説明

コンバインの処理胴側排出機構

【課題】脱穀部の送塵口処理胴の終端部に藁屑を排出できずに詰まりを生じることがないようにする。
【解決手段】揺動選別装置10の後端上部に排出口63を形成し、該排出口を利用して吸引ファン30後下部を配置し、該吸引ファンの前後中央部より前部を揺動選別装置後部上方に配置し、側面視において吸引ファンの下部を揺動本体後上部にラップさせ、該送塵口処理胴21周囲に螺旋状のスクリュー36を固設し、該スクリューの回動軌跡の下方側に沿ってコーンケーブ又はクリンプ網を配設し、前記送塵口処理胴の終端部に藁屑を機外に排出する排出機構90を設け、該排出機構の排出口の下端部に案内板を配置して排出口より吐出された藁屑を排藁カッター装置17の下部に案内し、排藁カッター装置で切断処理された排藁と共に機外に排出すべく構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインにより脱穀装置の扱胴側で脱粒して漏下処理し、処理仕切れなかった枝梗付着粒等を処理する処理胴から藁屑を排出する構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、刈取部によって刈り取られた穀稈を、フィードチェーンによって受け継ぎ、穂先側を選別装置上部の扱室内に案内し、扱胴で脱穀し、脱穀された籾藁が、扱胴下方に配設するクリンプ網より揺動選別装置に配置した揺動本体上に漏下し、更に、扱胴によって処理しきれなかった枝梗付着粒や穂切粒等が、クリンプ網後側部に開口した投入口(送塵口)より送塵口処理胴内へ搬送されていた。この枝梗付着粒等が、該送塵口処理胴で後方に搬送されながら穀粒と藁屑等に処理され、再び揺動本体の後部に落下され、一番物、二番物、藁屑とに選別されていた。
【特許文献1】特開平4−51822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の脱穀部の構成においてさらに大量の穀稈が一度に搬送されてくると、大量の籾が脱粒されるとともに、大量の藁屑も発生し、送塵口処理胴に投入される枝梗付着粒や藁屑等の量も多くなり、該送塵口処理胴で処理しきれずに、該送塵口処理胴の終端部に藁屑を排出できずに詰まりを生じることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、このような問題点を解消するために、次の如く構成したものである。
脱穀装置9の前部に扱胴20を配置し、該扱胴20の後側方より後方に送塵口処理胴21を配置し、脱穀装置9下方に揺動選別装置10を配置し、該揺動選別装置10の後上部で、前記送塵口処理胴21の下方に、該揺動選別装置10の幅方向に吸引ファン30を横設したコンバインにおいて、前記揺動選別装置10の後端上部に排出口63が形成されており、該排出口63を利用して吸引ファン30後下部が配置され、吸引ファン30の前後中央部より前部を揺動選別装置10後部上方に配置し、側面視において吸引ファン30の下部を揺動本体51後上部にラップさせ、該送塵口処理胴21周囲には螺旋状のスクリュー36が固設され、スクリュー36の回動軌跡の下方側に沿ってコーンケーブ37又はクリンプ網が配設され、該送塵口処理胴21の終端部に藁屑を機外に排出する排出機構90を設け、該排出機構90の排出口93の下端部に案内板を配置して、排出口93より吐出された藁屑を排藁カッター装置17の下部に案内し、排藁カッター装置17で切断処理された排藁と共に機外に排出すべく構成したものである。
【発明の効果】
【0005】
以上のように構成したので、本発明は次のような効果を奏するものである。
