説明

コンクリート表面の脱泡型枠材

【課題】コンクリート表面の色むらが無く、気泡のない平骨で強固なコンクリート表面を得ると共に、強硬で、確実に転用回数を著しく増やす事が出来るコンクリート表面の脱泡型枠材を提供するものである。

【解決手段】シートの素材が一枚の強硬な合成樹脂板及び合成樹脂発泡板、及びグラスファイバーであって、コンクリート成型面側から裏面に貫通した多数の微細孔を設けて、板裏には全面に無数の通気排水溝を設け、セメント粒子を成型面に届め、空気、及び余剰水を効率良く型枠外に排出する事が出来る型枠材である。又、離型後の型枠シートのケレン洗浄には、水で希釈した有機酸をスプレーもしくはハケで塗布し、数十分後に水洗浄し、確実に微細孔を復元するものであり、転用回数を著しく増加させたものである、コンクリート表面の脱泡型枠材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセメント粒子をコンクリート成型面から排出する事なく、コンクリート表面の気泡、余浄水を効率よく排出し、織目の跡等なく平骨で色むらのない強固なコンクリート表面に仕上げるものであり、又非常に丈夫で転用回数も著しく増加するコンクリート型枠用シートである。
【背景技術】
【0002】
従来の型枠用シートの例としては、例えば特開平6-81458(型枠貼付用シート)や特開平6-220992(コンクリートパネル用内張材)、特開平5-329819(コンクリート型枠用内張りシート及びコンクリート型枠)がある。
【特許文献1】特開平6-81458号公報
【0003】
コンクリート構造物面に接するフィルムに微細孔を設けた厚さが通常10μm〜100μmであり、フィルム裏面には0.1mm〜4mm径の糸状のものを設け、その後に不織布を取付け、通水層としている。
【特許文献2】特開平6-220992号公報
【0004】
コンクリート構造物面に接する厚み0.01mm〜0.2mmのフィルムに微細孔を設け、後面に織布を熱圧着して通水路を設けている。
【特許文献3】特開平5-329819号公報
【0005】
シートの目合が1μm〜200μmの織布であり、その裏面に通水路として不織布が設けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はコンクリート表面のセメント粒子は成型面に届め、空気、余剰水のみを効率良く型枠外に排出し、コンクリート表面の美観と強度を高め、強硬で転用回数を増やす事の出来るコンクリート表面の脱泡型枠材を提供する事を目的とする。
【0007】
従来の型枠内張材は、コンクリート表面の気泡、余剰水を排出して、気泡のない強固なコンクリート表面を得てきたが、しかし転用回数が3〜5回と少ない物であった。
【0008】
気泡、余剰水を型枠外に排出するコンクリート型枠材は数多くの特許出願が成され、公報されているにもかかわらず、又昨近、コンクリート表面の美観、強度が強く問われる中で、気泡、余剰水を排出する型枠材を土木、建築現場で目にする事はまれである。
【0009】
従来の型枠内張材は、コンクリート成型面に接する素材が非常に薄いフィルムを使用しているので、土木、建築現場の多くの障害である釘、鉄筋、又はバタ角、又は桟木等々によるやぶれ、ひっかき傷、又運搬車のこすれなど様々な障害があり、思う様な転用回数が臨めないのである。よって型枠材の価格を転用回数で観た時にコストが合わないものである。
【0010】
がしかし、商品を開発する各社にあっては、分厚いシートを使用すると微細孔の復元ができず、又シート裏の素材との融着に問題があったかと思われる。

