説明

コンデンサ放電式内燃機関用点火装置

【課題】機関停止用スイッチを通して侵入するサージにより誤動作を生じたり、回路素子が破損したりするおそれを生じさせることなく、必要時に機関を確実に停止させることができるコンデンサ放電式の内燃機関用点火装置を提供する。
【解決手段】機関の回転に同期して交流電圧を誘起するエキサイタコイル1の一方の極性の半サイクルの出力電圧により点火用コンデンサ3を充電し、このコンデンサに蓄積された電荷を点火コイル2の一次コイル2aを通して放電させることにより点火用の高電圧を得るコンデンサ放電式の内燃機関用点火装置において、機関停止時にオフ状態にされる機関停止スイッチ10を点火用コンデンサの充電回路に挿入し、エキサイタコイルの誘起電圧を一定値以下に制限する動作を行う定電圧回路22をエキサイタコイルの両端に接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機関に取り付けられた磁石発電機の出力で点火用コンデンサの充電を行うコンデンサ放電式の内燃機関用点火装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の点火装置は、例えば図9に示されているように、内燃機関により駆動される磁石発電機内に設けられて、機関の回転に同期して交流電圧を誘起するエキサイタコイル1と、一次コイル2a及び二次コイル2bを有する点火コイル2と、点火コイルの一次側に設けられた点火用コンデンサ3と、エキサイタコイル1の一方の極性の半サイクルの誘起電圧でダイオード4と点火コイル2の1次コイルとを通して点火用コンデンサ3を図示の極性に充電する充電回路と、点火信号Viが与えられた時にオン状態になって点火用コンデンサ3に蓄積された電荷を点火コイルの1次コイル2aを通して放電させる点火用スイッチとしてのサイリスタ5と、機関の点火時期にサイリスタ5に点火信号Viを与える点火制御部6とを備えている。点火コイル2の2次コイルには、機関の気筒に取り付けられた点火プラグ7が接続される。図9は、特許文献1に示されたコンデンサ放電式の点火装置の構成をほぼそのまま示している。この種の点火装置においては、点火制御部6を動作させるために直流電源を必要とするが、点火制御部6の電源電圧としては、バッテリの出力電圧を定電圧化して得た電圧を用いる場合と、エキサイタコイルの出力を利用して得た直流定電圧を用いる場合とがある。
【0003】
図9に示したようなコンデンサ放電式の点火装置においては、機関の点火時期よりも前のタイミングでエキサイタコイル1の一方の極性の半サイクルの出力電圧で点火用コンデンサ3を充電した後、機関の点火時期にサイリスタ(点火用スイッチ)5をオン状態にして点火用コンデンサ3の電荷を点火コイルの一次コイル2aを通して放電させる。点火用コンデンサの電荷を点火コイルの一次コイルを通して放電させると、点火コイルの一次コイル2aに高い電圧が誘起し、この電圧が点火コイルの1次、2次間の昇圧比で更に昇圧されることにより、点火コイルの二次コイル2bに点火用の高電圧が誘起する。この点火用高電圧は機関の気筒に取り付けられた点火プラグ7に印加されるため、点火プラグ7で火花放電が生じて機関が点火される。
【0004】
コンデンサ放電式の点火装置により点火される内燃機関を停止するためには、点火装置の動作を停止させる必要がある。バッテリを電源として点火制御部を動作させる点火装置においては、キースイッチが設けられるため、キースイッチを開くことにより点火動作を停止させることができる。しかしながら、バッテリを用いずに、エキサイタコイルの出力を整流して得た直流電圧を点火制御部の電源電圧とする場合(バッテリレスの構成を有する場合)には、キースイッチが設けられないため、点火動作を停止するために何らかの工夫をする必要がある。バッテリレスのコンデンサ放電式点火装置の点火動作を停止させる方法としては、機関の運転中オフ状態に保たれ、機関の停止時にオン状態にされる短絡停止型の機関停止スイッチを用いて、この機関停止スイッチにより点火装置の構成要素の一部を短絡することにより点火動作を停止させる方法と、機関の運転中オン状態に保持され、機関の停止時にオフ状態にされる開放停止型の機関停止スイッチを点火装置を構成する回路に挿入しておいて、この機関停止スイッチにより点火装置の回路の一部を切り離すことにより、点火動作を停止させる方法とが知られている。
【0005】
通常、機関停止スイッチは、固定接点及び可動接点等のスイッチの構成要素を絶縁樹脂製のケース内に収容して、押しボタンやノブ等の操作部を外部から操作可能な状態で絶縁ケースに取り付けた構造を有し、そのケースが、機関を駆動源とする装置の操作しやすい箇所に取り付けられる。機関停止スイッチのケースは外部に露呈されているため、大気が乾燥している状態で機関停止スイッチが風にさらされたり、作業者の衣服がスイッチのケースをこすったりすると、スイッチのケースに静電気が帯電して、機関停止スイッチの接点を通して点火装置内にサージ電流が侵入することがある。
【0006】