脱穀装置9の前部に扱胴20を配置し、該扱胴20の後側方より後方に送塵口処理胴21を配置し、脱穀装置9下方に揺動選別装置10を配置し、該揺動選別装置10の後上部で、前記送塵口処理胴21の下方に、該揺動選別装置10の幅方向に吸引ファン30を横設したコンバインにおいて、前記揺動選別装置10の後端上部に排出口63が形成されており、該排出口63を利用して吸引ファン30後下部が配置され、吸引ファン30の前後中央部より前部を揺動選別装置10後部上方に配置し、側面視において吸引ファン30の下部を揺動本体51後上部にラップさせ、該送塵口処理胴21周囲には螺旋状のスクリュー36が固設され、スクリュー36の回動軌跡の下方側に沿ってコーンケーブ37又はクリンプ網が配設され、該送塵口処理胴21の終端部に藁屑を機外に排出する排出機構90を設け、該排出機構90の排出口93の下端部に案内板を配置して、排出口93より吐出された藁屑を排藁カッター装置17の下部に案内し、排藁カッター装置17で切断処理された排藁と共に機外に排出すべく構成したので、脱穀部に一度に大量の籾等が搬送されて、脱穀装置で藁屑が大量に発生しても処理胴で処理残された詰まりを生じさせることなく藁屑を機体外部に排出することができ、送塵口処理胴21の性能を高く維持することができる。
また、該排出機構90の排出口93の下端部に案内板を配置して、排出口93より吐出された藁屑を排藁カッター装置17の下部に案内し、排藁カッター装置17で切断処理された排藁と共に機外に排出すべく構成したので、拡散性が向上し、詰まりを生じさせることなく藁屑を機体外部に排出することができ、送塵口処理胴21の性能を高く維持することができる。
【0006】
このように構成したことによって、脱穀装置9に一度に大量に穀稈が搬送され、扱胴20等で脱穀して漏下処理し、扱胴20側で処理残された未処理物(藁屑や藁屑内に含まれる籾等)が大量に発生しても、送塵口処理胴21で藁屑内の籾を漏下し、コーンケーブ37よりこの籾と藁屑とを漏下して行く。そして、前記コーンケーブ37の終端位置で漏下し残された藁屑が発生しても、この藁屑が藁屑排出機構90内に案内され、羽体91・91・・・の回転によって跳ね飛ばされ、藁排出口93より機外に排出されている。
よって、前記送塵口処理胴21の終端部より落下させることがないので、前記吸引ファン30上方のケーシング81・82等に藁屑を堆積させることがなく、また前記送塵口処理胴21後部のコーンケーブ37に詰まりを生じることがなく、送塵口処理胴21の処理能力を高く維持できる。この藁屑排出機構90によって、脱穀時に発生する藁屑の一部を排出しているので、その分揺動本体51側での選別量を減らすことができ選別能力を向上することができ、さらには吸引ファン30と合わせて藁屑の排出能力を向上している。
【0007】
また、藁屑を揺動選別装置10の後部に配置した吸引ファン30と同じ側に落下する藁屑量を減らすことができ、吸引ファン30の排出力を低下させることが無く、選別性能を向上することができる。
脱穀部で大量に発生した藁屑の大部分は揺動選別装置10から吸引ファン30の後方に排出されるが、その一部が排出機構90から排出口93を介して排出されるので、選別後の藁屑を、吸引ファン30の排出と、排出機構90からの排出とにより合わせて排出するので、藁屑の排出能力を向上させることができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明が解決しようとする課題及び解決するための手段は以上の如くであり、次に添付の図面に示した実施例の構成を説明する。
図1はコンバイン全体側面図、図2は第二処理胴を有する脱穀装置の側面図、図3は同じく脱穀装置の正面図、図4は第二処理胴を示する脱穀装置の部分側面図一部断面図、図5は別形態の第二処理胴を有する脱穀装置の正面図、図6は第二処理胴側の切刃の配置を示す正面図、図7は吸引ファンを揺動本体後部に配置した部分側面断面図、図8は同じく後面図一部断面図、図9は同じく平面図一部断面図、図10は排藁カッター装置の後方回動で吸引ファンのケーシングが取り外された状態を示す平面図、図11は吸引ファンのケーシングとガイドプレートとを示す正面図、図12は同じく藁屑排出機構の後面図である。
【0009】
図1においてコンバインの全体構成から説明する。
