説明

コンバインのキャビン

【課題】比較的大きな開放面積を有する窓を備えたコンバインのキャビンを提供すること。
【解決手段】左右一側面に機体後ろ側を支点に外側方へ開閉可能な操縦者乗降用の扉16を設け、該扉16には上窓18と下窓19を設け、下窓19は機体に固定させ、上窓18は機体の前端部を支点として外側方へ開閉可能に設ける。上窓18には上窓18の開放をバックミラー21に当接する手前で止める上窓開閉用ダンパ43を設けた。
上窓18を大きく機体前側に開放できるため操縦者が上窓18から身を乗り出して、後方や車両機体の直ぐ近傍の様子を目視確認しながら車両の操縦ができ、また上窓18を大きく機体前側に開放しても、バックミラー21に上窓18が当たるおそれはないので、上窓18とバックミラー21を共に破損するおそれがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインのキャビンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンバインは機体上に操縦者が座るキャビンが装備され、空調機器等を配置して外部と遮断してその室内を快適な状態に保って作業能率を上げる工夫がされた構成となっている。
【0003】
そして、キャビンには開放可能な窓を設けている。例えば下記特許文献1に開示された発明では、キャビンの機体の両側壁に設けられた窓は上下に分かれ、さらに上側の窓が前後2つに分かれた構成からなっている。
【特許文献1】特開平10‐108528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンバインのキャビンの後方にはグレンタンクが備えられているため、キャビン内の操縦者は後方を確認するには扉から身を乗り出す必要がある。しかしながら前記特許文献1記載のコンバインのキャビンは、扉の上部を前後2つに分かれた窓を備え、後ろ側の窓が前側を支点に開閉できる構成である。そのため扉の上部の1/2程度の面積しか窓の開放に利用できない。そのため操縦者がキャビンから身を乗りだして車両の後方または前方などを観察し難い。
本発明の課題は、比較的大きな開放面積を有する窓を備えたコンバインのキャビンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、次の解決手段により解決される。
請求項1記載の発明は、運転席(25)を覆うキャビン(8)の左右一側面に機体後ろ側を支点に外側方へ開閉可能な操縦者乗降用の扉(16)を設け、該扉(16)には上下方向に透明部材で形成する上窓(18)及び下窓(19)を設け、下窓(19)は機体に固定させ、上窓(18)は機体の前端部を支点として外側方へ開閉可能に設け、該扉(16)よりも機体の前側にバックミラー(21)を設け、上窓(18)には上窓(18)の開放をバックミラー(21)に当接する手前で止める上窓開閉用ダンパ(15)を設けるコンバインのキャビンである。
【0006】
請求項2記載の発明は、下窓(19)は透明窓で形成され、かつ上端部から途中部まで下狭まりに形成され、前記途中部から下端部に向かって下広がりに形成される請求項1記載のコンバインのキャビンである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、上窓18を大きく外側方に開放できるため操縦者が上窓18から身を乗り出してコンバインの側方及び後方の様子を目視確認し易くすることができる。また上窓18を大きく機体外側方に開放しても、バックミラー21に上窓18が当たるおそれはないので、上窓18とバックミラー21を破損するおそれがない。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、操縦者の乗降時に足元側が広くなるので乗降しやすい。また、運転席25から足元側の状態を目視しやすくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面と共に説明する。
なお、本明細書ではコンバインの前進方向に向かって左、右方向をそれぞれ左、右とし、前進方向を前、後退方向を後ろという。
図1に移動車両の側面図を示し、図2に移動車両の正面図を示す。本実施例の移動車両はコンバインであって、走行フレーム2の下部には、ゴムなどの可撓性材料を素材として無端帯状に成型した左右一対のクローラ4を持ち、乾田はもちろんのこと、湿田においてもクローラ4が若干沈下するだけで自由に走行できる構成の走行装置3を備え、走行フレーム2の前部には刈取装置6を搭載し、走行フレーム2の上部には図示しないエンジンならびに脱穀装置7、運転席25のあるキャビン8およびその後方にはグレンタンク10を搭載する。
【0010】
刈取装置6は、図示しない刈取昇降シリンダの伸縮作用により刈取装置6全体を昇降して、圃場に植生する穀稈を所定の高さで刈り取りができる構成としている。刈取装置6の前端下部に分草具11を、その背後に傾斜状にした穀稈引起し装置5を、その後方底部には刈刃12を配置している。刈刃12と脱穀装置7のフィードチェン(図示せず)の始端部との間に、図示しない前部搬送装置、扱深さ調節装置、供給搬送装置などの搬送装置を順次穀稈の受継搬送と扱深さ調節とができるように配置している。