短絡停止型の機関停止スイッチを用いた場合には、機関の運転中、機関停止スイッチがオフ状態に保持されるため、機関停止スイッチのケースが帯電したときに、当該スイッチの接点を通して点火装置内にサージ電流が侵入することがあり、このサージ電流により点火制御部が誤動作をして点火装置が異常な動作をしたり、エキサイタコイル1の電位が上昇して絶縁破壊が生じたりするおそれがある。
【0007】
上記のような問題が生じるのを防ぐため、特許文献1に示されたコンデンサ放電式の点火装置においては、図9に示されているように、点火用スイッチを構成するサイリスタ5のゲートに点火信号を与える点火制御部6とは別に、エキサイタコイル1から抵抗8とダイオオード9とを通してサイリスタ5のゲートにトリガ信号を与える回路を設けるとともに、ダイオード9のアノードとアース間に開放停止型の機関停止スイッチ10を接続する構成をとっている。機関停止スイッチ10がオフ状態にあるときに、サージが侵入するのを防ぐため、機関停止スイッチ10の両端には、サージ吸収素子11が接続されている。
【0008】
特許文献1に示された点火装置では、機関の運転中機関停止スイッチ10をオン状態に保つことにより、エキサイタコイル1側から抵抗8とダイオード9とを通してサイリスタ5にトリガ信号が与えられるのを阻止する。これにより、点火制御部6から出力される点火信号Viのみをサイリスタ5に与えて機関の点火動作を支障なく行わせる。機関を停止する際には、機関停止スイッチ10をオフ状態にすることにより、エキエキサイタコイル1からサイリスタ5にトリガ信号を与えるようにする。この状態では、エキサイタコイルが点火用コンデンサ3を充電する極性の電圧を発生すると同時にサイリスタ5がオン状態になってエキサイタコイルの出力を短絡するため、点火用コンデンサ3の充電が行われなくなり、点火動作が停止する。このように構成すると、機関の運転中に機関停止スイッチ10の接点を通してサージ電流が侵入したときに、そのサージ電流をオン状態にある機関停止スイッチ10を通してアースに逃がすことができるため、点火制御部6にサージ電流が侵入したり、エキサイタコイル1にサージ電流が侵入したりするのを防ぐことができる。
【0009】
特許文献1に示された点火装置のように、サイリスタのトリガ回路に機関停止スイッチ10を接続する構成をとる場合には、機関停止スイッチ10のオフ時に機関停止スイッチ10を通してサージが侵入すると、サイリスタ5のゲート回路や点火制御部6にサージが侵入して、サイリスタ5や点火制御部6が破損するおそれがあるため、機関停止スイッチ10をオフ状態にした際に侵入する可能性があるサージに対して対策を講じておく必要がある。そのため、特許文献1に示された点火装置においては、機関停止スイッチ10の両端にサージ吸収素子11を接続して、機関停止スイッチ10のオフ時に侵入するサージをサージ吸収素子11により吸収するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−75502号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、特許文献1に示された点火装置においては、機関停止スイッチ10がオフ状態にされたときに、機関停止スイッチ10を通してサイリスタ5のゲートや点火制御部6にサージが侵入するのを防ぐために、機関停止スイッチ10の両端にサージ吸収素子11を接続する必要がある。しかしながら、機関停止スイッチ10の両端にサージ吸収素子11を接続した場合には、サージ吸収素子11が短絡破損(短絡状態になる破損)を起したときに機関停止スイッチ10に対して並列に電流通路が形成されるため、機関停止スイッチ10が機能しなくなって機関を停止させることができなくなるという問題が生じる。
【0012】
本発明の目的は、機関停止スイッチを通して侵入するサージにより誤動作が生じたり、回路素子が破損したりするおそれを生じさせることなく、機関運転時の正常な点火動作を保証しつつ、必要時には確実に機関を停止させることができるようにしたコンデンサ放電式内燃機関用点火装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、内燃機関の回転に同期して交流電圧を誘起するエキサイタコイルと、点火コイルと、点火コイルの一次側に設けられた点火用コンデンサと、エキサイタコイルの一方の極性の半サイクルの誘起電圧で点火用コンデンサを充電する充電回路と、内燃機関の点火時期にオン状態にされて点火用コンデンサに蓄積された電荷を点火コイルの1次コイルを通して放電させる点火用スイッチとを備えたコンデンサ放電式内燃機関用点火装置を対象とする。
【0014】
本発明においては、充電回路の途中に挿入されてオン状態にあるときにエキサイタコイルから点火用コンデンサに充電電流が流れるのを許容し、オフ状態にされたときにエキサイタコイルから点火用コンデンサに流れる充電電流を遮断する機関停止スイッチと、予め設定された一定の電圧値を制御値として、エキサイタコイルに誘起する前記一方の極性の電圧を制御値以下に制限する制御を行う定電圧回路とを設けた。
