説明

コンクリート組成物

【課題】スメクタイト系鉱物を含む骨材を含むにもかかわらず、スランプロスが小さいコンクリート組成物を提供すること。
【解決手段】セメントと、スメクタイト系鉱物を含む骨材と、高性能AE減水剤と、超遅延剤とを含有し、初期のスランプが8〜18cmであることを特徴とするコンクリート組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート組成物、より詳しくは、スメクタイト系鉱物を含む骨材を用いたコンクリート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート(いわゆる生コンクリート)は、現場での作業性を良好に得る観点から、一定時間経過した後であっても流動性の低下(すなわちスランプロス)が小さいことが望ましい。そのため、コンクリートの流動性を保持する技術が種々開発されている。例えば、下記特許文献1には、高性能減水剤、オキシカルボン酸又はその塩、及び所定量のポゾラン物質を含むセメントを含む組成を有することにより、ポゾラン物質を含むセメントを用いるにもかかわらず、優れた流動保持性が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−43238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コンクリートに含有させる骨材は、そのコンクリートが用いられる現場に近い地域で採取されることも多いが、採取する地域によって骨材の性質が大きく異なる場合がある。本発明者らが検討したところ、モンモリロナイト等のスメクタイト系鉱物を比較的多く含む骨材を用いる場合、コンクリートの凝結硬化時間が早くなるため、短期間でもスランプロスが大きくなる傾向にあることが判明した。このようなコンクリートは、充てん不良、コンクリート輸送用のポンプの閉塞、或いはブリーディングが過小となることによる初期のひび割れの発生といった不具合が生じ易い可能性がある。
【0005】
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、スメクタイト系鉱物を含む骨材を含むにもかかわらず、スランプロスが小さいコンクリート組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のコンクリート組成物は、セメントと、スメクタイト系鉱物を含む骨材と、高性能AE減水剤と、超遅延剤とを含有し、初期のスランプが8〜18cmであることを特徴とする。
【0007】
上記本発明のコンクリート組成物は、骨材としてスメクタイト系鉱物を含むものの、セメントのほかに、混和剤として高性能AE減水剤及び超遅延剤を組み合わせて含有することにより、スランプロスが小さいものとなる。特に、本発明のコンクリート組成物は、初期のスランプが8〜18cmであって十分な作業性が得られる流動性を有するが、上記組成を有することによりスランプロスが小さいことから、長時間経過後であっても十分な流動性を維持することが可能であり、良好な作業性を長期にわたって維持することができる。
【0008】
本発明のコンクリート組成物において、骨材は、スメクタイト系鉱物を4.0〜10.0質量%含むものであると好ましい。本発明者らの検討の結果、スメクタイト系鉱物がある程度以上多く含まれる骨材を用いると、特にスランプロスが大きくなり易い傾向にあることが判明した。これに対し、本発明のコンクリート組成物は、高性能AE減水剤及び超遅延剤を組み合わせて含む特定の組成を有することによってスランプロスを小さくすることが可能であり、上記範囲のスメクタイト系鉱物を含む骨材を適用する場合に、特に優れた効果を発揮することができる。
【0009】
スメクタイト系鉱物としては、モンモリロナイト及びサボナイトのうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。スメクタイト系鉱物としてこれらの成分を含む場合であっても、本発明によれば、スランプロスが小さいコンクリート組成物を提供することができる。
【0010】
また、超遅延剤は、変性リグニンスルホン酸化合物とオキシカルボン酸化合物との複合体であると好ましい。このような超遅延剤によれば、スランプロスの低減効果が一層良好に得られるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スメクタイト系鉱物を含む骨材を含むにもかかわらず、スランプロスが小さいコンクリート組成物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1のコンクリート組成物の調製時からの経過時間とそのときのスランプの値との関係を示すグラフである。
