説明

コンバインの刈取装置

【課題】コンバインの機体に対して可動支持機構により左右に移動可能に備えた刈取装置において、引起こし範囲の確実な切替えによって既刈株との干渉を避けることができる刈取装置を提供する。
【解決手段】刈取装置は、ラグ式の引起装置(12)を複数備えると共に機体に対して左右方向へ位置調節自在に構成され、前記複数の引起装置(12)のうちの少なくとも既刈地側端部の引起装置(12)を、該引起装置(12)の下部において作用状態に突出するラグ(21a)の左右方向移動経路長を延長及び短縮調節自在な構成とし、前記刈取装置(3)の左右位置調節に連動してラグ(21a)の左右方向移動経路長が調節される構成としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取位置を左右移動式に構成したコンバインの刈取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインの刈取装置は、特許文献1(図7等)の例のごとく、機体の幅方向に移動可能に構成したものが知られており、刈取幅が狭い小型のコンバインにおいて、未刈側のクローラの外側端の範囲まで刈取装置を移動することにより、畦際の刈取り走行が可能となる。
【0003】
この場合において、対向配置の周回ラグによって倒伏穀稈の穂先を引起こす引起装置が既刈領域に及ぶと切株との干渉の問題が生じることから、刈取装置を高く保持して高刈りすることにより、引起装置の周回ラグと切株との干渉を避けることができるものの、機体の前後左右の揺れや圃場縁における機体の内方傾斜により、引起装置と切株とが干渉することがあり、切株の倒れや引抜き等による圃場の荒れや引起装置の破損を招くことから、煩わしい取扱いが避けらなかった。
【0004】
このような問題を解決するために、引起装置の下部に周回ラグの経路を切替え可能に可動ローラを設けて引起こしの作用幅を切替え可能に構成した特許文献2(図1)のごとくの引起装置を適用することにより、既刈株との干渉を避けて必要幅内の刈取走行を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−166978号公報
【特許文献2】平2−111229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記引起装置にあっては、可動ローラの位置変更の際の周回動作するラグベルトの張力を確保するためのスプリングを備えることから、周回ラグが受ける負荷と対応する伸縮動作に応じて可動ローラの位置が変化し、引起装置に負荷を受ける都度、周回ラグの作用範囲が既刈側に張出されることとなり、依然として引起装置と既刈株との干渉の問題が残るので、引起こし範囲の確実な切替えが可能な引起装置が待たれていた。
【0007】
本発明の目的は、コンバインの機体に対して左右に移動可能に備えた刈取装置において、引起こし範囲の確実な切替えによって既刈株との干渉を避けることができる刈取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、ラグ式の引起装置(12)を複数備えると共に機体に対して左右方向へ位置調節自在に備えられた刈取装置であって、前記複数の引起装置(12)のうちの少なくとも既刈地側端部の引起装置(12)を、該引起装置(12)の下部において作用状態に突出するラグ(21a)の左右方向移動経路長を延長及び短縮調節自在な構成とし、前記刈取装置(3)の左右位置調節に連動してラグ(21a)の左右方向移動経路長が調節される構成としたことを特徴とするコンバインの刈取装置とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記引起装置(12)を、上部に配置した駆動輪(23)と、下部に左右方向間隔をおいて配置した従動輪(22)及び副従動輪(25)とに対して、多数のラグ(21a)を取り付けた無端帯(21)を巻き掛けた構成とし、刈取装置(3)の左右位置調節に連動して副従動輪(25)が上下に移動することで、ラグ(21a)の左右方向移動経路長が調節される構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取装置とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記引起装置(12)を、上部に左右方向間隔をおいて配置した駆動輪(23)及び緊張輪(24)と、下部に左右方向間隔をおいて配置した従動輪(22)及び副従動輪(25)とに対して、多数のラグ(21a)を取り付けた無端帯(21)を巻き掛けた構成とし、前記緊張輪(24)と副従動輪(25)を支