【0015】
点火用コンデンサの充電電圧が不足すると、点火コイルの二次コイルに誘起する点火用高電圧が低くなり、所期の点火性能を得ることができなくなる。したがって当然のことながら、上記電圧の制御値は、点火動作に支障を来さない範囲の値で、かつ点火装置を構成する回路素子の内、エキサイタコイルの一方の極性の誘起電圧が印加される素子に過大な負担を与えることがない値に設定する。通常点火用コンデンサの充電に必要とされる電圧は200〜200数十ボルトである。
【0016】
上記のように構成すると、機関を運転する際には機関停止スイッチをオン状態に保持することにより点火用コンデンサを充電することができるため、点火動作を支障なく行わせることができる。また機関停止スイッチをオフ状態にすることにより、点火用コンデンサが充電されるのを阻止することができるため、点火動作を停止させて機関を直ちに停止させることができる。
【0017】
上記のように、エキサイタコイルの出力で点火用コンデンサに充電電流を流す回路に機関停止スイッチを挿入する場合には、機関停止スイッチがオフ状態にされたときに静電気等により機関停止スイッチを通してサージ電流が侵入したとしても、点火用スイッチの制御端子や点火制御部にサージが侵入するおそれがないため、機関停止スイッチに対して並列にサージ吸収素子を接続したおく必要がない。したがって、サージ吸収素子の破損により機関停止スイッチが短絡された状態になって機関を停止させることができなくなる事態が生じるのを防ぐことができ、信頼性を向上させることができる。
【0018】
上記のように、エキサイタコイルの出力で点火用コンデンサを充電する回路に機関停止スイッチを挿入した場合、エキサイタコイルから点火用コンデンサに充電電流が流れている状態で機関停止スイッチがオフ状態にされると、それまで流れていた充電電流を流し続けようとする極性の高い電圧がエキサイタコイルに誘起し、この高電圧が機関停止スイッチに印加されるため、機関停止スイッチとして耐電圧が高い高価なものを用いる必要があり、コストが高くなるのを避けられない。また機関停止スイッチが開いた際にエキサイタコイルに誘起する高電圧により、機関停止スイッチの接点間にアークが生じると、充電回路や点火用スイッチにも高電圧が印加されるため、これらの構成要素が破損するおそれもある。
【0019】
このような問題が生じるのを防ぐため、本発明では、エキサイタコイルに誘起する一方の極性の電圧(点火用コンデンサを充電するために用いる電圧)を一定の制御値以下に制限する制御を行う定電圧回路を設けている。このような定電圧回路を設けておくと、機関停止スイッチをオフ状態にした際にエキサイタコイルに高電圧が誘起するのを防ぐことができ、機関停止スイッチが破損したり、点火装置の構成要素が破損したりするのを防ぐことができる。
【0020】
本発明の好ましい態様では、エキサイタコイルの一端が、アノードを接地側に向けた電流帰還用ダイオードを通して接地され、充電回路は、エキサイタコイルの一方の極性の半サイクルの誘起電圧をエキサイタコイルの他端側にアノードを向けた整流用ダイオードを通して点火用コンデンサに印加して点火用コンデンサを充電するように構成される。この場合、機関停止スイッチは、エキサイタコイルの他端と整流用ダイオードのアノードとの間に挿入するのが好ましい。
【0021】
上記定電圧回路は、エキサイタコイルの両端の電圧を検出する電圧検出回路と、エキサイタコイルに対して並列に接続されてエキサイタコイルが前記一方の極性の誘起電圧を発生している状態でトリガ信号が与えられたときにオン状態になって、エキサイタコイルが前記一方の極性の誘起電圧を発生している間オン状態を保持するエキサイタ短絡用スイッチと、電圧検出回路により検出された電圧が前記制御値に達したときにエキサイタ短絡用スイッチにトリガ信号を与えるエキサイタ短絡用スイッチトリガ回路とを備えた構成とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、エキサイタコイルの出力で点火用コンデンサに充電電流を流す回路に機関停止スイッチを挿入して、機関停止スイッチがオフ状態にあるときに静電気等により機関停止スイッチを通してサージ電流が侵入したとしても、点火用スイッチの制御端子や点火制御部にサージが侵入するおそれがないようにしたので、機関停止スイッチに対して並列にサージ吸収素子を接続しておく必要がない。したがって、サージ吸収素子の破損により機関停止スイッチが短絡された状態になって機関を停止させることができなくなる事態が生じるのを防ぐことができ、信頼性を向上させることができる。
【0023】
また本発明においては、エキサイタコイルに誘起する一方の極性の電圧を一定の制御値以下に制限する制御を行う定電圧回路を設けたので、機関停止スイッチをオフ状態にした際にエキサイタコイルに高電圧が誘起するのを防ぐことができ、機関停止スイッチが破損したり、充電回路の構成要素が破損したりするといった問題を生じさせることなく、必要なときに機関を確実に停止させることができる点火装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係わるコンデンサ放電式内燃機関用点火装置の一実施形態の構成を概略的に示したブロック図である。
