説明

コンデンサ

外装容器の一方向側のみに端子を設けた場合でも素子体から端子への抵抗を低減させ、かつ、インダクタンスを低減させることができ、さらに素子体の製造時間を短縮させることのできるコンデンサを提供する。
素子体101は、電極体103A、103Bの端部帯状部108A、108Bが、セパレータ5A、5Bの長手方向に沿って互いに反対側にセパレータ5A、5Bより突出するように巻回されて形成されている。この素子体101の渦巻き様の両端面からは、電極体103A、103Bの端部帯状部108A、108Bが別々に露出されており、この端部帯状部108A、108Bには、集電板141A、141Bが接合されている。そして、集電板141Aと端子33A間、集電板141Bと端子33B間は、それぞれ短タブ部151A、長タブ部151Bにより接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサに係わり、特に、外装容器の一方向側のみに端子を設けた場合でも素子体から端子への抵抗を低減させ、かつ、インダクタンスを低減させることができ、さらに素子体の製造時間を短縮させることのできるコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタや電解コンデンサは、内部の素子体からの集電を行い、この素子体と外部接続用の端子間の電気的な接続を行うための集電構造を有している。
従来の集電構造を有する電気二重層キャパシタの縦断面図を図7に示す。また、従来の素子体の構成図を図8に、図8中のA矢視線図(セパレータを省略したもの)を図9に示す。なお、このような集電構造を有するコンデンサとして、特許文献1が知られている。
【0003】
図7〜図9において、電気二重層キャパシタの単体セル50では、図示しない電解液により含浸された柱状の素子体1が、底部21aを有する円筒状の外装容器21に収容されており、この外装容器21の開口部21bが封口板31により封口されている。
【0004】
このとき、素子体1は、電解液との界面に電気二重層を形成するための一対の長尺帯状の電極体3A、3Bと、この電極体3A、3B相互間に配置されたセパレータ5A、5Bとが積層されて構成されており、これらの電極体3A、3B及びセパレータ5A、5Bを巻回することで素子体1が形成されている。なお、電極体3A、3Bは、一方が正極を構成し、他方が負極を構成している。
【0005】
また、電極体3A、3Bは、それぞれ長尺帯状の金属製の集電箔7A、7Bと、この集電箔7A、7Bの表面に形成された電極層9A、9Bとを有している。この電極層9A、9Bには、集電箔7A、7Bに電気二重層を形成し蓄電機能を果たすため、例えば活性炭等の高比表面積材料が用いられる。なお、図9では、電極層9A、9Bは、それぞれ集電箔7A、7Bの片面のみに形成されているが、両面に形成される場合もある。
【0006】
さらに、電極体3A、3Bで電極層9A、9Bが形成された側の面の一部には、素子体1の巻回の軸方向全長に沿って電極層9A、9Bが形成されていないタブ接合部11A、11Bが形成されている。このタブ接合部11A、11Bでは、帯状のタブ13A、13Bと集電箔7A、7Bとが、それぞれタブ13A、13Bの一端である突端部15A、15Bを電極体3A、3Bの外に突出させた状態で、圧接あるいは振動溶接により接合されている。
なお、集電箔7A、7Bにタブ接合部11A、11Bを設けるのは、電極層9A、9Bが形成された部分にタブ13A、13Bを接合すると、この電極層9A、9Bには活性炭等を用いているため、接合強度が十分に得られないおそれがあるからである。
【0007】
このとき、柱状の素子体1が形成された状態で、対極の電極体3A、3Bに接続されたそれぞれの突端部15A、15B間が十分に隔離されるように、タブ13A、13Bと集電箔7A、7Bとの接合位置が決められている。
その結果、素子体1が形成された状態では、素子体1の渦巻き様の端面の一方(外装容器21の開口部21b側)からタブ13A、13Bの突端部15A、15Bがそれぞれ離隔されつつ突出されるようになっており、それぞれが封口板31を貫通する貫通穴31a、31bに取り付けられた端子33A、33Bと接続されるようになっている。
【0008】