【図2】比較例1及び2のコンクリート組成物の製造時からの経過時間とそのときのスランプの値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
好適な実施形態のコンクリート組成物は、セメントと、スメクタイト系鉱物を含む骨材と、高性能AE減水剤と、超遅延剤とを含有し、初期のスランプが8〜18cmであるものである。まず、コンクリート組成物を構成する各成分について説明する。
【0015】
セメントとしては、通常、コンクリートに適用されるセメントが特に制限なく挙げられる。例えば、普通、早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩性、白色などの各種ポルトランドセメント、高炉スラグや通常のフライアッシュをポルトランドセメントに混合した混合セメント、エコセメント、超早強セメントや急硬セメント等が例示される。また、これらのセメントの複数を任意量混合したセメントも使用することができる。
【0016】
スメクタイト系鉱物を含む骨材は、主にコンクリート中に粗骨材又は細骨材として添加される。骨材としては、例えば、スメクタイト系鉱物を含む砂利や砕石等が挙げられ、0.15〜20mm程度の粒径を有するものであると好ましい。骨材に含まれるスメクタイト系鉱物としては、モンモリロナイトやサボナイトが挙げられる。骨材は、複数種類のスメクタイト系鉱物を含むものであってもよい。骨材がスメクタイト系鉱物を含むか否かは、例えば、骨材をX線回折で分析し、スメクタイト系鉱物に由来するピークが得られるか否かで確認することができる。
【0017】
骨材中のスメクタイト系鉱物の含有割合は、骨材の全量中、4.0質量%以上であると好ましく、8.0質量%以上であるとより好ましく、10.0質量%以上であると更に好ましい。骨材中のスメクタイト系鉱物の含有割合は、例えば、X線回折により測定することができる。骨材においては、この骨材を構成している砂利や砕石等の塊ごとにスメクタイト系鉱物の含有割合にばらつきがある場合もあるが、その場合、例えば、1試料を1000g程度とし、3試料分の分析を行って算出されたそれらの平均値を骨材全体におけるスメクタイト系鉱物の含有割合とすることができる。
【0018】
従来、スメクタイト系鉱物の含有割合が多いほど、コンクリート組成物のスランプロスが大きくなる傾向にあったが、本実施形態では、上記のような割合で骨材がスメクタイト系鉱物を含む場合であっても、十分にスランプロスを小さくすることができる。骨材中のスメクタイト系鉱物の含有割合の上限は、当該骨材がコンクリートにおいて骨材として十分に機能できる程度であるが、スランプロスの低減効果を良好に得る観点からは、10質量%以下であるとより好ましい。
【0019】
コンクリート組成物は、骨材として、上記のような粗骨材と組み合わせて細骨材を含むこともできる。細骨材としては、通常コンクリートに添加される細骨材である珪砂、川砂、陸砂、海砂、砕砂等の砂類、廃FCC触媒、石英粉末及びアルミナクリンカー等を適用できるが、細骨材も、上述した粗骨材と同様にスメクタイト系鉱物を含有するものであってもよい。細骨材がスメクタイト系鉱物を含有する場合であっても、本実施形態のコンクリート組成物によれば、スランプロスを十分に小さくすることができる。
【0020】
高性能AE減水剤としては、コンクリートに添加される混和剤として公知の高性能AE減水剤が挙げられ、例えば、ナフタレン系、メラミン系、ポリカルボン酸系、アミノスルホン酸系の高性能AE減水剤がある。
【0021】
超遅延剤としては、コンクリートに添加される混和剤として公知の超遅延剤が挙げられる。例えば、オキシカルボン酸系、ポリカルボン酸系の超遅延剤が例示でき、オキシカルボン酸系の超遅延剤が好適である。なかでも、超遅延剤としては、変性リグニンスルホン酸化合物とオキシカルボン酸化合物との複合体からなるものは、コンクリート組成物のスランプロスを小さくする効果に優れる傾向にある。
【0022】
本実施形態のコンクリート組成物は、上述した成分に水が加えられて凝結硬化が可能なものとなる。本実施形態では、上述した各成分に加えて水を含むものも、コンクリート組成物に含まれることとする。
【0023】
コンクリート組成物は、更に、通常のセメント組成物に含有される混和剤を必要に応じて含有していてもよい。混和剤としては、例えば、AE剤、AE減水剤、高性能AE減水剤等を、スランプロスを小さくする効果が阻害されない程度に含むことができる。
【0024】
