説明

コンクリートポンプ車

【課題】 エンジンの動作が変化したとしても、ブーム装置を打設作業者が想定する速度で動作できるようにし、打設作業を安全に行うことができるコンクリートポンプ車を提供する。
【解決手段】エンジンEn(発動機)により動作するコンクリートポンプPとブーム装置Bとを備えたコンクリートポンプ車において、前記エンジンEnにより駆動し、前記コンクリートポンプPを作動するための第1油圧ポンプPU1と、同じく前記エンジンEnにより駆動し、前記ブーム装置Bを作動するための第2油圧ポンプPU2と、エンジンEnの回転数を把握する回転数センサS(回転数把握手段)と、回転数センサSにより得られたエンジンEnの回転数に基づき第2油圧ポンプPU2の吐出流量を変更する流量調整手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートポンプとブーム装置とを備えたコンクリートポンプ車に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートポンプ車は、車両の走行用エンジンの動力を用いて油圧ポンプを駆動してコンクリートポンプを作動している。また、コンクリートポンプ車は、油圧シリンダにより動作するブーム装置を備えており、前記コンクリートポンプと協働して生コンクリートを所望の位置に打設することができる。
【0003】
そして、打設作業の準備をする際には、コンクリートポンプを停止した状態で、生コンクリートを打設したい箇所までブーム装置の先端を伸長させる。一方、打設作業中においてはコンクリートポンプを生コンクリート吐出するように駆動した状態で、複数の打設箇所に対して順に生コンクリートを圧送するのだが、各打設箇所では生コンクリートの圧送が一段落するまでブーム装置を停止させておくことがある。このように、コンクリートポンプとブーム装置とは別々に動作させることがよくあるため、一方の動作中に他方が誤動作しないようにするため、コンクリートポンプ用油圧ポンプとブーム用油圧ポンプとを備え、それらを走行用エンジンにより駆動するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−202704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
打設作業の状況により、生コンクリートを圧送する流量を変化させなければならない。例えば、打設作業の時間を短縮するため、生コンクリートの圧送速度を増加させる場合、コンクリートポンプ用油圧ポンプから吐出する流量を増加させなければならず、そのため、油圧ポンプを駆動するためのエンジンの回転数を増加させている。すると、同じエンジンにより駆動するブーム用油圧ポンプの吐出流量も自ずと増加してしまい、この時、ブームを動かすとブームが速く動いてしまい、打設作業が危険である。
【0006】
本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたものであり、エンジンの動作が変化したとしても、ブームを打設作業者が想定する速度で動作できるようにし、打設作業を安全に行うことができるコンクリートポンプ車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための本発明のコンクリートポンプ車は、発動機により動作するコンクリートポンプとブーム装置とを備えたコンクリートポンプ車において、前記発動機により駆動し、前記コンクリートポンプを作動するための第1油圧ポンプと、前記発動機により駆動し、前記ブーム装置を作動するための第2油圧ポンプと、発動機の回転数を把握する回転数把握手段と、回転数把握手段により得られた発動機の回転数に基づき第2油圧ポンプの吐出流量を変更する流量調整手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このような構成のコンクリートポンプ車によれば、エンジンの動作が変化したとしても、ブーム装置を打設作業者が想定する速度で動作できるようにし、打設作業を安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を適用したコンクリートポンプ車の一実施形態を示した側面図である。
【図2】コンクリートポンプの要部拡大平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】コンクリートポンプの油圧回路図である。
【図5】図4のうち油圧ポンプの詳細を示した油圧回路図である。
【図6】操作装置Rを示した図である。
