説明

コンクリート製サイロビンの内壁の検査方法及び補修方法

【課題】コンクリート製サイロビンの内壁の補修において、損傷箇所を特定できる検査方法を開発し、かつその部分のみを重点的に補修できる方法を開発する。上記検査方法と補修方法を密接にリンクさせて、最終的にサイロビンの気密状態を、築造当初の等級に保持できるようにする。
【解決手段】サイロビン内部を減圧し、内壁に石鹸水を塗布して損傷箇所をマーキングした展開図を作成し、損傷箇所を重点的に気密補修した後、内壁を全面的にライニングする。次に定格圧力の保持ための気密テストを行い、保持できていれば終了し、保持できていなければ減圧チェックに戻る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に穀物等を貯蔵するコンクリート製サイロビンの内壁の検査方法及び補修方法に関するものであって、さらに詳しくは、以下の構成を有するコンクリート製サイロビンの内壁の検査方法及び補修方法に関するものである。
<方法1>
コンクリート製サイロビンの内壁の補修を行うための検査方法において、
減圧チェックを行うための事前準備を行うステップと、
サイロビンの内部を減圧して重点補修箇所をチェックする減圧チェックのステップ
よりなることを特徴とするコンクリート製サイロビンの内壁の検査方法。
<方法2>
方法1に記載のコンクリート製サイロビンの内壁の検査方法を実施してサイロビンの内壁の検査の全ステップが終了した後に、
サイロビンの内壁の重点補修箇所に気密補修を行うステップと、
気密補修後に気密テストを行うステップと、
気密テストにおいて圧力が定格以上に保持されなかった場合には方法1に記載の減圧チェックのステップに戻る圧力判断のステップと、
圧力判断のステップにおいて圧力が定格以上に保持された場合には事後処理を行い、作業を完了するステップ、
よりなることを特徴とするコンクリート製サイロビンの内壁の補修方法。
<方法3>
方法1に記載の減圧チェックを行うための事前準備を行うステップが、
サイロビンの内部を空にするステップと、
サイロビンの付属金物を取り外すステップと、
サイロビンの内部に作業用足場類を架設するステップと、
サイロビンの内部を清掃しダストの排出を行うステップと、
サイロビンのホッパー部の密閉養生を行うステップと、
サイロビンの内壁を高圧水により洗浄するステップ、
よりなり、
方法1に記載のサイロビンの内部を減圧して重点補修箇所をチェックする減圧チェックのステップが、
サイロビンを密閉するステップと、
サイロビンの内部を水マノメーターで水柱高が−200ミリメートル〜−600ミリメートルに減圧するステップと、
サイロビンの内壁に石鹸水を塗布するステップと、
サイロビンの内壁の損傷箇所をマーキングするステップと、
損傷箇所を展開図と写真に記録するステップ、
よりなることを特徴とするコンクリート製サイロビンの内壁の検査方法。
<方法4>
方法2に記載のサイロビンの内壁の重点補修箇所に気密補修を行うステップが、
上記展開図と写真により補修仕様を決定するステップと、
上記展開図にマーキングされた箇所に重点補修を施すステップと、
サイロビンの内壁の全面を再度高圧水により洗浄するステップと、
サイロビンの内部を乾燥させるステップと、
サイロビンの内壁の全面をライニングするステップ、
よりなり、
方法2に記載の気密補修後に気密テストを行うステップが、
サイロビンを密閉するステップと、
サイロビンの内部を加圧するステップと、
サイロビンの内部の圧力が定格以上に保持されるか否かを判断し、サイロビンの内部の圧力が定格以上に保持された場合には次に進み、保持されない場合には方法3に記載のサイロビンの内部を減圧して重点補修箇所をチェックする減圧チェックのステップに戻る圧力判断のステップ、
よりなり、
方法2に記載の圧力が定格以上に保持された場合には事後処理を行い、作業を完了するステップが、
作業用足場類と養生を撤去するステップと、
サイロビンの付属金物を取り付けるステップと、
サイロビンの内部を清掃するステップ、
よりなることを特徴とするコンクリート製サイロビンの内壁の補修方法。
<方法5>
方法4に記載のサイロビンの内部の圧力が定格以上に保持されるか否かを判断し、サイロビンの内部の圧力が定格以上に保持された場合には次に進み、保持されない場合には方法3に記載のサイロビンの内部を減圧して重点補修箇所をチェックする減圧チェックのステップに戻る圧力判断のステップにおいて、定格圧力を水マノメーターで水柱高が200ミリメートルとすることを特徴とするコンクリート製サイロビンの内壁の補修方法。
<方法6>
方法4に記載のサイロビンの内部の圧力が定格以上に保持されるか否かを判断し、サイロビンの内部の圧力が定格以上に保持された場合には次に進み、保持されない場合には方法3に記載のサイロビンの内部を減圧して重点補修箇所をチェックする減圧チェックのステップに戻る圧力判断のステップにおいて、定格圧力を水マノメーターで水柱高が400ミリメートルとすることを特徴とするコンクリート製サイロビンの内壁の補修方法。
【背景技術】
【0002】
従来、穀物用のサイロのサイロビンは、鉄筋コンクリートで造られることが多かった。このようなコンクリート製サイロビンの内壁には、蓄積された穀物の重量やくん蒸用ガスの充填などで圧力がかかり、また経年変化によるコンクリートの劣化等もあり、内壁のコンクリートにはクラックやジャンカ、ピンホール等が発生し、気密性が悪化するのは不可避であった。気密性が悪化すれば外気の侵入を許し、またくん蒸用のガスの漏洩が増加する等多くの弊害が発生するので、定期的にサイロビンを空にして内部を点検し、損傷箇所の補修を行い、内壁が定格圧力に耐えられるように維持する必要がある。なお、ここでジャンカというのは、コンクリートの表面が剥落して基材が露出した状態をいう。
【0003】
穀物用サイロのサイロビンの定格圧力(定格耐圧力)については、農林水産省・植物防疫所の規定があり、これによると、内部が空の状態で送風して水マノメーターで水柱高が500ミリメートルになるまで加圧し、送風停止20分後の水柱高が200ミリメートル以上400ミリメートル未満であることが確認できる場合をA級、400ミリメートル以上であることが確認できる場合を特A級と定めている。詳細は、下記非特許文献1を参照されたい。
【0004】