クローラ式走行装置1 上に機体フレーム2を載置し、該機体フレーム2前端に引起し・刈取装置8を昇降可能に配設し、引起し・刈取装置8は前端に分草板3を突出して穀稈を分草し、その後部に引起しケース4を立設して該引起しケース4より突出したタインの回転により穀稈を引き起こして、分草板3後部に配設した刈刃5にて株元を刈り取り、上部搬送装置、下部搬送装置、縦搬送装置6にて後部へ搬送し、この縦搬送装置6の後端から株元がフィードチェーン7に受け継がれて脱穀装置内に穀稈を搬送し、該フィードチェーン7後端には排藁搬送装置16が配設され、排藁搬送装置16後部下方に配設した排藁カッター装置17にて、搬送されてきた排藁を切断し、左側で切断された排藁を拡散スパイラ18で右側(グレンタンク12側)に送り、既刈り側の圃場に放出している。前記脱穀装置の側部には選別後の精粒を貯留するグレンタンク12が配設され、該グレンタンク12前部には運転部19が配設されている。
【0010】
前記脱穀装置9は図2に示すように、扱室内に扱胴20と送塵口処理胴21とが軸芯をずらして、略前後方向にして横架され、脱穀装置9下部の、この扱室の下方に揺動選別装置10が配設されている。
【0011】
また、前記揺動選別装置10には、揺動本体51と唐箕25とプレファン26等が配設され、脱穀された籾と籾藁とが比重選別と風選別により一番物と二番物と藁くず等に選別が行なわれている。また、揺動本体51下方の前後途中位置には、左右方向に一番コンベア22と二番コンベア23とが横設されている。前記一番コンベア22の他側に揚穀コンベア13が連結されており、一番コンベア22の流穀板28上に漏下された一番物は、一番コンベア22、揚穀コンベア13を介してグレンタンク12に搬送されている。また、前記二番コンベア23の他端部に還元コンベア14が連結されており、該還元コンベア14を介して脱穀装置9前部に投入して、再度処理を行うようにしている。
【0012】
次に、前記揺動選別装置10の構成について、図2を用いて説明する。
前記揺動本体51は機枠65内に収納され、揺動本体51前部を扱胴20前端部の下方に位置し、揺動本体51後部を送塵口処理胴21後端部の下方まで位置させている。図3、図11に示すように、揺動本体51の左右側面の上部に、ゴム製の受け板62下部が固設され、該受け板62を左右外側上方に向けて延出し、上端部を機枠65側面に当接させて、前記唐箕20等より漏下された籾等を確実に揺動本体51で受け止めるようにしている。
【0013】
また、前記揺動本体51後部下面が、クランク軸等の揺動駆動機構61によって揺動駆動可能に連結されている。前記揺動本体51の前端部には、第一グレンパン52が形成され、該第一グレンパン52の後下方に第二グレンパン53が形成されている。該第一グレンパン52と第二グレンパン53とは、板体を波状にして籾を後方に搬送し易く成形している。該第一グレンパン52が扱胴20前部下方に位置され、第二グレンパン53が扱胴20中央部下方に位置されている。前記第一グレンパン52後部より後方の下面には、導入口56が開放されている。前記第一グレンパン52後方に、揺動可能にフルイ線54・54・・・が支持され、前記第二グレンパン53に連設してチャフ部55が形成され、チャフ部55後方には、前後方向に長い棒状体の上面を波上に形成したストローラック57・57・・・が配されている。
【0014】
更に、前記第二グレンパン53の後部より後下方に膨出して膨出部58を成形し、該膨出部58下面には落下口59が開口されている。前記落下口59の前部より後方途中位置まで網状のグレンシーブ60によって被装され、一番コンベア22の上方が被装されている。
【0015】
また、前記プレファン26が揺動本体51の前下方に配され、前記導入口56より揺動本体51内に選別風を送風し、フルイ線54・54・・・上の籾等を後方に吹き飛ばしている。前記唐箕25が揺動本体51の第二グレンパン53下方に配置され、落下口59よりチャフ部55に向けて選別風を送風し、チャフ部55の風選別と比重選別が行われている。
【0016】