【図7】(a)はブーム装置とブーム駆動手段との関係を模式的に示した図であり、(b)はブーム駆動手段の必要流量データのデータテーブルである。
【図8】第2油圧ポンプPU2の制御フローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示すように、このコンクリートポンプ車Vは、打設位置に生コンクリートを供給するためのブーム装置Bと、生コンクリートを圧送するためのコンクリートポンプPと、これらブーム装置B及びコンクリートポンプPが固定されるとともに当該コンクリートポンプ車VのシャシフレームFに搭載固定されたサブフレームSを有している。
【0011】
シャシフレームFは、車両前後方向に延びる長尺の部材であり、車幅方向に所定の間隔を置いて平行に左右一対配置されて当該コンクリートポンプ車Vの車体を構成している。
サブフレームSは、左右一対のシャシフレームFの上面に沿って固定配置された長尺の部材であり、シャシフレームFと同様、車両前後方向に延びるとともに車幅方向に所定の間隔を置いて平行に一対配置されている。
【0012】
ブーム装置Bは、車両前後方向に延びるサブフレームSの前端側に配置されており、サブフレームSに固定された旋回台11と、この旋回台11上に設けられ、鉛直軸線回りに旋回自在な支柱12と、この支柱12の先端に設けられたブーム13とを有している。ブーム13は、互いに屈曲可能に連結された第1〜第4ビーム131〜134により構成されたいわゆる4段ブームである。
さらに、ブーム13の詳細構造を説明すると、第1ビーム131は支柱12の上部に回動可能に連結されている。そして、第2ビーム132の基部は第1ビーム131の先部に回動可能に連結され、第3ビーム133の基部は第2ビーム132の先部に、第4ビーム134の基部は第3ビーム133の先部に回動可能にそれぞれ連結されている。
【0013】
これら旋回台11及び第1〜第4ビーム131〜134は、それぞれの連結部分がブーム駆動手段14によって回動駆動することができる。
ブーム駆動手段14は、旋回シリンダ141と、起伏シリンダ142と、第1〜第3屈折シリンダ143〜145とを備えている。旋回シリンダ141は旋回台11に固定されており、相対配置した2本の単動シリンダを一対備え、該相対配置した単動シリンダはラック・ピニオン機構を介して支柱12と接続されている。起伏シリンダ142は、基部を支柱12に先部を第1ビーム131にそれぞれ回動可能に連結している。第1屈折シリンダ143は第1ビーム131と第2ビーム132とに、第2屈折シリンダ144は第2ビーム132と第3ビーム133とに、第3屈折シリンダ145は第3ビーム133と第4ビーム134とに各両端を回動可能に連結している。
そして、ブーム駆動手段14を作動することにより、第1〜第4ビーム131〜134を互い違いに屈曲させることで折り畳むことができるし、各接続部分を回動させてブーム13全体を上方に起立させることができる。また、第1〜第4ビーム131〜134を右旋回(図7(a)の矢印BR方向)及び左旋回(図7(a)の矢印BL方向)させることができる。
【0014】
また、支柱12、及びブーム13には、コンクリートポンプPから圧送される生コンクリートをブーム13の先端135まで導くブーム用配管15が、当該支柱12及びブーム13に沿って固定されている。
【0015】
図2に示すように、コンクリートポンプPは、生コンクリートなどの流体を圧送するためのものであり、サブフレームS上に搭載されたコンクリートポンプ本体2と、コンクリートポンプ本体2の後方に設けたバルブ装置3とから成る。
【0016】
図2に示すように、コンクリートポンプ本体2は、油圧駆動の復動式ピストンポンプであって、互いに並列する左側のポンプシリンダ21と右側のポンプシリンダ22とを備えている。それらのポンプシリンダ21,22の基端には、左側のポンプシリンダ21を駆動させる左側駆動シリンダ23、右側のポンプシリンダ22を駆動させる駆動シリンダ24がセンターフレーム26を介して一体に接続されている。一対のポンプシリンダ21,22内にはそれぞれ摺動自在に嵌合されるポンプピストン21a,22aが、一対の駆動シリンダ23,24内にはそれぞれ摺動自在に嵌合される駆動ピストン23a、24aが設けられている。左側のポンプシリンダ21内のポンプピストン21aと左側の駆動シリンダ23内の駆動ピストン23a、右側のポンプシリンダ22内のポンプピストン22aと右側の駆動シリンダ24内の駆動ピストン24aとが、センターフレーム26を摺動自在に貫通するピストンロッド25によりそれぞれ一体に連結されている。そして各駆動ピストン23a、24aは、対応する駆動シリンダ23,24内をピストンロッド側の先部油室23b,24bと、ピストン側の基部油室23c、24cとに区画している。各ポンプシリンダ21,22の先端は、吐出端21b,22bとして開口されている。この各ポンプシリンダ21,22の吐出端21b,22bはバルブ装置3の後面に接続され、連通している。