等級には特A、A、B、Cの4カテゴリがあるが、現在の穀物用サイロのサイロビンは、特A級、あるいはA級のカテゴリで造られることが殆どである。その理由としては、等級が下がるごとにくん蒸用のガスの漏洩許容量が多くなるということがあげられる。すなわち、農林水産省・植物防疫所の規定では、空サイロ1立方メートルにつき臭化メチル10グラムを使用した場合の48時間後のガス残存率が、特A級では85%以上、A級では70%以上、B級では55%以上、C級では40%以上と定めている(下記非特許文献1参照)。
【0005】
くん蒸用ガスの漏洩量が多いということは、くん蒸の際にガスの使用量が多くなって経費が嵩むということに他ならない。またくん蒸用ガスには毒性があるので漏洩量が多い場合、周辺環境に与える影響も大きくなる。くん蒸用ガスの経費を負担する主体は貿易商社である場合が多いが、商社としては、経費節減の面からも、周辺に悪影響を及ぼさないという点からも、同一場所にあるサイロであれば等級がより上のサイロに自社の穀物を入れたがる傾向が強い。したがって、等級が下のサイロは用いられなくなる。このような点から、現在ではC級のサイロは殆ど存在せず、B級も非常に僅かで、A級、特A級が多い。特に新たにサイロを建設する場合には特A級のカテゴリで造られることが今日では一般的となっている。
【0006】
仮に、特A級の規定を満たすように造ったコンクリート製サイロビンが、経年変化によってくん蒸用ガスの漏洩量が大きくなった場合、A級やB級に格下げして用いることも考えられるが、実際にはそういうケースはごく稀である。というのは、一旦特A級で指定くん蒸施設の登録を得てしまうと、等級を変更することは手続き上多大な困難を伴うからである。これは、A級をB級以下に、B級をC級に変更する場合も同様である。また、先述のように最近は特に等級が上のサイロビンが好まれる傾向にあるので、この点からもサイロビンの等級を下げるということは行われない。したがって、経年変化によってくん蒸用ガスの漏洩量が大きくなって元の等級を外れたサイロビンは一旦使用を停止して内壁を補修し、元の等級に戻してやる必要が生じる。このような点から、コンクリート製サイロビンの内壁の補修に関して、さまざまな試みがなされてきた。
【0007】
なお、上記の様な補修が必要になるのは、主としてコンクリート製サイロビンであって、鉄やステンレス等を用いた金属製サイロビンにおいては、経年変化によるくん蒸用ガスの漏洩量の増大という事態が殆ど起こらない。したがって、最近築造されるサイロビンは金属製が主流となってきている。しかしながら、過去に築造されたコンクリート製サイロビンはまだまだ現役で稼動しているものが多く、そのようなサイロビンにおいては、内壁の合理的な補修方法の開発は切実な問題となってきている。
【0008】
従来、コンクリート製サイロビンの内壁の補修方法としては、まずサイロビン内部を空にして足場を組み、内壁全体を均一に補修していくという方法が主体であった(下記特許文献1参照)。目視でクラックやジャンカ、ピンホールを確認してそこだけを補修するという方法では、どうしても確認から洩れる損傷部分があり、結局ガスの漏洩が止められず、再びサイロビンを空にして内壁を全面的に補修するということを繰り返す結果になるので、それぐらいなら最初からある程度経費はかかっても全面的に均一に補修する方が、結局は経済的で補修期間も短く済むからである。しかしながら、内壁の全面的な補修はやはり費用的に大きな負担となり、工期も長くかかるので、この点がサイロ管理者の頭痛の種となっていた。
【0009】
つまり、クラックやジャンカ、ピンホールが内壁に留まらず外壁にまで貫通していた場合には、そこからガスが洩れるので、このガスの漏れを防止するためには内壁全体に単純にライニングを施すという一時的な補修ではすまない。そのような補修で一旦は漏洩が止められたとしても、根本的な改善はなされていないのでまたすぐに漏洩が始まり、再補修の必要が生じてくる。したがって下記特許文献1に記載されているようなかなり徹底した補修を全面的に行うしか方法がなかった。目視だけではどのクラックやジャンカ、ピンホールが貫通しているかわからないので、結局全面的に均一に、相当徹底した補修を行うほかに方法がないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
下記特許文献1は、サイロビンの内壁全体を成形板で覆い、内壁と成形板の間に注入剤を充填するというかなり徹底した補修方法を開示しており、前記従来技術における全面補修の一方法であるといえる。この場合、コンクリートの躯体自体の損傷箇所が補修される訳ではなく、損傷箇所はそのままにして内壁全面を成形板で覆う方法であるため、ある程度効果はあるものの費用が嵩み、かつサイロビンの容積が若干でも縮小されるという欠点を有している。なお、コンクリート製サイロビンの内壁の補修に直接関係する特許文献は、これ以外に発見できなかった。上述のように、現在もなお、下記特許文献1に類するような全面的徹底補修の方法が幅広く用いられているのが現状である。
【特許文献1】特開平9−99485号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】『くん蒸倉庫指定要綱』農林水産省・植物防疫所、昭和46年2月6日 45農政第2628号 農政局長通達 以後十数度の改正を経て、現在は、平成15年6月30日 15生産第2459号 一部改正
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上より、本発明の課題を次のように設定した。
コンクリート製サイロビンの内壁の補修において、内壁の損傷箇所を特定できる検査方法を開発し、かつその部分のみを重点的に補修できる方法を開発する。上記検査方法と補修方法を密接にリンクさせて、最終的にコンクリート製サイロビンの気密状態を、築造当初の等級に保持できるようにする。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、下記の解決手段を提供するものである。
<解決手段1>
コンクリート製サイロビンの内壁の補修を行うための検査方法において、
減圧チェックを行うための事前準備を行うステップと、
サイロビンの内部を減圧して重点補修箇所をチェックする減圧チェックのステップ
よりなることを特徴とするコンクリート製サイロビンの内壁の検査方法。
<解決手段2>
解決手段1に記載のコンクリート製サイロビンの内壁の検査方法を実施してサイロビンの内壁の検査の全ステップが終了した後に、