かかる構成において、正極及び負極を構成する電極体3A、3Bからの集電は、それぞれタブ13A、13Bにより行われる。そのため、外装容器21の内部に密閉収納された素子体1から外部への電気エネルギーの入出力を行うことができる。
【0009】
ところで、単体セル50が、電気二重層キャパシタや大型の電解コンデンサの大出力用途に用いられる場合には、自身の発熱を抑えるために、単体セル50の抵抗を低減させる必要がある。
このために、素子体1から端子33A、33Bへの抵抗を低減させることが重要であり、これに際して、図8、図9に示すように片極に1個だけタブ13A、13Bを接合するのではなく、この個数を増加させることが考えられる。
【0010】
しかしながら、この場合、タブ13A、13Bの個数を増やすと、素子体1の開口部21b側の端面から突出される突端部15A、15Bの数も増加するため、電極体3Aに接合された突端部15Aは、電極体3Bに接続された対極の突端部15Bに対しては十分に隔離されるように、かつ他の同極の突端部15Aに対しては互いに略同位置に、配置する必要があった。そのため、電極体3A、3Bやセパレータ5A、5Bを巻回する際に、電極体3A、3Bの厚さの均一性を高度に高める必要があるほか、そのタブ13A、13Bの接合位置を決めることが難しく、かつタブ13A、13Bを接合する時に素子体1の巻き取りを一時停止する必要があるので、素子体1の製造時間が長期化するおそれがあった。
【0011】
このように、タブ13A、13Bを多数個接合するのは技術的に困難であり、片極には事実上2〜3個のタブ13A、13Bしか接合することができなかった。従って、タブ13A、13Bの個数を十分に増加させることができず、単体セル50の抵抗が高くなるおそれがあった。
【0012】
一方で、素子体の両端面から、正極及び負極を構成する電極体の集電箔の一部を別々に露出させ、この露出部分を介して電極体からの集電を行う集電構造も知られている。この集電構造は特許文献2に開示されている。
【0013】
しかしながら、この特許文献2の集電構造は、端子33A、33Bに対応するバスバーを、それぞれモジュールケースの両端面に配置することを前提としている。
【0014】
そのため、特許文献2の集電構造を有する単体セルでは、特許文献1のように外装容器21の開口部21b側の一方向側のみに端子33A、33Bが配置されておらず、単体セル同士を配線する場合や、単体セルと外部の回路とを配線する場合に、この配線が複雑になるおそれがあり、かつ省スペース化が困難になるおそれがあった。
【特許文献1】特開昭51−649号公報(第1図)
【特許文献2】特開2002−353078号公報(第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明はこのような従来の課題に鑑みてなされたもので、外装容器の一方向側のみに端子を設けた場合でも素子体から端子への抵抗を低減させ、かつ、インダクタンスを低減させることができ、さらに素子体の製造時間を短縮させることのできるコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このため本発明は、電解液と、長尺状の集電箔を備えてなり、かつ該集電箔の長手方向の1辺の全長に沿った端部帯状部を有し、互いに対向配置された電極体である正極及び負極と、該正極及び該負極を隔てるイオン透過性のセパレータとを有し、前記正極及び前記負極それぞれの前記端部帯状部の少なくとも一部分が互いに反対側に前記セパレータより突出するようにして、前記正極、前記負極及び前記セパレータが巻回された柱状の素子体と、該素子体及び前記電解液を収容し、一方に開口部を有する外装容器と、前記素子体の両端部にそれぞれ配置され、前記正極の端部帯状部と電気的に接続される正極集電板、及び前記負極の端部帯状部と電気的に接続される負極集電板と、前記外装容器の前記開口部を封口する封口板と、該封口板を貫通する貫通穴に取り付けられ、外部との間の電気エネルギーの入出力を行う正極端子及び負極端子と、前記正極集電板と前記正極端子との間、及び前記負極集電板と前記負極端子との間をそれぞれ電気的に接続する正極タブ部及び負極タブ部とを備えて構成した。
【0017】