【0017】
図2に示すように、バルブ装置3はバルブケーシング31と、底蓋32と、S字バルブ33(即ち揺動バルブ管)と、S字バルブ駆動手段34と、吐出配管35から成っている。
【0018】
図2に示すように、バルブケーシング31は前壁31a、後壁31b、及び両側壁31cとにより枠状に形成されており、下部は開口部31dにより開口されている。
【0019】
図2に示すように、底蓋32はバルブケーシング31下部の開口部31dをシリンダ等(図示せず)にて開閉するものである。
【0020】
図2に示すように、バルブケーシング31の下部には、湾曲管状のS字バルブ33が収容支持されている。このS字バルブ33は、S字バルブ33と一体で各ポンプシリンダ21,22の軸線と平行な回動支軸33aの軸線まわりに回動自在であり、一対のポンプシリンダ21,22の先部(即ち吐出端21b,22b)を吸入口33bに交互に切換連通可能である。
【0021】
図2及び図3に示すように、回動支軸33aには、これを両ポンプピストン21a,22aの作動と同期して回動させて、S字バルブ33を切換駆動するためのS字バルブ駆動手段34が接続される。このS字バルブ駆動手段34は、互いに協働して構成する左側の単動式バルブ駆動シリンダ34aおよび右側の単動式バルブ駆動シリンダ34bの先部が、該回動支軸33aより一体に延びる連結アーム34cを介して連結され、その両バルブ駆動シリンダ34a,34bの基部が、コンクリートポンプ本体2に回動可能に連結されて構成される。
【0022】
コンクリートポンプPの運転時に、この一対のバルブ駆動シリンダ34a,34bは、一対のポンプシリンダ21,22のうち、生コンクリートの吸入状態にあるものをバルブケーシング31内に、また生コンクリートの圧送状態にあるものを吸入口33bに交互に接続するように、S字バルブ33を切換駆動制御して生コンクリートを円滑に圧送する。即ち、S字バルブ33は、吸入口33bを左側のポンプシリンダ21の吐出端21bに接続する第1切換位置と、吸入口33bを右側のポンプシリンダ22の吐出端22bに接続する第2切換位置との間を往復移動(揺動)可能であり、その第1切換位置へは左側のバルブ駆動シリンダ34aの伸長作動により、またその第2切換位置へは右側のバルブ駆動シリンダ34bの伸長作動によりそれぞれ切換保持される。
【0023】
図2に示すように、吐出配管35は、その前端がバルブケーシング31の後壁31bに接続されており、S字バルブ33に常時連通されており、その後端は、ブーム装置Bのブーム用配管15に接続されている(図1参照)。
【0024】
図1に示すように、ホッパHはバルブケーシング31の上部に連結され、生コンクリートを受け入れるようになっている。
【0025】
図4及び図5を参照してコンクリートポンプ2とブーム装置Bとを駆動する油圧回路について説明する。コンクリートポンプ車Vは、そのエンジンEnにより駆動する可変容量式の第1油圧ポンプPU1及び第2油圧ポンプPU2を備えている。両油圧ポンプPU1,PU2は、可変容量式の油圧ポンプ(本実施例ではアキシャルピストンポンプ)であり、斜板を操作することにより吐出容量を変更することができる。第1油圧ポンプPU1は左右の駆動シリンダ23,24の動作方向を切り換える切換弁V1と、左右の駆動シリンダ23,24の動作圧力を切り換える切換弁V2とを介してコンクリートポンプ本体2に接続されている。また、第1油圧ポンプPU1は、S字バルブを切換駆動するバルブ切換駆動手段V3を介してS字バルブ駆動手段34に接続されている。
一方、第2油圧ポンプPU2はブーム切換弁V4を介してブーム駆動手段14が接続されている。第2油圧ポンプPU2は、ポンプ本体42と、ポンプ本体42の吐出側に連結した電磁切換弁44と、電磁切換弁44と接続されておりポンプ本体42の斜板42aの傾きを変更させるスライダ45とを備えている
なお、第1油圧ポンプPU1のポンプ本体41と第2油圧ポンプPU2のポンプ本体42とは駆動軸43により直列接続されており、コンクリートポンプ車VのエンジンEnにて駆動する。
【0026】
コンクリートポンプ車Vは、制御装置Cを備えており(図5)、制御装置Cは操作装置Rからの入力と、エンジンEnの回転数を測定する回転数把握手段としての回転数センサSからの入力とから作業者の指示及びエンジンの動作状況から適切な動作をさせるために電磁切換弁に指示信号を出力する。なお、制御装置Cはプログラマブルロジックコントローラ(略してPLC)を用いている。