サイロビンの内壁の重点補修箇所に気密補修を行うステップと、
気密補修後に気密テストを行うステップと、
気密テストにおいて圧力が定格以上に保持されなかった場合には解決手段1に記載の減圧チェックのステップに戻る圧力判断のステップと、
圧力判断のステップにおいて圧力が定格以上に保持された場合には事後処理を行い、作業を完了するステップ、
よりなることを特徴とするコンクリート製サイロビンの内壁の補修方法。
<解決手段3>
解決手段1に記載の減圧チェックを行うための事前準備を行うステップが、
サイロビンの内部を空にするステップと、
サイロビンの付属金物を取り外すステップと、
サイロビンの内部に作業用足場類を架設するステップと、
サイロビンの内部を清掃しダストの排出を行うステップと、
サイロビンのホッパー部の密閉養生を行うステップと、
サイロビンの内壁を高圧水により洗浄するステップ、
よりなり、
解決手段1に記載のサイロビンの内部を減圧して重点補修箇所をチェックする減圧チェックのステップが、
サイロビンを密閉するステップと、
サイロビンの内部を水マノメーターで水柱高が−200ミリメートル〜−600ミリメートルに減圧するステップと、
サイロビンの内壁に石鹸水を塗布するステップと、
サイロビンの内壁の損傷箇所をマーキングするステップと、
損傷箇所を展開図と写真に記録するステップ、
よりなることを特徴とするコンクリート製サイロビンの内壁の検査方法。
<解決手段4>
解決手段2に記載のサイロビンの内壁の重点補修箇所に気密補修を行うステップが、
上記展開図と写真により補修仕様を決定するステップと、
上記展開図にマーキングされた箇所に重点補修を施すステップと、
サイロビンの内壁の全面を再度高圧水により洗浄するステップと、
サイロビンの内部を乾燥させるステップと、
サイロビンの内壁の全面をライニングするステップ、
よりなり、
解決手段2に記載の気密補修後に気密テストを行うステップが、
サイロビンを密閉するステップと、
サイロビンの内部を加圧するステップと、
サイロビンの内部の圧力が定格以上に保持されるか否かを判断し、サイロビンの内部の圧力が定格以上に保持された場合には次に進み、保持されない場合には解決手段3に記載のサイロビンの内部を減圧して重点補修箇所をチェックする減圧チェックのステップに戻る圧力判断のステップ、
よりなり、
解決手段2に記載の圧力が定格以上に保持された場合には事後処理を行い、作業を完了するステップが、
作業用足場類と養生を撤去するステップと、
サイロビンの付属金物を取り付けるステップと、
サイロビンの内部を清掃するステップ、
よりなることを特徴とするコンクリート製サイロビンの内壁の補修方法。
<解決手段5>
解決手段4に記載のサイロビンの内部の圧力が定格以上に保持されるか否かを判断し、サイロビンの内部の圧力が定格以上に保持された場合には次に進み、保持されない場合には解決手段3に記載のサイロビンの内部を減圧して重点補修箇所をチェックする減圧チェックのステップに戻る圧力判断のステップにおいて、定格圧力を水マノメーターで水柱高が200ミリメートルとすることを特徴とするコンクリート製サイロビンの内壁の補修方法。
<解決手段6>
解決手段4に記載のサイロビンの内部の圧力が定格以上に保持されるか否かを判断し、サイロビンの内部の圧力が定格以上に保持された場合には次に進み、保持されない場合には解決手段3に記載のサイロビンの内部を減圧して重点補修箇所をチェックする減圧チェックのステップに戻る圧力判断のステップにおいて、定格圧力を水マノメーターで水柱高が400ミリメートルとすることを特徴とするコンクリート製サイロビンの内壁の補修方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の解決手段1の発明によれば、コンクリート製サイロビンの内壁の検査方法において、減圧チェックを行うための事前準備を行うステップと、サイロビンの内部を減圧して重点補修箇所をチェックする減圧チェックのステップを含んでいるので、サイロビンの内壁の損傷箇所をピンポイントで特定することが可能である。
【0015】
本発明の解決手段2の発明によれば、サイロビンの内壁の重点補修箇所に気密補修を行うステップを含んでいるので、サイロビンの内壁を全面的に徹底補修する方法に比べてはるかに簡便で工期も短く、費用的にも安上がりである。しかも、損傷箇所は重点的に補修されるので、補修後は全面的に徹底補修する方法に比べてもなんら遜色なく、築造直後の等級を保持することが可能である。特に、全面的に徹底補修する方法の場合、損傷箇所自体が完全に補修されるわけではないので、この点からすれば本発明の解決手段2の発明の方法の方が技術内容としてはより進化した段階に達しており、補修の恒久性を考えると、本発明の解決手段2の発明の方法の方に利があるといい得る。
【0016】
同じく本発明の解決手段2の発明によれば、気密補修後に気密テストを行うステップと、気密テストにおいて圧力が定格以上に達しなければ解決手段1に記載の減圧チェックのステップに戻る圧力判断のステップと、圧力が定格以上に達した場合には事後処理を行い、作業を完了するステップを含んでいるので、万一1回の補修で不完全であった場合にも、1回目の検査で洩れた箇所を発見でき、そこを重点的に補修できるので、最終的に指定等級を満足できる気密状態が保持されたサイロビンを回復することが可能である。
【0017】
本発明の解決手段3、4の発明によれば、解決手段1に記載の各ステップをより詳細に開示しているので、一定の技術レベルを有する者が本発明を実施するにあたって、非常にわかりやすい指針とすることができる。
【0018】
本発明の解決手段3の発明によれば、解決手段1に記載のサイロビンの内部を減圧して重点補修箇所をチェックする減圧チェックのステップにおいて、サイロビンを密閉するステップと、サイロビンの内部を水マノメーターで水柱高が−200ミリメートル〜−600ミリメートルに減圧するステップと、サイロビンの内壁に石鹸水を塗布するステップと、サイロビンの内壁の損傷箇所を確認しマーキングするステップと、損傷箇所を展開図と写真に記録するステップが開示されているので、A級あるいは特A級の等級に必要な気密度を保持するのに障害となる要補修箇所を洩れなくチェックすることが可能である。
【0019】