正極及び負極は、それぞれの集電箔の端部帯状部が互いに素子体の反対の端部に配置されるように構成されている。また、正極集電板と正極端子との間、及び負極集電板と負極端子との間にはそれぞれ、正極タブ部及び負極タブ部が設けられ、かつ正極端子及び負極端子はいずれも、外装容器を封口する封口板を貫通する貫通穴に取り付けられるので、外装容器の一方向側のみで素子体から外部への電気エネルギーの入出力を行うことができる。そのため、素子体を収容する外装容器(単体セル)同士を接続する場合や、単体セルと外部の回路とを配線する場合に、この配線を簡易に接続することができ、かつ省スペース化を容易に行うことができる。
【0018】
さらに、本発明の素子体では、従来の素子体で必要であったタブの接合位置を考慮する必要が無い。そのため、素子体の巻き取りを一時停止することも無いので、素子体の製造時間を短縮させることができる。さらに、本発明の素子体では、従来のタブの接合の代わりに、素子体の巻き取り工程後に正極集電板や負極集電板の接続を行うだけで良いため、その製造が簡単である。従って、コンデンサの製造コストを下げることができる。
【0019】
また、本発明では、前記正極集電板及び前記負極集電板が、前記素子体の巻回断面と平行な方向に配置されることが好ましい。
【0020】
かかる構成により、電極体の端部帯状部の全長にわたって集電板が接触されるので、電極体と集電板との間の抵抗を下げることができ、かつインダクタンスも下げることもでき、コンデンサ全体の抵抗を低くすることができる。特に、1秒以下の短時間に大電流の充電、放電を行う場合には、抵抗成分として、インダクタンスの影響が大きくなるため、本発明の構造の採用は、1秒以下の短時間に大電流の充電、放電を行う際のコンデンサ全体の抵抗の低減に大きく寄与する。
【0021】
さらに、本発明は、前記正極タブ部及び前記負極タブ部のうち、前記封口板と反対側に設けられた集電板に接続されたタブ部が、前記素子体の最外周部分と前記外装容器との間を通るように配設されることが好ましい。
【0022】
素子体の両端部のそれぞれに設けられた正極集電板及び負極集電板のうち、貫通穴に取り付けられた正極端子及び負極端子と近接していない側、すなわち、封口板と反対側に設けられた集電板に接続されたタブ部は、素子体の最外周部分と外装容器との間を通って正極端子又は負極端子と接続される。そのため、この正極タブ部又は負極タブ部の長さは、比較的長くなる。
【0023】
しかしながら、正極タブ部又は負極タブ部は、素子体の最外周部分と外装容器との間に配設されるため、外装容器に収容可能な範囲であれば制約無くその断面積の設計を行うことができる。従って、これらの抵抗値が全体の抵抗値に対して無視できるように設計されるので、集電板と端子との間の抵抗を下げることができ、コンデンサ全体の抵抗を低くすることができる。
【0024】
さらに、本発明は、前記正極及び前記負極の端部帯状部は、前記正極集電板及び前記負極集電板のそれぞれの中心部と、該中心部から放射状に溶接されることが好ましく、また前記正極集電板及び前記負極集電板が点対称の形状を有し、前記正極及び前記負極のそれぞれの端部帯状部が、前記正極集電板及び前記負極集電板の中心部に対し対称に溶接されていることが好ましく、さらに前記正極集電板及び前記負極集電板のそれぞれの中心部と、前記正極タブ部及び前記負極タブ部のそれぞれの一端が溶接されていることが好ましい。
【0025】
放射状に溶接することにより、端部帯状部と集電板とを全面的に接触させることができ、接触抵抗を低減させることができる。また、対称に溶接することで、効果的に接触抵抗を低減させることができる。さらに、正極集電板及び負極集電板のそれぞれの中心部から電気エネルギーを効率よく入出力できる。従って、電極体から均等に電気エネルギーの入出力を行うことができる。
【0026】
さらに、本発明は、前記正極集電板と正極タブ部、及び前記負極集電板と負極タブ部は、それぞれ互いに一体化された部材とされてもよい。
【0027】
このことにより、部材の点数を減らせると共に必要な加工工数も減らすことができる。
【0028】
さらに、本発明のコンデンサにおいて、前記正極又は負極が、前記集電箔の少なくとも一方の表面に、前記端部帯状部を残して高比表面積材料からなる電極層が形成されたものである電気二重層キャパシタであることが好ましい。
【0029】
集電箔の少なくとも一方の表面に、高比表面積材料からなる電極層を形成することで、効率のよい蓄電機能を有する電気二重層キャパシタを形成できる。