持する支持部材(26)を、刈取装置(3)の左右位置調節に連動して上下移動させる第1連動部材(27)を設けたことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取装置とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記刈取装置(3)の既刈地側への位置調節に連動して、ラグ(21a)の左右方向移動経路長が延長される構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3記載のコンバインの刈取装置とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、前記引起装置(12)の下部後側には、引起こした穀稈の株元側を後方に掻込む左右の掻込ベルト(13,13)を備え、該左右の掻込ベルト(13,13)のうちの既刈側の掻込ベルト(13)の前端側を左右位置調節可能に揺動支持するとともに、この掻込ベルト(13)の前端側を刈取装置(3)の既刈地側への位置調節に連動して既刈地側に調節する第2連動部材(34)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項記載のコンバインの刈取装置とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、前記掻込装置は、掻込ベルト(13)と対向して穀稈を後方に案内する位置固定のガイド杆(35)を備えたことを特徴とする請求項5記載のコンバインの刈取装置とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、前記引起装置(12)の既刈地側の前側には刈取対象穀稈を刈取装置(3)の刈幅内に案内する分草体(11)を配置し、この分草体(11)の前端側を左右位置調節自在に揺動支持するとともに、この分草体(11)を刈取装置(3)の既刈地側への位置調節に連動して既刈地側に揺動させる第3連動部材(43)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項記載のコンバインの刈取装置とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、前記引起装置(12)の未刈地側の前側には刈取対象穀稈を刈取装置(3)の刈幅内に案内する分草体(11)を配置し、この分草体(11)の前端側を左右位置調節自在に揺動支持するとともに、この分草体(11)を任意に揺動操作する操作部材(46)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項記載のコンバインの刈取装置とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によると、刈取装置(3)の左右位置調節に連動して、既刈地側端部に設けられた引起装置(12)の下部において作用状態に突出するラグ(21a)の左右方向移動経路長が調節されることで、例えば、機体右側の畦際に植立する穀稈を刈り取るような場合、刈取装置(3)を右側に移動すると共に畦際の穀稈及び畦に対してラグ(21a)の下部作用域を適切に調節して円滑に刈り取ることができる。
【0017】
請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、ラグ(21a)の上昇経路の位置変化を抑えて穀稈の引起しを円滑に行なうことができる。
【0018】
請求項3記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果を奏するうえで、ラグ(21a)の左右方向移動経路長の調節を円滑に行わせることができる。
【0019】
請求項4記載の発明によると、刈取装置(3)を既刈地側へ位置調節した場合に、既刈地側端部に設けられた引起装置(12)の下部において作用状態に突出するラグ(21a)の左右方向移動経路長が延長されることで、例えば機体右側の畦際に植立する穀稈を刈り取る場合、刈取装置(3)を右側に移動すると共にラグ(21a)の下部作用域を右側に延長して、この畦際の穀稈を円滑に刈り取ることができる。
【0020】
請求項5記載の発明によると、請求項1から請求項4のいずれか一項記載の発明の効果に加え、刈取装置(3)が既刈地側に位置調節されると、既刈地側の掻込ベルト(13)の前端側が既刈地側に調節されて左右の掻込ベルト(13,13)による掻込作用幅が既刈側に拡大されることで、引起装置(12)によって引起こされた穀稈を円滑に掻込むことができる。
【0021】