すなわち、上記減圧チェックのステップにおいて、サイロビンの内部を水マノメーターで水柱高が−200ミリメートル〜−400ミリメートル未満に減圧し、サイロビンの内壁に石鹸水を塗布することにより、A級の等級に必要な気密度を保持するのに障害となる要補修箇所において石鹸水の泡が発生するので、これをチェックすることによってA級の等級に必要な気密度を保持するのに障害となる要補修箇所を洩れなくチェックすることが可能である。
【0020】
同じく上記減圧チェックのステップにおいて、サイロビンの内部を水マノメーターで水柱高が−400ミリメートル〜−600ミリメートルに減圧し、サイロビンの内壁に石鹸水を塗布することにより、特A級の等級に必要な気密度を保持するのに障害となる要補修箇所において石鹸水の泡が発生するので、これをチェックすることによって特A級の等級に必要な気密度を保持するのに障害となる要補修箇所を洩れなくチェックすることが可能である。なお、水柱高が−600ミリメートルを超える減圧は、サイロビンの内壁自体に減圧による損傷を新たに発生させる怖れがあるので、最低圧力を水マノメーターで水柱高が−600ミリメートルとする。
【0021】
本発明の解決手段4の発明によれば、解決手段2に記載の気密補修後に気密テストを行うステップにおいて、サイロビンを密閉するステップと、サイロビンの内部を加圧するステップと、サイロビンの内部の圧力が定格以上に保持されるか否かを判断し、サイロビンの内部の圧力が定格以上に保持された場合には次に進み、保持されない場合には解決手段3に記載のサイロビンの内部を減圧して重点補修箇所をチェックする減圧チェックのステップに戻る圧力判断のステップが開示されているので、気密補修が完全になされているかをチェックし、さらに完全になされていない場合には、解決手段3に記載の減圧チェックのステップに戻ることができる。
【0022】
本発明の解決手段5の発明によれば、圧力判断のステップにおいて、定格圧力を水マノメーターで水柱高が200ミリメートルとすることが開示されているので、補修対象のサイロビンがA級指定の気密度を有するものであるか否かをチェックすることが可能である。
【0023】
本発明の解決手段6の発明によれば、圧力判断のステップにおいて、定格圧力を水マノメーターで水柱高が400ミリメートルとすることが開示されているので、補修対象のサイロビンが特A級指定の気密度を有するものであるか否かをチェックすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1の検査方法及び補修方法のステップを説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明の実施例1の検査方法における事前準備のステップを説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の実施例1の検査方法における減圧チェックのステップを説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の実施例1の補修方法における気密補修のステップを説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の実施例1の補修方法における気密テストのステップと事後処理のステップを説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の実施例1の検査方法及び補修方法において対象となるサイロビンの構成をわかりやすく説明するための縦断面説明図である。
【図7】(a)本発明の実施例1の発明のサイロビンの内壁の検査方法及び補修方法を説明するために対象となるサイロビンの一例のホッパー部を横断面にて示した説明図である。 (b)本発明の実施例1の発明のサイロビンの内壁の検査方法及び補修方法を説明するために対象となるサイロビンの一例のくん蒸用ダクトの端部及びインレットカバーの外観斜視図である。
【図8】(a)本発明の実施例1の発明のサイロビンの内壁の補修方法を説明するための説明図である。 (b)本発明の実施例1の発明のサイロビンの内壁の補修方法を説明するための説明図である。 (c)本発明の実施例1の発明のサイロビンの内壁の補修方法を説明するための説明図である。 (d)本発明の実施例1の発明のサイロビンの内壁の補修方法を説明するための説明図である。 (e)本発明の実施例1の発明のサイロビンの内壁の補修方法を説明するための説明図である。 (f)本発明の実施例1の発明のサイロビンの内壁の補修方法を説明するための説明図である。
【図9】(a)本発明の実施例1の発明のサイロビンの内壁の補修方法を説明するための説明図である。 (b)本発明の実施例1の発明のサイロビンの内壁の補修方法を説明するための説明図である。 (c)本発明の実施例1の発明のサイロビンの内壁の補修方法を説明するための説明図である。 (d)本発明の実施例1の発明のサイロビンの内壁の補修方法を説明するための説明図である。
【図10】(a)本発明の実施例1の発明のサイロビンの内壁の補修方法を説明するための説明図である。 (b)本発明の実施例1の発明のサイロビンの内壁の補修方法を説明するための説明図である。 (c)本発明の実施例1の発明のサイロビンの内壁の補修方法を説明するための説明図である。 (d)本発明の実施例1の発明のサイロビンの内壁の補修方法を説明するための説明図である。 (e)本発明の実施例1の発明のサイロビンの内壁の補修方法を説明するための説明図である。 (f)本発明の実施例1の発明のサイロビンの内壁の補修方法を説明するための説明図である。
【図11】本発明の実施例1の検査方法において作成された展開図の一例である。
【図12】本発明の実施例1の検査方法及び補修方法において作成された工程表の一例である。
【図13】本発明の実施例1の補修方法において作成されたサイロ気密試験(補修前)のデータを示す調査表の一例である。
【図14】本発明の実施例1の補修方法において作成されたサイロ気密試験(補修後)のデータを示す調査表の一例である。
【図15】本発明の実施例1の補修方法において用いられるエポキシ樹脂が食品、添加物等の規格基準を満たしたものであることを証明する分析試験成績書の複写である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0025】
図6は、本発明の実施例1の方法において対象とされるサイロのサイロビン1の縦断面を模式的に示したものである。サイロビン1は鉄筋コンクリート製で、円筒形状の壁体2の上端に円盤状の蓋部3が一体として固着され、壁体2の下端には下方に向かうに従い縮径する円錐形状のホッパー部4の上端がやはり一体として固着されている。