【0030】
さらに、本発明のコンデンサにおいて、前記集電箔がアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、前記正極は、前記集電箔に緻密な酸化皮膜が形成されたものであるアルミ電解コンデンサであることが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように本発明によれば、容器の一方向側のみに正極端子及び負極端子を設けた場合でも素子体から正極端子及び負極端子への接続抵抗を低減させ、かつ、インダクタンスを低減させることができ、さらに素子体の製造時間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の集電構造を有する電気二重層キャパシタの縦断面図。
【図2】本発明の素子体の構成図。
【図3】図2中のB矢視線図。
【図4】素子体と集電板との接合部分の拡大図。
【図5】本発明の集電板の構成図。
【図6】本発明の集電板の別構成図。
【図7】従来の集電構造を有する電気二重層キャパシタの縦断面図。
【図8】従来の素子体の構成図。
【図9】図8中のA矢視線図。
【符号の説明】
【0033】
1、101 素子体
3A、3B、103A、103B 電極体
5A、5B セパレータ
7A、7B、107A、107B 集電箔
9A、9B 電極層
21 外装容器
31 封口板
33A、33B 端子
50、100 単体セル
108A、108B 端部帯状部
141A、141B 集電板
145A、145B 中心部
146A、146B 溶接点
148A、148B 線溶接部
151A、151B 短タブ部、長タブ部
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態である集電構造を有する電気二重層キャパシタの縦断面図を図1に示す。また、本発明の素子体の構成図を図2に、図2中のB矢視線図を図3に示す。なお、図7〜図9と同一要素のものについては同一符号を付して説明は省略する。
図1〜図3において、本発明の電気二重層キャパシタの単体セル100は、従来の単体セル50と同様に、図示しない電解液により含浸された柱状の素子体101が、外装容器21及び封口板31により密閉収容されている。
【0035】
このとき、本発明の素子体101の正極及び負極を構成する電極体103A、103Bは、長尺帯状の集電箔107A、107Bと、この集電箔107A、107Bの両面にその長手方向の1辺の全長に沿った端部帯状部108A、108Bを残して形成された電極層9A、9Bとを有している。
【0036】
なお、電極層9A、9Bには、従来の電極体3A、3Bと同様に、集電箔107A、107Bに電気二重層を形成し蓄電機能を果たすため、高比表面積材料が用いられる。電極層9A、9Bは、それぞれ集電箔107A、107Bの両面に形成されている。しかしながら、電極層9A、9Bは、それぞれ集電箔107A、107Bの片面のみに形成されてもよい。さらに、図3では、電極体103A、103Bにおいて、その端部帯状部108A、108Bと逆側の1辺にも帯部108C、108Dが僅かに残されているが、この帯部108C、108Dは、電極体103A、103Bを製造する上で、集電箔107A、107Bと電極層9A、9Bとの間に必要な余裕を示したものに過ぎず、素子体101のエネルギー密度の観点からは、設けない方が好ましい。
【0037】
そして、この電極体103A、103Bは、それぞれの端部帯状部108A、108Bが、セパレータ5A、5Bの長手方向に沿って互いに反対側にセパレータ5A、5Bより突出するように巻回されており、これにより柱状の素子体101が形成されるようになっている。なお、この素子体101の最外周部分には、電極体103Aあるいは電極体103Bを覆うべく、図示しない絶縁部材が配置されるようになっている。この絶縁部材は、セパレータ5であると好ましい。電極体103A、103Bよりも長尺状のセパレータ5を用いて巻回すれば、セパレータ5により最外周部分が覆われた素子体101が容易に得られるため好ましい。また、本発明の素子体101には、従来の素子体1のように、その電極体103A、103Bにタブ接合部11A、11Bが形成されておらず、また、タブ13A、13Bも接合されていない。
【0038】