請求項6記載の発明によると、請求項5記載の発明の効果を奏するうえで、ガイド杆(35)と掻込ベルト(13)によって引起装置(12)によって引起こされた穀稈を円滑に掻込むことができる。
【0022】
請求項7記載の発明によると、請求項1から請求項6のいずれか一項記載の発明の効果に加え、上記引起装置(12)の既刈地側の前側に配置した分草体(11)を、刈取装置(3)の既刈地側への位置調節に連動して既刈地側に揺動させることで、刈幅を拡大することができる。
【0023】
請求項8記載の発明によると、請求項1乃至請求項4のいずれかの効果に加え、未刈地側の分草体(11)を任意に揺動操作することで、状況に応じた範囲の穀稈の刈取が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】刈取装置を既刈側に移動した状態のコンバインの正面図
【図2】張出状態(a)と後退状態(b)の周回ラグ機構の背面図
【図3】掻込ベルトの要部側面図
【図4】分草体の平面図(a)および側面図(b)
【図5】操作レバーの正面図(a)および側面図(b)
【図6】両側切替構成の刈取装置の切替え動作の正面図
【図7】掻込ベルトの切替前(a)と切替後(b)の動作図
【図8】掻込ベルトの別構成図
【図9】分草体(a)、引起装置(b)、掻込装置(c)の切替構成
【図10】切替操作部の構成図
【図11】刈取装置の配索構成図
【図12】刈取装置の内部構成側面図
【図13】刈取装置のフレーム平面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
本発明の適用対象となるコンバイン1は、圃場走行可能に機体を支持するクローラ等の走行装置2と、機体の前部に昇降可能に支持されて圃場の植立穀稈を刈取る刈取装置3と、その後方で刈取装置3から受けた刈取穀稈を脱穀する脱穀装置4と、その側方で脱穀装置により脱穀された籾米を収容する貯留装置5と、この貯留装置5の前側で走行を初めとする各種機器を操作するための操縦部6等を備えて構成される。なお、車幅方向の位置関係を特定するために、以下において脱穀装置4の方向を未刈側、操縦部6の方向を既刈側と云う。
称する。
【0026】
刈取装置3は、図1の既刈側に移動した状態のコンバインの正面図や、図12及び図13に示すように、リアフレーム83の横方向の支持軸Xを支点として前側部位を上下に回動自在に機体に支持されている。このリアフレーム83の先端部には横伝動フレーム82の左右中間部が支持され、横伝動フレーム82から前方へ向けて前フレーム41を複数突出させている。リアフレーム83と横伝動フレーム82の間には、リアフレーム83側のスプロケット(図示省略)と横伝動フレーム82側のスプロケット(図示省略)と、この2つのスプロケットに巻き掛けたチェン(図示省略)とを内装する連結ギアケース86を設けており、連結ギアケース86は、リアフレーム83と横伝動フレーム82に対して、2つのスプロケットの回転軸で回転自在な構成である。そして、リアフレーム83の中間部には横連結フレーム84と一体的に設け、この横連結フレーム84に第一リンク軸85aで揺動リンクアーム85の一端を取付ける。揺動リンクアーム85の他端は前記横伝動フレーム82に第二リンク軸85bで取付ける。
【0027】
しかして、横伝動フレームは、横伝動フレーム82及び横連結フレーム84、連結ギアケース86及び揺動リンクアーム85の4つの部材が成す4点リンク機構(可動支持機構)によって、機体の左右方向に刈取装置3を左右に移動自在に支持している。なお、この可動支持機構はワイヤ88によって動作する構成とし、リアフレーム83に対して横伝動フレーム83が機体の左右方向に移動する。後述の引起装置(周回ラグ機構)12や、掻込ベルト(掻込装置)13は、この横伝動フレーム82側に支持されている。
【0028】
前記前フレーム41の先端には刈取範囲の植付条を仕分けする左右の分草体11,11をもうけている。この分草体11,11の基部で仕分け範囲の倒伏穀稈を両外側から内方に引起こす左右の周回ラグ機構による引起装置12,12を起立し、この引起装置の下部に臨んで前端拡開配置の左右の掻込ベルト13,13により穀稈の株元側を後方に移送する掻込装置を備える。
【0029】
上記刈取装置3により、その両外側の先端に突出する分草体11,11によって案内された植立穀稈を左右の周回ラグ機構12,12による引起装置に受けて倒伏穀稈を引起こしつつ、掻込装置13,13が株元側を掻込んで刈刃88により切断し、この刈取穀稈を搬送装置(不図示)によって後方の脱穀装置4に移送する。
【0030】
(引起装置)