【図2】図1に示したコンデンサ放電式内燃機関用点火装置の具体的な構成の一例を示した回路図である。
【図3】図1及び図2の実施形態で用いる磁石発電機の構成を概略的に示した正面図である。
【図4】図3に示した磁石発電機内に設けられたエキサイタコイルから得られる交流電圧の無負荷時の波形を示した波形図である。
【図5】図2に示した点火装置のエキサイタコイルの一方の極性の半サイクルの出力電圧の動作時の波形を模式的に示した波形図である。
【図6】図2に示した点火装置の点火用コンデンサの両端の電圧波形を模式的に示した波形図である。
【図7】(A)及び(B)は図2に示した点火装置の波形整形回路の動作を説明するための波形図である。
【図8】本発明に係わる点火装置の他の実施形態の構成を示した回路図である。
【図9】従来の点火装置の構成を示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下図面を参照して、本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は本発明に係わる点火装置の一実施形態の単気筒当たりの構成を概略的に示したものである。同図において、1は内燃機関により駆動される磁石発電機内に設けられた発電コイルからなるエキサイタコイル、2は一次コイル2a及び二次コイル2bを有する点火コイル、3は点火コイル2の一次側に設けられた点火用コンデンサである。また4は、エキサイタコイル1の一方の極性の半サイクルの電圧を点火用コンデンサ3に供給する整流用ダイオード、5は点火信号Viが与えられたときにオン状態になって点火用コンデンサ3の電荷を点火コイル2の一次コイル2aを通して放電させる点火用スイッチとしてのサイリスタ、6は内燃機関の点火時期にサイリスタ5のゲートに点火信号Viを与える点火制御部、7は図示しない機関の気筒に取り付けられて、点火コイル2の二次コイル2bに接続された点火プラグである。
【0026】
本実施形態で用いる磁石発電機は、図3に示したように、カップ状または円板状に形成された鉄製のフライホイール100の外周に設けた凹部101内に永久磁石102を取り付けて、永久磁石102をフライホイール100の径方向に着磁した構成を有する磁石回転子103と、磁石回転子103の磁極にギャップを介して対向する磁極部105a,105bを有する鉄心105にエキサイタコイル1を巻回した固定子106とからなっている。磁石回転子103は、フライホイール100の軸心部に設けられたボス部100aを図示しない内燃機関のクランク軸に嵌合させて該クランク軸に固定することにより、機関に取り付けられる。また固定子106は、鉄心105を機関のケースやカバーなどに設けられた固定子取付部に固定することにより内燃機関に取り付けられる。
【0027】
この磁石発電機においては、永久磁石102の外周側の磁極(図示の例ではN極)と、凹部101の周方向の両端にそれぞれ隣接する領域に導出された2つの磁極(図示の例ではS極)とにより、3極の磁石界磁が構成されている。図示のエキサイタコイル1には、クランク軸が回転する間に、図4に示したように、1山の正極性の半サイクルの電圧(以下正極性電圧という。)V1と、この正極性の半サイクルの電圧V1の前後にそれぞれ発生する第1及び第2の負極性の半サイクルの電圧(以下第1及び第2の負極性電圧という。)V21及びV22とからなる交流電圧が誘起する。本実施形態では、これらの電圧のうち、正極性電圧(一方の極性の半サイクルの電圧)V1を点火用コンデンサを充電するために用い、第1及び第2の負極性電圧(他方の極性の半サイクルの電圧)V21及びV22を、機関の回転速度情報やクランク角情報を得るための信号電圧として用いる。
【0028】
図1に示した点火装置においては、点火コイル2の一次コイル2a及び二次コイル2bの一端が接地され、二次コイル2bの非接地側の端子が点火プラグ7の非接地側端子に接続されている。また一次コイル2aの非接地側の端子に点火用コンデンサ3の一端が接続され、コンデンサ3の他端がダイオード4のカソードに接続されている。エキサイタコイルに誘起する負極性電圧V21及びV22を点火制御を行う際に必要な機関の回転情報を得るための信号電圧として用いることを可能にするため、エキサイタコイル1の一端と接地間及びエキサイタコイル1の他端と接地間にそれぞれアノードを接地側に向けた電流帰還用ダイオード20及び21が接続され、エキサイタコイル1の他端と整流用ダイオード4のアノードとの間に機関停止スイッチ10が挿入されている。
【0029】