そして、このように形成された素子体101の渦巻き様の両端面からは、それぞれ電極体103A、103Bの端部帯状部108A、108Bが別々に露出されている。また、この端部帯状部108A、108Bには、集電板141A、141Bが接合されるようになっている。この素子体と集電板との接合部分の拡大図を図4に、集電板の構成図を図5に示す。
【0039】
図4、図5において、集電板141A、141Bは点対称の形状を有し、素子体101の巻回断面と略同面積を有する円板状の板部143A、143Bを有し、巻回断面と平行な方向に配置されている。そして、この板部143A、143Bの一方の面には、電極体103A、103Bの端部帯状部108A、108Bが接合されている。このとき、端部帯状部108A、108Bと板部143A、143Bとの接合には、機械的押し付け、導電性接着剤等による導電接着があるが、機械的、電気的に信頼性の高い溶接接合が好ましい。また、この溶接法には、超音波溶接、YAG等のレーザー溶接、電子ビーム溶接法が好適に用いられる。
【0040】
そして、この溶接では、板部143A、143Bの中心部145A、145Bから各溶接点146A、146Bまでの距離が均等になるように、中心部から外周に向かって放射状に溶接されることが望ましい。例えば、図5に示すように、板部143A、143Bの中央部に1か所(中心部145A、145B)、この板部143A、143Bの最外周付近に等分に6か所(溶接点146A、146B)の合計7か所の溶接点が設けられ、中心部145A、145Bから溶接点146A、146Bへと放射線状に線溶接される(線溶接部分を図5中線溶接部148A、148Bで示す)。この線溶接の本数が4本以上であると、電極体103A、103Bと集電板141A、141Bとを全面的に接触でき、接触抵抗を低減できるため好ましい。また、線溶接を点対称中心(中心部145A、145B)に対して対称になるような角度で行うと、効果的に接触抵抗を低減でき好ましい。
【0041】
一方、板部143A、143Bにおいて、端部帯状部108A、108Bが接合されていない他方の面には、板部143A、143Bの中央部から突出した小突起147A、147Bが設けられている。また、この板部143A、143Bには、素子体101の端面からの電解液の含浸を阻害しないように、図示しない穿孔や切欠部が形成されることが望ましい。
【0042】
さらに、素子体101が外装容器21に収容されたときに開口部21b側に配置される端部帯状部108Aに接合される集電板141Aには、その小突起147Aを覆うように一端が接続された帯状の短タブ部151Aが設けられている。この短タブ部151Aの長手方向の長さLAは、素子体101が外装容器21に収容されたときに、端子33Aへの接続のための余裕を有するように、小突起147Aと端子33Aとの間の距離よりも所定長長く形成されている。
【0043】
一方、素子体101が外装容器21に収容されたときに底部21a側に配置される端部帯状部108Bに接合される集電板141Bには、その小突起147Bの側部に一端が接続された帯状の長タブ部151Bが設けられている。この長タブ部151Bの長手方向の長さLBは、短タブ部151Aの長さLAよりも長く、かつ素子体101が外装容器21に収容されたときに、端子33Bへの接続のための余裕を有するように、素子体101の最外周部分と外装容器21との間を通って端子33Bに至るまでの距離よりも所定長長く形成されている。
【0044】
そして、このような短タブ部151A及び長タブ部151Bは、それぞれの抵抗値が素子体101の有する固有の抵抗値に対して十分小さくなるように、かつ完成された単体セル100に要求される抵抗値を満たすように、その断面積が設計されている。
【0045】
加えて、図1において、このような集電板141A、141B及び短タブ部151A、長タブ部151Bを備えた素子体101は、外装容器21及び封口板31により密閉収容され、その短タブ部151Aの他端が貫通穴31aに取り付けられた端子33Aと接続され、長タブ部151Bの他端が貫通穴31bに取り付けられた端子33Bと接続されている。
【0046】
このとき、短タブ部151Aは、短タブ部151Aの長さLAと、小突起147Aと端子33Aとの間の距離の違いに伴い、弓なりの状態となっている。