引起装置は、図2の張出状態(a)と後退状態(b)の周回ラグ機構の背面図に示すように、機体幅方向について既刈側の周回ラグ機構12の作用巾を切替え可能に構成する。すなわち、周回ラグ機構12は、ラグベルト(無端帯)21を陰気動作可能に案内支持する下部引起ローラ(従動輪)22および上部引起ローラ(駆動輪)23と、ラグベルト21を緊張支持する緊張ローラ(副従動輪)24と、ラグベルト21を張出位置B1と後退位置B2に切替え可能に案内支持する副ローラ25と、これら緊張ローラ24および副ローラ25を可動支持する支持リンク26と、この支持リンク26を可動支持機構の既刈側への動作位置と連動して副ローラ25の位置を張出位置に切替える連動切替部材(第一連動部材)27とから構成する。
【0031】
副ローラ25は、下部引起ローラ22から所定の張出幅Bとなる張出位置B1と張出しのない後退位置B2との間をリンクと案内溝25aによって移動可能に構成した上で支持リンク26に取付けて可動支持し、また、緊張ローラ24を上部引起ローラ23の近傍に同軸のアーム24a等により所定範囲で移動可能に構成した上でスプリング24bを介して支持リンク26によって可動支持し、この支持リンク26にその位置を上下に切替え保持する切替アーム26aを連結し、この切替アーム26aを支点26bに軸支した上で、他端側をリターンスプリング付きの切替ワイヤ27と連結し、刈取装置3が既刈側に横移動したときに支持リンク26を下方位置に切替えて副ローラ25が張出位置B1となるように、切替ワイヤ27を可動支持機構と連結して連動切替部材を構成する。
【0032】
上記刈取装置3は、可動支持機構により横移動した左右位置で刈取りを行い、左右の周回ラグ機構12,12により倒伏穀稈を引起こし、このとき、片側の周回ラグ機構12は、連動切替部材27を介して可動支持機構と連動動作する支持リンク26により緊張ローラ24および副ローラ25が刈取装置3の左右位置に応じて移動支持され、その支持位置に応じてベルトテンションを確保するとともに下部引起ローラ22の側方でラグベルト21を張出位置B1と後退位置B2とに切替える。
【0033】
したがって、上記両周回ラグ機構12,12は、その既刈側の周回ラグ機構12について、刈取装置3の左右位置に応じて、所定のベルトテンションを確保した上で、引起こしの作用幅を引起負荷によることなく確実に切替えることができ、刈取装置3を既刈側に横移動すると既刈側の周回ラグ機構12が既刈側に幅広く引起こしを行い、また、刈取装置3を未刈側に横移動すると同周回ラグ機構12の作用幅が縮小されて既刈側の切株との干渉を回避できるので、畦際等の刈取りに際して既刈株との干渉を避けて必要幅内の安定した刈取走行が可能となる。
【0034】
(掻込装置)
掻込装置を構成する左右の掻込ベルト13,13は、前端側を開いて周回ラグ機構12の下部に臨んで配置し、図3(a)の要部側面図に示すように、各掻込ベルト13を奥側の駆動プーリ31と前側の従動プーリ32とを掻込フレーム33により支持して周回機構を構成し、図3(b)の背面図に示すように、既刈側の掻込ベルト13は駆動プーリ31の軸31aを支点に揺動支持して所定の切替幅Cで前端側の側方移動を可能に構成するとともに、可動支持機構の既刈側への動作位置と連動して掻込フレーム33の作用角度を既刈側に揺動保持して掻込ベルト13の掻込み開口幅を切替える連動切替部材(第2連動部材)34を回動可能に設ける。
【0035】
上記刈取装置3は、両周回ラグ機構12,12による引起装置が引起こした穀稈の株元側をその下部にある左右の掻込ベルト13,13による掻込装置が連携して掻込み動作し、このとき、既刈側の掻込ベルト13は、連動切替部材34を介して可動支持機構と連動して揺動動作することに伴い前端側の掻込幅が変更され、刈取装置3が既刈側に横移動されると掻込ベルト13の掻込幅が既刈側に拡大されることから、既刈側の周回ラグ機構12が引起こす幅と対応する範囲に応じた穀稈の掻込みが可能となる。
【0036】
また、掻込ベルト13と対向して奥側に案内する固定ガイド杆35を設けることにより、既刈側の掻込動作の案内幅が既刈側に拡大されることから、引起装置の周回ラグ機構12が幅広く引起こした穀稈量に応じた掻込み案内が可能となる。
【0037】
(分草体)
既刈側の分草体11は、図4の平面図(a)および側面図(b)に示すように、刈取装置3の前フレーム41の先端の支点41aに左右に揺動可能に支持ロッド42を軸支し、この支持ロッド42の基部に保持スプリング43a付きの切替ワイヤ43(第3連動部材)とリターンスプリング45とを連結するとともに、可動支持機構と切替ワイヤ43を連結することにより、刈取装置3を既刈側に移動したときに分草体11を所定の切替幅Aで既刈側に刈取仕分け範囲を拡大するように、刈取装置3の横移動と連動して分草位置を切替える連動切替部材を構成する。