そして、本実施例において、図2、図7〜図11に示すように、前記揺動本体51の後上部の、揺動本体51の略全幅に渡って吸引ファン30を横設している。即ち、前記揺動本体51の後端上部に排出口63が形成されており、該排出口63を利用して吸引ファン30後下部が配置され、吸引ファン30の前後中央部より前部を揺動本体51後部上方に配置し、側面視において吸引ファン30の下部を揺動本体51後上部にラップさせている。
そして、前記吸引ファン30下部に前記ストローラック57・57・・・後端部が位置され、該ストローラック57・57・・・が二番コンベア23の上方に位置し、ストローラック57・57・・・前方に位置するチャフ部55の全長を短くすることができ、部品点数を減らしている。
尚、前記吸引ファン30の下部を揺動本体51後部に側面視でラップさせているが、吸引ファン30前部をラップさせる構成としてもよく、また、吸引ファン30の下部を揺動本体51後部に側面視でラップさせるとともに吸引ファン30を平面視において完全に揺動本体51後部にラップさせる構成とすることもできる。
【0017】
また、前記吸引ファン30の下方には、側面視略円弧状の下部ケーシング80が配置され、該下部ケーシング80前端部を前記ストローラック57・57・・・後端部の直後方に臨ませて配置している。該ストローラック57・57・・・で後方に案内されている藁屑が吸引ファン30内に吸引され易く形成されている。更に、前記下部ケーシング80後部は揺動本体51後方で後下方に延出されている。
【0018】
また、前記吸引ファン30の上方は、吸引ファン30の前後中央部より前方に延出する前上部ケーシング81と、前後中央部より後下方に延出する後上部ケーシング82とで被装されている。前記前上部ケーシング81は、図示せぬステーを介して機枠65側面に固設されている。前記後上部ケーシング82の後部は、前述した拡散スパイラ18下部の前方まで延出し、拡散スパイラ18前方を被装している。
【0019】
前記前上部ケーシング81及び後上部ケーシング82の左右側面と下部ケーシング80の左右側面には図示せぬ側部ケーシングが固設され、排出口が形成され、吸引ファン30で吸引した藁屑を機体後部より排出するように案内している。
【0020】
また、前記後上部ケーシング82は、前記排藁カッター装置17のケーシングに図示せぬステーを介して固設されており、図10に示すように、排藁カッター装置17右側の図示せぬ支軸を中心に回動させると、後上部ケーシング82がともなわれて回動して吸引ファン30後半部が開放され、吸引ファン30のメンテナンスを容易にしている。
【0021】
また、前記前上部ケーシング81の前下部を吸引ファン30上部の前方まで延出させている。該前上部ケーシング81の左端部は前下がり傾斜状に形成し、左端部より右側に向かうに従って円弧状に形成して傾斜角度を徐々に急傾斜状としている。従って、図9に示す平面視のように、前上部ケーシング81前端部が左側より右側に向かうに従って後方に傾斜され、前上部ケーシング81前端の右側が送塵口処理胴21のコーンケーブ37終端部より後方に位置される。
よって、該送塵口処理胴21のコーンケーブ37より漏下された藁屑等が前上部ケーシング81上にできるだけ落下されず、落下されても、前上部ケーシング81右側の急傾斜に沿って落下され、藁屑等が堆積されることがない。
【0022】
また、前記吸引ファン30の前側方の機枠65側面にはシール部材としてのガイドプレート85・85が固設されている。該ガイドプレート85を、図8、図11に示すように、前記揺動本体51側上部の受け板62の直上方より吸引ファン30上端部までの上下長さを有し、図9に示す平面視においてガイドプレート85前部を機枠65側面に固設し、ガイドプレート85後部を内側後方に傾斜状に形成して後端部を吸引ファン30前側部の近傍位置まで延出している。
【0023】
この左右のガイドプレート85・85によって、揺動本体51のチャフ部55より吹き上げられた選別風を吸引ファン30で吸引しやすいように左右中央側にガイドし、吸引ファン30の左右側方を通過して後方に藁屑が流れないようにシールしている。尚、前記シール部材は、ガイドプレート85に限定するものでなく、吸引ファン30の左右側方に仕切り用の板体を配置した簡単な構成であってもよい。