【0026】
蓋部3には、中央部分に穀物等の内容物を投入するための投入口31が設けられている。また、32は点検のための作業員が出入りするマンホールであり、33はサイロビン1内の圧力調整用のダクト5が貫設されるダクト孔である。一方、ホッパー部4においては、中央部分すなわち円錐形状の下端部に穀物等の収容物を取り出すための排出口41が設けられ、ホッパー部4の上部には点検のための作業員が出入りするマンホール42が設けられている。また、排出口41付近にはくん蒸用ガスを送気するためのダクト6が貫設されるダクト孔43が設けられている(図6、図7a参照)。
【0027】
くん蒸用ガスを送気するためのダクト6はダクト孔43に貫設されてホッパー部4下部の中央に至り、ガスの噴出口61は図7bに見るように上方に向けられている。噴出口61の上部には図7a、7bに見るように平面視が十字形で断面形状が屋根型のインレットカバー7が架設されており、くん蒸用ガスは図7bの矢印に示すように、一旦このインレットカバー7に当たり、十字状に分散してサイロビン1内部に満遍なく拡散されるように構成されている。
【0028】
サイロビン1の構成は凡そ以上のとおりであるが、経年変化により壁体2、蓋部3、ホッパー部4のコンクリートが劣化し、クラック、ピンホール、ジャンカ等の損傷箇所が発生する。このような損傷箇所がサイロビン1の内壁面W(図6参照)にのみ留まっていれば良いが、外壁面WOにまで達すると、そこからサイロビン1内の空気が洩れるので、サイロビン1内部にくん蒸用ガスを注入した場合、ガスの漏洩をきたすこととなる。
【0029】
図8aにはクラックC1を図8dにはピンホールPを、図9aにはジャンカJを示す。また、図10aのC2は金属部分Mと内壁面Wの接合部分に生じたクラック、図10dのC3は壁体2の内壁面W2(W)とホッパー部4の内壁面W4(W)との接合部分に生じたクラックを示す。このような損傷箇所は、サイロビン1内部から目視しただけでは、外壁面WOにまで達しているか否かは判別し難いのが普通である。
【0030】
<検査方法>
本発明の実施例1のコンクリート製サイロビンの内壁の検査方法に関して詳細に説明する。本発明の実施例1のコンクリート製サイロビンの内壁の検査方法は、図1に示すように、事前準備のステップS1と、事前準備のステップS1を受けて行われる減圧チェックのステップS2に分かたれる。
【0031】
事前準備のステップS1の詳細を図2に示す。図2に見るように、まず、サイロビン1の内部を空にする(ステップS11)。次に、付属金物を取り外す(ステップS12)。付属金物とは、図6に見る投入口31に装着されている投入用ダクト31a、排出口41に装着されている排出用ダクト41aのように、サイロビン1と外部とを連結している金物類のことである。
【0032】
したがって、投入口31や排出口41そのもの、あるいはマンホール32、42、くん蒸ガス用ダクト6、インレットカバー7などは金物であっても当然撤去されない。また、蓋部3に装着されている圧力調整用ダクト5は加圧や減圧に必要な装備なのでやはり撤去しない。すなわち、付属金物を取り外すステップS12は、サイロビン1を気流的に周囲から孤立させるために投入用ダクト31aや排出用ダクト41aを取り外すという意味である。投入用ダクト31aや排出用ダクト41aを撤去した投入口31、排出口41には、後のステップで密閉できるようにめくら蓋(図示せず)を装着する。
【0033】
次に、サイロビン1の内部に作業用足場(図示せず)を架設する(ステップS13)。作業用足場は内壁面Wに沿って組み立て、サイロビン1の内部に入った作業員がサイロビン1の内壁面Wを隈なく点検できるように架設する。なお、作業用足場の代わりに作業用ゴンドラ(図示せず)や昇降床(図示せず)等を用いてもむろんかまわない。「作業用足場類」という言葉には、通常の作業用足場はむろんのこと、作業用ゴンドラや昇降床のように作業用足場に代替できるものも含まれるものとする。
【0034】
次に、内部清掃とダストの排出を行う(ステップS14)。サイロビン1の内部は収容物が全て排出されて空の状態であるが、内壁面Wには穀物の細粒や殻等が付着している。これらをダストと呼ぶが、内壁面Wを隈なく清掃してダストを落とし、ホッパー部4底部に集積されたダストはホッパー部4の排出口41から排出する。
【0035】
次に、ホッパー部4の外部周辺の密閉養生を行う(ステップS15)。すなわち、図6のホッパー部4の周辺の空間Sを養生用幕体8で囲繞する。これには二つの理由がある。すなわち、第1の理由は、後のサイロビン1の内部の高圧水洗浄(ステップS16)の際に排出口41から排出される洗浄水等が周辺に飛散しないための配慮であり、第2の理由は気流の遮断である。なお、養生用幕体8の一部に吸引口81を設け、図示しない吸引装置にて空間S内に常時若干の引圧をかけておく。こうすることによって、空間S内の粉塵は吸引口81より吸引され、空間S内は常に清浄な状態に保持されるとともに、サイロビン1から発生する粉塵の周囲への飛散を防止する。
【0036】
気流の遮断については、以下のとおりである。すなわち、後に行われる減圧チェックのステップS2においては、サイロビン1の内部を減圧するが、この際に、サイロビン1の内壁面Wに塗布された石鹸水は、ホッパー部4の排出口を僅かに開いて排出される。あるいは、ホッパー部4のマンホール42を開閉して作業員が出入りするケースもある。このためサイロビン1の内部を一定に減圧するためには、常時エアポンプ(図示せず)を作動状態にしなければならないが、ホッパー部4の周辺の空間Sが養生用幕体8で囲繞されていれば、気流が遮断されるため、サイロビン1の内部の圧力変化の幅が少なくて済むからである。ホッパー部4の外部周辺の密閉養生のステップS15が終了すれば、最後にサイロビン1の内壁Wを高圧水にて洗浄し(ステップS16)、事前準備のステップS1は終了する。
【0037】
次に、図3に示す減圧チェックのステップS2に進む。減圧チェックのステップS2においては、まず、サイロビン1の内部を密閉する(ステップS21)。この際、前述のように、投入口31や排出口41はめくら蓋(図示せず)にて閉鎖する。次に、圧力調整用のダクト5(図6参照)を用いてサイロビン1の内部を減圧する(ステップS22)。圧力調整用のダクトを有しないサイロビンにては、別に吸引用ポンプ(図示せず)を用い、吸引用ダクト(図示せず)をマンホール32あるいはマンホール42からサイロビン1の内部に入れて減圧を行う。この際、マンホール32あるいはマンホール42の蓋が吸引用ダクトの直径分だけ開くことになるので、生じた空隙部分はシーリングしなければならない。