【0027】
図6は操作装置Rを示した図である。操作装置Rは、コンクリートポンプ車Vのブーム装置B及びコンクリートポンプPを起動するための主電源スイッチ51と、コンクリートポンプPの生コンクリート圧送作業を開始するためのポンプ起動スイッチ52と、エンジンの回転数を増減させる回転数スイッチ53a,53bと、コンクリートポンプPの吐出量を増減させる吐出コントロールスイッチ54a、54bと、ブーム装置Bを左右に旋回させる右旋回スイッチ55a及び左旋回スイッチ55bと、各ビームを起伏回動させるビーム起伏スイッチ56a〜56hと、ブーム装置Bの動作速度を調整するブーム速コントロールスイッチ57a,57bとを備えている。第1ビーム131を起立回動させたい場合は、作業者が第1ビーム起立スイッチ56aを押下すると、制御装置Rは第1ビーム起立指示を制御装置Cに送信し、制御装置Cは当該指示に基づき起伏シリンダ142を伸長させ、第1ビーム131を起立回動する。また、ブーム装置Bの動作速度を変更したい場合は、ブーム速コントロールスイッチの「速」スイッチ57aを押下すると現在の速度モードよりも速い速度モードに切り替える指示を、「遅」スイッチ57bを押下すると現在の速度モードよりも遅い速度モードに切り替える指示を制御装置Cに出力する。制御装置Cは、該速度モードの切り替え指示に基づき速度モードを変更する。
【0028】
以上のごとく構成されたコンクリートポンプ車Vの動作について説明する。
まず生コンクリートを圧送する場合にはS字バルブ33及びポンプピストン21,22を作動させる。すなわち、右側のバルブ駆動シリンダ34bを伸長させてS字バルブ33をバルブケーシング31内で右側に揺動させ、S字バルブ33の吸入口33bを右側のポンプシリンダ21の吐出端22bに接続し、吐出配管35と右側のポンプシリンダ22とを連通させる。
その状態で左側ポンプシリンダ21のポンプピストン21aを後退させるとともに、右側のポンプシリンダ22のポンプピストン22aを前進させて、左側のポンプシリンダ21内にバルブケーシング31内の生コンクリートを吸入する。
【0029】
次に左側のバルブ駆動シリンダ34aを伸長させてS字バルブ33を左側に揺動させ、S字バルブ33を左側のポンプシリンダ21に連通させる。
この状態で一対のポンプピストン21,22を前記と逆の作動をさせる。つまり、右側ポンプシリンダ22のポンプピストン22aを後退させるとともに、左側のポンプシリンダ21のポンプピストン21aを前進させる。これにより、右側のポンプシリンダ22は、その内部にバルブケーシング31内の生コンクリートを吸い込み、左側のポンプシリンダ23は、その内部に吸入しておいた生コンクリートをS字バルブ33に押し出すとともに吐出配管35内に圧送する。
上記作動を繰り返すことによりバルブケーシング31内の生コンクリートを吐出配管35に連続的に圧送することができる。
【0030】
次に、第2油圧ポンプPU2の吐出量を調整する制御について説明する。
図8は制御装置Cにおける処理のうち、第2油圧ポンプPU2の吐出量調整に関するフローチャートである。
まず、操作装置Rのスイッチのうちブーム装置Bの作動を指示するスイッチ(各旋回スイッチ55a,55bと各ビーム起伏スイッチ56a〜56hのいずれか)が押されたか否かを確認し(ステップS1)どのスイッチが押されたかを一時的に記憶しておく。次に、ブーム速度モードをブーム速コントロールスイッチ57a,57bの指示から、高速中速低速のいずれの場合で動作させようとしているのかを読み込む(ステップS2)。本実施例では、各ビームの先端が高速モードは毎秒1m、中速モードは毎秒0.6m、低速モードでは毎秒0.3mの速度で動作するように設定されている。
【0031】
そして、制御装置Cは、ステップS1で記憶しておいた操作から、ステップS1で指示された動作シリンダ及び方向に合致した必要流量を、予め記録しておいたブーム駆動手段14の必要流量データ(ブーム駆動データとも呼ぶ)を記憶手段DBからピックアップする(ステップS3)。ブーム駆動データはブーム装置Bごとに固有の値であるため、必要流量はあらかじめ算出しておくことができる。第1ビーム131を例にして示すと、第1ビーム131の回動中心から先端までの長さL1と、第1ビーム131の回動中心から起伏シリンダ142の作用点までの長さL2と、起伏シリンダ142のボア径及びロッド径から、高速モード(先端の動作速度が毎秒1m)で作動させるために必要な流量を算出、記憶させてある(図7(b)参照)。起伏シリンダは複動式の油圧シリンダを用いており、同じ速度で伸長・収縮させる場合であっても収縮側はシリンダロッドが存在するため収縮側の必要流量Q2は伸長側の必要流量Q1より少なくなる。従って、記憶手段DBは第1ビーム131の回動方向ごとに必要流量を記憶している。その他のビームを起伏するためや、ブーム装置Bを旋回させるために必要な流量も同様にアクチュエータごと・動作方向ごとに算出、記憶させてある(図7(b)のQ3〜Q10)。中速,低速モードの必要流量は、高速モードの必要流量から求めればよい。