【0011】
コンバインの刈取装置6の作動は次のように行われる。まず、エンジンを始動して図4に示す変速用のHSTレバー26と操向用などの操作レバー29をコンバインが前進するように操作し、刈取・脱穀クラッチ(図示せず)を入り操作して機体の回転各部を伝動しながら、走行フレーム2を前進走行させると、刈取、脱穀作業が開始される。圃場に植立する穀稈は、刈取装置6の前端下部にある分草具7によって分草作用を受け、次いで穀稈引起し装置5の引起し作用によって倒伏状態にあれば直立状態に引き起こされ、穀稈の株元が刈刃12に達して刈り取られ、供給搬送装置などに受け継がれて順次連続状態で後部上方に搬送される。
【0012】
次いで穀稈は供給搬送装置からフィードチェンの始端部に受け継がれ、脱穀装置7に供給される。脱穀装置7では、扱胴(図示せず)などで刈取穀稈を脱穀、選別して穀粒を得る。脱穀装置7で排藁などと選別された穀粒はグレンタンク10へ搬送され、グレンタンク10に一時貯留される。グレンタンク10内の貯留穀粒はグレンタンク螺旋(図示せず)により縦オーガ13および横オーガ14からなる排出オーガからコンバインの外部に排出される。
【0013】
コンバイン作業の場合は、前方の刈取装置6による穀稈の刈取状態、その搬送状態を監視する必要があって、立ち姿での作業が多いのでキャビン8内の天井部は操縦者が安全に、しかも楽な姿勢で立ち仕事ができるように高くなるように工夫をしている。
【0014】
本実施例の運転席25を覆うキャビン8の左右両側部の一方に操縦者が出入りする扉16を設ける。また、扉16を外側方へ開閉自在なヒンジ17を扉16の機体後ろ側に設け、扉16には上下方向にそれぞれ透明窓からなる上窓18と下窓19を設ける。そして下窓19は扉16に固定して開閉不能とし、上窓18は機体前端部側にヒンジ20を設けて後開き方式で外側方へ開閉自在とする。また下窓19の前部には扉16全体を開閉させるための取っ手16aを取り付ける。さらに、上窓18のヒンジ(回動支点)20は扉の取っ手16aよりも機体前側に配置しているので、降車状態の操縦者が、この取っ手16aを握って扉16を開閉しようとした場合に、上窓18が外側方へ開放されたままの状態であっても、この上窓18が操縦者に当たりにくく、扉16の開放操作を容易に行なうことができる。
【0015】
また、キャビン8の側壁前方部にバックミラー21を取り付けている。前述のように上窓18の機体前端部側にヒンジ20を設けて上窓18を後開き構造とし、図3に示すように伸縮自在のダンパ15により最大開き位置が規制される構成としているため、上窓18が最大の開き位置に達したときに前記バックミラー21の外側に上窓18が位置することになり、バックミラー21に上窓18が当たるおそれがない。
【0016】
また、上記構成により上窓18を大きく機体前側に開放できるため、操縦者が上窓18から身を乗り出して後方または前方などを観察でき、また車両機体の直ぐ近傍の様子、例えば圃場の稲の状態も目視確認しやすく、コンバインの操縦を容易に行うことができる。さらに上窓18の開閉にかかわらず、扉16の開閉ができるだけでなく、上窓18を開いたときにもバックミラー21の視界が確保できる。
【0017】
上窓18のロック装置22を上窓18の後方部位の中央に設ける。また、ロック装置22は上窓18がロック状態にあるときにロック装置22を外すためのロックハンドル22aが下向きに配置されるが、上窓18を開くときにロックハンドル22を回動させて、後方のほぼ水平方向に向けることになる。
上窓18を開いた状態から閉めるときには水平方向に向いたロックハンドル22aが操縦者側に向いているため、手がハンドル22aに届き易く、操作性が良い。
【0018】
また、図1に示すように扉16の下窓19部分は乗降用の足元部分の幅(A)が、それより上方部位の幅(B)より広がっているので、操縦者の乗降性が従来より向上する。また、運転席25から足元側の状態を目視しやすくすることができる。
【0019】
扉16の外枠の内側には扉開閉用ロック装置23(図5(a),図5(b)参照)を取り付けているが、該扉開閉用ロック装置23の取付用のブラケット23b(図5(b))を扉16の外枠の内側に溶接して配置している。この構成により、扉16の外枠の内方に、扉開閉用ロック装置23の取付用のブラケット23bを取り付けるための別の構成部材を設ける必要がなく、このブラケット23bを扉16の外枠の内側に直接取り付けるため、組立部品点数削減効果があり、また下窓19の透明板(ガラスなど)を破損するおそれがなくなる。
【0020】
図4にはキャビン8内の運転席25周りの斜視図を示す。主変速レバー(HSTレバー)26は運転席25の周りの操作ボックス9及びメータパネル36の設置された側に配置され、前後方向の揺動操作によりHSTを駆動し、機体の前進と後進の走行速度の制御を行う。また機体の旋回と刈取装置6の昇降用の操作レバー(パワステアリングレバー)29が運転席前面壁27の右横に配置されている。
【0021】
運転席前面壁27上にあって操作レバー29の手前近くに手首を載せた状態で操作レバー29の操作ができる手置台30を設けている。手置台30は固定ハンドル杆31に取り付けられた支持部材32(図5(a))上に設けられている。
【0022】