また、長タブ部151Bには、集電板141Bの小突起147Bから素子体101の最外周部分と外装容器21との間を通って端子33Bに接続されるように、小突起147Bから順に2か所の折曲部153、154が形成されている。そして、長タブ部151Bは、その長手方向が小突起147Bから折曲部153までは板部143Bの径方向に沿って、折曲部153から折曲部154までは素子体101の巻回の軸方向に沿って配設され、さらに折曲部154から端子33Bまでは弓なりの状態となっている。
【0047】
なお、長タブ部151Bは、折曲部153から折曲部154までの範囲で素子体101の最外周部分と外装容器21との間に配設されているが、素子体101の最外周部分には図示しない絶縁部材が配置されているため、素子体101内の電極体103A、103B等との短絡が起こらないようになっている。また、長タブ部151Bの折曲部154付近において、対極の電極体103Aに接続された集電板141Aと接近しているが、この部分には図示しない絶縁部材が介設されており、両者の絶縁が行われるようになっている。なお、素子体101の最外周部分がセパレータ5により構成される場合、新たな絶縁部材を設ける必要はない。
【0048】
かかる構成において、正極及び負極を構成する電極体103A、103Bからの集電は、それぞれ端部帯状部108A、108B、集電板141A、141B及び短タブ部151A、長タブ部151Bにより行われる。
このとき、素子体101の両端面には、電極体103A、103Bのそれぞれの端部帯状部108A、108Bが、外装容器21の底部21a側、開口部21b側に向けて別々に露出されているので、この端部帯状部108A、108Bに対して集電板141A、141Bが接合される。
【0049】
また、底部21a側の端部帯状部108Bに接合される集電板141Bと端子33Bとの間には長タブ部151Bが設けられているので、外装容器21の開口部21b側の一方向側のみに、すなわち封口板31のみに、端子33A、33Bが配置される。
【0050】
さらに、この長タブ部151Bは比較的長いが、この断面積は、素子体101の有する固有の抵抗値に対して十分小さくなるように、かつ完成された単体セル100に要求される抵抗値を満たすように設計される。特に、長タブ部151Bは、素子体101の最外周部分と外装容器21との間を通って端子33Bに接続されるため、外装容器21に収容可能な範囲であれば制約無くその断面積の設計が行われる。そのため、長タブ部151Bの抵抗値は、単体セル100全体の抵抗値に対して無視できる。このことは、短タブ部151Aについても同様である。
【0051】
以上により、電極体103A、103Bの端部帯状部108A、108Bに対して集電板141A、141Bが接触されるので、電極体103A、103Bと集電板141A、141Bとの間の抵抗を下げることができる。また、この溶接では、板部143A、143Bの中心部から外周に向かって放射状に溶接されるので、電極体103A、103Bから均等に電気エネルギーの入出力を行うことができる。
【0052】
さらに、底部21a側の集電板141Bには長タブ部151Bが設けられるので、外装容器21の開口部21b側の一方向側のみで、素子体101から外部への電気エネルギーの入出力を行うことができる。そのため、単体セル100同士を配線する場合や、単体セル100と外部の回路とを配線する場合に、この配線を簡易に接続することができ、かつ容易に省スペース化できる。
【0053】
さらに、短タブ部151A及び長タブ部151Bの断面積は、これらの抵抗値が単体セル100全体の抵抗値に対して無視できるように設計されるので、集電板141A、141Bと端子33A、33Bとの間の抵抗を下げることができる。
このことにより、外装容器21の開口部21b側の一方向側のみに端子33A、33Bを設けることができ、かつ素子体101から端子33A、33Bへの抵抗を低減させることができる。
【0054】
また、本発明の素子体101では、従来の素子体1で必要であったタブ13A、13Bの接合位置を考慮する必要が無い。そのため、素子体101の巻き取りを一時停止することも無いので、素子体101の製造時間を短縮させることができる。
【0055】