機関停止スイッチ10は、機関を運転する際にオン状態に保持され、機関を停止する際に運転者により操作されてオフ状態にされるスイッチであり、オン状態にあるときにエキサイタコイル1から点火用コンデンサ3に充電電流が流れるのを許容し、オフ状態にされたときにエキサイタコイル1から点火用コンデンサ3に充電電流が流れるのを阻止するスイッチである。本発明において、機関停止スイッチ10として用いるスイッチの形式は特に限定しないが、機関が停止した後も機関停止スイッチ10がオフ状態になったままの状態に保持されるのを防ぐためには、モメンタリー型の押ボタンスイッチやロッカースイッチのように、操作部に力を加えている間だけオフ状態になり、操作部に加えていた力を除去したときにオン状態に復帰する形式のスイッチを機関停止スイッチ10として用いるのが好ましい。
【0030】
本実施形態ではまた、エキサイタコイル1の他端と接地間に定電圧回路22が接続されている。この定電圧回路は、予め設定された一定の電圧値を制御値として、エキサイタコイル1に誘起する一方の極性の電圧(正極性電圧)V1を制御値以下に制限する制御を行う回路である。定電圧回路22は、例えば、エキサイタコイル1の両端の電圧を検出する電圧検出回路と、エキサイタコイル1に対して並列に接続されてエキサイタコイル1が一方の極性の誘起電圧V1を発生している状態でトリガ信号が与えられたときにオン状態になって、エキサイタコイル1が一方の極性の誘起電圧を発生している間そのオン状態を保持するエキサイタ短絡用スイッチと、電圧検出回路により検出された電圧が制御値に達したときにエキサイタ短絡用スイッチにトリガ信号を与えるエキサイタ短絡用スイッチトリガ回路とにより構成することができる。定電圧回路22をこのように構成した場合、エキサイタコイルに誘起する一方の極性の半サイクルの電圧は、制御値まで立ち上がったところで零レベルまで立ち下がり、以後一方の極性の半サイクルの期間が終了するまで零レベルの状態を維持する波形を示す。
【0031】
図1に示した点火装置ではまた、エキサイタコイル1の一端が波形整形回路23の入力端子と電源回路24の入力端子とに接続されている。波形整形回路23は、エキサイタコイル1が発生する第1及び第2の負極性電圧V21及びV22(図4参照)を点火制御部6を構成するマイクロプロセッサが認識し得る波形の第1の信号S21及び第2の信号S22に変換して、これらの信号S21及びS22を点火制御部6に与える。
【0032】
本実施形態のように、エキサイタコイル1が発生する正極性電圧V1を点火用コンデンサの充電用電圧として用い、負極性電圧を点火時期の制御に用いる信号電圧として用いる場合には、点火時期の制御を行うのに適したクランク角位置でエキサイタコイル1が正極性電圧V1と負極性電圧V21及びV22とを発生するように、磁石発電機の回転子103と固定子105との位置関係が設定される。
【0033】
本発明において、エキサイタコイルが正極性電圧V1及び負極性電圧V21,V22を発生するクランク角位置をどのように設定するかは任意であるが、本実施形態では、機関のピストンが上死点に達するクランク角位置(上死点位置という。)よりも十分に進角した位置で第1の負極性電圧V21が発生し、上死点位置付近に設定されたクランク角位置(一般には機関の始動時の点火位置として適したクランク角位置)で第2の負極性電圧V22を発生するように、磁石発電機の回転子103と固定子105との位置関係が設定されているものとし、負極性電圧V21が発生するクランク角位置を、点火時期の計測を開始する基準クランク角位置として用いるものとする。
【0034】
電源回路24は、エキサイタコイル1が発生する第1及び第2の負極性電圧を一定のレベルを有する直流電圧Vccに変換して、この直流電圧を点火制御部6を構成するマイクロプロセッサの電源端子や波形整形回路23の電源端子に電源電圧として与える回路である。電源回路24は例えば、エキサイタコイル1が発生する第1及び第2の負極性電圧により充電される電源コンデンサと、この電源コンデンサの両端の電圧Vccを一定に保つように電源コンデンサの充電を制御する回路とにより構成することができる。エキサイタコイル1から電源回路24に流入して電源コンデンサを充電する電流は、ダイオード21を通してエキサイタコイル1に帰還する。電源回路24としては、バッテリレスのコンデンサ放電式点火装置に従来から用いられている周知の構成を有するものを用いることができる。
【0035】
本実施形態では、エキサイタコイル1−機関停止スイッチ10−ダイオード4−点火用コンデンサ3−点火コイルの一次コイル2a−ダイオード20−エキサイタコイル1の閉回路により、エキサイタコイル1の一方の極性の半サイクルの誘起電圧で点火用コンデンサ3を一方の極性に充電する充電回路が構成されている。また本実施形態では、点火用スイッチを構成するサイリスタ5に対して並列に、該サイリスタ5と逆方向のダイオード25が接続されている。このダイオード25は、点火時に点火用コンデンサ3の放電の持続時間を延ばして、火花の持続時間を長くするために設けられている。
【0036】