そこで図5(a)の正面図、図5(b)の平面図、図5(c)の右側面図に運転席付近の構成を示すように、前記扉開閉用ロック装置23を手置台30の下側に配置し、扉16を内側から開閉操作するドアノブ23aを手置台30の後方へ配置する。上記構成で扉開閉用ロック装置23が手置台30の下部にあるため、操作席を広く確保できる。また、ドアノブ23aの操作性が良い。
【0023】
図5に示すように、運転席25の前面壁27より外側に扉開閉用ロック装置23を配置する構成にすると、操縦者がスムーズに着座でき、さらに操縦者が右足を広げた位置においても足が扉開閉用ロック装置23に当接して扉開閉用ロック装置23を操作することがなく、誤作動による扉16の開閉を防止できる。また、操縦者がスムーズに着座できる。
【0024】
図6のキャビンの右側面図に示すように、キャビン8のフロントウインド8aはフロントウインドの下部に設ける開閉レバー35により上側を支点に開閉できる構成である。
【0025】
また、図7にフロントウインド8a部分の正面図を示すように、フロントウインド8aの上方右端のキャビン8の内側にはワイパ作動用モータ42を配置しており、該モータ42で駆動するワイパー43をフロントウインド8aの前面に配置している。さらに、フロントウインド8aの開閉操作用のウインドステー45をフロントウインド8aの右側部に配置し、フロントウインド開閉用のダンパ37も同じくフロントウインド8aの右側部に配置している。すなわちフロントウインド8aの右端部に集中して配置することで、運転席25に着座している操縦者の視界を広くすることができる。
【0026】
図8にキャビン8の左側面図を示すように、キャビン左側面(脱穀装置7側)には開閉窓50を設け、開閉窓50の後方部位には開閉可能なガラス板を枠に入れた透明窓46を設けている。透明窓46は前後方向でオーガ受け48と同一位置にあり、図8に示すようにオーガ14をオーガ受け48に収納するとき、従来透明窓46を設けていなかったので、キャビン8の内部からオーガ受け48は見え難かったが、本実施例では透明窓46を通してオーガ受け48部が直接見えるため、オーガ14の操作性が良い。
【0027】
また、図9には本発明のコンバインの運転席付近の変形例の平面図を示す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例のコンバインの側面図である。
【図2】図1のコンバインの正面図である。
【図3】図1のコンバインのキャビン付近の斜視図である。
【図4】図1のコンバインのキャビン内の運転席周りを示す斜視図である。
【図5】図1のコンバインの運転席付近の正面図(図5(a))、平面図(図5(b))、右側面図(図5(c))である。
【図6】図1のコンバインのキャビンの右側面図である。
【図7】図1のコンバインのフロントウインド部分の正面図である。
【図8】図1のコンバインのキャビンの左側面図である。
【図9】図1のコンバインの運転席付近の変形例の平面図である。
【符号の説明】
【0029】
2 走行フレーム 3 走行装置
4 クローラ 5 穀稈引起し装置
6 刈取装置 7 脱穀装置
8 キャビン 8a フロントウインド
9 操作ボックス 10 グレンタンク
11 分草具 12 刈刃
13 縦オーガ 14 横オーガ
15 ダンパ 16 扉
16a 取っ手 17 ヒンジ
18 上窓 19 下窓
20 ヒンジ 21 バックミラー
22 上窓ロック装置 22a ロックハンドル
23 扉開閉用ロック装置 23a ドアノブ
23b ブラケット 25 運転席
26 主変速レバー 27 運手席前面壁
29 操作レバー(パワステアリングレバー)
30 手置台 31 固定ハンドル杆
32 支持部材 35 開閉レバー
36 メータパネル 37 ダンパ
41 ヒンジ 42 ワイパ作動用モータ
43 ワイパー 45 ウインドステー
46 透明窓 48 オーガ受け
50 開閉窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席(25)を覆うキャビン(8)の左右一側面に機体後ろ側を支点に外側方へ開閉可能な操縦者乗降用の扉(16)を設け、
該扉(16)には上下方向に透明部材で形成する上窓(18)及び下窓(19)を設け、
下窓(19)は機体に固定させ、上窓(18)は機体の前端部を支点として外側方へ開閉可能に設け、
該扉(16)よりも機体の前側にバックミラー(21)を設け、
上窓(18)には上窓(18)の開放をバックミラー(21)に当接する手前で止める上窓開閉用ダンパ(15)を設けることを特徴とするコンバインのキャビン。
【請求項2】
下窓(19)は透明窓で形成され、かつ上端部から途中部まで下狭まりに形成され、前記途中部から下端部に向かって下広がりに形成されることを特徴とする請求項1記載のコンバインのキャビン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−124984(P2009−124984A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302725(P2007−302725)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】