【0038】
上記構成の刈取装置3は、可動支持機構によって既刈側に移動した場合に、左右の分草体11,11、左右の周回ラグ機構12,12による引起装置、左右の掻込ベルト13,13のそれぞれの既刈側がそれぞれの連動切替部材43、27、34によって一括して既刈側に刈取処理域を拡大することができる。
【0039】
また、図5の正面図(a)および側面図(b)に示すように、操縦部6等に配置した操作レバー46と連結して支軸46aで揺動支持し、個別操作可能に個別切替部材を構成することにより、状況に応じた範囲の穀稈の刈取が可能となる。
【0040】
(両側切替構成)
次に、刈幅の両側切替について説明する。
両側切替構成の刈取装置は、図6の刈取幅の切替え動作の正面図に示すように、左右の分草体11,11と、左右の周回ラグ機構12,12による引起装置、左右の掻込ベルト13,13について、それぞれの処理範囲を操縦席から切替ワイヤまたは切替アクチュエータにより切替え可能に構成する。左右の分草体11,11と、左右の周回ラグ機構12,12による引起装置を拡開切替えすることにより、2条刈の小規模刈と3条以上の全面刈とを容易に切替えができ、脱穀負荷が小さい場合、株抜けしない場合、切りワラの引っ掛かりが少ない場合等に多条刈とし、高負荷時に刈取幅を狭め、多条、疎植、刈取負荷等の状況に応じた刈取り作業が可能となる。また、左右の掻込ベルト13,13を共に拡開して搬送を安定化することにより、周刈や中割刈に対応することができる。
【0041】
この場合、未刈側の分草体11の切替幅Aを未刈側に拡開可能に構成し、また、未刈側の周回ラグ機構12の張出幅Bを未刈側に切替え可能に構成し、さらに、未刈側の掻込ベルト13の切替幅Cを未刈側に拡開可能に構成する。
【0042】
詳細には、左右の掻込ベルト13,13は、図7(a)の切替前の動作図に示すように、それぞれの掻込フレーム33にアーム52を取付け、前端部をガイド部材53で支持するとともに、いずれも切替ワイヤ54,54を介して左右同時に切替動作可能に構成し、図7(b)の切替後の動作図に示すように、切替ワイヤ54,54の操作に伴う作用角度の変更により、固定配置のガイド杆35,35との間の案内幅が変更され、既刈側および未刈側の案内幅がそれぞれ拡大されることから、引起装置が幅広く引起こした穀稈量に応じた掻込み案内が可能となる。
【0043】
また、左右の分草体11,11による分草幅、左右の周回ラグ機構12,12による引起こし範囲、左右の掻込ベルト13,13による掻込み幅を脱穀負荷や作業回転数の変動に応じて自動切替えすることにより、刈取作業を効率良く進めることができる。
【0044】
次に、掻込ベルト13の別構成例について説明する。
掻込ベルト13は、図8の別構成例に示すように、掻込フレーム33にL字型アーム61を取付け、このL字型アーム61の前端部にフロントスプリング62を設け、駆動プーリ軸31aより後方から切替ワイヤ63を連結し、この切替ワイヤ63を外側方に位置する刈取装置3の引起パイプ64により配置することにより、作用角度の切替えを容易にすることができる。
【0045】
次に、切替操作用の接続ワイヤ構成について説明する。
切替用の接続ワイヤは、図9の分草体(a)、引起装置(b)、掻込装置(c)の切替構成に示すように、左右それぞれについて分草体11の作用角度を切替えるために支持ロッド42に切替ワイヤ71を連結し、引起装置12の副ローラ25を張出し位置に切替えるために支持リンク26に切替ワイヤ72を連結し、掻込装置13の作用角度を切替えるためにL字型アーム61に切替ワイヤ73を連結する。
【0046】
切替え操作部は、図10の構成図に示すように、操縦部6に切替レバー74を設け、この切替レバー74は上下操作可能に支点74aで軸支するとともに、分草体11の切替ワイヤ71、引起装置12の切替ワイヤ72、掻込装置13の切替ワイヤ73を3本一括して操作可能に連結する。
【0047】
接続ワイヤの配索は、図11の刈取装置の配索構成図に示すように、刈取装置3の左右それぞれの前フレーム41,41に分草体11の切替ワイヤ71,71、左右それぞれの引起装置支持ステー81,81に引起装置12の切替ワイヤ72,72、左右それぞれの引起パイプ64,64に掻込装置13の切替ワイヤ73を収容し、これらを左右の系統別に、左右に横断する底部ギヤケース82から中央のリヤフレーム83を介してそれぞれ切替レバー74に接続することにより、操縦部6まで円滑な配索が可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1 コンバイン
3 刈取装置
11 分草体
12 周回ラグ機構(引起装置)