点火制御部6は、例えば、波形整形回路から得られる第1及び第2の信号S21及びS22の発生間隔から機関の回転速度を演算する回転速度演算手段と、演算された回転速度における点火時期を決定する点火時期決定手段と、決定された点火時期を検出するために、第1の信号S21が発生した時刻から点火時期までの間に点火タイマに計測させる時間を演算する点火タイマ計測時間演算手段と、点火タイマが演算された計測時間の計測を完了した時にサイリスタ5に点火信号を与える点火信号Viを発生する点火信号発生手段とを備えていて、機関の各回転速度において最適の点火時期に機関を点火するべく、サイリスタ5に点火信号を与える時期を制御する。上記の各部により、バッテリレスのコンデンサ放電式内燃機関用点火装置が構成されている。
【0037】
図1に示した点火装置においては、機関を運転する際に機関停止スイッチ10がオン状態に保持される。この状態でエキサイタコイル1が正極性電圧V1を発生すると、エキサイタコイル1から機関停止スイッチ10と、ダイオード4と、点火用コンデンサ3と、点火コイルの一次コイル2aと、ダイオード20とを通して充電電流が流れて、点火用コンデンサ3が図示の極性に充電される。本実施形態においては、エキサイタコイル1が出力する正極性電圧を予め定めた一定の制御値以下に制限する定電圧回路22が設けられているため、点火用コンデンサ3は毎回一定の電圧値まで充電される。点火制御部6が、機関の点火時期を検出したときにサイリスタ5に点火信号を与えると、サイリスタ5がオン状態になるため、点火用コンデンサ3に蓄積された電荷がサイリスタ5と点火コイル2の一次コイル2aとを通して放電し、点火コイルの二次コイル2bに点火用高電圧が誘起する。この高電圧は点火プラグ7に印加されるため、点火プラグ7で火花放電が生じ、機関が点火される。
【0038】
定電圧回路22の制御値は、点火コイル2の二次コイルに誘起する点火用高電圧の波高値を、点火プラグで火花放電を生じさせるために必要な最低値以上とするために必要とされる点火用コンデンサ3の充電電圧値の下限値よりも高く、かつ機関停止スイッチ10やサイリスタ5等、エキサイタコイル1の正極性電圧が印加される素子(機関停止スイッチ10、サイリスタ5、ダイオード4,21及び25)の耐電圧値以下の値(通常は200〜200数十ボルトの範囲の適当な値)に設定する。
【0039】
機関を停止する際には、機関停止スイッチ10をオフ状態にする。機関停止スイッチ10をオフ状態にすると、点火用コンデンサ3の充電が行われなくなるため、点火動作が行われなくなり、機関は直ちに停止する。
【0040】
上記のように、本実施形態の点火装置においては、機関を運転する際に機関停止スイッチ10をオン状態に保持することにより点火用コンデンサを充電することができるため、点火動作を支障なく行わせることができる。また機関停止スイッチ10をオフ状態にすることにより、点火用コンデンサが充電されるのを阻止することができるため、点火動作を停止させて機関を停止させることができる。
【0041】
上記のように、点火用コンデンサの充電回路に機関停止スイッチ10を挿入する構成をとる場合には、機関停止スイッチ10がオフ状態にされたときに静電気等により機関停止スイッチを通してサージ電流が侵入したとしても、サイリスタ5のゲート(点火用スイッチの制御端子)や点火制御部6にサージが侵入するおそれがないため、機関停止スイッチ10に対して並列にサージ吸収素子を接続したおく必要がない。したがって、サージ吸収素子の短絡破壊により機関停止スイッチ10が短絡された状態になって機関を停止させることができなくなる事態が生じるのを防ぐことができ、信頼性を向上させることができる。
【0042】
エキサイタコイル1から点火用コンデンサ3に充電電流が流れている状態で機関停止スイッチ10がオフ状態にされた場合には、それまで流れていた充電電流を流し続けようとする極性の高い電圧がエキサイタコイル1に誘起しようとするが、本実施形態では、定電圧回路22がエキサイタコイルの正極性の誘起電圧を一定値以下に制限する働きをするため、機関停止スイッチ10をオフ状態にした際にエキサイタコイル1に過大な電圧が誘起するのを防ぐことができる。したがって、機関停止スイッチ10がオフ状態にされたときにエキサイタコイル1に過電圧が誘起して、充電回路の構成要素やサイリスタ5が破損したり、これらの素子として高い耐電圧性能を有する高価な素子を用いることが必要とされる等の問題を生じさせることなく、必要な時に機関を確実に停止させることができるコンデンサ放電式の内燃機関用点火装置を得ることができる。
【0043】
図2を参照すると、図1に示された点火装置の定電圧回路22と、波形整形回路23の具体的構成の一例が示されている。図2に示された定電圧回路22は、エキサイタコイル1の他端(点火用コンデンサ側の端子)と接地間に接続された抵抗器R1及びR2の直列回路からなる分圧回路と、同じくエキサイタコイル1の他端と接地間にカソードを接地側に向けて接続されたサイリスタTh1と、抵抗器R1とR2との接続点とサイリスタTh1のゲートとの間に、アノードをサイリスタTh1のゲート側に向けて接続されたツェナーダイオードZD1とにより構成されている。
【0044】