【0038】
ステップS22においては、サイロビン1の等級がA級であれば、サイロビン1の内部を水マノメーターで水柱高が−200ミリメートル〜−400ミリメートル未満の間の任意の圧力に、サイロビン1の等級が特A級であれば、サイロビン1の内部を水マノメーターで水柱高が−400ミリメートル〜−600ミリメートルの間の任意の圧力に、夫々減圧する。
【0039】
減圧程度はサイロビンの状態によって様々であるが、サイロビン1の等級が特A級の場合においては、余り圧力を下げすぎるとサイロビン1の壁体2、蓋部3、ホッパー部4に負荷がかかり、内部で作業する作業員にも悪影響を与えかねないので、現実には−400ミリメートル〜−500ミリメートルをやや越える数値の間の任意の圧力で行われるのが普通である。
【0040】
次に、サイロビン1の壁体2、蓋部3、ホッパー部4の内壁面Wに順次石鹸水を塗布し(ステップS23)、損傷箇所をマーキングする(ステップS24)。マーキングにあたっては、石鹸水の泡の状況を以って判断を行い、損傷箇所を展開図と写真に記録する(ステップS25)。これにて減圧チェックのステップS2は終了する。なお、展開図の実例を図11に示す。
【0041】
<補修方法>
次に、本発明の実施例1のサイロビンの内壁の補修方法に関して詳細に説明する。本発明の実施例1のサイロビンの内壁の補修方法は、図1に示すように、気密補修のステップS3と、気密テストのステップS4と、事後処理のステップS5に分かたれる。
【0042】
気密補修のステップS3は、図4に見るように、ステップS2の補修箇所を展開図と写真に記録するステップS25を受けて、まず補修仕様を決定する(ステップS31)。すなわち、損傷箇所の様態が、クラックであるのかピンホールであるのかジャンカであるのか、あるいは損傷箇所が壁体2と蓋部3の接合部分あるいは壁体2とホッパー部4の接合部分のような継ぎ目であるのかそれ以外なのか、または、金属部分とコンクリート部分の継ぎ目であるのか否か、さらには損傷の程度等によって補修仕様は変わってくるので、個別の損傷箇所の夫々について、まず補修仕様を決定する。
【0043】
次に、マーキングされて・BR>「る損傷箇所の夫々について、気密補修を施す(ステップS32)。このステップが、重点補修箇所についての集中的補修に相当する。例として、損傷箇所が図8aに見るようなクラックC1の場合には、図8bのようにクラックラインにV字状のカットV1を施し、クラックラインの周囲をサンダー掛けしてサンダー面Sfとし、サンダー面Sf全体にプライマー樹脂Pmを含浸塗布させ、さらに図8cに示すようにV字状のカットV1にウレタン樹脂Ucを充填し、サンダー面Sf全体にエポキシ樹脂による1層目ライニングE1を施し、その表面にガラスクロスGcを貼着させ、さらにその上から全面的にエポキシ樹脂による2層目ライニングE2を施す。これにより、図8aに見るようなクラックC1の気密補修が完了する。ここにおいて重要な点は、クラックC1のみならずその周囲に至るまで気密補修を施している点である。
【0044】
次に、図8dに示すようなピンホールPの場合には、まず、図8eに示すようにピンホールPの周囲をサンダー掛けしてサンダー面Sfとし、プライマー樹脂Pmを含浸塗布させ、さらに図8fに示すようにサンダー面Sf全体にエポキシ樹脂による1層目ライニングE1を施し、さらにその上から全面的にエポキシ樹脂による2層目ライニングE2を施す。これにより、図8dに見るようなピンホールPの重点補修が完了する。ここにても、ピンホールPのみならずその周囲に至るまで気密補修を施している点が肝要である。
【0045】
次に、図9aに示すようなジャンカJの場合には、まず表面に浮いたコンクリート層Fcをハツリ取り、奥に空洞Cvがある場合には、図9bのようにこの空洞Cvにエポキシ樹脂Eを注入充填する。次に、図9cのように窪んだ箇所に樹脂モルタルRmを充填して表面を一定のレベルに整え、周囲にはプライマー樹脂Pmを含浸塗布させる。次に、全体にエポキシ樹脂による1層目ライニングE1を施し、さらにその上から全面的にエポキシ樹脂による2層目ライニングE2を施す。これにより、図9dに見るようなジャンカJの重点補修が完了する。ここにても、ジャンカJを表面的に補修するのではなく、奥の空洞Cvまで含め、その周囲に至るまで気密補修を施している点が肝要である。
【0046】
次に、図10aに示すように内壁面Wと金属部分Mの間にクラックC2が入っているような場合には、クラックラインにV字状のカットV2を施し、周囲をサンダー掛けしてサンダー面Sfとし、プライマー樹脂Pmを含浸させる(図10b)。次に、V字状のカットV2内にウレタン樹脂Ucを充填し、内壁面Wと金属部分Mにまたがってエポキシ樹脂による1層目ライニングE1を施し、その上からガラスクロスGcを貼着させ、最後に全体にエポキシ樹脂による2層目ライニングE2を施して終了する(図10c)。
【0047】
また、図10dに示すように、壁体2の内壁面W2(W)とホッパー部4の内壁面W4(W)の間にクラックC3が入っているような場合には、クラックラインにV字状のカットV3を施し、周囲をサンダー掛けしてサンダー面Sfとし、プライマー樹脂Pmを含浸させる(図10e)。次に、V字状のカットV3内にウレタン樹脂Ucを充填し、内壁面W2(W)と内壁面W4(W)にまたがってエポキシ樹脂による1層目ライニングE1を施し、その上からガラスクロスGcを貼着させ、最後に全体にエポキシ樹脂による2層目ライニングE2を施して終了する(図10f)。
【0048】
以上のようにして、マーキングされた損傷箇所の夫々において気密補修が終了すると、サイロビン1の内壁Wを高圧水で再洗浄する(ステップS33、図4参照)。これにより、残留石鹸水やマーキングに用いたチョーク粉等が全て洗い流される。洗浄水は、ホッパー部4の排出口41から排出される。サイロビン1の内部に残った水分は、次のサイロビン1の内部を乾燥させるステップ(ステップS34)により除かれる。乾燥は、投入口31、排出口41、マンホール32、42を開放して自然乾燥させるが、乾き具合が遅い場合には外部から乾燥した空気を送りこんで強制乾燥させても良い。