13 掻込ベルト(掻込装置)
21 ラグベルト(無端帯)
22 下部引起ローラ(従動輪)
23 上部引起ローラ(駆動輪)
24 緊張ローラ(緊張輪)
24a アーム
24b スプリング
25 副ローラ(副従動輪)
25a 案内溝
26 支持リンク
26a 切替アーム
27 切替ワイヤ(連動切替部材(第1連動部材))
31a 駆動プーリ軸
33 掻込フレーム
34 連動切替部材(第2連動部材)
35 ガイド杆
41 前フレーム
41a 支点
42 支持ロッド
43 切替ワイヤ(連動切替部材(第3連動部材))
45 リターンスプリング
46 操作レバー(個別切替部材)
A 切替幅
B 張出幅
B1 張出位置
B2 後退位置
C 切替幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラグ式の引起装置(12)を複数備えると共に機体に対して左右方向へ位置調節自在に備えられた刈取装置であって、
前記複数の引起装置(12)のうちの少なくとも既刈地側端部の引起装置(12)を、該引起装置(12)の下部において作用状態に突出するラグ(21a)の左右方向移動経路長を延長及び短縮調節自在な構成とし、
前記刈取装置(3)の左右位置調節に連動してラグ(21a)の左右方向移動経路長が調節される構成としたことを特徴とするコンバインの刈取装置。
【請求項2】
前記引起装置(12)を、上部に配置した駆動輪(23)と、下部に左右方向間隔をおいて配置した従動輪(22)及び副従動輪(25)とに対して、多数のラグ(21a)を取り付けた無端帯(21)を巻き掛けた構成とし、刈取装置(3)の左右位置調節に連動して副従動輪(25)が上下に移動することで、ラグ(21a)の左右方向移動経路長が調節される構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取装置。
【請求項3】
前記引起装置(12)を、上部に左右方向間隔をおいて配置した駆動輪(23)及び緊張輪(24)と、下部に左右方向間隔をおいて配置した従動輪(22)及び副従動輪(25)とに対して、多数のラグ(21a)を取り付けた無端帯(21)を巻き掛けた構成とし、
前記緊張輪(24)と副従動輪(25)を支持する支持部材(26)を、刈取装置(3)の左右位置調節に連動して上下移動させる第1連動部材(27)を設けたことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取装置。
【請求項4】
前記刈取装置(3)の既刈地側への位置調節に連動して、ラグ(21a)の左右方向移動経路長が延長される構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3記載のコンバインの刈取装置。
【請求項5】
前記引起装置(12)の下部後側には、引起こした穀稈の株元側を後方に掻込む左右の掻込ベルト(13,13)を備え、該左右の掻込ベルト(13,13)のうちの既刈側の掻込ベルト(13)の前端側を左右位置調節可能に揺動支持するとともに、この掻込ベルト(13)の前端側を刈取装置(3)の既刈地側への位置調節に連動して既刈地側に調節する第2連動部材(34)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項記載のコンバインの刈取装置。
【請求項6】
前記掻込装置は、掻込ベルト(13)と対向して穀稈を後方に案内する位置固定のガイド杆(35)を備えたことを特徴とする請求項5記載のコンバインの刈取装置。
【請求項7】
前記引起装置(12)の既刈地側の前側には刈取対象穀稈を刈取装置(3)の刈幅内に案内する分草体(11)を配置し、この分草体(11)の前端側を左右位置調節自在に揺動支持するとともに、この分草体(11)を刈取装置(3)の既刈地側への位置調節に連動して既刈地側に揺動させる第3連動部材(43)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項記載のコンバインの刈取装置。
【請求項8】
前記引起装置(12)の未刈地側の前側には刈取対象穀稈を刈取装置(3)の刈幅内に案内する分草体(11)を配置し、この分草体(11)の前端側を左右位置調節自在に揺動支持するとともに、この分草体(11)を任意に揺動操作する操作部材(46)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項記載のコンバインの刈取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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