【0024】
よって、前記揺動本体51の左右幅と略等しい幅を有する吸引ファン30によって揺動本体51の後部より、強力にエアを吸引しており、唐箕25とプレファン26から送風された選別風の流れがスムースとなり、チャフ部55における風選別を向上することができ、大量の籾等がチャフ部55上を搬送されてきても選別することができる。よって、前記チャフ部55前部に一番物が漏下され、チャフ部55後部より二番物や比較的小さい藁屑等が落下され、そして、前記チャフ部55後方のストローラック57・57・・・上で藁屑がほぐされ、二番物を完全に落下させて残りの藁屑が上方に持ち上げられことなく、後方に配した吸引ファン30に確実に吸引され、機外に排出することができ、選別性能を大幅に向上することができる。
【0025】
また、前記吸引ファン30の高さが低くなっており、揺動駆動機構61や、一番コンベア22、二番コンベア23との距離が近くなり、吸引ファン30へ駆動を伝達する構成をシンプルとすることができる。
【0026】
次に、前記脱穀装置9の構成について説明する。
図2、図3に示すように、前記扱室の扱胴20周囲に扱歯27・27・・・を植設している。該扱胴20は、正面視において揺動本体51の左右中央部より左側(フィードチェーン側)端部にかけての上方に配置されている。また、前記扱胴20前方の下部には、投入口32をフィードチェーン7側方位置より扱胴20の右側部位置までの範囲で開口し、穀稈の穂先側が投入される。また、前記扱胴20の下面側には、正面視で円弧状の支持枠35が配置され、該支持枠35上に後述する漏下体を敷設し、扱胴20で脱粒された籾等を下方の揺動本体51上に漏下している。
【0027】
また、前記送塵口処理胴21は、正面視において、揺動本体51の左端部(グレンタンク12側)上方に配置されている。該送塵口処理胴21前部は、側面視で扱胴20後部とラップされ、後端部を扱室の後端部まで延出している。該送塵口処理胴21周囲には螺旋状のスクリュー36が固設され、スクリュー36の回動軌跡の下方側に沿ってコーンケーブ37が配設され、扱胴20で処理仕切れなかった藁屑等を処理している。但し、スクリュー36とコーンケーブ37の代わりに扱歯とクリンプ網で構成することも可能である。
【0028】
また、本実施例において、図3において扱胴20の回動中心と送塵口処理胴21の回動中心とを結ぶ直線より下方で、扱胴20下部の右側方 (進行方向)に送塵口処理胴21の左側部に第二処理胴40が配置されて、図4に示すように、側面視でラップするように配置している。該第二処理胴40は扱胴20と送塵口処理胴21と平行に配置され、送塵口処理胴21の外径と略等しく形成されている。また、図4に示す側面視において、前記第二処理胴40の後端部を前記送塵口処理胴21前端部の直前方に位置し、第二処理胴40の前端部と扱胴20前端部とをラップし、第二処理胴40の作用の開始位置を扱胴20前端部に合わせている。
【0029】
更に、前記第二処理胴40周囲に羽根状の羽根歯41・41・・・を植設し、回転速度を高めることで藁屑を確実にほぐし、また枝梗付着粒の枝梗を取り除くようにしている。
【0030】
前記扱胴20下面を被装した漏下体となるクリンプ網は、図3、図4に示すように、支持枠35の左端部より扱胴20右側部下方(第二処理胴40の左側方)までの範囲にクリンプ網31を敷設している。該クリンプ網31右端部より右側の支持枠35上には、クリンプ網31より網目間隔が広い粗網43を敷設し、漏下率が高い粗漏下体を形成している。前記粗網43で第二処理胴40左側部の上方を被装し、この粗網43より第二処理胴40に籾等を漏下するようにしている。尚、前記粗網43の代わりに、図5に示すコーンケーブ44を敷設し、さらに漏下を促進することもできる。
【0031】