【0049】
サイロビン1の内部が充分に乾燥されれば、次のステップに移り、サイロビン1の内壁Wに全面的にエポキシ樹脂によるライニングを施す(ステップS35)この理由は以下の2つである。すなわち、第一の理由としては、ステップS32において気密補修された重点補修箇所以外の、現在のところはまだ外壁面WOにまで貫通していない小規模な損傷箇所もこのライニングによって充填補修されるという点であり、これは、将来の損傷に対する未然の予防策でもある。また第2には、全面ライニングによりステップS32において気密補修された重点補修箇所がさらにコーティングされるので、補修箇所と非補修箇所の接合部分に損傷が新たに発生したり、あるいは重点補修箇所の補修が剥離したりする怖れがなくなるという点である。
【0050】
いずれにしても、重点補修箇所は既にステップS32にて気密補修がなされているので、この全面的なライニングは、これをもって機密性を確保するという大規模なものにする必要はない。したがって、重点補修箇所を特定せず、サイロビンの内壁面全体において気密性を確保する目的でなされる従来の全面的な補修仕様から比較すればはるかに軽度であり、費用的にも従来の方法に比べてかなり安価に行えるものである。
【0051】
また、この際に使用されるライニング用樹脂は、サイロビン1が穀物用であるところから、厚生省告示の食品、添加物等の規格基準を満足するものでなければならない。図15には、エポキシ樹脂の分析試験成績書を掲げたが、他の樹脂においてもやはり規格基準を満足するものを用いなければならない。
【0052】
全面ライニングのステップS35が終了すると気密補修のステップS3は完了し、次の気密テストのステップS4に移行する(図5参照)。この際、サイロビン1の内部の全面ライニングを充分に乾燥させるため、ステップS35終了後少なくとも24時間は経過させてからステップS4に移行する。気密テストのステップS4においては、まずサイロビン1を密閉し(ステップS41)、次にサイロビン1の内部に空気を送りこんで加圧する(ステップS42)。
【0053】
加圧は、水マノメーターで水柱高が500ミリメートルになるまで行い、送風停止後、20分が経過した後で、サイロビン1の内部が定格圧力に保持されていることを確認する(ステップS43)。定格圧力は、A級のサイロビンにては水柱高が200ミリメートル以上、特A級のサイロビンにては水柱高が400ミリメートル以上である。ステップS43にてサイロビン1の内部が定格圧力に保持されていることが確認された場合には次に進み、サイロビン1の内部が定格圧力を下回ったときには減圧チェックのステップS2に戻り、減圧チェックのステップS2と気密補修のステップS3をもう一度行う。
【0054】
図13、図14に、気密テストに関する試験調査表を掲げておく。図13は施行前、すなわちステップS2、ステップS3を実施する前に行ったあるサイロのサイロビンの気密試験の結果をまとめたもので、スタート時には水マノメーターで水柱高が500ミリメートルであったが、2分後には早くも400ミリメートルを切り、10分後には148ミリメートル、20分後には50ミリメートルにまで低下している。したがって、この調査の対象となったサイロビンは、特A級はおろか、A級の指定さえ大きく外れる状態であったといえる。
【0055】
図14は、当該サイロビンにステップS2、ステップS3を実施した結果の試験調査表である。やはり水マノメーターで水柱高が500ミリメートルから始めて、10分経過後は488ミリメートル、20分経過後にても483ミリメートルと空気の漏洩量はごくわずかに留まり、充分に特A級指定のサイロビンとして機能していることが明白である。このような状態になればステップS4は完了で、次の事後処理のステップS5(図5参照)に進む。
【0056】
事後処理のステップS5にては、まず、サイロビン1の内部に架設されていた作業用足場類とホッパー部4の下部の養生用幕体8を撤去する(ステップS51)。次に、撤去されていた付属金物、すなわち投入用ダクト31aや排出用ダクト41a(図6参照)を取り付け(ステップS52)、サイロビン1の内部を清掃して(ステップS53)、全ステップが完了する。なお、本発明の実施例1の方法によれば、この全工程を20日余りで終えることが可能である。
【0057】
図12に、本発明の実施例1の方法によって実際の検査と補修を行う場合の標準的な工程表を掲げておく。なお、この工程表の中で、「荷揚げ」、「荷おろし」とされているのは、作業のために必要な道具類を当該サイロビンの上に運び上げる作業及び降ろす作業を意味する。また、この工程表の中で「減圧テスト」と記されているのは減圧チェックのステップS2に該当し、「下地処理」は気密補修のステップS32に、「ライニング」はサイロビン1の内部の全面ライニングのステップS35に、夫々該当する。また、付属金物を取り外すステップS12は「足場架設」に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、コンクリート製サイロビンにおいてこれまで行われていた全面補修の方法を見直し、全工程を<検査>と<補修>に分解し、<検査>の工程において徹底的に損傷箇所を洗い出すことにより、<補修>の工程における重点的補修を可能とし、従来の方法に比較してはるかに簡便で工期も短く、費用も安価に済むコンクリート製サイロビンの検査及び補修方法を実現したものである。
【0059】
現今、次第に金属製サイロビンが増加の傾向にはあるものの、過去に築造されたコンクリート製サイロビンがまだまだ現役で用い続けられており、経年変化によるコンクリートの劣化が進むと共に、合理的な補修に関する要望はますます強くなっているのが現状である。すなわち、従来のようにサイロビンの内壁全体を全面的に気密補修するという方法では費用が嵩み、工期も長くなるので、補修に二の足を踏む施主も増えているのが実態である。
【0060】
本発明の方法にては、前述のように<検査>工程と<補修>工程を分解して考えることにより、簡便にして工期も短く、費用的にも全面補修に比べるとはるかに安く済む合理的な方法を開発したもので、これにより等級を外れて使われなくなっていた多くのサイロも復活させることができ、設備投資に消極的にならざるを得ない現今の経済状況下にあっては、サイロを所有あるいは管理する側にとって、大きな産業上の利用可能性を齎すものにほかならない。