なお、ステップS1において複数のスイッチが押されていた場合は、このステップS3において複数のブーム駆動データをピックアップする。
【0032】
次に回転数センサSからのエンジンEnの回転数を読み込み(ステップS4)、ステップS2〜S4で得られたブーム駆動手段14の必要流量データと速度モードとエンジン回転数とから、電磁切換弁44のソレノイドSOL1を動作させるための制御信号値を算出することで決定し(ステップS5)、ソレノイドSOL1に制御信号を出力する(ステップS6)。なお、制御装置C(少なくともステップS6)と第2油圧ポンプの斜板42aが本発明の流量調整手段を構成している。
【0033】
以上のごとく本発明のコンクリートポンプ車は、ブーム装置Bを駆動するために備えた第2油圧ポンプPU2をエンジン回転数に基づき吐出流量を変化するように構成している。該第2油圧ポンプPU2は、第1油圧ポンプPU1とエンジンEnに直列に接続されており、第1油圧ポンプPU1の作動状況によりその吐出量が変化する。具体的には、打設準備中であれば、エンジンEnの回転数はアイドリングに近い状態であり、生コンクリートの圧送作業中であればコンクリートポンプPの動作速度を可能な限り速くするために、第1油圧ポンプPU1の吐出量が最大になるようにエンジンEnは高い回転数で作動させている。
エンジンEnの回転数が低い場合は第2油圧ポンプPU2の吐出量も低下し、エンジンEnの回転数が高ければ第2油圧ポンプPU2の吐出量も増加してしまう。しかしながら、上記のごとく制御装置Cは、エンジンEnの回転数に応じて第2油圧ポンプPU2の斜板42aを制御するための信号を決定し出力するため、第2油圧ポンプPU2は、ブーム駆動手段14の動作に必要な作動油量を供給することができる。すなわち、コンクリートポンプPの動作にかかわらず、ブーム駆動手段14に最適な作動油量を供給することができるため、ブーム装置Bを作業者が指示した速度で動作させることができる。これにより、作業者が想定する速度を超えて各ビームが動き始めてしまうことを抑制するため、安全に打設作業を行うことができる。
また、第2油圧ポンプPU2の吐出流量そのものを調整するようにしたため、ブーム装置Bの動作を優先するため、第2油圧ポンプPU2の吐出流量を過大に設定し、不要となった余剰な作動油をタンクに戻すようにしなくても良いため、ブーム装置Bを連続で動作させたとしても、作動油温の上昇を抑制することができる。
また、生コンクリートの粘性の違いにより、左右の駆動シリンダ23,24の動作圧を切り替えて動作させることがある
【0034】
なお、本発明は上記実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。例えば、上記実施例においてブーム装置Bは、4本のビームを備えた4段ブームを例に挙げたが、少なくとも1本のビームを1方向に動作させることができるコンクリートポンプ車Vであればよく、5段以上のブーム装置Bにも適用することができる。
【0035】
エンジンEnの回転数を把握するためにエンジンEnに回転数センサSを取り付けたが、制御装置CからのエンジンEnの回転数を制御するための出力信号や操作装置Rからのエンジン回転数の増減指示を代用してもよい。具体的にはエンジンの回転数を増減させる回転数スイッチ53a,53bのうち、増加スイッチ53aの累積押下回数と、減少スイッチ53bの累積押下回数とから作業者によるエンジン回転数の指示を知ることができるので、該エンジン回転数指示をエンジン回転数とみなして斜板42aを制御するための出力信号を算出してもよい。
また、コンクリートポンプPが生コンクリートを単位時間あたりに吐出した流量、すなわち生コンクリート流量計の測定値や、単位時間あたりにS字バルブ34が左右に揺動した回数を近接センサLS1,LS2(図3参照)により生コンクリートの吐出流量を把握し、その生コンクリートの吐出流量から間接的にエンジンEnの回転数を推定するようにしてもよい。
【0036】