【0011】
当社含め共願である出願番号2003-412645において、素材がポリエステルのボードに融着するためには薄いフィルムを使用せざるをえなく、軟弱な表面しか得ることができなかった。その為、フィルムが釘、又は鉄筋等で傷つき、破れ、そこからポリエステル繊維が露出し、転用が不可能なものが数多く見つかった。柔かな素材の集合の為、Pコン跡がシートに残ってしまった。さらにシートの線の曲げ加工が出来にくい物となり、シートと型枠の隙間が生じて、そこからセメントノロやコンクリート骨材の進入があった。よって転用した場合に型枠と型枠を継ぐ場合にこぐちが合わず、平骨なコンクリート表面が得られないし、又シートがコンクリートにかみ込み、破れてしまう。又コンクリートの打設後、及びシートのケレン後には、水を含む為に型枠が非常に重くなり作業が困難に成ってしまった。
【0012】
近年土木業界では、生コンクリートを成型面に移設後、長い柄の先にくし状の物を取付け、コンクリート成型面にそって上下させ、気泡を排出するものが多く使われているが、足場の悪い現場での作業は体力的にも過酷であり、作業する人によって仕上がり面の出来、不出来がある。よって使う現場も減ってきたのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明のコンクリート表面の脱泡型枠材は型枠のコンクリート成型面に添着するシートであって強硬で厚い一枚の素材であり、コンクリート成型面側から裏面に微細孔を多数貫通し、裏面には縦方向、横方向、斜め方向と全面に溝を設け、通気排水路としたものである。
【0014】
本発明のコンクリート表面の脱泡型枠材は、合成樹脂板及び合成発泡樹脂板がポリエチレン又はポリプロピレン、又はアクリル、又はアクリル変性塩ビ、又は低発泡ポリプロピレン、又はポリカーボネート、又はABS、又はポリ塩化ビニール、又はアクリル変成ポリカ、又はPET-G、又はグラスファイバーで出来ているコンクリート表面の脱泡型枠材である態様(請求項1)がある。
【0015】
本発明のコンクリート表面の脱泡型枠材の材質は合成樹脂板及び合成樹脂発泡板、及びグラスファイバーであり、板厚は0.1mm〜3mmとし、非常に丈夫なものである(請求項1)がある。
【0016】
本発明のコンクリート表面の脱泡型枠材はコンクリート成型面側からレーザー、又はニードルパンチによって、10μm〜100μmの多数の微細孔が裏面まで貫通しており、通気排水孔として設けられ、裏面には空気又余剰水の通気排水溝として縦方向、横方向、斜め方向と全面に深さ、巾共に0.01〜1mmの溝を設けたものであって、溝の形状、並び、寸法に限りはないものである。
【0017】
また発明のコンクリート表面の脱泡型枠材であるシートに設けられた微細孔の目詰まりの原因であるセメント粒子の除去は、有機酸を水で6〜7倍に希釈し、スプレーもしくはハケで塗布し、数十分後セメントの成分が分解、中和された後水洗いをし、完全に微細孔を復元するものである。(請求項3)
【発明の効果】
【0018】
生コンクリート内のセメント粒子は、コンクリート成型面に届め、空気、余剰水のみを効率よく型枠外に排出するため、平骨な色むらの無い強固なコンクリート表面を得ることが出来た。
【0019】
コンクリート表面の脱泡型枠材が強硬で有る為、損傷しにくく、シートの転用回数も著しく増やすことが出来、土木、建築業者にしてもコストダウンにつながるものである。
【0020】
コンクリート表面の脱泡型枠材の微細孔に目詰りしているセメント粒子を確実に除去し、微細孔を復元する事が出来る為、シートの転用回数が計り知れないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
型枠材のシートが強固な素材であり、セメント粒子をコンクリート成型面にとどめ、空気と余剰水のみを型枠外に排出するシートを提供するものである。
【実施例】
【0022】
以下添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する図1〜図4は、本発明のコンクリート表面の脱泡型枠材の実施形態を示す全体図及び部分説明図である。
【0023】
今回実施したシートの厚みは1mmのポリプロピレン板を使用し、30μm〜50μmの微細孔を穿設し、シートの裏面の通気排水溝は、深さ、巾共約0.1mmのものをほどこした。
【0024】
第一図は一般土木で構築される擁壁の型枠図であり、法面側の型枠IAと垂直に立てた型枠IBをPコン6とセパレータ7で締結している図であり、型枠シート2は型枠IAのコンクリート成型面に取り付けられる。
【0025】
本件ではハクリ剤は使用せず、生コンクリート3を打設する直前に型枠シート2に水を散布し、微細孔に付着させて余剰水を効率よく排出させると共に、コンクリート打設時に飛散するノロの硬化を遅らせた。
【0026】
次に生コンクリート3を打設し、バイブレーターを型枠内で振動させ、生コンクリートを隅々に行き渡らせる。
【0027】
バイブレーターの振動によって発生する気泡、及び、余剰水のうち、型枠IAに取り付けられた型枠シート2の表面に集まった気泡、余剰水は、第3図の通気排水孔4を通過し、通気排水溝5を通り、型枠外に効率よく排出された。
【0028】
生コンクリートの打設3日後に離型し、コンクリート表面を確認したが、気泡及び余剰水の跡は全く無く、色むらの無い平骨なコンクリート表面が得られた。
【0029】
又、シート2にPコン跡がなく、転用しても最初と同じ平骨なコンクリート表面が得られる事を確認した。
【0030】
シート2に設けた微細孔に目詰りしたセメント粒子を取り除く為に、有機酸(株式会社東亜オイル工業所、商品名サムテックR-7)を水で6倍に希釈し、ハケで全面に塗布し、20分後に水洗いをした。シートは型枠に取付けた状態で、ケレン、水洗いを行った。
【0031】
シート2の微細孔の復元は目視では確認できない為、再度型枠を組み、生コンクリートの打設を試みた。
【0032】
Pコン6を取り付けていた穴を防ぐ為に、市販されているコンパネ詰め栓をシート2の穴を通してコンパネに打ち込んだ。シート2はコンパネ詰め栓ときつく締結して、セメントノロやセメント骨材がシート裏に混入しそうもなく、直且つシートがコンパネにさらに固定できた。
【0033】
(0022)〜(0029)の工程を繰り返し5回行なったが、いずれも気泡、余剰水の跡が無く、色むら、及び気泡のないコンクリート表面が得られた。又シート2の表面の損傷も全く無く、転用回数も計り知れないものである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
(0012)でのべた様に近年は器具による過酷な手作業でアバタをなくそうとしている土木業界である。本発明のシートを使用することによって、作業員が少なくてすみ、塗装コンパネに比べ、転用回数も多くなり、又強固なコンクリート表面が得られる事で、発注者、施工業者にとって、共にメリットは大きいものである。よって利用可能性は大である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係るコンクリート表面の脱泡型枠材を型枠に取り付けた全体図である。
【図2】本発明のコンクリート表面の脱泡型枠材のコンクリート成型面側の略図である。
【図3】図1のシート2の拡大断面図である。
【図4】本発明コンクリート表面の脱泡型枠材の裏面の略図である。
【符号の説明】
【0036】
1A 型枠
1B 型枠
2 脱泡シート
3 生コンクリート
4 微細孔
5 通気排水溝
6 Pコンセパレーター




