本実施形態のコンクリート組成物は、初期のスランプが8〜18cmであり、12〜15cmであると好ましく、15〜18cmであるとより好ましい。ここで、「初期のスランプ」とは、コンクリート組成物に含有させる成分を混合し、攪拌してほぼ均一となった時点から0〜5分程度以内に測定されたスランプの値をいうこととする。コンクリート組成物は、このようなスランプが得られるように各成分(特に水)の含有割合が調整される。コンクリート組成物がこのような初期のスランプを有することによって、コンクリート組成物を移動させる際などに取り扱い性が良好となる。また、本実施形態のコンクリート組成物は、スランプロスを小さくできることから、仮に製造後、実際に現場で使用されるまでに時間があいても、十分に良好な作業性が得られる。
【0025】
上述した本実施形態のコンクリート組成物において、各成分の好適な含有量は次の通りである。
【0026】
まず、本実施形態のコンクリート組成物において、水セメント比(W/C)は、40〜60%であると好ましく、45〜55%であると好ましい。このような水セメント比を有することで、凝結硬化後に十分な強度が得られるほか、初期のスランプを上述した好適な範囲に調整し易くなる。
【0027】
スメクタイト系鉱物を含む骨材の含有量は、セメントの含有量を100%としたとき、これに対して、400〜600%であると好ましく、450〜550%であるとより好ましい。骨材がこのような割合で含まれることにより、凝結硬化後の強度が良好となる。また、本実施形態のコンクリート組成物は、上述した各成分を組み合わせて含有することで、スメクタイト系鉱物を含む骨材をこのような割合で含んでいても、スランプロスが小さいものとなり得る。
【0028】
また、コンクリート組成物が粗骨材に加えて細骨材を含む場合は、細骨材の含有量は、セメントに対して、100〜300%であると好ましく、150〜250%であるとより好ましい。
【0029】
高性能AE減水剤の含有量は、セメントに対して、0.3〜1.0%であると好ましく、0.3〜0.5%であるとより好ましい。高性能AE減水剤の含有量が好適な範囲であると、特にコンクリート組成物を調製した初期のスランプロスを小さくすることができる傾向にある。
【0030】
また、超遅延剤の含有量は、セメント100質量部に対して、0.3〜1.0質量部であると好ましく、0.3〜0.5質量部であるとより好ましい。超遅延剤の含有量が好適な範囲であるほど、長時間経過後であってもスランプロスを小さくし易くなる。
【0031】
本実施形態のコンクリート組成物においては、スメクタイト系鉱物を含む骨材を含有するにもかかわらず、セメントに加えて混和剤として高性能AE減水剤と超遅延剤を組み合わせて含むことで、初期及び長時間経過後のスランプロスの両方を小さくすることができ、全体としてもスランプロスが小さくなる。これは、必ずしも限定されないが、コンクリート組成物は、高性能AE減水剤により調製された初期の分散性が維持される一方、超遅延剤により経時的な分散性の低下が抑制されることによると考えられる。そして、このような本実施形態のコンクリート組成物によれば、スランプロスが小さくできるだけでなく、スランプの減少勾配も小さくすることができるため、長時間にわたって初期の好適な流動性が保たれ、優れた作業性が得られるようになる。
【0032】
このような効果をより良好に得る観点からは、高性能AE減水剤と超遅延剤とが一定の割合で含まれることが好ましい。すなわち、高性能AE減水剤に対する超遅延剤の割合がが、質量比で0.3〜0.5%であると好ましい。
【0033】
また、高性能AE減水剤及び超遅延剤とは、コンクリート組成物を用いる際の周辺環境に応じて、それぞれの含有量を変えることがより好ましい。例えば、気温が高く、また湿度が高い環境下では、初期のスランプ低下が大きいことから、それを抑制するために、高性能AE減水剤の含有量を大きくすることが好ましい。例えば、夏季には、冬季に比べて高性能AE減水剤の含有量を0.1〜0.3%程度多くすることができる。
【0034】
さらに、コンクリート組成物においては、高性能AE減水剤及び超遅延剤の含有量を調整することによって、スランプロスをある程度小さくしながら、凝結硬化するまでの時間を早めることも可能である。その場合は、上述した好適な範囲内で超遅延剤の量を少なくすることが好ましい。
【0035】
以上のように、好適な実施形態のコンクリート組成物によると、スメクタイト系鉱物を含む骨材を含有するにもかかわらず、セメントに加え、高性能AE減水剤及び超遅延剤を組み合わせて含有することにより、スランプロスを小さくすることができ、しかもスランプの減少勾配も小さくすることができる。そのため、かかるコンクリート組成物によれば、初期及び長時間経過後に良好な流動性が得られることから、優れた作業性が得られるようになる。
【0036】