第1及び第2油圧ポンプPU1,PU2としてアキシャルピストンポンプを例に挙げたが、その他の種類の可変容量式の油圧ポンプであってもよく、各種可変容量式ポンプの吐出流量を調整するための信号に合わせて制御装置Cは出力信号を出力するようにしてもよい。また、定容量式の油圧ポンプを使用し、第1油圧ポンプPU1と第2油圧ポンプPU2とを連結する駆動軸43のうち両油圧ポンプPU1とPU2との間に変速機を介させて、第2油圧ポンプPU2の吐出流量を変更するようにしてもよい。これにより、ひとつの動力源から2つの油圧ポンプPU1,PU2を駆動しつつ、第2油圧ポンプPU2をブーム装置Bを駆動する際に必要な最適な作動油量を吐出することができる。この場合、制御装置Cと変速機とが流量調整手段に相当する。
【0037】
また、記憶手段DBに記憶させたデータとしてブーム駆動手段14の高速モードにおける必要流量を記憶させたが、中速,低速モードを記憶させてもよく、全ての速度モードにおける必要流量を記憶させてもよい。また、ブーム装置Bの動作に対応する必要流量のデータに代えて第2油圧ポンプPU2の制御信号値を記憶させてもよい。
【0038】
上記実施例において流量調整手段の一部である制御装置CはPLCであったが、リレー回路や電子回路といった各種制御装置を代用することができる。すなわち回転数センサSが発する回転数や操作装置Rからの操作に関する信号を受けて第2油圧ポンプPU2の吐出流量を算出し、斜板42aを制御するための出力信号を発することができる装置であればよい。
【0039】
また、第2油圧ポンプPU2は、ブーム装置Bのブーム駆動手段14と接続されているが、その他に搭載している付属油圧機器、例えばホッパH内の撹拌ブレード、ジャッキJ(図1参照)の駆動用シリンダや、コンクリート配管15を洗浄するためのポンプを駆動する油圧アクチュエータ、を第2油圧ポンプPU2により駆動するようにしてもよい。この時、ブーム駆動手段14と同じく付属油圧機器の必要流量を記憶手段DBに記憶させておき、ステップS1において付属油圧機器の操作入力が行われた場合にはステップS3において付属油圧機器に対応した必要流量を読み込むようにしてもよい。これによりホッパH内の撹拌ブレードが駆動している場合とそうでない場合とで第2油圧ポンプPU2の吐出流量を細かく調整することができる。そうして付属油圧機器の動作状況をブーム駆動手段14の動作の際に加味することができるため、ブーム装置Bを作業者が想定する速度で動作させることができる。
【0040】
図6に示す操作装置Rは無線によりコンクリートポンプ車Vに操作信号を送信する送信機を図示しているが、コンクリートポンプ車Vに同じ機能を有する操作スイッチを設けてもよい(図示せず)。
【0041】
上記実施例ではピストン式コンクリートポンプを例に挙げたが、絞り出し式コンクリートポンプなど、他の機構のコンクリートポンプを搭載したコンクリートポンプ車に適用してもよい。例えば絞り出し式コンクリートポンプを搭載したコンクリートポンプ車であれば、上記実施例と同じく、エンジンに接続された2つの油圧ポンプを備えている。そして絞り出し式コンクリートポンプは、一方の油圧ポンプから圧油の供給を受けた油圧モータにより駆動する。他方の油圧ポンプは、エンジン回転数からブームを駆動するための油圧ポンプであり、この油圧ポンプの吐出流量をエンジン回転数に基づき変更すればよい。
【符号の説明】
【0042】
V コンクリートポンプ車
P コンクリートポンプ
B ブーム装置
PU1 第1油圧ポンプ
PU2 第2油圧ポンプ
42 ポンプ本体
42a 斜板
43 駆動軸
44 電磁切換弁
45 スライダ
S 回転数把握手段
C 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発動機により動作するコンクリートポンプとブーム装置とを備えたコンクリートポンプ車において、
前記発動機により駆動し、前記コンクリートポンプを作動するための第1油圧ポンプと、
前記発動機により駆動し、前記ブーム装置を作動するための第2油圧ポンプと、
発動機の回転数を把握する回転数把握手段と、
回転数把握手段により得られた発動機の回転数に基づき第2油圧ポンプの吐出流量を変更する流量調整手段とを備えたことを特徴とするコンクリートポンプ車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−184625(P2012−184625A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49859(P2011−49859)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000163095)極東開発工業株式会社 (215)
【Fターム(参考)】