前記第二処理胴40の下側半円弧部には、図3、図6に示すように、前記羽根状歯41の回動軌跡に沿って漏下網42を敷設している。該漏下網42の左端部を扱胴20下部のクリンプ網31右端部に当接する位置まで延設している。前記クリンプ網31右端部(粗網43左端部)の接線方向は、第二処理胴40外周の接線と一致しており、扱胴20の扱歯27で案内された籾等が粗網43を通過して第二処理胴40内に漏下しやすく構成し、扱胴20側で処理する籾等の量を減らして、ササリ粒の発生を防ぐようにしている。
【0032】
また、前記第二処理胴40の回転方向を、扱胴20と送塵口処理胴21との回転方向と逆方向としている。前記粗網43より漏下された第二処理胴40の回動にともなわれて旋回している籾等が、粗網43を通過して扱胴20側に戻すことなく、第二処理胴40側に誘導するようにしている。更に、前記の送塵口処理胴21の回転方向に対しても逆転方向となっているので、第二処理胴40の漏下網42の主に右側(グレンタンク12側)より漏下し、送塵口処理胴21では主に左側より漏下しており、揺動本体51上に落下する位置を左右にずらして分布を良くし選別性能を高めている。
【0033】
また、ここの漏下網42の左端部には、切刃45が固設されている。該切刃45の刃面を第二処理胴40回転方向に対向する向きに配置して、第二処理胴40の回転にともなわれ回転している藁屑を切断し、処理能力を高めるようにしている。また、前記切刃45を、クリンプ網31右端部の接線方向に沿うように配設しているので、第二処理胴40側に投入される籾等の流れをが悪くなることがないようにしている。
【0034】
また、前記第二処理胴40の前後途中部の右側方には、還元コンベア14の終端部が配置され、この終端部より左下方に案内口38を固設し、該案内口38端部を第二処理胴40の漏下網42右端部まで延出し、還元コンベア14と第二処理胴40とを連通している。よって、前記還元コンベア14で搬送される二番物を案内口38に沿って第二処理胴40に投入し、第二処理胴40を二番物の処理用の胴とすることができる。従って、二番物が扱胴20に戻されることがなくなり、その分扱胴の作用空間が広がり、一度に投入された大量の穀稈を確実に処理することができる。
【0035】
また、前記第二処理胴40後端部には、図4に示すように、前後に長い板体で形成する複数の送り羽根46・46・・・を半径方向に植設し、第二処理胴40後端部側部の粗網43に連通口43aを開口し、第二処理胴40で処理残された籾や藁屑等を扱胴20側にはね飛ばして、扱胴20後部で処理したり、扱胴20後端より送塵口処理胴21に投入して処理するようにしている。
尚、前記第二処理胴40後端部と送塵口処理胴21とを連通して、第二処理胴40後端部の送り羽根46で処理残された籾や藁屑等を直接に送塵口処理胴21にはね飛ばす構成としてもよい。
【0036】
また、第二処理胴40の別形態として、第二処理胴40の前端部を、図4に示す側面視でクリンプ網31の作用始端部と略一致させて、第二処理胴40の全長をできるだけ短くして駆動負担を低減することもできる。そして、前記第二処理胴40周囲に植設する羽根状歯41の代わりに、図5に示すスクリュー47を固設し、このスクリュー47に対応して漏下網42の代わりに、コーンケーブ48を敷設して、籾等を後方に流して処理する速度を高めることもできる。
【0037】
よって、前記脱穀装置9に大量の穀稈が投入され、扱胴20で大量に脱粒されても、その一部を前記粗網43より円滑に第二処理胴40内に投入しており、扱胴20下方のクリンプ網31に沿って流れる籾等の量を少なくしている。さらに、揺動本体51で選別された二番物が還元コンベア14を介して第二処理胴40に投入され、扱胴20側に投入されないので、扱胴20側の処理空間を広く保つことができ、一度に大量に搬送されてきた穀稈を確実に脱粒でき、ササリ粒等を発生させることがない。また、前記第二処理胴40が二番物を処理する専用の処理胴となり、二番物を確実に処理し、ことができ、前記送塵口処理胴21では主に藁屑の処理を行うようにして、処理胴の役割を分担でき、処理能力が高められて脱穀装置9の性能を向上している。
【0038】
