説明

コネクタ及びコネクタ製造方法

【課題】材料費・加工費の削減と、コネクタ嵌合性の向上と、コネクタ嵌合時の電子部品へのダメージの軽減を図ることができる。
【解決手段】メタルプレート3の一部をコネクタ端子3a,3bとするメタルコア基板2と、電子部品20を実装した面をメタルコア基板2の対向面としてメタルコア基板2に間隔を置いて固定された基板10と、基板10及びメタルコア基板2をインサート部品とするインサート成形によって作製され、メタルコア基板2及び基板10を封止する樹脂封止部31とコネクタ端子3a,3bの外周に配置されるコネクタフード部32a,32bを有するハウジング部30とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルコア基板のメタルプレートの一部をコネクタ端子とするコネクタ、及び、そのコネクタ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーエレクトロニクスの進化は目まぐるしく、車両への電子部品の搭載は今後ますます増加していく。それに伴って、電子部品の車載スペースの占有割合の増加が懸念され、電子部品の小型化が強く求められている。電子部品の一つであるコネクタにも小型化の要求があり、メタルコア基板を内蔵するコネクタが提案されている。
【0003】
この種の従来例のコネクタとしては、特許文献1に開示されたものがある。このコネクタ50は、図4に示すように、メタルコア基板51と、このメタルコア基板51上に実装された電子部品60と、電子部品60を実装したメタルコア基板51の外周に組み付けされたケース70とを備えている。
【0004】
メタルコア基板51は、メタルプレート52と、この両面に配置された絶縁層53と、上下の各絶縁層53の表面に配置された各導電パターン部54とを備えている。メタルプレート52は、メインプレート部52aとこのメインプレート部52aの左右両端に分離若しくは一体に配置された複数のコネクタ端子52bとから構成されている。メインプレート部52aとコネクタ端子52bが分離配置される場合には、双方の間に絶縁層53が入り込むことによって絶縁が確保されている。
【0005】
ケース70は、電子部品60が実装された箇所を被うケース保護部71と、コネクタ端子52bの外周に配置されたコネクタフード部72とを備えている。コネクタ端子52bとコネクタフード部72によって外部接続用のコネクタ73が構成されている。コネクタ73に相手コネクタ80が嵌合される。
【0006】
上記従来例によれば、メタルコア基板51は、機械的強度が強く、放熱性及びシールド性に優れているため、強度補強構造や放熱部材やシールド構造を別途設ける必要がなかったり、一部省略したりできるため、コネクタ50を小型化できる。メタルコア基板51のメタルプレート52の一部をコネクタ端子52bとして用いるため、大電流用のコネクタ端子となる。ここで、基板に大電流用のコネクタ端子(クリップ端子、プレスフィット端子)をハンダ付けや圧入によって付設すると、コネクタが大型化するため、この点からもコネクタ50を小型化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−253428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来のコネクタ50では、メタルコア基板51にケース70を組み付ける構造であるため、付属品としてケース70が必要であると共にその組み付け工程が必要である。従って、部品点数の増加と組み付け工程の増加によって材料費及び加工費が増大するという問題があった。また、メタルコア基板51とケース70間にガタ付きが発生する可能性があるため、メタルコア基板51とケース70間の位置精度が低い。メタルコア基板51とケース70間の位置精度が低いと、コネクタ端子52bとコネクタフード部72が適正な位置関係とならないため、コネクタ嵌合不良の原因になる。さらに、相手コネクタ80の嵌合力をメタルコア基板51で受けるが、メタルコア基板51に実装された電子部品60がその嵌合力による悪影響を受けやすいという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、材料費・加工費の削減と、コネクタ嵌合性の向上と、コネクタ嵌合時の電子部品へのダメージの軽減を図ることができるコネクタ及びそのコネクタ製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、メタルプレートの一部をコネクタ端子とするメタルコア基板と、電子部品を実装した面を前記メタルコア基板の対向面として前記メタルコア基板に間隔を置いて固定された基板と、前記基板及び前記メタルコア基板をインサート部品とするインサート成形によって作製され、前記メタルコア基板及び前記基板を封止する樹脂封止部と前記コネクタ端子の外周に配置されるコネクタフード部を有するハウジング部とを備えたことを特徴とするコネクタである。
【0011】
前記メタルコア基板と前記基板の間に充填されたポッティング部を備えることが好ましい。前記メタルコア基板と前記基板は、前記メタルコア基板側の回路部と前記基板側の回路部を電気的に接続するリードを介して固定されたことが好ましい。
【0012】
他の本発明は、基板に電子部品を実装する部品実装工程と、メタルコア基板のメタルプレートの一部をコネクタ端子とする加工を行うコネクタ端子作製工程と、部品実装工程とコネクタ端子作製工程の後に、前記基板の電子部品を実装した面を前記メタルコア基板の対向面として双方の基板を間隔を置いて固定する基板間固定工程と、基板間固定工程の後に、前記基板が一体に固定された前記メタルコア基板をインサート部品とするインサート成形を行い、前記メタルコア基板及び前記基板を封止する樹脂封止部と前記コネクタ端子のコネクタフード部を有するハウジング部を作製するインサート成形工程とを備えたことを特徴とするコネクタ製造方法である。