さらに、本発明の素子体101では、従来のタブ13A、13Bの接合の代わりに、素子体101の工程後に分離して集電板141A、141Bの接合を行うだけで良いため、その製造が簡単である。従って、単体セル100の製造コストを下げることができる。
【0056】
なお、本発明では、短タブ部151A及び長タブ部151Bは、それぞれ集電板141A、141Bの小突起147A、147Bに接続されるとして説明してきたが、これに限られない。すなわち、集電板の板部143A、143Bと端子33A、33B(図1参照)間が電気的に接続されていれば、短タブ部151A及び長タブ部151Bは、それぞれ集電板の板部143A、143Bと別部材とせずに、図6に示すように互いに一体化されていても良い。
【実施例】
【0057】
以上のような本発明の集電構造を有する電気二重層キャパシタの最適例について説明する。
正極及び負極を構成する電極体103A、103Bに用いられる集電箔107A、107Bの材質は、正極側の電気化学耐食性に優れるものであれば特に限定されないが、加工性、軽量化の点でアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼の箔材が好適である。
【0058】
また、電極層9A、9Bに用いられる高比表面積材料は、比表面積100〜3000m/gの炭素質材料を主体として形成され、フェノール等の樹脂系、やしがら系、コークス系又はピッチ系の活性炭、及びカーボンナノチューブ、カーボンエアロゲル、ポリアセン等が好ましく使用でき、導電助剤としてはカーボンブラック、炭素短繊維、金属ファイバが好適である。さらに、正極と負極に用いられる電極層9A、9Bは同じ材料で構成されても良いし、異なる材料で構成されても良い。
【0059】
また、セパレータ5A、5Bの材質は、イオン透過性を有する部材であれば良く、電気絶縁性と電解液に対する化学的安定性、電解液の吸液量が多く保液性に優れる多孔質材料からなることが好ましい。具体的には、ガラス繊維、シリカファイバ、アルミナファイバ、アスベスト、及びこれらのウィスカ等の無機材料や、マニラ麻紙、セルロース紙、クラフト紙、レーヨン繊維とサイザル麻の混沙紙等の紙材料、ポリオレフィン、ポリエステル等の合成ポリマー繊維等の有機材料からなることが好ましい。また、それらを抄造したシート、延伸操作によって微孔を設けたマイクロポーラスフィルム等が好ましい。
【0060】
さらに、集電板141A、141Bの材質は、集電箔107A、107Bと同じ材質が望ましく、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼が最適である。また、短タブ部151A及び長タブ部151Bの材質も、集電箔107A、107Bと同じ材質が望ましく、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼が最適である。なお、設計時の加工性及び単体セル100の低抵抗化を考慮すると、集電板141A、141B、短タブ部151A、長タブ部151Bの厚さは0.8mm以下であると好ましい。また、短タブ部151A、長タブ部151Bの長さは設計上可能な範囲で短くすることが好ましい。
【0061】
さらに、端子33A、33Bの材質は、抵抗を低くするためと、短タブ部151A及び長タブ部151Bとの接合のために、電極体103A、103Bと同じ材質が望ましく、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼が最適であるが、銅を使用することも可能である。
ここで、素子体がアルミ電解コンデンサの場合、集電箔107A、107Bの材質はともにアルミニウム又はアルミニウム合金であり、集電箔107Aは陰極用エッチング箔、集電箔107Bは陽極用エッチング箔であり、電極層9A、9Bを設ける必要はない。このとき、正極(陽極)は、集電箔107Bに緻密な酸化皮膜が形成されたものである。さらに、負極(陰極)は、集電箔107Aを拡面処理後、安定化処理されて薄膜が形成されたものであると好ましい。
【0062】