本実施形態では、抵抗器R1とR2との直列回路からなる分圧回路により、エキサイタコイル1の両端の電圧を検出する電圧検出回路が構成され、サイリスタTh1により、エキサイタコイルに対して並列に接続されてエキサイタコイル1が一方の極性(本実施形態では正極性)の誘起電圧を発生している状態でトリガ信号が与えられたときにオン状態になって、エキサイタコイルが一方の極性の誘起電圧を発生している間オン状態を保持するエキサイタ短絡用スイッチが構成されている。またツェナーダイオードZD1により、電圧検出回路により検出された電圧が制御値に達したときにエキサイタ短絡用スイッチにトリガ信号を与えるエキサイタ短絡用スイッチトリガ回路が構成されている。
【0045】
本実施形態の定電圧回路22においては、エキサイタコイル1に誘起する正極性電圧V1が、抵抗器R1とR2とからなる分圧回路(電圧検出回路)の分圧比とツェナーダイオードZD1のツェナー電圧とにより決まる一定の制御値Vsを超えたときに、ツェナーダイオードZD1がオン状態になってサイリスタTh1にトリガ信号が与えられる。これによりサイリスタTh1がオン状態になって、正極性電圧が発生する半サイクルの残りの期間エキサイタコイル1を短絡するため、エキサイタコイル1が誘起する正極性電圧V1は一定の制御値Vs以下に制限される。
【0046】
図5は、定電圧回路22の制御動作によりエキサイタコイル1に誘起する正極性電圧V1が制御値Vs以下に制限される様子を示している。図5に示した例では、定電圧回路22が設けられていない場合に、同図に破線で示したように、エキサイタコイル1に誘起する正極性電圧V1が制御値Vsよりも高いピーク値Vpまで上昇するが、定電圧回路22が設けられている場合には、制御値Vs以下に制限される。図6は、このエキサイタコイル1の正極性電圧V1により充電される点火用コンデンサ3の両端の電圧Vcを示している。点火用コンデンサ3の両端の電圧は、エキサイタコイル1の正極性電圧の上昇に伴って制御値Vsまで上昇した後、点火時期t1まで制御値Vsに等しい値を保つ。点火時期にサイリスタThiに点火信号が与えられると、サイリスタThiがオン状態になって点火用コンデンサ3の電荷を点火コイルの1次コイルとを通して放電させるため、点火用コンデンサ3の両端の電圧Vcは点火時期t1に零に立ち下がる。点火用コンデンサ3の両端の電圧の点火時期以降の波形は、実際には振動波形を示すが、図5においては、その詳細な図示を省略している。
【0047】
図2に示した波形整形回路23は、アノードがエキサイタコイル1の一端に接続されたダイオードDaと、ダイオードDaのカソードに一端が接続された抵抗器RaとコンデンサCaとの並列回路と、抵抗器RaとコンデンサCaとの並列回路の他端に抵抗器Rbを通してベースが接続され、エミッタが接地されたNPNトランジスタTRaと、トランジスタTRaのコレクタと電源回路24の出力端子との間に接続された抵抗器Rcとにより構成され、トランジスタTRaのコレクタエミッタ間に得られる信号電圧が点火制御部6に入力されている。
【0048】
図2に示された波形整形回路23においては、エキサイタコイル1が発生する第1及び第2の負極性電圧V21及びV22によりコンデンサCaが抵抗器RbとトランジスタTRaのベースエミッタ間とを通して充電され、コンデンサCaに蓄積された電荷は、抵抗器Raを通して一定の時定数で放電していく。したがって、コンデンサCaの両端には、図7(A)に波線で示したように、負極性電圧V21が立ち上がる毎に所定レベルまで立ち上がった後一定の傾きで低下していく波形を示すしきい値電圧Vaが得られる。トランジスタTRaは、負極性電圧V21及びV22がしきい値電圧Vaを超えている期間のみベース電流が流れてオン状態になるため、トランジスタTRaのコレクタエミッタ間には、図7(B)に示すように、負極性電圧V21及びV22がそれぞれしきい値電圧Vaを超えている期間の間だけ零レベルを示す信号電圧が得られる。点火制御部6を構成するマイクロプロセッサは、負極性電圧V21がしきい値電圧Vaを超えた時に発生する信号電圧の立ち下がりを第1の信号S21として認識し、負極性電圧V22が電圧Vaを超えた時に発生する信号電圧の立ち下がりを第2の信号S22として認識する。
【0049】
本実施形態では、上死点位置に対して十分に進角したクランク角位置で第1の信号S21が発生し、上死点位置付近に設定されたクランク角位置で第2の信号S22が発生する。点火制御部6は、第1の信号S21が発生する時刻taから第2の信号S22が発生する時刻tbまでの時間から機関の回転速度を演算し、演算された回転速度に対して機関の点火時期を演算する。点火時期制御部はまた、第1の信号S21が発生した時に、既に演算されている点火時期(1回転前に演算された点火時期)を検出するために点火タイマに計測させる時間を演算して、演算した時間を点火タイマにセットしてその計測を開始させ、点火タイマがセットされた時間の計測を完了したときにサイリスタ5に点火信号を与える。
【0050】