【符号の説明】
【0061】
1 サイロビン
2 壁体
3 蓋部
31 投入口
31a 投入用ダクト
32 マンホール
33 ダクト孔
4 ホッパー部
41 排出口
41a 排出用ダクト
42 マンホール
43 ダクト孔
5 ダクト
6 ダクト
61 噴出口
7 インレットカバー
8 養生用幕体
81 吸入口
C1 クラック
C2 クラック
C3 クラック
Cv 空洞
E エポキシ樹脂
E1 1層目ライニング
E2 2層目ライニング
Fc コンクリート層
Gc ガラスクロス
J ジャンカ
M 金属部分
P ピンホール
Pm プライマー樹脂
Rm 樹脂モルタル
S 空間
S1 ステップ
S11 ステップ
S12 ステップ
S13 ステップ
S14 ステップ
S15 ステップ
S16 ステップ
S2 ステップ
S21 ステップ
S22 ステップ
S23 ステップ
S24 ステップ
S25 ステップ
S3 ステップ
S31 ステップ
S32 ステップ
S33 ステップ
S34 ステップ
S35 ステップ
S4 ステップ
S41 ステップ
S42 ステップ
S43 ステップ
S5 ステップ
S51 ステップ
S52 ステップ
S53 ステップ
Sf サンダー面
Uc ウレタン樹脂
V1 カット
V2 カット
V3 カット
W 内壁面
W2 内壁面
W4 内壁面
WO 外壁面






【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製サイロビンの内壁の補修を行うための検査方法において、
減圧チェックを行うための事前準備を行うステップと、
サイロビンの内部を減圧して重点補修箇所をチェックする減圧チェックのステップ
よりなることを特徴とするコンクリート製サイロビンの内壁の検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリート製サイロビンの内壁の検査方法を実施してサイロビンの内壁の検査の全ステップが終了した後に、
サイロビンの内壁の重点補修箇所に気密補修を行うステップと、
気密補修後に気密テストを行うステップと、
気密テストにおいて圧力が定格以上に保持されなかった場合には請求項1に記載の減圧チェックのステップに戻る圧力判断のステップと、
圧力判断のステップにおいて圧力が定格以上に保持された場合には事後処理を行い、作業を完了するステップ、
よりなることを特徴とするコンクリート製サイロビンの内壁の補修方法。
【請求項3】
請求項1に記載の減圧チェックを行うための事前準備を行うステップが、
サイロビンの内部を空にするステップと、
サイロビンの付属金物を取り外すステップと、
サイロビンの内部に作業用足場類を架設するステップと、
サイロビンの内部を清掃しダストの排出を行うステップと、
サイロビンのホッパー部の密閉養生を行うステップと、
サイロビンの内壁を高圧水により洗浄するステップ、
よりなり、
請求項1に記載のサイロビンの内部を減圧して重点補修箇所をチェックする減圧チェックのステップが、
サイロビンを密閉するステップと、
サイロビンの内部を水マノメーターで水柱高が−200ミリメートル〜−600ミリメートルに減圧するステップと、
サイロビンの内壁に石鹸水を塗布するステップと、
サイロビンの内壁の損傷箇所をマーキングするステップと、
損傷箇所を展開図と写真に記録するステップ、
よりなることを特徴とするコンクリート製サイロビンの内壁の検査方法。
【請求項4】
請求項2に記載のサイロビンの内壁の重点補修箇所に気密補修を行うステップが、
上記展開図と写真により補修仕様を決定するステップと、
上記展開図にマーキングされた箇所に重点補修を施すステップと、
サイロビンの内壁の全面を再度高圧水により洗浄するステップと、
サイロビンの内部を乾燥させるステップと、
サイロビンの内壁の全面をライニングするステップ、
よりなり、
請求項2に記載の気密補修後に気密テストを行うステップが、
サイロビンを密閉するステップと、
サイロビンの内部を加圧するステップと、
サイロビンの内部の圧力が定格以上に保持されるか否かを判断し、サイロビンの内部の圧力が定格以上に保持された場合には次に進み、保持されない場合には請求項3に記載のサイロビンの内部を減圧して重点補修箇所をチェックする減圧チェックのステップに戻る圧力判断のステップ、
よりなり、
請求項2に記載の圧力が定格以上に保持された場合には事後処理を行い、作業を完了するステップが、
作業用足場類と養生を撤去するステップと、
サイロビンの付属金物を取り付けるステップと、
サイロビンの内部を清掃するステップ、
よりなることを特徴とするコンクリート製サイロビンの内壁の補修方法。
【請求項5】
請求項4に記載のサイロビンの内部の圧力が定格以上に保持されるか否かを判断し、サイロビンの内部の圧力が定格以上に保持された場合には次に進み、保持されない場合には請求項3に記載のサイロビンの内部を減圧して重点補修箇所をチェックする減圧チェックのステップに戻る圧力判断のステップにおいて、定格圧力を水マノメーターで水柱高が200ミリメートルとすることを特徴とするコンクリート製サイロビンの内壁の補修方法。
【請求項6】
請求項4に記載のサイロビンの内部の圧力が定格以上に保持されるか否かを判断し、サイロビンの内部の圧力が定格以上に保持された場合には次に進み、保持されない場合には請求項3に記載のサイロビンの内部を減圧して重点補修箇所をチェックする減圧チェックのステップに戻る圧力判断のステップにおいて、定格圧力を水マノメーターで水柱高が400ミリメートルとすることを特徴とするコンクリート製サイロビンの内壁の補修方法。






























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−173608(P2011−173608A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38122(P2010−38122)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【特許番号】特許第4540131号(P4540131)
【特許公報発行日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(505331823)中部資材株式会社 (4)
【Fターム(参考)】