そして、このような単体セル100を用いた発明者の実験によれば、特許文献1に示される従来構造の単体セル50と比較して、その素子体101から端子33A、33Bへの抵抗を5分の1以下に抑えることができた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、容器の一方向側のみに正極端子及び負極端子を設けた場合でも素子体から正極端子及び負極端子への接続抵抗を低減させ、かつ、インダクタンスを低減させることができ、さらに素子体の製造時間を短縮させることができるので、コンデンサ、電気二重層キャパシタ及びアルミ電解コンデンサに適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液と、
長尺状の集電箔を備えてなり、かつ該集電箔の長手方向の1辺の全長に沿った端部帯状部を有し、互いに対向配置された電極体である正極及び負極と、該正極及び該負極を隔てるイオン透過性のセパレータとを有し、前記正極及び前記負極それぞれの前記端部帯状部の少なくとも一部分が互いに反対側に前記セパレータより突出するようにして、前記正極、前記負極及び前記セパレータが巻回された柱状の素子体と、
該素子体及び前記電解液を収容し、一方に開口部を有する外装容器と、
前記素子体の両端部にそれぞれ配置され、前記正極の端部帯状部と電気的に接続される正極集電板、及び前記負極の端部帯状部と電気的に接続される負極集電板と、
前記外装容器の前記開口部を封口する封口板と、
該封口板を貫通する貫通穴に取り付けられ、外部との間の電気エネルギーの入出力を行う正極端子及び負極端子と、
前記正極集電板と前記正極端子との間、及び前記負極集電板と前記負極端子との間をそれぞれ電気的に接続する正極タブ部及び負極タブ部とを備えたことを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
前記正極集電板及び前記負極集電板が、前記素子体の巻回断面と平行な方向に配置される請求項1記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記正極タブ部及び前記負極タブ部のうち、前記封口板と反対側に設けられた集電板に接続されたタブ部が、前記素子体の最外周部分と前記外装容器との間を通るように配設される請求項1又は請求項2記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記正極及び前記負極の端部帯状部は、前記正極集電板及び前記負極集電板のそれぞれの中心部と、該中心部から放射状に溶接された請求項1、2又は3記載のコンデンサ。
【請求項5】
前記正極集電板及び前記負極集電板のそれぞれの中心部と、前記正極タブ部及び前記負極タブ部のそれぞれの一端が溶接されている請求項1〜4のいずれかに記載のコンデンサ。
【請求項6】
前記正極集電板及び前記負極集電板が点対称の形状を有し、前記正極及び前記負極のそれぞれの端部帯状部が、前記正極集電板及び前記負極集電板の中心部に対し対称に溶接されている請求項5に記載のコンデンサ。
【請求項7】
前記正極集電板と正極タブ部、及び前記負極集電板と負極タブ部は、それぞれ互いに一体化された部材である請求項1〜4のいずれかに記載のコンデンサ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のコンデンサにおいて、前記正極又は負極は、前記集電箔の少なくとも一方の表面に、前記端部帯状部を残して高比表面積材料からなる電極層が形成されたものである電気二重層キャパシタ。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のコンデンサにおいて、前記集電箔がアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、前記正極は、前記集電箔に緻密な酸化皮膜が形成されたものであるアルミ電解コンデンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【国際公開番号】WO2005/052967
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【発行日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515789(P2005−515789)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017488
【国際出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)