【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート型枠の成型面に取り付けられる厚さ0.01mm〜3mmのシート(板状)であり、材質は合成樹脂板及び合成樹脂発泡板、(ポリエチレン又は、ポリプロピレン又は、アクリル又は、アクリル変性塩ビ又は、低発泡ポリプロピレン又は、ポリカ−ポネート又は、ABS又は、ポリ塩化ビニール又は、アクリル変性ポリカ又は、PET−G)又はグラスファイバー板であり、コンクリート成型面から裏面(合板、メタルフォーム、木材等に接する面)まで10μm〜100μmの微細孔が多数、整列、あるいは不規則に貫通しており、通気排水孔として穿設され、裏面には深さ、巾共に0.01mm〜1mmの溝を縦、横、斜めとシート一面に設け、通気排水溝としたものである。又、通気排水溝の深さ、巾はこの限りではなく、溝の形状においても三角、半円、だ円といかなる形でもよい。又配列も不規則であっても何ら問題はない。
【請求項2】
シートの裏面と型枠(合板、メタルフォーム、木板)とのすき間にセメントノロ、コンクリート骨材が入り込まない様にシートの縦、横、四辺を折り曲げ加工し、型枠の縁に点接着、もしくは釘止めするものである。
【請求項3】
離型後のシートの清掃、及び微細孔の復元には、水で希釈した有機酸をスプレー、もしくはハケで塗布し、数十分後に水洗浄するものである。出願番号2003-412645で提案済みである。

















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−9614(P2007−9614A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−194480(P2005−194480)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(302008652)有限会社コーエイ商機 (1)
【Fターム(参考)】