、とを備え、前記空間は不活性ガスで充填され、半導体材料の前記堆積を包囲し、かつゲッタ材料(13;22)を含んでいる、LED(30;40)において、前記ゲッタ材料(13;22)は、前記密封空間(37;47)中に配置されている金属部分(10;20)の一表面上にのみ、前記空間に面する前記金属部分の表面がゲッタ材料を含まないようにして、堆積されていることを特徴とする、LED。
【請求項2】
請求項1に記載のLED(30)であって、前記金属部分(10)は前記密封空間(37)内に収容され、かつ、リングの形状を有するバンドを備え、前記リングからは、互いに120°で配置されかつ前記基板(31)上に置かれた3個のレッグ(12)が延びている、LED(30)。
【請求項3】
請求項1に記載のLED(40)であって、前記金属部分(20)は、溶接スポットあるいはその弾性的性質によって、キャップ(44)の内表面に向かって適切な位置に保持されるリング(21)の形状を有した金属バンドで形成されている、LED(40)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2010−530625(P2010−530625A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512654(P2010−512654)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057483
【国際公開番号】WO2008/155295
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(500275854)サエス ゲッターズ ソチエタ ペル アツィオニ (54)
【Fターム(参考)】