そして、このようなコンクリート組成物によれば、高性能AE減水剤及び超遅延剤の含有量を、例えば上述した好適な範囲内で変化させることにより、良好な作業性が得られる範囲でスランプロスを適度に調整することができる。すなわち、本実施形態のコンクリート組成物によれば、スメクタイト系鉱物を含む骨材を含有するコンクリート組成物のフレッシュ性状を調整する方法を提供することも可能となる。このような方法においては、コンクリート組成物に含まれる高性能AE減水剤及び超遅延剤の含有量を適切に変化させることで、季節変動による周辺環境や、或いは所望とする凝結硬化までの時間等の条件に応じて好適なフレッシュ性状を得ることが可能となる。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、必ずしも上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
[実施例1]
セメント(太平洋セメント社製、普通ポルトランドセメント)、モンモリロナイトを含む骨材、高性能AE減水剤(BASFポゾリス社製、SP−8SV)、超遅延剤(BASFポゾリス社製、ポゾリスNo.89)及び水を混合して、コンクリート組成物を調製した。この際、水/セメント比は50%とし、セメントに対する骨材、高性能AE減水剤及び超遅延剤の量を、それぞれ0.5%、0.4%、及び0.5%とした。
【0040】
このコンクリート組成物について、製造直後(初期)から一定の時間経過ごとにスランプの測定を行った。なお、スランプは、JIS A 1101のスランプ試験に準拠する方法により測定した。また、スランプの測定は、コンクリート組成物の製造直後(初期)から90分が経過するまで、30分ごとに行った。図1は、実施例1のコンクリート組成物の調製時からの経過時間とそのときのスランプの値との関係を示すグラフである。
【0041】
図1に示すように、実施例1のコンクリート組成物によれば、コンクリート組成物の調製後、90分を経過してもスランプの低下は4cm以内であり、スランプロスが小さいことが確認された。また、90分が経過するまでのスランプの減少勾配も小さいことが判明した。
【0042】
[比較例2、3]
高性能AE減水剤及び超遅延剤の組み合わせに代えて、高性能AE減水剤のみをセメントに対して1.0%用いたこと(比較例1)、または高性能AE減水剤遅延型(BASFポゾリス社製、SP−8RV)のみをセメントに対して1.0%用いたこと(比較例2)以外は、実施例1と同様にして、比較例2及び3のコンクリート組成物をそれぞれ調製した。
【0043】
得られた各コンクリート組成物について、実施例1と同様にして、製造直後(初期)から90分が経過するまでの一定時間ごとにスランプを測定した。なお、比較例2、3では、15分経過ごとにスランプを測定するようにした。図2は、比較例1及び2のコンクリート組成物の製造時からの経過時間とそのときのスランプの値との関係を示すグラフである。
【0044】
図2に示すように、比較例2のコンクリート組成物では、90分経過時点でスランプロスが10cmを超えており、またスランプの減少勾配も小さいことが確認された。また、比較例3のコンクリート組成物では、30分経過時までのスランプの減少は小さかったものの、その後スランプの減少勾配が大きくなり、また最終的なスランプロスも大きくなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、
スメクタイト系鉱物を含む骨材と、
高性能AE減水剤と、
超遅延剤と、
を含有し、
初期のスランプが8〜18cmであることを特徴とするコンクリート組成物。
【請求項2】
前記骨材は、前記スメクタイト系鉱物を4.0〜10.0質量%含む、ことを特徴とする請求項1記載のコンクリート組成物。
【請求項3】
前記スメクタイト系鉱物は、モンモリロナイト及びサボナイトのうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項1又は2記載のコンクリート組成物。
【請求項4】
前記超遅延剤は、変性リグニンスルホン酸化合物とオキシカルボン酸化合物との複合体である、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンクリート組成物。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−43813(P2013−43813A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183819(P2011−183819)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】