【0013】
基板間固定工程とインサート成形工程の間に、前記メタルコア基板と前記基板の間にポッティング材を充填してポッティング部を形成するポッティング充填工程を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ケース及びその組み付け工程を無くすことができ、部品点数の削減と組み付け工程の低減によって材料費及び加工費の低減を図ることができる。又、メタルコア基板等をインサート部品としてインサート成形でハウジング部を作製するため、ハウジング部とメタルコア基板等の間にガタ付きが発生せず、ハウジング部とメタルコア基板間の位置精度が高く、ハウジング部のコネクタフード部とコネクタ端子間の位置精度が高くなる。更に、相手コネクタの嵌合時にあって、嵌合力をメタルコア基板で受けるが、電子部品はメタルコア基板ではなく基板に実装されているため、コネクタ嵌合時の嵌合力による悪影響を受け難い。以上より、材料費・加工費の削減と、コネクタ嵌合性の向上と、コネクタ嵌合時の電子部品へのダメージの軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態を示し、ケースを透明表示したコネクタの全体斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、コネクタの断面図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、(a)〜(c)はコネクタの各製造工程を示す断面図である。
【図4】従来例のコネクタ及び相手コネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1〜図3は本発明の一実施形態を示す。図1及び図2に示すように、コネクタ1は、メタルコア基板2と、このメタルコア基板2に間隔を置いて平行配置された基板10と、この基板10に実装された複数の電子部品20と、メタルコア基板2と基板10の間に充填されたポッティング部21と、メタルコア基板2及び基板10をインサート部品としてインサート成形によって成形されたハウジング部30とを備えている。
【0018】
メタルコア基板2は、例えば銅製や銅合金製のメタルプレート3と、このメタルプレート3の両面に配置された絶縁層4と、上下の各絶縁層4の表面に印刷等によって配置された各回路部である各導電パターン部(図示せず)とを備えている。メタルプレート3の厚みは、0.4〜0.64mm程度である。メタルプレート3の左右両端側には、複数のコネクタ端子3a,3bが打ち抜き加工によってそれぞれ形成されている。各コネクタ端子3a,3bの両面は、絶縁層4で被われず外部に露出している。
【0019】
基板10は、ガラスエポキシ樹脂材より形成されている。基板10の表面には、印刷等によって配置された回路部である導電パターン部(図示せず)が配置されている。導電パターン部に各電子部品20が電気的に接続されている。基板10は、電子部品20が実装された面をメタルコア基板2に向けてメタルコア基板2に複数のリード22によって固定されている。
【0020】
複数のリード部22は、基板10の四隅付近に配置されている。各リード22は、メタルコア基板2と基板10の各スルーホール(図示せず)にそれぞれリフロー半田付け又は圧入で固定されている。又、メタルコア基板2の導電パターン部(図示せず)と基板10の導電パターン部(図示せず)は、リード22によって電気的に接続されている。尚、メタルコア基板2と基板10間は、クリップリードを介して固定しても良い。クリップリードは、クリップ部をリフロー半田付けで固定される。
【0021】
ポッティング部21は、アンダーフィルかエポキシ樹脂をポッティング材として形成されている。複数の電子部品20は、全てポッティング部21内に埋設されている。
【0022】
ハウジング部30は、基板10、電子部品20、ポッティング部21及びメタルコア基板2の一体品をインサート部品としてインサート成形によって作製されている。
【0023】
ハウジング部30は、基板10、電子部品20、ポッティング部21及びメタルコア基板2の一体品のコネクタ端子3a,3bを除く外周を封止する樹脂封止部31と、コネクタ端子3a,3bの外周を囲むように配置されたコネクタフード部32a,32bとを備えている。コネクタ端子3a,3bとコネクタフード部32a,32bによって外部接続用のコネクタ33A,33Bがそれぞれ構成されている。各コネクタ33A,33Bに各相手コネクタ(図示せず)が嵌合される。
【0024】
次に、上記したコネクタ1の製造方法を説明する。先ず、図3(a)に示すように、基板10に電子部品20を実装する(部品実装工程)。具体的には、基板10の導電パターン部の所望箇所に半田及び導電性ペースト、又は、半田ペーストと導電性ペーストの混合物をスクリーン印刷したり、半田ディスペンサによって適量塗布する。そして、そのスクリーン印刷位置や適用塗布位置に電子部品20をマウンタなどで搭載することによって電子部品20を実装する。
【0025】
又、メタルコア基板2のメタルプレート3を打ち抜き加工し、メタルプレート3の両端側に複数のコネクタ端子3a,3bをそれぞれ作製する(コネクタ端子作製工程)。
【0026】
次に、図3(b)に示すように、基板10の電子部品20を実装した面をメタルコア基板2の対向面として双方の基板2,10を間隔を置いて複数のリード部22を介して固定する(基板間固定工程)。各リード部22は、メタルコア基板2と基板10にそれぞれリフロー半田付け又は圧入で固定する。
【0027】