上記の実施形態では、エキサイタコイル1が発生する負極性電圧を、機関の回転速度やクランク角位置の情報を得るための信号として用いるとしたが、機関の回転速度情報やクランク角位置情報を得るための信号を発生する信号発生器を別個に設ける場合にも本発明を適用することができる。
【0051】
図8は、エキサイタコイルの他に機関の回転情報を含む信号を発生する信号発生器を設ける場合の実施形態を示している。本実施形態においては、エキサイタコイル1を設ける磁石発電機の他に、予め設定されたクランク角位置でパルス信号を発生する信号発生器30が設けられ、信号発生器30の出力が波形整形回路23を通して点火制御部6に与えられている。信号発生器30は、機関のピストンの上死点位置よりも十分に進角した位置で第1のパルス信号を発生し、上死点位置付近に設定されたクランク角位置で第2のパルス信号を発生する。波形整形回路24は信号発生器30が発生する第1及び第2のパルス信号をマイクロプロセッサが認識し得る信号に変換して点火制御部6に与える。その他の構成は図1に示した実施形態と同様である。
【0052】
上記の実施形態では、図3に示したように、回転子が3極の磁石界磁を有する磁石発電機にエキサイタコイルを設けるとしたが、図8に示すようにエキサイタコイルと別個に信号発生器30を設ける場合には、任意の極数の磁石界磁を有する回転子を備えた磁石発電機内にエキサイタコイルを設けることができる。
【0053】
上記の各実施形態では、マイクロプロセッサを備えた点火制御部6により点火時期を制御するとしたが、マイクロプロセッサを用いないで機関の点火時期を決定する点火信号をサイリスタ5に与える構成をとる場合にも本発明を適用することができるのはもちろんである。
【0054】
上記の各実施形態では、エキサイタコイル1の他端と整流用ダイオード4のアノードとの間に機関停止スイッチ10を挿入したが、機関停止スイッチ10はエキサイタコイル1の出力で点火用コンデンサを充電する充電回路の途中に挿入されればよく、機関停止スイッチ10の挿入位置は上記の例に限定されない。
【符号の説明】
【0055】
1 エキサイタコイル
2 点火コイル
2a 一次コイル
2b 二次コイル
3 点火用コンデンサ
4 整流用ダイオード
5 サイリスタ(点火用スイッチ)
6 点火制御部
7 点火プラグ
10 機関停止スイッチ
22 定電圧回路
23 波形整形回路
24 電源回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の回転に同期して交流電圧を誘起するエキサイタコイルと、点火コイルと、前記点火コイルの一次側に設けられた点火用コンデンサと、前記エキサイタコイルの一方の極性の半サイクルの誘起電圧で前記点火用コンデンサを充電する充電回路と、前記内燃機関の点火時期にオン状態にされて前記点火用コンデンサに蓄積された電荷を前記点火コイルの1次コイルを通して放電させる点火用スイッチとを備えたコンデンサ放電式内燃機関用点火装置において、
前記充電回路の途中に挿入されてオン状態にあるときに前記エキサイタコイルから点火用コンデンサに充電電流が流れるのを許容し、オフ状態にされたときに前記エキサイタコイルから点火用コンデンサに流れる充電電流が流れるのを阻止する機関停止スイッチと、
予め設定された一定の電圧値を制御値として、前記エキサイタコイルに誘起する前記一方の極性の電圧を前記制御値以下に制限する制御を行う定電圧回路と、
を具備してなるコンデンサ放電式内燃機関用点火装置。
【請求項2】
前記エキサイタコイルの一端は、アノードを接地側に向けた電流帰還用ダイオードを通して接地され、
前記充電回路は、前記エキサイタコイルの前記一方の極性の半サイクルの誘起電圧を、前記エキサイタコイルの他端側にアノードを向けた整流用ダイオードを通して前記点火用コンデンサに印加して前記点火用コンデンサを充電するように構成され、
前記機関停止スイッチは、前記エキサイタコイルの他端と前記整流用ダイオードのアノードとの間に挿入されていること、
を特徴とする請求項1に記載のコンデンサ放電式内燃機関用点火装置。
【請求項3】
前記定電圧回路は、前記エキサイタコイルの両端の電圧を検出する電圧検出回路と、前記エキサイタコイルに対して並列に接続されて前記エキサイタコイルが前記一方の極性の誘起電圧を発生している状態でトリガ信号が与えられたときにオン状態になって、前記エキサイタコイルが前記一方の極性の誘起電圧を発生している間オン状態を保持するエキサイタ短絡用スイッチと、前記電圧検出回路により検出された電圧が前記制御値に達したときに前記エキサイタ短絡用スイッチにトリガ信号を与えるエキサイタ短絡用スイッチトリガ回路とを具備してなる請求項1または2に記載のコンデンサ放電式内燃機関用点火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−236763(P2011−236763A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107341(P2010−107341)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】