そして、この第二処理胴40で処理できなかった藁屑等は、前述した如く扱胴20後部に戻されて、扱胴20側で漏下処理仕切れなかった藁屑や枝梗付着粒が送塵口を介して送塵口処理胴21前部に投入されている。この投入された未処理物は、大量の藁屑を迅速に後方に送りながら、絡まった藁屑を処理し、藁屑内に含まれる籾を漏下したり、穂切れ粒等を処理して行く。
【0039】
そして、図2に示すように、本発明において前記送塵口処理胴21の後端部には、藁屑排出機構90が形成されている。即ち、図7、図12に示すように、前記藁屑排出機構90は、送塵口処理胴21の後端部の外周面に前後に長い板体より成る羽体91・91・・・を半径方向に突設したファンと、該羽体91の回動軌跡の外周側を被装する略円環状のカバー92より形成されている。さらに前記カバー92の右下方に開口92aを形成し、該開口92aより右側下方(揺動本体51と逆側下方)に藁排出口93を突設し、機枠65を貫通して端部を揺動選別装置10外部に延出している。この排出口93下端部には図示せぬ案内板等を配置して、排出口93より吐出された藁屑を排藁カッター装置17の下部に案内し、排藁カッター装置17で切断処理された排藁とともに機外に排出し、吸引ファン30と合わせて選別後の藁屑の排出を行うようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】コンバイン全体側面図である。
【図2】第二処理胴を有する脱穀装置の側面図である。
【図3】同じく脱穀装置の正面図である。
【図4】第二処理胴を示する脱穀装置の部分側面図一部断面図である。
【図5】別形態の第二処理胴を有する脱穀装置の正面図である。
【図6】第二処理胴側の切刃の配置を示す正面図である。
【図7】吸引ファンを揺動本体後部に配置した部分側面断面図である。
【図8】同じく後面図一部断面図である。
【図9】同じく平面図一部断面図である。
【図10】排藁カッター装置の後方回動で吸引ファンのケーシングが取り外された状態を示す平面図である。
【図11】吸引ファンのケーシングとガイドプレートとを示す正面図である。
【図12】同じく藁屑排出機構の後面図である。
【符号の説明】
【0041】
9 脱穀装置
10 揺動選別装置
20 扱胴
21 送塵口処理胴
90 排出機構
91 羽板
93 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀装置9の前部に扱胴20を配置し、該扱胴20の後側方より後方に送塵口処理胴21を配置し、脱穀装置9下方に揺動選別装置10を配置し、該揺動選別装置10の後上部で、前記送塵口処理胴21の下方に、該揺動選別装置10の幅方向に吸引ファン30を横設したコンバインにおいて、前記揺動選別装置10の後端上部に排出口63が形成されており、該排出口63を利用して吸引ファン30後下部が配置され、吸引ファン30の前後中央部より前部を揺動選別装置10後部上方に配置し、側面視において吸引ファン30の下部を揺動本体51後上部にラップさせ、該送塵口処理胴21周囲には螺旋状のスクリュー36が固設され、スクリュー36の回動軌跡の下方側に沿ってコーンケーブ37又はクリンプ網が配設され、該送塵口処理胴21の終端部に藁屑を機外に排出する排出機構90を設け、該排出機構90の排出口93の下端部に案内板を配置して、排出口93より吐出された藁屑を排藁カッター装置17の下部に案内し、排藁カッター装置17で切断処理された排藁と共に機外に排出すべく構成したことを特徴とするコンバインの処理胴側排出機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−122057(P2006−122057A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368847(P2005−368847)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【分割の表示】特願平10−138380の分割
【原出願日】平成10年5月20日(1998.5.20)
【出願人】(000006851)ヤンマー農機株式会社 (132)
【Fターム(参考)】