次に、図3(c)に示すように、メタルコア基板2と基板10の間にポッティング材を充填してポッティング部21を作製する(ポッティング充填工程)。
【0028】
次に、基板10、電子部品20、ポッティング部21及びメタルコア基板2の一体品をインサート部品として熱可塑性樹脂によってインサート成形を行い、ハウジング部30を作製する(インサート成形工程)。これで、図1及び図2に示すコネクタ1の製造が完了する。
【0029】
以上説明したように、メタルプレート3の一部をコネクタ端子3a,3bとするメタルコア基板2と、電子部品20を実装した面をメタルコア基板2の対向面としてメタルコア基板2に間隔を置いて固定された基板10と、基板10及びメタルコア基板2をインサート部品とするインサート成形によって作製され、メタルコア基板2及び基板10の外周を封止する樹脂封止部31とコネクタ端子3a,3bのコネクタフード部32a,32bを有するハウジング部30とを備えている。従って、従来例のようにメタルコア基板2にケースを組み付ける必要がなく、ケース及びケース組み付け工程を無くすことができ、部品点数の削減と組み付け工程の低減によって材料費及び加工費の低減を図ることができる。又、メタルコア基板2等をインサート部品としてインサート成形でハウジング部30を作製するため、ハウジング部30とメタルコア基板2等の間にガタ付きが発生せず、ハウジング部30とメタルコア基板2間の位置精度が高い。これにより、ハウジング部30のコネクタフード部32a,32bとコネクタ端子3a,3b間の位置精度が高く、コネクタ嵌合制が向上する。更に、相手コネクタ(図示せず)の嵌合時にあって、嵌合力をメタルコア基板2で受けるが、電子部品20はメタルコア基板2ではなく基板10に実装されているため、コネクタ嵌合時の嵌合力による悪影響を受け難い。以上より、材料費・加工費の削減と、コネクタ嵌合性の向上と、コネクタ嵌合時の電子部品20へのダメージの軽減を図ることができる。
【0030】
メタルコア基板2と基板10の間は、ポッティング部21によって充填されている。従って、構造体としての剛性が向上する。又、電子部品20等の周囲は、ポッティング部21が充填されるため、電子部品20等の防水性、防塵性が向上する。更に、インサート成形時には、成形樹脂が電子部品20の周囲に流れ込まないため、電子部品20が射出成形圧を受けることによる不具合を防止できる。更に、インサート成形時には、成形樹脂が電子部品20の周囲に流れ込まず、電子部品20が実装されていないメタルコア基板2と基板10面側、つまり、凹凸のない面側を流れることになるため、流動樹脂の流動性が良く、成形性が向上する。
【0031】
メタルコア基板2と基板10は、メタルコア基板2側の導電パターン部(図示せず)と基板10側の導電パターン部(図示せず)を電気的に接続するリード22を介して固定されている。従って、メタルコア基板2側の導電パターン部(図示せず)と基板10側の導電パターン部(図示せず)を電気的に接続する手段を別途設ける必要がない。
【符号の説明】
【0032】
1 コネクタ
2 メタルコア基板
3 メタルプレート
3a,3b コネクタ端子
10 基板
20 電子部品
21 ポッティング部
22 リード
30 ハウジング部
31 樹脂封止部
32a,32b コネクタフード部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタルプレートの一部をコネクタ端子とするメタルコア基板と、
電子部品を実装した面を前記メタルコア基板の対向面として前記メタルコア基板に間隔を置いて固定された基板と、
前記基板及び前記メタルコア基板をインサート部品とするインサート成形によって作製され、前記メタルコア基板及び前記基板を封止する樹脂封止部と前記コネクタ端子の外周に配置されるコネクタフード部を有するハウジング部とを備えたことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタであって、
前記メタルコア基板と前記基板の間に充填されたポッティング部を備えたことを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のコネクタであって、
前記メタルコア基板と前記基板は、前記メタルコア基板側の回路部と前記基板側の回路部を電気的に接続するリードを介して固定されたことを特徴とするコネクタ。
【請求項4】
基板に電子部品を実装する部品実装工程と、
メタルコア基板のメタルプレートの一部をコネクタ端子とする加工を行うコネクタ端子作製工程と、
部品実装工程とコネクタ端子作製工程の後に、前記基板の電子部品を実装した面を前記メタルコア基板の対向面として双方の基板を間隔を置いて固定する基板間固定工程と、
基板間固定工程の後に、前記基板が一体に固定された前記メタルコア基板をインサート部品とするインサート成形を行い、前記メタルコア基板及び前記基板を封止する樹脂封止部と前記コネクタ端子のコネクタフード部を有するハウジング部を作製するインサート成形工程とを備えたことを特徴とするコネクタ製造方法。
【請求項5】
請求項4記載のコネクタ製造方法であって、
基板間固定工程とインサート成形工程の間に、前記メタルコア基板と前記基板の間にポッティング材を充填してポッティング部を形成するするポッティング充填工程を行うことを特徴とするコネクタ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−151066(P2012−151066A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10713(P2011−10713)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】